(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6105690
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】ガドリニウムオキシサルファイドセラミックシンチレータの製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 35/50 20060101AFI20170316BHJP
G01T 1/20 20060101ALI20170316BHJP
C09K 11/00 20060101ALI20170316BHJP
C09K 11/84 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
C04B35/50
G01T1/20 B
C09K11/00 E
C09K11/84CPD
【請求項の数】20
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-159730(P2015-159730)
(22)【出願日】2015年8月12日
(65)【公開番号】特開2016-41648(P2016-41648A)
(43)【公開日】2016年3月31日
【審査請求日】2015年8月12日
(31)【優先権主張番号】201410399125.6
(32)【優先日】2014年8月14日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】511031733
【氏名又は名称】チンファ ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】Tsinghua University
(73)【特許権者】
【識別番号】515221794
【氏名又は名称】ヌクテック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ヤンチュン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,チンジュン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ユアンジン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ジーチャン
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ,ジラン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,インオン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ヤオホン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ジャンピン
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ,シュチン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ウェンジャン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ヨンチャン
【審査官】
末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−502716(JP,A)
【文献】
特開昭62−275072(JP,A)
【文献】
特開2001−089762(JP,A)
【文献】
特開昭64−038491(JP,A)
【文献】
特開2000−171563(JP,A)
【文献】
特開平06−201834(JP,A)
【文献】
特開2002−302672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/50−35/505
C04B 35/547
C09K 11/56
C09K 11/77−11/86
G01T 1/20−1/208
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガドリニウムオキシサルファイド(GOS)セラミックシンチレータの製造方法であって、
GOSセラミックシンチレータ粉体に焼結助剤を添加し、均一に混合し、保護雰囲気でボールミルによって前記混合を行い、焼結助剤が添加された、メジアン径が4〜9μmである第1セラミックシンチレータ粉体を得ることと、
