(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
特に明記しないまたは定義しない限り、本明細書に用いられるすべての専門用語および科学用語は、本開示が関連する技術分野の当業者によって一般に理解される意味を有する。
【0022】
特に明記しない限り、すべての百分率、部、比などは重量による。
【0023】
量、濃度、または他の値もしくはパラメーターが、範囲、好ましい範囲または好ましい上限値および好ましい下限値のリストのいずれかとして与えられるとき、これは、範囲が別々に開示されているかどうかに関係なく、任意の範囲上限もしくは好ましい値と任意の範囲下限もしくは好ましい値との任意のペアから形成されるすべての範囲を具体的に開示するものと理解されるべきである。数値の範囲が本明細書に列挙される場合、特に明記しない限り、この範囲は、その終点、ならびにこの範囲内のすべての整数および分数を含むことを意図される。
【0024】
用語「約」が値または範囲の終点を記載するのに用いられるとき、本開示は言及されるその具体的な値または終点を含むと理解されるべきである。
【0025】
本明細書で用いるところでは、「含む(comprising)」は、述べられる特徴、整数、工程、もしくは言及されるような成分の存在を明確に述べるものと解釈されるべきであるが、1つまたは複数の特徴、整数、工程、もしくは成分、またはそれらの群の存在または追加を排除しない。さらに、用語「含む」は、用語「から本質的になる」および「からなる」によって包含される例を含むことを意図する。同様に、用語「から本質的になる」は、用語「からなる」によって包含される例を含むことを意図する。
【0026】
本明細書で用いるところでは、上記のポリウレタンで製造される分散系は、粒子、とりわけインクジェットインク用の顔料を分散させるために利用することができる。これらのインクは、織物基材を含むすべての通常使用されるインクジェット基材上に印刷することができる。
【0027】
本明細書で用いるところでは、用語「分散系」は、1つの相がバルク物質の全体にわたって分布する(多くの場合コロイドサイズ範囲の)細分された粒子から、分散された相または内相である粒子からなり、そしてバルク物質が連続相または外相である2相システムを意味する。
【0028】
本明細書で用いるところでは、用語「分散剤」は、多くの場合コロイドサイズの極めて微細な固体粒子の一様なおよび最大の分離を促進するために懸濁媒体に添加される表面活性剤を意味する。顔料のためには、分散剤はほとんどの場合ポリマー分散剤である。本明細書に記載されるポリウレタン分散剤は実際に分散系そのものである。
【0029】
本明細書で用いるところでは、用語「OD」は光学密度を意味する。
【0030】
本明細書で用いるところでは、用語「水性ビヒクル」は、水または水と少なくとも1つの水溶性、もしくは部分的に水溶性の(すなわち、メチルエチルケトン)、有機溶媒(共溶媒)との混合物を意味する。
【0031】
本明細書で用いるところでは、用語「イオン化できる基」は潜在的イオン基を意味する。
【0032】
本明細書で用いるところでは、用語「実質的に」は、かなりの程度のもの、ほとんどすべてであることを意味する。
【0033】
本明細書で用いるところでは、用語「Mn」は、数平均分子量を意味する。
【0034】
本明細書で用いるところでは、用語「D50」は、粒度の分布の50パーセンタイル(中央値)の体積粒子径を意味する。
【0035】
本明細書で用いるところでは、用語「D95」は、粒度の分布の95パーセンタイルの体積粒子径を意味する。
【0036】
本明細書で用いるところでは、用語「NCO」はイソシアネートを意味する。
【0037】
本明細書で用いるところでは、用語「cP」は、センチポアズ、粘度単位を意味する。
【0038】
本明細書で用いるところでは、用語「mN.m
−1」は、1メートル当たりのミリニュートン、表面張力単位を意味する。
【0039】
本明細書で用いるところでは、用語「mPa.s」は、ミリパスカル秒、粘度単位を意味する。
【0040】
本明細書で用いるところでは、用語「AN」は、酸価、固体ポリマーの1g当たりのmg KOHを意味する。
【0041】
本明細書で用いるところでは、用語「PUD」は、本明細書に記載されるポリウレタン分散系を意味する。
【0042】
本明細書で用いるところでは、用語「BMEA」はビス(メトキシエチル)アミンを意味する。
【0043】
本明細書で用いるところでは、用語「DBTDL」はジブチルスズジラウレートを意味する。
【0044】
本明細書で用いるところでは、用語「DMPA」は、ジメチロールプロピオン酸を意味する。
【0045】
本明細書で用いるところでは、用語「IPDI」は、イソホロンジイソシアネートを意味する。
【0046】
本明細書で用いるところでは、用語「NMP」は、n−メチルピロリドンを意味する。
【0047】
本明細書で用いるところでは、用語「TEB」は、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、Dow Chemicalによって供給される試薬を意味する。
【0048】
本明細書で用いるところでは、用語「スルホラン」は、テトラメチレンスルホンを意味する。
【0049】
本明細書で用いるところでは、Eternacoll(登録商標)UH−50は、宇部興産株式会社(UBE Industries)(日本、東京)製のポリカーボネートジオールである。
【0050】
本明細書で用いるところでは、用語「置換アルキル」は、エーテル、エステル、アミン、チオエーテル、メルカプタン、ヒドロキシ、ハライド、および酸基などの官能基でのアルキル部分上の水素原子の置換を示す。
【0051】
本明細書で用いるところでは、用語「置換アリール」は、エーテル、エステル、アミン、チオエーテル、メルカプタン、ヒドロキシ、ハライド、および酸基などの官能基でのアリール部分上の水素原子の置換を示す。
【0052】
本明細書で用いるところでは、用語「PMDA」は、ピロメリット酸二無水物を意味する。
【0053】
本明細書で用いるところでは、用語「BPDA」は、4,4’ビフタル酸二無水物を意味する。
【0054】
本明細書で用いるところでは、用語「OPDA」は、4,4’オキシジフタル酸二無水物を意味する。
【0055】
本明細書で用いるところでは、用語「TEG」は、テトラエチレングリコールジオールを意味する。
【0056】
本明細書で用いるところでは、Vestagon(登録商標)BF 1540は、Evonik Degussaによって供給されるIPDIとジオールとを含有する交互ウレトジオン−カルバメート付加物である。
【0057】
本明細書で用いるところでは、用語「K−Kat XK−602」は、ウレトジオン架橋粉体塗装に使用される、そしてKing Industries,Inc.,Norwalk,CTによって供給された金属錯体を示す。
【0058】
本明細書で用いるところでは、用語「アラルキル」は、アルキル部分上でのアリール置換を示す。「アラルキル」の例には、ベンジル、ジフェニルメチル、p−メチルベンジルおよび直鎖もしくは分岐アルキル基に結合した他のアリール部分が挙げられる。
