特許第6105619号(P6105619)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6105619
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】風力タービンブレード
(51)【国際特許分類】
   F03D 80/00 20160101AFI20170316BHJP
   F03D 1/06 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   F03D11/00 A
   F03D1/06 A
【請求項の数】28
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2014-546321(P2014-546321)
(86)(22)【出願日】2012年12月11日
(65)【公表番号】特表2015-500942(P2015-500942A)
(43)【公表日】2015年1月8日
(86)【国際出願番号】DK2012050458
(87)【国際公開番号】WO2013087078
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2014年8月13日
(31)【優先権主張番号】1121649.6
(32)【優先日】2011年12月16日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】61/588,247
(32)【優先日】2012年1月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514130633
【氏名又は名称】ヴェスタス ウィンド システムズ エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107401
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 誠一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 孝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154162
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 浩輔
(74)【代理人】
【識別番号】100182257
【弁理士】
【氏名又は名称】川内 英主
(72)【発明者】
【氏名】ハンコック,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ハーン,フランク ハエルガード
(72)【発明者】
【氏名】ペイン,クリス
【審査官】 新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/059604(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/078327(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0145615(US,A1)
【文献】 特開2009−287514(JP,A)
【文献】 特開2001−165033(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/135306(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/065928(WO,A1)
【文献】 特開2007−255366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略中空構造であり、対向する第1のシェル半体及び第2のシェル半体から形成される風力タービンブレードであって、
各シェル半体は、内板及び外板と、前記内板と前記外板との間に位置付けられる第1の細長い強化構造体及び第2の細長い強化構造体とを備え、
各強化構造体は前記ブレードの長さ方向に沿って延在して積層された層のスタックを備え、
各スタックは前記ブレードの表面に対して略垂直な方向に延在する厚さを有し、
各層はそれぞれの前記スタックの幅にわたって延在し、その幅は前記ブレードの長さ方向に対して垂直かつ前記スタックの前記厚さに対して垂直であり、各層は少なくとも1つの事前硬化された引抜き成形繊維複合材ストリップを備え、
各シェル半体は、前記内板及び前記外板間に配置されるとともに、(a)前記第1の細長い強化構造体と前記第2の細長い強化構造体との間に、(b)前記第1の細長い強化構造体から前記ブレードの前縁に向かって、(c)前記第2の細長い強化構造体から前記ブレードの後縁に向かって延在するコア材料を更に備え、
前記風力タービンブレードは、前記第1のシェル半体にある前記第1の強化構造体と、前記第2のシェル半体にある前記第1の強化構造体との間に延在する第1の細長いウェブと、前記第1のシェル半体にある前記第2の強化構造体と、前記第2のシェル半体にある前記第2の強化構造体との間に延在する第2の細長いウェブとを更に備え、
積層された前記層の数が、前記スタックの端部に向かって中央部から段階的に減少する風力タービンブレード。
【請求項2】
請求項1に記載の風力タービンブレードであって、前記細長い強化構造体と前記コア材料とは前記風力タービンブレードの前記表面に対して略垂直である当接縁を画定する風力タービンブレード。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の風力タービンブレードであって、各シェル半体内で、前記外板と前記細長い強化構造体のうちの少なくとも1つとの間に位置付けられる事前硬化メッシュを更に備える風力タービンブレード。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の風力タービンブレードであって、各シェル半体内で、前記内板と前記細長い強化構造体のうちの少なくとも1つとの間に位置付けられる事前硬化メッシュを更に備える風力タービンブレード。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の風力タービンブレードであって、前記シェル半体のうちの少なくとも一方内で、前記外板と前記細長い強化構造体のうちの1つ及び前記コア材料の当接領域との間に位置付けられる事前硬化メッシュを更に備える風力タービンブレード。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の風力タービンブレードであって、前記シェル半体のうちの少なくとも一方内で、前記内板と、前記細長い強化構造体のうちの1つ及び前記コア材料の当接領域との間に位置付けられる事前硬化メッシュを更に備える風力タービンブレード。
【請求項7】
請求項3から6のいずれか一項に記載の風力タービンブレードであって、前記事前硬化メッシュはガラス織布と事前硬化樹脂とから形成される風力タービンブレード。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の風力タービンブレードであって、前記スタックの前記厚さが前記端部に向かってテーパーになるように、前記層は異なる長さを有する風力タービンブレード。
【請求項9】
請求項8に記載の風力タービンブレードであって、各層の前記2つの端部のうちの少なくとも一方は面取りされている風力タービンブレード。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の風力タービンブレードであって、各層は前記層の前記全幅にわたって延在する単一の引抜き成形繊維複合材ストリップを備える風力タービンブレード。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の風力タービンブレードあって、各層は複数の引抜き成形繊維複合材ストリップを備える風力タービンブレード。
【請求項12】
請求項11に記載の風力タービンブレードであって、前記複数の引抜き成形繊維複合材ストリップは前記層内のストリップの並列構成を有する風力タービンブレード。
【請求項13】
請求項12に記載の風力タービンブレードであって、前記スタックの各層内の前記ストリップの長手方向縁は他の層にある前記ストリップの縁と位置合わせされる風力タービンブレード。
【請求項14】
請求項12に記載の風力タービンブレードであって、前記スタックの各層内の前記ストリップの長手方向内側縁は前記又は各隣接する層内の前記ストリップの前記長手方向内側縁に対してジグザグに変位している風力タービンブレード。
【請求項15】
請求項11から14のいずれか一項に記載の風力タービンブレードであって、前記複数の引抜き成形繊維複合材ストリップは、端と端とをつなげて配置される複数のストリップを備える風力タービンブレード。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の風力タービンブレードであって、前記スタックは前記スタックの全長を延在する被覆層を更に備える風力タービンブレード。
【請求項17】
請求項16に記載の風力タービンブレードであって、前記被覆層の厚さは前記スタック内の他の層の厚さよりも実質的に薄い風力タービンブレード。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載の風力タービンブレードであって、前記引抜き成形繊維複合材ストリップは、カーボン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、並びに、木質繊維及び有機繊維を含む天然繊維から選択される繊維から形成される風力タービンブレード。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に記載の風力タービンブレードであって、前記層のスタックを支持する細長い支持部材を更に備える風力タービンブレード。