焼結助剤が添加されたGOSセラミックシンチレータ粉体を焼結鋳型内に入れ、一軸加圧による一次焼結を行い、GOS焼結体を取得することと、
前記GOS焼結体を焼鈍することと、
焼鈍されたGOS焼結体に対して熱間等方圧加圧による二次焼結を行うことと、
熱間等方圧加圧による二次焼結で得られたGOS焼結体に対して二次焼鈍を行い、GOSセラミックシンチレータを得ることと、
を含み、
前記第1セラミックシンチレータ粉体について、一次焼結の温度は1500℃〜1600℃で、一次焼結の圧力は150〜200MPaである、
製造方法。
【請求項2】
前記第1セラミックシンチレータ粉体について、一次焼結の温度は1520〜1580℃で、一次焼結の圧力は200MPaである
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第1セラミックシンチレータ粉体について、一次焼結の温度は1550℃で、一次焼結の圧力は200MPaである
請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
ガドリニウムオキシサルファイド(GOS)セラミックシンチレータの製造方法であって、
GOSセラミックシンチレータ粉体に焼結助剤を添加し、均一に混合し、保護雰囲気でボールミルによって前記混合を行い、ボールミルで混合粉体を更に微細化することで、焼結助剤が添加された、メジアン径が0.2〜4μmである第2セラミックシンチレータ粉体を得ることと、
焼結助剤が添加されたGOSセラミックシンチレータ粉体を焼結鋳型内に入れ、一軸加圧による一次焼結を行い、GOS焼結体を取得することと、
前記GOS焼結体を焼鈍することと、
焼鈍されたGOS焼結体に対して熱間等方圧加圧による二次焼結を行うことと、
熱間等方圧加圧による二次焼結で得られたGOS焼結体に対して二次焼鈍を行い、GOSセラミックシンチレータを得ることと、
を含み、
前記第2セラミックシンチレータ粉体について、一次焼結の温度は1250〜1400℃で、一次焼結の圧力は50〜150MPaである、
製造方法。
【請求項5】
前記第2セラミックシンチレータ粉体のメジアン径は1〜3μmである
請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記第2セラミックシンチレータ粉体について、一次焼結の温度は1300℃であり、一次焼結の圧力は60MPaである、
請求項4または5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記焼結助剤は、添加量が前記GOSセラミックシンチレータ粉体の0.02〜1質量%であるLiF又はLi2GeF6である、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記焼結助剤の添加量は、前記GOSセラミックシンチレータ粉体の0.1〜1質量%である
請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記一軸加圧による一次焼結は、
20〜40MPaにまで予め加圧して、1000℃〜1100℃に徐々に昇温し、且つ0.5〜1時間保温することと、
続けて1250℃〜1600℃に昇温すると同時に、40〜200MPaに昇圧し、2〜5時間保温して、熱間加圧による一次焼結を行って、GOS焼結体を取得することと、を含む、
請求項1〜8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記焼鈍は、GOS焼結体を1000℃〜1200℃の温度範囲で焼鈍処理することを含む、
請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記熱間等方圧加圧による二次焼結では、焼鈍されたGOS焼結体に対して、1300℃〜1500℃で、150〜250MPaの不活性ガス雰囲気において、熱間等方圧加圧による二次焼結を行うことを含む、
請求項1〜10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
二次焼鈍は、熱間等方圧加圧による焼結で得られたGOS焼結体を1000℃〜1200℃の温度範囲で焼鈍処理することを含む、
請求項1〜11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記焼結鋳型は、アイソスタティックグラファイト材鋳型又は炭素繊維複合材鋳型である、
請求項1〜12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記一軸加圧鋳型内にBNセラミックライナーを嵌め、圧縮軸方向におけるGOSセラミックシンチレータ粉体に接触する一面にBNセラミック板を敷いた後にグラファイト紙を敷く、