【0059】
特に記載のない限り、上記の化学薬品は、Aldrich(Milwaukee,WI)または実験室化学薬品の他の同様な供給業者から入手された。
【0060】
さらに、単数形での言及にはまた、文脈が具体的にそうではないと述べない限り複数が含まれる(例えば、冠詞「a」および「an」は、1つ、または1つまたは複数を意味してもよい)。
【0061】
ポリウレタン分散剤
本開示の分岐ポリウレタンは、ポリ−ウレトジオンの開環反応によって製造することができる。下のスキーム1に示されるように、ポリ−ウレチジオンと試薬R
1XH(ここで、R
1およびXは、課題を解決するための手段において上に定義された通りである)との反応は、分岐ポリウレタン生成物(ここで、R
2、W
1、W
2、Qおよびnは、課題を解決するための手段において上に定義された通りである)を提供する。この反応は、典型的には25℃〜150℃の温度で、より典型的には80℃〜130℃の温度で実施される。この反応のための典型的な溶媒は、非プロトン性溶媒である。好適な非プロトン性溶媒には、アセトンなどのケトン;ジエチルエーテルなどのエーテル;酢酸エチルなどのエステル;およびN−メチルピロリドンなどのアミドが含まれるが、それらに限定されない。他の好適な非プロトン性溶媒には、ニトロメタン、アセトニトリル、ピリジン、塩化メチレン、ベンゼンおよびヘキサンが含まれる。
【0063】
Yが−(C=O)NHW
1NCOであるとき、ポリマー上の末端イソシアネート基は、封止剤で任意選択的に封止される。好適な封止剤には、アルコール、チオール、第一級もしくは第二級モノアミン、およびエポキシドからなる群から選択されるものが含まれる。用いられる封止剤のモル量は、ポリウレタンのそれにほぼ等量であるべきである。
【0064】
アルコール、および第一級もしくは第二級モノアミンが封止剤として一般に使用される。連鎖停止剤として有用なモノアミンの例には、ブチルアミン、ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ドデシルアミン、ジイソプロパノールアミン、ステアリルアミン、ジブチルアミン、ジノニルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、ジエチルアミン、ビス(メトキシエチル)アミン、N−メチルステアリルアミン、ジエタノールアミンおよびN−メチルアニリンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0065】
R
1XH
試薬R
1XHは、商業的供給源から入手可能であるか、当業者によく知られている方法によって容易に製造することができるかのどちらかである。
【0066】
試薬R
1XH中のR
1は、1つまたは複数の親水性基で置換されたC
1〜C
300アルキルまたは1つまたは複数の親水性基で置換されたC
6〜C
300アリールである。親水性基は、イオン性または非イオン性分散基を含有することができる。
【0067】
非イオン性基の例には、ポリエチレングリコール誘導体が挙げられる。
【0068】
イオン性またはイオン化できる分散基の例には、カルボキシレート基(−COOM)、ホスフェート基(−OPO
3M
2)、ホスホネート基(−PO
3M
2)、スルホネート基(−SO
3M)、および第四級アンモニウム基(−NR
3Q)[式中、Mは、一価の金属イオン(例えば、Na
+、K
+、Li
+など)、H
+またはNR
4+などのカチオンであり;Qは、クロリドまたはヒドロキシドなどの一価のアニオンであり;各Rは独立して、アルキル、アラルキル、アリールまたは水素であることができる]が挙げられる。
【0069】
イオン化できる基は、それらが(カルボキシル−COOHなどの)酸または(第一級、第二級または第三級アミン−NH
2、−NRH、または−NR
2などの)塩基形にあることを除いて、イオン基に一般に相当する。イオン化できる基は、下に議論されるように分散系/ポリマー製造プロセス中にそれらがそれらのイオン形に容易に変換されるようなものである。
【0070】
潜在的イオン基は、カチオンまたはアニオンであってもよいが、アニオン基が好ましい。アニオン基の具体的な例には、カルボキシレートおよびスルホネート基が挙げられる。カチオン基の例には、第四級アンモニウム基およびスルホニウム基が挙げられる。
【0071】
アニオン基置換の場合には、この基は、カルボン酸基、カルボキシレート基、スルホン酸基、スルホネート基、リン酸基およびホスホネート基であることができる。酸塩は、相当する酸基をNCOプレポリマーの形成前に、形成中にまたは形成後のいずれかに中和することによって形成される。
【0072】
カルボキシル基を組み入れるための好適な化合物は、米国特許第3,479,310号明細書、米国特許第4,108,814号明細書および米国特許第4,408,008号明細書に記載されている。カルボキシル基含有化合物の例は、式(HO)
pQ(COOH)
q(式中、QはC
1〜C
10アルキルであり、pは1または2であり、qは1〜3である)に相当するヒドロキシカルボン酸である。これらのヒドロキシカルボン酸の例には、クエン酸、酒石酸およびヒドロキシピバル酸が挙げられる。任意選択のジヒドロキシアルカン酸には、下の式II:
【0073】
【化4】
(式中、Q’は水素またはC
1〜C
8アルキルである)
の構造で表されるα,α−ジメチロールアルカン酸が含まれる。追加のα,α−ジメチロールアルカン酸は、構造式R
6C(CH
2OH)
2COOH(式中、R
6は水素またはC
1〜C
8アルキルである)で表される。これらのイオン化できるジオールの例には、ジメチロール酢酸、2,2’−ジメチロールブタン酸、および2,2’−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)が挙げられるが、それらに限定されない。好適なカルボキシレートにはまた、H
2N−(CH
2)
4−CH(CO
2Na)−NH
2、およびH
2N−CH
2−CH
2−NH−CH
2−CH
2−CO
2Naが含まれる。
【0074】
ポリウレタンへの組み入れのための典型的なスルホネート基には、米国特許第4,108,814号明細書に記載されているジオールスルホネートが含まれる。好適なジオールスルホネート化合物にはまた、ジオールとスルホン化ジカルボン酸との反応に由来する繰り返し単位を含むヒドロキシル末端コポリエーテルが含まれる。具体的には、スルホン化ジカルボン酸は5−スルホイソフタル酸であり、ジオールは1,3−プロパンジオールである。他の好適なスルホネートには、式H
2N−CH
2−CH
2−NH−(CH
2)
r−SO
3Na(式中、rは2または3である)で表されるものが含まれる。
【0075】
イオン性安定化基が酸であるとき、酸基は、ポリウレタンの1.0グラム当たり少なくとも6、典型的には少なくとも10、さらにより典型的には20ミリグラムKOHの酸価(1グラム固体ポリマー当たりmg KOH)として当業者によって知られる、ポリウレタンについての酸基含有率を提供するのに十分な量で組み入れられる。酸価(AN)についての上限は、約120、典型的には約100である。
