(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
中心軸に沿って延在するように形成された一対の振動腕部と、該振動腕部の基端部を支持する基部と、を有する圧電板と、前記振動腕部の外表面上に形成され、電圧が印加された時に前記振動腕部を振動させる励振電極と、を備え、
前記基部は、
マウント電極が外表面に形成されたマウント部と、
該マウント部と前記振動腕部との間に位置するように両者に連設され、前記励振電極と前記マウント電極とを接続する引き出し電極が外表面に形成された中間部と、を有し、
前記中間部は、一方の前記振動腕部の外側側面と他方の前記振動腕部の外側側面との間の間隔よりも幅広とされ、
前記マウント部は、前記中間部よりも幅広とされ、
前記マウント部の側面と前記中間部の側面とは、マウント部と中間部との段差部において、平面視した際に前記中心軸に対して傾斜する傾斜面を介して連設され、
前記中間部の側面は、前記振動腕部側から前記段差部まで前記中心軸に沿って形成され、
前記段差部は、前記中心軸に沿った長さが前記中間部よりも短く形成されていることを特徴とする圧電振動片。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号のタイミング源、リファレンス信号源等として水晶等を利用した圧電振動子が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが提供されているが、その1つとして、音叉型の圧電振動片を有するものが知られている。この圧電振動片は、平行に配された一対の振動腕部を、互いに接近又は離間する方向に所定の共振周波数で振動させる振動片である。
【0003】
ところで、近年、携帯電話機等に代表されるように、圧電振動子を内蔵する各種の電子機器の小型化が進んでいる。そのため、圧電振動子を構成する圧電振動片に関しても、より一層の小型化が求められている。そこで、圧電振動片に関しては、振動腕部の長さ或いは基部の長さを短くして、全長をより短くすることが期待されている。
【0004】
このうち、振動腕部の長さ及び幅は、圧電振動片の周波数に関係するため、振動腕部の長さを短くした場合には、それに応じて幅も小さくする必要がある。ところが、振動腕部の幅を小さくすると、CI値(Crystal Impedance)が上昇してしまう問題があった。そのため、CI値を低く保ちながら振動腕部の長さを短くすることは難しいものであった。
【0005】
従って、圧電振動片の小型化を図るには基部の長さを短くすることが有効である。しかしながら、圧電振動片をマウントする際には、この基部を介してマウントするので、基部の長さを短くしてしまうとマウント性能が劣ってしまうものであった。従って、基部の長さは、通常、マウント性能を確保できる範囲内においてできるだけ短くなるように設計されている。
【0006】
ところで、圧電振動片を作動させた際、基部を通じて振動漏れ(振動エネルギーの漏洩)が発生することが知られている。この振動漏れは、CI値の上昇に繋がってしまうものであるので、できるだけ振動漏れを抑制する必要がある。この点、基部の長さをできるだけ長くすることで、振動腕部の振動を安定させることができるので、振動漏れを効率良く抑えることができる。しかしながら、上述したように、基部の長さは、小型化の観点からマウント性能を確保できる範囲内においてできるだけ短くなるように設計されているので、この長さを変更せずに振動漏れを抑制させることが求められている。
【0007】
このような状況のもと、振動漏れ対策に有効な方法として、
図19に示すように、基部201の両側に切欠部202を形成する方法が知られている(特許文献1参照)。
この圧電振動片200は、基部201が切欠部202によって横幅の異なる中間部201aとマウント部201bとに分かれている。マウント部201bは、中間部201aよりも横幅が大きく、主に圧電振動片200をマウントする際に用いられる部分である。一方、中間部201aは、マウント部201bよりも横幅が小さく、マウント部201bと振動腕部203との間に位置し、該振動腕部203の基端部を固定している部分である。
【0008】
このように、切欠部202を形成することで中間部201aに連設して幅広のマウント部201bを配置できるので、振動漏れを有効に抑制させることが可能とされている。特に、中間部201aの長さLが重要であり、この長さLが最適な長さのときに振動漏れを効果的に抑えることが可能とされている。従って、中間部201aの長さLが最適な長さとなるように、切欠部202の形成位置が精密に設計されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、圧電振動片200を外形形成するには、通常、水晶ウエハに金属マスク等の保護マスクを成膜した後、該保護マスクを圧電振動片200の外形形状に沿ってパターニングし、このパターニングした保護マスクをマスクとして水晶ウエハをエッチング加工することで、外形形成している。
【0011】
しかしながら、エッチング加工の際、中間部201aとマウント部201bとの間の段差部に、
図20及び
図21に示すようなエッチング残り205が生じてしまう場合があった。このエッチング残り205は、主として切欠部202が水晶ウエハの結晶方向に逆らって形成されていたことに起因するものであり、エッチング時間が短い場合には
図20に示すように多く残り、エッチング時間が長い場合には
図21に示すように多少残った状態となる。
【0012】
このように、エッチング残り205が生じてしまうと、中間部201aの長さが変化してしまう。即ち、