【請求項20】
請求項19に記載の風力タービンブレードであって、前記支持部材は略U字形状の断面を有するチャネルを有し、前記層のスタックは前記チャネル内で支持される風力タービンブレード。
【請求項21】
請求項19又は20に記載の風力タービンブレードであって、前記支持部材はガラス強化プラスチック(GRP)材料から形成される風力タービンブレード。
【請求項22】
請求項1から21のいずれか一項に記載の風力タービンブレードであって、前記ウェブは弾性材料から形成される風力タービンブレード。
【請求項23】
請求項1から22のいずれか一項に記載の風力タービンブレードであって、内部に細長い強化構造体を支持できる、略U字形状の断面を有する少なくとも1つの細長いチャネルを有する風力タービンブレード。
【請求項24】
請求項1から23のいずれか一項に記載の風力タービンブレードであって、前記内板及び前記外板は、前記コア材料及び前記強化構造体にわたって略途切れることなく延在する風力タービンブレード。
【請求項25】
略中空構造であり、対向する第1のシェル半体及び第2のシェル半体から形成される風力タービンブレードを製造する方法であって、
内板及び外板から各シェル半体を構築することと、
前記ブレードの長さ方向に沿って延在するように、前記外板に第1の細長い強化構造体及び第2の細長い強化構造体を位置付けることであって、
各強化構造体は積層された層のスタックを備え、各スタックは前記ブレードの表面に対して略垂直な方向に延在する厚さを有し、
各層はそれぞれの前記スタックの幅にわたって延在し、前記幅は前記ブレードの長さ方向に対して垂直かつ前記スタックの前記厚さに対して垂直であり、各層は少なくとも1つの事前硬化された引抜き成形繊維複合材ストリップを備える、前記外板に第1の細長い強化構造体及び第2の細長い強化構造体を位置付けることと、
各シェル半体内で、(a)前記第1の細長い強化構造体と前記第2の細長い強化構造体との間に、(b)前記第1の細長い強化構造体から前記ブレードの前縁に向かって、(c)前記第2の細長い強化構造体から前記ブレードの後縁に向かって延在するように前記外板上にコア材料を配置することと、
前記第1の細長い強化構造体及び前記第2の細長い強化構造体並びに前記コア材料の上面に前記内板を配置することと、
前記第1のシェル半体にある前記第1の強化構造体と、前記第2のシェル半体にある前記第1の強化構造体との間に延在するように第1の細長いウェブを配置することと、
前記第1のシェル半体にある前記第2の強化構造体と、前記第2のシェル半体にある前記第2の強化構造体との間に延在するように第2の細長いウェブを配置することと、を含み、
前記ストリップは、積層された前記層の数が前記スタックの端部に向かって中央部から段階的に減少するように形成される方法。
【請求項26】
略中空構造であり、第1のシェル半体及び第2のシェル半体を備える風力タービンブレードを製造する方法であって、
第1の細長い金型半体及び第2の細長い金型半体のそれぞれにおいて、それぞれの外板用の1つ又は複数の繊維布を配置することと、
前記第1の細長い金型半体及び前記第2の細長い金型半体のそれぞれにおいて、それぞれの前記金型半体の長さ方向に沿って延在するように、前記外板用の前記繊維布上に第1の細長い強化構造体及び第2の細長い強化構造体を位置付けることであって、
各強化構造体は積層された層のスタックを備え、各スタックはそれぞれの前記金型半体の表面に対して略垂直な方向に延在する厚さを有し、
各層はそれぞれの前記スタックの幅にわたって延在し、前記幅はそれぞれの前記金型半体の長さ方向に対して垂直かつ前記スタックの前記厚さに対して垂直であり、各層は少なくとも1つの事前硬化された引抜き成形繊維複合材ストリップを備え、
それぞれの前記金型半体のそれぞれ内で、(a)前記第1の細長い強化構造体と前記第2の細長い強化構造体との間に、(b)前記第1の細長い強化構造体からそれぞれの前記金型半体の前縁に向かって、(c)前記第2の細長い強化構造体からそれぞれの前記金型半体の後縁に向かって延在するように前記外板用の前記繊維布上にコア材料を配置することと、
第1の細長い金型半体及び第2の細長い金型半体のそれぞれにおいて、前記第1の細長い強化構造体及び前記第2の細長い強化構造体並びに前記コア材料の上面にそれぞれの内板用の1つ又は複数の繊維布を配置することと、
前記第1の金型半体及び前記第2の金型半体内に樹脂を供給することと、
記第1のシェル半体及び前記第2のシェル半体を形成するように前記樹脂を硬化させることと、
前記金型半体のうちの一方に第1の細長いウェブ及び第2の細長いウェブを配置することと、
前記第1の細長いウェブが、前記第1のシェル半体にある前記第1の強化構造体と前記第2のシェル半体にある前記第1の強化構造体との間に延在し、且つ前記第2の細長いウェブが、前記第1のシェル半体にある前記第2の強化構造体と前記第2のシェル半体にある前記第2の強化構造体との間に延在するように、前記第1の金型半体を前記第2の金型半体の上方の位置に枢動させることと、を含み、
前記ストリップは、積層された前記層の数が前記スタックの端部に向かって中央部から段階的に減少するように形成される方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法であって、前記金型半体のうちの少なくとも一方内で、前記外板と前記細長い強化構造体のうちの1つ及び前記コア材料の当接領域との間に事前硬化メッシュを位置付けることを更に含む方法。
【請求項28】
請求項26又は27に記載の方法であって、前記金型半体のうちの少なくとも一方内で、前記内板と前記細長い強化構造体のうちの1つ及び前記コア材料の当接領域との間に事前硬化メッシュを位置付けることを更に含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力タービンのローターブレード及び風力タービンブレードを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常の風力タービンが図1に示されている。風力タービン1は、タワー2と、タワー2の頂部に取り付けられるナセル3と、ナセル3内の発電機5に動作可能に連結されるローター4とを備える。風力タービン1は風の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する。発電機5に加えて、風力エネルギーを電気エネルギーに変換するのに必要な種々の構成部材と、また、風力タービン1を動作させるとともに風力タービン1の性能を最適化するのに必要な種々の構成部材とをナセル3は収容する。タワー2は、ナセル3と、ローター4と、ナセル3内の他の風力タービン構成部材とによって生じる荷重を支持する。
【0003】
ローター4は、中央ハブ6と、中央ハブ6から径方向外方に延び、略平面形状である3つの細長いローターブレード7a、7b、7cとを備える。動作の際、ブレード7a、7b、7cは、通過する空気流と相互作用して、中央ハブ6を中央ハブ6の長手方向軸の回りに回転させる揚力を生成するように構成される。最小レベルを超える風速によりローター4が作動し、風の方向に対して略垂直な平面内でローター4が回転することが可能になる。回転は発電機5によって電力に変換され、通常、電力供給網に供給される。
【0004】
従来のローターブレードは、外側シェルと、略矩形の断面の内側で中空の細長い翼桁とから作製される。翼桁は回転するブレードから風力タービンのハブに荷重を伝達する役割を果たす。このような荷重は、ブレードの円運動から生じてブレードの長さに沿って方向付けられる引張荷重及び圧縮荷重と、風から生じてブレードの厚さに沿って、すなわちブレードの風上側から風下側に方向付けられる荷重とを含む。
【0005】
外側シェルに高引張強度を有する1つ又は複数の繊維強化構造体を組み込むことにより、内側翼桁の必要性を回避する代替的なタイプのローターブレードが既知である。1つ又は複数の繊維強化構造体はブレードの長さ方向に沿って延在する。このような構成の例は特許文献1及び特許文献2に記載されている。また、他の構成が特許文献3及び特許文献4に記載されている。
【0006】
これらの構成では引抜き成形繊維材料ストリップが使用される。引抜き成形は押出し成形と同様の連続プロセスである。引抜き成形では、繊維が液体樹脂の供給部から引き抜かれ、次にオープンチャンバーにおいて加熱され、オープンチャンバーにおいて樹脂が硬化される。プロセスは連続的であるため、その結果得られる硬化繊維材料は一定の断面を有し、一旦形成された材料はいかなる任意の長さに切断してもよい。このようなプロセスは特に安価であり、したがって、風力タービンブレードの強化構造体の製造にとって魅力的な選択肢である。
【0007】
硬化された引抜き成形ストリップの使用により、非硬化繊維が風力タービンブレードの部分を形成するように金型に注入される従来の構成に関連する問題が克服される。ここで、従来の構成では繊維が不整列になるリスクがある。
【0008】
さらに、引抜き成形ストリップは風力タービンブレードの回転中に生じる非常に高い曲げモーメントを吸収する性質を有する。
【0009】
上記の2つの既知の構成では、比較的多くの別個の部材を用いて強化構造体が形成される。各部材は、シェルの構造内で別個に位置決めされなければならない。
【0010】
より単純な構造であり、ひいては製造するのがより安価である、この代替的なタイプの風力タービンブレード用の好適な強化構造体を提供することが望ましい。
【0011】