請求項1〜13のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項15】
一軸加圧による一次焼結で得られたGOS焼結体の相対的理論密度は93%以上に達する、
請求項1〜14のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項16】
前記GOSセラミックシンチレータ粉体は純度が99.999%で、メジアン径が5〜9μmのGd2O2S:Pr,Ceセラミックシンチレータ粉体である、
請求項1〜15のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項17】
前記保護雰囲気は無水エタノール及び/または不活性ガスの保護である
請求項1〜16のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項18】
前記保護雰囲気はアルゴンガスの保護である
請求項1〜16のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項19】
2mm厚さのGOSセラミックシンチレータのサンプルの511nmの波長における積分の透過率は、30%に達するGOSセラミックシンチレータ。
【請求項20】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の製造方法でGOSセラミックシンチレータを製造する工程を含む
電離放射線検出器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料製造プロセスに関し、より具体的には、ガドリニウムオキシサルファイド(GOS、一般式Gd
2O
2Sを有する)セラミックシンチレータの製造方法に関する。
【0002】
また、本発明は、本発明の方法で製造されたGOSセラミックシンチレータ及びGOSセラミックシンチレータを有する電離放射線検出器に関する。
【背景技術】
【0003】
希土類イオンがドープされたGOS(化学式Gd
2O
2S)セラミックシンチレータは、従来のCsI、CdWO
4などのシンチレーション単結晶よりも、密度が高く、光収率が高く、化学的性質が安定で、製造プロセスが相対的に簡単で、加工時に裂開がないなどの利点を同時に兼ねるため、X線CT、高速X線スキャナー、物品セキュリティ検査機などの放射検査装置又は検出器の理想的な、総合的性能が最も優れたシンチレータ材料となる。Pr及び/又はCeイオンをドーピングしたGOSセラミックシンチレータは極めて低い残光があり、CT放射検出器の理想的なシンチレータとなる。
【0004】
GOSセラミックシンチレータの製造方法は、一般的に熱間等方圧加圧の製造方法と一軸加圧方法がある。熱間等方圧加圧の製造方法は、シンチレータ粉体を直接に真空条件で金属容器内に密封して、そして金属容器をガス圧力炉内に置いて熱間等方圧加圧による焼結を行い、パッケージプロセスに対する要求は非常に高い。一軸加圧方法は、通常、高い界面活性を有させるために、シンチレータ粉体の粒度が小さいという要求があり、また、粉末の界面活性が少なくともBET 10m
2/gに達する要求がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、取得しやすい市販のGd
2O
2Sシンチレータ粉体でGOSセラミックシンチレータを製造する、容易且つ信頼できる方法を提供する。本発明は、GOSセラミックシンチレータの焼結過程を二段階に分けて行い、即ち一軸加圧による焼結方法で閉鎖空間を有する一次焼結体を製造することと、不活性ガスでの熱間等方圧加圧による焼結方法で高密度の二次焼結体を製造して、二次焼結体を処理した後にGOSセラミックシンチレータを取得することと、を含む。
【課題を解決するための手段】
【0006】
具体的には、本発明の一態様において、GOSセラミックシンチレータの製造方法を提供し、当該方法は、
1)GOSセラミックシンチレータ粉体に焼結助剤を添加し、均一に混合するステップと、
2)焼結助剤が添加されたGOSセラミックシンチレータ粉体を焼結鋳型内に入れ、一軸加圧による一次焼結を行い、GOS焼結体を得るステップと、
3) GOS焼結体を焼鈍処理するステップと、
4)焼鈍されたGOS焼結体に対して熱間等方圧加圧による二次焼結を行うステップと、
5)熱間等方圧加圧による二次焼結で得られたGOS焼結体を二次焼鈍して、GOSセラミックシンチレータを得るステップと、を含む。
【0007】