【0076】
本開示の文脈内で、用語「中和剤」は、潜在的イオン基またはイオン化できる基をイオン基に変換するために有用であるすべてのタイプの試剤を包含することを意図される。アミンが中和剤として使用されるとき、ウレア停止を生み出す連鎖停止反応は典型的には、イソシアネート反応性基としてまた機能することができる中和剤の添加の前に完了される。
【0077】
ポリマーへのその組み入れ前に、組み入れ中にまたは組み入れ後にアニオン基をその塩形へ変換するために、揮発性か非揮発性かのどちらかの塩基性物質がアニオン基の対イオンを形成するために使用されてもよい。揮発性塩基は、水性ポリウレタン分散系から水を除去するために用いられる条件下に、アニオン基の対イオンを形成するために使用される塩基の少なくとも約90%が揮発するものである。非揮発性塩基は、水性ポリウレタン分散系から水を除去するために用いられる条件下に、塩基の少なくとも約90%が揮発しないものである。
【0078】
潜在的アニオン基を中和するための好適な揮発性の塩基性有機化合物は、第一級、第二級または第三級アミンである。これらのアミンの例は、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルステアリルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N−メチルピペラジン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノプロパノール、2−メトキシエチルジメチルアミン(2−methoxyethyidimethyl amine)、N−ヒドロキシエチルピペラジン、2−(2−ジメチルアミノエトキシ)−エタノールおよび5−ジエチルアミノ−2−ペンタノンである。
【0079】
好適な非揮発性塩基には、一価金属、とりわけアルカリ金属、リチウム、ナトリウムおよびカリウムのアルコキシド、水酸化物、炭酸塩または重炭酸塩が含まれる。
【0080】
ポリウレタン上のアニオン基が中和されるとき、それらは親水性をポリマーに提供し、顔料を水中に安定分散させることをより良く可能にする。しかしながら、中和度を調整することが望ましい場合もある。ポリウレタン上のアニオン基が部分中和されるとき、ポリウレタンはより疎水性になり、それ故顔料表面上へ吸着する。
【0081】
XがOであり、そしてR
1がポリエステルである試薬R
1XHには、二価アルコールと多塩基性(典型的には二塩基性)カルボン酸との反応生成物が含まれる。これらのポリカルボン酸の代わりに、相当するカルボン酸無水物、もしくは低級アルコールのポリカルボン酸エステル、またはそれらの混合物が、ポリエステルを製造するために使用されてもよい。
【0082】
ポリカルボン酸は、脂肪族、脂環式、芳香族もしくは複素環式またはそれらの混合物であってもよく、それらは、例えば、ハロゲン原子で置換されていても、または不飽和であってもよい。次のものが例として挙げられる:単量体脂肪酸、ジメチルテレフタレートおよびビス−グリコールテレフタレートと混合されてもよい、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12−ドデシル二酸、フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラクロロフタル酸無水物、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、無水グルタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、オレイン酸などの二量体および三量体脂肪酸。
【0083】
ヒドロキシル基を含有するポリ(メタ)アクリレートには、カチオン、アニオンおよびラジカル重合などの付加重合の技術分野で一般的なものが含まれる。例は、アルファ−オメガジオールである。これらのタイプのジオールの例は、ポリマーの終端でまたは終端近くで1つのヒドロキシル基の配置を可能にする「リビング」または「コントロール」または連鎖移動重合法によって製造されるものである。これらのジオールを製造するさらなる例については、米国特許第6,248,839号明細書および同第5,990,245号明細書を参照されたい。
【0084】
XがOであり、そしてR
1が置換酸である試薬R
1XHは、まるで完全に記載されているかのようにあらゆる目的のために本明細書に参照により援用される米国特許第6,103,822号明細書および同第5,880,250号明細書、ならびに米国特許出願公開第2002/0183443号明細書に記載されている手順に従って、二酸無水物とジオールとを使用して当業者によって容易に製造され得る。
【0085】
好適な二酸無水物の例には、3,3’,4,4’−ビフェニル−テトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物または4,4’−オキシジフタル酸二無水物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0086】
同様に、XがOであり、そしてR
1がポリマー酸である試薬R
1XHは、米国特許第6,103,822号明細書および同第5,880,250号明細書、ならびに米国特許出願公開第2002/0183443号明細書に記載されている手順に従って、ポリ酸無水物とポリオールとを使用して当業者によって容易に製造され得る。
【0087】
ポリウレタン成分の割合
上記のポリウレタンについては、試薬R
1XH対ポリ−ウレトジオンのモル比は典型的には1:1よりも大きく、より典型的には約1.05:1〜約2:1である。
【0088】
顔料
単独のまたは組み合わせた、多種多様な有機および無機顔料が、インク、とりわけインクジェットインクを製造するためにポリウレタン分散剤で分散されてもよい。用語「顔料」は本明細書で用いるところでは、分散剤で分散され、そして分散剤の存在下に分散条件下に処理されることを必要とする不溶性着色剤を意味する。着色剤にはまた、分散染料が含まれる。分散プロセスは、安定な分散した顔料をもたらす。本発明のポリウレタン分散剤で使用される顔料には、自己分散性顔料が含まれてもよい。顔料粒子は、インクジェット印刷装置を通して、とりわけ約10ミクロン〜約50ミクロンの範囲の直径を通常有する噴出ノズルでインクの自由流れを可能にするために十分に小さい。粒径はまた、インクの寿命の全体にわたって決定的に重要であり、顔料分散安定性にも影響を及ぼす。極めて小さい粒子のブラウン運動は、粒子の凝集を防ぐのに役立つであろう。小さい粒子を最大色強度および光沢のために使用することがまた望ましい。有用な粒径の範囲は典型的には約0.005ミクロン〜約15ミクロンである。典型的には、顔料粒径は、約0.005〜約5ミクロン、最も典型的には約0.005〜約1ミクロンの範囲であるべきである。動的光散乱によって測定されるような平均粒径は約0.5ミクロン未満、典型的には約0.3ミクロン未満である。
【0089】
