【文献】
Antimicrobial Agents and Chemotherapy,2010年,Vol.54, No.5,p.1988-1999
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記細菌感染が、サルモネラ種、シゲラ−フレクスネリ、シュードモナス種、イェルシニア種、腸管病原性及び腸管侵襲性エシェリヒア−コリ及びクラミジア種の感染である、請求項9に記載の使用。
T3SS媒介性エフェクター分泌の阻害により、グラム陰性細菌に感染した又は暴露した個体を治療するための医薬の製造における、請求項1乃至6のいずれかに記載の化合物の使用。
前記医薬が、抗生物質、抗体、抗ウィルス薬、抗癌剤、鎮痛薬、免疫刺激剤、天然、合成、又は半合成ホルモン、中枢神経系刺激剤、抗催吐薬、抗ヒスタミン、エリスロポエチン、補体刺激薬、鎮静剤、筋弛緩剤、麻酔薬、抗痙攣剤、抗鬱剤、抗精神病薬、及びこれらの組合せから成る群より選択される付加的な活性成分の更に含む、請求項13に記載の使用。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
細菌のIII型分泌装置(T3SS)は複雑な多タンパク質装置であり、細菌の細胞質から哺乳類の細胞質ゾルへのエフェクタータンパク質の分泌及び移行を促進する。この複雑なタンパク質送達装置はサルモネラ菌種、シゲラ-フレクスネリ(原語:Shigella flexneri)、シュードモナス-アエルギノーサ(原語: Pseudomonas aeruginosa)、イェルシニア菌種、腸管病原性及び腸管侵襲性エシェリヒア-コリ(原語:Escherichia coli)及びクラミジア菌種を含む15種を超えるグラム陰性ヒト病原体が共有している (Hueck, 1998, Type III protein secretion systems in bacterial pathogens of animals and plants, Microbiol. Mol. Biol. Rev., 62:379-433; Keyser, et al., 2008, Virulence blockers as alternatives to antibiotics: type III secretion inhibitors against Gram-negative bacteria, J. Intern. Med., 264:17-29.)。日和見性病原体P.アエルギノーサにおいては、 T3SSは、急性感染の樹立及び播種に寄与する主要な菌力である (Hauser, 2009, The type III secretion system of Pseudomonas aeruginosa: infection by injection, Nat. Rev. Microbiol., 7:654-65)。ExoS、ExoT、ExoY、及びExoUという、4種類のT3SSエフェクターがP.アエルギノーサ株で同定されている。ExoS 及びExoT はN末端の小型Gタンパク質活性化タンパク質 (GAP) ドメイン及びC末端のADPリボシル化ドメインから成る二官能性のタンパク質である。ExoY はアデニル酸シクラーゼであり、ExoU はホスホリパーゼである(Engel and Balachandran, 2009, Role of Pseudomonas aeruginosa type III effectors in disease, Curr. Opin. Microbiol., 12:61-6のレビューを参照されたい)。
【0005】
各エフェクターを別々に産生する株を使った研究では、ExoU 及び ExoSは存続、播種、及び死亡率に著しく寄与したが、ExoTはマウス肺感染モデルで僅かな影響しか生まず、 ExoY はP.アエルギノーサの病原性において大きな役割を果たさないようだった (Shaver and Hauser, 2004, Relative contributions of Pseudomonas aeruginosa ExoU, ExoS, and ExoT to virulence in the lung, Infect. Immun., 72:6969-77)。プロトタイプのエフェクター毒素ではないが、フラゲリン(FliC)もまた、P.アエルギノーサからT3SS機序を通じてホスト細胞の細胞質に注入され、そこでnod様受容体NLRC4インフラマソームを通じた生来の免疫系の活性化を惹起するとも考えられる。 (Franchi, et al., 2009, The inflammasome: a caspase-1-activation platform that regulates immune responses and disease pathogenesis, Nat. Immunol., 10:241-7; Miao, et al., 2008, Pseudomonas aeruginosa activates caspase 1 through Ipaf, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 105:2562-7.)
【0006】
機能的T3SSの存在は、P.アエルギノーサにより引き起こされた低呼吸性かつ全身性の感染症に罹患した患者の臨床状態のまずさや死亡に大きく関連している (Roy-Burman, et al., 2001, Type III protein secretion is associated with death in lower respiratory and systemic Pseudomonas aeruginosa infections, J. Infect. Dis., 183:1767-74)。加えて、 T3SSはP.アエルギノーサ動物感染モデルの生存率を下げ(Schulert, et al., 2003, Secretion of the toxin ExoU is a marker for highly virulent Pseudomonas aeruginosa isolates obtained from patients with hospital-acquired pneumonia, J. Infect. Dis., 188:1695-706)、マウス急性肺炎感染モデルではP.アエルギノーサの全身播種に必要である (Vance, et al., 2005, Role of the type III secreted exoenzymes S, T, and Y in systemic spread of Pseudomonas aeruginosa PAO1 in vivo, Infect. Immun., 73:1706-13)。T3SSは、ホストの肺の細菌感染保有能及び除去能を阻害することにより、重篤な肺炎の発症に寄与するようである。T3SS毒素、特にExoUの分泌は、感染部位で貪食細胞媒介型除去を遮断し、感染の樹立を促す (Diaz, et al., 2008, Pseudomonas aeruginosa induces localized immunosuppression during pneumonia, Infect. Immun., 76:4414-21)。その結果、生来の免疫応答の必須成分が局所的に破壊され、肺内の免疫抑制環境が生じる。これにより、P.アエルギノーサが肺内で存続できるようになるだけでなく、他の種の細菌の重複感染も促される。
【0007】
複数の抗菌剤はP.アエルギノーサに対して有効であるが、原因株に対して有効な抗生物質を投与された院内感染性肺炎(HAP)患者であっても、重篤なP.アエルギノーサに伴う死亡率及び再発率の高さは薬物耐性株の出現増加を反映しており、新しい治療薬の必要性を強調するものである(例えば El Solh, et al., 2007, Clinical and hemostatic responses to treatment in ventilator-associated pneumonia: role of bacterial pathogens, Crit. Care Med., 35:490-6; Rello, et al., 1998, Recurrent Pseudomonas aeruginosa pneumonia in ventilated patients: relapse or reinfection?, Am. J. Respir. Crit. Care Med., 157:912-6; 及び Silver, et al., 1992, Recurrent Pseudomonas aeruginosa pneumonia in an intensive care unit., Chest, 101:194-8を参照されたい)。従来の静菌性及び殺菌性抗生物質はこれらの感染症と適切に闘うには不充分だと見られ、P.アエルギノーサ菌力決定因子の阻害剤など、新しい治療アプローチが補助療法として有用であることが立証されるであろう。 Veesenmeyer, et al., 2009, Pseudomonas aeruginosa virulence and therapy: evolving translational strategies, Crit. Care Med., 37:1777-86.
【0008】
治療ターゲットとしてのIII型分泌装置の可能性は、複数のグループが、サルモネラ-チフィムリウム(原語: Salmonella typhimurium)、イェルシニア-ペスチス(原語:Yersinia pestis)、Y.シュードツベルキュローシス(原語: Y. pseudotuberculosis)及びE.コリ(原語:E. coli)を含む、多様な菌種におけるT3SSの阻害剤をスクリーニングする促進材料となってきた (Keyser, et al., 2008, Virulence blockers as alternatives to antibiotics: type III secretion inhibitors against Gram-negative bacteria, J. Intern. Med., 264:17-29; and Clatworthy, et al., 2007, Targeting virulence: a new paradigm for antimicrobial therapy, Nat. Chem. Biol., 3:541-8にレビュー)。T3SS装置を含む多様なタンパク質同士の間の高レベルの配列保存は、ある一種でのT3SSの阻害剤は関連種でも活性である可能性を示唆している。イェルシニアでのスクリーニングで同定されたT3SS阻害剤の広域活性がサルモネラ、シゲラ及びクラミジアで実証されている。 Hudson, et al., 2007. Inhibition of type III secretion in Salmonella enterica serovar Typhimurium by small-molecule inhibitors, Antimicrob. Agents Chemother., 51:2631-5; Veenendaal, et al., 2009, Small molecule type III secretion system inhibitors block assembly of the Shigella type III secreton, J. Bacteriol., 191:563-70; Wolf, et al., 2006, Treatment of Chlamydia trachomatis with a small molecule inhibitor of the Yersinia type III secretion system disrupts progression of the chlamydial developmental cycle, Mol. Microbiol., 61:1543-55。
【0009】
P.アエルギノーサT3SS阻害剤に関するスクリーニングが報告されており、P.アエルギノーサT3SS媒介型分泌の複数の選択的阻害剤がみつかっており、その中の一つはT3SS媒介型分泌及び移行の両方を再現可能に阻害するものである。 Aiello, et al., 2010, Discovery and Characterization of Inhibitors of Pseudomonas aeruginosa Type III Secretion, Antimicrob. Agents Chemother., 54(5):1988-1999。
【0010】
明らかに、P.アエルギノーサ及び他の細菌種の細菌性T3SSの新しい強力な阻害剤が依然、求められている。
【発明を実施するための形態】
【0053】
発明の詳細な説明