特許文献5は樹脂を含浸させた積層繊維布から形成される細長い構成部材を備える風力タービンブレードを記載している。
【0012】
しかし、この構成では、繊維布はその場で硬化される。このことは、成形の前に、布が慎重に位置決めされ、シェルの表面上で正確に向き付けられることを必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】欧州特許第1520983号
【特許文献2】国際公開第2006/082479号
【特許文献3】米国特許出願公開第2012/0014804号
【特許文献4】国際公開第2011/088372号
【特許文献5】米国特許出願公開第2009/0269392号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、既知の風力タービンブレードの上記不都合点のいくつか若しくは全てを、克服又は少なくとも軽減する風力タービンブレードを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、本発明の第1の態様によれば、略中空構造であり、対向する第1のシェル半体及び第2のシェル半体から形成される風力タービンブレードであって、各シェル半体は、内板及び外板と、内板と外板との間に位置付けられる第1の細長い強化構造体及び第2の細長い強化構造体とを備え、各強化構造体はブレードの長さ方向に沿って延在して層のスタックを備え、各スタックはブレードの表面に対して略垂直な方向に延在する厚さを有し、各層はそれぞれのスタックの幅にわたって延在し、その幅はブレードの長さ方向に対して垂直かつスタックの厚さに対して垂直であり、各層は少なくとも1つの事前硬化された引抜き成形繊維複合材ストリップを備え、各シェル半体は、内板及び外板間に配置されるとともに、(a)第1の細長い強化構造体と第2の細長い強化構造体との間に、(b)第1の細長い強化構造体からブレードの前縁に向かって、(c)第2の細長い強化構造体からブレードの後縁に向かって延在するコア材料を更に備え、風力タービンブレードは、第1のシェル半体にある強化構造体のうちの少なくとも1つと、第2のシェル半体にある強化構造体のうちの少なくとも1つとの間に延在する細長いウェブを更に備える風力タービンブレードが提供される。
【0016】
スタックは、風力タービンブレード内で翼桁キャップとして機能する。各スタックの幅は、使用の際、ブレード内でブレードの表面に対して略平行な平面内で略翼弦方向に延在することが好ましい。各スタックは、ブレードの長さ方向に対して横断方向に向く断面が長方形の形状を有することが好ましい。スタックの厚さは矩形の短辺に対して平行であり、矩形の幅は矩形の長辺に対して平行である。
【0017】
ウェブは、ブレードの長さ方向に細長い。ウェブは、第1のシェル半体にある強化構造体のうちの少なくとも1つと、第2のシェル半体にある強化構造体のうちの少なくとも1つとの間で横断方向に延在する。以下で例示するように、ブレードは、2つのI字形状又はC字形状のウェブを有することができ、このウェブはそれぞれが、第1のシェル半体にある強化構造体のうちの1つと、第2のシェル半体にある強化構造体のうちの1つとの間に延在する。他の実施形態のうちのいくつかを以下で記載するが、それらの実施形態において、ブレードは、第1のシェル半体にある2つの強化構造体と、第2のシェル半体にある2つの強化構造体との間に延在するX字形状断面を有するウェブを有する。
【0018】
各シェル半体内に少なくとも2つのこのような強化構造体を設けることの主な技術的利点は、風力タービンブレードの湾曲から生じる。所望の湾曲を達成するために、シェル半体を製造するのに用いる金型の内面も湾曲している。これにより、成形プロセス中に、対応する湾曲が内板及び外板に伝達される。スタックの上面及び下面は略平面であるため、これにより、スタックの表面と、湾曲した内板及び外板との間に隙間が生じる。この隙間は成形中に樹脂によって充填される。その結果のタービンブレードの強度を最適化するために、隙間の大きさを低減することが望ましい。本発明によれば、これは、各シェル半体内に少なくとも2つの強化構造体を設けることによって達成される。それにより、各構造体が、1つのみの強化構造体が設けられる場合に必要とされる幅よりも狭い幅を有することができる。
【0019】
細長い強化構造体及びコア材料は、風力タービンブレードの表面に対して略垂直であることが好ましい当接縁を画定する。このような構成は、強化構造体を低コストで製造することを可能にする点で有利である。さらに、成形動作中、強化構造体を配置する前に金型にコア材料を配置することと、金型における強化構造体の位置付けを補助するようにコア材料の縁を用いることとが可能である。これは、強化構造体の当接縁が垂直でない場合には必ずしも常に可能ではない。垂直方向は、風力タービンブレードの厚さ方向でもある。
【0020】
風力タービンブレードは、各シェル半体内で、外板と、細長い強化構造体のうちの少なくとも1つとの間に位置付けられる事前硬化メッシュを更に備えることが好ましい。加えて又は代替的には、風力タービンブレードは、各シェル半体内で、内板と、細長い強化構造体のうちの少なくとも1つとの間に位置付けられる事前硬化メッシュを更に備えることが好ましい。各場合に、メッシュはガラス織布及び事前硬化樹脂から作製してもよい。ブレードは、シェル半体のうちの少なくとも一方内で、外板と、細長い強化構造体のうちの1つ及びコア材料の当接領域との間に位置付けられる事前硬化メッシュを備えることが好ましい。ブレードは、シェル半体のうちの少なくとも一方内で、内板と、細長い強化構造体のうちの1つ及びコア材料の当接領域との間に位置付けられる事前硬化メッシュを備えることが好ましい。
【0021】
このようなメッシュは強化構造体とコア材料との間の遷移領域において追加の剛性をもたらす。さらに、メッシュは、タービンブレードの内板及び外板のしわよりを効果的に防止する。しわよりは、防止しなければ、下方にある強化構造体及びコア材料間に隙間がある場合、又は強化構造体の厚さがコア材料の厚さとは異なる場合に生じる可能性がある。
【0022】
スタックは、スタックの長さにわたって略矩形の断面を有することが好ましい、及び/又は略一定の幅を有することが好ましい。さらに、引抜き成形繊維複合材ストリップは、ほぼ均一な断面を有することが好ましい。
【0023】
層のスタックから強化構造体を形成することにより、強化構造体全体を別個の部材として形成し、次に、単一の動作において強化構造体全体を組み込むことが可能である。
【0024】
さらに、引抜き成形繊維複合材ストリップは製造するのが安価であり、任意の所望の長さに容易に切断することができるため、したがって、その結果の強化構造体は低コストで好都合に構築することができる。
【0025】
この構成の追加の利点は、スタックの厚さを、風力タービンブレードの外側シェルの所望の厚さの断面に適合するように、スタックの長さに沿った任意の地点において調整することが可能になることである。これは、単に、その地点においてスタックに組み込まれる層の数を選択することによって行われる。したがって、タービンブレードのテーパー形状に一致する任意の所望の厚さの断面を有する強化構造体を形成することが可能である。
【0026】
通常、風力タービンブレードにおいては、ブレードの長手方向軸に沿ったブレードの中央部に沿って、すなわちブレードの根元部及び先端部間の中間領域に沿って、より高い程度の強化をもたらすことが望ましい。なぜなら、この中間領域は、ブレードが引張応力のほとんどを受ける場所だからである。このように、特に望ましい厚さの断面は、強化構造体の中央部が最大厚さを有し、端部のうちの一方又は双方が最小厚さを有するものである。
【0027】
したがって、スタックの厚さが少なくとも1つの端部に向かってテーパーになるように、強化構造体内の層が異なる長さを有することが好ましい。
【0028】
このことにより、スタックの各層がスクエア切断されている端部を有する最も単純な構成において、段状テーパーを有するスタックが得られる。各段の高さは各層の厚さである。層の端部における応力集中を低減するように、スタックの端部における厚さ外形はより滑らかであることが望ましい。したがって、各層の2つの端部のうちの少なくとも一方が面取りされることが好ましい。このようにして、スタックの上面を、スタックの全長に沿ってより滑らかにすることができる。
【0029】
またさらに、面取り部が十分に小さい角度を有する限り、依然として、テーパー端部に沿った勾配に不連続性がある。
【0030】
滑らかさを更にいっそう高めるように、スタックはスタックの全長を延在する被覆層を更に備えることが好ましい。このような被覆層は、スタック内の他の層の厚さよりも実質的に薄い厚さを有してもよい。例えば、被覆層は他の層の1/4の厚さであってもよい。このことにより、被覆層がスタックの上面に「横たわる」のに十分な可撓性となり、したがって、下方にある表面の向きの変化を滑らかにすることが可能になる。
【0031】
例えば、好ましい実施形態では、各スタック内に5つの層が存在する。各層の厚さはおよそ4mm、すなわち3.5mm〜4.5mmである。一方、被覆層の厚さはたったおよそ1mm、すなわち0.5mm〜1.5mmである。各層の厚さが4mmであることの利点は、引抜き成形ストリップをロールにおいて供給することができることである。
【0032】
各層の幅は、約150mm、すなわち140mm〜160mmであることが好ましい。なぜなら、これにより、実質的に沿層方向の振動を防止するのに必要な程度の沿層方向の剛性がもたらされるからである。
【0033】
他の実施形態では、各スタック内に、4層ほどに少なく存在しても、12層ほどに多く存在してもよいことが想定される。
【0034】