本発明の他の態様において、本発明の方法によって得られたGOSセラミックシンチレータを提供する。
【0008】
本発明の他の態様において、本発明の方法によって得られたGOSセラミックシンチレータを有する電離放射線検出器を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例にかかるGOSセラミックシンチレータを製造する製造方法を示すフローチャートである。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例にかかる熱間加圧一次焼結装置を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例にかかるGOS熱間加圧一次焼結体の結晶粒子と気孔を示す微視的な構造の模式図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施例にかかる熱間等方圧加圧による二次焼結を示す模式図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施例にかかるGOS熱間等方圧加圧による二次焼結体の結晶粒子と気孔を示す微視的な模式図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施例にかかるGOS熱間等方圧加圧による二次焼結体の内部構造を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は本発明の一実施例にかかるGOSセラミックシンチレータの製造方法を示す。
図1に示すように、該方法1000は、
GOSセラミックシンチレータ粉体に焼結助剤を添加し、均一に混合するステップS1001と、
焼結助剤が添加されたGOSセラミックシンチレータ粉体を焼結鋳型内に入れ、一軸加圧による一次焼結を行い、GOS焼結体を得るステップS1002と、
GOS焼結体を焼鈍するステップS1003と、
焼鈍されたGOS焼結体に対して熱間等方圧加圧による二次焼結を行うステップS1004と、
熱間等方圧加圧焼結で得られたGOS焼結体を二次焼鈍して、GOSセラミックシンチレータを得るステップS1005と、を含む。
2種のプロセスを組み合わせることによって、既存の熱間等方圧加圧技術の複雑な粉末シール工程に対する要求や、真空熱間加圧技術の高反応性粉末に対する要求を回避するため、コストを大幅に低減させる。そして、本発明の方法によって製造されたセラミックシンチレータは高い相対密度を有し、内部結晶粒子が微細であり、加工性が良好である。
以下、本発明におけるGOSセラミックシンチレータの製造方法1000をより詳しく説明する。方法1000は以下のステップを含む。
1) メジアン径が5〜9μmであるGd
2O
2S:Pr,Ceセラミックシンチレータ粉体に焼結助剤を添加する。好ましくは、前記粉体は市販のもので、その純度は99.995%以上で、好ましくは99.999%以上で、さらに好ましくは、Prイオンのドーピング量は質量含有量で500〜800ppmであり、Ceイオンのドーピング量は質量含有量で10〜50ppmである。また、好ましくは、前記焼結助剤はLiF及び/又はLi
2GeF
6であり、焼結助剤の添加量は0.02〜1質量%であり、好ましくはセラミックシンチレータ粉体の0.1〜1質量%である。混合粉末をボールミルで粉砕して、均一に混合し、任意選択的に微細化し、焼結助剤を含有する粉体を得る。好ましくは、遊星ボールミルに前記ボールミル粉砕を行う。さらに好ましくは、ボールミル粉砕過程に粉体をMOS純粋な無水エタノール及び/又は不活性ガス(アルゴンガスが好ましい)保護雰囲気に浸入し、ボールミル粉砕過程にGOS粉末の表面が酸化されないようにする。好ましくは、短時間(0.5〜3時間)にボールミル粉砕で混合が行われた、メジアン径が4〜9μmである第1粉体、及び長時間(4〜12時間)にボールミル粉砕で微細化された、メジアン径が0.2〜4μmであり、好ましくは1〜3μmである第2粉体という2種の焼結助剤を含有する粉体のうちのいずれか一方を取得することができる。
【0011】
ボールミルの1つの主な役割は粉体の微細化である。微粒径の粉体を取得するために、化学研磨階段を制御させ、微粉を取得するケースがあるが、その収率が低く、コストが高い。本発明は、焼結前にボールミル粉砕を行う方法を用いるため、コストが低く、収率が高く、また、高純度エタノール及び/又は不活性ガスの保護によって、ある程度に酸化の発生を減少することができる。
【0012】
好ましくは、ボールミル粉砕の後に、スラリーをろ過して、真空オーブンにて真空乾燥する。研磨、篩い分けを行う。真空オーブン内に保存しておく。