本発明は、細菌産生性エフェクター(エフェクター毒素、エキソトキシン、サイトトキシン、細菌毒素とも呼ばれる)を分泌して細菌細胞から動物ホスト細胞へ移行させる細菌III型分泌装置(「T3SS」)を阻害する有機化合物を提供する。ホスト細胞へ移行したエフェクターは、例えば貪食細胞を致死させ、それによってホストの生来の免疫応答を不能にすることなどにより、ホストの免疫応答を効果的に不活性化することができる。このように、ホスト細胞に移行したT3SSは、個体(ヒト又は他の動物)において細菌感染成立において重要な菌力因子であり、特に、免疫系が易感染性となった、あるいはP.アエルギノーサなどの細菌に感染感受性となった、ヒト患者のP.アエルギノーサ日和見感染にとって重要である。
【0054】
本発明がより明確に理解されるよう、以下の省略及び用語を下に定義する通りに用いる。
【0055】
有機分子の多様な置換基(側鎖、ラジカル)の省略は、有機化学で通常用いられるものである。このような省略には、このような置換基の「短い腕」の形が含まれよう。例えば、「Ac」はアセチル基の省略であり、「Ar」は「アリール」基の省略であり、「ハロ」又は「ハロゲン」はハロゲンラジカル(例えばF、Cl、Br、I)を指す。「Me」及び「Et」はそれぞれメチル (CH
3-) 及びエチル (CH
3CH
2-) 基を指すために用いられる省略であり、「OMe」(又は「MeO」)及び「OEt」(又は「EtO」)はそれぞれメトキシ (CH
3O-) 及びエトキシ (CH
3CH
2O-)を指す。有機分子構造における水素原子の存在及び位置は当業者に理解されており、そして公知であるため、水素は有機構造図で必ずしも示されているわけではなく(例えばCH
3 基を表す線の末端など)、あるいはいくつかの構造図では選択的にしか示されていないかも知れない。同様に、構造図における炭素原子の存在及び位置は当業者に理解されており、そして公知であるため、必ずしも「C」として特に省略されている訳ではない。分は通常「分」と省略されており、時間は通常「時」又は「h」と省略される。
【0056】
一つ以上の指名された元素又はステップを「含む」としてここで記載された組成物又は方法は開いた意味であり、指名された元素又はステップは必須であるが、他の元素又はステップを当該の組成物又は方法の範囲内で追加してもよいことを意味する。冗長を避けるために、一つ以上の指名された元素又はステップを「含む」(又は「含む」)として記載されたいずれかの組成物又は方法は、同じ指名された元素又はステップ「から基本的に成る」(又は「基本的に成る」)として記載された、対応する、より限定された組成物又は方法も記述するものであると更に理解され、つまり、当該の組成物又は方法は指名された必須の元素又はステップを含むが、更に、当該組成物又は方法の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響しない付加的な元素又はステップも含んでもよいことを意味する。更に、一つ以上の指名された元素又はステップを「含む」又は「から基本的に成る」としてここで記載された組成物又は方法は、いずれか他の指名されていない元素又はステップを除外する、指名された元素又はステップ「から成る」(又は「から成る」)、対応する、より限定的な閉じた意味の組成物又は方法も記述するものであるとも理解される。ここで開示するいずれかの組成物又は方法において、いずれかの指名された必須の元素又はステップの公知の、又は開示された均等物は、その元素又はステップについて置換され得る。さらに、「から成る群より選択される」元素又はステップとは、列挙された元素又はステップのいずれか二つ以上の組合せを含め、後に続く列挙中の元素又はステップの一つ以上を言うものと、理解される。
【0057】
用語「細菌III型分泌装置阻害剤」、「細菌T3SS阻害剤」、「細菌T3SS阻害化合物」、及び「T3SS阻害化合物」は、ここで用いられる場合、互換可能であり、T3SSエフェクター転写レポータ検定で測定したときに例えば50μMの濃度で少なくとも15%、細菌III型分泌装置を特異的に阻害する能力、又は、T3SS媒介型エフェクター毒素分泌検定で測定したときに細菌T3SSを阻害する能力、を示す化合物を指す。
【0058】
ここで記載するT3SS阻害化合物の治療上の使用の文脈において、用語「処置」、「処置する」、又は「処置する」とは、III型分泌装置を有する細菌の菌力あるいはT3SS媒介性エフェクター分泌又は移行を、停止又は阻害するよう計算又は意図されたT3SS阻害化合物のいずれかの使用を言うものであろう。従って、個体の処置は、細菌感染の可能性を示唆する診断後、即ち、特定の細菌の感染が確認されたか、あるいは、例えば細菌への暴露後又は細菌に感染した個体への暴露後など、感染の可能性が疑われるのみである、に関係なく、行われてもよい。更に、本発明の阻害剤はエフェクター毒素のホスト細胞への導入に影響することで、感染で生じる菌力又は毒性を遮断する又は減少させるが、本阻害化合物は、必ずしも、殺菌性でなくとも、又は、細菌細胞の成長又は増殖を阻害するために有効でなくともよいことも認識されている。これが理由で、細菌感染の除去は、ホスト自身の免疫系又は免疫エフェクター細胞により、あるいは抗生剤の導入により、達成されることになることが理解されよう。このように、本発明の化合物は、例えば抗生物質、抗体、抗ウィルス剤、抗癌剤、鎮痛薬(例えば非ステロイド系抗炎症薬 (NSAID)、アセトアミノフェン、オピオイド、COX-2 阻害剤)、免疫刺激剤(例えばサイトカイン又は合成免疫刺激性有機分子)、ホルモン(天然、合成、又は半合成)、中枢神経系(CNS)刺激剤、鎮吐薬、抗ヒスタミン、エリスロポエチン、補体を活性化する作用薬、鎮静剤、筋肉弛緩剤、麻酔薬、抗痙攣剤、抗鬱剤、抗精神病薬、及びこれらの組合せなどの他の活性成分と慣例通りに組み合わされるであろうと考えられる。
【0059】
用語「部分的に芳香族」は、一つ以上の環が芳香族であり、そして一つ以上の環が非芳香族(飽和している)であることを指す。
【0060】
他の用語の意味は、有機化学、薬理学、及び微生物学の分野を含め、当業において熟練した開業医の理解する通りの文脈で理解されよう。
【0061】
本発明は、シュードモナス-アエルギノーサのT3SSを阻害する特異的有機化合物を提供する。以前に研究されたT3SS阻害剤の構造類似体を、エフェクター毒素-β-ラクタマーゼ融合タンパク質 (ExoS'-βLA)の T3SS-媒介型分泌の阻害について、P.アエルギノーサ株MDM973 (PAK/pUCP24GW-lacI
Q-lacPO-exoS::blaM, 表1)を用いて評価した。最初のT3SS阻害剤のスクリーニング及びバリデーションの詳細については下の実施例1及び2を参照されたい。
【0062】
化合物MBX-1641がプロトタイプの例
【0064】
であるフェノキシアセトアミド骨格を修飾したときの効果を比較した一連の実験では、変更を、「A」アリール基に、Aアリール基のメチルアセトアミド部分へのリンカーに、「B」アリール 基に、そしてB アリール基のメチルアセトアミド部分へのリンカーに有する類似体を合成し(ダイアグラム1を参照されたい)、
【0066】
その結果は、メチルアセトアミド骨格上の交互構造に規定された制限があると、T3SSに関して特異的阻害活性も有する化合物も生じるであろうことを示唆していた。Aアリール基は、ごく1、2か所の修飾であれば、最小標準(即ち200μM)を超える阻害濃度レベル(IC
50)を挙げることなく許容されるかも知れない。しかし、Bアリール基の幅広い置換が、T3SS阻害能に悪影響を与えずに許容され、場合によっては向上させる可能性もあるであろう。概して、該実験から得られた構造/活性の関係は、単一の標的結合部位に対して反応性の代替的化合物に関係する発見に特徴的であった。Aアリール基及びBアリール基への交互のリンカー部分を研究したところ、それらの位置が、結果的に得られる化合物の全体的特性に大きな影響を示すことが見出された。同様に、キラル中心(α炭素)のメチル基を除去する変更、又は、置換基の大きさを増す変更も、T3SS阻害特性に対する大きな影響につながった。
【0067】
類似体合成及び比較検査のプログラムから、以前から解説されてきたフェノキシアセトアミド阻害化合物に匹敵する、又は、多くの場合、これを超える、T3SS阻害特性を示す一ファミリーの新しい化合物が見出された。新しいT3SS阻害化合物のこのファミリーは式I:
【0069】
に定義され、但し式中、
Aは独立に CH 又は Nであり;
X は独立に水素 又はハロゲンから選択され;
Z は O、S、NH;又は NR
3(但し式中、R
3 はアルキルである)であり;
R
1,R
1’、及びR
1’’ は:水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルチオ、又はシアノから独立に選択され、但しこの場合、前記ラジカルのうちの二つ以下は水素であり;
V はNR
2、O、又は CR
3R
4であり;
R
2、R
3、及び R
4 は独立に水素又はアルキルであり;
Y は:
一つ以上のヘテロ原子を含んでもよく、そして未置換でも、又は、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、カルボキサミド、アシルアミノ、アミジノ、スルホンアミド、アミノスルホニル、アルキルスルホニル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ; アリールオキシ、及び ヘテロアリールオキシから選択される最高4個の置換基で置換されてもよい、1乃至6個の炭素原子の二価の直鎖、分枝状、又は環状アルキル、アルケニル又はアルキニル・ラジカル:
酸素;
又はNR
5 (但し式中、R
5 は水素又はアルキルである)から選択され;
W は1乃至3個のアリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、又はヘテロシクロアルキル環と付加的に縮合してもよい、5員環又は6員環を形成するアリール又はヘテロアリール・ラジカルであり(但しWラジカルは未置換でも、又は、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、アシルアミノ、アミジノ、スルホンアミド、アミノスルホニル、アルキルスルホニル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ; アリールオキシ、及びヘテロアリールオキシから選択される最高4個の置換基で置換されてもより)、そして
この場合、いずれか二つの置換基は、一緒になって、前記アリール又はヘテロアリール・ラジカルWと縮合した芳香族又は非芳香族環構造を形成してもよく、W上に見られる置換基は、更に選択的に、Y 又は R
2のいずれか又は Y 及び R
2の両者と選択的に共有結合することで複素環式又は炭素環式の環を形成してもよく、この環系は芳香族でも、ヘテロ芳香族でも、又は部分的に芳香族(即ち、一つ以上の環が芳香族であり、一つ以上の環が非芳香族である(飽和している)でもよい。
【0070】
別の実施態様では、本発明は、式II:
【0072】
の細菌III型分泌装置(T3SS)のファミリーを提供するものであり、但し式中、
Aは独立に CH又は Nであり;
X は独立に水素 又は ハロゲンから選択され;
Z は O、S、NH;又は NR
3(但し式中、R
3 はアルキルである)であり;
R
1,R
1’、及びR
1’’ は:水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルチオ、又はシアノから独立に選択され、但しこの場合、前記のラジカルのうちの2つ以下は水素であり;
R
2、R
3、及びR
4 は独立に水素又はアルキルであり;
U は、オキサゾール、オキサゾリン、イソキサゾール、イソキサゾリン、1,2,3 トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2-オキサジン、1,3-オキサジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジンから選択される二価の5又は6員環の複素環式の環であり;
Y は:
一つ以上のヘテロ原子を含んでもよく、そして未置換でも、又はハロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、カルボキサミド、アシルアミノ、アミジノ、スルホンアミド、アミノスルホニル、アルキルスルホニル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、アリールオキシ、及びヘテロアリールオキシから選択される最高4個の置換基で置換されてもよい、1乃至6個の炭素原子の二価の直鎖、分枝状、又は環状のアルキル、アルケニル、又はアルキニルラジカル;
酸素;
又はNR
5 (但し式中、R
5 は水素又はアルキルである)から選択され;
