(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記チャッキング方法では、半導体ウエハの被研削面を研削する際に、半導体ウエハがダメージを受ける恐れがある。半導体ウエハの被研削面を研削する際には、真空チャック本体が半導体ウエハを砥石に押し付ける。また、例えば、真空チャック本体のチャック面と半導体ウエハとの間に半導体ウエハの破片、砥粒等の異物が侵入する恐れがある。このような場合には、異物が半導体ウエハの被研削面と反対側の面を押圧して凹部を形成する。
【0006】
被研削面の研削が終了すると、真空チャック本体のチャック面から半導体ウエハが取り外される。このとき、半導体ウエハの被研削面と反対側の面に形成された凹部が弾性回復する。その結果、この凹部に対向する位置の半導体ウエハの被研削面に凹部が形成される。この現象は、「転写」と呼ばれている。すなわち、真空チャック本体のチャック面と半導体ウエハとの間に異物が侵入した場合には、転写によって、被研削面に凹部が形成される。したがって、半導体ウエハを高品位に研削することができない。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、半導体ウエハを高品位に研削することができる半導体ウエハ保持具、半導体ウエハ研削装置、及び、半導体ウエハ研削方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の形態に係る半導体ウエハ保持具は、半導体ウエハの被研削面を研削する際に前記半導体ウエハを保持する半導体ウエハ保持具であって、キャリア、及び、吸着部材を備える。前記キャリアは、前記半導体ウエハよりも高硬度且つ高強度を有する材料で板状に形成される。また、前記キャリアは、その一方側の面が真空チャックのチャック面に吸着され、その他方側の面が前記吸着部材を支持する。前記吸着部材は、前記半導体ウエハよりも硬度が低い材料で板状に形成される。また、前記吸着部材は、その一方側の面が前記キャリアに支持され、その他方側の面が前記半導体ウエハを支持する。
【0009】
本発明の第2の形態に係る半導体ウエハ保持具は、前記第1の形態に係る半導体ウエハ保持具であって、前記キャリアは、前記吸着部材の周囲に立設された固定壁を有する。
【0010】
本発明の第3の形態に係る半導体ウエハ保持具は、前記第1の形態に係る半導体ウエハ保持具であって、前記吸着部材の外周部に配置され、前記半導体ウエハを固定する固定壁を有する。
【0011】
本発明の第4の形態に係る半導体ウエハ保持具は、前記第1の形態から前記第3の形態のいずれか1つの半導体ウエハ保持具であって、前記キャリアの前記一方側の面は、粗度が1μmRa以下に形成されている。
【0012】
本発明の第5の形態に係る半導体ウエハ保持具は、前記第1の形態から前記第4の形態のいずれか1つの半導体ウエハ保持具であって、前記キャリアの前記一方側の面は、前記半導体ウエハの直径に相当する長さ当たりの平坦度が、前記半導体ウエハに要求される平坦度以下に形成されている。
【0013】
本発明の第6の形態に係る半導体ウエハ保持具は、前記第1の形態から前記第5の形態のいずれか1つの半導体ウエハ保持具であって、前記キャリアの材料は、カーボンファイバーである。
【0014】
本発明の第7の形態に係る半導体ウエハ保持具は、前記第1の形態から前記第6の形態のいずれか1つの半導体ウエハ保持具であって、前記吸着部材は、塑性を有する材料で形成される。
【0015】
本発明の第8の形態に係る半導体ウエハ保持具は、前記第7の形態に係る半導体ウエハ保持具であって、前記吸着部材は、フェルトとエポキシ樹脂とを含む材料を圧縮して形成される。
【0016】
本発明に係る半導体ウエハ研削装置は、前記半導体ウエハの前記被研削面を研削する半導体ウエハ研削装置であって、前記第1の形態から前記第8の形態のいずれか1つの半導体ウエハ保持具、前記真空チャック、及び、研削部を備える。前記真空チャックは、前記半導体ウエハ保持具を吸着する前記チャック面を有する。前記研削部は、前記半導体ウエハの前記被研削面を研削する砥石を有する。
【0017】
本発明に係る半導体ウエハ研削方法は、前記半導体ウエハの前記被研削面を研削する半導体ウエハ研削方法であって、前記第1の形態から前記第8の形態のいずれか1つの半導体ウエハ保持具を前記真空チャックのチャック面に吸着させ、前記半導体ウエハ保持具が前記半導体ウエハを保持し、前記被研削面を砥石で研削する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の半導体ウエハ保持具、半導体ウエハ研削装置、及び、半導体ウエハ研削方法によれば、半導体ウエハを高品位に研削することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面(