選択された顔料は乾燥形態または湿潤形態で使用されてもよい。例えば、顔料は通常水性媒体中で製造され、生じた顔料は水−湿潤プレスケーキとして得られる。プレスケーキ形態では、顔料は、それが乾燥形態にあるような程度には凝集しない。従って、水−湿潤プレスケーキ形態での顔料は、乾燥形態での顔料ほどプレミックスプロセスにおいて解凝集するために多くの混合エネルギーを必要としない。代表的な市販の乾燥顔料は、米国特許第5,085,698号明細書にリストされている。
【0090】
インクジェットインクに有用な色特性を持った顔料の幾つかの例には、Pigment Blue(顔料ブルー)15:3およびPigment Blue 15:4からのシアン顔料;Pigment Red(顔料レッド)122およびPigment Red 202からのマゼンタ顔料;Pigment Yellow(顔料イエロー)14、Pigment Yellow 95、Pigment Yellow 110、Pigment Yellow 114、Pigment Yellow 128およびPigment Yellow 155からの黄色顔料;Pigment Orange(顔料オレンジ)5、Pigment Orange 34、Pigment Orange 43、Pigment Orange 62、Pigment Red(顔料レッド)17、Pigment Red 49:2、Pigment Red 112、Pigment Red 149、Pigment Red 177、Pigment Red 178、Pigment Red 188、Pigment Red 255およびPigment Red 264からの赤色顔料;Pigment Green(顔料グリーン)1、Pigment Green 2、Pigment Green 7およびPigment Green 36からの緑色顔料;Pigment Blue(顔料ブルー)60、Pigment Violet(顔料バイオレット)3、Pigment Violet 19、Pigment Violet 23、Pigment Violet 32、Pigment Violet 36およびPigment Violet 38からの青色顔料;TiO
2およびZnOなどの白色顔料;ならびに黒色顔料カーボンブラックが挙げられる。本明細書で用いられる顔料名および省略形は、Society of Dyers and Colourists(Bradford,Yorkshire,UK)によって確立され、そしてThe Color Index、第3版、1971年に公表されている顔料の「C.I.」名称である。
【0091】
有機顔料の場合、インクは、総インク重量を基準にして重量で、約30%以下、典型的には0.1%〜約25%、より具体的には0.25%〜10%の顔料を含有してもよい。無機顔料が選択される場合、無機顔料が一般に有機顔料より高い密度を有するので、インクは、有機顔料を用いる匹敵するインクでよりも高い重量百分率の顔料を含有する傾向があろう。
【0092】
ポリウレタンポリマー分散剤は典型的には、総インク組成物の重量を基準として重量で、0.1%〜20%、より具体的には0.2%〜約10%の範囲で存在する。
【0093】
主原料の割合
本インクに用いられる顔料レベルは、所望の色濃度を印刷イメージに与えるために典型的には必要とされるそれらのレベルである。典型的には、顔料レベルは、インクの総重量を基準として、約0.05〜約10%の範囲にある。顔料を安定化させるために必要とされるポリウレタン分散剤の量は、具体的なポリウレタン分散剤、顔料およびインクビヒクル相互作用とのそれらの相互作用に依存する。顔料対ポリウレタン分散剤の重量比は典型的には約0.5〜約6の範囲である。
【0094】
顔料分散系の製造
本開示に使用される顔料入り分散系は、当該技術分野で公知の任意の従来型ミリングプロセスを用いて製造することができる。ほとんどのミリングプロセスは、第1混合工程、引き続く第2粉砕工程を含む2工程プロセスを用いる。第1工程は、原料すべて、すなわち、顔料、分散剤、液体キャリア、中和剤およびブレンドされた「プレミックス」を提供するためのあらゆる任意選択の添加剤の混合を含む。典型的にはすべての液体原料は最初に、引き続き分散剤、最後に顔料が加えられる。混合は一般に撹拌混合容器で行われ、高速分散機(HSD)がこの混合工程のために特に好適である。HSDに取り付けられた、そして500rpm〜4000rpm、より典型的には2000rpm〜3500rpmで運転されるCowels型翼が所望の混合を達成するための最適剪断を提供する。十分な混合は通常、上記の条件下に15〜120分の期間混合した後に達成される。
【0095】
第2工程は、顔料入り分散系を生成するためのプレミックスの粉砕を含む。典型的には、粉砕は、他のミリング技法をまた用いることができるが、媒体ミリングプロセスを含む。本発明の実施形態では、Eiger Machinery Inc.(Chicago,Illinois)によって製造された実験室規模のEiger Minimill(Model M250,VSE EXP)が用いられる。粉砕は、約820グラムの0.5YTZ(登録商標)ジルコニア媒体をミルに装入することによって成し遂げられた。ミルディスクは、2000rpm〜4000rpm、典型的には3000rpm〜3500rpmの速度で運転される。分散系は、200〜500グラム/分で、より典型的には300グラム/分でミルを通る典型的な流量の再循環粉砕プロセスを用いて処理される。ミリングは、溶媒の画分が粉砕物から除かれ、ミリングが完了した後に加えられる段階的手順を用いて行われてもよい。これは、粉砕効率を最大にする最適レオロジーを達成するために行われる。ミリングの間に除かれる溶媒の量は、分散系によって変動し、合計800グラムの回分サイズについて典型的には200〜400グラムである。典型的には、本実施形態の分散系は、合計4時間のミリングにかけられる。
【0096】
黒色分散系については、Microfluidizerを用いる別のミリングプロセスを用いることができる。微細流動化は、ミリングが高圧下のノズルによる顔料衝突によって行われる非媒体ミリングプロセスである。典型的には、顔料分散系は、ミルによって合計12時間400グラム/分の流量で、15,000psiで処理される。実施例において黒色分散系を製造する際に、ダイヤモンドZチャンバー付き実験室規模(Microfluidics of Newton(Massachusetts)から入手可能な、Model M−110Y)の高圧圧縮空気式Microfluidizerが用いられた。
【0097】
充填剤、可塑剤、顔料、カーボンブラック、シリカゾル、他のポリマー分散系および公知の均染剤、湿潤剤、消泡剤、安定剤、ならびに所望の最終用途向けに知られている他の添加剤がまた、分散系へ組み入れられてもよい。
【0098】
インクビヒクル
本開示の顔料入りインクは、水性媒体または水性キャリア媒体としても知られる、インクビヒクル、典型的には水性インクビヒクルと、水性分散系と任意選択的に他の原料とを含む。
【0099】
