(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6105512
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】自動着陸システムを有する航空機の飛行システム
(51)【国際特許分類】
B64C 13/18 20060101AFI20170316BHJP
B64D 45/04 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
B64C13/18 D
B64D45/04 B
【請求項の数】16
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-82406(P2014-82406)
(22)【出願日】2014年4月14日
(65)【公開番号】特開2014-210575(P2014-210575A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2014年4月14日
(31)【優先権主張番号】13/865,349
(32)【優先日】2013年4月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506388923
【氏名又は名称】ジーイー・アビエイション・システムズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】シェリフ・ファウアド・アリ
【審査官】
前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0305786(US,A1)
【文献】
国際公開第2011/106379(WO,A1)
【文献】
国際公開第2012/158081(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/056795(WO,A2)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0208399(US,A1)
【文献】
特開2002−092799(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0167619(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 13/00 − 13/50
B64D 45/04
G05D 1/10
G08G 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行管制システムに入力する飛行誘導機能及び自動着陸機能を備える自動飛行システムを有する航空機を作動させる方法であって、
設計保証レベル(DAL)B又はBより下位レベルの飛行誘導プログラムから前記飛行管制システムに入力をすることにより前記航空機を飛行させることと、
自動着陸機能についての要求に応じて、前記飛行管制システムに入力をするプログラムを、前記飛行誘導プログラムからDAL A自動着陸プログラムに切替えることと
を含み、
前記DAL A自動着陸プログラムが、前記飛行誘導プログラムから分離したソフトウェア区画内で、前記航空機内のコンピュータのメモリに存在し、
前記切り替えることは、前記飛行誘導プログラムから前記自動着陸プログラムへの通信を終了させて、該自動着陸プログラムと通信する、DAL Aより下位レベルに準拠するプログラムを不存在とし、該自動着陸プログラムの整合性がDAL Aより下位レベルに準拠するプログラムによって損なわれないようにする
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記自動着陸機能が前記飛行管制システムに入力をしたことを示す指示を、前記航空機内の主飛行ディスプレイ上に与えることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記指示を与えることは、前記自動着陸機能を選択したことの指示を与えることを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記飛行誘導プログラムから前記飛行管制システムへのデータ通信を終了しながら、前記飛行管制システムから前記飛行誘導プログラムへのデータ通信を許可することを更に含む、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