被覆層以外のスタック内の各層は、設けられる場合、層の全幅にわたって延在する単一の引抜き成形繊維複合材ストリップを備えていてもよい。このような構成は、単純性、ひいては低製造コストという利点を有する。なぜなら、各層内に1つのストリップしか必要とされないからである。さらに、スタック内の各層は同じ幅を有するため、被覆層以外の引抜き成形繊維複合材ストリップの全ては、設けられる場合、同じ引抜き成形装置から作製することができるか、又はまさに同じ引抜き成形ストリップから切り出してもよい。
【0035】
代替的には、各層は、並列構成の複数の引抜き成形繊維複合材ストリップを備えていてもよい。並列構成の複数の引抜き成形繊維複合材ストリップは第1の構成の形態をとってもよい。第1の構成では、スタックの各層内のストリップの側縁、すなわち長手方向縁が、他の層のストリップの側(長手方向)縁と位置合わせされる。この場合、各ストリップは、各層が1つのみのストリップを備える上記の構成の場合よりも狭い幅を有する。しかし、ストリップは、依然として同じ幅を有し、したがって、同じ引抜き成形装置から形成するか又は同じ引抜き成形ストリップから切り出すことができる。第2の構成では、スタックの各層内のストリップの内側(長手方向)縁は、上記又は各隣接する層内のストリップの内側縁に対してジグザグに変位している。このことは、ストリップの全てが、同じ幅を有するのではなく、したがって2つ以上の引抜き成形装置から形成されなければならないことを意味するが、このことによってより安定したスタックを得ることができる。実際にこのような構成は、典型的には、れんが壁において見出される。
【0036】
各層が2つ以上のストリップを含む上記構成のそれぞれにおいて、各層内のストリップは、代替的には又はさらには、端と端とをつなげて構成してもよい。これは、例えば、強化構造体がかなりの長さを有する場合に有利とすることができる。この場合、製造は、強化構造体を比較的短い複数の引抜き成形ストリップから形成することによって単純化することができる。
【0037】
引抜き成形繊維複合材ストリップは、十分な引張強度を有するが、カーボン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、並びに木質繊維及び有機繊維を含む天然繊維から、これらの繊維タイプのいずれかの組合せを含めて選択される繊維から形成することができることが重要である。好ましい実施形態では、引抜き成形繊維複合材ストリップは熱硬化性樹脂マトリックスに埋め込まれたカーボン繊維から形成される。カーボン繊維は、ガラス繊維等の他の繊維と比較して大きい強度対重量比に起因して、特に望ましい。
【0038】
好ましい一実施形態において、強化構造体は、層のスタックを支持する細長い支持部材を備える。これは、形成される場合、強化構造体全体を風力タービンブレード内の所望の位置に移動するプロセスにおいて役立つ。支持部材の好ましい形態は、略U字形状の断面を有するチャネルであり、層のスタックはチャネル内で支持される。このことは、スタックの断面が実質的に矩形であるため、特に好都合である。少なくともU字形状断面の幅はスタックの幅に相当することが特に好ましい。なぜなら、この場合、U字形状の側方アームが、運搬中、スタック内の層のいかなる不所望の横方向の動きも防止するからである。
【0039】
支持部材は、ガラス強化プラスチック(GRP)材料から作製してもよいことが好都合であり、また、避雷器を備えるか又は収容してもよい。
【0040】
上記のように、支持部材はガラス強化プラスチック(GRP)材料から形成されることが好ましく、避雷器を備えていてもよい。
【0041】
上記板はGRPから作製されることが好ましい。
【0042】
この構成により、各シェル半体は別個に形成し、次に、強化構造体を適所に有するシェル全体を加熱により硬化させる前に、2つの半体をともに結合することができる。
【0043】
シェル半体の内板及び外板は、ガラス繊維エポキシ樹脂複合材から作製してもよい。
【0044】
風力タービンブレードは、使用の際、風力タービンブレードに作用する剪断力を伝達するように、対向するシェル半体内で強化構造体間に位置付けられる少なくとも1つの細長いウェブを更に備えることが好ましい。したがって、このようなウェブは、「剪断ウェブ」と呼ぶ場合がある。2つのこのような強化構造体とウェブとの組合せは、I字ビームに匹敵し、I字ビームの構造的利点を有する。
【0045】
1つの実施形態において、各シェルは2つの強化構造体を備え、細長いウェブは断面がX字形状である。この場合、X字形状の2つの対角線のそれぞれが強化構造体のそれぞれ2つの間に延在することが好ましい。このような構成は、単一のウェブが4つの強化構造体用に設けられることを可能にする。
【0046】
X字形状ウェブは、ともに結合される2つのV字形状ウェブから形成されることが好ましい。なぜなら、V字形状ウェブは容易に積み重ねるか又は入れ子にすることができ、保管及び運搬が容易になるからである。
【0047】
さらに、ウェブは、タービンブレードの製造中に金型の形状により容易に適合するように、弾性材料から作製されることが好ましい。
【0048】
X字形状の弾性ウェブは2つのシェル半体間の距離よりも僅かに大きく作製されることが好ましい。それにより、ウェブは、シェル半体が合わせられると或る程度撓む。ウェブのサイズのより大きい許容差が可能になるだけでなく、ウェブ及びシェル半体間に確立される良好な接着結合も可能になる。接着剤が硬化すると、ウェブは所望の位置に固定され、ウェブの高さは2つのシェル半体間の間隔に一致する。
【0049】
この場合、ウェブは、剪断力を各強化構造体の全幅からウェブに導くように、X字形状断面を有する2つの対角線の各端部にそれぞれのフランジを備えることが好ましい。
【0050】
X字形状ウェブを設けることの代替として、従来のC字形状ウェブを設けてもよい。C字形状の2つのアームは、ブレードの外側シェル半体間にウェブを取り付けるフランジを構成してもよい。
【0051】
また、Z字形状断面を有する追加のウェブを設けてもよい。これは、6つの強化構造体が存在する場合に特に望ましい。なぜなら、X字形状ウェブは、通常、ブレードの前縁内で4つの対向する強化構造体間の剪断力を吸収するように設けられる場合があり、その場合、Z字形状ウェブを、通常、ブレードの後縁部内で残りの2つの対向する強化構造体間の剪断力を吸収するように設けることができるからである。すなわち、Z字形状ウェブは、X字形状ウェブとブレードの後縁との間に位置決めされる。「前縁」及び「後縁」という用語は、以下でより詳細に説明する。
【0052】
好ましい一構成において、強化構造体のうちの4つはブレードの長さに沿って略平行な方向に延在し、一方、残りの2つの強化構造体はより短く、ブレードのより幅広の部分にある他の強化構造体から離れるように延在し、「後方ストリンガー」を形成する。結果としてブレードの幅広部において強化構造体を分離することにより、沿層方向の剛性が向上する。後方ストリンガーを設けることにより、主な構造体及び後縁間のブレードシェルの支持されない長さが低減される。これは、ひいては、ブレードの構造発泡材がより薄くなることを可能にする。ブレードの根元端部における強化構造体間の分離を維持することにより、構造体の末端部を、応力の集中が低減した状態で実現することができる。
【0053】
Z字形状の上側アーム及び下側アームは、例えば、アームの露出した外面に対して接着層を取り付けることにより、ブレードの2つの外側シェル半体間でウェブを連結するフランジとしての役割を果たすことが好ましい。したがって、Z字形状ウェブの中央部のみが対応する強化構造体間の空間に延在する。
【0054】
X字形状ウェブの場合、2つの隣接するアーム間の角度が他方の2つのアーム間の角度とは異なるように、X字形状の対角線は交点において曲がることが好ましい。
【0055】
代替的には、ウェブはY字形状断面を有してもよい。
【0056】
各場合において、単数又は複数のウェブは弾性材料から形成されることが好ましい。これは、上側シェル半体及び下側シェル半体がシェル半体間の適所でウェブによってともに連結されるが、物理的にはシェル半体のみに取り付けられる場合に特に有益である。なぜなら、2つのシェル半体をともに連結する際、接着層を取り付けてもよいウェブの自由端部が、上側シェル半体に対して、ウェブの自由端部が上側シェル半体に接着されるのに十分である力をかけるからである。
【0057】
上述した構成の全てにおいて、内板及び外板は、コア材料及記強化構造体にわたって略途切れることなく延在することが好ましい。
【0058】
本発明の更なる一態様によれば、略中空構造であり、対向する第1のシェル半体及び第2のシェル半体から形成される風力タービンブレードを製造する方法であって、内板及び外板から各シェル半体を構築することと、ブレードの長さ方向に沿って延在するように、外板に第1の細長い強化構造体及び第2の細長い強化構造体を位置付けることであって、各強化構造体は層のスタックを備え、各スタックはブレードの表面に対して略垂直な方向に延在する厚さを有し、各層はそれぞれのスタックの幅にわたって延在し、幅はブレードの長さ方向に対して垂直かつスタックの厚さに対して垂直であり、各層は少なくとも1つの事前硬化された引抜き成形繊維複合材ストリップを備える、外板に第1の細長い強化構造体及び第2の細長い強化構造体を位置付けることと、各シェル半体内で、(a)第1の細長い強化構造体と第2の細長い強化構造体との間に、(b)第1の細長い強化構造体からブレードの前縁に向かって、(c)第2の細長い強化構造体からブレードの後縁に向かって延在するように外板上にコア材料を配置することと、第1の細長い強化構造体及び第2の細長い強化構造体並びにコア材料の上面に内板を配置することと、第1のシェル半体にある強化構造体のうちの少なくとも1つと、第2のシェル半体にある強化構造体のうちの1つとの間に延在するように細長いウェブを配置することとを含む方法が提供される。