W は、1乃至3個のアリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、又はヘテロシクロアルキル環と付加的に縮合してもよい、5員環又は6員環の環を形成するアリール又はヘテロアリール・ラジカルであり、この場合のWラジカルは、未置換でも、又はハロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、カルボキサミド、アシルアミノ、アミジノ、スルホンアミド、アミノスルホニル、アルキルスルホニル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ; アリールオキシ、及びヘテロアリールオキシから選択される最高4個の置換基で置換されてもよく、そして
いずれか二つの置換基は、一緒になって、前記アリール又はヘテロアリール・ラジカルWと縮合した芳香族又は非芳香族環構造を形成してもよく、W上に見られる置換基は、選択的に、 Y 又は R
2のいずれか、又はY及び R
2の両者と共有結合することで複素環式又は炭素環式環系を形成してもよく、この環系は、芳香族でも、ヘテロ芳香族でも、又は部分的に芳香族(即ち、一つ以上の環が芳香族であり、一つ以上の環が非芳香族である(飽和している))でもよい。
【0073】
別の実施態様では、本発明は、式III:
【0075】
のT3SS阻害化合物を提供するものであり、但し式中、
Aは CH 又は Nであり;
X は水素 又は ハロゲンから独立に選択され;
R は水素又はメチルであり;
Y は、一つ以上のヘテロ原子を含んでもよく、そして未置換でも、又は、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、カルボキサミド、アシルアミノ、アミジノ、スルホンアミド、アミノスルホニル、アルキルスルホニル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ; アリールオキシ、及びヘテロアリールオキシから選択される最高4個の置換基で置換されてもよい、1乃至6個の炭素原子の二価の直鎖、分枝状、又は環状のアルキル、アルケニル又はアルキニル・ラジカルであり;
Z はO、S、又は NH 又はNR
3であり;そして
W は、1乃至3個のアリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、又はヘテロシクロアルキル環と付加的に縮合してもよい、5員環又は6員環の環を形成するアリール又はヘテロアリール・ラジカルであり、この場合のWラジカルは、未置換でも、又はハロ、シアノ、ヒドロキシル、アミノ、カルボキサミド、カルボキシル、シアノ、スルホンアミド、スルホニル、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、アリールオキシ、及びヘテロアリールオキシから選択される最高4個の置換基で置換されてもよく、そしていずれか二つの置換基は、一緒になって、前記アリール又はヘテロアリール・ラジカルWと縮合した芳香族又は非芳香族環を形成してもよく、W上に見られる置換基は、更に選択的に Y 又は R
2のいずれか、又はY 及び R
2の両者と共有結合することで複素環式又は炭素環式の環系を形成してもよく、該環系は、芳香族でも、非芳香族でも、又は部分的に芳香族(即ち、一つ以上の環が芳香族であり、一つ以上の環が非芳香族である(飽和している))でもよい。
【0076】
更に別の実施態様では、本発明は式IIIのT3SS阻害化合物を提供するものであり、但し式中、
A は CH 又はNであり;
少なくとも一方の X はClであり、そして他方の X は水素、F、又は Clであり;
Y は −CH
2−、−CH(CH
3) −、又は −C(CH
3)
2−であり;そして
W は
【0079】
特に関心が持たれるのは、非対称の炭素(α炭素)を考慮するとR-及びS-異性体のラセミ混合物又は単離R-異性体である、前記の式I、II及びIIIの化合物である。従って、好適な化合物は、下の式Ia、IIa、又はIIIaにより表される単離R-異性体:
【0081】
に限定したのと同じ数値を有し、但し式中、A、X、Y、Z、及びWは、それぞれ式I、II、IIIに限定したのと同じ数値を有する。
【0084】
や、前述のいずれかの特定の異性体型を含む。
【0085】
本発明の化合物は、侵襲細菌を直接、致死させるのではなく、ホストの生来の免疫系を支持することにより、既存の抗菌剤の活性を増強するという新規な抗菌力アプローチにより機能するようにデザインされている。伝統的な生来の免疫のモジュレータではないが、これらの抗T3SS作用薬は、P.アエルギノーサなど、III型分泌装置を有する細菌の急性の細胞毒性効果の大半から生来の免疫系の貪食細胞を防御することにより、ホスト標的に間接的に作用すると考えられる。治療薬としては、本発明の化合物は、P.アエルギノーサT3SSエフェクター毒素による局所的な生来の免疫の抑制が原因と思われる複数菌VAP感染の頻度を低下させるであろう。 Diaz, et al., 2008, Pseudomonas aeruginosa induces localized immunosuppression during pneumonia, Infect. Immun., 76:4414-21。更に、本発明のこれらの化合物は種特異的であり、結果的に通常の細菌叢を保つため、この治療法は、感染性疾患における通常の細菌叢の防御的役割に関して浮上中の理解とも有益に合致するものとなっている。 Parillo and Dellinger,
Critical Care Medicine: Principles of Diagnosis and Management in the Adult, 2
nd ed. (Moseby, New York 2007), pp. 800-802。抗菌剤と組み合わせて用いた場合、この新しいT3SS阻害化合物は、通常の細菌叢の除去には寄与せず、同時投与される抗生物質の低用量使用を可能にするであろう。最後に、これらのT3SS阻害化合物は多数のP.アエルギノーサ株(臨床用単離株を含め)に対して等しく効力があり、P.アエルギノーサの外向きフラックス機序の影響を受けず、身体外での耐性発生に向かう選択圧力をかけず、治療中では比較的に弱い選択圧力しか発揮しないと予測される。当該化合物の好ましい特徴と、新規な作用機序というこの組合せにより、VAP及び菌血症といった急性P.アエルギノーサ感染症の処置及び防止を向上させる新しいアプローチが提供される。
【0086】
本発明の阻害化合物は、転写レポータ検定を用いて50μMの濃度でT3SSエフェクター転写を少なくとも15%、又は、エフェクター分泌検定では100μM以下(IC
50≦100μM)の濃度でエフェクター分泌の少なくとも50%の阻害を示すことにより、阻害する。上記の化合物は、exoT-lux 転写レポータ作成物をシュードモナス-アエルギノーサ PAO1 (ここで記載するレポータ株 MDM852) に導入して用いると15%を超える、シュードモナスのT3SS特異的阻害を示し、及び/又は、P.アエルギノーサ株 MDM973 (PAK/pUCP24GW-lacI
Q-lacPO-exoS::blaM)を用いた、ここで記載したエフェクター毒素-β-ラクタマーゼ・レポータ融合タンパク質検定のT3SS媒介型分泌検定で測定したときに、T3SSについて100μM未満のIC
50値を示した(表1)。エフェクター転写阻害を、15%未満でしかできない、又は200μMを超えるIC
50でしか行えない化合物は、一般に、ここで記載する組成物及び方法においてT3SS阻害剤として有用ではない。
【0087】
特に好適な実施態様では、ここで記載する組成物及び方法で有用なT3SS阻害化合物は、ここで記載するT3SS媒介型エフェクター毒素-β-ラクタマーゼ・レポータ融合タンパク質分泌検定(又は匹敵する検定)で測定したときに100μM未満のIC
50値を有し、更に、ここで記載する標準的な細胞毒性検定で、又は、抗生物質に関する医薬分野で用いたときに、例えば100μM以上のCC
50値(CC
50≧100μM)など、ヒト細胞に対して比較的に低い細胞毒性を有する。このような標準的な細胞毒性検定では、限定はしないが、チャイニーズ・ハムスター卵巣 (CHO) 細胞、HeLa 細胞、Hep-2 細胞、ヒト胚性腎 (HEK) 293 細胞、 293T 細胞等を含む、抗生物質用の細胞毒性検定で典型的に用いられるいずれのヒト細胞を用いてもよい。
【0088】
更により好適には、ここで記載するT3SS阻害化合物は、ここで記載するT3SS媒介型エフェクター毒素-β-ラクタマーゼ・レポータ融合タンパク質分泌検定又は匹敵する検定で測定したときに25μM以下の IC
50 値を有する。代替的には、本発明の好適な化合物は、以下に記載する実施例で比較のために内部基準として用いられたN-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イルメチル)-2-(2,4-ジクロロフェノキシ)プロパンアミド(上に記載した化合物 MBX-1641)に匹敵する、又は好ましくはそれを超える効力(IC
50)を示す。
【0089】
更に別の実施態様では、ここで記載するT3SS阻害化合物は、それがT3SSを特異的に阻害することを指し示すために充分に高い最小阻害濃度(MIC)を有する。
【0090】
組成物及び方法
ここで記載する通りのT3SS阻害化合物はまた、確立された化学法を用いても、合成できよう。ここで記載する化合物の大半は、立体異性体のラセミ混合物として生成又は得られる。
【0093】
置換2-(2,4-ジクロロフェノキシ)酢酸のDMF溶液に 2-(1H-7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルヘキサフルオロリン酸ウロニウム (1.2 eq)、置換ベンジルアミン (1.2 eq)、及びジイソプロピルエチルアミン (1.3 eq)を加える。該溶液を室温で16時間、撹拌する。該反応液を水で希釈し、 EtOAcで抽出し、フラッシュ・クロマトグラフィーにかける。溶媒を蒸発させると所望の生成物が提供される。以下の化合物が前述の態様で調製された。
【0095】
明るい茶色の粉末; R
f 0.62 (50% EtOAc/ヘキサン); m.p. 110-114°C;
1H-NMR [300 MHz, CDCl3]: δ 7.37 (d, 1H), 7.17 (dd, 1H), 6.82 (d, 2H), 6.72 (d, 2H), 6.67-6.65 (m, 2H), 5.94 (s, 2H), 4.61 (t, 1H) 4.32 (d, 2H), 2.08-1.99 (m, 2H), 1.04 (t, 3H); LCMS: 384.2 (M+1).
【0097】
明るい茶色の粉末;R
f 0.72 (50% EtOAc/ヘキサン); m.p. 91-94°C;
1H-NMR [300 MHz, CDCl3]: δ 7.36 (d, 1H), 7.16 (dd, 1H), 6.83-6.71 (m, 3H), 6.65-6.63 (m, 2H), 5.94 (s, 2H), 4.63 (t, 1H) 4.35 (d, 2H), 2.10-1.93 (m, 2H), 1.59-1.48 (m, 2H), 0.95 (t, 3H); LCMS: 398.2 (M+1).
【0099】
白色のビーズ; R
f 0.80 (50% EtOAc/ヘキサン); m.p. 73-75°C;
1H-NMR [300 MHz, CDCl3]: δ 7.36 (d, 1H), 7.15 (dd, 1H), 6.80 (d, 1H), 6.71 (d, 1H), 6.64-6.62 (m, 3H), 5.94 (s, 2H), 4.43 (d, 1H), 4.36-4.33 (m, 2H), 2.38-2.32 (m, 1H), 1.10 (s, 3H), 1.07 (s, 3H); LCMS: 396.1 (M+1).
【0101】
明るい黄色のビーズ; R
f 0.71 (50% EtOAc/ヘキサン); m.p. 159-161°C;
1H-NMR [300 MHz, CDCl
3]: δ 8.00 (d, 1H), 7.67 (d, 1H), 6.74-6.66 (m, 3H), 6.57 (br s, 1H), 5.94 (s, 2H), 5.45-5.42 (m, 1H), 4.38 (d, 2H), 2.12-2.02 (m, 1H), 1.01 (t, 3H); LCMS: 405.0 (M+Na).
【0103】
白色の結晶; R
f 0.65 (50% EtOAc/ヘキサン); m.p. 108-109°C;
1H-NMR [300 MHz, CDCl3]: δ 7.37 (d, 1H), 7.20-7.15 (m, 3H), 7.02-6.95 (m, 2H), 6.90 (br s, 1H), 6.82 (d, 1H), 4.62 (t, 1H), 4.51-4.34 (m, 2H), 2.08-1.99 (m, 2H), 1.04 (t, 3H); LCMS: 358.3 (M+1).