図20に示すように、中間部201aの長さ(実効値)が、エッチング時間が短い場合には長さL1となってしまい、
図21に示すように、エッチング時間が長い場合には長さL2となってしまう。特に、エッチング残り205の量は、エッチング時間に左右され易いので、ばらつきが大きくなり易く、中間部201aの長さを毎回均一な長さに調整することが困難であった。
従って、振動漏れにばらつきが生じてしまい、振動漏れによる特性への影響が安定しない問題があった。
【0013】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その主目的は、エッチング残り量のばらつきを極力小さくでき、振動漏れによる特性への影響を非常に小さくすることができる高品質な圧電振動片を提供することである。
また、別の目的は、上記圧電振動片を製造する圧電振動片の製造方法、上記圧電振動片を有する圧電振動子、該圧電振動子を有する発振器、電子機器及び電波時計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
本発明に係る圧電振動片は、中心軸に沿って延在するように形成された振動部と、該振動部の基端部を支持する基部と、を有する圧電板と、振動部の外表面上に形成され、電圧が印加された時に振動部を振動させる励振電極と、を備え、前記基部が、マウント電極が外表面に形成されたマウント部と、該マウント部と前記振動部との間に位置するように両者に連設され、前記励振電極と前記マウント電極とを接続する引き出し電極が外表面に形成された中間部と、を有し、前記マウント部が、前記中間部よりも横幅が幅広とされ、前記マウント部の側面と前記中間部の側面とが、マウント部と中間部との段差部において、平面視した際に前記中心軸に対して傾斜する傾斜面を介して連設されていることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る圧電振動片の製造方法は、上記本発明の圧電振動片を、圧電材料からなるウエハを利用して一度に複数製造する方法であって、前記ウエハを保護マスクでマスクした後、マスクされていない部分をエッチングし、前記振動部と前記基部とを有する圧電板の外形形状を複数形成する外形形成工程と、複数の前記圧電板の外表面上に電極膜をパターニングして、前記励振電極、前記マウント電極及び前記引き出し電極を形成する電極形成工程と、複数の前記圧電板を前記ウエハから切り離して小片化する切断工程と、を備え、前記外形形成工程の際、前記保護マスクとして、前記傾斜面を介して前記マウント部と前記中間部とが連設された前記基部の外形形状に倣って予め外形が形成されたものを用いることを特徴とする。
【0016】
この発明に係る圧電振動片及び圧電振動片の製造方法においては、まず、水晶等の圧電材料からなるウエハを保護マスクでマスクした後、マスクされていない部分をエッチングし、ウエハに複数の圧電板の外形形状を形成する外形形成工程を行う。この際、基部と振動部とで圧電板が構成されるように外形形状を形成する。
次いで、複数の圧電板の外表面上に電極膜をパターニングして、励振電極、マウント電極及び引き出し電極をそれぞれ形成する電極形成工程を行う。その後、複数の圧電板をウエハから切り離して小片化する切断工程を行う。これにより、1枚のウエハから、圧電振動片を一度に複数製造することができる。
【0017】
ところで、外形形成工程の際、マウント部と中間部との段差部に傾斜面が形成され、この傾斜面によってマウント部の側面と中間部の側面とが連設された基部の外形形状に倣って予め外形が形成された保護マスクを利用するので、エッチングをすることで、傾斜面を介してマウント部の側面と中間部の側面とが連設され、マウント部の横幅が中間部の横幅よりも幅広とされた基部を得ることができる。
特に、ウエハの結晶方向に逆らって切欠部が形成されていた従来のものとは異なり、マウント部の側面と中間部の側面とが、両者の段差部においてウエハの結晶方向に沿い易い傾斜面で連設されているので、エッチング時間の変化に伴って傾斜面の形成具合が左右され難い。つまり、エッチング時間を長く或いは短くしても、傾斜面の傾斜角度が変化し難い。よって、エッチング残り量のばらつきを極力小さくでき、中間部の長さを毎回均一な長さにでき、振動漏れ対策に理想的な長さに調整し易い。従って、振動漏れによる特性の影響を非常に小さくすることができ、高品質な圧電振動片とすることができる。
【0018】
本発明に係る圧電振動片は、上記本発明の圧電振動片において、前記マウント部の側面と前記傾斜面とのなす角度が、30度から60度の範囲内であることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る圧電振動片の製造方法は、上記本発明の圧電振動片の製造方法において、前記保護マスクが、前記マウント部の側面と前記傾斜面とのなす角度が30度から60度の範囲内となるように外形形成されていることを特徴とする。
【0020】
この発明に係る圧電振動片及び圧電振動片の製造方法においては、マウント部の側面と傾斜面とのなす角度が30度から60度の範囲内であるので、エッチング時間が変化したとしても、エッチング残り量のばらつきをより小さくすることができる。従って、中間部の長さをさらに均一な長さに調整することができ、振動漏れによる特性への影響をより安定させることができる。
【0021】
本発明に係る圧電振動片は、上記本発明の圧電振動片において、前記マウント部の側面と前記傾斜面とのなす角度が、45度であることを特徴とする。
【0022】