主飛行ディスプレイがDAL Aであるとき、前記主飛行ディスプレイから前記自動着陸プログラムへのデータ通信を許可することを更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記主飛行ディスプレイと前記自動着陸プログラム間での双方向通信を許可することを更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
主飛行ディスプレイがDAL Aであるとき、前記主飛行ディスプレイから前記自動着陸プログラムへのデータ通信を許可することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記主飛行ディスプレイと前記自動着陸プログラム間での双方向通信を許可することを更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
複数の操縦翼面を有する、航空機の飛行を制御する為の前記航空機の飛行システムであって、
飛行管制入力を受信し、前記飛行管制入力に応じて前記操縦翼面の作動を制御する飛行管制システムと、
アビオニクスシステムと
を備え、
前記アビオニクスシステムが、
対応するメモリを有する少なくとも1つのコンピュータと、
設計保証レベル(DAL)がB又はBより下位レベルで、前記メモリに保存され、前記航空機の前記飛行を制御する為に前記飛行管制システムについて制御入力をする飛行誘導プログラムと、
DAL Aレベルで、前記飛行誘導プログラムとは別個のソフトウェア区画としての前記メモリに保存され、前記航空機の前記自動着陸を制御する為に前記飛行管制システムについて制御入力をする自動着陸プログラムと、
前記メモリに存在して、前記飛行誘導プログラムと前記自動着陸プログラムのいずれのプログラムが前記制御入力を前記飛行管制システムに与えるかを制御する為の切替えプログラムと
を備え、
前記切替えプログラムによって前記自動着陸プログラムが選択されるとき、前記自動着陸プログラムが、前記飛行誘導プログラムから前記飛行管制システムの制御を担い、該飛行誘導プログラムが、前記自動着陸プログラムへの通信を終了させて、該自動着陸プログラムと通信する、DAL Aより下位レベルに準拠するプログラムを不存在とし、該自動着陸プログラムの整合性がDAL Aより下位レベルに準拠するプログラムによって損なわれないようにする
ことを特徴とする、飛行システム。
【請求項10】
前記対応するメモリは複数のメモリデバイスを備える、請求項9に記載の飛行システム。
【請求項11】
前記飛行誘導プログラムが前記複数のメモリデバイスのうちの1つに存在し、前記自動着陸プログラムが前記複数のメモリデバイスのうちの別の1つに存在する、請求項10に記載の飛行システム。
【請求項12】
対応するメモリを有する前記少なくとも1つのコンピュータは、対応するメモリを有する複数のコンピュータを備える、請求項9乃至11のいずれか1項に記載の飛行システム。
【請求項13】
前記飛行誘導プログラムが前記複数のコンピュータのうちの1つコンピュータの前記対応するメモリに存在し、前記自動着陸プログラムが前記複数のコンピュータのうちの別の1つのコンピュータの対応するメモリに存在する、請求項12に記載の飛行システム。
【請求項14】
DAL Aレベルであり、前記自動着陸プログラムと通信を行う主飛行ディスプレイ(PFD)を更に備える、請求項9乃至13のいずれか1項に記載の飛行システム。
【請求項15】
前記PFDは前記自動着陸プログラムと双方向通信をする、請求項14に記載の飛行システム。
【請求項16】
前記アビオニクスシステムは、前記自動着陸プログラムが前記切替プログラムによって選択されるとき、前記自動着陸プログラムと通信を行わない複数の非DAL Aシステムを備える、請求項9乃至15のいずれか1項に記載の飛行システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動飛行システムを有する航空機を作動させる方法および飛行システムに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機製造において、自動着陸システムは、航空機飛行の着陸フェーズを、人間の乗組員がそのプロセスを監督する状態で、完全に自動化する。外部刺激に応答して、自動着陸システムは主に、可視性が悪く、穏やかな又は定常風の状態で作動する。
【0003】
