【実施例】
【0056】
新鮮なマウス受精卵の速いイメージングと、粒子画像速度測定法に基づく高度画像分析とを組み合わせるこにより、受精は、精子頭部の上に形成される突起の拍動と一致する周期的な細胞質内運動を誘導することが明らかになる。我々は、これらの運動は、受精により誘導されたCa
2+振動によって誘発されたアクトミオシン細胞骨格の収縮によって引き起こされることを見出した。最も重要なことに、このように運動と卵活性化現象とが関係していることにより、接合体がうまく発生するかどうかを予測するのにこのような運動を単独で使用することが可能になる。この方法は、体外受精した卵の生命力を予測するための、最も初期の最も速い非侵襲的な方法を提供するものであり、従って、IVF治療の可能性を大いに改善することもできる。
【0057】
方法
卵および精子の回収
F1(C57Bl6×CBA)マウスの雌を過排卵させ、卵母細胞および接合体を上述したようにして
44回収した。単為生殖的活性化は、Ca
2+/Mg
2+を含まず10mMSrCl
2が補充されたM2培地中で卵を4時間インキュベートすることにより行われた。卵核胞(GV)期卵母細胞を卵巣から単離して150μg/mlジブチリル環状AMP(dbcAMP)が補充されたM2培地に入れた。精巣上体精子をF1の雄から単離し、4mg/mlのBSAを含む受精用培地0.5ml中で受精できるようにした
45。すでに述べられたようにして
44、KSOM培地中で胚を画像化した。イメージング前のいくつかの実験で、胚を、30μMのBAPTA−AM(Ca
2+をキレート化するため)、5μg/mlノコダゾール(微小管を脱重合するため)、2μg/mlサイトカラシンD(F−アクチンを脱重合するため)、10μMタキソール(微小管を安定化させるため)または100nMジャスプラキノリド(F−アクチンを安定化させるため)と共に20分プレインキュベートし、続いて純粋なKSOM(BAPTA処理した胚)または各薬物を含むKSOM(上記処理した胚の残り)に移した。(ミオシン軽鎖キナーゼ(MLCK)を阻害して、ミオシンIIを活性化するために
46)ML−7で処理された胚を、25μMML−7と共に20分プレインキュベートし、続いて、25μMのML−7含有KSOMを含む培養皿中で、ML−7を吸収すると予想されるミネラルオイルで覆わないで画像化した。
【0058】
細胞質内運動のイメージングおよび相互相関の解析
ほとんどの実験で、倒立共焦点顕微鏡(ツァイス(Zeiss)のLSM510メタ(Meta))下で、37.5℃および5%CO
2で、接合体を単一面で画像化した。633nmのHeNeレーザーを用いてDIC画像を10秒毎に捕捉した。遊離Ca
2+イオン濃度を測定するために、胚を、5μMのFuraRed−AM(インビトロジェン(Invitrogen))およびFuraRed中で20分プレインキュベートし、DIC画像を488nmのアルゴンレーザーで同時に得た。細胞質内運動と胚の発生能との相関を試験した実験において、接合体を単一面で、透過光中で、標準的な非共焦点顕微鏡(ツァイスのアキシオバート(Axiovert)またはデルタビジョン(Deltavision))で、10秒毎に2.5時間、画像化した。接合体の皮質および中央部分における細胞質内運動を比較した実験において、胚を、デルタビジョン顕微鏡で、11面で、6μm毎に、10秒毎に3時間、画像化した。表7に、用いられた全てのイメージングシステムの光学的な詳細を要約した。FuraRed蛍光の強度を、イメージJ(ImageJ)ソフトウェアを用いて測定した。MatPIV v1.6.1から適用したアルゴリズムを用いたMATLAB(マスワークス社(The Mathworks Inc.)、米国マサチューセッツ州ナティック)で特注のソフトウェアを用いて画像を解析した
47。アルゴリズムは、連続的な画像対間の相互関係を示す画像のサブ領域に関連する、流体動力学で広く用いられている標準的な解析技術のPIVで用いられるアルゴリズムをベースとする
21〜24。PIV解析において、各画像を四角の検査領域に分け、相互相関係数分布を、順に並んだ次の画像のそれより大きい領域内で計算した。相互相関係数分布のピークから、第一の画像における検査領域の材料の第二の画像における最も可能性が高い配置が得られた。次にこれを用いて、画像間の時間にわたる変位ベクトルを計算した(
図1A)。多くのピクセルにわたりピクセル領域のコントラストパターンの変位が測定されるため、この技術を用いてサブピクセルの運動を正確に測定することが可能である
22、24、48。
【0059】
粒子画像速度測定法(PIV)解析
MatPIV v1.6.150から適合させたアルゴリズムを用いたMATLAB(マスワークス社、米国マサチューセッツ州ナティック)で特注のソフトウェアを用いて、受精卵のDIC画像を解析した。このアルゴリズムは、相互関係を示す連続的な画像対間のサブ領域に基づくパターン整合技術の使用に関連する標準的な解析技術であるPIVで用いられるアルゴリズムをベースとする(本文における方法および
図1aを参照)。解析されたそれぞれの検査領域に関する変位を計算するために、続いて繰り返し2回のPIVを用いた。第一のより大きい検査領域の変位を計算し、続いてそれを、より小さい検査領域での次の反復のための探索領域の中心をどこにするかの推測値として用いた。アルゴリズムが最良のフィッティングを探す領域は、検査領域それ自身より2倍大きかった。
図1aにおいて、この図は、PIVアルゴリズムの1回の反復を示す。ツァイスのLSM510メタ共焦点顕微鏡で行われた実験では、第一の反復に64×64ピクセルの最初の検査領域サイズを用い、続いて第二の反復に32×32ピクセルの検査領域を用いた。このイメージングシステムのピクセルサイズは、0.35μmであった。ツァイスのアキシオバートおよびデルタビジョン顕微鏡で行われたより大きいピクセルサイズ(それぞれ0.64および0.83μm)での実験について、第一の反復に、32×32ピクセルの最初の検査領域サイズを用い、続いて第二の反復に、16×16ピクセルの検査領域を用いた。各細胞の中心における11×11ベクトルの正方形の平均振幅をとることにより、細胞質内運動の平均速度を計算した。
【0060】
PIVを使用して、速度ピーク間の期間で観察されるような極めて小さい(サブピクセルレベルの)変位を測定することの精度の試験は、より高い倍率(252倍、すなわち対物の倍率が63倍であり、デジタル倍率が4倍である)でとられた卵の画像を用いて、画像を人工的にシフトさせ、続いて実験で用いられるのと同じレベルに(14倍、すなわち対物の倍率が20倍であり、デジタル倍率が0.7倍である)倍率および画像解像度を低くすることによってなされた。続いてPIVを用いてシフトを測定した。エラーは、およそ0.3ピクセル未満の変位に関しては、変位にほぼ直線的に比例しており(
図14)、これは、実験的に測定された基底運動の範囲のほとんどを含むことが見出された。これは、小さい変位を測定する場合のPIV精度を調べた他の研究と一致する
24、26,51。基底運動の順の変位(ツァイスのLSM510メタで0.1〜0.3ピクセル/フレームまたは3.5〜10.6nm/秒、ツァイスのアキシオバートで6.4〜19.2nm/秒、およびデルタビジョンで8.3〜24.9nm/秒)は、−18.1%〜−15.5%のエラーを示した(
図14)。比較目的でPIV測定が用いられるため、これらのシステム上の過小評価は、結果またはそれらの解釈にほとんど影響しなかった。
【0061】
細胞質内速度および運動方向の解析
細胞質内速度における振動の変化を示した接合体において、平均基底速度は、事後運動の最後とそれに続く速度ピークの開始時との間のインターバルで、または最後の事後運動の後の期間に測定された(
図1D)。速度の振動を提示しなかった接合体について、平均基底速度は全ての記録期間で計算された。ほとんどの場合、細胞質内運動の方向は、接合体でPIVによって生じた全てのベクトルの平均ベクトルに基づいて評価された。いくつかの接合体において、ベクトルは一対の渦流を形成し、続いてその方向に沿って共通の軸が形成された。極めて不規則なベクトルパターンの方向は、高い規則性を有するベクトルの大半の方向から、視覚的に評価した。
【0062】
卵細胞質内精子注入法
ライカ(Leica)の微調整装置およびライカの倒立顕微鏡を用いて、これまでに述べられたようにしてICSIを行った
