特許第6105495号(P6105495)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6105495
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】直流電源回路
(51)【国際特許分類】
   H02H 3/16 20060101AFI20170316BHJP
   H02H 3/00 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   H02H3/16 A
   H02H3/00 Q
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-7405(P2014-7405)
(22)【出願日】2014年1月20日
(65)【公開番号】特開2015-136264(P2015-136264A)
(43)【公開日】2015年7月27日
【審査請求日】2016年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】守田 俊也
(72)【発明者】
【氏名】菅原 修平
【審査官】 田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−206229(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/051484(WO,A1)
【文献】 特開平04−029532(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0314327(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 1/00− 3/253
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池と充電器から構成される直流電源設備を、主母線に対し複数並列接続し、前記主母線を介して負荷へ前記直電源設備より給電する直流電源回路であって、
前記各充電器は、出力側に地絡検出回路と、前記地絡検出回路と接地点間に開閉器を備え、
前記複数の直流電源設備が運転状態において、前記複数の充電器の地絡検出回路のうち1つの地絡検出回路のみを前記開閉器を介して接地することを特徴とする直流電源回路。
【請求項2】
請求項1に記載の直流電源回路において、
前記各充電器は、前記地絡検出回路と前記主母線間に出力遮断器と、前記開閉器を制御する制御回路を備え、
前記各制御回路は、少なくとも自己の出力遮断器の開閉状態及び充電器の運転状態並びに他の充電器の前記開閉器の開閉状態に基づき、自己の開閉器の動作を制御することを特徴とする直流電源回路。
【請求項3】
請求項1に記載の直流電源回路において、
前記各充電器は、前記地絡検出回路と前記主母線間に出力遮断器と、前記開閉器を制御する制御回路を備え、
前記各制御回路は、少なくとも自己の出力遮断器の開閉状態及び充電器の運転状態並びに他の充電器の前記開閉器の開閉状態に基づき、自己の開閉器を開状態とすべきか又は閉状態とすべきかを表示することを特徴とする直流電源回路。
【請求項4】
請求項1に記載の直流電源回路において、
前記各充電器は、前記地絡検出回路と前記主母線間に出力遮断器と、前記開閉器を制御する制御回路を備え、
前記各制御回路と通信可能に設けられた1つの制御盤を設け、
前記各制御回路は、少なくとも自己の出力遮断器の開閉状態及び充電器の運転状態並びに他の充電器の前記開閉器の開閉状態に基づき、自己の開閉器を開状態とすべきか又は閉状態とすべきかを示す判定結果を前記制御盤へ送信し、前記制御盤からの指示入力により1つの充電器の開閉器が閉状態とされることを特徴とする直流電源回路。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の直流電源回路において、
前記各制御回路は、自己の地絡検出回路及び他の地絡検出回路に予め割り付けられた優先度を保持することを特徴とする直流電源回路。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の直流電源回路において、
前記地絡検出回路は、前記直流電源設備の正極と負極との間に2組の抵抗を直列に接続し、前記2組の抵抗の中間点にリレー及び中性点抵抗を備え、
前記開閉器を介して前記中性点抵抗が接地されることを特徴とする直流電源回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一つの主母線盤に、地絡検出回路を有する複数の直流電源設備が接続される直流電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
直流電源回路は、蓄電池、交流を直流に変換し蓄電池を浮動充電するとともに、直流負荷に電源を供給する充電器を有する直流電源設備と、直流電源設備からの電源を負荷に給電するための主母線盤等から構成される。