本発明に係る圧電振動片の製造方法は、上記本発明の圧電振動片の製造方法において、前記保護マスクが、前記マウント部の側面と前記傾斜面とのなす角度が45度となるように外形形成されていることを特徴とする。
【0023】
この発明に係る圧電振動片及び圧電振動片の製造方法においては、マウント部の側面と傾斜面とのなす角度が45度であるので、ウエハの結晶方向に対してより一致させることができる。よって、エッチング時間が変化したとしても、エッチング残り量のばらつきをさらに小さくすることができる。従って、振動漏れによる特性への影響をさらに安定させることができる。特に、音叉型に適した圧電振動片とすることができる。
【0024】
本発明に係る圧電振動片は、上記本発明の圧電振動片において、前記振動部が、前記中心軸を中心として左右に平行配置された一対の振動腕部を備えていることを特徴とする。
【0025】
本発明に係る圧電振動片の製造方法は、上記本発明の圧電振動片の製造方法において、前記外形形成工程の際、前記中心軸を中心として左右に平行配置された一対の振動腕部を有するように、前記振動部を形成することを特徴とする。
【0026】
この発明に係る圧電振動片及び圧電振動片の製造方法においては、励振電極に電圧を印加した際に、一対の振動腕部が互いに接近・離間する方向に振動する音叉型の圧電振動片とすることができる。特に、振動漏れによる特性の影響が非常に小さいので、高品質な音叉型の圧電振動片を得ることができる。
【0027】
本発明に係る圧電振動子は、上記本発明の圧電振動片を有することを特徴とする。
【0028】
この発明に係る圧電振動子においては、振動漏れによる特性の影響が非常に小さく、高品質化された圧電振動片を備えているので、信頼性の向上した高品質な圧電振動子とすることができる。
【0029】
本発明に係る圧電振動子は、上記本発明の圧電振動子において、前記圧電振動片を上面にマウントするベース基板と、マウントされた前記圧電振動片をキャビティ内に収容した状態で前記ベース基板に接合されたリッド基板と、前記ベース基板の下面に形成され、マウントされた前記圧電振動片の前記励振電極に対してそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極と、を備えていることを特徴とする。
【0030】
この発明に係る圧電振動子においては、互いに接合されたベース基板とリッド基板との間に形成されたキャビティ内に圧電振動片が収容されている。この際、圧電振動片は、一対の外部電極に電気的に接続された状態で、ベース基板の上面にマウントされている。これにより、一対の外部電極に電圧を印加することで、励振電極に電圧を印加できるので、振動部を振動させることができる。
特に、圧電振動片をキャビティ内に密閉した表面実装型のパッケージタイプの圧電振動子とすることができるので、塵埃等の影響を受けることなく圧電振動片を振動させることができ、圧電振動片をさらに高精度に振動させることができる。加えて、表面実装型であるので、実装を容易に行うことができると共に、実装後の安定性に優れている。
【0031】
本発明に係る圧電振動子は、上記本発明の圧電振動子において、前記圧電振動片を内部に収納するケースと、環状に形成されて前記ケース内に圧入固定されるステムと、該ステムを貫通した状態で配置され、ステムを間に挟んで一端側が前記励振電極にそれぞれ電気的に接続されるインナーリードとされ、他端側が外部にそれぞれ電気的に接続されるアウターリードとされた2本のリード端子と、該リード端子と前記ステムとを固定させる充填材とを有し、前記ケース内を密閉させる気密端子と、を備えていることを特徴とする。
【0032】
この発明に係る圧電振動子においては、気密端子によって密閉されたケース内に圧電振動片が収納されている。この際、圧電振動片は、励振電極が2本のリード端子のインナーリードにそれぞれ電気的に接続された状態で、該リード端子によってマウントされている。これにより、2本のリード端子のアウターリードに電圧を印加することで、励振電極に電圧を印加できるので、振動部を振動させることができる。
特に、圧電振動片をケース内に密閉したシリンダーパッケージタイプの圧電振動子とすることができるので、塵埃等の影響を受けることなく圧電振動片を振動させることができ、圧電振動片をさらに高精度に振動させることができる。
【0033】
本発明に係る発振器は、上記本発明の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする。
本発明に係る電子機器は、上記本発明の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする。
本発明に係る電波時計は、上記本発明の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする。
【0034】
この発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上述した圧電振動子を備えているので、同様に信頼性の向上化及び高品質化を図ることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る圧電振動片及び圧電振動片の製造方法によれば、エッチング残り量のばらつきを極力小さくでき、振動漏れによる特性への影響が非常に小さい高品質な圧電振動片を提供することができる。
また、本発明に係る圧電振動子、発振器、電子機器および電波時計によれば、上述した圧電振動片を備えているので、同様に信頼性の向上化及び高品質化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(圧電振動片)