49。いくつかの実験で、新たに単離した精子の代わりに熱不活化した精子(60℃で30分)を用いた。精子懸濁液を10%ポリビニルピロリドン(PVP、Mr=360kDa)を含むM2培地と混合した。圧電マイクロピペット駆動ユニット(IntraCel PMAS-CT150、プライムテック(PrimeTech)、日本)を用いて精子を卵母細胞のサイトゾルに送達した。
【0063】
体外受精および胚移植
細胞質内運動と胚の発生能との相関を試験するために、10μlの受精能のある精子の懸濁液を卵丘細胞で取り囲まれた卵に添加し、続いて配偶子と共に2時間インキュベートした。阻害剤の特異性を試験する実験、またはアクチンおよびミオシンの生きた状態のイメージングを含む実験では、受精前に、卵を酸性タイロード溶液(pH=2.5)で短時間で処理して透明帯を除去し、続いておよそ1μlの受精能のある精子の懸濁液と混合して、一緒に30分インキュベートした。いずれのケースにおいても、受精は、4mg/mlのBSAが補充された受精用培地中で行われた
45。2細胞期の胚を、精管切除した雄と交配したレシピエントのF1の雌の卵管に0.5dpcで移した。これらを6.5dpcまたは19.5dpcに解剖した。
【0064】
アクチンフィラメントおよびミオシンIIの生きた状態のイメージング
EGFPに融合したユートロフィンのアクチン結合ドメイン(UtrCH−EGFP
26)、GFPに融合したミオシンII調節軽鎖(MyoRLC−GFP
27)、およびRFPでタグ付けされたタンパク質マーカーGap43をコードするコンストラクト
50を、pBluescriptRN3Pベクターにクローニングし、mメッセージmマシーン(mMessage mMachine)T3キット(アンビオン(Ambion))を用いてT3プロモーターからmRNAを合成した。mRNA(ピペット濃度は、UtrCH−EGFPおよびMyoRLC−GFPの場合、0.5μg/μlであり、Gap43−RFPの場合は、0.36μg/μlである)を、GV卵母細胞に注入し、続いてこれを150μg/mlのdbcAMPを含むM2中でおよそ5時間培養し、続いて洗浄し、M16培地に移して成熟させた。16時間後にMII期に達した卵母細胞を体外受精用に選択し、続いて倒立型回転円盤共焦点顕微鏡(ツァイス)で10〜15秒毎に画像化した。UtrCH−EGFP、MyoRLC−GFP、およびGap43−RFPの蛍光強度を、イメージJソフトウェアを用いてFC皮質および細胞質中で測定した。皮質のUtrCH−EGFP、MyoRLC−GFP、およびGap43−RFPについて得られた値を細胞質について得られたそれぞれの強度で標準化して、例えばレーザーパワーの変動などのイメージングにおけるアーティファクトによって引き起こされるあらゆる強度変化を除去した。続いて最終結果を、強度を標準化したUtrCH−EGFPとGap43−RFPとの比率またはMyoRLC−GFPとGap43−RFPとの比率として示して、焦点のシフトによって引き起こされるあらゆる強度変化を除去した。
【0065】
免疫染色
以前に説明された通りにして、胚を4%PFA中で固定し、透過化した
44。倒立共焦点顕微鏡(ツァイスのLSM510メタ)を用いて胚をスキャンした。
【0066】
より詳細には、胚を4%PFA中で固定し(30分、室温または4℃で一晩)、0.2〜0.5%トリトン(Triton)−X100で透過化し(30分、室温)、3%BSAまたは10%FCSでブロックした。その後、これらを以下の抗体および色素で染色した:
1)FITCで標識したマウス抗チューブリンβ抗体(シグマ−アルドリッチ(Sigma-Aldrich);3%BSAで1:50に希釈、室温で1.5時間);
2)マウス抗アクチンベータ抗体(シグマ−アルドリッチ;3%BSAで1:100に希釈、室温で1.5時間)
3)ヤギ抗Gata4一次抗体(サンタクルーズ(Santa Cruz);10%FCSで1:200、4℃で一晩)、続いてアレクサフルオロ(Alexafluor)568で標識した二次抗体(モレキュラープローブス;10%FCSで1:1000、室温で1.5時間);
4)テキサスレッド(TexasRed)またはオレゴングリーン(OregonGreen)で標識したファロイジン(インビトロジェン(Invitrogen);1:100、室温で30分、または4℃で一晩);
5)ヘキスト(Hoechst)33342(モレキュラープローブス(Molecular Probes);PBS中で100ng/μl、室温で30分、または4℃で一晩)。
【0067】
倒立共焦点顕微鏡(ツァイスのLSM510メタ)を用いて胚をスキャンした。
統計的分析
スチューデントのt検定、カイ二乗検定または適切な回帰モデルのいずれかを用いて統計的分析を行った。行われた実験の連続的な性質および我々が取り組もうとしている質問のアプリオリな性質のために、我々は、統計的有意性を5%レベルで評価した。平均基底速度または速度ピーク間平均インターバルと、発生4日後に生産された細胞の総数(すなわち4日齢の細胞数)との関係を決定するために、我々は、平均細胞数と説明変数の線形結合とを関連付ける対数リンク関数:平均基底速度、平均基底速度の二乗、速度ピーク間平均インターバル、速度ピーク間平均インターバルの二乗、および基底速度と速度ピーク変数との様々な相互作用を用いて負の二項モデルを胚の細胞数にフィッティングした。我々の最初の解析において、我々は、胚発生で使用されたイメージングシステム(ツァイスまたはデルタビジョン)の起こり得る交絡作用を考慮した。しかしながら、我々は、解析されたパラメーター、すなわち速度ピーク間の平均インターバルの二次効果と、画像システムとの相互作用は統計学的に有意ではなく、さらに説明能力にまったく寄与しないことを見出したために、我々はそれらを我々の最終的な解析から排除した。最終モデルと比較して記載された上記全ての変数を用いたフルモデルの尤度比検定により、対数尤度において統計学的に有意ではない変化が生じた(p=0.53)。細胞数データ
51で観察されたバリエーションを説明するために、より標準的な細胞数のポアソン回帰モデリングに対して細胞数の負の二項モデリングを選択した。
【0068】
上述したのと同じ説明変数と、接合体が発生して胚盤胞になる(すなわち少なくとも32細胞期に達する)確率との関係を調査するために、我々はさらに、発生4日後に生産された細胞の総数を二分割して二項変数にした後にロジスティック回帰モデルをフィッティングすることによっても我々のデータを解析したところ、細胞総数が31細胞を超えたかどうかが示された。最終的なロジスティックモデルは、最終的な負の二項モデルにおける説明変数と同じ説明変数を含んでいた。最終モデルに対するフルモデルの尤度比検定は、対数尤度(p=0.30)において統計学的に有意ではない変化を生じる。
【0069】
実施例1
マウス卵の受精により周期的な細胞質内の動きのバーストが起こる
マウス卵の受精の際の細胞質内運動を特徴付けて、それらが受精に関連する他の現象に関連するのか、加えて関連する場合はどのようにして関連するのかを評価するために、我々はまず、受精直後から前核形成までの時間、卵を撮影した。続いて我々はPIV法
21〜24に基づく高度画像分析用いて、これらの運動を解析し、定量した(
図1A)。それにより、マウス卵が受精した後、細胞質内運動の速度が劇的に周期的増加および減少を起こす(我々は、速度ピークと名付けた;
図1B〜D、n=55の未受精の卵母細胞、およびn=125の体外受精卵)ことが明らかになった。この一連の卵の細胞質中の迅速な繰り返し運動は、前核形成までおよそ4時間続いた。速度ピークは、最初のうちは比較的低い振幅を示したが(減数第二分裂の分裂後期から、初期のFC伸長までの間;ステージ1)、その後、FCが完全に伸張したらそれよりも有意に大きい振幅になった(ステージ2)。最後に、FC退縮中およびその後に、それらの振幅は減少した(ステージ3)(
図1B、D、表1)。ステージ2において、急速な細胞質内運動はFCを二等分する赤道面で最大であり、そこから外側の面では、外に向かうほど遅くなった(
図9)。PIV解析から、各速度ピークの後に、通常は4分より長く持続し、より低い振幅を示す事後運動になったことが明らかになった。ステージ3の間の運動は、速度ピークが事後運動とあまり異なっていないことが多いという点で、この規則の例外であった(
図1D、表1)。さらに我々は、受精は、未受精の卵母細胞の休止レベルと比較して、平均の基底細胞質内速度(ピーク間インターバルの間、または最後に記録されたピークの後の速度)の2倍以上の増加をもたらしたことに留意した(
図1C〜D、表2)。
【0070】