【0105】
黄色がかった白色の粉末; R
f 0.72 (50% EtOAc/ヘキサン); m.p. 119-121°C;
1H-NMR [300 MHz, CDCl3]: δ 7.37 (d, 1H), 7.18-7.13 (m, 3H), 7.02-6.95 (m, 2H), 6.84-6.80 (m, 2H), 4.64 (t, 1H), 4.42 (d, 2H), 2.01-1.93 (m, 2H), 1.57-1.46 (m, 2H + H
2O), 0.95 (t, 3H); LCMS: 372.4 (M+1).
【0107】
桃色の結晶; R
f 0.80 (50% EtOAc/ヘキサン); m.p. 143-146°C;
1H-NMR [300 MHz, CDCl3]: δ 7.36 (d, 1H), 7.17-7.10 (m, 3H), 7.01-6.94 (m, 2H), 6.80 (d, 2H), 6.72 (br s, 1H), 4.49-4.34 (m, 3H), 2.39-2.31 (m, 1H), 1.09 (s, 3H), 1.07 (s, 3H); LCMS: 370.1 (M+1).
【0109】
オフホワイトの針型の結晶; R
f 0.72 (50% EtOAc/ヘキサン); m.p. 119-122°C;
1H-NMR [300 MHz, CDCl
3]: δ 7.99 (d, 1H), 7.68 (d, 1H), 7.21-7.17 (m, 2H), 7.03-6.95 (m, 2H), 6.65 (br s, 1H), 5.46 (t, 1H), 4.45 (d, 2H), 2.13-2.02 (m, 2H), 1.01 (t, 3H); LCMS: 379.0 (M+Na).
【0111】
白色のビーズ; R
f 0.66 (50% EtOAc/ヘキサン); m.p. 85-88°C;
1H-NMR [300 MHz, CDCl3]: δ 7.36 (d, 1H), 7.18-7.10 (m, 3H), 6.85-6.81 (m, 4H), 4.61 (t, 1H), 4.47-4.34 (m, 2H), 3.79 (s, 3H), 2.08-1.99 (m, 2H), 1.04 (t, 3H); LCMS: 392.2 (M+Na).
【0113】
白色/半透明の斑点; R
f 0.68 (50% EtOAc/ヘキサン); m.p. 103-104°C;
1H-NMR [300 MHz, CDCl3]: δ 7.35 (d, 1H), 7.16 (dd, 1H), 7.10 (d, 2H), 6.85-6.80 (m, 3H), 6.76 (br s, 1H), 4.63 (t, 1H), 4.39 (d, 2H), 3.79 (s, 3H), 2.01-1.93 (m, 2H), 1.56-1.48 (m, 2H), 0.95 (t, 3H); LCMS: 406.4 (M+Na).
【0115】
オフホワイトのビーズ; R
f 0.77 (50% EtOAc/ヘキサン); m.p. 76-79°C;
1H-NMR [300 MHz, CDCl3]: δ 7.35 (d, 1H), 7.14 (dd, 1H), 7.09 (d, 1H), 6.82-6.78 (m, 3H), 6.63 (br s, 1H), 4.45-4.31 (m, 3H), 3.79 (s, 3H), 2.39-2.32 (m, 1H), 1.09 (s, 3H), 1.07 (s, 3H); LCMS: 382.3 (M+1).
【0117】
白色の粉末; R
f 0.49 (50% EtOAc/ヘキサン); m.p. 117-118°C;
1H-NMR [300 MHz, CDCl3]: δ 7.37 (d, 1H), 7.16 (dd, 1H), 6.85-6.80 (m, 2H), 6.78-6.73 (m, 3H), 4.62 (t, 1H), 4.48-4.35 (m, 2H), 3.86 (s, 3H), 3.81 (s, 3H), 2.09-2.00 (m, 2H), 1.05 (t, 3H); LCMS: 422.2 (M+Na).
【0119】
オフホワイトの粉末; R
f 0.57 (50% EtOAc/ヘキサン); m.p. 81-83°C;
1H-NMR [300 MHz, CDCl3]: δ 7.36 (d, 1H), 7.16 (dd, 1H), 6.84-6.71 (m, 5H), 4.64 (t, 1H) 4.40 (d, 2H), 3.86 (s, 3H), 3.80 (s, 3H), 2.02-1.94 (m, 2H), 1.57-1.49 (m, 2H + H
2O), 0.95 (t, 3H); LCMS: 436.2 (M+Na).
【0121】
白色の粉末; R
f 0.70 (50% EtOAc/ヘキサン); m.p. 108-110°C;
1H-NMR [300 MHz, CDCl3]: δ 7.36 (d, 1H), 7.15 (dd, 1H), 6.82-6.67 (m, 5H), 4.47-4.31 (m, 3H), 3.86 (s, 3H), 3.79 (s, 3H), 2.39-2.34 (m, 1H), 1.11 (s, 3H), 1.08 (s, 3H); LCMS: 412.0 (M+1).
【0123】
明るい黄色の粘着性の油; R
f 0.71 (50% EtOAc/ヘキサン); m.p. NA;
1H-NMR [300 MHz, CDCl3]: δ 7.36 (d, 0.7H), 7.30 (d, 0.3H), 7.13 (dd, 1H), 6.89-6.81 (m, 1H), 6.69 (d, 1H), 6.61-6.57 (m, 1.4H), 6.48-6.41 (m, 0.5H), 5.94 (br s, 2H), 4.78-4.73 (m, 1H), 4.64 (br s, 0.5H), 4.44 (br s, 1.4H), 2.98 (s, 2.1H), 2.85 (s, 0.8H), 2.10-2.00 (m, 2H), 1.17-1.10 (m, 3H); LCMS: 396.1 (M+1).
【0125】
オフホワイトの針型の結晶; R
f 0.73 (50% EtAc/ヘキサン); m.p. 125-127°C;
1H-NMR [300 MHz, CDCl3]: δ 7.99 (d, 1H), 7.80 (d, 1H), 7.65 (d, 2H), 7.45 (d, 1H), 7.26 (d, 1H + CHCl
3), 7.20 (dd, 1H), 6.69 (br s, 1H), 5.47 (t, 1H), 4.60 (dd, 2H), 2.12-2.06 (m, 2H), 1.03 (t, 3H); LCMS: 394.8 (M+1).
【0126】
加えて、下のスキーム1は、N-(ベンゾ[b]チオフェン-5-イルメチル)-2-(3,5-ジクロロピリジン-2-イルオキシ)ブタンアミドの、それぞれMBX-2359、MBX-2401、及びMBX 2402、(即ち、ラセミ体、R-、及びS-異性体と指定された好適な実施態様の適した合成スキームを提供する。
【0128】
当該の合成は、3,5-ジクロロ-2-フルオロピリジンの2-フルオロ置換基のエチル 2-ヒドロキシブタノエートによる塩基促進性置換から始まる。その結果できるエステルをサポニン化した後、ベンゾ[b]チオフェン-5-イルメタンアミンを用いてペプチド結合させると、標的化合物MBX-2359のラセミ混合物が生じる。次に、キラルHPLC を用いて、二つのエナンチオマー MBX-2401 及びMBX-2402 をそれらのエナンチオマーを純粋な形のままで(例えば、 >99%) 分離する。
【0129】
ここで記載するT3SS阻害化合物は、ケムブリッジ・コーポレーション(米国カリフォルニア州サンディエゴ)、ライフ・ケミカルズ社(カナダ、オンタリオ州バーリントン)、及びティムテック LLC(米国デラウェア州 ・ニューアーク)などの商業提供者に注文で合成させることもできる有機化合物である。
【0130】
他に示さない限り、ある組成物又は方法中でのT3SS阻害化合物の使用の記載は、二種以上のT3SS阻害化合物の組合せを、本発明のある組成物又は方法中でのT3SS阻害活性の源として用いる実施態様も包含すると理解される。本発明による医薬組成物は、ここで記載する通りのT3SS阻害化合物、又はその薬学的に許容可能な塩、を「活性成分」として、及び、液体、固体、又は半固体化合物でもよい薬学的に許容可能な担体(又は「賦形剤」)を含む。「薬学的に許容可能な」化合物又は組成物とは、当該化合物又は組成物が、生物学的、化学的又はいずれか他の態様では、身体の化学及び代謝にとって不適合でなく、患者にとって所望の治療上及び/又は予防上の利益を犠牲にする態様では、T3SS阻害剤又は組成物中に存在するであろういずれか他の成分の活性に悪影響を与えないことを意味する。本発明で有用な薬学的に許容可能な担体には、医薬組成物の調製業の当業者に公知のものが含まれ、その中には、限定はしないが、水、生理的pH緩衝剤、生理的に適合性の塩溶液(例えばリン酸緩衝生理食塩水)、及び等張の溶液が含まれる。また本発明の医薬組成物は、一種以上の医薬品添加物、即ち、活性成分以外で組成物中の好ましい特性に寄与する又は高める化合物又は組成物、も含んでよい。
【0131】
多様な医薬品添加物、投薬量、剤形、投与形態等を含め、医薬組成物を調合する多様な局面は、医薬組成物業の当業者に公知であり、例えば
Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th edition, Alfonso R. Gennaro, ed. (Mack Publishing Co., Easton, PA 1990),
Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Volumes 1 & 2, 19th edition, Alfonso R. Gennaro, ed., (Mack Publishing Co., Easton, PA 1995)、又は医薬組成物の調製に関する他の標準的な教本など、標準的な医薬の教本でも入手することができる。
【0132】
医薬組成物は、意図された投与形態に特に適した多様な剤形のいずれであってもよい。このような剤形には、限定はしないが、水溶液、懸濁液、シロップ、エリキシル、錠剤、ロゼンジ、丸剤、カプセル、粉末、フィルム、座薬、及び、吸入用調合物を含む粉末、がある。好適には、本医薬組成物は、T3SSの有効な阻害を生じるように計算された用量の一部でも又は複数回分でもよい、精確な投与量の一回分投与に適した単位剤形であるとよい。
【0133】
ここで記載するT3SS阻害化合物(又はT3SS阻害剤の組合せ)を含む組成物は、選択的には、T3SS阻害活性以外の一種以上の他の好ましい治療上又は予防上の活性を提供する第二の活性成分(「第二の作用薬」、「第二の活性作用薬」とも呼ばれる)を持っていてもよい。本発明の組成物で有用なこのような第二の作用薬には、限定はしないが、抗生物質、抗体、抗ウィルス薬、抗癌剤、鎮痛薬(例えば非ステロイド系抗炎症剤)(NSAID)、アセトアミノフェン、オピオイド、COX-2阻害剤)、免疫刺激剤(例えばサイトカイン又は合成の免疫刺激有機分子)、ホルモン(天然、合成、又は半合成)、中枢神経系(CNS)刺激剤、抗催吐薬、抗ヒスタミン、エリスロポエチン、補体刺激薬、鎮静剤、筋弛緩剤、麻酔薬、抗痙攣剤、抗鬱剤、抗精神病薬、及びこれらの組合せ、がある。
【0134】
ここで記載する通りの医薬組成物は、ヒト又は他の動物に、他の公知の治療薬又は予防薬、特に、治療用芳香剤又は多環式抗生物質として用いられるときと類似の態様で、投与され得る。個体への投与用の投薬量や投与形態は、患者の年齢、体重、性別、状態などの多様な因子や遺伝的因子に応じ、最終的には、担当する資格ある保健医によって決定されるであろう。
【0135】