【0013】
2)ボールミル粉砕により混合した粉体を焼結鋳型に入れる。ホットストーブ内に入れて20〜40MPa、好ましくは25〜35MPa、最も好ましくは約30MPaに予め加圧して、徐々に1000℃〜1100℃にまで昇温し、0.5〜1hに保温することによって、表面の気孔の速い閉鎖のため内部ガスの排出に不利であることを回避する。続いて1250℃〜1600℃まで昇温すると同時に、40〜200MPaにまで昇圧する。好ましくは、第1粉体について、温度は1500℃〜1600℃で、好ましくは1520〜1580℃であり、最も好ましくは1550℃であり、圧力は、好ましくは150〜200MPaであり、最も好ましくは200MPaである。第2粉体について、温度は、好ましくは1250〜1400℃であり、より好ましくは1300℃であり、圧力は、好ましくは50〜150MPaであり、より好ましくは60MPaである。2〜5hに保温して、一軸加圧による一次焼結を行う。2〜10℃/minで、好ましくは4〜7℃/minで、最も好ましくは5℃/minの速度で降温して冷却した後にGOS焼結体を取得する。
【0014】
3) GOS焼結体を1000℃〜1200℃の温度範囲で、好ましくはマッフル炉の中で、焼鈍処理を行い、1300℃〜1500℃、150〜250MPaで、好ましくは180〜220MPaであり、より好ましくは200MPaであるアルゴンガス雰囲気の中で熱間等方圧加圧による二次焼結を行う。二次焼結体を焼鈍して、好ましくは1000℃〜1200℃の温度範囲で、より好ましくはマッフル炉の中で空気焼鈍処理を行う。得られたGOSセラミックの粗粉砕、微粉砕、切断、研磨を行って、GOSセラミックシンチレータを取得する。
【0015】
本発明におけるGOSセラミックシンチレータを製造する方法において、一次焼結により得られた緻密な構造に対して熱間等方圧加圧による二次焼結を行うことで、従来の熱間等方圧加圧焼結方法におけるGOS粉末金属シース真空シール工程がなくてもよく、技術的難易度を低下させる。適切なボールミル粉砕混合及び微細化で粉体を処理することで、従来の熱間加圧焼結方法における高比表面積活性、微粒径の粉体製造技術、及び高圧力の熱間加圧焼結プロセスの必要もなくなる。本方法の二階段焼結法により、熱間加圧焼結の温度、昇温速度、保温時間、圧力などのプロセスパラメータを制御することで、大きな粒径の市販GOS粉体から特性が優れた透明のGOSセラミックシンチレータを製造して得る。技術的難易度と製造コストを低下させ、GOSセラミックシンチレータの応用範囲の拡大、例えば従来の医療用放射イメージング分野から、より低いコストを求めるセキュリティチェック放射イメージング分野まで拡張する大規模応用に有利である。
【0016】
以下、より多くの図面を参照して、本発明のいくつかの主要なステップをより詳しく説明する。
【0017】
GOS粉体の処理
純度が99.999%で、メジアン径が5〜9μmである市販Gd
2O
2S:Pr,Ceシンチレータ粉体を用いて、0.02〜1%の質量比でLiF又はLi
2GeF
6焼結助剤を添加して、徹底的に洗浄されたポリウレタン研削ボールタンクの中に置き、研磨された高密度イットリアを加えてジルコニア研削ボールを安定させ、直径が10mm、6mm、3mmである大・中・小のボールを1:3:10の質量比率で調製し、ボール:粉末材料の質量比は(3〜10):1であり、ボールミル粉砕過程において粉体をMOS純粋な無水エタノール及び/又は不活性ガス(アルゴンガスが好ましい)の保護雰囲気の中に浸入し、ボールミル粉砕過程にGOS粉体の表面が酸化されないようにする。短時間(0.5〜3時間)にボールミル粉砕による混合が行われた、メジアン径が4〜9μmである第1粉体、及び長時間(4〜36時間)にボールミル粉砕による微細化が行われた、メジアン径が0.2〜4μmで、好ましくは1〜3μmである第2粉体という2種の粒径分布がある、焼結助剤が添加された粉体を得る。焼結助剤の含有量はシンチレータ粉体の0.02〜質量1%であり、好ましくは0.1〜1%質量比であり、焼結助剤の含有量が少なく過ぎると、セラミックを緻密化させる役割を十分に果たせず、含有量が多く過ぎると、第二相を形成して、光散乱中心を形成し、セラミックの光透過率の向上に不利である。
【0018】
GOSセラミックシンチレータの焼結
図2は本発明の一実施例にかかる熱間加圧による一次焼結の装置を示す模式図である。