我々の解析から、ステージ1の間、これらの急な細胞質内運動のベクトルは、発生中の第二極体に向かう傾向がある(17/25の速度ピーク、11の接合体)ことが明らかになった。この方向性は、ステージ2の間、ベクトルが直接FCに向かうように、または場合によってはわずかに入れ替わって第二極体に向かった(64/65の速度ピーク、19の接合体)。これらのステージのいずれかにおける低振幅の事後運動またはピーク間インターバルの間に、一定したパターンはなかった。ステージ3において、速度ピークの方向性または何らかのパターンはもはや認められなかった(
図1E、表4)。大半の接合体で前核が観察されたとき(49/63、77.8%)(
図1D)、これらの速度ピークは、FC退縮後に止まった。従って、我々の結果から、マウス卵の受精は、細胞質内運動の速度ピークを誘発し、それらが最強になった時点で、精子の侵入部位の上に形成されるFCに向けられることが示される。
【0071】
実施例2
高振幅の細胞質内速度ピークは、FCの拍動と相関し、アクトミオシン細胞骨格に依存する
ステージ2における急な運動の方向は、FCがこのような運動の発生に関与する可能性があることを示唆することから、次に我々はこの期間にわたるFCの形態を試験した(69の速度ピーク、14の接合体)。それにより、各速度ピークにおいて、FCの頂点は中心に向かって埋まり、FCが沈み込んで凸型になった接合体の領域が広くなることが示された。結果として、FCの軸に沿った接合体の直径(以下、「FC直径」と証する)は、1.28±0.66μmに減少した(その長さの1.55±0.79%)(
図2A、C)。FCの形状はピーク間インターバル中に回復した(
図2C)。興味深いことに、FC直径の減少の程度は、速度ピークの振幅と直線的な関連を示した(20の接合体、71の解析された速度ピーク)(
図2B)。
【0072】
アクトミオシン細胞骨格はFC領域で高濃度化されているため
17、25、我々は、アクトミオシン細胞骨格は、FCの拍動に関与する可能性があると考察した。この可能性を評価するために、我々は、FCの拍動の全体にわたり、EGFPでタグ付けされたユートロフィンのアクチン結合ドメイン(UtrCH−EGFP
26)またはGFPでタグ付けされたミオシンIIの調節軽鎖(MyoRLC−GFP
27)のいずれかをコードするmRNAを有する卵母細胞を注入することによりアクトミオシンを可視化した。このような卵母細胞における受精後のUtrCH−EGFPの平均蛍光強度の測定から、FCの下に存在する連続するアクチン層における振動の変化が解明された;アクチンマーカーの蛍光強度は、FCが弛緩するに従って減少し、FCが徐々に突き出るに従って増加した(
図2D、
図10)。FCの肩の下に存在するMyoRLC−GFPの平均蛍光強度についても同様の結果を得た(
図2E、
図11)。このようなUtrCH−EGFPおよびMyoRLC−GFP蛍光における変動は、その領域のアクトミオシン量における変化を反映している可能性がある。しかしながら、これらの変化は比較的小さく、一時的で反復的であるため、このような変化は、FCの拍動をもたらすFCを取り囲むアクトミオシンの収縮性を示す可能性が高い。
【0073】
FCの運動はFCに対応する細胞質内速度ピークの範囲内で起こるため、次に我々はアクトミオシン細胞骨格が双方に関与するかどうかを試験した。この目的を達成するために、我々は、アクトミオシンと微小管の細胞骨格との両方に干渉する選択的な阻害剤を使用した。それらの特異性を免疫染色によって確認し(
図12)、表5にそれらの細胞周期の進行に対する作用を示す。我々は、ノコダゾールによって誘導された解重合もタキソールによって誘導された微小管の安定化も、速度ピークの動力学はわずかに変化したが、速度ピークを阻害しなかったことを見出した。ノコダゾール処理により、一部の事後運動において、さらに全ての速度ピーク間インターバルにおいて細胞質内速度が増加し(n=38、
図2F、表1、2)、それに対して、タキソール処理により、全てのピーク間インターバルにおいて、速度ピークの振幅、一部の事後運動、および細胞質内速度が減少した(n=27、
図2G、表1、2)。それに対して、サイトカラシンDを用いたアクチンの解重合またはジャスプラキノリドを用いたアクチンフィラメントの安定化により、基底速度がほぼ3倍減少した(
図2F、G、表2)。さらにサイトカラシンDの処理により、速度ピークが劇的になくなった(
図2F)。21の解析された接合体のうち2つ(9.5%)だけが焦点が合っておらず、低振幅の速度ピークが記録された。速度ピークはそれでもなおジャスプラキノリドで処理した接合体(n=60)に存在していたが、それらの振幅はコントロールにおける振幅よりも有意に低く、事後運動は実質的に検出不可能であった(
図2G、表1)。ほとんど全ての接合体において、またミオシン軽鎖キナーゼ(MLCK)阻害剤であるML−7での処理も、細胞質内速度の振動をブロックし(16/17の接合体、94.1%)(
図2F)、1つの例外的な接合体のみがはっきりしない低振幅の速度ピークを表示した。
【0074】
またこれらの実験から、ノコダゾールまたはタキソール処理による微小管の解重合または安定化はそれぞれ、FCの形成および/または維持のどちらにも影響を与えなかったことも明らかになった。それに対して、サイトカラシンDで処理された大多数の接合体(20/21、95%)においてFCは形成されず、これは、以前の研究と一致していた
13。ジャスプラキノリドで処理された接合体におけるアクチンフィラメントの安定化は、それでもなおFCの形成および/または維持を許容したが、コントロールの場合ほどに顕著ではなかった。MLCK活性が阻害された場合、FCは胚のわずか半分(10/17、58.8%)にしか存在せず、FCが存在した場合でもFCの発達はあまり十分ではなかった。これは、MLCK活性はFCの形成および維持に関与するという以前の結論と一致する
25、28。これらの結果と合わせて、細胞質内の振動およびFCの拍動はいずれも、主としてアクトミオシン細胞骨格に依存することが示される。
【0075】
実施例3
細胞質内運動はCa2+一過性上昇と相関があり、それに依存する
受精は、遊離Ca
2+の振動を開始させることが知られているため
10、29、我々は次に、アクトミオシンが介在する速度ピークは、これらのCa
2+パルスに依存するのかどうかについて取り組もうと考えた。この目的を達成するために、我々は、Ca
2+感受性の蛍光色素のFuraRedを含む受精卵をローディングし、FuraRedの蛍光およびDIC画像を同時に回収した。32の接合体において、Ca
2+の増加に伴い全ての121の速度ピークが発生した。Ca
2+レベルがピークになると細胞質内速度は(我々の記録のインターバルの解像度の範囲内で)正確に増加した(
図3A)。異常に頻繁なCa
2+振動を示す一つの接合体においてのみ、一部のCa
2+スパイク(4/17)が速度ピークに反映されていなかった。ICSIで受精させたいくつかの卵で、我々は、最初のCa
2+一過性上昇に伴う速度ピークの記録を達成した。これらの速度ピークは、最初のCa
2+一過性上昇に相当するステージ1の速度ピークの残りよりも高振幅を示し、その後の速度ピークよりも大きかった(
図9)。
【0076】
Ca
2+振動は細胞質内運動に必須であるかどうかを決定するために、我々は、細胞内Ca
2+の基底レベルを変化させることなくカルシウム振動を阻害することが知られているCa
2+キレート化剤BAPTAをローディングした21の受精卵における動きを記録した
30。この処理により高振幅の速度ピークが阻害されたが、平均の基底細胞質内速度はコントロールに比べて1.7倍に上昇した(
図3B)。BAPTAは微小管を破壊したが(
図12)、他の系で観察されたように
31、32、これは、速度ピークの損失に関与する可能性は低く、なぜなら特異的に微小管を破壊しても類似の現象を引き起こさないためである(上記参照)。
【0077】
興味深いことに、我々がSrCl
2を用いてマウス卵(n=47)を活性化させて、受精後に観察されるCa
2+振動と類似したCa
2+振動を引き起こしたところ、Ca
2+一過性上昇のうち30%のみ(133/444)が速度ピークを伴った。さらにこれらは、極めて低い振幅を示す接合体の速度ピークと類似しておらず(
図3C、表1、3)、Ca
2+一過性上昇の始まりが10〜30秒遅延することも多かった。事後運動は、これらのSrによって誘導されたCa
2+一過性上昇のうち76.8%(341/444)で示されたが、それらの振幅も接合体の振幅よりも低かった(表1、3)。これは、Ca
