(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ロボット(10)と、前記ロボット(10)に掛かる荷重を検出する荷重検出装置(12)と、前記ロボット(10)を制御するロボット制御装置(20)と、を備えたロボットシステムであって、
前記荷重検出装置(12)は温度を検出する複数の温度検出素子を内蔵しており、
前記ロボット制御装置(20)は、前記複数の温度検出素子のうちの少なくとも二つの温度検出素子から出力される検出温度の差が第3の閾値を超えるか否かを監視し、前記検出温度の差が前記第3の閾値を超えた場合に、前記ロボット(10)の動作を停止させるようにした、ロボットシステム。
前記ロボット制御装置(20)は、前記複数の前記温度検出素子のうちの少なくとも一つの温度検出素子から出力される検出温度について、所定の時間あたりの温度上昇量が第2の閾値を超える量である場合に、前記ロボット(10)の動作を停止させるようにした、請求項1または2に記載のロボットシステム。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットおいては、人間の安全を確保するため、ロボットの可動領域の周囲に安全柵を設置して、人間がロボットの可動領域に立入ることを制限している。しかし近年、安全柵に代って人間の安全を十分に確保できる何らかの処置が行われた産業用ロボットに対しては、人間と作業空間を共有して作業を実施できることとなった。このため、そのようなロボット、いわゆる人間協調ロボットの要望が高まってきている。
【0003】
人間協調ロボットシステムを使用することにより、人間とロボットとが同じ空間内で別々の作業を実施したり、あるいは、ロボットにより把持されたワークに対して人間が作業を実施したりすることが可能となる。但し、人間協調ロボットを使用する場合、人間とロボットとが作業空間を共有しているため、人間がロボットと接触して負傷してしまうことを防止する必要がある。そこで、ロボットアームに力センサを取付けて人間とロボットとの接触力を監視する方法が採用されている。より具体的には、力センサにより所定の閾値を超える接触力が検出されたとき、ロボットの動作を停止させる、あるいは接触力を軽減する方向にロボットを動作させることが行われている。
【0004】
なお、人間の安全を確保するために、特許文献1および特許文献2は、ロボット周囲の温度に応じてロボットの動作を制御する技術を開示している。
特許文献1(特許第4650062号公報)には、ロボットを駆動する複数のモータのエンコーダにそれぞれ温度センサを設け、各温度センサの温度データを用いてロボットの位置決め精度を補正するロボット制御装置が開示されている。
また、特許文献2(特許3067363号公報)には、各種の異常状態を感知する複数のセンサを備えた移動可能なロボットであって、センサの一つとして温度センサを備え、温度センサの測定値が所定の値を超えた場合に異常を報知するロボットが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来技術において、接触力を検出するための力センサは、力センサボディと、力センサボディに貼付けられた電気抵抗式歪ゲージとを備えている。そして、力センサボディをロボットアームに設置し、力センサボディの歪量を歪ゲージにより検出することにより、その検出値に基づき、ロボットアームに作用した力の方向および大きさを認識している。このため、歪ゲージが貼付けられる力センサボディの材料には、衝撃力に対して比較的強い材料が選択されており、一般的には金属が使用されている。
【0007】
したがって、金属製の力センサボディの体積は、ロボット周囲の温度変化に起因して変化する場合がある。その場合、温度変化に起因する力センサボディの体積変化量が、ロボットアームに作用した力に起因する力センサボディの歪量に追加されてしまう。
言い換えると、ロボット周囲の温度が第1の値から第2の値に変化した場合、それぞれの値の温度においてロボットアームに対して同じ力が作用していたとしても、力センサの検出値は第1の値と第2の値との間で大きく相違してしまうことがある。
【0008】