図1〜
図6)を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。まず、
図1を参照して半導体ウエハの製造方法を説明する。
図1は半導体ウエハの製造方法を示すフローチャートである。
【0021】
まず、ステップS10において、円柱状のインゴットを切断して円板状の半導体ウエハを得る。次に、ステップS20において、半導体ウエハの周縁部の割れ及び欠けを抑制するために、半導体ウエハの周縁部を面取りする。次に、ステップS30において、半導体ウエハの主面と反対側の被研削面をラッピングして半導体ウエハを所定の厚みにする。次に、ステップS40において、半導体ウエハをエッチングして、ラッピングによって発生した加工歪みを除去する。そして、ステップS50において、半導体ウエハの被研削面をポリッシングして鏡面状にする。最後に、ステップS60において、半導体ウエハを薬液で洗浄してパーティクル等の不純物を除去する。
【0022】
本実施形態の半導体ウエハ研削装置100は、例えば
図1のステップS30のラッピング工程及びステップS50のポリッシングの少なくとも一方において使用される。ただし、ラッピング工程で使用される場合であっても、ラッピング法は用いない。また、ラッピング法とは、「回転する上下のラップ定盤の間で、ウエハをセットしたキャリアが自公転し、砥粒を含んだ研磨剤を介してウエハとラップ定盤とをすり合わせることによる機械研磨法」を意味する。換言すれば、本実施形態の半導体ウエハ研削装置100は、半導体ウエハWの被研削面Waを砥石21によって研削する(
図2参照)。また、半導体ウエハ研削装置100の研削能力が高く、且つ、半導体ウエハWの被研削面Waを美麗に研削することができる場合には、
図1のステップS30及びステップS40を省略することが可能である。
【0023】
<第1実施形態>
次に、
図2を参照して、本発明の実施形態に係る半導体ウエハ研削装置100の構成について説明する。
図2は本発明の実施形態に係る半導体ウエハ研削装置100の側面図である。
【0024】
図2に示すように、半導体ウエハ研削装置100は、2つのウエハ保持部1、及び、1つの研削ホイール2を備える。2つのウエハ保持部1は、互いに同じ構成を有する。
【0025】
ウエハ保持部1は、真空チャック11、半導体ウエハ保持具12、及び、第1駆動部15を備える。真空チャック11は、半導体ウエハ保持具12を保持する。また、真空チャック11は、半導体ウエハ保持具12と一体に昇降及び回転する。第1駆動部15は、モータ等を備え、真空チャック11を、昇降すると共に回転駆動する。第1駆動部15は、真空チャック11を、真空チャック11の中心軸13を中心に回転駆動する。また、第1駆動部15は、例えば、矢印R1で示すように、真空チャック11を上から見て反時計回りに回転駆動する。
【0026】
第1駆動部15は、真空チャック11を、上限位置と下限位置との間で昇降する。真空チャック11を退避させるときには、第1駆動部15は、真空チャック11を上限位置に移動する。よって、上限位置を退避位置と記載する場合もある。また、半導体ウエハWを研削するときには、第1駆動部15は、真空チャック11を下限位置に移動する。よって、下限位置を研削位置と記載する場合もある。また、半導体ウエハWを研削するときには、第1駆動部15は、真空チャック11に保持された半導体ウエハ保持具12及び半導体ウエハWを研削ホイール2に向けて押圧する。換言すれば、半導体ウエハWは、真空チャック11によって研削ホイール2に向けて押圧される。
【0027】
研削ホイール2は、砥石21、ホルダー22、支軸23、及び、第2駆動部25を備える。砥石21は、半導体ウエハWの被研削面Wa(
図2では下面)と対向して配置される。また、砥石21は、半導体ウエハWの被研削面Waに摺接され、半導体ウエハWの被研削面Waを研削する。砥石21は、円環状に形成されている。砥石21は、ホルダー22に固定される。
【0028】
ホルダー22は、砥石21を支持する。ホルダー22は、円板状に形成される。支軸23は、ホルダー22を回転自在に支持する。支軸23は、ホルダー31の砥石21と反対側の面の中心部に垂直に固定されている。支軸23は、ホルダー22及び砥石21を、支軸23の中心軸24を中心に回転駆動する。第2駆動部25は、例えば、矢印R2で示すように、研削ホイール2を上から見て反時計回りに回転駆動する。
【0029】