2+振動は急速な細胞質内運動に必要であるが、Ca
2+振動は、別個の高振幅の速度ピークを誘発させるには不十分であることを示す。従って、受精により、このような動きを十分に可能にする追加の現象が起こる。
【0078】
実施例4
細胞質内運動を開始させるのに機能的な精子タンパク質が必要である
細胞質内速度ピークおよびCa
2+振動の両方において精子それ自体またはFCのいずれかによってなされる相対的な寄与をさらに特徴付けるために、我々は、卵の皮質の直下または細胞の中心のいずれかに精子を直接注入した。FC形成は精子クロマチンと皮質アクチンとの相互作用に依存し、さらに距離に依存するために
33、FCは、注入された卵の前者のグループにのみ形成された。いずれのケースにおいても、注入された精子は、Ca
2+振動および卵の活性化をもたらした。しかしながら、FCを形成した卵ではCa
2+一過性上昇の97%(101/104)が速度ピークを伴うのに対して(n=17、
図4A)、FCがない卵では、Ca
2+一過性上昇の71%(207/290)が速度ピークを示した(n=35;
図4B)。重要なことには、速度ピークの平均振幅は、FCがない卵の平均振幅よりも有意に低かったが、それに対してFCを有する卵では、振幅は、自然に受精した卵の振幅と類似していた(
図4AB、表1、3)。しかしながら、前核形成中の速度ピークおよび全てのステージからの事後運動の平均振幅は、両方のグループにおいて類似していたことから(表3)、これらの特定の運動のメカニズムはFCとは無関係である可能性があることが示唆される。
【0079】
FCの細胞質内運動誘発への寄与をさらに詳細に分析するために、我々は、全ての機能性タンパク質が欠失しておりDNA源として役立つ熱不活化した精子頭部の注入に応答して、速度ピークが起こるかどうかを試験した。クロマチンと皮質との結合は、FC様の形成
33を誘発するのに十分であることが知られている。その結果として、Sr
2+によって活性化された皮質および卵に熱不活化した精子頭部を注入したところ、Ca
2+振動およびFC形成の両方が観察された。このような接合体において(n=25)、Ca
2+一過性上昇の60.8%(48/79)においてFCが存在するときに速度ピークが発生した(ステージ2)。しかしながら、速度ピークの振幅は、比較的低いままであった(
図4C、表3)。興味深いことに、FCの拍動も、正常な接合体で観察されたFCの拍動に比べてかなり小さく、さらに速度ピークもFCの拍動もCa
2+一過性上昇のピークとまったく同調していなかったが、10〜30秒後に起こった。Ca
2+振動は不活化精子が注入された卵では記録されず、単為生殖的活性化がなされないままであった(
図4D)。これらの結果を総合すると、高振幅の速度ピークはFCの拍動と関連しており、精子の機能性タンパク質によって促進されることが示唆される。
【0080】
実施例5
細胞質内運動は、胚の生命力の指標を提供する
我々が、細胞質内運動がCa
2+振動のパターンと細胞骨格の品質とに関連することを見出してから、我々は、このような運動の解析により発生の成功を予測することができるのかどうかについて興味を持った。これに取り組むために、我々は、71個の卵を体外受精させ、FCが存在する期間中ずっとそれらの細胞質内運動を記録し、続いて胚を4日間培養した。まず第一に、我々は、各胚中の細胞質内運動のパターンと、そのステージでの細胞総数とを関連付けた。このから、速度ピーク間の平均インターバルの様々な値について、平均基底速度と、胚中の細胞数との間に統計学的に有意な線形および二次効果があったこと(それぞれp=0.0005および0.0001)が明らかになった(対数スケールで;
図5C)。発生4日目における平均細胞数は、横ばい状態かまたは減少した後に、平均基底速度(平均基底速度値12.2nm/秒の平均から最大1.7の標準偏差(SD=6.7nm/秒))で増加した(
図5A、C)。さらに、平均基底速度の様々な値またはその二乗について、発生4日後の平均細胞数は、速度ピーク間の平均インターバルに比例して増加した(1SD毎に、すなわちおよそ7分毎に1.3倍高い(95%CI:1.07〜1.47);p=0.0045、
図5B、D)。我々は、胚盤胞期まで発達する確率を評価することによって発生の成功を調べたところ、同様の発見が観察された(
図13A)。この解析から、平均基底速度(p=0.009)と、発生4日後に胚が胚盤胞期に達する確率の対数とは線形的な関係を有することが示唆される:胚盤胞まで発達する確率は、平均基底速度が増加するにつれて増加する。さらに我々は、1SD毎に速度ピーク間の平均インターバルが増加するにつれて、胚が胚盤胞まで発達する確率は、2.3倍増加する(95%CI:1.10〜4.89;p=0.027)(
図13B)ことを見出した。
【0081】
我々の細胞質内運動の記録方法が何らかの光によるダメージを引き起こす可能性を除去するために、さらに発生し得る何らかの光感受性が受精後のイメージング段階の影響を受けるのかどうかを試験するために、我々は、記録開始後の様々な時点で前核が形成された接合体の発生を比較した。我々は、平均細胞数にも、または達成される発生ステージの分布にも何らかの差があるという証拠を見出すことはできなかった(いずれか2種の比較グループについてp>0.46、およびp=0.97、それぞれ
図13C、D)。我々はさらに、画像化した(n=71)および画像化していない(n=46)胚の発生も比較して、両方のグループが同じ方法で処理されたことを確認した。両方のグループにおいて、平均細胞数(
図13E)、加えて異なる細胞数を有する胚の分布(
図13F)は類似していた(それぞれp=0.75および0.19)。
【0082】
最終的に、上記の結果から細胞質内運動のパターンは着床前の発生の品質の予測に役立つことが示されたため、我々は、これらの運動パターンが、どの卵が出産まで発生が成功するのかを予測できるかどうかを決定しようと試みた。この目的を達成するために、我々は、体外受精卵を画像化して解析して、体外受精卵の細胞質内の動きのパターンが優れた発生能を示すのか、あるいは不良な発生能を示すのかに従って体外受精卵をグループ分けした。優れた可能性を示す胚は、4日培養した後に胚1つあたり25〜52(平均32)個の細胞を有し、25〜90%(平均46.5%)のケースで胚盤胞期に達すると予測された。低品質と分類された胚は、4日後に9〜24(平均17)個の細胞を有し、それらの0〜25%、平均10.7%が胚盤胞期に達すると予測されると思われる。2つの胚群を、2細胞期で雌のレシピエントに移植した。「低品質」とスコア付けした胚と比べて5倍の頻度で(83.3%、5/6対16.7%、1/6)卵筒期まで(6.5dpc)発達した胚、および「低品質」とスコア付けした胚と比べてほぼ3倍の頻度で(2.77、87.5%、21/24対31.6%、6/19)臨月まで(19.5dpc)発達した胚を、「高品質」とスコア付けした(
図5E、F、表6)。総合すると、これらの発見は、受精後の細胞質内運動は、発生の成功予測に役立ち、我々のイメージング方法は胚発生を妨げないことを示す。
【0083】
実施例6
ヒト卵母細胞においてPLCζによって誘導されたCa2+振動は、同調する細胞質内運動を引き起こす。
【0084】
近年の証拠によれば、受精時のCa
2+振動は、精子が卵母細胞と融合した後に誘発され、それにより、卵母細胞への精子特異的なホスホリパーゼC(PLCζ)の導入が起こることが示されている
52,53。次にPLCζは、卵質内でInsP
3生産の繰り返しサイクルを発生させ、Ca
2+振動による繰り返しのCa
2+放出現象を起こす
52,53。最も都合のよい形態としては、精子PLCζは、卵母細胞にその相補的RNA(cRNA)をマイクロインジェクションすることによって導入され、この相補的RNAは卵母細胞内で数時間にわたりPLCζタンパク質に翻訳される
54。従って、PLCζのcRNAを卵母細胞に注入することによって、持続的なCa
2+振動を引き起こすPLCζタンパク質が生産され、さらに平行して行われた実験で、PLCζは、マウス、ブタ、ウシ、およびヒト卵母細胞の桑実期および胞胚期までの胚発生を活性化することが示された
54〜57。
【0085】
ここで我々は、精子PLCζのcRNAが注入されたヒト卵母細胞におけるPIVイメージングの使用を報告する。我々は、ICSI後に受精できなかったヒト卵母細胞において、それぞれのPLCζによって誘導されたCa