インクビヒクルは、水性分散系および任意選択の添加剤のための液体キャリア(または媒体)である。用語「水性ビヒクル」は、水または水と共溶媒もしくは保湿剤と一般に言われる1つまたは複数の有機の、水溶性ビヒクル成分との混合物からなるビヒクルを意味する。好適な混合物の選択は、所望の表面張力および粘度、選択された顔料、顔料入りインクジェットインクの乾燥時間、ならびにインクが印刷される紙の種類などの、具体的な用途の要件に依存する。当該技術分野では、共溶媒が印刷された基材上でのインクの浸透および乾燥を助けることができるときに、それは浸透剤と言われることもある。
【0100】
水溶性有機溶媒および保湿剤の例には、アルコール、ケトン、ケト−アルコール、エーテルならびにチオジグリコール、スルホラン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンおよびカプロラクタムなどのその他のもの;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、ブチレングリコールおよびヘキシレングリコールなどのグリコール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのオキシエチレンまたはオキシプロピレンの付加ポリマー;グリセロールおよび1,2,6−ヘキサントリオールなどのトリオール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどの、多価アルコールの低級アルキルエーテル;ジエチレングリコールジメチルまたはジエチルエーテルなどの、多価アルコールの低級ジアルキルエーテル;ウレアおよび置換ウレアが挙げられる。
【0101】
水と、ジエチレングリコールなどの、多価アルコールとの混合物が水性インクビヒクルとして典型的である。水とジエチレングリコールとの混合物の場合には、インクビヒクルは通常、30重量%水および70%ジエチレングリコール〜95%水および5重量%ジエチレングリコール、より典型的には60%水および40%ジエチレングリコール〜95%水および5%ジエチレングリコールを含有する。百分率は、インクビヒクルの総重量を基準としている。水とブチルカルビトールとの混合物もまた有効なインクビヒクルである。
【0102】
インク中のインクビヒクルの量は、インクの総重量を基準として重量で、典型的には70%〜99.8%、より典型的には80%〜99.8%の範囲にある。
【0103】
インクビヒクルは、界面活性剤またはグリコールエーテルおよび1,2−アルカンジオールなどの浸透剤を含めることによって速浸透性(速乾性)であるようにすることができる。グリコールエーテルには、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−イソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−イソプロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−イソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、およびジプロピレングリコールモノ−イソプロピルエーテルが含まれる。典型的な1,2−アルカンジオールは、C
4〜C
6アルカンジオールであり、1,2−ヘキサンジオールが最も典型的である。好適な界面活性剤には、エトキシル化アセチレンジオール(例えば、Air Productsから商業的に入手可能なSurfynol(登録商標)シリーズ)、エトキシル化アルキル第一級アルコール(例えば、Shellから商業的に入手可能なNeodol(登録商標)シリーズ)およびエトキシル化アルキル第二級アルコール(例えば、Union Carbideから商業的に入手可能なTergitol(登録商標)シリーズ)、スルホスクシネート(例えば、Cytecから商業的に入手可能なAerosol(登録商標)シリーズ)、オルガノシリコーン(例えば、Witcoから商業的に入手可能なSilwet(登録商標)シリーズ)およびフルオロ界面活性剤(例えば、DuPontから商業的に入手可能なZonyl(登録商標)シリーズ)が含まれる。
【0104】
添加されるグリコールエーテルおよび1,2−アルカンジオールの量は典型的には、インクの総重量を基準として、1重量%〜15重量%、より典型的には2重量%〜10重量%の範囲にある。界面活性剤が、インクの総重量を基準として重量で、典型的には0.01%〜5%、より典型的には0.2%〜2%の量で使用されてもよい。
【0105】
添加剤
他の原料、添加剤は、かかる他の原料がインクジェットインクの安定性および出射性を妨げない程度に、インクジェットインク中へ調合されてもよい。これは、当業者によって所定の実験により容易に決定され得る。
【0106】
界面活性剤は一般的に、表面張力および湿潤特性を調整するためにインクに添加される。好適な界面活性剤には、上の「ビヒクル」セクションに開示されているものが含まれる。界面活性剤は、インクの総重量を基準として、典型的には約5重量%以下の量で、より典型的には2%以下の量で使用される。
【0107】
エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、イミノ二酢酸(IDA)、エチレンジアミン−ジ(o−ヒドロキシフェニル酢酸)(EDDHA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、トランス−1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸(CyDTA)、デエチレントリアミン−N,N,N’,N’’,N’’−五酢酸(DTPA)、およびグリコールエーテルジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸(GEDTA)、およびそれらの塩などの封鎖(またはキレート)剤の含有は、たとえば、重金属不純物の有害な影響を排除するために有利であり得る。
【0108】
ポリマーが、耐久性または他の特性を向上させるためにインクに添加されてもよい。ポリマーは、ビヒクルにまたは分散形態に可溶性であることができ、イオン性または非イオン性であることができる。可溶性ポリマーには、線状ホモポリマーおよびコポリマーまたはブロックポリマーが含まれる。それらはまた、グラフトもしくは分岐ポリマー、星型およびデンドリマーなどの構造化ポリマーであることができる。分散ポリマーには、例えば、ラテックスおよびヒドロゾルが含まれてもよい。ポリマーは、フリーラジカル、群間移動、イオン、縮合および他のタイプの重合を含むが、それらに限定されない任意の公知方法によって製造されてもよい。ポリマーは、溶液重合法、乳化重合法、または懸濁重合法によって製造されてもよい。好ましいクラスのポリマー添加物には、アニオン性アクリルポリマー、スチレン−アクリルポリマーおよびポリウレタンポリマーが含まれる。
【0109】
ポリマーが存在するとき、ポリマーレベルは典型的には、インクの総重量を基準として、約0.01重量%〜約3重量%である。この上限は、インク粘度または他の物理的制限によって決定される。
【0110】
殺生物剤が微生物の増殖を抑えるために使用されてもよい。
【0111】
顔料入りインクジェットインクは典型的には、25℃で約20mN.m
−1〜約70mN.m