【0059】
好ましい一実施形態において、当該方法は上記のタイプの風力タービンブレードを製造することを含む。上記のタイプの風力タービンブレードでは、1つ又は複数の強化構造体が、風力タービンブレードの長さに沿った少なくとも途中まで、風力タービンブレードの外形によって規定されるそれぞれの所定の湾曲に沿って延在する。当該方法は、金型内に、上記又は各強化構造体に対する実質的に剛性の細長い支持面を設けることであって、支持面は、所定の湾曲に沿って延在し、各位置において、所定の湾曲に沿ってその位置における湾曲の程度に応じた或る角度で向き付けられ、それによって強化構造体の正確な位置決めが容易になる、細長い支持面を設けることと、支持部材を金型に挿入することと、強化構造体を支持面に沿って位置決めすることとを含む。
【0060】
強化構造体を位置決めするステップは、支持面に沿って所定の湾曲に向かって支持部材を摺動させることによって達成してもよい。
【0061】
湾曲部における行路の斜面と同様に、支持面をこのようにして好適に向き付けることにより、支持部材は、支持面に沿って支持部材を摺動させることによって、金型内で所望の最終位置に移動することができる。したがって、このようにして、支持面は強化構造体の誘導表面又はガイド表面として機能する。
【0062】
第1のステップとしてスタックを支持部材上に配置することと、完全な強化構造体をこのようにして適所に移動することとが好ましい。しかし、当然ながら、第1のステップとして、支持部材のみを金型内の支持部材の所望の位置に移動させ、次に、例えば、支持部材に沿ってスタックを摺動させることによって、スタックを金型に挿入することが可能である。代替的には、スタックの個々の層を金型に一度に挿入することが可能である。
【0063】
支持面は、金型の表面に配置される細長いウェッジの1つの表面としてもよいことが好都合である。この場合、ウェッジは構造発泡材から作製してもよい。
【0064】
好ましい一実施形態において、風力タービンブレードは少なくとも1つの細長い強化構造体を備え、少なくとも1つの細長い強化構造体は、風力タービンブレードの長さ方向に、風力タービンブレードの外形によって規定されるそれぞれの所定の湾曲に沿って延在する。各強化構造体は略U字形状の断面を有するチャネル内で支持される強化部材を備える。方法は、金型内で各強化構造体を位置決めすることを含む。
【0065】
この場合、まずチャネルを金型内に位置決めして、次に強化部材をチャネルに配置してもよい。代替的には、まず強化部材をチャネル内に位置決めしてもよく、次に強化構造体全体、すなわち強化部材を収容しているチャネルを、金型内に位置決めしてもよい。
【0066】
実質的に剛性の細長い支持面を金型内に設けてもよいことが有利である。支持面は、所定の湾曲に沿って延在し、所定の湾曲に沿った各位置において、その位置における湾曲の程度に応じた或る角度で向き付けられ、それによって強化構造体の正確な位置決めが容易になる。方法は、強化構造体を金型に挿入することと、例えば、支持面に沿って所定の湾曲に向かって支持部材を摺動することによって、強化構造体を支持面に沿って位置決めすることとを含むことが好ましい。
【0067】
事前硬化させたスタック及び他の構造部材を挿入するステップは、任意の所望の順序において実施することができる。
【0068】
代替的には、上記又は各強化構造体はU字形状チャネルから構成してもよく、個々の引抜き成形ストリップは金型内でその場で構成してもよい。
【0069】
好ましい実施形態では、タービンブレード内に6つの強化構造体が存在するが、当然ながら、タービンブレードのサイズ及び/又は形状並びに必要とされる強化の程度に応じてより少なくてもより多くてもよい。
【0070】
また、本発明は、略中空構造であり、第1のシェル半体及び第2のシェル半体を備える風力タービンブレードを製造する方法であって、
第1の細長い金型半体及び第2の細長い金型半体のそれぞれにおいて、それぞれの外板用の1つ又は複数の繊維布を配置することと、
第1の細長い金型半体及び第2の細長い金型半体のそれぞれにおいて、それぞれの金型半体の長さ方向に沿って延在するように、外板用の繊維布上に第1の細長い強化構造体及び第2の細長い強化構造体を位置付けることであって、
各強化構造体は層のスタックを備え、各スタックはそれぞれの金型半体の表面に対して略垂直な方向に延在する厚さを有し、
各層はそれぞれのスタックの幅にわたって延在し、幅はそれぞれの金型半体の長さ方向に対して垂直かつスタックの厚さに対して垂直であり、各層は少なくとも1つの事前硬化された引抜き成形繊維複合材ストリップを備え、
それぞれの金型半体のそれぞれ内で、(a)第1の細長い強化構造体と第2の細長い強化構造体との間に、(b)第1の細長い強化構造体からそれぞれの金型半体の前縁に向かって、(c)第2の細長い強化構造体からそれぞれの金型半体の後縁に向かって延在するように外板用の繊維布上にコア材料を配置することと、
第1の細長い金型半体及び第2の細長い金型半体のそれぞれにおいて、第1の細長い強化構造体及び第2の細長い強化構造体並びにコア材料の上面にそれぞれの内板用の1つ又は複数の繊維布を配置することと、
第1の金型半体及び第2の金型半体内に樹脂を供給することと、
続いて、第1のシェル半体及び第2のシェル半体を形成するように樹脂を硬化させることと、
を含む方法を提供する。
【0071】
本方法は、続いて、金型半体のうちの一方に細長いウェブを配置することと、細長いウェブが、第1のシェル半体にある強化構造体のうちの少なくとも1つと第2のシェル半体にある強化構造体のうちの少なくとも1つとの間に延在するように、第1の金型半体を第2の金型半体の上方の位置に枢動させることとを含むことが好ましい。本方法は、金型半体のうちの少なくとも一方内で、外板と、細長い強化構造体のうちの1つ及びコア材料の当接領域との間に事前硬化メッシュを位置付けることを含むことが好ましい。本方法は、金型半体のうちの少なくとも一方内で、内板と、細長い強化構造体のうちの1つ及びコア材料の当接領域との間に事前硬化メッシュを位置付けることを含むことが好ましい。
【0072】
本発明の更なる態様は以下のとおりである。
(a)風力タービンブレードの細長い強化構造体。本構造体は、使用の際、ブレードの長さ方向に沿って延在するように構成される。本構造体は層のスタックを備え、スタックは、使用の際、風力タービンブレードの表面に対して略平行な方向に延在する幅を有する。各層は、スタックの幅にわたって延在するとともに、少なくとも1つの引抜き成形繊維複合材ストリップを備える。
【0073】
このような強化構造体は、既知の構造体よりも単純な構造を有し、ひいては製造するのがより安価である。
【0074】
好ましい一実施形態に関して上述した強化構造体の支持部材は、強化構造体の特定のタイプに必ずしも限定されない利点を提供することが理解される。したがって、本発明は、以下のものにまで拡張される。
(b)略U字形状の断面を有する少なくとも1つの細長いチャネルを備える風力タービンブレード。少なくとも1つの細長いチャネルにおいて、細長い強化構造体を支持してもよい。
【0075】
X字形状断面を有するウェブを設けることは、必ずしも上述したタイプではない強化構造体を有する風力タービンブレードに対して利点を提供することが理解される。このため、本発明は、以下のものにまで拡張される。
(c)略中空構造である風力タービンブレード。本ブレードは2つの対向するシェル半体から形成される。各シェル半体は、それぞれがブレードの長さ方向に沿って延在する少なくとも2つの細長い強化構造体を備え、使用の際、風力タービンブレードに作用する剪断力を伝達するように、対向するシェル半体内で強化構造体間に位置付けられるウェブを更に備える。ウェブはX字形状断面を有する。
(d)略中空構造である風力タービンブレード。本ブレードは対向する第1のシェル半体と第2のシェル半体とから形成される。第1のシェル半体は少なくとも2つの細長い強化構造体を備え、第2のシェル半体は、それぞれがブレードの長さ方向に沿って延在する少なくとも1つの細長い強化構造体を備え、対向するシェル半体内で強化構造体間に位置付けられるウェブを更に備える。ウェブはY字形状断面を有する。
(e)上記のタイプの風力タービンブレードを作製する方法。1つ又は複数の強化構造体が風力タービンブレードの長さに沿った少なくとも途中まで、風力タービンブレードの外形によって規定されるそれぞれの所定の湾曲に沿って延在する。本方法は、金型内に、上記又は各強化構造体に対する実質的に剛性の細長い支持面を設けることであって、支持面は、所定の湾曲に沿って延在し、所定の湾曲に沿って各位置において、その位置における湾曲の程度に応じた或る角度で向き付けられ、それによって強化構造体の正確な位置決めが容易になる、細長い支持面を設けることと、支持部材を金型に挿入することと、強化構造体を支持面に沿って位置決めすることとを含む。
(f)少なくとも1つの細長い強化構造体を備える風力タービンブレードを作製する方法。少なくとも1つの細長い強化構造体は、風力タービンブレードの長さ方向に、風力タービンブレードの外形によって規定されるそれぞれの所定の湾曲に沿って延在する。上記又は各強化構造体は、略U字形状の断面を有するチャネル内で支持される強化部材を備える。本方法は、金型内に、上記又は各強化構造体に対する強化構造体を位置決めすることを含む。