支軸23の中心軸24は、真空チャック11の中心軸13と平行に配置される。また、支軸23の中心軸24は、2つの真空チャック11の中心軸13の中央に位置している。換言すれば、2つの真空チャック11の中心軸13は、支軸23の中心軸24に対して互いに線対称な位置に配置されている。
【0030】
次に、
図3を参照して、真空チャック11及び半導体ウエハ保持具12の構成について説明する。
図3は、真空チャック11及び第1実施形態に係る半導体ウエハ保持具12の側面図である。真空チャック11は、チャック本体111、吸引通路112、吸引部113、及び、吸引源114を備えている。チャック本体111は、その下端位置に吸引部113が配置されている。また、チャック本体111は、その内部に吸引通路112が形成されている。
【0031】
吸引通路112は、吸引源114によって生成された負圧を、吸引部113に伝達する。吸引源114は、例えば、真空ポンプを備え、吸引通路112内の気圧を予め設定された所定気圧以下にする。所定気圧は、例えば、大気圧に対する差分気圧が70kPaである。吸引部113は、多孔質部材により円板状に形成されている。例えば、吸引部113は、ポーラスセラミックスにより形成されている。すなわち、吸引部113には、細孔(ポーラス)が形成されている。また、真空チャック11は、いわゆる「ポーラスチャック」である。細孔径は、例えば、40μm〜60μmである。
【0032】
本実施形態では、真空チャック11がポーラスチャックである形態について説明するが、これに限定されない。例えば、吸引部113は、微細な孔が形成されたセラミックスでもよい。具体的には、例えば、吸引部113に、吸引通路112とキャリア121の上面121aとの間を挿通する円筒状の複数の孔が形成されている形態でもよい。孔の直径は、例えば、0.5mmであり、孔の個数は、例えば、100個である。
【0033】
また、吸引部113の下面には、半導体ウエハ保持具12が固定される。具体的には、吸引部113の上面に印加された負圧が、吸引部113に形成された細孔を介して吸引部113の下面(チャック面113a)に伝達される。すなわち、吸引部113のチャック面113aに配置された半導体ウエハ保持具12は、吸引部113の上面に印加された負圧によって、吸引部113のチャック面113aに吸着される。
【0034】
半導体ウエハ保持具12は、キャリア121及び吸着部材122を備える。キャリア121は、半導体ウエハWよりも高硬度且つ高強度を有する材料で円板状に形成されている。例えば、キャリア121の材料は、カーボンファイバーである。また、キャリア121は、その一方側の面(
図3では上面121a)が真空チャック11のチャック面113aに吸着される。また、キャリア121は、その他方側の面(
図3では下面)が吸着部材122を支持する。
【0035】
吸引部113の外径は、吸引保持するキャリア121の外径より大きいか、又は、キャリア121の外径と等しくなるように構成されている。
図3では、吸引部113の外径がキャリア121の外径より若干大きい。吸引部113の外径がキャリア121の外径より大きい場合は、その差は、例えば2mm以下である。吸引部113の外径とキャリア121との差が大きい程、キャリア121の外縁より外側に位置する吸引部113の面積が大きくなる。よって、キャリア121の外縁より外側に位置する吸引部113から吸引通路112に大気が流入する。したがって、吸引通路112内の真空度が低下する。換言すれば、吸引通路112内の真空度を高めるためには、吸引部113の外径とキャリア121との差を小さくすることが好ましい。
【0036】
キャリア121の上面121aは、低粗度に形成されている。例えば、キャリア121の上面121aは、粗度が1μmRa以下に形成されている。また、キャリア121は、高平坦度に形成されている。例えば、キャリア121は、半導体ウエハWの直径に相当する長さ当たりの平坦度が、半導体ウエハWに要求される平坦度以下に形成されている。具体的には、キャリア121は、例えば、長さ150mm当たりの平坦度が1μm以下に形成されている。なお、キャリア121の「平坦度」とは、キャリア121の厚みの差の最大値である。換言すれば、キャリア121の「平坦度」とは、キャリア121の厚みの最大値と最小値との差である。また、半導体ウエハWに要求される「平坦度」は、例えば、GBIR(Global backside ideal range)で規定される。
【0037】