−1の範囲の表面張力を有する。粘度は25℃で30mPa.sほどに高いものであることができるが、典型的には幾分より低い。インクは、広範囲の噴出条件、材料構成ならびにノズルの形状およびサイズに適合する物理的特性を有する。インクは、インクジェット装置において有意な程度に閉塞しないように長期間優れた貯蔵安定性を有するべきである。さらに、インクは、それが接触するインクジェット印刷装置の部品を腐食するべきではなく、それは、本質的に無臭および非毒性であるべきである。
【0112】
いかなる特定の粘度範囲またはプリントヘッドにも制限されないが、本開示のインクはより低粘度用途に特に好適である。従って、本開示のインクの(25℃での)粘度は、約7mPa.s未満、または約5mPa.s未満、さらにより有利には、約3.5mPa.s未満であってもよい。
【0113】
以下の実施例は、それらに限定されることなく、実施形態を例示する。
【実施例】
【0114】
粒径測定
ポリウレタン樹脂、顔料およびインクについての粒径は、Honeywell/Microtrac(Montgomeryville PA)製のMicrotrac(登録商標)UPA 150分析計を用いる動的光散乱によって測定した。
【0115】
この技法は、粒子の速度分布と粒径との間の関係をベースとしている。レーザー発生光は、各粒子から散乱され、粒子ブラウン運動によってDopplerシフトする。シフトした光とシフトしていない光との間の周波数差を増幅し、デジタル化し、解析して粒度分布を導き出す。結果を、D50およびD95として報告する。
【0116】
固形分の測定
高沸点溶媒、たとえば、テトラグライム、すなわちテトラエチレングリコールジメチルエーテルを含有するポリウレタン樹脂については、固形分は、20インチHgの減圧下で120℃に設定されたオーブン中一晩(約16時間)ベーキング前後の重量差によって測定した。
【0117】
ウレトジオン消費の程度
ポリウレタンは、1739cm
−1(ウレタン)に特有のIR吸収を有するが、ウレトジオンは、1775cm
−1に独特のIR吸収を有する。ポリウレタンとウレトジオンとの混合物では、ウレトジオンのIR吸収は、主ウレタン吸収(1739cm
−1)上に肩として現れる。ウレトジオンは、ヒドロキシル基でのウレトジオン環の開環反応によってアロファネートに変換されるので、1775cm
−1のウレトジオン吸収は消失し、一方1715cm
−1のアロファネートIR吸収は、すべてのウレトジオンが消費されるまでプロセスの全体にわたって成長する。
【0118】
ジオール−二酸付加物−A:UH50/PMDAコポリマー
還流冷却器、静水頭の窒素ガスを提供するための窒素入口、翼付き攪拌機および熱電対を有する500mL丸底ガラス反応器に、69.64gの1,2,4,5 テトラカルボキシベンゼン二酸無水物(PMDA)、258.82gのスルホラン溶媒および318.83gのUH−50ポリカーボネートジオールを加える。反応器を攪拌しながら90℃に加熱した。この温度を、55.4mg KOH/g溶液の酸価が達成されるまで維持した。新規二酸−ジオール付加物−Aを、分岐ポリウレタンの製造にさらなる精製なしに直接使用した。
【0119】
ジオール−二酸付加物−B:UH50/BPDAコポリマー
ジオール−二酸付加物−Bは、51.8mg KOH/g溶液の標的酸価に達するまで次の原材料を使用してジオール−二酸−Aと同じ方法で製造した:
ビフェニル二酸無水物(BPMA) 210.62g
スルホラン溶媒 621.05g
UH−50ポリカーボネートジオール 719.25g
【0120】
ジオール−二酸付加物−C:TEG/PMDAコポリマー
ジオール−二酸付加物−Cは、109.2mg KOH/g溶液の標的酸価に達するまで次の原材料を使用してジオール−二酸−Aと同じ方法で製造した:
1,2,4,5 テトラカルボキシルベンゼン二酸無水物(PMDA)174.11g
スルホラン溶媒 328.03g
テトラエチレングリコール 317.81g
【0121】
分岐ポリウレタン/アロファネートの合成の一般的方法
実施例1−37.2のエンディング酸価のテトラグライム溶媒中ジオール−二酸付加物−AでグラフトされたVestagon BF1540からの分岐ポリウレタン
4L反応器に、275.0gのVestagon(登録商標)BF1540(当量=275、Evonik−Degussaによって供給される)、460.0gのジオール−二酸付加物−A、2.75gのK−KAT XK−602および146.7gのUH50ジオールをロードした。攪拌しながら、反応器の温度を130℃に上げた。1775cm
−1のウレトジオンIRピークを、カルバメートピークの滑らかな曲線が達成されるまでフォローした。これは、アロファネートへのウレトジオンの100%転化を示唆した。分岐ポリウレタン/アロファネート樹脂溶液を、33.62gの45%(重量)水性KOH溶液と1910.0gの水とを含有する混合物を加えながら高速混合下に反転させた。水性ポリウレタン/アロファネート溶液は、24.97%の測定固形分、37.2mg KOH/gの酸価および7068の分子量(Mn)を有した。
【0122】
実施例2−40.6のエンディング酸価のテトラグライム溶媒中ジオール−二酸付加物−AでグラフトされたVestagon BF1540からの分岐ポリウレタン
1L反応器に、87.62gのVestagon(登録商標)BF1540(当量=550、Evonik−Degussa)、141.60gのジオール−二酸付加物−A、3.01gのUH50ジオールおよび0.88gのK−KAT XK−602をロードした。攪拌しながら、反応器の温度を130℃に上げた。1775cm
−1のウレトジオンIRピークを、カルバメートピークの滑らかな曲線が達成されるまでフォローした。これは、アロファネートへのウレトジオンの100%転化を示唆した。分岐ポリウレタン/アロファネート樹脂溶液を、17.43gの45%(重量)水性KOH溶液と485.00gの水とを含有する混合物を加えながら高速混合下に反転させた。水性ポリウレタン/アロファネート溶液は、28.8%の測定固形分、40.6mg KOH/gの酸価および7172の分子量(Mn)を有した。
【0123】
実施例3−38.0のエンディング酸価のテトラグライム溶媒中ジオール−二酸付加物−BでグラフトされたVestagon BF1540からの分岐ポリウレタン
4L反応器に、275.02gのVestagon(登録商標)BF1540(当量=275、Evonik−Degussa)、500.02gのジオール−二酸付加物−B、2.76gのK−KAT XK−602および115.00gのUH50ジオールをロードした。攪拌しながら、反応器の温度を130℃に上げた。1775cm
−1のウレトジオンIRピークを、カルバメートピークの滑らかな曲線が達成されるまでフォローした。これは、アロファネートへのウレトジオンの100%転化を示唆した。分岐ポリウレタン/アロファネート樹脂溶液を、35.18gの水性45%KOH溶液と1844.98gの水とを含有する混合物を加えながら高速混合下に反転させた。水性ポリウレタン/アロファネート溶液は、24.59%の測定固形分、38.0mg KOH/gの酸価および6475の分子量(Mn)を有した。
【0124】