ここで記載するT3SS阻害化合物の薬学的に許容可能な塩には、薬学的に許容可能な無機及び有機酸及び塩基を由来とするものが含まれる。適した酸の例には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、パモ酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン−p−スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、タンニン酸カルボキシメチルセルロース、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、及びベンゼンスルホン酸がある。
【0136】
本発明は更に、ここで記載する化合物のいずれかの塩基性含窒素基の「四級化」も考え得るが、但し条件としてこのような四級化は、当該化合物のT3SS阻害能を破壊しないものである。このような四級化は可溶性を高めるには特に好ましいであろう。いずれの塩基性窒素も、限定はしないが、ハロゲン化低級(例えば C
1-C
4)アルキル(例えば塩化、臭化、及びヨウ素化メチル、エチル、プロピル及びブチル);硫酸ジアルキル(例えば硫化ジメチル、ジエチル、ジブチル及びジアミル);長鎖ハロゲン化物(例えば塩化、臭化及びヨウ素化デシル、ラウリル、ミリスチル及びステアリール);及びハロゲン化アラルキル(例えば臭化ベンジル及びフェネチル)を含め、多様な化合物のいずれでも四級化することができる。
【0137】
固体組成物の場合、限定はしないが、マンニトール、ラクトース、でんぷん、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、及び炭酸マグネシウムを含む、従来の非毒性の固体の担体を用いてもよい。
【0138】
医薬組成物は、多様な非経口及び経口経路又は形態のいずれかによる患者への投与に向けて調合されてもよい。このような経路には、限定はしないが、静脈内、筋肉内、関節内、腹腔内、頭蓋内、脊椎傍、関節周囲、骨膜、皮下、皮内、滑膜内、胸骨内、鞘内、病巣内、気管内、舌下、肺内、局所、直腸、鼻腔、頬側、膣、又は移植されたレザバを通じて、がある。 移植されるレザバは、機械的、浸透圧、又は他の手段により機能してもよい。投与が静脈内、動脈内、又は筋肉内経路を通じてである場合、一般的かつ特に、医薬組成物は巨丸剤として、時間的に分けられた二種以上の別々の用量として、又は一定もしくは非線形の流れの輸注として与えられてよい。
【0139】
医薬組成物は、例えば無菌の注射可能な水溶液又は油性懸濁液としてなど、無菌の注射可能な製剤の形であってよい。このような製剤は、適した分散剤又は湿潤剤(例えば、ポリオキシエチレン 20ソルビタンモノオレエート(「ポリソルベート80」とも呼ばれる);ニュージャージー州ブリッジウォーター、ICIアメリカ社、TWEEN(登録商標) 80)及び懸濁剤を用いて、当業で公知の技術に従って調合できよう。注射可能な調合物に用いてもよい許容可能な賦形剤及び溶媒の中には、マンニトール、水、リンガー液、等張の塩化ナトリウム溶液、及び 1,3−ブタンジオール溶液がある。加えて、無菌の固定油を従来のように、溶媒又は懸濁媒質として用いてもよい。この目的のために、合成のモノ−又はジグリセリドを含む無刺激性の固定油を用いてもよい。オレイン酸などの脂肪酸や、そのグリセリド誘導体は、オリーブ油又はひまし油、特にそれらのポリオキシエチル化型を含む天然の薬学的に許容可能な油と同様に、注射可能な製剤中に有用である。
【0140】
ここに記載するT3SS阻害剤は、限定はしないが、カプセル、錠剤、カプレット(原語:caplet)、丸剤、フィルム、水溶液、油性懸濁液、シロップ、又はエリキシルを含む、多様な経口投与可能な剤形のいずれでも調合してよい。経口使用のための錠剤の場合には、通常用いられる担体には、ラクトース及びコーン・スターチがある。ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤もまた、典型的に加えられる。カプセル型での経口投与の場合、有用な希釈剤にはラクトース及び乾燥コーン・スターチがある。カプセル、錠剤、丸剤、フィルム、ロゼンジ、及びカプレットを、遅延又は持続放出のために調合してもよい。
【0141】
個体の口内で崩壊又は溶解する錠剤及び他の固形もしくは半固形調合物を調製してもよい。このような急速崩壊性又は急速溶解性の調合物は、飲み込む助けとする外因性の水の使用をなくすか、又は大きく減らすであろう。更に、急速崩壊性又は急速な溶解性の調合物はまた、飲み込むのが困難な個体を処置する際に特に有用である。このような調合物の場合、通常、口腔内で錠剤を崩壊させるには少量の唾液で充分である。次に活性成分(ここで記載するT3SS阻害剤)を口腔粘膜の下(例えば舌下及び/又は頬粘膜)にある血管からの循環中に部分的又は完全に吸収させるか、あるいは、胃腸管から吸収される溶液として飲み込ませることができる。
【0142】
口腔粘膜による吸収又は腸管(胃及び腸)を通じた吸収に関係なく、水性の懸濁液を経口投与する場合、T3SS阻害剤を含む組成物を乳濁剤及び/又は懸濁剤と有利に組み合わせてもよい。このような組成物は液体、溶解可能なフィルム、溶解可能な固体(例えばロゼンジ)、又は半固体(咀嚼可能及び消化可能)の形であってよい。必要であれば、このような経口投与可能な組成物は、更に、甘味料、着香料、風味マスク剤、着色剤、及びこれらの組合せなど、一種以上の他の医薬品添加物を含んでもよい。
【0143】
ここで記載する通りのT3SS阻害剤を含む医薬組成物はまた、膣又は直腸投与用の座薬として調合されてもよい。このような組成物は、ここで記載する通りのT3SS阻害化合物を、室温では固体であるが体温では液体であるために適した体空間内で融解してT3SS阻害剤及び当該組成物のいずれか他の所望の成分を放出するような、適した非刺激性の医薬品添加物と混合することにより、調製することができる。このような組成物で特に有用な医薬品添加物には、限定はしないが、ココア・バター、みつろう、及びポリエチレングリコールがある。
【0144】
T3SS阻害剤の局所投与は、例えば表皮、表面創、又は手術中に到達可能にされた部分など、所望の処置が、局所適用により到達可能にされた部分又は器官に関係する場合に有用であろう。ここで記載するT3SS阻害剤の局所投与用の担体には、限定はしないが、鉱物油、流動パラフィン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳濁ろう、及び水がある。代替的には、ここで記載する通りのT3SS阻害剤を含む局所用組成物を、下側の真皮層及びその下の血管系への著しい浸透を起こすことなく、上側の真皮層による阻害剤吸収を促進させるために、適した担体に懸濁又は溶解させた阻害剤を含む適したローション又はクリームで調合してもよい。局所投与用に特に適した担体には、限定はしないが、鉱物油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルろう、セトアリール(原語:cetearyl)アルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、及び水がある。T3SS阻害剤はまた、ゼリー、ゲル又は皮膚軟化薬として局所塗布用に調合してもよい。局所投与はまた、皮膚用パッチを通じて達成してもよい。
【0145】
局所及び経皮用調合物の当業者であれば、吸収促進剤、皮膚軟化薬など、多様な成分の選抜及び調合は知るところであり、局所投与(即ち、下側の真皮層及びその下の血管系による吸収は最小限か又は全くない状態で表面又は上側の真皮層に主に留まる)又は経皮投与(上側の真皮層全体に吸収されて下側の真皮層及びその下の血管系に浸透する)に特に適した組成物を提供することができる。
【0146】
ここで記載する通りのT3SS阻害剤を含む医薬組成物は鼻腔投与に向けても調合してよく、その場合の吸収は鼻腔通路又は肺の粘膜を通じて起きるであろう。このような投与形態には、典型的には、当該組成物が粉末、溶液又は液体懸濁液の形で提供されることが必要であり、液体又は粒子のエーロゾル又は懸濁液が生じるように、その後、気体(例えば空気、酸素、窒素、又はこれらの組合せ)と混合される。吸入可能な粉末組成物は、好ましくは、例えばメレジトース(メリシトース)などの低もしくは非刺激性の粉末担体を用いるとよい。このような組成物は、医薬調合業で公知の技術に従って調製されるが、ベンジルアルコール又は他の適した保存剤、生物学的利用能を高めるための吸収促進剤、フルオロカーボン、及び/又は、当業で公知の他の可溶化剤又は分散剤を用いて、生理食塩水の溶液として調製され得る。鼻腔通路又は肺を通じた投与用の、ここで記載されるT3SS阻害剤を含む医薬組成物は、例えば院内感染肺炎(HAP)など、肺感染症を処置する際に特に有効であろう。
【0147】
ここで記載された医薬組成物は、剤形及び投与形態に適した多様な方法で梱包してよい。これらには、限定はしないが、バイアル、びん、缶、パケット、アンプル、カートン、柔軟性容器、吸入器、及びネブライザーがある。このような組成物は、同じ容器から単一又は複数回の投与用に梱包してもよい。好ましくは乾燥粉末又は凍結乾燥型のT3SS阻害剤を含む組成物と、好ましくは添付の使用指示書に説明するように投与直前に当該乾燥又は凍結乾燥組成物と配合される、適した希釈剤とを含むキットを提供してもよい。更に、自己注射器及び針無しジェット注射器用の単一回使用用の予め充填されたシリンジ又はカートリッジ内に医薬組成物を梱包してもよい。多数回使用用の梱包には、細菌、真菌等の成長を妨げるが患者に投与されたときに非毒性である濃度で、フェノール、ベンジルアルコール、メタークレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、塩化ベンザルコニウム、及び塩化ベンゼトニウムなどの抗菌剤の添加が必要であろう。
【0148】
現在製薬業で用いられており、熟練した開業医には公知である良好な製造慣例に従って、医薬組成物と接触する又は医薬組成物を含む全ての成分は無菌でなくてはならず、業界基準に従って無菌性を定期的に検査されねばならない。滅菌法は、限外濾過、オートクレーブ、乾燥及び湿潤式加熱、酸化エチレンなどの気体への暴露、次亜塩素酸ナトリウム(ブリーチ)を含む酸化剤などの液体への暴露、高エネルギー電磁線照射(例えば紫外線、X線、ガンマ線、電離性放射線)への暴露を含む。滅菌法の選択は、T3SS阻害剤又は当該組成物の他の成分の所望の生物学的機能を大きく変えない最も効果的な滅菌を行うことを目的として、熟練した開業医によって行われるであろう。
【0149】
本発明の更なる実施態様及び特徴は以下の非限定的な実施例から明白であろう。
【実施例1】
【0150】
実施例1. T3SS阻害剤の特徴付けのための材料及び方法
株、プラスミド及び成長培地
検定に用いられる細菌株及びプラスミドを以下の表1に記載する。P.アエルギノーサ株はすべて、PAO1 (Holloway, et al., 1979, Microbiol. Rev., 43:73-102)、PAK (Bradley, D. E., 1974, Virology, 58:149-63)、又は PA14 (Rahme, et al., 1995, Science, 268:1899-902)由来株だった。E.コリ TOP10 (Invitrogen社)、E.コリ DB3.1 (GATEWAY(登録商標) host, Invitrogen社)、E.コリ SM10 (de Lorenzo and Timmis, 1994, Methods Enzymol., 235:386-405)、及びE.コリ S17-1 (ATCC 47055) を、分子クローニング用のホストとして用いた。ルリア-ベルターニ (LB) 培地(液体及び寒天)はDifco社から購入された。LBには30μgのゲンタマイシン(LBG) が1 mM のイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド (IPTG) 及び5 mM のEGTA(それぞれLBGI社 及びLBGIE社)と一緒に、又はなしで添加された。
【0151】
【表1】
(1) Aiello, et al., 2010, Antimicrob. Agents Chemother., 54:1988-99.