【0003】
従来、原子力発電所の直流電源回路は、直流電源設備と主母線盤は1:1の構成であったが、近年直流電源設備の強化のため、1つの主母線盤に複数台の直流電源設備を設けることが望まれている。直流電源回路の接地は非接地系であるため、充電器出力側に地絡検出回路を設け、直流電源回路での地絡発生時においては、本地絡検出回路の動作により、警報を発報し、運転員に注意を促すとともに、短絡事故への進展を防ぐものとしている。
【0004】
地絡検出回路は、正極と負極間に10kΩ程度の抵抗を2組直列接続し、その中間点で中性点を作り、その中性点にリレーと中性点抵抗を設けて常時接地する。地絡が発生した場合に、地絡点から中性点抵抗を介して地絡電流が流れることにより本リレーが動作して、地絡発生を検知する構成となっている。従って、地絡の検出感度は、設置するこれらの抵抗の抵抗値に依存することになる。
【0005】
従来、原子力発電所の直流電源回路は、1系統において、直流電源設備と主母線盤は1:1の構成であった為、地絡検出回路の設計も特に問題はなかったが、主母線盤に複数台の直流電源設備を設けると、地絡検出回路が増えることにより、地絡時の地絡電流が、各地絡検出回路に分流してしまうため、地絡検出感度が低下する可能性がある。
【0006】
そこで、特許文献1では、主母線に常時接続される複数台の直流電源設備に備えられた地絡検出回路に、正極から中性点へ向かって流れる方向を順方向とした逆流阻止用素子と、中性点から負極へ向かって流れる方向を順方向とした逆流阻止用素子を設ける構成としている。これにより地絡が発生した場合に健全側直流電源設備の地絡検出回路に地絡電流の回り込みを阻止し、地絡している側の電源の判別を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−38929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら特許文献1では、地絡電流の回り込みを防止するための逆流阻止用素子を有する構成であるものの、各地絡検出回路を構成する中性点抵抗は、常時接地状態となっている。従って、地絡電流は、直流電源設備の台数に応じて分流されるため、地絡検出感度の低下を引き起こす可能性は否定できない。
【0009】
そこで本発明は、複数台の直流電源設備が接続される直流電源回路において、地絡検出感度の低下を防止し得る直流電源回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、蓄電池と充電器から構成される直流電源設備を、主母線に対し複数並列接続し、前記主母線を介して負荷へ前記直電源設備より給電する直流電源回路であって、前記各充電器は、出力側に地絡検出回路と、前記地絡検出回路と接地点間に開閉器を備え、前記複数の直流電源設備が運転状態において、前記複数の充電器の地絡検出回路のうち1つの地絡検出回路のみを前記開閉器を介して接地することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数台の直流電源設備が接続される直流電源回路において、地絡検出感度の低下を防止し得る直流電源回路を提供することができる。
【0012】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施例に係る直流電源回路の概略構成図である。
図2図1に示す制御回路110Aの制御動作の説明図である。
図3図1に示す制御回路110Bの制御動作の説明図である。
図4図1に示す地絡検出回路106Aの概略構成図である。
図5】比較例の直流電源回路の概略構成図である。
図6】本発明の他の実施例に係る直流電源回路の概略構成図である。
図7】本発明の他の実施例に係る直流電源回路の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0015】
図1に本発明の実施例1による直流電源回路の概略構成図を示す。以下では、一つの主母線盤111に2台の直流電源設備を設けた場合を例に説明するが、複数台設けた場合も同様に動作可能である。図1に示されるように、A系統の直流電源設備は、通常時の受電系となる交流電源101、交流電源喪失時に主母線盤111を介して直流負荷112へ電源喪失することなく直流電源を給電するための蓄電池102A及び蓄電池102Aを通常時浮動充電しながら主母線盤111に直流電源を給電する充電器109Aから構成される。充電器109Aは、入力遮断器104A、交流電源を直流電源に変換し直流負荷112に給電するとともに蓄電池102Aを浮動充電する整流器105A、整流器105Aと主母線盤111を接続する出力遮断器108A、蓄電池保護用遮断器103Aから構成されている。なお、原子力発電所ではモータコントロールセンタが交流電源101に相当する。
【0016】