実施例4−85.2のエンディング酸価のテトラグライム溶媒中DMPAでグラフトされたVestagon BF1320からの分岐ポリウレタン
500mL反応器に、68.50gのVestagon(登録商標)BF1320(当量=274、Evonik−Degussa)、17.50gのDMPA、0.69gのK−KAT XK−602および84.50gのテトラグライム溶媒をロードした。攪拌しながら、反応器の温度を130℃に上げた。1775cm
−1のウレトジオンIRピークを、カルバメートピークの滑らかな曲線が達成されるまでフォローした。これは、アロファネートへのウレトジオンの100%転化を示唆した。分岐ポリウレタン/アロファネート樹脂溶液を、8.14gの水性45%KOH溶液と175.00gの水とを含有する混合物を加えながら高速混合下に反転させた。水性ポリウレタン/アロファネート溶液は、24.19%の測定固形分、85.2mg KOH/gの酸価および5819の分子量(Mn)を有した。
【0125】
実施例5−25.5のエンディング酸価のテトラグライム溶媒中ジオール−二酸付加物−AでグラフトされたVestagon BF1540からの分岐ポリウレタン
500mL反応器に、48.16gのVestagon(登録商標)BF1540(当量=275、Evonik−Degussa)、62.97gのジオール−二酸付加物−Aおよび29.2gのUH50ジオールをロードした。攪拌しながら、反応器の温度を130℃に上げた。1775cm
−1のウレトジオンIRピークを、カルバメートピークの滑らかな曲線が達成されるまでフォローした。これは、アロファネートへのウレトジオンの100%転化を示唆した。分岐ポリウレタン/アロファネート樹脂溶液を、3.05gのKOHと252.0gの水とを含有する混合物を加えながら高速混合下に反転させた。水性ポリウレタン/アロファネート溶液は、29.8%の測定固形分、25.5mg KOH/gの酸価および8255の分子量(Mn)を有した。
【0126】
実施例6−30.0のエンディング酸価のテトラグライム溶媒中ジオール−二酸付加物−AでグラフトされたVestagon BF1540からの分岐ポリウレタン
4L反応器に、329.73gのVestagon(登録商標)BF1540(当量=275、Evonik−Degussa)、894.68gのジオール−二酸付加物−A、3.30gのK−KAT XK−602および40.92gのUH50ジオールをロードした。攪拌しながら、反応器の温度を130℃に上げた。1775cm
−1のウレトジオンIRピークを、カルバメートピークの滑らかな曲線が達成されるまでフォローした。これは、アロファネートへのウレトジオンの100%転化を示唆した。分岐ポリウレタン/アロファネート樹脂溶液を、KOHの76.59gの45%水溶液を含有する混合物を加えながら高速混合下に反転させた。水性ポリウレタン/アロファネート溶液は、27.5%の測定固形分、29.7mg KOH/gの酸価および7418の分子量(Mn)を有した。
【0127】
実施例7−40.0のエンディング酸価のテトラグライム溶媒中ジオール−二酸付加物−AでグラフトされたVestagon BF1540からの分岐ポリウレタン
4L反応器に、47.03gのVestagon(登録商標)BF1540(当量=275、Evonik−Degussa)、83.59gのジオール−二酸付加物−A、0.46gのK−KAT XK−602および22.93gのUH50ジオールをロードした。攪拌しながら、反応器の温度を130℃に上げた。1775cm
−1のウレトジオンIRピークを、カルバメートピークの滑らかな曲線が達成されるまでフォローした。これは、アロファネートへのウレトジオンの100%転化を示唆した。分岐ポリウレタン/アロファネート樹脂溶液を、302.00gの水中に5.50gのKOHを含有する混合物を加えながら高速混合下に反転させた。水性ポリウレタン/アロファネート溶液は、27.49%の測定固形分、40.0mg KOH/gの酸価および5833の分子量(Mn)を有した。
【0128】
実施例8−40.6のエンディング酸価のテトラグライム溶媒中ジオール−二酸付加物−AでグラフトされたVestagon BF1540からの分岐ポリウレタン
2L反応器に、137.51gのVestagon(登録商標)BF1540(当量=275、Evonik−Degussa)、260.0gのジオール−二酸付加体−A、1.38gのK−KAT XK−602および67.0gのUH50ジオールをロードした。攪拌しながら、反応器の温度を130℃に上げた。1775cm
−1のウレトジオンIRピークを、カルバメートピークの滑らかな曲線が達成されるまでフォローした。これは、アロファネートへのウレトジオンの100%転化を示唆した。分岐ポリウレタン/アロファネート樹脂溶液を、30.7gの水性KOH溶液と992.0gの水とを含有する混合物を加えながら高速混合下に反転させた。水性ポリウレタン/アロファネート溶液は、24.2%の測定固形分、40.6mg KOH/gの酸価および6483の分子量(Mn)を有した。
【0129】
実施例9−61.1のエンディング酸価のテトラグライム溶媒中ジオール−二酸付加物−BでグラフトされたVestagon BF1540からの分岐ポリウレタン
500mL反応器に、72.03gのVestagon(登録商標)BF1540(当量=275、Evonik−Degussa)、285.07gのジオール−二酸付加物−B、0.73gのK−KAT XK−602をロードした。攪拌しながら、反応器の温度を130℃に上げた。1775cm
−1のウレトジオンIRピークを、カルバメートピークの滑らかな曲線が達成されるまでフォローした。これは、アロファネートへのウレトジオンの100%転化を示唆した。分岐ポリウレタン/アロファネート樹脂溶液を、28.46gの水性45%KOH溶液と636.51gの水とを含有する混合物を加えながら高速混合下に反転させた。水性ポリウレタン/アロファネート溶液は、24.59%の測定固形分、61.1の酸価および6475の分子量(Mn)を有した。
【0130】
実施例10−42のエンディング酸価のテトラグライム溶媒中ジオール−二酸付加物−AとのIPDIからの対照線状ポリウレタン
500mL反応器に、63.77gのUbe UH50ポリカーボネートジオール、295.67gのジオール−二酸付加物−Aおよび0.18gのDBTDLをロードした。攪拌しながら、反応器の温度を80℃に上げた。IPDI(80.35g)を45分にわたって加え、温度は85℃に上昇した。テトラグライム溶媒を使用してIPDI滴加漏斗をリンスした。イソシアネートのパーセントが0.66%に達したとき、BMEA(6.99g)を反応器に加えた。線状ポリウレタン樹脂溶液を、23.00gの水性45%KOH溶液と321.69gの水とを含有する混合物を加えながら高速混合下に反転させた。水性ポリウレタン溶液を、836.3gの水および1.50gのProxel GXL(殺生物剤)でさらに希釈した。こうして得られた線状ポリウレタン溶液は、25.0%の測定固形分、41.9mg KOH/gの酸価および11833の分子量(Mn)を有した。
【0131】
実施例11−実施例1〜4からのバインダーを含有するインク