2+一過性上昇とほぼ同調する、突然の、ただし小さい細胞質内運動を検出できることを実証する。我々が説明する方法は、ヒト卵母細胞におけるCa
2+振動振動パターンをモニターする非侵襲的方法として発展性を有する可能性がある。
【0086】
材料および方法(実施例6)
ヒト卵母細胞
ウェールズ大学病院(University Hospital of Wales)、カーディフのIVFウェールズクリニックで、患者からヒト卵母細胞の提供を受けた。現行のプロジェクトおよび関連する全ての手法は、南東ウェールズ研究倫理委員会(South East Wales Research Ethics Committee)およびヒトの受精および胚研究認可局(Human Fertilisation and Embryology Authority)で承認されている(R0161、K.SwannおよびN.Amsoの管理下)。老化した「ICSI不能の」卵母細胞および卵胞の減数分裂過程から誘導された新鮮な卵母細胞を用いた。標準条件下でICSIを行い、卵母細胞をさらに16〜18時間培養した後、それらが受精したかまたは受精していないかを判断した。「新鮮な卵母細胞」は卵胞の減数分裂から誘導され、回収してから5時間以内に用いた。活性化されていないと確認された卵母細胞だけを実験に用いた。その後の1〜4時間の間に、これらの卵母細胞をクリニックから研究所に移し、そこで上述したようにして卵母細胞に約10〜20plのヒトPLCζのcRNAをマイクロインジェクションした
54,55。簡単に言えば、cRNAを、Ca
2+感受性色素の0.5mMオレゴングリーンBAPTAデキストラン(OGBD、インビトロジェン)と混合した。次にこの混合物を、マイクロピペットを用いてマイクロインジェクションした(約1μMのチップ直径)。マイクロピペットの針と同じラインに連結された増幅器からの短い電気振動のパルスを利用して、マイクロピペットを卵母細胞に挿入した。次に、マイクロピペット後部に圧力パルス(20psiで約1秒間)をかけて、注入混合物の1回適用量を卵母細胞に押し出した。cRNAを、Ca
2+感受性色素の0.5mMオレゴングリーンBAPTAデキストラン(OGBD、インビトロジェン)と混合した。PLCζのcRNAを上述したようにして調製した
54。データ回収中に、CL−100温度制御装置(ワーナー・インスツルメンツ(Warner Instruments))を備えたシリーズ40クイック・チェンジ(Quick Change)イメージングチャンバーを用いて、卵母細胞を油で覆った培地の液滴中で37℃に維持した。M2培地(シグマ)中で卵母細胞をマイクロインジェクションし、続いて以前に説明されているようにしてHEPESで緩衝化したKSOM培地中で記録をとった
59。
【0087】
イメージングシステム
マイクロインジェクション後に、卵母細胞または接合体を、ニコン(Nikon)のTiU落射型顕微鏡(対物20×0.75NA)を用いて数時間にわたり画像化した。490nmのバンドパスフィルターにハロゲンランプからの蛍光励起を通過させ、505nmのダイクロイックで反射させ、530nmのバンドパスフィルターで回収した。その他のハロゲンランプからの白色光を用いて、卵母細胞を微分干渉位相コントラスト(DIC)顕微鏡で可視化した。これらの光源の軌道にシャッターを置き、フィルターのホイールを蛍光励起および放出光の両方の軌道上に置いて、画像獲得中に卵母細胞が光に晒される時間がごく短くなるようにした。シャッターおよびフィルターホイールをラムダ−10(Lambda-10)制御器(サッター・インスツルメンツ(Sutter Instruments))によって制御した。クールスナップHQ2(Coolsnap HQ2)CCDカメラ(フォトメトリクス(Photometrics))を用いて、10秒毎に高速で連続的に100〜200ミリ秒の曝露で画像を取った。インビボ(InVivo)ソフトウェア(メディア・サイバーネティックス(Media Cybernetics))用いて、ラムダ−10、画像回収、および最初の解析を制御し、画像をtiffの積層画像として保存した。
【0088】
イメージJ(http://rsbweb.nih.gov/ij/)を用いて蛍光画像を解析し、卵母細胞全体からの色素の蛍光強度を時間に対してプロットした。細胞質中の運動を、マウス接合体における類似の運動を研究するために開発された相互相関法で解析した
58。アルゴリズムは、流体動力学的な調査におけるPIV解析で用いられているアルゴリズムに基づいており、連続した画像対間の相互関係を示す画像のサブ領域を含む。この解析により、細胞質の局所領域における運動を示すベクトル分野が得られた。以前に説明されたようにして
58、卵母細胞の中心における四角の領域のベクトルの振幅の平均をとることにより運動の平均速度を計算した。ソフトウェアをMATLABで開発され書き込まれており、このソフトウェアは、http://users.ox.ac.uk/~zool0847/code.htmlで教育機関の非営利使用のライセンスで利用できる。
【0089】
結果(実施例6)
ICSI後に活性化できなかったヒト卵母細胞へのPLCζのcRNAのマイクロインジェクションにより、
図6Aで説明された持続的な一連のCa
2+振動が起こった。遊離Ca
2+上昇を示すスパイクの特定のパターンは卵母細胞間で多少の違いが示されたが、全般的な応答は、最初の大きいCa
2+増加、それに続いて、時間が経つに連れて次第に頻度が増加する一連のそれより小さいCa
2+一過性上昇からなっていた。この全般的なCa
2+振動パターンは、PLCζのcRNA
55が注入されたヒト卵母細胞で以前に報告されたパターンに類似している。cRNA注入(記録開始の15〜20分前)からCa
2+スパイクの最初の出現への比較的長い潜伏時間、およびその後のCa
2+スパイク頻度の上昇は恐らく、時間経過によるPLCζタンパク質発現の段階的な増加を反映しており、これは、これまでにもPLCζのルシフェラーゼタグを有する融合コンストラクトで経験的に実証されている
54、60〜62。
【0090】
我々がPIVを用いてPLCζのcRNAを注入した卵母細胞を細胞質内運動に関して解析したところ、我々は、同じ10秒のインターバル内で、各Ca
2+一過性上昇の直後に別個の運動が起こることを見出した(
図6B)。これらのヒト卵母細胞において、最大の平均PIV速度は、Ca
2+スパイクの最大値と一致するか、あるいはCa
2+一過性上昇が最大になってから50秒以内に起こるかのいずれかであった。合計して、この範囲内で10個の異なる接合体から95/102の細胞質内運動が検出された。速度ピークの平均遅れ時間は、Ca
2+ピーク後18秒であった(10〜50秒の範囲)。注目すべきことに、卵母細胞質で検出された運動は、比較的規模が小さい:速度ピークにおける全てのベクトルの平均振幅は40nm/秒を超えることはなく、さらにこれらの速度ピーク内で、局所領域は120nm/秒よりも速く動くことはなかった。ほとんどの場合でCa
2+一過性上昇に伴う運動の突然の増加がみられたが、いくつかの記録において最初のスパイクで達成されたより高いレベルのCa
2+は、しばしば細胞質の運動の減少を伴うことも興味深い(4/6ケース)(
図6B)。一例において、第二のピークでCa
2+レベルが高いままである場合、細胞質内運動も抑制された(1/6)(
図6Bおよび7)。
【0091】
個々の卵母細胞について、運動ベクトルは、それぞれの速度ピーク間で一定の位置にいたが、痙攣のような運動の最中に運動の方向を反転させることが多かった(
図8)。しかしながら、平均の運動方向は、第一または第二極体の位置とは一致した関係を示さなかった。加えて、速度ピークにおいて小さい渦巻きが頻繁に観察された。単一面で画像化された卵母細胞が少数であったという限定を考慮すると、これらの渦巻きは、特定の卵母細胞構造とはまったく関連がなかった。
【0092】
これらのヒト卵母細胞において、ある程度のCa
2+上昇と運動との同調が共通して見出された。これは、ヒト卵母細胞における細胞質内運動は、遊離Ca
2+イオンの上昇により直接的に誘導されることを示す。マウス接合体での以前の研究から、このような細胞質内運動はアクチン細胞骨格に依存し、精子および受精丘の存在大きな影響を受けることが示されている