特に、人間協調ロボットシステムにおいては、力センサにより検出された接触力が所定の閾値を超えたとき、ロボットの動作を停止するか、あるいは接触力を軽減するようにロボットを動作させている。このため、ロボットと人間との接触時に身体に対する危害が軽減されるように、上記の閾値を可能な限り小さい値に設定することが理想となる。
しかし、前述したように、同一の力に対する力センサの検出値は温度に応じて変化するので、温度に起因する検出値の変化を考慮に入れて上記の閾値を設定する必要がある。これにより、力センサがこれまで検出できていた力よりも大きい力がロボットに加わらなければ、力センサは人間とロボットとが接触したことを検出できなくなるおそれがある。その結果、ロボットが人間に危害を与えるリスクが高まってしまう問題が発生する。
【0009】
なお、特許文献1および特許文献2は、ロボット周囲の温度に応じてロボットの動作を制御する方法を開示しているが、ロボットと人間との接触力の検出精度に係る問題を全く認識していないものである。
【0010】
そこで本発明は、上述したような問題点に鑑み、ロボットと人間とが協調して作業を行う際に、ロボットが人間に危害を与えるリスクを最小限に抑えることができるロボットシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第一の態様によれば、ロボットと、ロボットに掛かる荷重を検出する荷重検出装置と、ロボットを制御するロボット制御装置と、を備えたロボットシステムが提供される。さらに、第一の態様のロボットシステムにおいて、荷重検出装置は温度を検出する少なくとも一つの温度検出素子を内蔵しており、ロボット制御装置は、温度検出素子から出力される検出温度に基づいて
、温度検出素子が故障しているか否かを判断、または周囲温度の上昇により荷重検出装置の検出精度を確保できない状態にあるか否かを判断し、温度検出素子が故障している、または周囲温度の上昇により荷重検出装置の検出精度を確保できない状態にあると判断した場合にはロボットの動作を停止
させるようにした、ロボットシステムが提供される。この第一の態様により上述の課題が解決される。しかし、本発明は、第一の態様に限られず、以下の第二ないし第七の態様のいずれかのロボットシステムを提供することもできる。
【0012】
本発明の第二の態様によれば、第一の態様のロボットシステムであって、ロボット制御装置は、検出温度が第1の閾値を超えた場合に、ロボットの動作を停止させるようにした、ロボットシステムが提供される。
【0013】
本発明の第三の態様によれば、第一または第二の態様のロボットシステムであって、ロボット制御装置は、検出温度について所定の時間あたりの温度上昇量が第2の閾値を超える量である場合に、ロボットの動作を停止させるようにした、ロボットシステムが提供される。
【0014】
本発明の第四の態様によれば、
ロボットと、ロボットに掛かる荷重を検出する荷重検出装置と、ロボットを制御するロボット制御装置と、を備えたロボットシステムであって、荷重検出装置は温度を検出する複数の温度検出素子を内蔵しており、ロボット制御装置は、複数の温度検出素子のうちの少なくとも二つの温度検出素子から出力される検出温度の差が第3の閾値を超えるか否かを監視し、その検出温度の差が第3の閾値を超えた場合に、ロボットの動作を停止させるようにした、ロボットシステムが提供される。
【0015】
本発明の第五の態様によれば、第四の態様のロボットシステムであって、ロボット制御装置は、複数の温度検出素子のうちの少なくとも一つの温度検出素子から出力される検出温度が第1の閾値を超えた場合に、ロボットの動作を停止させるようにした、ロボットシステムが提供される。
【0016】
本発明の第六の態様によれば、第四または第五の態様のロボットシステムであって、ロボット制御装置は、複数の温度検出素子のうちの少なくとも一つの温度検出素子から出力される検出温度について、所定の時間あたりの温度上昇量が第2の閾値を超える量である場合に、ロボットの動作を停止させるようにした、ロボットシステムが提供される。
【0017】