(g)少なくとも1つの細長い強化構造体を備える風力タービンブレードを製造する方法。少なくとも1つの細長い強化構造体は、風力タービンブレードの長さ方向に、風力タービンブレードの外形によって規定されるそれぞれの所定の湾曲に沿って延在する。本方法は、金型内に、上記又は各強化構造体に対する実質的に剛性の細長い支持面を設けることであって、支持面は所定の湾曲に沿って延在し、所定の湾曲に沿った各位置において、その位置における湾曲の程度に応じた金型の表面に対する或る角度で向き付けられ、それによって強化構造体の正確な位置決めが容易になる、細長い支持面を設けることと、強化構造体を金型に挿入することと、例えば、支持面に沿って所定の湾曲に向かって支持部材を摺動させることによって、強化構造体を支持面に沿って位置決めすることとを含む。
【0076】
上記又は各強化構造体は、別個の金型において形成及び事前硬化させ、次に、風力タービンブレードの他の構成部材とともに主型に挿入させてもよい。このような構成によれば、上述したU字形状チャネル又はウェッジ形状支持体の使用を伴わずに、事前硬化させた強化構造体を主型に挿入することが可能である。
【0077】
さらに、このような手順は、上述した強化構造体とは異なる強化構造体の場合に有利である。例えば、引抜き成形ストリップとは異なって、繊維布から作製される強化構造体をこのようにして事前硬化させ、次に、風力タービンブレードを形成する主型に挿入させることができる。この場合、各繊維布は、金型に別個に挿入するか、又は繊維布の完全なスタックを第1のステップとして形成することができ、次に、この完全なスタックを金型に配置する。
【0078】
したがって、本発明の更なる一態様によれば、以下のものが提供される。
(h)少なくとも1つの強化構造体を備える風力タービンブレードを製造する方法。本方法は、繊維層のスタックを形成することと、第1の金型において繊維層のスタックを事前硬化することと、事前硬化させたスタックを第2の金型に挿入することと、風力タービンの他の構造部材を第2の金型に挿入することと、スタック及び他の構造部材を第2の金型においてともに統合することとを含む。
【0079】
これより、本発明をより容易に理解することができるように、本発明の好ましい実施形態を添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0080】
図1】風力タービンの主な構成部材を示す図である。
図2】本発明の好ましい一実施形態に係る、強化構造体を組み込んだ風力タービンブレードの外側シェルの1つの半体の内面の概略図である。
図3(a)】風力タービンブレードのシェル半体内の強化構造体の構成の断面略図である。
図3(b)】風力タービンブレードのシェル半体内の強化構造体の構成の断面略図である。
図4(a)】図2に示されている強化構造体を組み込んだ風力タービンブレードの長手方向概略断面図である。
図4(b)】図2に示されている強化構造体を組み込んだ風力タービンブレードの長手方向概略断面図である。
図4(c)】図2に示されている強化構造体を組み込んだ風力タービンブレードの長手方向概略断面図である。
図4(d)】図2に示されている強化構造体を組み込んだ風力タービンブレードの長手方向概略断面図である。
図4(e)】図2に示されている強化構造体を組み込んだ風力タービンブレードの長手方向概略断面図である。
図5図2に示されている強化構造体のうちの1つの一部の横方向断面図である。
図6(a)】本発明に係る強化構造体の異なる3つの実施形態の内の1つの実施形態の長手方向断面図である。
図6(b)】本発明に係る強化構造体の異なる3つの実施形態の内の1つの実施形態の長手方向断面図である。
図6(c)】本発明に係る強化構造体の異なる3つの実施形態の内の1つの実施形態の長手方向断面図である。
図7(a)】好ましい一実施形態に係る、風力タービンブレードの長さに沿った異なる位置におけるX字断面ウェブの2つの概略図の内の1つの概略図である。
図7(b)】好ましい一実施形態に係る、風力タービンブレードの長さに沿った異なる位置におけるX字断面ウェブの2つの概略図の内の1つの概略図である。
図8】好ましい一実施形態に係る、風力タービンブレードの製造中の金型内に載置された強化構造体の長手方向断面図である。
図9(a)】本発明の好ましい一実施形態に係る風力タービンブレードを製造する方法を示す図である。
図9(b)】本発明の好ましい一実施形態に係る風力タービンブレードを製造する方法を示す図である。
図10(a)】風力タービンブレードの長さに沿った異なる位置において示す、更なる実施形態に係るウェブの代替的な形態を示す図である。
図10(b)】風力タービンブレードの長さに沿った異なる位置において示す、更なる実施形態に係るウェブの代替的な形態を示す図である。
図10(c)】風力タービンブレードの長さに沿った異なる位置において示す、更なる実施形態に係るウェブの代替的な形態を示す図である。
図10(d)】風力タービンブレードの長さに沿った異なる位置において示す、更なる実施形態に係るウェブの代替的な形態を示す図である。
図10(e)】風力タービンブレードの長さに沿った異なる位置において示す、更なる実施形態に係るウェブの代替的な形態を示す図である。
図10(f)】風力タービンブレードの長さに沿った異なる位置において示す、更なる実施形態に係るウェブの代替的な形態を示す図である。
図11(a)】本発明の実施形態に係るウェブの更なる代替的な形態を示す図である。
図11(b)】本発明の実施形態に係るウェブの更なる代替的な形態を示す図である。
図12】本発明の好ましい一実施形態に係る風力タービンブレードの製造におけるステップを示すフローチャートである。
図13】本発明の一実施形態に係る風力タービンの製造における代替的な方法を示す図である。
図14図12に示されている方法におけるステップを示すフローチャートである。
図15(a)】風力タービンブレードの各シェル半体にメッシュが設けられる好ましい一実施形態を示す図である。
図15(b)】風力タービンブレードの各シェル半体にメッシュが設けられる好ましい一実施形態を示す図である。
図15(c)】風力タービンブレードの各シェル半体にメッシュが設けられる好ましい一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0081】
本発明の好ましい実施形態の以下の記載を通して、また図面において、同じ参照符号は同じ又は対応する構造的特徴を示すのに用いられている。
【0082】
図2を参照すると、風力タービンブレードの外側シェルの1つの半体8が、3つの細長い強化構造体9、10、11によって形成され、以下でより詳細に説明される。2つの強化構造体9、10は、根元部12からブレード先端部13までのタービンブレードの全長に略沿って延在する。ブレードの根元部12は、ボルトを受けるため、ねじ切り金属インサート14によって形成される。図1を参照して上述したように、このボルトによって、ブレードが風力タービンの中央ハブに取り付けられる。
【0083】
第3の強化構造体11は、根元部12からブレードに沿って部分的にのみ延在し、また、他の2つの強化構造体9、10からブレードの後縁15に向かってブレードの前縁16から離れるように横方向に変位する。
【0084】
2つの強化構造体9、10は風力タービンブレードの翼桁キャップを形成し、第3の強化構造体11は後縁15の補強材として機能する。
【0085】
ブレードの根元部12内にある3つの強化構造体9、10、11の端部は、2つの強化構造体9、10の、ブレード先端部13まで延在する遠位端部がそうであるように、追加の強度及び安定性のためにガラス強化プラスチック(GRP)材料に覆われる。
【0086】
外側シェルの残りの部分は構造発泡材17によって充填され、強化構造体9、10、11、及び構造発泡材17は全て、以下でより詳細に記載される外板及び内板内に形成される。
【0087】
構造発泡材17は軽量のコア材料であり、木材、特にバルサ材及びハニカム材等の他のコア材料を用いることができることが理解される。
【0088】
完全なタービンブレードは、対応する下側半体及び2つの内部ウェブとともに、図2に示されている外側シェルの上側半体8から形成される。
【0089】
図3(a)は、各シェル半体8’が内板18’及び外板19’を備える従来の構成の断面図を示している。内板18’及び外板19’間には1つのみの強化構造体9’が設けられる。強化構造体9’の各側までの内板18’及び外板19’間の領域は構造発泡材17’によって充填される。図面から見て取ることができるように、シェル半体8’の幅にわたって著しい湾曲がある。強化構造体9’は略矩形の断面を有して形成されるため、結果として、大きい空隙20’が、外板19’と強化構造体9’の中央領域との間、及び内板18’と強化構造体9’の端部領域との間に形成される。以下で詳細に記載される成形工程中、樹脂がこれらの空隙20’に注入される。このことは複合構造体において望ましくない。なぜなら、これによって、ブレードの重量及びコストの双方が増大し、また構造的問題が生じる可能性があるからである。
【0090】
図3(b)は本発明の好ましい一実施形態の断面図であり、各シェル半体8が内板18及び外板19間に少なくとも2つの強化構造体9、10を設けた状態で提供される。見て取ることができるように、外板19と強化構造体9の中央領域との間、及び内板18と強化構造体9の端部領域との間に形成される結果の空隙20の容積は、1つのみの強化構造体9’が設けられる場合に生じる空隙20’の容積よりも大幅に小さい。結果として、成形プロセス中に空隙20を充填するのに必要とされる樹脂の量は大幅により少ない。
【0091】
さらに、図3(a)に示されている単一の強化構造体とは異なって、図3(b)に示されているように各シェル半体において2つの強化構造体を用いることにより、強化構造体の全幅が、風力タービンブレードの外板19により近接して位置付けられる。これは構造的な理由で有利である。なぜなら、これにより、風力タービンブレードが曲げに対するより高い耐性を有するように、より高い慣性二次モーメントが提供されるからである。
【0092】
