(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6105685
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】卵子採取針
(51)【国際特許分類】
A61B 17/43 20060101AFI20170316BHJP
A61B 10/02 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
A61B17/43
A61B10/02 110Z
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-146241(P2015-146241)
(22)【出願日】2015年7月23日
(65)【公開番号】特開2017-23488(P2017-23488A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2016年12月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509038108
【氏名又は名称】株式会社北里メディカル
(73)【特許権者】
【識別番号】515201914
【氏名又は名称】株式会社Natural ART総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100112003
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100145344
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 和徳
(72)【発明者】
【氏名】井上 太
(72)【発明者】
【氏名】寺元 章吉
【審査官】
吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−252293(JP,A)
【文献】
特開2013−141488(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/115304(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/43
A61B 10/02
A61D 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体への挿入用の前端を備える先端小径部と、
前記先端小径部と流体連通する第1のテーパ部を介して前記先端小径部と繋がり、前記先端小径部よりも大きな内径および外径を有する中間部と、
前記中間部と流体連通する第2のテーパ部を介して前記中間部と繋がり、前記中間部よりも大きな内径および外径を有する大径部と、を備える卵子採取針であって、
前記先端小径部の内径は約0.35mm以上、外径は約0.7mm以下、長さは約10mm〜30mmであり、前記先端小径部の前端は約10度〜約20度の傾斜角を有する傾斜尖端により形成され、
前記中間部の内径は、約0.45mm以上であり、
前記先端小径部、前記第1のテーパ部、および前記中間部を合わせた長さは約60mm〜約150mmであることを特徴とする卵子採取針。
【請求項2】
前記中間部の外径は約0.9mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の卵子採取針。
【請求項3】
前記第1のテーパ部の内径の平均勾配は約10%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の卵子採取針。
【請求項4】
前記先端小径部、前記第1のテーパ部、前記中間部、前記第2のテーパ部、および前記大径部を合わせた長さは約200mm〜500mmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の卵子採取針。
【請求項5】
前記先端小径部の前記前端の傾斜角は、約12度〜約17度であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の卵子採取針。
【請求項6】
前記第1のテーパ部の前記平均勾配は、約6%であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の卵子採取針。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経皮的に卵子を採取するための卵子採取針に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、体外受精は、卵胞の成長を促すためのホルモン注射を行い、複数の発育卵胞から卵子の採取を行うという方法が採られている。この方法によれば、複数の卵胞の大きさは、あまりばらつきなく、大体20mm程度にまで成長し、各卵胞から成熟卵子を採取することができる。