本発明の第七の態様によれば、第四または第五の態様のロボットシステムであって、複数の温度検出素子は、種類が異なる少なくとも2つの温度検出素子を含む、ロボットシステムが提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の第一の態様によれば、ロボットに掛かる荷重を検出する荷重検出装置には温度検出素子が内蔵されている。そして、ロボット制御装置は、温度検出素子から出力される検出温度に基づき、ロボットの動作を停止させるか否かを判定するようになっている。このため、荷重検出装置の検出値が周囲温度の変化に起因して変動する可能性が有る場合、ロボットが人間に危害を与えるリスクを考慮して、ロボットを停止させることが可能となる。それにより、人間協調ロボットシステムにおいて最も重要な機能である安全性を高めることができる。
【0019】
本発明の第二の態様によれば、ロボット制御装置は、温度検出素子から出力される検出温度が第1の閾値を超える場合に、ロボットの動作を停止させるようにしている。そのため、その第1の閾値を、ロボットが人間に危害を与えるリスクが高まる温度値に設定すれば、そのようなリスクを最小限にすることが可能となる。
【0020】
本発明の第三の態様によれば、ロボット制御装置は、温度検出素子の検出温度について、所定の時間あたりの温度上昇量が第2の閾値を超える量である場合に、ロボットの動作を停止させるようにしている。つまり、ロボット周囲の急激な温度上昇によって荷重検出装置の検出値が不正確になる場合には、ロボットが人間に危害を与えるリスクが高まる。そのような場合、即座にロボットの動作を停止できるため、人間に危害を与えるリスクを最小限にすることが可能となる。
【0021】
本発明の第四の態様によれば、荷重検出装置には複数の温度検出素子が内蔵され、それらの温度検出素子のうちの少なくとも二つの温度検出素子から出力される検出温度の差が第3の閾値を超えた場合に、ロボットの動作を停止させるよう判断される。それにより、何れかの温度検出素子に異常がある場合にロボットの動作を停止できるので、更に人間に対する安全性を高めることが可能となる。
【0022】
本発明の第五の態様によれば、第四の態様において、荷重検出装置に内蔵された複数の温度検出素子のうちの少なくとも一つの温度検出素子から出力される検出温度が第1の閾値を超える場合にも、ロボットの動作が停止されるようになっている。このため、第4の態様に対して更に人間に対する安全性を高めることが可能となる。
【0023】
本発明の第六の態様によれば、第四または第五の態様において、ロボット周囲の急激な温度上昇によって荷重検出装置の検出値が不正確になる場合に、即座にロボットの動作を停止できるため、更に人間に対する安全性を高めることが可能となる。
【0024】
本発明の第七の態様によれば、荷重検出装置に内蔵される複数の温度検出素子には、種類が異なる少なくとも2つの温度検出素子が含まれている。それにより、荷重検出装置は、様々な環境において常に安定した力検出を行えるものとなる。さらに、そのような荷重検出装置をロボットに設けることにより、様々な環境に対して安全性の高い人間協調ロボットシステムを提供することができる。
【0025】
添付図面に示される本発明の典型的な実施形態の詳細な説明から、本発明のこれらの目的、特徴および利点ならびに他の目的、特徴および利点がさらに明確になるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の図面において、同様の部材には同様の参照符号が付けられている。理解を容易にするために、これらの図面は縮尺を適宜変更している。
【0028】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の人間協調ロボットシステムの側面図を示している。
図1に示される人間協調ロボットシステム1においては、人間9とロボット10とが協調作業を行うため、互いに接近している。
【0029】
ロボット10は垂直多関節型マニピュレータである。ロボット10を床部Lに設置するため、床部L上には固定プレート11が固定されている。そして、固定プレート11上に力センサ12が配置され、さらに、力センサ12上にロボット10のロボットベース13が配置されている。
【0030】