以下、本発明に係る圧電振動片の一実施形態を、
図1から
図10を参照して説明する。なお、本実施形態では、圧電振動片の一例として、溝部付きタイプの音叉型の圧電振動片を例に挙げて説明する。
本実施形態の圧電振動片1は、例えば、表面実装型のガラスパッケージタイプの圧電振動子や、シリンダーパッケージタイプの圧電振動子等に組み込まれるものであって、
図1及び
図2に示すように、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の圧電板2を備えている。
なお、
図1は、圧電振動片1の表面側の平面図である。
図2は、
図1に示す振動腕部3a、3bの基端部を中心に拡大した図である。なお、
図2では、各電極の図示を省略している。
【0038】
圧電板2は、中心軸Oに沿って延在するように形成された振動部3と、該振動部3の基端部を支持する基部4と、を備えている。振動部3は、中心軸Oを中心として左右に平行配置された一対の振動腕部3a、3bを有している。
また、これら一対の振動腕部3a、3bの主面(表裏面)上には、振動腕部3a、3bの基端部から先端部に向かって、一定幅で縦長の溝部5が形成されている。この溝部5は、振動腕部3a、3bの基端部側から中間部を越える範囲に亘って形成されている。これにより、一対の振動腕部3a、3bは、それぞれ
図3に示すように断面H型となっている。 なお、
図3は、
図1に示すA−A線に沿った断面図である。
【0039】
このように形成された圧電板2の外表面上には、
図1及び
図3に示すように、一対の励振電極10、11及び一対のマウント電極12、13が形成されている。このうち、一対の励振電極10、11は、電圧が印加されときに一対の振動腕部3a、3bを互いに接近又は離間する方向に所定の共振周波数で振動させる電極であり、一対の振動腕部3a、3bの外表面にそれぞれ電気的に切り離された状態でパターニングされて形成されている。
具体的には、
図3に示すように、一方の励振電極10が、主に一方の振動腕部3aの溝部5内と他方の振動腕部3bの側面上とに形成され、他方の励振電極11が、主に一方の振動腕部3aの側面上と他方の振動腕部3bの溝部5内とに形成されている。
【0040】
また、一対のマウント電極12、13は、基部4の主面及び側面を含む外表面上に形成されており、引き出し電極14を介して一対の励振電極10、11にそれぞれ電気的に接続されている。よって、一対の励振電極10、11は、このマウント電極12、13を介して電圧が印加されるようになっている。
【0041】
なお、上述した励振電極10、11、マウント電極12、13及び引き出し電極14は、例えば、クロム(Cr)と金(Au)との積層膜であり、水晶と密着性の良いクロム膜を下地として成膜した後に、表面に金の薄膜を施したものである。但し、この場合に限られず、例えば、クロムとニクロム(NiCr)の積層膜の表面にさらに金の薄膜を積層しても構わないし、クロム、ニッケル、アルミニウム(Al)やチタン(Ti)等の単層膜でも構わない。
【0042】
また、一対の振動腕部3a、3bの先端部には、
図1に示すように、自身の振動状態を所定の周波数の範囲内で振動するように調整(周波数調整)を行うための重り金属膜15(粗調膜15a及び微調膜15bからなる)が形成されている。この重り金属膜15を利用して周波数調整を行うことで、一対の振動腕部3a、3bの周波数をデバイスの公称周波数の範囲内に収めることができるようになっている。
【0043】
ところで、本実施形態の圧電振動片1の基部4は、
図1及び
図2に示すように、マウント電極12、13が外表面に形成されたマウント部4aと、マウント部4aと一対の振動腕部3a、3bからなる振動部3との間に位置するように両者に連設され、引き出し電極14が外表面に形成された中間部4bと、で構成されている。
この際、
図2に示すように、マウント部4aの横幅W1は、中間部4bの横幅W2よりも幅広に形成されている。また、マウント部4aの側面と中間部4bの側面とは、マウント部4aと中間部4bとの段差部において、平面視した際に中心軸Oに対して傾斜する傾斜面4cを介して連設されている。
本実施形態では、マウント部4aの側面と傾斜面4cとのなす角度θが、30度から60度の範囲内である45度となっている。
【0044】
このように構成された圧電振動片1を作動させる場合には、一対の励振電極10、11間に所定の駆動電圧を印加して電流を流すことで、一対の振動腕部3a、3bを互いに接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この振動を、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0045】
次に、上述した圧電振動片1を、圧電材料からなるウエハSを利用して一度に複数製造する方法について、
図4に示すフローチャートを参照しながら以下に説明する。
まずポリッシングが終了し、所定の厚みに高精度に仕上げられたウエハSを準備する(S1)。次いで、このウエハSをフォトリソ技術によってエッチングして、該ウエハSに複数の圧電板2の外形形状を形成する外形形成工程を行う(S2)。この工程について、具体的に説明する。
【0046】
まず、