(2) Lee, et al., 2005, Infect. Immun.,73:1695-705.
(3) Liberati, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:2833-8.
(4) Marketon, et al., 2005, Science, 309:1739-41.
(5) Pan, et al., 2009, Antimicrob. Agents Chemother., 53:385-92.
Y.ペスティス・レポータ株はジョン・ゴーギン博士(マサチューセッツ大学、メディカル・スクール)からご厚誼により提供された。
プラスミドpGSV3-Lux はドナルド.ウッズ博士(カルガリー大学)からご厚誼により提供された。
【0152】
PCR及びプライマー
(米国アラバマ州ハンツヴィル、Eurofins MWG Operon社による)合成オリゴヌクレオチド・プライマーはP.アエルギノーサに関する公開済みゲノム配列 (Stover, et al., 2000, Nature, 406:959-64) 及びウェブ・ベースのPRIMER3 (Whitehead Institute社)を用いてデザインされた。プライマーは、P.アエルギノーサ染色体DNAプレート用のFAILSAFE(登録商標) ポリメラーゼ(Epicentre社)、緩衝液 G(Epicentre社)、及び4% DMSO を用いたPCR増幅で10μMにして用いられた。
【0153】
【表2】
【0154】
ルシフェラーゼ転写レポータスクリーニング
フォトハビドゥス-ルミネセンス(原語:Photorhabdus luminescens )lux オペロン (luxCDABE) のエフェクター遺伝子 exoT (PA0044) への転写融合を、 exoT 遺伝子の内側フラグメント(上の表2のプライマー exoT-F+EcoRI / exoT-R+EcoRIを用いたPCRにより作製された712bp)を EcoRI-切断レポーター・プラスミド pGSV3-lux-Gmに挿入することにより行った (Moir, et al., 2008, Trans. R. Soc. Trop. Med. Hyg., 102 Suppl 1:S152-62に記載された、Moore, et al., 2004, Infect. Immun., 72:4172-87 )。その結果できたプラスミドを E. coli SM10 細胞に導入し、P.アエルギノーサ PAO1及びPA01 ΔpscC 細胞に接合により移行させて、それぞれ組換えレポータ株 MDM852及び MDM1355を作製した。exoT 染色体遺伝子座への挿入を、クローニングされた遺伝子座 (exoT-out-F) の外側のプライマーと、e luxC 遺伝子(luxC-R) の内側のプライマー(表2、上記)を用いたPCRで確認した。
【0155】
阻害剤検査のために、化合物のマスター・プレートを検査初日に室温で解凍し、1μlの化合物(最終45μの化合物及び1.8% DMSO)を、384ウェルの不透明の黒色スクリーニング・プレートに Sciclone ALH 3000 液体操作ロボット(Caliper社)及び Twister II マイクロプレート・ハンドラー(Caliper社)を用いて加えた。レポーター株 MDM852 を37℃でLBGI 中で OD
600 ~0.025 - 0.05になるまで成長させ、検査化合物及びEGTA(5μlの 0.1M ストック溶液)を含有する、半透明の気体透過性シール(Abgene社、カタログ番号 AB-0718))で覆ったマイクロプレート (50μl/ウェル) に移した。コントロールのウェルは 、完全に誘導されたT3SS (EGTA 及びDMSO、カラム1及び2)及び誘導されていない T3SS(DMSOのみ、カラム23及び24)を持つ細胞を含んでいた。プレートは室温で300分間、インキュベートされた。次に、発光をエンビジョン・マルチラベル・マイクロプレート・リーダー(PerkinElmer社)で測定した。検定のシグナル・ダイナミックレンジに対する正及び負のコントロールの分離帯域の比として定義される、スクリーニングのウィンドウ係数 Z’-因数(Zhang, et al., 1999, J. Biomol. Screen., 4:67-73を参照されたい)は、このスクリーニングにおいて平均0.7だった。Z-スコアを含む全てのスクリーニング・データや、確認及びバリデーション・データは一つの中央データベースに保存された (CambridgeSoft's ChemOffice 11.0)。化合物は95%を超える純度であり、LC-MS分析により予測された質量であることが確認された。
【0156】
エフェクター-β-ラクタマーゼ(βLA)分泌検定。
(a)P.アエルギノーサ。
ExoS'-β-ラクタマーゼ(βLA) 融合タンパク質(P.アエルギノーサのエフェクターExoSの234コドンを、分泌シグナルコドンを欠損する TEM-1β-ラクタマーゼ遺伝子に融合させたものから成る)をコードする遺伝子を、重複伸長 PCR (SOE-PCR) (Choi and Schweizer, 2005, BMC Microbiol., 5:30)による、プライマー5−10(表2、上記)を用いたスプライシングにより構築し、配列を確認し、lacI
Q-含有 GATEWAY(登録商標) ベクター pUCP24GW(Moir, et al., 2007, J. Biomol. Screen., 12:855-64を参照されたい) に lac promoterの後方にクローニングし、P.アエルギノーサに電気穿孔法により導入した (Choi, et al., 2006, J. Microbiol. Methods, 64:391-7を参照されたい)。融合タンパク質の分泌は、前に解説された検定(Lee, et al., 2007, Infect. Immun.,75:1089-98)の改良版で透明な96ウェル・マイクロプレート中で色素産生性β-ラクタマーゼ基質ニトロセフィンの加水分解を測定することで検出された。株MDM973 (PAK/pUCP24GW-exoS::blaM) の細胞を、LBGで一晩成長させてから、検査化合物を加えた、又は加えない状態で二次培養して0.1mlのLBGIEにし、150分間、成長させた。ニトロセフィン (100μg/ml 最終) を加え、A
490 測定値を、毎分15分間、 Victor
3V 1420 マルチラベル HTS カウンター (PerkinElmer社)で採取した。傾斜を、分泌したエフェクターβLA融合タンパク質量の相対尺度として計算すると、 IPTG, EGTAでの誘導と、P.アエルギノーサ細胞中の機能的pscC遺伝子の存在とに絶対的に依存していた。典型的なシグナル:バックグラウンド比は6−10だった。
【0157】
(b)イェルシニア-ペスティス。プラスミドpMM85(yopE::blaM)を持つ弱毒化Y.ペスティス株 JG 153(マサチューセッツ州ウォーセスター、ユニバーシティ・オブ・マサチューセッツ・メディカル・スクールのジョンゴーグエン氏から提供)を30℃のLB +20μg/ml クロラムフェニコール中で成長させて、T3SSの誘導と、T3SSをコードする pCD1 プラスミドの消失とを防いだ。T3SSを誘導するために、細胞を30℃から37℃にシフトさせ、EGTAを 1 mM の最終濃度まで加えた。細胞培養物 (0.1 ml) を、検査化合物を含有する透明な96ウェル・マイクロプレートに加え、3時間、37℃でインキュベートした。ニトロセフィンを加え (100μg/ml 最終)、A
490 測定値を毎分10分間、エンヴィジョン・マルチラベル・マイクロプレート・リーたー(PerkinElmer社)で採取した。傾斜を阻害剤濃度対して表にして IC
50 値を判定した。
【0158】
lac-促進性 luxCDABEの生物発光の阻害に関する検定
完全フォトラブドゥス-ルミネセンス(原語:Photorhabdus luminescens )luxCDABE l遺伝子座を pGSV3-lux (Moore, et al., 2004, Infect. Immun.,72:4172-87) から、フュージョン(原語:Phusion )ポリメラーゼ(マサチューセッツ州ビバリー、NEB社)及びプライマー lux-F+GWL 及びlux-R+GWRを用いたPCR、続いてプライマーGW-attB1 及びGW-attB2 を用いた二回目のPCRにより増幅して、完全ゲートウェイ認識配列(表2)を提供した。最高5.8 kb の産物をゲル精製し、pDONR221 にBPClonase(登録商標) 酵素(Invitrogen社)で挿入し、次に pUCP24GW (Moir, et al., 2007, J. Biomol. Screen., 12:855-64) に LRClonase(登録商標) 酵素(Invitrogen社)で挿入した。できたpUCP24GW-lacPO-luxCDABE プラスミドを、電気穿孔によりlac リプレッサー lacI
Qの一つの染色体コピーを持つP.アエルギノーサPAO-LAC 株にphiCTX 遺伝子座で導入し (Hoang, et al., 2000, Plasmid, 43:59-72) 、ゲンタマイシン耐性について選抜した (Choi, et al., 2006, J. Microbiol. Methods, 64:391-7)。lac-促進性ルシフェラーゼ産生に対するT3SS 阻害剤の効果を測定するために、できた株 MDM1156 を一晩の LBG 成長で二次培養して LBGI に A
600 を最高0.05 にし、50μMの阻害剤の存在下又は非存在下で3時間、成長させた。lac-促進性、対、 exoT-促進性ルシフェラーゼにより産生されるRLUの化合物の阻害率を計算し、T3SS選択性の指標として用いた。
【0159】
T3SS媒介性 ExoS の培養ブロス中への分泌の阻害の検出
ExoSを産生するがExoT 又はExoY T3SS エフェクターは産生しないP.アエルギノーサ株 PAKΔTYを一晩、LB中で成長させ、基本的に前に記載された通りに処理した (Lee, et al., 2005, Infect. Immun., 73:1695-705)。細菌を、5 mM EGTAを添加したLB中で1:1000に二次培養し、指示した濃度の阻害剤の存在下又は非存在下で3時間、37℃で通気しながら成長させた。3,220 × g で15分間、4℃で遠心分離することで細菌を沈降させた。培養上清を採集し、タンパク質を、12.5% トリクロロ酢酸で沈降させた後にアセトンで洗浄するか、又は限外濾過により、濃縮した。当初の培養密度 (A
600)に従ってタンパク質を再懸濁させ、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(12.5% SDS-PAGE)により分離し、クーマシー・ブルーで染色した。染色後のゲル画像ファイルを、バックグラウンドを減算し、画像を反転させ、各バンドの密度を積分することにより、ImageJ ソフトウェア (ver. 1.42q, NIH) で処理した。
【0160】
P.アエルギノーサExoU依存性CHO細胞致死の阻害
転位させたエフェクタータンパク質ExoU のT3SS媒介性細胞毒性からのCHO細胞の救助を、前に報告された通りに乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH) 放出検定を用いて測定した ((Lee, et al., 2005, Infect. Immun., 73:1695-705) が、例外としてP.アエルギノーサの感染はゲンタマイシンの非存在下で2時間、行われた。細胞毒性率 (% LDH 放出) を、LDH放出を0%と設定した未感染のコントロールと、検査化合物によって保護されていないP.アエルギノーサ感染細胞のそれ (100% LDH 放出)とに対して計算した。保護されていない感染細胞から放出されたLDH は、この実験の2時間の時間枠内で1% トリトンX-100 による完全な溶解で得られる数値の少なくとも80%に達した。ExoUホスホリパーゼの直接的阻害により作用するシュードリパシンをコントロール阻害剤として用いた (Lee, et al, 2007, Infect. Immun., 75:1089-98)。