図4(a)から図4(e)は、ブレードの長さに沿った異なる位置における完全なタービンブレードの断面図である。図4(a)はブレード先端部13近くのブレードを示す。図4(a)から、図2に示されている外側シェルの上側半体の長さに沿ったこの位置には、最初の2つの強化構造体9、10のみが存在するのを見て取ることができる。また、外側シェルの下側半体21が3つの強化構造体22、23、24を有して設けられているが、同様に、この位置には3つの強化構造体22、23、24のうちの2つの強化構造体22、23のみが存在する。
【0093】
細長い弾性ウェブ25が、2つの外側GRP層間に挟まれるバルサ材又は軽量の発泡材の層から作製され、略X字形状の長手方向断面を有する。細長い弾性ウェブ25は、外側シェル内に設けられ、使用の際にタービンブレードに作用する剪断力を伝達する役割を果たす。X字形状の対角線状の2つのアームのうちの一方は第1の組の強化構造体9、23間に延在し、他方の対角線状のアームは第2の組の強化構造体10、22間に延在する。
【0094】
図4(b)は、タービンブレードの長さに沿った、図4(a)の位置と中央部との間の位置を示している。図4(b)では残りの2つの強化構造体11、24の端部を見て取ることができる。
【0095】
図4(c)はタービンブレードの中央部を示している。図4(c)から、略Z字形状の長手方向断面を有する更なる細長い弾性ウェブ26が設けられているのを見て取ることができる。弾性ウェブ26はブレードの後縁15において2つの強化構造体11、24間に延在する。Z字形状の2つの外側リムがZ字形状ウェブ26を2つの対応する強化構造体11、24に連結するフランジとして機能する。
【0096】
図4(c)の断面図の詳細図である図4(d)を参照すると、強化構造体22は内板18及び外板19間に挟まれ、外側シェルの残りの部分は同様に内板18及び外板19間に挟まれる構造発泡材17の層から形成される。これらの板はGRPから形成される。
【0097】
強化構造体22は、引抜き成形繊維複合材ストリップ層のスタック27の形態にある。スタック27はU字形状チャネル28内で支持される。さらに、U字形状チャネル28は細長いウェッジ29上に支持され、そのため、チャネル28のベースがシェルの外板19に対して鋭角になる。チャネル28は、使用の際、避雷器として機能する材料を含む。他の実施形態において、U字形状チャネル28及びウェッジ29は省略してもよい。
【0098】
X字形状ウェブ25のアームの端部には、強化構造体22の全幅にわたってかかる剪断力をX字形状ウェブ25に導くフランジ30が設けられる。
【0099】
図4(d)に示されている拡大図は、6つの強化構造体9、10、11、22、23、24のそれぞれに等しく当てはまることが理解される。
【0100】
図4(e)は図4(c)に示されている中央部と根元部12との間のブレードの断面図を示しており、各シェル半体内の強化構造体9、10、11、22、23、24が、強化構造体の湾曲を反映して、ブレードの中央部においてともにより近接していることを見て取ることができる。
【0101】
図4(a)から図4(e)では、強化構造体9、10、22、23は翼桁キャップであり、剪断ウェブ25とともに、風力タービンブレードの主な構造翼桁を形成することを見て取ることができる。後縁にある強化構造体11及び24は、風力タービンブレードを後縁の領域において補強し、座屈に対する安定性をもたらし、ウェブ26とともに後縁翼桁を形成する。
【0102】
強化構造体9、10、11、22、23、24のスタック27のそれぞれは両端部において長手方向にテーパーになっている。これは、引抜き成形繊維ストリップ層の数を、中央部における5つから、各端部における単一層のみにまで減少させることによって達成される。この特徴は図面に示されている。図面において、図4(a)及び図4(e)では、強化構造体9、10、22、23、24のそれぞれのスタック27は単一層を有し、一方、図4(c)に示されている中央部内のスタック27は5つの層を有する。同様に、図4(b)では、X字形状ウェブ25の端部における強化構造体9、10、22、23のスタック27は5つの層を有し、一方、Z字形状ウェブ26の端部における強化構造体11、24のスタック27は単一層を有する。
【0103】
この特徴により、強化構造体9、10、11、22、23、24がブレードの外側シェルの厚さの断面に一致する輪郭をとることが可能になる。
【0104】
これは図5の側方断面図において更に示されている。図5は、5つの層31のスタック27の厚さが、根元端部12及び遠位端部32の双方に向かってどのようにテーパーになっているかを示している。図面は単にテーパー構成の例示であることが強調されるべきである。実際には、テーパーは、強化構造体の長さの大部分にわたって分布してもよい。
【0105】
好ましい実施形態の2つの更なる特徴によってテーパーの滑らかさが向上し、それにより、スタック27の表面外形の不連続性によって生じる応力の影響が低減される。第1に、層31を形成する引抜き成形ストリップの切断中に形成されるスクエア切断の端部を除去するように、各層31が両端部において面取りされる。第2に、スタック27が最上層33によって覆われる。最上層33は、下方にある層31の厚さよりも薄い厚さを有する追加の引抜き成形繊維複合材ストリップから形成される。最上層33は他の層31よりも薄いため、最上層33はより可撓性もあり、したがって、テーパー端部領域内でスタック27の斜めの面取り端部の周囲に曲がって、比較的滑らかな上面を形成することが可能である。
【0106】
スタック内の各層31はおよそ4mmの厚さを有し、最上層の厚さはおよそ1mmである。
【0107】
図6(a)から図6(c)は、引抜き成形繊維複合材ストリップ、すなわち5つの層31内の引抜き成形ストリップ34の3つの異なる構成を示す長手方向断面図である。図6(a)では、各層31は、各層内に単一のみの引抜き成形ストリップ34を有する。図6(b)では、各層31は、ともに並んで配置された等しい幅を有する並列構成の3つの引抜き成形ストリップ34から形成されている。図6(c)では、各層31は、並列に並んだ構成の3つ又は4つの引抜き成形ストリップ34を有するが、2つの異なる幅を有する引抜き成形ストリップ34を含む。
【0108】
好ましい実施形態では、上記3つの構成内の引抜き成形ストリップ34のそれぞれはそれぞれの層31の全長を延在するが、いくつかの実施形態において、層31のうちの少なくともいくつかは、端と端とをつなげて構成されるより短いストリップ34を含むことが有益である場合がある。
【0109】
図7(a)及び図7(b)は、X字形状の弾性ウェブ25を示す風力タービンブレードの中央部及び根元部12をより詳細に示している。強化構造体は明確性のために図面には示していない。ウェブは2つの略V字形状の半体25a、25bにおいて形成され、図に見られるように、各半体25a、25bの下側端部は接着層(図示していない)によって外側シェルの下側半体に取り付けられ、ウェブ25の2つの半体25a、25bはボルト36によってともに結合される。
【0110】
図8は、下側金型半体37内の強化構造体22を含む外側シェルの領域をより詳細に示す長手方向断面図である。製造中、1つの乾燥繊維布、又は重畳する及び/又は重なり合う複数の乾燥繊維布の形態にある外板19をまず金型半体37の表面に配置する。次に、強化構造体9、10、11、22、23、24が位置決される曲線領域に沿って細長いウェッジ29を外板19上に位置決めする。以下で更に記載される内板を、同様に、1つの乾燥繊維布、又は重畳する及び/又は重なり合う複数の乾燥繊維布によって形成する。乾燥布は、金型半体において以下に記載する他の構成部材とともに位置決めされると、例えば以下に記載する注入プロセス等の注入プロセスにおいて、金型半体内に供給される樹脂によって含浸される。代替形態として、以下でも言及されるが、内板及び外板はプリプレグ(事前含浸繊維)布から準備することができ、この場合、樹脂は布の繊維材料とともに金型半体内に供給されることが指摘されるべきである。
【0111】
強化構造体はウェッジ29のそれぞれの上面に沿って位置決めされる。これは、まず各強化構造体のU字形状チャネル28をウェッジ29の上面に沿って位置決めし、次に、繊維複合材ストリップの引抜き成形層のスタック27をチャネル28内に挿入するか、又は代替的には、金型半体37の外部で強化構造体全体を形成し、次に、ウェッジ29の上面に沿って強化構造体全体を配置することにより達成することができる。いずれの場合でも、強化構造体は、ウェッジ29上の適所に降下させるか、又はウェッジ29の表面に沿って適所に摺動させることができる。
【0112】
ウェッジ29の上面の向きは、強化構造体を所望の位置に保持するように、線形領域の湾曲に応じてウェッジ29の長さに沿って変化する。
【0113】
次に、構造発泡材17の層を金型半体37に注入して、強化構造体9、10、11、22、23、24間の領域を充填する。次に、1つの乾燥繊維布、又は重畳する及び/又は重なり合う複数の乾燥繊維布の形態にある内板18を強化構造体の上面上に配置し、構造発泡材17及び構成部材は真空チャンバーを形成するように気密バッグに包まれる。続いて、以下でより詳細に記載するように、真空チャンバーを排気して樹脂を注入する。
【0114】
次に、下側金型半体37内の構成部材を加熱し、それによって、ブレードの下側の外側シェル半体を形成するように樹脂を硬化させる。
【0115】
この実施形態では、内板18及び外板19はバイアックスガラス布の1つの層から形成されるが、代替的には、複数の層を用いてもよい。上述したように、U字形状チャネル28及び細長いウェッジ29を省略することも可能であり、それにより、スタック27は外板19上に直接形成して位置付けられる。構造発泡材17を外板19上に位置決めし、次に、続いてスタック28を金型37内に挿入することも可能である。