図5に示すように、ウエハSの両面にエッチング保護膜(保護マスク)20をそれぞれ成膜する(S2a)。このエッチング保護膜20としては、例えば、クロム(Cr)を数μm成膜する。次いで、エッチング保護膜20上に図示しないフォトレジスト膜を、フォトリソグラフィ技術によってパターニングする。この際、一対の振動腕部3a、3bからなる振動部3と、傾斜面4cを介してマウント部4aの側面と中間部4bの側面とが両者の段差部で連設された基部4と、で構成される圧電板2の周囲を囲むようにパターニングする。そして、このフォトレジスト膜をマスクとしてエッチング加工を行い、マスクされていないエッチング保護膜20を選択的に除去する。そして、エッチング加工後にフォトレジスト膜を除去する。
【0047】
これにより、
図6及び
図7に示すように、エッチング保護膜20を圧電板2の外形形状、即ち、一対の振動腕部3a、3b及び基部4の外形形状に沿ってパターニングすることができる(S2b)。この際、複数の圧電板2の数だけパターニングを行う。なお、
図7から
図10は、
図6に示すB−B線に沿った断面を示す図である。
【0048】
次いで、上述したように予めパターニングされたエッチング保護膜20をマスクとして、ウエハSの両面をそれぞれエッチング加工する(S2c)。これにより、
図8に示すように、エッチング保護膜20でマスクされていない領域を選択的に除去して、圧電板2の外形形状を形作ることができる。この時点で、外形形成工程が終了する。
【0049】
続いて、一対の振動腕部3a、3bの主面上に溝部5を形成する溝部形成工程を行う(S3)。具体的には、上述した外形形成時と同様に、エッチング保護膜20上にフォトレジスト膜を成膜する。そして、フォトリソグラフィ技術によって、溝部5の領域を空けるようにフォトレジスト膜をパターニングする。そして、パターニングされたフォトレジスト膜をマスクとしてエッチング加工を行い、エッチング保護膜20を選択的に除去する。その後、フォトレジスト膜を除去することで、
図9に示すように、既にパターニングされたエッチング保護膜20を、溝部5の領域を空けた状態でさらにパターニングすることができる。
【0050】
次いで、この再度パターニングされたエッチング保護膜20をマスクとして、ウエハSをエッチング加工した後、マスクとしていたエッチング保護膜20を除去する。これにより、
図10に示すように、一対の振動腕部3a、3bの両主面上に溝部5をそれぞれ形成することができる。
なお、複数の圧電板2は、後に行う切断工程を行うまで、図示しない連結部を介してウエハSに連結された状態となっている。
【0051】
次いで、図示しないマスクを通した露光を行うことで、複数の圧電板2の外表面上に電極膜をパターニングして、励振電極10、11、引き出し電極14、マウント電極12、13をそれぞれ形成する電極形成工程を行う(S4)。
そして、この工程が終了した後、一対の振動腕部3a、3bの先端に周波数調整用の粗調膜15a及び微調膜15bからなる重り金属膜15(例えば、銀や金等)を形成する(S5)。そして、ウエハに形成された全ての振動腕部3a、3bに対して、共振周波数を粗く調整する粗調工程を行う(S6)。これは、重り金属膜15の粗調膜15aにレーザ光を照射して一部を蒸発させ、重量を変化させることで行う。なお、共振周波数をより高精度に調整する微調に関しては、圧電振動子の製造時に行う。
【0052】
そして、最後にウエハSと圧電板2とを連結していた連結部を切断して、複数の圧電板2をウエハSから切り離して小片化する切断工程を行う(S7)。これにより、1枚のウエハSから、音叉型の圧電振動片1を一度に複数製造することができる。この時点で、圧電振動片1の製造工程が終了し、
図1に示す圧電振動片1を得ることができる。
【0053】
ところで、上述した外形形成工程の際、マウント部4aと中間部4bとの段差部に傾斜面4cが形成され、この傾斜面4cによって介してマウント部4aの側面と中間部4bの側面とが連設された基部4の外形形状に倣って予め外形が形成されたエッチング保護膜20を利用するので、エッチングすることで、傾斜面4cを介してマウント部4aの側面と中間部4bの側面とが連設され、マウント部4aの横幅W1が中間部4bの横幅W2よりも幅広とされた基部4を得ることができる。
特に、ウエハの結晶方向に逆らって切欠部が形成されていた従来のものとは異なり、マウント部4aの側面と中間部4bの側面とが、両者の段差部によってウエハSの結晶方向に沿い易い傾斜面4cで連設されているので、エッチング時間の変化に伴って傾斜面4cの形成具合が左右され難い。つまり、エッチング時間を長く或いは短くしても、傾斜面4cの傾斜角度θは変化し難い。よって、エッチング残り量のばらつきを極力小さくでき、
図2に示す中間部4bの長さLを毎回均一な長さにして、振動漏れ対策に理想的な長さに調整し易い。即ち、エッチング時間の変化に左右されることなく中間部4bの外形を形成でき、中間部4bの長さ(実効値)Lを設計値に極力近づけることができる。よって、効果的な振動漏れ対策を行うことができる。
その結果、振動漏れによる特性の影響を非常に小さくすることができ、高品質な圧電振動片1とすることができる。
【0054】
しかも、本実施形態では、マウント部4aの側面と傾斜面4cとのなす角度θが、30度から60度の範囲内である45度であるので、ウエハSの結晶方向に傾斜面4cをより一致させることができる。よって、エッチング時間が変化したとしても、エッチング残り量のばらつきを最少限に抑えることができ、振動漏れによる特性への影響を非常に安定させることができる。
【0055】
(ガラスパッケージタイプの圧電振動子)
次に、本発明に係る圧電振動子の一実施形態を、
図11から
図14を参照して説明する。なお、本実施形態では、圧電振動子の一例として、表面実装型のガラスパッケージタイプの圧電振動子を例に挙げて説明する。