通常の自動着陸システムは、ローカライザー信号とグライドスロープ信号を受信する為に、グライドスロープ受信機と、ローカライザー受信機と、おそらくGPS受信機も一体化された計器着陸システム(ILS)無線機からなる。この無線機からの出力は、中心からの「偏差」であり、その出力は飛行管制用コンピュータに与えられて、航空機がローカライザー及びグライドスロープを中心にして維持されるように飛行管制システム及び航空機操縦翼面を指向させる。また飛行管制システムは、適切な進入速度を維持するようスロットルを制御する。航空機のホイールダウン後、自動着陸システムは、自動ブレーキシステムと連動して自動制動を行い完全停止させてもよく、またスポイラと逆推力装置の自動配備を行う場合もある。
【0004】
航空機の自動着陸は、航空機が滑走路(ランディングボックス)上の指定領域に非常に高確率で安全に着陸することを確実にする為に厳重な規制が適用されている。それらの規制に準拠していると実証することは、シミュレーション、飛行試験、統計及び解析を含む非常にコストのかかるプロセスである。安全な着陸に失敗すると壊滅的な結果をもたらすので、関連のシステムは最も厳格な設計保証レベル(DAL)である「DAL A」に全面的に適応しなければならない。
【発明の概要】
【0005】
一態様によれば、飛行管制システムに入力する飛行誘導機能及び自動着陸機能を備える自動飛行システムを有する航空機を作動させる方法であって、方法は、設計保証レベル(DAL)B又はBより下位レベルの飛行誘導プログラムから飛行管制システムに入力をすることにより航空機を飛行させることと、自動着陸機能についての要求に応じて、飛行管制システムに入力をする為に、飛行誘導プログラムからDAL A自動着陸プログラムに切替えることとを含む。DAL A自動着陸プログラムが、飛行誘導プログラムから分離したソフトウェア区画内で、航空機内のコンピュータのメモリに存在する。
【0006】
別の態様によれば、複数の操縦翼面を有する、航空機の飛行を制御する為の航空機の飛行システムであって、飛行システムは、飛行管制入力を受信し、飛行管制入力に応じて操縦翼面の作動を制御する飛行管制システムと、アビオニクスシステムとを備える。アビオニクスシステムが、対応するメモリを有する少なくとも1つのコンピュータと、設計保証レベル(DAL)がB又はBより下位レベルで、メモリに保存され、航空機の飛行を制御する為に飛行管制システムについて制御入力をする飛行誘導プログラムと、DAL Aレベルで、飛行誘導プログラムとは別個のソフトウェア区画としてのメモリに保存され、航空機の自動着陸を制御する為に飛行管制システムについて制御入力をする自動着陸プログラムと、メモリに存在して、飛行誘導プログラムと自動着陸プログラムのいずれのプログラムが制御入力を飛行管制システムに与えるかを制御する為の切替えプログラムとを備える。切替えプログラムによって自動着陸プログラムが選択されるとき、自動着陸プログラムが、飛行誘導プログラムから飛行管制システムの制御を担う。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる自動飛行システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態は、自動着陸システムを用いるあらゆる航空機環境で実施されるが、現在、航空機の一つのソフトウェア区画で実施するように意図されており、そのソフトウェア区画において、民間航空機などにおける自動着陸システムが設計保証レベル(DAL)の高レベルであると認証される。よって、意図するシステム環境の概要が、より完全な理解への助けとなるはずである。
【0009】
現行の航空機は、航空機の個々の機能又はシステムとしての機能を実行する為にアビオニクスシステムを搭載する。これらの電子システムとしては、例えば、通信システム、航法システム、複数システムを表示及び管理するシステム、衝突防止システム、気象レーダシステム、更には、健全性及び使用法監視システムが挙げられる。
【0010】
ある特定のアビオニクスシステムとして、飛行管制システム(FCS)があるが、これは飛行操縦翼面、コックピット制御、エンジン制御及び飛行時の航空機の方向制御に必要な作動機構からなるシステムである。このシステムによって、パイロット又は別のアビオニクスシステムは、航空機の操縦翼面又はエンジンの推力発生を作動させることでローリング、ピッチング、ヨーイング及び対気速度を制御することができる。飛行管制システムは、機械的、油圧−機械式、又はトランスミッション関係電子制御信号により、コックピットから操縦翼面及びエンジンまでの必要なリンケージをとり、本実施形態で特に注目する「フライ・バイ・ワイヤ」システム内でコンピュータを制御すればよい。フライ・バイ・ワイヤシステムでは、主飛行管制用コンピュータが、パイロット又は飛行システムからの入力に基づき操縦翼面を制御する。