【0161】
細菌内部移行のゲンタマイシン保護検定
この検定は、Ha and Jin, 2001, Infect. Immun., 69:4398-406)による前に公開された方法の改良であった。合計2 × 10
5 個のHeLa 細胞を、10% FCSを添加したMEMを1ウェル当り2ml含有する12ウェル・プレートの各ウェルに播種し、37℃で 5% の CO
2 中で24時間、インキュベートした。PBSで二回、洗浄した後、1% FCS を含有する1 ml の MEMをHeLa 細胞に加えた。検査化合物をウェルの半分に 50 μM の最終濃度に加えた (DMSO は 0.2% の最終)。P.アエルギノーサ株 PAKΔC (陰性コントロール)及び PAKΔS(陽性コントロール)を一晩、37℃の LB 培地で振盪しながら成長させ、朝に1:1,000 に希釈し、0.3 (~10
8 個の細胞/ml)のOD
600まで成長させた。細菌をPBSで洗浄し、1 ml の MEMに再懸濁させ、 HeLa 細胞に検査化合物の存在下又は非存在下で10のMOI になるように加えた。感染HeLa 細胞を 37° C で 5% CO
2 中で2時間、インキュベートした。PBSで2回、洗浄した後、50μg/mlのゲンタマイシンを含有する1ml の MEM を加え、細胞を更に2時間、インキュベートした。PBSで3回、洗浄した後、細胞を0.25% トリトン X-100を含有するPBSで溶解させ、希釈液をLB-寒天プレートにプレートして、HeLa細胞内に移行した細菌数を計数した。
【0162】
エラスターゼ分泌検定
P.アエルギノーサからのエラスターゼのII型媒介性分泌に対する検査化合物の効果を、前に記載された方法の改良版で判定した(Ohman, et al., 1980, J. Bacteriol., 142:836-42)。P.アエルギノーサ PA14 細胞を50μMの検査化合物の存在下又は非存在下で最高0.05のA
600 の開始密度から16時間培養して、LB中で飽和させた。マイクロ遠心管内で遠心分離して細胞を取り除き、0.2 ml の澄んだ上清を、蓋をしたマイクロ遠心管に入れた 0.1 M Tris-HCl、pH 7.4 及び 1 mM CaCl
2 から成る緩衝液のエラスチン-コンゴ・レッド(5 mg/ml、Sigma社)懸濁液0.4mlに加えた。試験管を 37° C で振盪しながら6時間、インキュベートした。次に、0.7 M のリン酸ナトリウム (pH 6.0) から成る0.4mlの緩衝液を加え、試験管をマイクロ遠心管で遠心分離して未消化のエラスチン-コンゴ・レッドを取り除き、澄んだ上清の A
495 を測定した。読み取り値を元の細胞密度 (OD
600)に正規化し、エラスターゼ分泌の阻害率を未処置 PA14 (阻害無しのコントロール)及び未処置のII型分泌欠損 PA14 xcpQ::MrT7 (Liberati, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:2833-8、株 MDM1387、表1)(完全阻害コントロール)に対して判定した。
【0163】
クラミジア-トラコマティス(原語:Chlamydia trachomatis)成長阻害検定
化合物によるクラミジア-トラコマティスL2株の成長阻害を、Wolf, et al., 2006, Mol. Microbiol., 61:1543-55の方法に基本的に従って24ウェル・プレートで測定した。コンフルエントな単層Hep-2 細胞を L2 に0.5 のMOIで感染させ、指示された濃度の化合物で48時間、処理した。その後、培養物を採集し、音波破砕した。ライセート全体を、新鮮なHeLa単層上に再プレートすることにより、クラミジア後代基本小体(EB)の生成の測定値として封入形成単位(IFU)を形成するために用いた。未阻害のコントロール (DMSOのみ) 及び完全阻害コントロール(クロラムフェニコール、200μg/ml) を含めた。実験は三重にして行われた。
【0164】
最小阻害濃度(MIC)
MICの判定はCLSI(前のNCCLS)指針に記載されたブロスマイクロ希釈法によって行われ、IC
50及びCC
50値との比較が容易になるようにμMで表された。NCCLSの認可基準M7-A4: Methods for dilution antimicrobial susceptibility tests for bacteria that grow aerobically, 4th ed. National Committee for Clinical Laboratory Standards, Wayne, PA (1997)を参照されたい。
【0165】
哺乳動物細胞毒性の判定
培養哺乳動物細胞 (HeLa, ATCC CCL-2; ヴァージニア州マナサス、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション) に対する化合物の細胞毒性濃度(CC
50)を、MTSのホルマザンへの転化を50%阻害する化合物濃度として判定した。Marshall, et al., 1995, A critical assessment of the use of microculture tetrazolium assays to measure cell growth and function, Growth Regul., 5:69-84を参照されたい。簡単に説明すると、DMSOに溶解させた連続希釈にした化合物の存在下又は非存在下、96ウェル・プレートに HeLa 細胞を血清なしのVP-SFM培地を入れた1ウェル当り 4x10
3 個の密度になるように播種した (Frazzati-Gallina, et al., 2001, J. Biotechnol., 92:67-72)。VP-SFM中で37℃にして3日間、インキュベートした後、細胞生存率を生存テトラゾリウム塩染料 3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5 ジフェニルテトラゾリウムブロミドを用いてメーカーの指示に従って(ウィスコンシン州マジソン、Promega社)測定した。数値は100μM乃至0.2μMの阻害化合物の希釈液を用いて二重にして判定された。
【実施例2】
【0166】
実施例2. 非対称中心にあるアルキル置換基の最適化
化合物MBX-1641の複数の類似体を合成し、それらのT3SS媒介性分泌、移行、及び細胞毒性の阻害レベルを判定した。その結果を表3に挙げる。
【0167】
【表3】
【0168】
n.d. = 判定されず
1 T3SS媒介性分泌の半分−最大阻害の濃度 (ExoS'-bLA 融合タンパク質検定)
2 T3SS媒介性異項の半分−最大阻害の濃度 (CHO細胞のExoU 中毒)
3 無血清培地中のHeLa 細胞細胞毒性の半分−最大阻害の濃度
4 選択性指数 (CC
50/分泌 IC
50)
【0169】
これらの予備研究により、メチルアセトアミド構造の変化は、そのいずれの点における変化であっても、当該化合物のT3SS阻害能を劇的に変化させ、特にα炭素に置換があるとそうであり、ここがメチルからエチルに変化すると、T3SS媒介性分泌及びT3SS媒介性移行の両者で阻害能力が3倍を超えて増加することが確認された。
図1を参照されたい。
【0170】
更なる類似体を合成し、検査した。その結果を表4に挙げる。数値は、1乃至20の別々の判定値を反映している。2個以上の判定があった場合には平均の数値を挙げている。
【0171】
【表4】
【0172】
n.d. = 判定されず
1 T3SS分泌検定で検出可能な活性を有する化合物は、T3SS移行検定でも活性を有すると予測されるが、平均移行IC
50が>100と示された数値の実験で調べられた濃度範囲からはIC
50 値は判定できなかった。
【0173】
これらの研究の結果は、メチルアセトアミド骨格上の変化の不測の効果を強調していた。例えば、MBX-1641 (MBX-2081を参照されたい) のα-エチル類似体の標品はT3SS阻害剤としての効力を3乃至4倍に増加させたが、デス-メチル類似体中のα-メチル消去と、α-ジメチル、α-プロピル及びα-イソプロピル類似他の標品は、T3SS媒介性分泌が著しく劣った(MBX-2085、MBX-2146を参照されたい)。該連結部分の変更は同様に多様な結果をもたらした:アミドを置換するとT3SS媒介性分泌阻害(データは図示せず)に負の影響があったが、アミド基を末端のアリール置換基に連結するリンカーでメチル置換又はジメチル置換があると、それぞれIC
50 値が 34% 及び 29%、低くなった(データは図示せず)。同様に、α炭素にこの連結部分が変更されると多様な結果がもたらされた:オキサ架橋(-O-)の代わりにチオ架橋(-S-)を有する類似体の標品はIC
50 値が 29%低くなったが、二価のアミノ(−NH−) 又はスルホニル架橋を有する類似体の標品は IC
50 値に対して悪影響を有していた(データは図示せず)。
【0174】
骨格構造の変更の効果は予測が難しいが、個々に合成された化合物で得られたデータの調査は、構造変化の効果が相加的である可能性を示した。例えば、化合物MBX-1641、MBX-2155、MBX-2081、MBX-2263、及びMBX-2264 のシリーズを考察すると、IC
50 値が漸進的に減少していることが示された。
図2を参照されたい。
【0175】
前述のデータを考察すると、T3SS阻害化合物として有用であると共に、それらを治療薬として用いる候補にする効力及び/又は毒性プロファイルを有する関連構造の新規なグループの化合物が定義された。この新規なファミリーの阻害化合物は式I、式II及び式IIIで記載される。
【0176】
式I:
【化39】
【0177】
であって、但し式中、
A は独立に CH又はNであり;
X は独立に水素 又はハロゲンから選択され;
Z は O、S、NH;又は NR
3(但しこの場合の R
3 はアルキルである)であり;
R
1,R
1’、及びR
1’’ は;水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルチオ、又はシアノから独立に選択され、但し前記のラジカルのうちの二つ以下は水素であり;
V はNR
2、O、又は CR
3R
4であり;
R
2、R
3、及びR
4 は独立に水素又はアルキルであり;
Y は:
一つ以上のヘテロ原子を含んでもよい、そして未置換でも、又は、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、カルボキサミド、アシルアミノ、アミジノ、スルホンアミド、アミノスルホニル、アルキルスルホニル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ; アリールオキシ、及びヘテロアリールオキシから選択される最高4個の置換基で置換されてもよい、1乃至6個の炭素原子の二価の直鎖、分枝、又は環状のアルキル、アルケニル又はアルキニルラジカル;
酸素;又は
NR
5 (但しこの場合の R
5 は水素 又はアルキルである);
から選択され;
W は
1乃至3個のアリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、又はヘテロシクロアルキル環と付加的に縮合されてもよい、5員環又は6員環を形成するアリール又はヘテロアリールラジカル(但しこの場合のWラジカルは未置換でも、又は、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、カルボキサミド、アシルアミノ、アミジノ、スルホンアミド、アミノスルホニル、アルキルスルホニル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ; アリールオキシ、及びヘテロアリールオキシから選択される最高4個の置換基で置換されてもよい)であり、そして