力センサ12は、ロボット10に掛かる荷重を検出する荷重検出装置として使用される。力センサ12内には、外力に起因する力センサ12の歪を検出する歪検出器、例えば歪ゲージ、特に半導体歪ゲージが含まれている。より具体的には、力センサ12は、力センサボディと、力センサボディに貼付けられた歪ゲージとを備えている。このような力センサ12は、ロボット10に作用する外力を計測して外力計測値を出力する。なお、力センサ12はロボットベース13、またはロボット10の他の部分、例えばロボットアーム14間の関節部に取付けられていてもよい。
さらに、力センサ12は複数の温度検出素子、例えば温度センサを内蔵している(
図3A、
図4Aなど参照)。
【0031】
ロボット10におけるロボットアーム14の先端にはロボット手首フランジ15が取付けられている。ロボット手首フランジ15の先端には把持ハンド16が設けられている。ロボット10の把持ハンド16は、所定の位置に在るワークWを把持し、ロボット10がワークWを目的の場所まで移動させた後にワークWを解放する。
【0032】
図1に示されるようにロボット10の近傍には、人間9を検出する人間検出部18が設置されている。人間検出部18はエリアセンサであり、二次元の検出領域19を形成する。そして、人間検出部18は、人間9または他の障害物が検出領域19にあるか否かを確認する。なお、人間検出部18はロボット制御装置20に接続されている。
【0033】
さらに、ロボット10はロボット制御装置20に接続されている。ロボット制御装置20はデジタルコンピュータであり、ロボット10の動作を制御する。
【0034】
図2は第1実施形態のロボット制御装置20内の構成を示すブロック図である。
図2を参照すると、ロボット制御装置20は、力センサ12により出力された外力計測値を監視する外力計測値状態監視部21と、力センサ12により出力された外力計測値から補正値を減算して力検出値を算出する力検出値算出部22と、力検出値算出部22から出力されてくる力検出値の状態を常時監視する力検出値状態監視部23とを含んでいる。
【0035】
ロボット制御装置20はさらに、ロボット動作制御部24とロボット内モータ制御部25とを備える。
ロボット動作制御部24は、ロボット10の動作状態、例えば停止状態、加速状態、減速状態、一定速度運動状態などと、力検出値状態監視部23が監視している力検出値の状態とを常に比較しながら、ロボット10を動作させる。
ロボット内モータ制御部25は、ロボット動作制御部24からの指令に応じて、ロボット10の各軸のモータ(不図示)を制御する。また、ロボット制御装置20に接続された出力部29は必要とされる場合にアラームを出力する。
【0036】
さらに、ロボット制御装置20の力検出値状態監視部23は、補正値更新部31、力検出値記憶部32、更新許可部33、ロボット停止部34、および力検出値用閾値変更部35を含んでいる。
【0037】
補正値更新部31は、所定の条件が成立しているときの力検出値を、力検出値算出部22が力検出値を算出するときの補正値として更新する。補正値更新部31が行う補正値の更新処理は、力センサ12のリセットと言い換えることが可能である。上記の所定の条件には、人間検出部18によりロボット10近傍に人間9が居ないことが検出されている場合が含まれる。
【0038】
力検出値記憶部32は、上記の所定の条件が成立したときの力検出値を記憶する。なお、力検出値記憶部32は、所定の条件が成立した場合に、力検出値算出部22が力検出値を算出する度に力検出値を順次記憶するようにしてもよい。
【0039】
更新許可部33は、人間検出部18によりロボット10近傍に人間9が居ないことが検出された場合には、補正値更新部31が行う補正値の更新処理を許可する。
【0040】
ロボット停止部34は、補正値更新部31により更新された後の力検出値が停止用閾値を超える場合には、ロボット10を減速または停止させる。なお、ロボット停止部34は、ロボット制御装置20のロボット動作制御部24に含まれていても良い。
【0041】
力検出値用閾値変更部35は、補正値更新部31によって補正値が更新されてからの経過時間に応じて力検出値用閾値を変更する。例えば、ロボット10の動作を開始させてから所定時間の間は力検出値が安定しないことがあり、その場合に、力検出値用閾値を第1の値に設定しておき、所定時間を経過したら力検出用閾値を第2の値に変更する。
【0042】