【0011】
飛行管制システムを含む様々なアビオニクスシステムを表示する為のこのようなインタフェースの一つが、コックピット内に位置する主飛行ディスプレイ(PFD)である。多くのディスプレイ同様、PFDはLCD又はCRTディスプレイデバイスを中心にして構築される。加えて、PFDは、大気圧及び気圧計の測定値を用いて、高度、対気速度、垂直速度及びその他の測定を高精度に行う為にその他のアビオニクスシステムを利用する。エアデータコンピュータが、その情報を解析して、読み取り可能な形態で解析情報をパイロットに表示する。
【0012】
別のアビオニクスシステムとして、飛行管理システム(FMS)がある。FMSは、飛行計画、飛行経路の生成、中継空港に関連する速度プロファイル及びその他の飛行計画アスペクトを含む。しかし、FMSには、飛行経路又は速度の指令を実行する為に必要なシステムが含まれていない。飛行経路又は速度の指令は、主に、パイロットの手動制御により、又は更に別のアビオニクスシステムである飛行誘導システム(FGS)とインタフェースをとることによって実行される。
【0013】
FGSは主に、航空機の基本制御及び戦術的誘導において運行乗員を支援する為のものである。また、FGSは、パイロットの作業負荷を軽減するものであり、短縮垂直間隔(RVSM)又は航法精度要件(RNP)などの特定の作動要件を支援する為に、より高精度に飛行経路で飛行を行う手段を与える。FGSが作動中、FMSは自動航法及び速度制御の為の誘導指令を与える。実施形態によっては、FGSが自動飛行システムのコンポーネントを含む場合がある。
【0014】
パイロットからの支援なく飛行体を誘導する為に、自動飛行又は自動操縦システムが用いられる。自動操縦システムは、搭載無線航法システム及びその他の計器からの入力を受信して、例えば、パイロットが注意を払うことなく、航空機が羅針航路上を直線かつ水平に飛行することを可能にする。現行の自動操縦システムでは、航空機制御の為にコンピュータソフトウェアを利用している。ソフトウェアは、航空機の現在位置を読み取り、その後、航空機を誘導するように飛行管制システムに指令を与える。現行の複雑な航空機内の自動操縦システムは、飛行を、概して、離陸、上昇、巡航(水平飛行)、降下、進入及び着陸のフェーズに分類している。
【0015】
自動操縦システムの下位区画である、滑走路への制御着陸は「自動着陸」として知られている。自動着陸システムは、航空機飛行の着陸フェーズを、人間の乗組員がそのプロセスを監督する状態で、完全に自動化する。外部刺激に応答して、自動着陸システムは主に、可視性が悪く、穏やかな又は定常風の状態で作動する。
【0016】
通常の自動着陸システムは、ローカライザー信号とグライドスロープ信号を受信する為に、グライドスロープ受信機と、ローカライザー受信機と、おそらくGPS受信機も一体化された計器着陸用システム(ILS)無線機からなる。この無線機からの出力は、中心からの「偏差」であり、その出力は飛行管制用コンピュータに与えられて、航空機がローカライザー及びグライドスロープを中心にして維持されるように航空機操縦翼面を制御し、適切な進入速度を維持するようスロットルを制御する。航空機のホイールダウン後、自動着陸システムは、自動ブレーキシステムと連動して自動制動を行い完全停止させてもよく、またスポイラと逆推力装置の自動配備を行う場合もある。
【0017】
自動飛行及び自動着陸を含む現行の多数のアビオニクスシステムは、主にソフトウェア内に置かれているので、特別なソフトウェア認証要件が必要となる。機上アビオニクスシステム内で用いられるソフトウェアの安全性については、連邦航空局(FAA)文書DO−178B、「航空システムと機器認証でのソフトウェアに関する考慮事項」が適用され、指導される。この文書は、所与のソフトウェアが機上環境で信頼のおける形で作動するかどうかを判定する為の指針として用いられる。「設計保証レベル(DAL)」としても知られるソフトウェアレベルは、その特定のシステムにおいて故障状態が与える影響を検査することによる安全性評価プロセス及び危険解析から判定される。故障状態は、航空機、乗組員及び乗客への影響に基づきAからEの降順で分類される。以下の説明において、DAL A準拠は、DAL B、C、D及びE準拠より「高位」又は「上位」であるとみなされ、DAL B又はDAL C準拠は、DAL A準拠より「下方」又は「下位」であるとみなされる。表1は、DALレベル、故障状態及び故障が航空機へ与える影響を示すものである。