58。速度ピーク中に形状が変化した活性化ヒト卵母細胞の領域を確認することは難しいが、記録中に細胞プロファイルの遅い進行性の変化が検出された。いくつかの記録において、細胞質の周りを動き、細胞膜の下に厚い粒状の三日月形を形成する粒状の領域を観察することができた。この外縁の三日月形も第一極体の位置に沿って移動したが、正確な三日月形の境界はあいまいであった。これらの「ICSI不能の」卵母細胞内に可能性のある精子が存在する可能性があるのかどうか、あるいは、マウス接合体で示唆されたように、細胞質内運動において精子周辺の何らかの構造が特異的な役割を果たす可能性があるのかは不明なままである。しかしながら、我々は、卵胞の減数分裂後に得られた7つの未受精の卵母細胞におけるPLCζのcRNAによって誘導されたCa
2+振動および細胞質内運動の類似の解析は行わなかった。注目すべきことに、我々は、これらの卵胞の減数分裂由来の卵母細胞で観察された41のCa
2+スパイクに関連する運動をまったく検出できなかった。
【0093】
考察
ここで説明された受精後における細胞質内現象の、非侵襲的な急速なタイムラプスイメージングとPIV解析との併用により、マウス卵への精子の侵入が、細胞質内運動と関連する一連の予測外の周期的なアクトミオシン収縮を誘発させることが明らかになる。その最大速度において、これらの細胞質内運動により、同調して拍動を受ける精子の侵入部位の上に形成された突起に向かってベクトルが方向付けられる。細胞質内運動の速度ピークは、受精によって誘導されたCa
2+一過性上昇とタイミングが一致しており、さらにカルシウム振動に依存する。我々は、ピーク間インターバルの解析は、非侵襲的で極めて迅速な、胚の生命力およびその発生を進行させる能力を評価する新規の方法を提供することを示す。
【0094】
MLCK阻害またはF−アクチンを安定化もしくは解重合する処理により、速度ピークおよび基底細胞質内速度の両方が減少したという我々の発見から、細胞質内運動の媒介にアクトミオシン細胞骨格が関与することは明白である。またこのような運動は、Ca
2+をBAPTAでキレート化すると抑制されるために、Ca
2+一過性上昇にも依存している。可能性の一つとして、例えばCa
2+/カルモジュリン依存性キナーゼII(CaMKII)または従来のプロテインキナーゼC(cPKC)などのCa
2+依存性キナーゼは、細胞骨格を調節すること
10、およびCa
2+振動に応答すること
34〜36の両方が知られていることから、これらの酵素は、運動の誘発に関与することが挙げられる。しかしながら、Ca
2+振動の振幅は受精後の期間全体にわたり類似しているが(ただし一般的にその後のスパイクよりも大きい最初のCa
2+スパイクを除く
29)、速度ピークの振幅はFC形成の開始時に増加し、FC退縮時に減少する。さらに単為生殖的活性化によって惹起されたCa
2+一過性上昇は、迅速な振動の細胞質内運動を促進するには不十分であり、これは、運動を起こすことができる追加の受精関連因子が存在するはずであるということを示唆している。
【0095】
活発な運動の速度ピークとアクトミオシンが介在する周期的なFCの運動とが一致するということは、これらは同じプロセスの兆候であることを示す。これはさらに、精子注入法後のFC形成の研究によっても示されている。FC形成はクロマチンと皮質タンパク質との相互作用を必要とするため
33、精子が卵に深く注入される場合は、FC形成は起こらない。従って、この方法で受精した卵は、FCを有する接合体でみられる速度ピークよりもかなり弱い速度ピークを示した。速度ピークが弱くてもなお存在するという事実は、皮質のアクトミオシンをある程度再構成させるのに十分な程度に精子クロマチンが細胞表面の近傍に存在することに起因する可能性がある。明確なFCを生産するには不十分であるが、それでもなお弱い細胞質内運動を強化することができると予想される。あるいは、速度ピークは、母由来のクロマチン上に蓄積した皮質のアクトミオシンの収縮によって誘発される可能性がある。実際に、我々は、一組の母系染色体上に形成された隆起がFCと類似した方法で振動することを頻繁に観察することができた。また、低振幅の速度ピークは、皮質に関連するのではなく、アクトミオシン細胞骨格の一般的な収縮性の作用である可能性もある。最後の2つの可能性はさらに、なぜSr
2+で活性化された単為発生胚で所定の低振幅の速度ピークが観察できるのかを説明することもできる。
【0096】
熱不活化した精子頭部が注入されたSr
2+で活性化された卵では、高速運動も誘発されず、FCの動きもかなり減少した。従って、精子は、熱処理によって不活性化されたFCの動きおよび細胞質内運動を促進するタンパク質に高く寄与する可能性がある。また、正常な接合体と不活化精子が注入され、続いてSr
2+活性化された胚とで観察された差は、Ca
2+一過性上昇そのものの特徴が変更されたことに起因する可能性がある。典型的なSr
2+によって誘導されたCa
2+ピークの動力学的挙動は、受精によって誘発されたCa
2+ピークの動力学的挙動とは異なる。さらに、Sr
2+によって誘導されたCa
2+振動の頻度は、我々の条件下では極めて高く、これは、高振幅の速度ピークの生成に負の影響を与えるようである。
【0097】
我々は、細胞質内運動のタイミングおよびパターンは、胚の品質の強力な指標を提供することを見出した。我々のデータから、低い平均基底速度(10nm/秒未満;これは、アクトミオシン細胞骨格の品質が悪いことを示す)を示す胚、加えて極めて頻繁な速度ピーク(ピーク間インターバルが10分未満;これは、頻繁なCa
2+一過性上昇を反映する)を示す胚は、インビトロでは胚盤胞期まで、またはインビボでは臨月まで発達することはまれであるということが示される。この結果は、機能的なアクチン細胞骨格とCa
2+一過性上昇の正しいパターン(特にCa
2+上昇にかかる全体の時間)とはいずれも発生に重要であるという発見と一致する
12、15、16、37〜39。しかしながら、これらの要素は、蛍光色素および有害な放射線照射を用いる侵襲的な手法を含むため、研究施設や医療施設では優れた品質の胚を選択するために使用できない。従って、体外受精診療所で行なわれている現行の方法は、3日目に形態学的に胚の生存能力および増殖を評価するか、あるいは3日目の評価が信頼性が低いために5日目に評価することである
40〜42。発生の最初の2日で一連のパラメーターをイメージングおよびモニターすることによって、相当な進歩をもたらすことができる
43。胚の生命力およびその発生を達成する能力は、それよりもかなり短い期間で、すなわち受精前後のちょうど2時間で、非侵襲的なイメージングを用いることによって評価することができる。
【0098】
すなわち我々は、受精時のアクトミオシン細胞骨格の動的な振動の挙動を誘発することにおける精子の重要性を確認した。それに続く運動は、完全な発生能を達成する卵の能力を評価する強力な方法を提供するパターンおよびタイミングを有する。そのようなものとして、我々の方法は、補助繁殖診療所で実用的に使用できる高い可能性を有する。
【0099】
均等物
上述した詳細な説明は、当業者により本発明が実施可能になるのに十分であるとみなされる。実施例は本発明の一形態の単なる説明を目的としているため、本発明は示された実施例に限定されることはなく、その他の機能的に同等な実施態様は本発明の範囲内である。本明細書において示され説明されたものに加えて、本発明の様々な改変が、前述の説明から当業者には明らかであり、添付の特許請求の範囲内に含まれるものとする。
本発明の各実施態様に、本発明の利点および目的が包含されていなくてもよい。
【0100】
本明細書において開示された特許文献などの全ての参考文献は、あらゆる目的のために、特に本明細書で述べられた開示のために、それらの全体が開示に組み入れられる。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
【表3】
【0104】
【表4】
【0105】
【表5】
【0106】
【表6-1】
【0107】
【表6-2】
【0108】
【表6-3】
【0109】
【表7】
【0110】
参考文献
1. Roegiers, F., McDougall, A. & Sardet, C. The sperm entry point defines the orientation of the calcium-induced contraction wave that directs the first phase of cytoplasmic reorganization in the ascidian egg. Development 121, 3457-3466 (1995).