キャリア121は、吸着部材122の周囲に立設された固定壁121bを有する。固定壁121bは円環状に形成される。固定壁121bは、水平方向の半導体ウエハWの移動を規制する。また、固定壁121bの内周面の直径は、吸着部材122の直径と略同一に形成されている。すなわち、固定壁121bの内側に、吸着部材122が隙間なく嵌まる。また、固定壁121bの外周面の直径は、キャリア121の直径と略同一に形成されている。固定壁121bの高さHWは、吸着部材122の厚さTBより大きい。
【0038】
吸着部材122は、その一方側の面(
図3では上面)がキャリア121に支持され、その他方側の面(
図3では下面)が半導体ウエハWを支持する。換言すれば、吸着部材122は、キャリア121の固定壁121bの内側に収納され、キャリア121と半導体ウエハWとの間に配置される。
【0039】
吸着部材122は、半導体ウエハWと比較して硬度が低い材料で、円板状に形成される。また、吸着部材122は、塑性を有する材料で形成される。すなわち、吸着部材122は、変形自在に形成されている。吸着部材122は、例えば、フェルトとエポキシ樹脂とを含む材料を圧縮して形成される。具体的には、例えば、吸着部材122は、フェルトとエポキシ樹脂とを圧縮して形成される。吸着部材122の直径は、半導体ウエハWの直径と略同一に形成されている。また、吸着部材122の厚さTBと半導体ウエハWの厚さTWとの和は、固定壁121bの高さHWより大きい。換言すれば、半導体ウエハWは、その一部が固定壁121bから突出した状態で、固定壁121b及び吸着部材122に保持される。
【0040】
また、吸着部材122は、半導体ウエハWを取り外し易い形状に形成されている。具体的には、例えば、吸着部材122の直径が半導体ウエハWの直径より所定長さ(例えば、10mm)短くなるように吸着部材122が形成されている。この形態では、半導体ウエハWの外縁部が吸着部材122から突出しているため、半導体ウエハWを吸着部材122から容易に取り外すことができる。
【0041】
次に、
図4を参照して、半導体ウエハ研削装置100によって半導体ウエハWを研削する手順について説明する。
図4は、
図3に示す半導体ウエハ保持具12の分解図である。研削開始前の状態では、真空チャック11は退避位置(上限位置)にある。なお、吸着部材122は、キャリア121に予め装着されている。具体的には、吸着部材122の上面に水等の液体を付着させて、キャリア121の下面に当接するまで、キャリア121の固定壁121bの内側に吸着部材122を挿入する。その結果、吸着部材122の上面と、キャリア121の下面とは、液体を介在して固定される。
【0042】
まず、真空チャック11の吸引を開始する。次に、キャリア121の上面121aに水等の液体を付着させて、真空チャック11のチャック面113aにキャリア121を吸着させる。このようにして、半導体ウエハ保持具12が、真空チャック11に装着される。
【0043】
次に、半導体ウエハWの上面に水等の液体を付着させて、吸着部材122の下面に当接するまで、キャリア121の固定壁121bの内側に半導体ウエハW挿入する。半導体ウエハWの上面と、吸着部材122の下面とは、液体を介在して固定される。このようにして、半導体ウエハWが半導体ウエハ保持具12にセットされる。
【0044】
次に、2つの真空チャック11及び研削ホイール2が回転を開始する。そして、2つの真空チャック11を、研削位置(下限位置)に下降して、半導体ウエハWの被研削面Wa(下面)を研削する。研削が終了すると、2つの真空チャック11を、退避位置(上限位置)に上昇する。そして、2つの真空チャック11及び研削ホイール2の回転を停止する。
【0045】
図2〜
図4を参照して説明したように、キャリア121は、その一方側の面(上面121a)が真空チャック11のチャック面113aに吸着され、その他方側の面(下面)が吸着部材122を支持する。吸着部材122は、その一方側の面(上面)がキャリア121に支持され、その他方側の面(下面)が半導体ウエハWを支持する。また、キャリア121は、半導体ウエハWよりも高硬度且つ高強度を有する材料で円板状に形成されている。吸着部材122は、半導体ウエハWよりも硬度が低い材料で円板状に形成されている。
【0046】
よって、半導体ウエハWの研削片のような異物が、吸着部材122と半導体ウエハWとの間に侵入した場合には、吸着部材122が異物に応じて変形するため、半導体ウエハWがダメージを受けることを抑制できる。したがって、半導体ウエハWを高品位に研削することができる。
【0047】
また、吸着部材122は塑性を有するため、吸着部材122と半導体ウエハWとの間に水のような液体を介在させることによって、半導体ウエハWを吸着部材122に容易に固定することができる。吸着部材122が、半導体ウエハWの吸着部材122側の面に沿うように変形するからである。
【0048】