蓄電池102Aと充電器109Aから構成されるA系統の直流電源設備は、通常非接地系としているため、地絡事故発生時においても設備としては通常運転状態と変化が無い。このため、地絡事故が主母線盤111に接続される直流負荷112の回路で発生し、その後、他回路で再度地絡事故が発生して短絡事故に移行しないように、運転員に対して、当該設備が地絡事故状態にあることを知らせるため、充電器109Aの出力側に、地絡検出回路106Aを設けている。地絡検出回路106Aは、開閉器107Aを介して接地され、充電器109Aは、整流器105A及び出力遮断器108Aからの信号(動作状態)を取り込み開閉器107Aの開閉を制御する制御回路110Aを備えている。
【0017】
また、同様にB系統の直流電源設備は、交流電源101、蓄電池102B及び充電器109Bから構成される。充電器109Bは、入力遮断器104B、整流器105B、蓄電池保護用遮断器103B、地絡検出回路106B、開閉器107B、制御回路110B及び出力遮断器108Bより構成されている。
【0018】
ここで、地絡検出回路106Aの概略構成を図4に示す。地絡検出回路106Aは、正極回路301と負極回路間に10kΩ程度の正極側抵抗303A、負極側抵抗304Aを2組直列接続し、その中間点で中性点305Aをなし、その中性点305Aにリレー306Aと中性点抵抗307Aを設けることで構成される。そして、地絡検出回路106Aの中性点抵抗307Aは開閉器107Aを介して接地される。このような構成で開閉器107Aが閉状態のとき地絡が発生すると、地絡点から開閉器107A及び中性点抵抗307Aを介して地絡電流が流れることによりリレー306Aが動作し地絡発生を検知する。従って、地絡電流は、地絡点の地絡抵抗、中性点抵抗307A及び正極抵抗303A若しくは負極抵抗304Aの抵抗値に依存した電流値となるため、地絡検出感度は、中性点抵抗307A及び正極抵抗303A若しくは負極抵抗304Aの抵抗値に依存することになる。なお、地絡検出回路106Bも同様の構成であるため説明を省略する。
【0019】
ここで、図1に示す本実施例の直流電源回路の比較例を説明する。図5に比較例の直流電源回路を示す。図5では、2台の直流電源設備、A系統の直流電源設備及びB系統の直流電源設備が一つの主母線盤111に接続され、A系及びB系の直流電源設備が並列運転している場合の例を示している。比較例では、図1に示す本実施例における開閉器107A、107B、制御回路110A及び110Bを備えておらず、その他の構成は図1に示す構成と同様である。すなわち、比較例では、地絡検出回路106Aの中性点抵抗307Aは常時接地される構成となっている。この場合、地絡検出回路106A及び106Bは、それぞれ充電器109A、109Bに内蔵され、どちらの地絡検出回路も検出状態にある。ここで、直流負荷112で地絡401が発生した場合、地絡電流は、常時接地された二つの地絡検出回路106A及び106Bへ分流し、それぞれ分流後の地絡電流402及び403が流れる。そのため、直流電源設備1台運転時と比較して、地絡検出回路106A及び106Bを流れる地絡電流は小さくなる。従って、例えば、地絡状態が完全地絡ではなく、不完全地絡のようなケースの場合では、地絡検出回路106Aを流れる分流後の地絡電流402は、地絡検出回路106Aのリレ−306Aの動作領域に至らず、地絡を検出できないケースが発生し得ることになる。同様に、地絡検出回路106Bのリレー306Bにおいても地絡検出できないこととなる。これは、一つの主母線盤111に接続される直流電源設備の並列数が増加するほどその感度が低下することになる。
【0020】
ここで図1に戻り、本実施例の地絡検出回路106Aでは、上述のとおり、中性点305Aに設置したリレー306A、中性点抵抗307Aと接地点間に開閉器107A及び制御回路110Aを設け、充電器109Aの運用状態に応じて開閉器107Aを開閉制御することにより、地絡電流の分流による地絡検出感度の低下を防止可能なインターロック機能が実現される。
【0021】
このインターロック機能を実現するA系、B系それぞれの充電器109A、109Bに設けられた制御回路110A、110Bの制御動作について説明する。以下では、A系統の地絡検出回路106Aの優先度がB系統の地絡検出回路106Bの優先度よりも高く設定された場合を想定し説明する。
【0022】
図2図1に示す制御回路110Aの制御動作の説明図を示す。制御回路110Aは、充電器109Aの出力遮断器108Aの開閉状態及び充電器109Aの運転状態に基づき開閉器107Aを制御する。具体的には、充電器109Aの運転状態202と出力遮断器108Aの閉信号201をAND回路209に入力し、AND回路209による出力が“1”のとき、すなわち、充電器109Aが運転状態にあり、且つ、出力遮断器108Aが閉状態であることが検出されると、開閉器107Aを閉状態とする制御信号を出力する。AND回路209からの出力が“0”の場合、NOT回路208により開閉器107Aを開状態とする制御信号が選択され、開閉器107Aへ出力される。本実施例においては、A系統の地絡検出回路106Aの優先度が高く設定されているため、図2において、開閉器107Aへ閉状態とする制御信号が出力され、地絡検出回路106Aのリレー306Aは、中性点抵抗307A及び開閉器107Aを介して接地され、運用開始状態となる。