図2に示しているように、混合後の焼結助剤が添加された粉体100を焼結鋳型101〜103に投入し、次に熱間加圧炉内に入れ、熱間加圧炉を20〜40MPaまで予め加圧し、熱間加圧炉発熱体110により徐々に1000℃〜1100℃に昇温し、0.5〜1h保温し、続いて1250℃〜1600℃に昇温する同時に、上圧子111、下圧子112により軸方向圧力(圧力が40〜200MPaである)を印加し、2〜5h保温し、熱間加圧による一次焼結を行って、2〜10℃/minの速度で降温して冷却した後に、GOS焼結体を得る。
【0019】
熱間加圧による焼結に用いられた温度はできるだけ低い必要があり、焼結温度が高く、結晶粒子の成長が速く過ぎると、結晶粒子が太くて結晶粒界が粗大であり、最終のセラミックが脆くて硬く、加工の際に破裂しやすく、表面仕上げは高くない。また、温度が高いほど、鋳型材料の拡散が強くなり、GOSセラミックにもたらす汚染も深刻になる。高い熱間加圧圧力は一次焼結体の密度の向上に有利であり、熱間加圧の圧力が40MPaより小さい場合に、密閉気孔を形成しにくく、ガスの熱間等方圧加圧による二次焼結によって緻密度を向上することができず、熱間加圧の圧力が200MPaより大きい場合に、熱間加圧の鋳型材料は耐えきれない。
【0020】
上記の条件を実現するために、焼結鋳型は、耐圧が60MPaで、コストが低いアイソスタティックグラファイト材鋳型、および耐圧が200MPaに達し、コストが高い炭素繊維複合材という2種の材料を選択することができる。型抜きを容易にするために、粉体と鋳型の間にグラファイト紙を敷き及び/又は窒化ホウ素離型剤をスプレーする。炭素によるセラミックシンチレータへの汚染の拡散を減少するために、熱間加圧鋳型内にBN(窒化ホウ素)セラミックライナー107を嵌め込み、圧力軸方向におけるシンチレータ粉体に接触する一面にBNセラミック板105を敷いた後に、グラファイト紙を敷き、そしてグラファイト又は炭素繊維複合材料の圧縮棒を取り付ける。
【0021】
熱間加圧による一次焼結の温度は、焼結体の密閉気孔の形成の条件を満たすことを前提として、できるだけ低いことで、セラミック焼結が繰り上げて終わり、気孔が全部セラミック結晶粒子の内部に密閉されることを避け、結晶粒子が過度に成長して最終のセラミック体が脆化し、微細サイズ(例えば1.39mm×3mm×1.5mm、間隔0.18mm)のシンチレータアレイに加工しにくいことを避ける。
【0022】
熱間加圧による一次焼結が行われたGOS焼結体は、相対密度が既に約93〜99%に達し、内部に少量の気孔が存在し、
図3に示すように、気孔203が主に結晶粒界202に存在している。結晶粒子201の内部に少量の気孔204も存在する。
【0023】
GOS焼結体を800℃〜1200℃の温度範囲においてマッフル炉の中で焼鈍処理し、その後、GOSセラミック焼結体を直接に熱間等方圧加圧炉に投入して熱間等方圧加圧による二次焼結を行い、1300℃〜1500℃で、150〜250MPaの不活性ガス(例えばアルゴンガス、窒素)雰囲気の中で2〜5時間の保温と保圧をし、そして徐々に降温する。後述するように、焼鈍後にGOSセラミックの最終焼結体が得られ、該焼結体内部の気孔が大幅に減少された。熱間等方圧加圧による二次焼結の温度の設定は非常に重要であり、温度が1300℃より低いと、最終セラミック体の緻密化が完全ではなく、光透過率が高くなく、温度が1500℃より高いと、セラミック結晶粒子を異常に成長させ、結晶粒界が粗大且つ弱いであり、後期のシンチレータアレイ加工を行うことが難しい。
【0024】
図4は一実施例にかかる熱間等方圧加圧による二次焼結の模式図を示す。熱間等方圧加圧による二次焼結の効率が非常に高く、一回の操作で数個のGOS一次焼結体301を直接に熱間等方圧加圧炉内に置くことができ、熱間等方圧加圧炉は、発熱体302により加熱され、内部に高圧の不活性ガス303が注がれる。不活性ガスの圧力がGOS一次焼結体の外表面に均一に印加される。熱間等方圧加圧による二次焼結が行われた後のGOSセラミックの内部密度を更に向上させ、
図5の模式図に示されるように、本来に結晶粒界402にある気孔403及び結晶粒子401内部の気孔404が圧縮されて基本的に消して、或いは元の体積の十数分の一から数十分の一に減少されたため、可視光に対する散乱に有利である。
【0025】
二次焼結されたGOSセラミック焼結体は