式中、いずれか二つの置換基は一緒になって前記アリール又はヘテロアリールラジカルWと縮合した芳香族又は非芳香族環構造を形成してもよく、W上に見られる置換基はまた、 Y 又は R
2のいずれか又は Y 及び R
2の両者と選択的に共有結合することで複素環式又は炭素環式の環系を形成してもよく、該環系は、芳香族、ヘテロ芳香族、又は部分的に芳香族(即ち、一つ以上の環が芳香族であり、一つ以上の環が非芳香族(飽和)である)でもよい。
【0178】
式II:
【化40】
【0179】
であって、但し式中、
A は独立に CH 又は Nであり;
X は独立に水素 又はハロゲンから選択され;
Z は O、S、NH;又は NR
3(但しこの場合の R
3 はアルキルである)であり;
R
1,R
1’、及び R
1’’ は独立に:水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルチオ、又はシアノから選択され、但しこの場合前記のラジカルのうちの二つ以下は水素であり;
R
2、R
3、及び R
4 は独立に水素 又はアルキルであり;
U は オキサゾール、オキサゾリン、イソキサゾール、イソキサゾリン、1,2,3 トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2-オキサジン、1,3-オキサジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジンから選択される二価の5又は6員環の複素環式環であり;
Y は、一つ以上のヘテロ原子を含んでもよい、そして未置換でも、又はハロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、カルボキサミド、アシルアミノ、アミジノ、スルホンアミド、アミノスルホニル、アルキルスルホニル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ; アリールオキシ、及びヘテロアリールオキシから選択される最高4個の置換基で置換されてもよい、1乃至6つの炭素原子の二価の直鎖、分枝状、又は環状のアルキル、アルケニル又はアルキニルラジカル;
酸素;
又はNR
5 (但し式中、R
5 は水素又はアルキルである);から選択され;
W は、1乃至3個のアリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、又はヘテロシクロアルキル環と付加的に縮合されてもよい、5員環又は6員環を形成するアリール又はヘテロアリールラジカル(但しこの場合のWラジカルは未置換でも、又は、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、カルボキサミド、アシルアミノ、アミジノ、スルホンアミド、アミノスルホニル、アルキルスルホニル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ; アリールオキシ、及びヘテロアリールオキシから選択される最高4個の置換基で置換されてもよい)であり、そして
式中、いずれか二つの置換基は一緒になって前記アリール又はヘテロアリールラジカルWと縮合した芳香族又は非芳香族環構造を形成してもよく、W上に見られる置換基はまた、 Y 又は R
2のいずれか又は Y 及び R
2の両者と選択的に共有結合することで複素環式又は炭素環式の環系を形成してもよく、該環系は、芳香族、ヘテロ芳香族、又は部分的に芳香族(即ち、一つ以上の環が芳香族であり、一つ以上の環が非芳香族(飽和)である)でもよい。
【0180】
式III:
【化41】
【0181】
であって、但し式中、
A は CH又は Nであり;
X は水素又はハロゲンから独立に選択され;
R は水素又はメチルであり;
Yは、一つ以上のヘテロ原子を含んでもよい、そして未置換でも、又はハロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、カルボキサミド、アシルアミノ、アミジノ、スルホンアミド、アミノスルホニル、アルキルスルホニル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ; アリールオキシ、及びヘテロアリールオキシから選択される最高4個の置換基で置換されてもよい、1乃至6つの炭素原子の二価の直鎖、分枝状、又は環状のアルキル、アルケニル又はアルキニルラジカルであり;
Z は O、S、又はNH 又は NR
3であり;そして
W は、1乃至3個のアリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、又はヘテロシクロアルキル環と付加的に縮合されてもよい、5員環又は6員環を形成するアリール又はヘテロアリールラジカル(但しこの場合のWラジカルは未置換でも、又は、ハロ、ヒドロキシル、アミノ、カルボキサミド、カルボキシル、シアノ、スルホンアミド、スルホニル、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、アリールオキシ、及びヘテロアリールオキシから選択される最高4個の置換基で置換されてもよい)であり、そして式中、いずれか二つの置換基は一緒になって前記アリール又はヘテロアリールラジカルWと縮合した芳香族又は非芳香族環構造を形成してもよく、W上に見られる置換基はまた、 Y 又は R
2のいずれか又は Y 及び R
2の両者と選択的に共有結合することで複素環式又は炭素環式の環系を形成してもよく、該環系は、芳香族、ヘテロ芳香族、又は部分的に芳香族(即ち、一つ以上の環が芳香族であり、一つ以上の環が非芳香族(飽和)である)でもよい。
【0182】
更なる合成を行って、アセトアミドの窒素が縮合環構造に直接、結合しているか、又は、多環構造に含まれているコンホメーション上拘束された類似体を調製した。コンホメーション上拘束された化合物の例を表5に示す。
【0183】
【表5】
【0184】
これらの結果は、式Iのファミリーの化合物に付加的な構造を含めることとなり、例えば式IV及びV:
【0185】
【化42】
【0186】
【化43】
【0187】
となり、但し式中、
A、X、Z、R
1、R
1’、R
1’’、及び V の値は上に定義した通りであり、そしてn は0 (5員環を指す)、1、2、又は 3であり、そしてR
3 は水素、ハロ、ヒドロキシル、アミノ、カルボキサミド、カルボキシル、シアノ、スルホンアミド、スルホニル、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、アリールオキシ、及びヘテロアリールオキシから成る群より選択される。
【0188】
「B」アリール部分の代替的値が含まれる場合、 式IV及びVの化合物は以下:
【0189】
【化44】
【0190】
【化45】
【0191】
でも表され、但し式中、
A、X、Z、R
1、R
1’、R
1’’、及びVの値は式Iについて上で定義した通りであり、そして、n は 0 (5員環を指す)、1、2、又は 3であり、そして W は、式VI中の-NV-部分と結合した炭素環に縮合した、又は、式VII中の含窒素複素環部分に縮合した、そして更に 1乃至3個のアリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、又はヘテロシクロアルキル環と縮合してもよい、5員環又は6員環を形成するアリール又はヘテロアリールラジカルであり、この場合のW ラジカルは、未置換でも、あるいは、ハロ、ヒドロキシル、アミノ、カルボキサミド、カルボキシル、シアノ、スルホンアミド、スルホニル、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、アリールオキシ、及びヘテロアリールオキシから選択される最高4個の置換基で置換されてもよい。
【0192】
従って、発見されたファミリーの阻害剤にコンホメーション上拘束のある類似体を含めるために、式Iでは、Yの値には:Yが、ラジカルWと縮合した5乃至10個の炭素原子を有する環状炭化水素である構造;
あるいは代替的には、Y及びNVが一緒になって、ラジカルWと縮合した4乃至10個の炭素原子を有する複素環を形成する構造、
が含まれよう。
【実施例3】
【0193】
実施例3. 活性及び不活性な異性体の判定
式Iの化合物は非対称の中心(α炭素)を有し、従ってこれらの化合物の合成は、合成に用いられる方法に依っては、光学異性体の混合物(ラセミ混合物)、又はR-もしくはS-異性体のいずれか、を生じ得る。MBX-1641の最初の合成によりラセミ混合物が提供された。両方の性体がこのような化合物の阻害特性に寄与するのかどうかを判定するために、化合物MBX-1641 の別々の異性体を、ジクロロフェノールを市販の (S)-エチルラクテート(MBX-1641の光学的に純粋なR-異性体を得るため)又は市販の (R)-エチルラクテート(MBX-1641の光学的に純粋なS-異性体を得るため)で処理することにより、合成した。(S)-エチルラクテートのヒドロキシ基のジクロロフェノールとのミツノブ条件下での反応は、立体配置がキラル中心で反転して進行して(R)-エステルができる。該エステルをサポニン化させた後、ペプチド・カップリングを行わせると、MBX 1641のR-異性体である化合物MBX-1684が単一のエナンチオマーとしてできる。同様に、もう一方のエナンチオマー(MBX 1641のS-異性体であるMBX-1686と指名される化合物)が、同じ方法で(R)-エチルラクテートから開始して生じる。
【0194】
【化46】
【0195】
【化47】
【0196】
【化48】
【0197】
該ラセミ体及びエナンチオマーのそれぞれを、エフェクター毒素-β-ラクタマーゼ融合タンパク質(ExoS'-bLA)のT3SS媒介性分泌の阻害についてP.アエルギノーサ株MDM973 (PAK/pUCP24GW-lacI
Q-lacPO-exoS::blaM, 表1)を用いて検査した
【0198】
その結果を表3に示す。
【0199】
同様な比較をα-エチル類似体を用いてこの発明に従って行って、このクラスの化合物の異性体効果を調査した。
図4を参照しながら、α-エチル化合物並びにそのR-及びS-エナンチオマーのP.アエルギノーサ由来ExoS'-βLA 分泌に対する効果を示す。
【0200】
【化49】
【0201】
【化50】
【0202】
【化51】
【0203】
MBX-2359並びにその二つの立体異性体MBX-2401 (R-エナンチオマー) 及びMBX-2402 (S-エナンチオマー)と、更なる化合物MBX-2263 の濃度依存性を分泌ExoS'-βLA のニトロセフィン開裂速度で判定し、阻害剤の非存在下での開裂の割合で計算した。
図4に示すように、ラセミ混合体 MBX-2359 (■)、R-エナンチオマー MBX-2401 (◇)、及び別のα-エチル類似体である化合物 MBX-2263 (ラセミ体、○) による強力な分泌阻害が明らかに示されているが、他方、S-エナンチオマー MBX-2402 (D) はほとんど阻害効果を示していない。
【0204】
【化52】
【0205】
ラセミ混合物も活性ではあるが、式Iの化合物のT3SS阻害特性は主に、R-異性体にあることは明白である。これもやはり、本化合物が特定の結合部位を標的とするという概念と一致する。
【0206】
ここで言及された全ての公開文献、特許出願、特許、及び他の文献は、引用をもってそれらの全文をここに援用されたものである。衝突があれば、定義も含む本明細書を上位とする。加えて、材料、方法、及び例は描写的のみであり、限定を意図されてはいない。
【0207】
開示された化合物への自明な変更や、本発明の代替的な実施態様は、前述の開示を鑑みれば当業者には明白であろう。このような自明な変形及び代替物はすべて、ここで記載する通りの本発明の範囲内に入るとみなされている。