また、ロボット制御装置20の外力計測値状態監視部21は故障判定部36を含んでいる。この故障判定部36は、力センサ12に含まれる歪検出器が検出した歪量が所定の適正範囲内に収まるか否かを監視し、該適正範囲に収まらない場合は、力センサ12が故障している、または異常な歪量が検出されていると判定する。
【0043】
ロボット制御装置20の温度状態監視部37もまた、故障判定部38を含んでいる。この故障判定部38は、力センサ12に含まれる温度検出素子、すなわち温度センサが検出した温度が所定の判定基準を満たすか否かを監視し、所定の判定基準を満たさない場合は、温度センサが故障している、または異常な温度が検出されていると判定する。
故障判定部36、38のうちの少なくとも一方が故障または異常と判定された場合、ロボット制御装置20はロボット10を即座に停止させ、ロボット制御装置20に接続された出力部29はアラームを出力する。アラームとしては、光、音、および音声などを単独で、あるいは任意に組合せて使用することができる。
【0044】
さらに、第1実施形態においては、温度状態監視部37の故障判定部38での判定基準を45℃に設定している。それにより、故障判定部38は、力センサ12内の温度センサから出力される検出温度が45℃を超えた場合には、ロボット10を即座に停止させる。
【0045】
つまり、ロボット10が人間に危害を与えるリスクが高まる温度値を開発者によりあらかじめ実験などで算出し、その算出された温度値を温度状態監視部37の故障判定部38の判定基準とする。そして、力センサ12内の温度センサにより検出された温度が判定基準の温度を超えたとき、即座にロボット10が停止するので、人間に危害を与えるリスクを最小限に抑えることが可能となる。
【0046】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を説明する。但し、第2実施形態を含む、以下の各実施形態においては、第1実施形態と同じ構成要素には同一符号を使用して、第1実施形態とは異なる点を主に説明することとする。
第2実施形態においては、第1実施形態に対して、温度状態監視部37の故障判定部38が、力センサ12内の温度センサから出力される検出温度から所定の時間あたりの温度上昇量を算出するようになっている。それから、故障判定部38は、その温度上昇量が所定の閾値を超えているか否かを判定し、所定の閾値を超えている場合には、ロボット10を即座に停止させる。
【0047】
例えば、上記した所定の時間は1分であり、この1分間に力センサ12の温度センサから出力される検出温度の上昇量が1℃を超えた場合には、故障判定部38はロボット10を即座に停止させる。
つまり、同一の力に対する力センサ12の外力測定値がロボット10周囲の温度に応じて大きく変化することがある。このため、力センサ12内の温度センサから出力される検出温度が1分間に1℃上昇した場合には、力センサ12の外力測定値を信用できない状況になったと判断することができる。例えば、力センサ12内の温度センサに何らかの異常が発生したか、あるいは何らかの要因によって力センサ12近傍に高温の熱源が発生したとき、力センサ12の検出精度を確保できなくなる。第2実施形態では、そのような力センサ12の検出精度を確保できない状態になれば即座にロボット10の動作を停止させるため、人間に危害を与えるリスクを最小限に抑えることが可能となる。
【0048】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態を説明する。
図3Aは第3実施形態の力センサ12の斜視図、
図3Bは
図3A中の点線Xにより囲まれた部分の拡大図、
図3Cは
図3Aに示される力センサ12の側面図である。
力センサ12は、
図3Aに示されるように、力センサボディ200と、力センサボディ200にそれぞれ貼付けられた複数の荷重検出要素、例えば歪ゲージ212、222と、を備えている。さらに、
図3Bに示されるように、力センサ12は複数の被荷重検出部211、221を有しており、第1の被荷重検出部211において、一つの歪みゲージ212の近位に2個の温度センサ213、214が配置されている。同様に、第2の被荷重検出部221において、一つの歪みゲージ222の近位に二つの温度センサ223、224が配置されている。なお、二つの温度センサ213、214(または223、224)の配置場所については、