図6の模式図に示され、一般的に、表面には0.5〜2mm厚さの不透明層502があり、一次焼結体の密度が低いほど、不透明層が厚くなる。不透明層の形成の原因は以下のとおり。二次等方圧加圧による焼結を行う際に、不活性ガスは高圧の下で、一次焼結体による表面の完全に密閉されない結晶粒界又は空気焼鈍の際に形成した酸化層内に滲み込み、熱間等方圧加圧による二次焼結を行う際に、一部の元の密閉された結晶粒界は不活性ガスの高圧の下で割れ目が発生し、不活性ガスは結晶粒界の割れ目に沿ってセラミック体内に滲み込んで気孔を形成してしまい。不活性ガスが徐々に深く滲み込むに伴って、その圧力が次第に減少し、約0.5〜2mmになった後、結晶粒界の割れ目が徐々に消し、内部には低気孔率、高緻密度のGOSセラミックシンチレータ501がある。表面の不透明層502を切断して、研削して、内部セラミック体501は99.7%以上の相対密度を有する。良好な可視光透過率を有する。得られたGOSセラミックブロックを切断、粗粉砕、微粉砕、研磨して、GOSセラミックシンチレータを得る。
【0026】
二次焼結の際にGOSセラミックの緻密度を効果的に増加するため、密閉された気孔を形成するように、熱間加圧による一次焼結の焼結体の相対的理論密度を93%以上に達させなければならない。好ましくはその相対的理論密度が95%以上に達し、さらに好ましくは相対的理論密度が97.5%以上に達する。また一次焼結の結晶粒子が過度に成長して二次焼結する際にセラミックの緻密化成長に不利であるのを避けるために、一次焼結時の温度が高すぎないように制御する必要がある。また、低い熱間加圧焼結の温度は炭素汚染の拡散の低減に有利である。即ち、対応する粉末活性と圧力条件で、一次熱間加圧による焼結の温度は、焼結により密閉気孔を形成することができる最低温度要求に達し、かつ温度ができるだけ低い必要がある。1〜9μm粒径のGOS粉体に対して、圧力が50〜250MPaである場合、真空熱間加圧による一次焼結の温度は1250〜1600℃である。温度が1600℃より高いと、焼結が過度であり、密度が99.9%に達するが、炭素汚染の拡散が深刻で光透過性が悪く、且つ結晶粒子が過度に成長して粗大になり、セラミック体が非常に脆くて、後続のシンチレータアレイ加工が困難である。
【0027】
以下、具体的な実施例によって本発明を説明する。これらの実施例は説明するためのものだけであり、本発明をこれに制限されるものではないことが明らかである。
【0028】
実施例1〜5
純度が99.999%で、粒径がd(0.1):4.0μm、d(0.5):6.8μm、d(0.9):10.1μmである市販Gd
2O
2S:Pr,Ceセラミックシンチレータ粉体100gを量り、0.2gのLi
2GeF
6焼結助剤を添加して、アルゴンガスタンクの中に内径100mm、高さ100mmのポリウレタンボールミル粉砕タンクを入れ、500gの所定の粒度分布がある高密度イットリア強化ジルコニア研削ボールを加え、300mLのMOS純粋な無水エタノールを加え、遊星ボールミルに置いて、500回転/分の速度で、1時間にボールミルによる混合を行い、正/逆方向に0.5時間の間隔で動作する。
【0029】
ポリウレタンボールミル粉砕タンク及びジルコニア研削ボールを予め洗浄処理を行う必要があり、具体的な方法は以下の通り。500gの高密度イットリア強化ジルコニア研削ボール(直径10mmのもの:35g、6mmのもの:105g、3mmのもの:360g)をボールミル粉砕タンク内に投入し、50gのGOS粉末、500mLの無水エタノールをそれぞれ添加し、遊星ボールミルに35時間ボールミル粉砕を行う。次に、ボールミル粉砕タンク内の液体スラリーを流れ出させ、MOS純粋な無水エタノールを加え、ボールミル粉砕を一回繰り返す。その後、MOS純粋な無水エタノールで研削ボール及びボールミル粉砕タンクを三回洗浄する。上記の予め洗浄処理により、ジルコニア研削ボール表面に落ちやすい不純物を洗浄することができる。また、長時間なボールミル粉砕は、ジルコニア研削ボール表面の緩い組織をできるだけ除去し、緻密で牢固な研削ボール組織を残すことができる。ボールミル粉砕の不純物の汚染の低減に有利である。
【0030】
ボールミル粉砕して得られた粉末の粒径分布はd(0.1):3.5μm, d(0.5):6.4μm、d(0.9):10μmである。
【0031】
ボールミル粉砕で得られたGOS粉体原料を内径50mmのグラファイト鋳型内に入れ、真空熱間加圧による一次焼結を行う。焼結温度はそれぞれ1450〜1650℃で(後述の表1を参照し、各実施例ごとに50℃の相違がある)、圧力が60MPaで、真空度が5×10―
2Paで、2時間に保温と保圧する。保温が終わった後、降温プログラムが実行され、降温速度が5℃/分であり、室温にまで完全に冷却され後に、焼結体であるGOS一次焼結体が取り出される。
【0032】