2. Sardet, C., Paix, A., Prodon, F., Dru, P. & Chenevert, J. From oocyte to 16-cell stage: cytoplasmic and cortical reorganizations that pattern the ascidian embryo. Dev Dyn 236, 1716-1731 (2007).
3. Speksnijder, J.E., Sardet, C. & Jaffe, L.F. The activation wave of calcium in the ascidian egg and its role in ooplasmic segregation. J Cell Biol 110, 1589-1598 (1990).
4. Stack, C., Lucero, A.J. & Shuster, C.B. Calcium-responsive contractility during fertilization in sea urchin eggs. Dev Dyn 235, 1042-1052 (2006).
5. Weaver, C. & Kimelman, D. Move it or lose it: axis specification in Xenopus. Development 131, 3491-3499 (2004).
6. Gerhart, J. et al. Cortical rotation of the Xenopus egg: consequences for the anteroposterior pattern of embryonic dorsal development. Development 107 Suppl, 37-51 (1989).
7. Abbott, A.L. & Ducibella, T. Calcium and the control of mammalian cortical granule exocytosis. Front Biosci 6, D792-806 (2001).
8. FitzHarris, G., Marangos, P. & Carroll, J. Cell cycle-dependent regulation of structure of endoplasmic reticulum and inositol 1,4,5-trisphosphate-induced Ca2+ release in mouse oocytes and embryos. Mol Biol Cell 14, 288-301 (2003).
9. Sun, Q.Y. et al. Translocation of active mitochondria during pig oocyte maturation, fertilization and early embryo development in vitro. Reproduction 122, 155-163 (2001).
10. Ducibella, T. & Fissore, R. The roles of Ca2+, downstream protein kinases, and oscillatory signaling in regulating fertilization and the activation of development. Dev Biol 315, 257-279 (2008).
11. Tombes, R.M., Simerly, C., Borisy, G.G. & Schatten, G. Meiosis, egg activation, and nuclear envelope breakdown are differentially reliant on Ca2+, whereas germinal vesicle breakdown is Ca2+ independent in the mouse oocyte. J Cell Biol 117, 799-811 (1992).
12. Toth, S., Huneau, D., Banrezes, B. & Ozil, J.P. Egg activation is the result of calcium signal summation in the mouse. Reproduction 131, 27-34 (2006).
13. Ozil, J.P. et al. Egg activation events are regulated by the duration of a sustained [Ca2+]cyt signal in the mouse. Dev Biol 282, 39-54 (2005).
14. Ducibella, T. et al. Egg-to-embryo transition is driven by differential responses to Ca(2+) oscillation number. Dev Biol 250, 280-291 (2002).
15. Ozil, J.P., Banrezes, B., Toth, S., Pan, H. & Schultz, R.M. Ca2+ oscillatory pattern in fertilized mouse eggs affects gene expression and development to term. Dev Biol 300, 534-544 (2006).
16. Ozil, J.P. & Huneau, D. Activation of rabbit oocytes: the impact of the Ca2+ signal regime on development. Development 128, 917-928 (2001).
17. Maro, B., Johnson, M.H., Pickering, S.J. & Flach, G. Changes in actin distribution during fertilization of the mouse egg. J Embryol Exp Morphol 81, 211-237 (1984).
18. Maro, B., Johnson, M.H., Webb, M. & Flach, G. Mechanism of polar body formation in the mouse oocyte: an interaction between the chromosomes, the cytoskeleton and the plasma membrane. J Embryol Exp Morphol 92, 11-32 (1986).
19. Gray, D. et al. First cleavage of the mouse embryo responds to change in egg shape at fertilization. Curr Biol 14, 397-405 (2004).
20. Deguchi, R., Shirakawa, H., Oda, S., Mohri, T. & Miyazaki, S. Spatiotemporal analysis of Ca(2+) waves in relation to the sperm entry site and animal-vegetal axis during Ca(2+) oscillations in fertilized mouse eggs. Dev Biol 218, 299-313 (2000).
21. Raffel, M., Willert, C.E. & Kompenhans, J. (Springer, 1998).
22. Willert, C.E. & Gharib, M. Digital particle image velocimetry. Exp Fluids 10, 181-193 (1991).
23. Keane, R.D. & Adrian, R.J. Theory of cross-correlation analysis of PIV images. Appl Sci Res 49, 191-215 (1992).
24. Westerweel, J. Fundamentals of digital particle image velocimetry. Measurement Science and Technology 8, 1379-1392 (1997).