【0003】
しかしながら、卵胞を成長させて大きくすると、組織を穿通したときの出血量も多くなり易く、腹腔内出血の可能性が生じる。また、ホルモン剤の投与量によっては、卵巣機能の回復に時間がかかったり、ホルモン剤に対する反応が鈍くなるなどの問題が発生する。
【0004】
このため、近年ではこのような問題のない自然周期による採取方法が注目されている。この方法は、ホルモン剤を投与せず、自然周期により成長した主席卵胞(発育卵胞)から成熟卵子を採取するものであるが、一回に1個ほどの卵子しか採取できない。
【0005】
ところで、自然周期による採取方法において、主席卵胞以外のいわゆる小卵胞(未発育卵胞)からも体外成熟させるために卵子を採取することができれば、採取作業一回あたりの卵子の採取数が増えて効率が良い。
しかしながら、従来の卵子採取針は、小卵胞から卵子を採取することを想定しておらず、主席卵胞以外に用いるのは困難であった。
【0006】
たとえば、特許文献1には、ヒト被験体から卵母細胞を採取するための試料採取針が開示されている。この試料採取針の先端部(第1の管状領域)の内径は、卵母細胞の大きさが0.1mm〜0.2mmであることから、0.2mm以上とされている。しかしながら、卵子の採取は、周囲の細胞を包囲した卵丘細胞として吸引するため、針の内径が小さいと、卵子を吸引するときに歪みが生じたり、吸引速度が低下したりするので、実際はその内径をある程度大きくしなければ、主席卵胞からの卵子採取に対して使用することはできない。一方、内径を大きくすると、それに伴って外径も大きくなるため、小卵胞へ針先を的確に挿入することが困難になる。また、主席卵胞、小卵胞のそれぞれに対して専用の針を用いたのでは、卵子採取の作業効率が悪くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5342554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものであり、人体に負担を極力かけずに、一連の採取作業で主席卵胞(発育卵胞)のみならず小卵胞(未発育卵胞)からも卵子を採取することのできる卵子採取針を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、体外成熟に適した卵子を採取可能な小卵胞の大きさは、約5mm程度以上であることを発見した。また、直径0.1mm程度の卵子を包囲する卵丘細胞は、主席卵胞で0.3〜0.5mm程度、小卵胞の卵丘細胞はこれよりも一回り小さい。このため、卵丘細胞の変形許容度や吸引速度を考慮して、針先端部(後述における「先端小径部」)の内径は、0.35mm以上、好ましくは0.4mm以上にするのが良い。また、針先端部の外径は0.7mm以下にして、その前端は約10度〜約20度の傾斜尖端により形成するのが良い。これにより、傾斜尖端を実用的な角度に保って傾斜端面の長さを4mm程度以下にすることができ、小卵胞内への傾斜尖端部分の挿入を可能にすると共に、当該小卵胞内の卵子を包囲する卵丘細胞の吸引を可能にする。
【0010】
一方、針先端部の長さは、主席卵胞の直径程度以上にするのが好ましい。これにより、主席卵胞、小卵胞のいずれに対しても、常に針先端部のみが挿入されることになる。また針先端部に繋がる次段部(後述における「中間部」)の内径は、先端部の内径よりも大きくして、卵丘細胞の変形を回復し、卵子への影響を速やかに除去できるようにするのが好ましい。なお、卵子を包囲する卵丘細胞は卵胞液と一緒に吸引されることになるが、次段部の内径を極端に大きくすると、次段部入り口付近で卵胞液の流れに乱れが生じ、卵子に悪影響を与える虞がある。このため、通常の吸引圧(例えば、100mHg〜300mHg程度)を考慮して、内径については乱れの無い変化率にする必要がある。また外径については、組織への穿刺等の採取作業に影響を与えない程度に抑えるのが好ましい。
【0011】
具体的には、本発明に係る卵子採取針は、人体への挿入用の前端を備える先端小径部と、前記先端小径部と流体連通する第1のテーパ部を介して前記先端小径部と繋がり、前記先端小径部よりも大きな内径および外径を有する中間部と、前記中間部と流体連通する第2のテーパ部を介して前記中間部と繋がり、前記中間部よりも大きな内径および外径を有する大径部と、を備える卵子採取針であって、
前記先端小径部の内径は約0.35mm以上、好ましくは約0.4mm以上、外径は約0.7mm以下、好ましくは、約0.6mm以下、長さは約10mm〜約40mm、好ましくは20mm以上30mm未満、前端は約10度〜約20度の傾斜角を有する傾斜尖端により形成され、
前記中間部の内径は、約0.45mm以上、好ましくは約0.5mm以上、外径は、約0.9mm以下、好ましくは約0.8mm以下であり、