【0018】
【表1】
DO−178B単独では、ソフトウェア安全性に関するアスペクトを保証することを意図していない。設計の安全性関連特性であって機能として実行されるような特性は、明示された安全性要件を満たす客観的なエビデンスを押し進め、証明する為にも、更に追加の強制的システム安全性に関するタスクを課されなければならない。これらのソフトウェア安全性についてのタスク及びアーティファクトは、システム安全性評価(SSA)において文書化されるべき危険性の重大度及びDAL判定の為のプロセスの中の一体的な補助的部分である。DALレベルA−Eを確立する為のこれらの包括的解析方法を用いて正確なDALを確立しなければならないことが、認証当局によって要求され、DO−178Bで規定されている。ソフトウェア安全性解析こそが、システム安全性評価を推進するものであり、システム安全性評価が、DO−178Bにおける適切な厳密度レベルを推進する為のDALを判定する。更に、様々なDALレベルを持つアビオニクスシステム間の相互作用においては、認証された操作には確実に有効性があることを示す為に、データと演算の一体的保護機能を組み込まなければならない。従って、DO−178Bの中心テーマは、必須の安全性要件が確立された後の、設計を保証し、検証することである。
【0019】
多種多様なDAL準拠のソフトウェアプログラムが、少なくとも1つのコンピュータシステムに存在し、各コンピュータシステムはプログラム保存用の1つ又は複数の対応メモリデバイスを有している。準拠するDALレベルが異なる、複数のDAL準拠ソフトウェアプログラムは、単一のメモリデバイス、複数のコンピュータにわたる複数のメモリデバイス、もしくは、1つ又は複数のメモリデバイス内のそれぞれ別のソフトウェア区画に存在させ、より高レベルのDAL準拠ソフトウェアの整合性が下位レベルのDALソフトウェアによって損なわれないようにしてもよい。この意味で、単一のハードウェアモジュール又はコンピュータシステムが複数の論理部に分割され、その他いずれの分割アビオニクスシステムにも損害を与えることなく、各部があるアビオニクスシステムについて所与のタスクを同時に完了することが可能なとき、ソフトウェア分割が発生する。各ソフトウェア区画は個々にDAL認証を受ける。
【0020】
それらの規制に準拠していると実証することは、シミュレーション、飛行試験、統計及び解析を含む非常にコストのかかるプロセスである。多くの場合、DAL Aレベルに準拠するシステムの開発は、DAL B又はCレベルに準拠するシステムの開発と比較して、著しく、はるかにコストがかかり、資源集約的である。例えば、DAL Aレベルに準拠する飛行誘導システムの開発コストは、DAL B又はCレベルに準拠する飛行誘導システムの開発コストの3倍高いと推定される。こうして、DALレベルが高くなるにつれ、DO−178B準拠ソフトウェアの開発コストは上昇する。安全な着陸に失敗すると壊滅的な結果をもたらすので、関連のシステムは最も厳格な準拠レベルである「DAL A」に全面的に適応しなければならない。
【0021】
図1に示すように、自動飛行システム10は、飛行モード報知システム14を有する主飛行ディスプレイ(PFD)12と、飛行誘導システム(FGS)16と、飛行管理システム(FMS)18を備える。各PFD12、FGS16及びFMS18は、物理的コンポーネントを含む場合であっても、ソフトウェアコンポーネントとして表される。ソフトウェアコンポーネントについての物理的コンポーネントの一例としては、GE B787共通コアシステムなどの特殊用途コンピュータデバイスが挙げられる。飛行モード報知システム14は、パイロットに対して特定の動作の指示又は報知をする為に用いられる。PFD12は、パイロットに対して特定の操作又は機能を指示する照明又はディスプレイコンポーネントなどの指示要素を更に組み込んでいてもよい。例えば、PFD12は、自動着陸機能が選択される、選択された、又は作動すると点灯するような少なくとも1つのLEDを有していてもよい。自動着陸及びその他のシステム動作を指示する方法を更に考察する。
【0022】
PFD12は、PFD12とFGS16間で双方向通信が可能なようにFGS16とインタフェースをとる。同様に、FGS16は、FGS16とFMS18間で双方向通信が可能なようにFMS18とインタフェースをとる。本実施形態において、PFD12はDAL A準拠であり、FGS16とFMS18はいずれもDAL Aより下位レベルに準拠する。例えば、FGS16はDAL B準拠であってよく、一方FMS18はDAL C準拠であってよい。