GOS一次焼結体表面に付着されたBN及びグラファイト不純物を掻き取った後、一次焼結体をマッフル炉内に置き、空気雰囲気において1000℃で2時間焼鈍する。炉に伴って冷却した後に、焼鈍後の焼結体を取り出し、そして熱間等方圧加圧炉内に置いて二次焼結する。具体的には、熱間等方圧加圧炉は1400℃まで徐々に昇温し、アルゴンガスを圧力が200MPaとなるように注入し、2時間保温保圧して焼結する。焼結炉が徐々に降温した後に、サンプルを取り出し、GOSセラミック二次焼結体を取得する。二次焼結体をマッフル炉内に置いて空気雰囲気の中において1000℃で2時間に焼鈍する。サンプルを粗粉砕、微粉砕、研磨し、GOS:Pr,Ce,Fセラミックシンチレータを得る。
【0033】
実施例6、7
実施例1〜5と同様な方法でセラミックシンチレータ粉体と焼結助剤のボールミル粉砕混合を行い、粒径分布が同様な粉体原料を取得する。粉体原料を内径50mmの炭素繊維複合材鋳型内に入れ、真空の熱間加圧による一次焼結を行う。焼結温度がそれぞれ1500と1550℃であり、圧力が200MPaで、真空度が5×10―
2Paである状態、2時間に保温と保圧する。保温が終わった後に、降温プロセスが実行されており、降温速度は5℃/分のであり、室温にまで完全に冷却された後に、焼結体であるGOS一次焼結体が取り出される。実施例6、7のサンプルに対して実施例1〜5と同様な焼鈍及び熱間等方圧加圧の方法で二次焼結及び後処理が行われ、GOS:Pr,Ce,Fセラミックシンチレータが得られる。
【0034】
実施例8〜11
純度が99.999%で、粒径がd(0.1):4.0μm, d(0.5):6.8μm、d(0.9):11.8μmである市販Gd
2O
2S:Pr,Ceセラミックシンチレータ粉体100gを量り、0.2gのLiF焼結助剤を添加して、実施例1〜5と同様な操作方法で遊星ボールミルに置いて、500回転/分の速度で、7時間ボールミル粉砕混合により微細化し、正/逆方向に0.5時間の間隔で動作する。混合して得られた粉末の粒径分布はd(0.1):1.1μm、d(0.5):2.1μm、d(0.9):3.8μmである。
【0035】
ボールミル粉砕による混合で微細化したGOS粉体原料を内径50mmのグラファイト鋳型内に入れ、真空熱間加圧による一次焼結を行う。温度がそれぞれ1200〜1400℃で、熱間加圧圧力が60MPaに達し、真空度が5×10
-2Paである状態、2時間に保温と保圧する。保温が終わった後、降温プログラム画実行され、降温速度が5℃/分であり、室温にまで完全に冷却され後に、焼結体が取り出される。
【0036】
実施例1〜5と同様な焼鈍及び熱間等方圧加圧の方法を用いて二次焼結及び後処理を行い、GOS:Pr,Ce,Fセラミックシンチレータを取得する。
【0037】
実施例12
実施例8〜11と同様な方法でセラミックシンチレータ粉体と焼結助剤のボールミル粉砕混合を行い、同様な粒径分布の粉体原料を得る。粉体原料を内径50mmの炭素繊維複合材の鋳型内に入れ、真空熱間加圧による一次焼結を行う。温度が1300℃で、圧力が200MPaで、真空度が5×10
-2Paである状態、2時間に保温と保圧する。保温が終わった後、降温プロセスが実行され、降温速度が5℃/分であり、室温にまで完全に冷却された後に、焼結体であるGOS一次焼結体を取り出す。実施例12に対して実施例1〜5と同様な焼鈍及び熱間等方圧加圧の方法を用いて二次焼結及び後処理を行い、GOS:Pr,Ce,Fセラミックシンチレータを取得する。
【0038】
上記の実施例1〜12の焼結パラメータ及び得られたセラミックシンチレータの最終製品の特性を示す。
【表1】
【0039】
表1に示されるように、番号8のサンプルは、焼結温度と焼結圧力がいずれも低いため、焼結が不十分であり、相対密度が低く、可視光透過率が低く、番号5のサンプルは、一次焼結温度が高く過ぎて、更に二次焼結を経て、その内部結晶粒子が過度に成長し、加工時に脆化する。その他のパラメータ条件で製造されたGOSセラミックシンチレータは可視光波長帯でいずれも優れた透過特性を有する。2mm厚さのセラミック板は500〜520nm範囲での積分の透過率が30〜35%であり、且つ良好な加工特性を有する。
【0040】
本発明のGOSセラミックシンチレータは、電離放射、例えばX線、γ線、及び電子ビームなどの検出器(例えば固体シンチレーション検出器)のシンチレータ素子の検出に適用でき、特にシンチレータが低残光を有する要求があるX線コンピュータ断層撮影装置(X―CT)及び/又はX線荷物スキャナーに適合する。
【0041】
本発明の製造方法のコストが低いため、製造したシンチレータは、特にセキュリティチェック用のX線コンピュータ断層撮影装置又はX線荷物スキャナーに適合する。
【0042】
該発明のセラミックシンチレータは良好な特性を有し、医療画像分野におけるX-CT検出器にも適用できる。