本実施形態の圧電振動子30は、
図11から
図14に示すように、ベース基板31とリード基板32とで2層に積層された箱状に形成されており、内部のキャビティC内に上述した音叉型の圧電振動片1が収納された圧電振動子である。
【0056】
なお、
図11は、圧電振動子30の外観斜視図である。
図12は、
図11に示す圧電振動子30の内部構造図であって、リード基板32を取り外した状態の上面図である。
図13は、
図12に示すC−C線に沿った圧電振動子30の断面図である。
図14は、圧電振動子30の分解斜視図である。なお、
図14では、圧電振動片1から各電極の図示を省略している。
【0057】
圧電振動片1は、金等のバンプBを利用して、ベース基板31の上面にバンプ接合によってマウントされている。より具体的には、ベース基板31の上面にパターニングされた後述する引き回し電極38、39上に形成された2つのバンプB上に、一対のマウント電極12、13がそれぞれ接触した状態でバンプ接合されている。これにより、圧電振動片1は、ベース基板31の上面から浮いた状態で支持されると共に、マウント電極12、13と引き回し電極38、39とがそれぞれ電気的に接続された状態となっている。
【0058】
リード基板32は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明の絶縁基板であり、
図11、
図13及び
図14に示すように、板状に形成されている。そして、ベース基板31が接合される接合面側には、圧電振動片1が収まる矩形状の凹部32aが形成されている。この凹部32aは、両基板31、32が重ね合わされたときに、圧電振動片1を収容するキャビティCとなるキャビティ用の凹部である。そして、リード基板32は、この凹部32aをベース基板31側に対向させた状態で該ベース基板31に対して陽極接合されている。
【0059】
ベース基板31は、リード基板32と同様にガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明な絶縁基板であり、
図11から
図14に示すように、リード基板32に対して重ね合わせ可能な大きさで板状に形成されている。
このベース基板31には、該ベース基板31を貫通する一対のスルーホール33、34が形成されている。この際、一対のスルーホール33、34は、キャビティC内に収まるように形成されている。より詳しく説明すると、マウントされた圧電振動片1の基部4側に一方のスルーホール33が位置し、振動腕部3bの先端部側に他方のスルーホール34が位置するように形成されている。
また、本実施形態では、ベース基板31を真っ直ぐに貫通したスルーホール33、34を例に挙げて説明するが、この場合に限られず、例えばベース基板31の下面に向かって漸次径が縮径するテーパー状に形成しても構わない。いずれにしても、ベース基板31を貫通していれば良い。
【0060】
そして、これら一対のスルーホール33、34には、該スルーホール33、34を埋めるように形成された一対の貫通電極35、36が形成されている。この貫通電極35、36は、スルーホール33、34を完全に塞いでキャビティC内の気密を維持していると共に、後述する外部電極40、41と引き回し電極38、39とを導通させる役割を担っている。
ベース基板31の上面側(リード基板32が接合される接合面側)には、導電性材料(例えば、アルミニウム)により、陽極接合用の接合膜37と、一対の引き回し電極38、39とがパターニングされている。このうち接合膜37は、リード基板32に形成された凹部32aの周囲を囲むようにベース基板31の周縁に沿って形成されている。
【0061】
また、一対の引き回し電極38、39は、一対の貫通電極35、36のうち、一方の貫通電極35と圧電振動片1の一方のマウント電極12とを電気的に接続すると共に、他方の貫通電極36と圧電振動片1の他方のマウント電極13とを電気的に接続するようにパターニングされている。
より詳しく説明すると、
図12から
図14に示すように、一方の引き回し電極38は、圧電振動片1の基部4の真下に位置するように一方の貫通電極35の真上に形成されている。また、他方の引き回し電極39は、一方の引き回し電極38に隣接した位置から、振動腕部3bに沿って該振動腕部3bの先端部側に引き回しされた後、他方の貫通電極36の真上に位置するように形成されている。
【0062】
そして、これら一対の引き回し電極38、39上にバンプBが形成されており、該バンプBを利用して圧電振動片1がマウントされている。これにより、圧電振動片1の一方のマウント電極12が、一方の引き回し電極38を介して一方の貫通電極35に導通し、他方のマウント電極13が、他方の引き回し電極39を介して他方の貫通電極36に導通するようになっている。
【0063】
また、ベース基板31の下面には、
図11、
図13及び
図14に示すように、一対の貫通電極35、36に対してそれぞれ電気的に接続される外部電極40、41が形成されている。つまり、一対の外部電極40、41は、一対の貫通電極35、36及び一対の引き回し電極38、39を介して圧電振動片1の一対の励振電極10、11に電気的に接続されている。
【0064】
このように構成された圧電振動子30を作動させる場合には、一対の外部電極40、41間に、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片1の励振電極10、11に電流を流すことができ、一対の振動腕部3a、3bを互いに接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0065】