また、キャリア121が、吸着部材122の周囲に立設された固定壁121bを有するため、固定壁121bによって、半導体ウエハWの水平方向の移動が規制される。したがって、半導体ウエハWを真空チャック11のチャック面113aに強固に固定することができる。
【0049】
更に、キャリア121の一方側の面(上面121a)は、真空チャック11のチャック面113aに吸着され、且つ、粗度が1μmRa以下に形成されている。よって、水のような液体を介在させることによって、キャリア121を真空チャック11のチャック面113aに強固に固定できる。
【0050】
また、キャリア121は、半導体ウエハWの直径に相当する長さ当たりの平坦度が、半導体ウエハWに要求される平坦度以下に形成されている。よって、半導体ウエハWを要求される平坦度に研削することができる。
【0051】
また、吸着部材122は、フェルトとエポキシ樹脂とを圧縮して形成される。よって、塑性を有し、半導体ウエハWよりも硬度が低い吸着部材122を形成することができる。
【0052】
更に、キャリア121の材料は、カーボンファイバーである。よって、半導体ウエハWよりも高硬度且つ高強度を有するキャリア121を形成することができる。
【0053】
また、真空チャック11のチャック面113aに半導体ウエハ保持具12を吸着させ、半導体ウエハ保持具12が半導体ウエハWを保持した状態で、半導体ウエハWの被研削面Waを研削する。よって、半導体ウエハWの研削片のような異物が、吸着部材122と半導体ウエハWとの間に侵入した場合には、吸着部材122が異物に応じて変形するため、半導体ウエハWがダメージを受けることを抑制できる。したがって、半導体ウエハWを高品位に研削することができる。
【0054】
図4を参照して説明したように、キャリア121の上面121aが、水等の液体を介して、真空チャック11のチャック面113aに吸着される。また、吸着部材122の上面と、キャリア121の下面とは、水等の液体を介在して固定される。更に、半導体ウエハWの上面と、吸着部材122の下面とは、水等の液体を介在して固定される。よって、半導体ウエハ保持具12を簡単に真空チャック11に吸着させることができる。また、半導体ウエハWを簡単に半導体ウエハ保持具12に吸着させることができる。したがって、半導体ウエハ研削装置100による半導体ウエハWの研削作業を効率的に行うことができる。
【0055】
<第2実施形態>
次に、
図5及び
図6を参照して、第2実施形態に係る半導体ウエハ保持具14について説明する。
図5は、真空チャック11及び第2実施形態に係る半導体ウエハ保持具14の側面図である。
図6は、第2実施形態に係る半導体ウエハ保持具14の分解図である。
【0056】
第2実施形態に係る半導体ウエハ保持具14は、第1実施形態に係る半導体ウエハ保持具12と比較して、主に下記2点において相違する。
相違点A:キャリアは固定壁を有しない。
相違点B:固定壁が吸着部材に固定される。
以下、半導体ウエハ保持具14の構成のうち、主に半導体ウエハ保持具12と相違する点について説明する。
【0057】
半導体ウエハ保持具14は、キャリア141、吸着部材142、及び、固定壁143を備える。キャリア141は、半導体ウエハWよりも高硬度且つ高強度を有する材料で円板状に形成されている。例えば、キャリア141の材料は、カーボンファイバーである。また、キャリア141は、その一方側の面(
図5では上面141a)が真空チャック11のチャック面113aに吸着される。また、キャリア141は、その他方側の面(
図3では下面)が吸着部材142を支持する。
【0058】
キャリア141の上面141aは、第1実施形態のキャリア121の上面121aと同様に、低粗度に形成されている。また、キャリア141の上面141aは、第1実施形態のキャリア121の上面121aと同様に、高平坦度に形成されている。
【0059】
吸着部材142は、その一方側の面(
図5では上面)がキャリア141に支持され、その他方側(
図5では下面)の面が半導体ウエハWを支持する。また、吸着部材142は、塑性を有し、半導体ウエハWより硬度の低い材料で円形状に形成されている。具体的には、吸着部材142は、第1実施形態の吸着部材122と同様に、フェルトとエポキシ樹脂とを圧縮して形成される。
【0060】
固定壁143は、円環状に形成される。また、固定壁143の材料は、キャリア141の材料と同じカーボンファイバーである。固定壁143は、その一方側の面(