【0023】
また、B系統の制御回路110Bの制御動作を図3に示す。制御回路110Bは、出力遮断器108Bの閉信号204と充電器109Bの運転状態205のAND条件を判定するAND回路209、AND回路209の出力を所定時間(例えば、数sec)遅延し出力するタイマ207、タイマ207からの出力と開閉器107Aの開信号203(A系統の地絡検出回路106Aが非運用状態)とのAND条件を判定するAND回路209を有する。また、制御回路110Bは、AND回路の出力が“0”の場合、NOT回路208の出力と開閉器107Aの閉信号206(A系統の地絡検出回路106Aが運用状態)とのOR条件を判定するOR回路210を有している。本実施例では、A系統の地絡検出回路106Aが運転状態にあることから、OR回路210の出力により開閉器107Bを開状態する制御信号が選択され、開閉器107Bへ出力される。これにより、A系統の地絡検出回路106Aが運用状態にあるとき、B系統の地絡検出回路106Bは非運用状態(非接地)となり、インターロック機能が実現される。
【0024】
但し、A系統の直流電源設備が何らかの理由で停止した場合は、開閉器107Aが開放し、AND回路209の出力により開閉器107Bを閉状態とする制御信号が選択され、開閉器107Bへ出力される。これにより、B系統の地絡検出回路107Bのリレー306Bは中性点抵抗307B及び開閉器107Bを介して接地され、運用開始状態に切り替わる。
【0025】
以上のように、いかなる状況においても、A系及びB系の地絡検出回路106A及び106Bのうち何れか一方のみが接地状態となるため、仮に、図5に示すように直流負荷112で地絡401が発生した場合、地絡電流は分流されることなく、運用状態にある1つの地絡検出回路に流れ地絡検出感度の低下を防止することができる。
【0026】
なお、本実施例においては、制御回路110B内にAND回路209の出力を所定時間遅延させるためのタイマ207を設ける構成を例に説明したが、A系及びB系の直流電源設備が並列運転状態にあれば、必ずしもタイマ207を設けなくてもよい。
【0027】
また、本実施例では、2系統の直流電源設備を主母線盤に接続する場合を説明したが、これに限らず、3系統以上複数台の直流電源設備を主母線盤に接続する構成としても同様に地絡検出感度の低下を防止することができる。この場合、例えば、各系統の制御回路の構成を図3に示す構成とし、予め各系統毎に優先度を割り付け、各系統の制御回路が他の系統の優先度も含めて図示しない記憶部に格納するよう構成すればよい。
【0028】
本実施例によれば、複数台の直流電源設備が1つの主母線盤に接続される直流電源回路において、1つの地絡検出回路のみが接地される状態とでき、地絡電流の分流による地絡検出感度の低下を防止できる直流電源回路を実現できる。
【実施例2】
【0029】
図6に本発明の実施例2による直流電源回路の概略構成図を示す。図1と同一の構成要素に同一の符号を付している。実施例1では、各直流電源設備に設けられた制御回路により、各充電器の運転状態及び出力遮断器の開閉状態に基づき、1つの地絡検出回路のみを運用状態とするよう、各開閉器の開閉を自動で行う構成とした。これに対し、本実施例では、地絡検出回路の接地又は非接地状態を手動にて設定可能な地絡検出回路切り離し回路を設けた点が異なる。以下では、実施例1と同様に、A系及びB系2つの直流電源設備を並列に主母線盤に接続する場合を例に説明するが、これに限られず、3系統以上複数台接続する場合にも適用できる。
【0030】
図6に示されるように、本実施例の直流電源回路は、図1に示す開閉器107A及び107Bに替えて、それぞれ、地絡検出回路切り離し回路501A及び501Bを備えている。また、制御回路110A及び110Bは同様の構成であるため、以下では、制御回路110Aについて説明する。
【0031】
制御回路110Aは、図2において説明したように、充電器109Aに設けられた出力遮断器108Aの開閉状態及び充電器109Aの運転状態に基づき、A系統の地絡検出回路106Aの接地又は非接地を切り替える地絡検出回路切り離し回路501Aを開状態または閉状態のいずれとすべきか判定する。制御回路110Aが設けられた充電器109Aは、図示しない充電器盤内に実装され、地絡検出回路切り離し回路501Aの投入を指示入力可能なスイッチ、例えば、押しボタン式、あるいはレバー式等が充電器盤上に設けられている。また、制御回路110Aによる判定結果である地絡検出回路切り離し回路501Aを「閉状態」あるいは「開状態」のいずれかにすべきかを運転員に促す表示部を図示しない充電器盤に備えている。実施例1と同様に、A系統の地絡検出回路106Aの優先度がB系統の地絡検出回路106Bの優先度よりも高く設定されている場合、充電器盤上の表示部には「閉状態」とすべき旨を促す表示がなされ、運転員はこの表示内容を確認し、地絡検出回路切り離し回路501Aの投入をスイッチを介して指示入力することで、地絡検出回路106Aを運用開始状態とできる。