【0116】
次に、外側シェルを伴う上側金型半体を下側金型半体37の上方に位置決めし、それによりブレードの完全な外側シェルを形成する。
【0117】
図9(a)は、下側金型半体37にあるときの、外側シェルの下側半体の構成部材の構成全体を示している。図9(b)を参照すると、内板18が強化構造体22、23の表面及び構造発泡材17の上面にわたって配置された後、気密シール層(すなわち真空バッグ)38が金型に取り付けられ、それにより、構成部材の全てを収容する真空チャンバーが形成される。次に、チャンバーが真空ポンプ39を用いて排気される。ポンプ39が依然としてエネルギー付与されている状態で液体樹脂40の供給部がチャンバーに接続され、それにより構成部材と構成部材間の間隙との双方が含浸される。対応する注入プロセスが外側シェルの上側半体の構成部材に適用される。ポンプ39は、続く成形作業中、動作し続ける。成形作業において、樹脂を硬化させるように金型は加熱されるが、硬化プロセス中、減圧の程度は低くしてもよい。
【0118】
次に、X字形状ウェブ25及びZ字形状ウェブ26を、接着剤によって下側金型半体37内の強化構造体22、23、24のすぐ上方で内板18に取り付ける。ウェブ25、26の上側自由端部はそれぞれの接着層によってコートされている。
【0119】
次に、上側金型半体を下側金型半体37の上方の適所に枢動し、2つの金型半体をともに連結する。これにより、上側金型半体内の強化構造体9、10、11がウェブ25、26の上側自由端部に接着する。ウェブ25、26の弾性により、上側強化構造体9、10、11に対するウェブ25、26の付勢力が生じ、それにより、良好な接着が確実になる。ブレードの前縁はそれぞれの金型半体の前縁に沿って形成され、ブレードの後縁はそれぞれの金型半体の後縁に沿って形成される。
【0120】
次に、金型を開き、仕上がったタービンブレードを金型から持ち上げる。
【0121】
図10(a)から図10(f)は、ウェブ41、42、43のそれぞれがI字形状断面を有する風力タービンブレードの代替的な実施形態の断面図である。ウェブ41、42、43は、対応する強化構造体と組み合わせてI字ビーム構造になる。ウェブのそれぞれは各端部にフランジ30が設けられるため、代替的には、これらのウェブは、C字形状のアームがフランジ30を構成するC字断面ウェブとして考慮することができる。
【0122】
図10(a)から図10(c)では、4つのみの強化構造体9、10、22、23が存在する。図10(a)はブレード先端部近くの断面図を示し、図10(b)はブレードに沿った中間点の断面図を示し、図10(c)は根元端部近くの断面図を示している。図10(c)では、強化構造体9、10、22、23の厚さがテーパーになっていることを見て取ることができる。図面から見て取ることができるように、各シェル半体内の強化構造体はブレードの先端部近くで、ともにより近接している。
【0123】
図10(d)から図10(f)には、6つの強化構造体9、10、11、22、23、24と、各対の対向する構造体9、19;10、23;及び11、24を連結するそれぞれのI字形状ウェブ41、42、43とが存在する。図10(d)はブレード先端部近くの断面図を示し、図10(e)はブレードに沿った中間点の断面図を示し、図10(f)は根元端部近くの断面図を示している。ここでも、図10(f)では、強化構造体9、10、22、23の厚さがテーパーになっていることを見て取ることができる。
【0124】
図11(a)及び図11(b)はウェブの更なる2つの形態を示している。図11(a)では、ウェブ44はX字形状断面を有する。ここでは、2つの対角線が交点45において曲がり、上側リムが2つの下側リム間の角度βよりも大きい角度αで分岐する。この構成の利点は、下側リムが2つのシェル間の隙間をブリッジする役割を単に果たす一方で、上側が広角であることにより、2つの金型半体が閉じられたときに追加の可撓性が生じることである。図11(b)では、2つの下側リムが結合されて単一のリムになり、Y字形状断面を有するウェブ46になっている。このようなウェブは、上述したX字形状及び/又はZ字形状のウェブと置換することができる。
【0125】
図12を参照すると、上述した方法は以下のように要約することができる。すなわち、当該方法は、下側金型半体37内に支持面を設けるステップ47と、強化構造体9を下側金型半体37に挿入するステップ48と、ウェッジ29の表面に沿ってそれぞれの所望の位置に強化構造体9を摺動させるステップ49とを含む。
【0126】
図13は、引抜き成形ストリップ34が別個の金型に配置される代替的な方法を示している。この別個の金型は、主型半体50の外部のU字形状チャネル28として、マトリックス(樹脂又は接着剤)とともに設けられる。マトリックスは、スタック27が別個の金型28において形成されるように事前硬化される。次に、事前硬化された硬化スタック27は他の構造部材とともに樹脂注入プロセスに向けて主型半体50に配置される。
【0127】
図14を参照すると、この方法は以下のように要約することができる。すなわち、この方法は、以下のステップを含む:(a)繊維層のスタックを形成するステップ51と、(b)繊維層のスタックを第1の金型において事前硬化させるステップ52と、(c)事前硬化させたスタックを第2の金型に挿入するステップ53と、(d)スタック及び他の構造部材を第2の金型においてともに統合させるステップ54。いくつかの実施形態において、スタックは、第1の金型において部分的に硬化させて、次に第2の金型において完全に硬化させることができる。他の実施形態において、スタックは、第1の金型において完全に硬化させて、それ自体を第2の金型において他の構造部材とともに統合させることができる。ここで、他の構造部材のうちのいくつかが硬化される。
【0128】
図15(a)から図15(c)は、上述した実施形態のうちのいずれかと組み合わせてもよい更なる好ましい一実施形態を概略的に示している。明確性を向上させるために、部材は縮尺どおりには描かれていない。各シェル半体8において、ガラス織布及び事前硬化樹脂から形成される内側事前硬化メッシュ55及び外側事前硬化メッシュ56が設けられ、内側事前硬化メッシュ55及び外側事前硬化メッシュ56は、それぞれの内板18及び外板19と、下方にある強化構造体9、10との間に位置決めされる。メッシュ55、56は、下方にある強化構造体9、10がコア材料17に当接する領域にわたって延在する。ブレード先端部13の領域において、2つの強化構造体9、10は近接して分離している。これは図15(c)の線A−A’に沿った図15(a)の断面図に示されている。この場合、内側メッシュ55及び外側メッシュ56のそれぞれは、強化構造体9、10及びコア材料17間の4つの遷移領域の全てを覆うように、下方にある強化構造体9、10の双方にわたって延在する。しかし、ブレードの根元部12の領域において、2つの強化構造体9、10は更に離れている。これは図15(c)の線B−B’に沿った図15(b)の断面図に示されている。この場合、内側メッシュ55及び外側メッシュ56のそれぞれが、それぞれの強化構造体、例えば9と、隣接するコア材料17との間の2つの遷移領域のみを覆うように、下方にある強化構造体9、10のそれぞれ1つのみにわたって延在する。
【0129】
内側メッシュ55及び外側メッシュ56の機能は、(a)下方にある強化構造体9、10と、隣接するコア材料17との間の間隙、及び、(b)下方にある強化構造体9、10の厚さとコア材料17の厚さとの一切の僅かな差に起因して、内板17及び外板18にしわがよることを防止することである。
【0130】
図15(c)はこの構成の平面図である。図15(c)から、メッシュ55、56が略V字形状を形成することを見て取ることができる。内側メッシュ55及び外側メッシュ56間に挟まれる強化構造体9、10の輪郭は、図面において破線によって示されている。内側メッシュ55及び外側メッシュ56の側縁部は下方にあるコア材料上で約20mm延在する。強化構造体9、10及びコア材料17の下方に位置付けられる単一の事前硬化メッシュ55を設けることも可能である。しかし、実際には、レイアップ、すなわち、内側層17及び外側層18、強化構造体9、10並びに発泡材17が、このレイアップの中間点平面を中心に対称であることが有益である。
【0131】
上記実施形態に対して、本発明の範囲から逸脱せずに数多くの変形を行ってもよいことが理解される。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ規定される。例えば、好ましい実施形態では6つの強化構造体並びにX字形状ウェブ及びZ字形状ウェブの双方が存在するが、代替的な実施形態は、4つのみの強化構造体及び単一のX字形状ウェブを備えてもよい。
【0132】
更なる一例において、図9(b)を参照して上述したブレードを製造する樹脂注入方法を用いるのではなく、樹脂を事前含浸させた繊維(すなわち「プリプレグ」繊維)を内板及び外板に用いることができ、この場合、樹脂をシェル構造に注入する必要がない。この構成では、接着フィルム層をスタックになっている個々の層間に設けることができ、それにより、構造体が硬化されると個々の層がともに接着される。
図1
図2
図3(a)】
図3(b)】
図4(a)】
図4(b)】
図4(c)】
図4(d)】
図4(e)】
図5
図6(a)】
図6(b)】
図6(c)】
図7(a)】
図7(b)】
図8
図9(a)】
図9(b)】
図10(a)】
図10(b)】
図10(c)】
図10(d)】
図10(e)】
図10(f)】
図11(a)】
図11(b)】
図12
図13
図14
図15(a)】
図15(b)】
図15(c)】