本実施形態の圧電振動子30によれば、振動漏れによる特性の影響が非常に小さく、高品質化された圧電振動片1を備えているので、信頼性が向上した高品質な圧電振動子30とすることができる。
また、この圧電振動子30は、圧電振動片1をキャビティC内に密閉した表面実装型のガラスパッケージタイプであるので、塵埃等の影響を受けることなく圧電振動片1を振動させることができ、高品質化を図ることができる。加えて、表面実装型であるので、実装を容易に行うことができると共に、実装後の安定性に優れている。
【0066】
(シリンダーパッケージタイプの圧電振動子)
次に、本発明に係る圧電振動子の実施形態を、
図15を参照して説明する。なお、本実施形態では、圧電振動子の一例として、シリンダーパッケージタイプの圧電振動子を例に挙げて説明する。
本実施形態の圧電振動子50は、圧電振動片1と、該圧電振動片1を内部に収納するケース51と、圧電振動片1をケース51内に密閉させる気密端子52と、を備えている。なお、
図15は、圧電振動子50の上面図である。
【0067】
圧電振動片1は、ケース51内に収納された状態で気密端子52を構成するリード端子53のインナーリード53aにマウントされている。
ケース51は、有底円筒状に形成されており、気密端子52の後述するステム54の外周に対して圧入されて、嵌合固定されている。なお、このケース51の圧入は、真空中で行われており、ケース51内の圧電振動片1を囲む空間が真空に保たれた状態となっている。
【0068】
気密端子52は、ケース51内を密閉するものであって、ケース51内に圧入固定されるステム54と、該ステム54を貫通した状態で配置され、ステム54を間に挟んで一端側が圧電振動片1の一対のマウント電極12、13に電気的に接続されるインナーリード53aとされ、他端側が外部に電気的に接続されるアウターリード53bとされた2本のリード端子53と、該リード端子53とステム54とを固定させる充填材テム55とを有している。
【0069】
ステム54は、金属材料(例えば、低炭素鋼(Fe)、鉄ニッケル合金(Fe−Ni)、鉄ニッケルコバルト合金(Fe−Ni−Co))等によって環状に形成されたものである。また、充填材テム55の材料としては、例えば、ホウ珪酸ガラスである。なお、このステム54の外周には、リード端子53と同じ材料のメッキ(金属膜)が被膜されている。
【0070】
リード端子53は、例えば、ステム54と同じ材料である導電性材料から形成されたものであって、ケース51内に突出している部分がインナーリード53aとなり、ケース51外に突出している部分がアウターリード53bとなっている。そして、圧電振動片1は、インナーリード53aの先端に載置された状態で、金等の導電性のバンプBによって機械的にマウントされている。即ち、バンプBを介してインナーリード53aとマウント電極12、13と、が機械的に接合されていると同時に、電気的に接続されている。その結果、圧電振動片1は、2本のリード端子53にマウントされた状態となっている。
【0071】
なお、ステム54及びリード端子53のメッキの材質としては、耐熱ハンダメッキや、錫銅合金や金錫合金等が用いられる。また、ステム54の外周のメッキを介在させて、ケース51を真空中で冷間圧接させることにより、ケース51の内部を真空状態で気密封止できるようになっている。
【0072】
このように構成された圧電振動子50であっても、振動漏れによる特性の影響が非常に小さく、高品質化された圧電振動片1を備えているので、同様に信頼性が向上した高品質な圧電振動子とすることができる。
また、この圧電振動子50は、圧電振動片1をケース51内に密閉したシリンダーパッケージタイプであるので、塵埃等の影響を受けることなく圧電振動片1を振動させることができ、高品質化を図ることができる。
【0073】
(発振器)
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、
図16を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、
図16に示すように、上述した圧電振動子30を、集積回路101に電気的に接続された発振子として構成したものである。なお、圧電振動子50を内蔵しても構わない。
この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の上記集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子30の圧電振動片1が実装されている。
これら電子部品102、集積回路101及び圧電振動子30は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0074】
このように構成された発振器100において、圧電振動子30に電圧を印加すると、該圧電振動子30内の圧電振動片1が振動する。この振動は、圧電振動片1が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子30が発振子として機能する。
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0075】
本実施形態の発振器100によれば、上述した圧電振動子30を備えているので、発振器100自体の信頼性の向上化及び高品質化を図ることができる。また、これに加え、長期にわたって安定した高精度な周波数信号を得ることができる。
【0076】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、