【0032】
また、同様に、B系統の制御回路110Bが設けられた充電器109Bが実装された充電器盤にも表示部及びスイッチが設けられており、地絡検出回路切り離し回路501Aが投入状態(閉状態)のとき、充電器109Bが実装された充電器盤の表示部には、地絡検出回路切り離し回路501Bを「開状態」とすべき旨を促す表示がなされている。制御回路110A及び制御回路110Bによるインターロック機能については、実施例1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0033】
本実施例では、実施例1と比較し運転員による操作が必要となるものの、運転員が直流電源設備の運転状況を把握し確実な操作が可能となる。
【0034】
また、本実施例においても、複数台の直流電源設備が1つの主母線盤に接続される直流電源回路において、1つの地絡検出回路のみが接地される状態とでき、地絡電流の分流による地絡検出感度の低下を防止できる直流電源回路を実現できる。
【実施例3】
【0035】
図7に本発明の実施例3による直流電源回路の概略構成図を示す。図1と同一の構成要素に同一の符号を付している。実施例1では、A系統の地絡検出回路106Aの接地を制御回路110Aにより自動的に開閉器107Aを制御する構成としたが、本実施例では、中央操作室に設置された制御盤602により開閉器107Aを制御する構成とした点が異なる。以下では、実施例1と同様にA系及びB系2つの直流電源設備を並列に主母線盤に接続する場合を例に説明するが、これに限られず、3系統以上複数台接続する場合にも適用できる。
【0036】
図7に示されるように、本実施例の直流電源回路は、遠隔に配置された中央操作室に設置された制御盤602を備え、制御盤602は、制御回路110A及び制御回路110Bと通信可能に接続されている。制御回路110Aは、図2において説明したように、充電器109Aに設けられた出力遮断器108Aの開閉状態及び充電器109Aの運転状態に基づき、A系統の地絡検出回路106Aの接地又は非接地を切り替える開閉器107Aを開状態または閉状態のいずれとすべきか判定する。制御盤602には開閉器107A、107Bの投入を指示入力可能なスイッチ、例えば、押しボタン式、あるいはレバー式等が設けられている。また、制御盤602には、制御回路110Aによる判定結果である開閉器107Aを「閉状態」あるいは「開状態」のいずれにすべきかを運転員に促す表示部(図示せず)が設けられている。実施例1と同様に、A系統の地絡検出回路106Aの優先度がB系統の地絡検出回路106Bの優先度よりも高く設定されている場合、制御盤602の表示部には、制御回路110Aによる判定結果に対応し「閉状態」とすべき旨を促す表示がなされている。中央操作室に常時待機している運転員はこの表示内容を確認し、開閉器107Aの投入をスイッチを介して指示入力することで、地絡検出回路106Aを運用開始状態とできる。このとき、地絡検出回路106Bの開閉器107Bについては、制御回路110Bの判定結果により「開状態」とすべき旨を促す表示がなされている。制御回路110A及び制御回路110Bによるインターロック機能については、実施例1と同様であるため、ここでは省略する。
【0037】
本実施例では、実施例2と比較し、運転員が常時待機する中央操作室にて開閉器107A及び107Bを遠隔にて集中的に制御できる。
【0038】
また、本実施例においても、複数台の直流電源設備が1つの主母線盤に接続される直流電源回路において、1つの地絡検出回路のみが接地される状態とでき、地絡電流の分流による地絡検出感度の低下を防止できる直流電源回路を実現できる。
【0039】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の実施例の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0040】
101・・・交流電源、102A,102B・・・蓄電池、103A,103B・・・蓄電池保護用遮断器、104A,104B・・・入力遮断器、105A,105B・・・整流器、106A,106B・・・地絡検出回路、107A,107B・・・開閉器、108A,108B・・・出力遮断器、109A,109B・・・充電器、110A,110B・・・制御回路、111・・・主母線盤、112・・・直流負荷、207・・・タイマ、208・・・NOT回路、209・・・AND回路、210・・・OR回路、301・・・正極回路、302・・・負極回路、303A・・・正極側抵抗、304A・・・負極側抵抗、305A・・・中性点、306A・・・リレー、307A・・・中性点抵抗、401・・・地絡事故点、402,403・・・分流後の地絡電流、501A,501B・・・地絡検出回路切り離し回路、602・・・制御盤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7