インク1〜4は、自己分散性水性カーボンブラック顔料分散系とバインダーとしての実施例1〜4からの分岐ポリウレタンとを使用して当業者に公知の従来法によって製造した。バインダーが線状である、対照インク−1もまた、実施例10での線状ポリウレタンを使用して製造した。インクを、インクジェットインク調合物に好適な所定の操作によって処理した。
【0132】
インク原料を下の表1にリストする。自己分散性カーボンブラック分散系を除いて、すべての原料を先ず混ぜ合わせ、顔料分散系を次に、絶え間なく混合しながらゆっくりと加えた。顔料およびバインダーの含有量は、最終インク中で、それぞれ、3.0重量%および2.0重量%であるように設計された。
【0133】
【表1】
【0134】
インク1〜4および10を、Hewlett−Packardモデル96プリンターを用いて様々な紙媒体上に印刷した。印刷されたバインダー入り顔料入りインクの光学密度(OD)を測定し、表2にまとめた。
【0135】
【表2】
【0136】
実施例12−実施例5〜9からの分岐ポリウレタンを分散剤として使用する黒色顔料分散系
実施例5〜9からの分岐ポリウレタンを、本開示の分岐ポリウレタンの分散剤品質を実証するためにNipex 180カーボンブラック用の分散剤として使用した。対照インク−2は、この黒色顔料がいかなる分散剤もなしに製造されたインクであった。
【0137】
水性黒色顔料分散系を、カーボンブラック(Nipex 180)、水、TEGおよびProxel GXL(殺生物剤)を、16.0%の固形分および3.0のP/Dを標的として実施例5〜9において製造した分岐ポリウレタンと混合することによって製造した。こうして形成された混合物を、Microfluidics製のミルを用いて分散させた。生じた分散系を、顔料固形分が7.5%に達するまで水で希釈し、引き続き同じミルを用いてさらに分散させた。最終分散系の酸価および粒径を、下の表3にリストした。
【0138】
【表3】
【0139】
顔料分散系1〜5を、次の処方を用いて調合してインク5〜9にした:
【0140】
【表4】
【0141】
インク5〜9および対照インク−2を、Hewlett−Packard Model 96プリンターを用いて様々な媒体上へ印刷し、光学密度(OD)を表5に記録した。
【0142】
【表5】
【0143】
実施例13−着色顔料用の分散剤としての分岐ポリウレタンの使用
水性Sun顔料Red 122分散系を、2時間1000rpmで運転されるHSDで実施例7からの152.89gの分岐ポリウレタンと、86.31gの脱イオン水と36.80gのTEB共溶媒とを含有する混合物を先ず分散させることによって製造した。Sun Red PR122顔料(92.00gm)を、それが上の装入物中へ合体するまで段階的に加えた。この混合物を、35 Fでスタートし、温度を90〜100 Fに制御して1時間3000rpmでのHSDで処理した。終了したとき、32.00gの脱イオン水を使用して材料をHSDからリンスした。
【0144】
全体試料を次に、0.5mmのYTZセラミックショットを含有するミニミルにロードした。ミニミルを、粒径の低下をフォローしながら100 F未満の温度で、3500rpmで運転した。73.6グラムの脱イオン水をミリング中に加えて粘度を調整し、温度を100 F未満に制御した。261.66gの脱イオン水および0.74gのProxcel(殺生物剤)での最終降下(let down)は、2.5のP/D比の12.52%の顔料および5.00%の分散剤を含有する固形分を有する水中のRed 122顔料の分散系を与えた。粒径は、78.2nm(D50)および157.7nm(D95)であった。
【0145】
この分散系を、典型的なインクビヒクルを使用してインク(インク−13)を製造するために使用した。
【0146】
実施例14−線状ポリウレタンを着色顔料用の分散剤として使用する対照実験
水性Sun Red PR122分散系を、2時間1000rpmで運転されるHSDで実施例10において製造された199.03gの対照線状ポリウレタンと、36.79gの脱イオン水と36.80gの共溶媒とを含有する混合物を先ず分散させることによって製造した。Sun Red PR122顔料(92.00gm)を、それが上の装入物中へ合体するまで段階的に加えた。この混合物を、35 Fでスタートし、温度を90〜100 Fに制御して1時間3000rpmでのHSDで処理した。終了したとき、32.00gの脱イオン水を使用して材料をHSDからリンスした。
【0147】
全体試料を次に、0.5mmのYTZセラミックショットを含有するミニミルにロードした。ミニミルを、粒径の低下を監視しながら100 F未満の温度で、3500rpmで運転した。73.6グラムの脱イオン水をミリング中に加えて粘度を調整し、温度を100 F未満に制御した。261.66gの脱イオン水および0.74gのProxcel(殺生物剤)での最終降下は、2.5のP/D比の12.50%の顔料および4.89%の分散剤の固形分を有する水中のPR122顔料の分散系を与えた。粒径は、77.8nm(D50)および148.2nm(D95)であった。
【0148】
この分散系を、典型的なインクビヒクルを使用してインク(インク−14)を製造するために使用した。
【0149】
インク13および14を、Epson B310プリンターを用いて様々な基材上に印刷した。印刷物の光学密度を下の表6にまとめる。インク−13からの印刷物は、対照インク(インク−14)からの印刷物と比較されるときにより高いODを示した。
【0150】
【表6】
【0151】
分散系製造実施例15:Trust Red 269水性分散系
水性Trust Red 269分散系を、2時間1000rpmで運転されるHSDで実施例7において製造された152.89gの分岐ポリウレタンと、86.31gの脱イオン水と36.80gの共溶媒TEBとを含有する混合物を先ず分散させることによって製造した。Trust Red 269顔料(92.00gm)を、それが上の装入物中へ合体するまで段階的に加えた。この混合物を、35 Fでスタートし、温度を90〜100 Fに制御して1時間3000rpmでのHSDで処理した。終了したとき、32.00gの脱イオン水を使用して材料をHSDからリンスした。
【0152】
全体試料を次に、0.5mmのYTZセラミックショットを含有するミニミルにロードした。ミニミルを、粒径の低下を監視しながら100 F未満の温度で、3500rpmで運転した。73.6グラムの脱イオン水をミリング中に加えて粘度を調整し、温度を100 F未満に制御した。261.66gの脱イオン水および0.74gのProxcel(殺生物剤)での最終降下は、2.4のP/D比の11.98%の顔料および4.89%の分散剤の固形分を有する水中のTrust Red 269顔料の分散系を与えた。粒径は、93.0nm(D50)および199.2nm(D95)であった。
【0153】
この分散系を、典型的なインクビヒクルを使用してインク(インク−15)を製造するために使用した。インクを、Epson B310プリンターを用いて様々な基材上に印刷した。印刷物の光学密度を下の表7にまとめる。
【0154】
【表7】