前記第1のテーパ部は、外径および内径共に約10%以下、好ましくは約6%以下の平均勾配をもって、前記先端小径部および前記中間部と連通し、
前記先端小径部、前記第1のテーパ部、前記中間部を合わせた長さは、約60mm〜約150mm、好ましくは約110mm〜130mmであり、
前記先端小径部、前記第1のテーパ部、前記中間部、前記第2のテーパ部、前記大径部を合わせた長さは、約200mm〜500mm、好ましくは約250mm〜350mmであることを特徴とする。
【0012】
なお、大径部の内径は約0.7mm以上、外径1.1mm以上が好ましい。また、第2のテーパ部の長さ方向のサイズは特段に条件を要せず、一定の平均勾配をもって前記中間部および前記大径部と繋がっていれば良い。
使用の際、前記大径部は、膣を通り抜けるのに適した長さを有し、前記先端小径部、前記第1のテーパ部、および前記中間部で形成される部分は、前記第2のテーパ部および前記大径部を人体の組織に穿通させることなく採取すべき卵子を包囲する卵丘細胞に接触するのに適した長さを有する。
【0013】
また、先端小径部は、第1のテーパ部および中間部を卵胞(主席卵胞、小卵胞)に穿通させることなく採取すべき卵子を包囲する卵丘細胞に接触するのに適した長さを有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、一連の採取作業で主席卵胞と小卵胞とから卵子を採取することができる。このため、痛みの原因となり得る膣壁あるいは腹膜に対して何回も穿刺する必要が無く、人体への負担を軽くすることができる。
特に、本発明では卵子採取針の先端小径部のみが主席卵胞または小卵胞に穿通し、採取すべき卵子を包囲する卵丘細胞にその前端を的確に接触させることができる。また、先端小径部から吸引された卵子を直ちに中間部に移動させるので卵子の変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態による卵子採取針の外形図である。
【
図2】本発明の実施の形態による卵子採取針の平面図である。
【
図3】本発明の実施の形態による卵子採取針の左側面図である。
【
図4】本発明の実施の形態による卵子採取針の右側面図である。
【
図5】本発明の実施の形態による卵子採取針の底面図である。
【
図6】本発明の実施の形態による卵子採取針の正面図である。
【
図7】本発明の実施の形態による卵子採取針の背面図である。
【
図8】
図1の傾斜尖端15の傾斜角θの説明図である。
【
図9】本発明の実施の形態による小卵胞への穿刺状態の説明図である。
【
図10】本発明の実施の形態による主席卵胞への穿刺状態の説明図である。
【
図11】本発明の実施の形態による卵子の採取作業の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明に係る卵子採取針の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施の形態による卵子採取針1の外形図であり、
図2〜
図7は、正投影図法で表した六面図である。図中一点鎖線は、途中を省略していることを示している。
【0017】
この卵子採取針は、針の先端部より先端小径部10、中間部20、大径部30の太さの異なる3つの領域を有している。先端小径部10と中間部20との間には、太さが連続的に変化する第1のテーパ部12、同様に中間部20と大径部30との間には第2のテーパ部23が存在する。また、大径部30の末端には本卵子採取針1を操作するための指先グリップ40が設けられている。
【0018】
以下、各領域について詳述する。
(先端小径部)
先端小径部10の内径は、卵子ではなく、卵子と共に吸引される細胞・組織のサイズ等を考慮して決めるのが良い。卵子の直径は0.1mm程度、卵子の周囲には透明体と呼ばれる膜があり、最大直径は、0.15mm程度である。さらに、その周囲の細胞を含む卵子卵丘細胞複合体は、その2倍から3倍の大きさであり、0.3mm〜0.45mm程度である。また卵子卵丘細胞複合体の変形許容度を10%程度とすると、卵丘細胞のサイズの多少のばらつきを考慮して、先端小径部10の内径は約0.35mm以上、好ましくは約0.4mm以上にする必要がある。
【0019】
ところで、内径が細くなると、吸引時間が長くなる。このため、吸引圧を上げることになるが、その分、卵丘細胞の変形に伴う卵子への影響が大きくなる。例えば、従来の2段構成の卵子採取針(内径0.4mm、100mmの先端小径部を含む全長300mmのストレート針)により、200mmHgで吸引する場合は、1cc(1ml)吸引するのに20秒近くかかる。しかし、卵子への影響を考慮すると、10秒程度以下にする必要がある。本実施の形態による卵子採取針を用いることにより、後述するようにこの目標を達成した。
【0020】