【0023】
自動飛行システム10は更に、自動着陸コントローラ22と、モニタ24などの検知コンポーネントと、スイッチ26を有する自動着陸システム20を備える。自動着陸コントローラ22は更に、航空機着陸の自動誘導を操作する為に必要なコンポーネント及びプログラムを含む。モニタ24は、予め定義されたトリガーイベントを検知する為に航空機センサ又はシステムをポーリングするよう構成されている。あるトリガーイベントが検知されると、モニタ24はスイッチ26を作動してもよい。スイッチ26は、電気接続を物理的に結合及び分離するデバイス、或いは、特定の信号をそのデバイスに伝えることができる電子スイッチであってもよい。
【0024】
自動着陸システム20は更に、FGS16をスイッチ26に結合する双方向パススルーカップリング28、自動着陸コントローラ22をスイッチ26に結合する双方向自動着陸カップリング30、及びスイッチ26の出力にある自動着陸システム出力32を備える。自動着陸システム20は、自動着陸機能が無効なとき、又は有効であるがまだ作動可能ではないとき、スイッチ26が第1の位置にあり、FGS16を、自動着陸システム20のパススルーカップリング28とスイッチ26を介して自動着陸システム出力32に接続することができるように構成される。このように、自動着陸システム20は、更に別の処理を行うことなく、FGS16から自動着陸システム出力32への双方向データ通信を可能とする。
【0025】
自動着陸システム20は更に、自動着陸機能が有効であり作動可能なとき、スイッチ26が第2の位置にあり、自動着陸コントローラ22を、自動着陸カップリング30とスイッチ26を介して自動着陸システム出力32に接続することができるように構成される。このように、自動着陸システム20は、自動着陸コントローラ22から自動着陸システム出力32への双方向データ通信を可能として、FGS16から自動着陸システム出力32へのデータ通信を終了させる。この構成では、自動着陸システム20は、PFD12と自動着陸コントローラ22間の双方向通信もまた可能にする。
【0026】
自動飛行システム10は、また更に、FGS16又は自動着陸コントローラ22のいずれか一方との双方向データ通信を行う為に、自動着陸システム出力32に結合された飛行管制システム(FCS)34を備える。
【0027】
航空機の作動中、DAL B又はDAL Bより下位レベルに準拠するFGS16を有する自動飛行システム10により飛行が実行される。この間、自動着陸機能が無効であり、よって、スイッチ26は第1の位置にある。その結果、FGS16は、自動着陸システム20のパススルーカップリング28を用いてFCS34を制御する。このモードでは、自動着陸システム20の作動を示す指示要素がPFD12上にない。加えて、飛行モード報知システム14は、報知をしていない、又は自動着陸機能についての報知をしていない。
【0028】
その後、パイロットが、PFD12、DAL A準拠環境、又はボタンなどの別のインタフェースを介して自動着陸機能を要求する。PFD12は、FCS34の制御を担う自動着陸システム20に備えて、DAL A準拠環境下で、自動着陸システム20のモニタ24及び自動着陸コントローラ22と双方向通信を行う。また、PFD12は、PFD12のDAL Aレベル整合性を保ちながら、FGS16と双方向通信を行うので、PFD12は航空機動作状態をチェックして、自動着陸システム20は自動着陸が実行可能かどうかを判定する。この意味で、自動着陸機能は有効であるが、まだ作動可能ではない。
【0029】
状態チェックの結果が「イエス(yes)」の場合、FGS16は進入ベクトルを開始する為の指針及び着陸速度を修正する。この間、FGS16のFCS34への制御は継続している。このモードでは、自動着陸システム20が有効であることを示すが、自動着陸システムが航空機を制御していることを示さない指示要素がPFD12上にあってもよい。また、飛行モード報知システム14が同一の指示の報知をしていることがある。
【0030】
次に、モニタ24は、トリガー状態についての測定を開始して、FCS34に対する制御を自動着陸コントローラ22による制御に切替える。一旦航空機が規定高度より低い高度で飛行しているなどのトリガー状態をモニタ24が測定すれば、モニタ24はスイッチ26を第2の位置に指向させ、FGS16によるFCS34への制御を終了して、自動着陸コントローラ22によるFCS34への制御を有効にする。この期間中、自動着陸システム20と通信する、DAL A準拠より下位レベルに準拠するアビオニクスシステムが存在しない。このモードでは、自動着陸機能が有効で、作動可能で、航空機を制御することを示す指示要素がPFD12上にあればよい。また、飛行モード報知システム14が、同一の指示を報知しているものであってもよい。DAL A準拠の自動着陸システム20は、飛行機が安全に着陸するまでFCS34を監督する。