図17を参照して説明する。なお電子機器として、上述した圧電振動子30を有する携帯情報機器110を例にして説明する。なお、圧電振動子60を内蔵しても構わない。
始めに本実施形態の携帯情報機器110は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0077】
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。
この携帯情報機器110は、
図17に示すように、圧電振動子30と、電力を供給するための電源部111とを備えている。電源部111は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0078】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示等、システム54全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、該ROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、該CPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0079】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子30とを備えている。圧電振動子30に電圧を印加すると圧電振動片1が振動し、該振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0080】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123及び呼制御メモリ部124を備えている。
無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0081】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部122は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0082】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119及び着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。更に、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0083】
即ち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0084】
本実施形態の携帯情報機器110によれば、上述した圧電振動子30を備えているので、携帯情報機器自体の信頼性の向上化及び高品質化を図ることができる。また、これに加え、長期にわたって安定した高精度な時計情報を表示することができる。
【0085】
(電波時計)
次に、本発明に係る電波時計130の一実施形態について、
図18を参照して説明する。本実施形態の電波時計130は、
図18に示すように、フィルタ部131に電気的に接続された圧電振動子30を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。なお、圧電振動子60を内蔵しても構わない。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0086】
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子30を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。
本実施形態における圧電振動子30は、上記搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部138、139をそれぞれ備えている。
【0087】
更に、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138、139は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0088】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子30を必要とする。
【0089】
本実施形態の電波時計130によれば、上述した圧電振動子30を備えているので、電波時計自体の信頼性の向上化及び高品質化を図ることができる。また、これに加え、長期にわたって安定して高精度に時刻をカウントすることができる。
【0090】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0091】
例えば、上記実施形態では、圧電振動片1の一例として、溝部5付きの音叉型の圧電振動片を例に挙げて説明したが、溝部5は無くても構わない。また、音叉型に限定されるものではなく、厚み滑り振動片でも構わない。この場合であっても、厚み滑り振動する振動部の振動漏れを非常に小さくすることができ、振動漏れによる特性への影響が非常に小さい高品質な厚み滑り振動片とすることができる。
また、上記実施形態では、マウント部4aの側面と傾斜面4cとのなす角度θが45度となるように傾斜面4cを形成したが、この角度θに限定されるものではなく、自由に設計して構わない。但し、30度から60度の範囲内にあることが好ましい。