図3Bに示した場所に代わり、歪ゲージ212(または222)を間に挟む二つの場所に二つの温度センサが配置されてもよい。
【0049】
さらに、第1の被荷重検出部211に配置される二つの温度センサ213、214としては同じタイプの温度センサが使用されている。したがって、第1の被荷重検出部211に配置された二つの温度センサ213、214は、正常な状態では同じ検出温度を出力する。同様に、第2の被荷重検出部221に配置される二つの温度センサ223、224にも同じタイプの温度センサが使用されている。したがって、第2の被荷重検出部221に配置された二つの温度センサ223、224は、正常な状態ではほぼ同じ検出温度を出力する。言い換えれば、同じタイプの温度センサから出力される検出温度が温度センサの個体差による差以上に異なるならば、少なくとも一方の温度センサは異常な環境下に置かれているか、または故障の状態にある。
【0050】
そのため、
図2に示した温度状態監視部37は、各々の被荷重検出部211(または221)に配置された二つの温度センサ213、214(または223、224)の検出値の差が所定の閾値を超えるか否かを監視している。そして、それら二つの温度センサの検出値の差が所定の閾値、例えば2℃を超えた場合には、温度状態監視部37の故障判定部38は、ロボット10を即座に停止させる。
上記のように各々の被荷重検出部211(または221)に同じタイプの複数の温度センサ213、214(または223、224)を設けることにより、各被荷重検出部211、221のより細かな温度変化に応じてロボット10の動作を停止させることができる。したがって、第3実施形態は、第2実施形態と比べて、さらに人間に対する安全性を高めることができる。
【0051】
なお、力センサボディ200は衝撃力に対して比較的強い必要があるため、その材料には金属が使用されている。そして、力センサボディ200は、
図3Aおよび
図3Cに示されるように環状部材200aと円板状部材200bとを対向させ、それらを4本の柱部201により互いに連結したような形状に形成されている。この実施形態においては、柱部201は4本となっているが、必ずしも4本でなくてもよいのは言うまでもない。環状部材200aと円板状部材200bとが相対的に移動したときに柱部201が変形する。このため第3実施形態では、柱部201の垂直面に被荷重検出部211が設けられ、柱部201の水平面に被荷重検出部221が設けられている。また、
図3Bに示される被荷重検出部211、221を、
図3Aに示すように4本の柱部201のそれぞれに設けることにより、力センサボディ200の局所的な温度上昇を検出することも可能である。
【0052】
さらに、第3実施形態の力センサ12をロボット10(
図1参照)に使用する場合には、環状部材200aをロボットベース13に固定し、円板状部材200bを固定プレート11に固定すればよい。
【0053】
また、第3実施形態においては、各々の被荷重検出部211(または221)に配置された複数の温度センサ213、214(または223、224)のうちの少なくとも一つから出力された検出温度が45℃を超えた場合、故障判定部38は、ロボット10を即座に停止させるようにしてもよい。つまり、力センサ12に内蔵された複数の温度センサのうちの一つでも異常な温度を示した場合、何れかの温度センサが故障した可能性が高いとと判断し、ロボット10を即座に停止させる。あるいは、複数の温度センサが異常な温度を示した場合は、周囲温度が上がり過ぎて、正常な力検出ができない状況になったと判断し、ロボット10を即座に停止させる。このため、詳細な外力を得るために力センサ12が複数の被荷重検出部211、221を備える人間協調ロボットシステム1であっても、人間に危害を与えるリスクを最小限に抑えることが可能となる。
【0054】
さらに、第3実施形態においては、各々の被荷重検出部211(または221)に配置された複数の温度センサ213、214(または223、224)のうちの少なくとも一つから出力される検出温度の1分間当たりの上昇量が1℃を超えた場合には、故障判定部38はロボット10を即座に停止させるようにしてもよい。このように力センサ12内に在る複数の温度センサの検出温度に基づいてロボット10を制御することにより、人間に危害を与えるリスクを最小限に抑えることが可能となる。