図5では上面)が吸着部材142に支持される。固定壁143は、水平方向の半導体ウエハWの移動を規制する。また、固定壁143の外周面の直径は、吸着部材142の直径と略同一に形成されている。固定壁143の内周面の直径は、半導体ウエハWの直径と略同一に形成されている。固定壁143の厚さT3は、半導体ウエハWの厚さTWより薄い。換言すれば、半導体ウエハWは、その一部が固定壁143から突出した状態で、固定壁143及び吸着部材142に保持される。
【0061】
次に、
図6を参照して、半導体ウエハ研削装置100によって半導体ウエハWを研削する手順について説明する。研削開始前の状態では、真空チャック11は退避位置(上限位置)にある。なお、吸着部材142及び固定壁143は、キャリア141に予め装着されている。具体的には、吸着部材142の上面に水等の液体を付着させて、キャリア141に固定する。吸着部材142の上面と、キャリア141の下面とは、液体を介在して固定される。また、固定壁143の上面に水等の液体を付着させて、吸着部材142に固定する。固定壁143の上面と、吸着部材142の下面とは、液体を介在して固定される。このようにして、吸着部材142及び固定壁143は、キャリア141に装着される。
【0062】
まず、真空チャック11の吸引を開始する。次に、キャリア141の上面141aに水等の液体を付着させて、真空チャック11のチャック面113aに吸着させる。このようにして、半導体ウエハ保持具14が真空チャック11にセットされる。
【0063】
次に、半導体ウエハWの上面に水等の液体を付着させて、吸着部材142の下面に当接するまで、固定壁143の内側に半導体ウエハWを挿入する。半導体ウエハWの上面と、吸着部材142の下面とは、液体を介在して固定される。このようにして、半導体ウエハWが半導体ウエハ保持具14にセットされる。
【0064】
次に、2つの真空チャック11及び研削ホイール2が回転を開始する。そして、2つの真空チャック11を、研削位置(下限位置)に下降して、半導体ウエハWの被研削面Wa(下面)を研削する。研削が終了すると、2つの真空チャック11を、退避位置(上限位置)に上昇する。そして、2つの真空チャック11及び研削ホイール2の回転を停止する。
【0065】
図5及び
図6を参照して説明したように、キャリア141は、その一方側の面(上面141a)が真空チャック11のチャック面113aに吸着され、その他方側の面(下面)が吸着部材142を支持する。吸着部材142は、その一方側の面(上面)がキャリア141に支持され、その他方側の面(下面)が半導体ウエハWを支持する。また、キャリア141は、半導体ウエハWよりも高硬度且つ高強度を有する材料で円板状に形成されている。吸着部材142は、半導体ウエハWよりも硬度が低い材料で円板状に形成されている。
【0066】
よって、半導体ウエハWの研削片のような異物が、吸着部材142と半導体ウエハWとの間に侵入した場合には、吸着部材142が異物に応じて変形するため、半導体ウエハWがダメージを受けることを抑制できる。したがって、半導体ウエハWを高品位に研削することができる。
【0067】
また、半導体ウエハ保持具14は、固定壁143を有する。固定壁143は、吸着部材142の外周部に配置され、半導体ウエハWを固定する。よって、固定壁143によって、半導体ウエハの水平方向の移動が規制される。したがって、半導体ウエハWを強固に固定することができる。
【0068】
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である(例えば、下記に示す(1)〜(3))。図面は、理解し易くするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合がある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の構成から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0069】
(1)
図2を参照して、半導体ウエハ研削装置100が2つのウエハ保持部1を備える形態について説明したが、これに限定されない。例えば、半導体ウエハ研削装置100が3つ以上のウエハ保持部1を備えてもよい。ウエハ保持部1の個数が多い程、研削効率を上げることができる。また、例えば、半導体ウエハ研削装置100が1つのウエハ保持部1を備えてもよい。
【0070】
(2)
図2を参照して、ウエハ保持部1及び研削ホイール2が同じ向きに回転する形態について説明したが、これに限定されない。例えば、研削ホイール2がウエハ保持部1と逆向きに回転する形態でもよい。
【0071】
(3)
図3を参照して、ウエハ保持部1が1枚の半導体ウエハWを保持する形態について説明したが、これに限定されない。例えば、ウエハ保持部1が2枚以上の半導体ウエハWを保持する形態でもよい。