傾斜尖端15の傾斜角は、一般的に約15度程度であり、実用的には10度〜20度の範囲で用いられている。5mm程度のサイズの小卵胞から体外成熟可能な卵子を採取するには、傾斜尖端15の外径は0.7mm以下にするのが好ましい。これにより、
図8に示すように、傾斜尖端15の端面(傾斜端面)16は、最大でも4mm程度になり、卵子採取針の傾斜尖端15は完全に小卵胞内に収まり、卵子を包囲する卵丘細胞や卵胞液の吸引が可能になる。なお、小卵胞への尖端部の穿刺を容易にするために、傾斜角θは、15度未満が好ましい。なお、傾斜尖端15の外径を0.6mm以下にすれば、3mm程度のサイズの小卵胞からの卵子採取も可能になる。
【0021】
また、先端小径部10の長さは、主席卵胞のサイズを考慮し、そのサイズと同程度以上の長さにするのが好ましい。これにより主席卵胞、小卵胞のいずれに対しても、常に先端小径部10のみが挿入され、他の領域は挿入されないので、穿刺作業が容易になる。
【0022】
主席卵胞のサイズ(直径)はせいぜい20mm程度であるので、ばらつきとマージンを考慮して、先端小径部10の長さは約10mm〜約25mm、好ましくは約15mm〜約20mm程度にするのが良い。
【0023】
(中間部)
先端小径部10の卵丘細胞ひいては卵子に対する影響を速やかに除去するためには、中間部20の内径を卵丘細胞のサイズ程度にするのが良い。したがって、中間部20の内径は、約0.45mm以上、好ましくは約0.5mm以上にするのが良い。なお中間部20の外径は、内径に基づいて決定されるが、穿刺作業の操作性を考慮すると、先端小径部10の外径との差はできる限り小さい方が好ましい。実際、先端小径部10の外径との差が0.2mm程度以下ならば問題ない。
【0024】
(第1のテーパ部)
発明者らは、先端小径部10と中間部20との内径の差が急激に大きくなると、吸引時に針管内で起こる対流と、これに伴い発生する気泡により卵子が変性しやすくなることを発見した。これは、卵丘細胞の変形の急激な復元や渦流等の発生が卵胞液の流れに乱れを生じさせるためと考えられる。また、吸引作業において、最終的に卵胞自体も吸い込まれることになるので、急激な流れの変化は、卵子に透明帯の損傷などの悪影響を与え、場合によっては卵子が破壊する虞もある。
【0025】
第1のテーパ部12の内径は吸引時間に影響を与えない平均勾配約10%以下、好ましくは約6%で形成するのが良い。
【0026】
以上、先端小径部10、第1のテーパ部12、中間部20について説明したが、これらを合わせた長さは、後述する第2のテーパ部23および大径部30を人体の組織に穿通させない長さにするのが良い。具体的には、約60mm〜約150mm程度、ある程度のマージンと穿刺作業の操作性を考慮すると約100mm〜130mmにするのが好ましい。
【0027】
(大径部、第2のテーパ部)
大径部30は、中間部20よりも大きな内径および外径を有し、本卵子採取針1が膣を通り抜けるのに適した長さを有していれば良い。また、第2のテーパ部23は、中間部20と大径部30とを連通させればよく、その平均勾配に対する制限はない。
【0028】
次に
図9,
図10を用いて、本実施の形態による卵子採取針1の作用を説明する。
上述した卵子採取針1を小卵胞61に穿刺すると、
図9に示すように、その先端小径部10の傾斜尖端15は、小卵胞61内に完全に収まる。これにより小卵胞61内の卵子50を包囲する卵丘細胞51を吸引することができる。また、この卵子採取針1を主席卵胞60に穿刺する場合は、
図10に示すように、先端小径部10のみが主席卵胞60内に収まる。つまり、先端小径部10は主席卵胞の直径と同程度以上の長さをもって形成されているので、主席卵胞60内の卵丘細胞51の吸引作業において、先端小径部10よりも外径の大きな中間部20や第1のテーパ部12は主席卵胞60内に挿入されず、またその必要もない。このため、卵子採取針1の操作性を阻害することなく、効率よく採取作業を行うことができる。
【0029】
卵子の一連の採取作業は、
図11に示すように、卵巣70内に穿刺された、可能な限り一筆書きのように順に卵胞内の卵子卵丘細胞複合体を採取していく。この際、
図11中、実線で示す卵子採取針1の採取ルートのように、小卵胞61、主席卵胞60を問わず、卵胞内への穿刺が可能になる。また、
図11中の一点鎖線で示す卵子採取針1のように、単に採取ルートを変えるのみであれば、卵巣70への穿刺をしなおすことなく傾斜尖端15の向きを変えながら行うことができる。卵巣70内への一回の穿刺で採取しきれない卵胞に対しては、
図11中の破線で示す卵子採取針1のように、新たに適切な位置に穿刺をして卵子の採取を行う。その際においても、痛みの原因となり得る膣壁あるいは腹膜(図示せず)に対しては新たに穿刺する必要が無く、また、大径部30はこれら人体組織には挿入されない。
【0030】
(実施例1)