【0055】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態を説明する。
図4Aは第4実施形態の力センサ12の斜視図、
図4Bは
図4A中の点線Xにより囲まれた部分の拡大図、
図4Cは
図4Aに示される力センサ12の側面図である。
第4実施形態の力センサ12は、力センサボディ200の柱部201に複数の被荷重検出部311、321を設けている点では第3実施形態と同じである。第4実施形態では、第3実施形態と比べて、各々の荷重検出部311、321に在る温度センサの数および耐環境性能が異なる。
【0056】
具体的には、
図4Bに示すように、一つの被荷重検出部311(または321)において、一つの歪みゲージ312(または322)の近位に四つの温度センサ313、314、315、316(または323、324、325、326)が配置されている。なお、四つの温度センサ313、314、315、316(または323、324、325、326)は、
図4Aおよび
図4Bに示されるように、歪ゲージ312(または322)を取囲むように配置されている。
【0057】
さらに、第1の被荷重検出部311内の四つの温度センサ313、314、315、316のうちの、二つの温度センサ313、314は、耐水性または耐油性を有する同じタイプの温度センサである。残りの二つの温度センサ315、316は、耐熱性を有する同じタイプの温度センサである。同様に、第2の被荷重検出部321内の四つの温度センサ323、324、325、326のうちの、二つの温度センサ323、324は、耐水性または耐油性を有する同じタイプの温度センサである。残りの二つの温度センサ325、326は、耐熱性を有する同じタイプの温度センサである。なお、前述した第三実施形態においては、
図3Bに示されている二つの温度センサ213、214(または223、224)は同じタイプの温度センサであってもよいし、異なるタイプの温度センサであってもよい。
このように耐水、耐油、耐熱などといった耐環境性が異なる少なくとも二種類の温度センサを設けることにより、力センサ12が様々な環境において常に安定した力検出を行えるものとなる。それにより、様々な環境に対して安全性の高い人間協調ロボットシステムを提供することができる。なお、耐環境性を有する温度センサとしては、上記した耐水、耐油、または耐熱を有するものの他に、防塵または耐衝撃を備えるものを使用してもよい。
【0058】
また、温度センサとしては、力センサボディ200の温度を直接検出する熱電対タイプを使用する場合がある。その場合、複数の温度センサのうちの少なくとも一つの温度センサとして、非接触タイプ、例えば赤外線エネルギを受光して温度を検出するタイプを使用することが好ましい。
熱電対タイプの温度センサは何らかの要因により、力センサボディ200から剥離してしまい、温度センサが機能しなくなる可能性がある。これに対し、非接触タイプの温度センサは力センサボディ200に直接接触させる必要がないので、温度センサの剥離といった問題は発生しない。一般的に非接触タイプの温度センサは非常に高価なため、全部の温度センサを非接触タイプにするとコストが上がってしまう。しかし、複数の温度センサのうちの一部に非接触タイプを使用することにより、コストを下げることが可能となる。
【0059】
なお、上述した各実施形態では、歪ゲージを荷重検出要素として使用する例を示したが、本発明に適用可能な荷重検出要素は、歪ゲージに限定されない。本発明は、周囲温度の変化に起因して検出値が変動する可能性が有る荷重検出要素を備えた産業用ロボットであれば、如何なるものにも適用可能である。
【0060】
また、以上では、ロボット10として垂直多関節型マニュピレータを図示して本発明を説明したが、本発明はそのようなマニュピレータに限定されず、直角座標ロボット、円筒座標ロボット、および極座標ロボットにも適用できる。
【0061】
さらに、以上では典型的な実施形態を示したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の思想を逸脱しない範囲で上述の実施形態を様々な形、構造や材料などに変更可能である。