25. Simerly, C., Nowak, G., de Lanerolle, P. & Schatten, G. Differential expression and functions of cortical myosin IIA and IIB isotypes during meiotic maturation, fertilization, and mitosis in mouse oocytes and embryos. Mol Biol Cell 9, 2509-2525 (1998).
26. Schuh, M. & Ellenberg, J. A new model for asymmetric spindle positioning in mouse oocytes. Curr Biol 18, 1986-1992 (2008).
27. Tinevez, J.Y. et al. Role of cortical tension in bleb growth. Proc Natl Acad Sci U S A 106, 18581-18586 (2009).
28. Deng, M., Williams, C.J. & Schultz, R.M. Role of MAP kinase and myosin light chain kinase in chromosome-induced development of mouse egg polarity. Dev Biol 278, 358-366 (2005).
29. Swann, K. & Ozil, J.P. Dynamics of the calcium signal that triggers mammalian egg activation. Int Rev Cytol 152, 183-222 (1994).
30. Kline, D. & Kline, J.T. Repetitive calcium transients and the role of calcium in exocytosis and cell cycle activation in the mouse egg. Dev Biol 149, 80-89 (1992).
31. Furuta, A. et al. Microtubule disruption with BAPTA and dimethyl BAPTA by a calcium chelation-independent mechanism in 3T3-L1 adipocytes. Endocr J 56, 235-243 (2009).
32. Xu, N., Luo, K.Q. & Chang, D.C. Ca2+ signal blockers can inhibit M/A transition in mammalian cells by interfering with the spindle checkpoint. Biochem Biophys Res Commun 306, 737-745 (2003).
33. Deng, M., Suraneni, P., Schultz, R.M. & Li, R. The Ran GTPase mediates chromatin signaling to control cortical polarity during polar body extrusion in mouse oocytes. Dev Cell 12, 301-308 (2007).
34. Halet, G., Tunwell, R., Parkinson, S.J. & Carroll, J. Conventional PKCs regulate the temporal pattern of Ca2+ oscillations at fertilization in mouse eggs. J Cell Biol 164, 1033-1044 (2004).
35. Markoulaki, S., Matson, S. & Ducibella, T. Fertilization stimulates long-lasting oscillations of CaMKII activity in mouse eggs. Dev Biol 272, 15-25 (2004).
36. Markoulaki, S., Matson, S., Abbott, A.L. & Ducibella, T. Oscillatory CaMKII activity in mouse egg activation. Dev Biol 258, 464-474 (2003).
37. Shawlot, W., Deng, J.M., Fohn, L.E. & Behringer, R.R. Restricted beta-galactosidase expression of a hygromycin-lacZ gene targeted to the beta-actin locus and embryonic lethality of beta-actin mutant mice. Transgenic Res 7, 95-103 (1998).
38. Shmerling, D. et al. Strong and ubiquitous expression of transgenes targeted into the beta-actin locus by Cre/lox cassette replacement. Genesis 42, 229-235 (2005).
39. Bunnell, T.M. & Ervasti, J.M. Delayed embryonic development and impaired cell growth and survival in Actg1 null mice. Cytoskeleton (Hoboken) 67, 564-572.
40. Scott, L. Embryological strategies for overcoming recurrent assisted reproductive technology treatment failure. Hum Fertil (Camb) 5, 206-214 (2002).
41. Bromer, J.G. & Seli, E. Assessment of embryo viability in assisted reproductive technology: shortcomings of current approaches and the emerging role of metabolomics. Curr Opin Obstet Gynecol 20, 234-241 (2008).
42. Scott, L. The biological basis of non-invasive strategies for selection of human oocytes and embryos. Hum Reprod Update 9, 237-249 (2003).
43. Wong, C.C. et al. Non-invasive imaging of human embryos before embryonic genome activation predicts development to the blastocyst stage. Nat Biotechnol 28, 1115-1121.
44. Plusa, B. et al. Downregulation of Par3 and aPKC function directs cells towards the ICM in the preimplantation mouse embryo. J Cell Sci 118, 505-515 (2005).
45. Fraser, L. Ca2+ is required for mouse sperm capacitation and fertilization in vitro. J Androl 3, 412-419 (1982).
46. Kamm, K.E. & Stull, J.T. Dedicated myosin light chain kinases with diverse cellular functions. J Biol Chem 276, 4527-4530 (2001).
47. Sveen, J. An introduction to MatPIV v.1.6.1. Mechanics and Applied Mathematics 27 (2004).
48. Westerweel, J. Theoretical analysis of the measurement precision in particle image velocimetry. Exp Fluids 29, S3-S12 (2000).
49. Kimura, Y. & Yanagimachi, R. Intracytoplasmic sperm injection in the mouse. Biol Reprod 52, 709-720 (1995).
50. Meilhac, S.M. et al. Active cell movements coupled to positional induction are involved in lineage segregation in the mouse blastocyst. Dev Biol 331, 210-221 (2009).
51. Lawless, J. Negative binomial and mixed Poisson regression. Canadian Journal of Statistics 15, 209-225 (1987).
52. Saunders CM, Larman MG, Parrington J, Cox LJ, Royse J,
Blayney LM, Swann K, Lai FA. PLCζ: a sperm-specific trigger of Ca2+ oscillations in eggs and embryo development. Development 2002;129:3533-3544.
53. Swann K, Saunders CM, Rogers N, Lai FA. PLCζ (zeta): A sperm protein that triggers Ca2+ oscillations and egg activation in mammals. Sem Cell & Dev. Biol. 2006;17:264-73.
54. Yu Y, Saunders CM, Lai FA, Swann K. Preimplantation development of mouse oocytes activated by different levels of human phospholipase Czeta. Hum Reprod 2008;23:365-373.
55. Rogers NT, Hobson E, Pickering S., Lai FA, Braude P, Swann K. PLCζ causes Ca2+ oscillations and parthenogenetic activation of human oocytes. Reproduction 2004;128:697-702.
56. Yoneda A, Kashima M, Yoshida S, Terada K, Nakagwa S, Sakamoto A, Hayakawa K, Suzuki K, Ueda J, Watanabe,T. Molecular cloning, testicular expression and oocyte activation potential of porcine phospholipase C zeta. Reproduction 2006;132:393-401.
57. Ross PJ, Beyhan Z, Iager AE, Yoon SY, Schellander K, Fissore RA, Cibelli JB. Parthenogenetic activation of bovine oocytes using bovine and murine phospholipase C zeta. BMC Dev Biol 2008;8:16.
58. Ajduk A, Ilozue T, Windsor S, Yu Y, Seres KB, Bomphrey RJ, Tom BD, Swann K, Thomas A, Graham C, Zernicka-Goetz M. Rhythmic actomyosin-driven contractions induced by sperm entry predict mammalian embryo viability. Nature Commun 2011;2:417.
59. Summers MC, Bhatnagar PR, Lawitts JA, Biggers JD. Fertilization in vitro of mouse ova from inbred and outbred strains: complete preimplantation embryo development in glucose-supplemented KSOM. Biol Reprod 1995;53:431-7.
60. Nomikos M, Blayney LM, Larman MG, Campbell K, Rossbach A, Saunders CM, Swann K, Lai FA. Role of Phospholipase C-ζ Domains in Ca2+-dependent Phosphatidylinositol 4,5-Bisphosphate Hydrolysis and Cytoplasmic Ca2+ Oscillations. J Biol Chem. 2011:280:31011-31018.
61. Nomikos M, Elgmati K, Theodoridou M, Calver BL, Cumbes B, Nounesis G, Swann K, Lai FA. Male infertility-linked point mutation disrupts the Ca2+ oscillation-inducing and PIP(2) hydrolysis activity of sperm PLCzeta. Biochem J 2011;434:211-217.
62. Nomikos M, Elgmati K, Theodoridou M, Calver BL, Nounesis G, Swann K, Lai FA. Phospholipase Cζ binding to PtdIns(4,5)P2 requires the XY-linker region. J Cell Sci 2011;124:2582-90.