本実施例は、先端小径部10を22ゲージ(外径0.70mm,内径0.48mm),長さ20mm、中間部20を21ゲージ(外径0.80mm,内径0.57mm)、大径部30を18ゲージ(外径1.20mm,内径0.94mm)、第1のテーパ部12の長さ5mm,内径の平均勾配を6%、第2のテーパ部23の長さ5mm,平均勾配6%、先端小径部10の先端から中間部20の末端までの長さを110mm、先端小径部10の先端から大径部30の末端までの長さを300mmの卵子採取針1を用いて、採取実験を行った。なお、実験設備は、特許文献1
図2等に示されているので、説明を割愛する(以下、同様である。)。
【0031】
吸引圧100mmHgで1mlを吸引したときの時間は、9.5秒,9.3秒,9.0秒,吸引圧200mmHgで1mlを吸引したときの時間は、5.6秒,5.4秒,5.5秒であった。
【0032】
(実施例2)
本実施例は、先端小径部10を23ゲージ(外径0.65mm,内径0.40mm),長さ20mm、中間部20を22ゲージ(外径0.70mm,内径0.48mm)、大径部30を18ゲージ(外径1.20mm,内径0.94mm)、第1のテーパ部12の長さ5mm,内径の平均勾配を6%、第2のテーパ部23の長さ5mm,平均勾配6%、先端小径部10の先端から中間部20の末端までの長さを110mm、先端小径部10の先端から大径部30の末端までの長さを300mmの卵子採取針1を用いて、採取実験を行った。
【0033】
吸引圧100mmHgで1mlを吸引したときの時間は、17.1秒,18.8秒,19.2秒,吸引圧200mmHgで1mlを吸引したときの時間は、10.2秒,11.4秒,12.0秒であった。
【0034】
(実施例3)
本実施例は、先端小径部10を23ゲージ(外径0.65mm,内径0.40mm),長さ20mm、中間部20を21ゲージ(外径0.80mm,内径0.57mm)、大径部30を18ゲージ(外径1.20mm,内径0.94mm)、第1のテーパ部12の長さ5mm,内径の平均勾配を6%、第2のテーパ部23の長さ5mm,平均勾配6%、先端小径部10の先端から中間部20の末端までの長さを110mm、先端小径部10の先端から大径部30の末端までの長さを300mmの卵子採取針1を用いて、採取実験を行った。
【0035】
吸引圧100mmHgで1mlを吸引したときの時間は、12.1秒,11.9秒,11.4秒,吸引圧200mmHgで1mlを吸引したときの時間は、7.3秒,7.1秒,7.4秒であった。
【0036】
(実施例4)2段構成による比較実験
本実施例は、先端小径部10を23ゲージ(外径0.65mm,内径0.40mm),長さ30mm、中間部20を省略し、大径部30を18ゲージ(外径1.20mm,内径0.94mm)、先端小径部10と大径部30とを連通させるテーパ部(図示せず)の長さを7mm,平均勾配6%、先端小径部10の先端から大径部30の末端までの長さを300mmの卵子採取針を用いて、比較実験を行った。
【0037】
吸引圧100mmHgで1mlを吸引したときの時間は、21.6秒,22.8秒,23.6秒,吸引圧200mmHgで1mlを吸引したときの時間は、13.0秒,13.4秒,12.9秒であった。
【0038】
以上、本実施の形態によれば、一連の卵子採取処理において、主席卵胞のみならず小卵胞からも卵子を採取することができる。特に、先端小径部の外径を0.7mm以下、前端の傾斜角を10度〜20度にすることにより、体外成熟可能な卵子を採取できる小卵胞への穿刺を可能にした。また、先端小径部の内径を卵丘細胞のサイズとその変形許容度を考慮して0.35mm以上、長さを主席卵胞のサイズに基づいて、当該サイズと同程度か若干長い程度で形成し、中間部の内径を卵丘細胞のサイズと同程度である0.45mm以上で形成することにより、吸引時間を早め、吸引時に先端小径部により卵丘細胞が変形しても、その復元を速やかに行うことができる。これにより、卵丘細胞全体を吸引するときの卵子への影響を抑え、より安全確実な卵子採取が可能になる。また、穿刺時に主席卵胞、小卵胞共に先端小径部のみが卵胞内に挿入されるのみなので、卵子の採取処理を容易に行うことができる。
【0039】
さらに、中間部の外径を0.9mm以下で形成し、先端小径部の外径との間に平均勾配約6%の第1のテーパ部を設けることにより、針を人体組織内へ挿入するときの疼痛を抑え、無麻酔での採取も可能になる。
【0040】
また、この卵子採取針により自然周期の主席卵胞と小卵胞からの卵子を採取することにより自然周期でも複数個の卵子を回収することが可能となり、ホルモン剤投与による卵子採取が不要になるので、人体への悪影響を回避することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 卵子採取針
10 先端小径部
12 第1のテーパ部
15 傾斜尖端
16 傾斜端面
20 中間部
23 第2のテーパ部
30 大径部
50 卵子
51 卵丘細胞
60 主席卵胞
61 小卵胞
70 卵巣