【0031】
自動着陸機能を実行中、FGS16がFCS34を制御していない場合であっても、FGS16はいまだ作動可能であるので、仮にパイロットが自動着陸機能を中断、又は自動着陸システム20が自動着陸機能を継続できなくなったとしても、スイッチ26はその位置を第1の位置に再び切替え、FGS16が再びFCS34の制御を担う。
【0032】
上記図面で示した実施形態に加えて、本発明の開示によりその他多くの考え得る実施形態及び構成が意図されている。例えば、スイッチ26が第2の位置にある間、FGS16から自動着陸システム出力32への方向のデータ通信だけを無効にする構成が想定される。この構成において、自動着陸システム20が作動中、FCS34からFGS16への方向のデータ通信は引き続き許可されている。別の例としては、スイッチ26が第2の位置にある時のみという場合とは対照的に、自動着陸コントローラ22が常にPFD12と双方向データ通信を行う構成が挙げられる。別の実施形態では、DAL B又はC準拠のPFD12を備え、PFD12と自動着陸システム20間のいかなるデータ通信も自動着陸システム20からPFD12までの一方向通信である、又は、DAL Aデータとソフトウェアの整合性を維持する為に、自動着陸機能が作動可能である間、PFD12は自動着陸システム20ともはや通信しないよう構成されている。本発明の開示から期待される更に別の例としては、上記のソフトウェア区画ではなく、1つ又は複数のアビオニクスシステムについて別個の物理的コンピュータモジュールなどのハードウェア区画を設ける構成が挙げられる。
【0033】
本明細書において開示する実施形態によれば、DAL A準拠のシステムで自動着陸機能を与える為の航空機の飛行システム及びそのような作動方法が提供される。上記実施形態で実現される効果の1つとして、上述の実施形態は自動着陸システムソフトウェアモジュールのDAL A認証を可能にして、ソフトウェアモジュールを単一のハードウェアモジュール内に、別のDAL A認証ソフトウェアモジュールを用いることなく、ソフトウェア区画によって区切って組み合わせるようにしてもよいという技術的な効果がある。よって、個々のハードウェアモジュール数を減らし、その結果、重量を軽減し空間要件が少なくなる。また、自動着陸システムはDAL A認証されてもよく、DAL Aと自動着陸システムとの整合性を引き続き与えながら、自動飛行及び飛行管理システムをすべて、より高位基準のDAL Aレベルにアップグレードする必要がない。通常、自動飛行システム又は飛行管理システム全体をアップグレードする場合、多数であるがすべての動作モードにわたって、DAL A基準の検証を実行することが含まれる。すべての動作モードをDAL A基準にすると、開発コストが上昇する。
【0034】
従って、DAL A基準が厳格になるにつれ利用可能なシステムが減るので、FAA及びDO−178Bに基づく認証及び検証にかかる時間とコストが削減される。よって、上記実施形態によれば、時間及びコスト要件が減少し、結果的に競争力の点で効果が得られることとなる。
【0035】
本明細書は、本発明を開示することを目的とした最適な態様を含む例を使用して、また任意のデバイス又はシステムを作製し利用すること、並びに任意の採用された方法を実行することを含め、当業者が本発明を実施することができるようにするものである。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって定義されており、当業者が想到する他の例を含むことができる。このような他の例は、それらが特許請求の範囲の文字通りの言い回しと相違ない構造上の要素を含む場合、或いはそれらが特許請求の範囲の文字通りの言い回しとわずかな相違点を有する等価な構造上の要素を含む場合、特許請求の範囲の範囲内にあることが意図されている。
【符号の説明】
【0036】
10 自動飛行システム
12 主飛行ディスプレイ(PFD)
14 飛行モード報知システム
16 飛行誘導システム(FGS)
18 飛行管理システム(FMS)
20 自動着陸システム
22 自動着陸コントローラ
24 モニタ
26 スイッチ
28 パススルーカップリング
30 自動着陸カップリング
32 自動着陸システム出力
34 飛行管制システム(FCS)