特許第6105704号(P6105704)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コネ コーポレイションの特許一覧

特許6105704インタフェースユニットと搬送システムおよび方法
<>
  • 特許6105704-インタフェースユニットと搬送システムおよび方法 図000002
  • 特許6105704-インタフェースユニットと搬送システムおよび方法 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6105704
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】インタフェースユニットと搬送システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20170316BHJP
   B66B 5/02 20060101ALI20170316BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   B66B5/00 G
   B66B5/02 S
   B66B3/00 R
   B66B3/00 U
【請求項の数】22
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-219217(P2015-219217)
(22)【出願日】2015年11月9日
(62)【分割の表示】特願2013-543843(P2013-543843)の分割
【原出願日】2011年12月8日
(65)【公開番号】特開2016-41631(P2016-41631A)
(43)【公開日】2016年3月31日
【審査請求日】2015年11月16日
(31)【優先権主張番号】20106319
(32)【優先日】2010年12月14日
(33)【優先権主張国】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】591159044
【氏名又は名称】コネ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】KONE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100079991
【弁理士】
【氏名又は名称】香取 孝雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153453
【弁理士】
【氏名又は名称】北島 弘崇
(74)【代理人】
【識別番号】100134061
【弁理士】
【氏名又は名称】菊地 公一
(72)【発明者】
【氏名】カッタイネン、 アリ
(72)【発明者】
【氏名】ホビ、 アンッティ
【審査官】 今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/048498(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/049467(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/090470(WO,A1)
【文献】 特開2010−095342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00 − 5/28
B66B 3/00 − 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送システムの安全を判断する信号の入力回路を含む該搬送システムの安全回路に対するインタフェースユニットにおいて、
該インタフェースユニットは、前記入力回路の作動状態を試験する手段を含み、
インタフェースユニットは、前記試験する手段が前記入力回路の障害を検出すると、前記搬送システムの次の運行を中止する運行モードに該搬送システムのソフトウェアを切り換える制御命令を該搬送システムの制御ユニットへ送り、
該インタフェースユニットはさらに、前記搬送システムの安全を判断する信号を切断する手段を含み、該信号は前記搬送システムのセーフティ・クリティカル特性を測定するセンサで形成され、前記搬送システムの安全を判断する信号を切断する手段は、前記搬送システムのセーフティ・クリティカル特性を測定するセンサの給電を切断するように構成され、
該インタフェースユニットは、前記搬送システムのセーフティ・クリティカル特性を測定するセンサの給電が切断されたときに前記入力回路の作動状態を判断するように構成されていることを特徴とするインタフェースユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のインタフェースユニットにおいて、該インタフェースユニットは、前記試験する手段が前記入力回路の障害を検出すると、該搬送システムの安全ブレーカを開いて該搬送システムの駆動装置への給電を遮断することを特徴とするインタフェースユニット。
【請求項3】
請求項1に記載のインタフェースユニットにおいて、該インタフェースユニットは、前記試験する手段が前記入力回路の障害を検出すると、該搬送システムの駆動装置の機械的ブレーキを作動させることを特徴とするインタフェースユニット。
【請求項4】
請求項1ないしのいずれかに記載のインタフェースユニットにおいて、該インタフェースユニットは、前記入力回路に試験信号を供給する手段含むことを特徴とするインタフェースユニット。
【請求項5】
請求項に記載のインタフェースユニットにおいて、前記インタフェースユニットは、前記搬送システムの安全を判断する信号が切断されているとき、前記入力回路に試験信号を供給するように構成されていることを特徴とするインタフェースユニット。
【請求項6】
請求項1ないしのいずれかに記載のインタフェースユニットにおいて、該インタフェースユニットは、前記搬送システムの安全回路の通信バスにメッセージを送る通信回路を含むことを特徴とするインタフェースユニット。
【請求項7】
請求項1ないしのいずれかに記載のインタフェースユニットにおいて、前記入力回路は、該入力回路に届く信号の信号経路を二重化するノードを含むことを特徴とするインタフェースユニット。
【請求項8】
請求項に記載のインタフェースユニットにおいて、該インタフェースユニットは、2つの信号処理要素を含み、前記二重化された信号経路の第1番目が第1の信号処理要素につながり、第2番目が第2の信号処理要素につながっていることを特徴とするインタフェースユニット。
【請求項9】
請求項またはに記載のインタフェースユニットにおいて、該インタフェースユニットは、第1の試験信号を前記二重化された信号経路の第1番目に、また第2の試験信号を二重化された信号経路の第2番目に供給するように構成されていることを特徴とするインタフェースユニット。
【請求項10】
請求項に記載のインタフェースユニットにおいて、該インタフェースユニットは、試験信号を前記二重化された信号経路の両方に順に供給するように構成されていることを特徴とするインタフェースユニット。
【請求項11】
請求項ないし10のいずれかに記載のインタフェースユニットにおいて、前記インタフェースユニットは、前記二重化された信号経路の第1番目に供給された第1の試験信号が該二重化された信号経路の第2番目で許容されるより大きい変化を起こしたとき、前記入力回路が障害状況にあると判断するように構成されていることを特徴とするインタフェースユニット。
【請求項12】
請求項ないし11のいずれかに記載のインタフェースユニットにおいて、前記インタフェースユニットは、前記二重化された信号経路の第1番目に供給された第1の試験信号が該二重化された信号経路の第1番目で許容されるより小さい変化を起こしたとき、前記入力回路が障害状況にあると判断するように構成されていることを特徴とするインタフェースユニット。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれかに記載のインタフェースユニットにおいて、前記入力回路は、前記搬送システムの安全を判断する2つまたはそれ以上の信号への接続を含み、
該インタフェースユニットは、前記入力回路に届くそれぞれ異なる信号の信号経路の作動状態を順に判断するように構成されていることを特徴とするインタフェースユニット。
【請求項14】
請求項13に記載のインタフェースユニットにおいて、前記インタフェースユニットは、前記搬送システムの安全を判断する前記入力回路に届くすべての信号が切断されていると、該入力回路の作動状態を判断するように構成されていることを特徴とするインタフェースユニット。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれかに記載のインタフェースユニットにおいて、安全スイッチおよび/または安全スイッチの直列回路が前記入力回路に接続されていることを特徴とするインタフェースユニット。
【請求項16】
請求項1ないし15のいずれかに記載の搬送システムの安全回路に対するインタフェースユニットを含むことを特徴とする搬送システム。
【請求項17】
搬送システムの入力回路の作動状態をモニタリングする方法において、該方法は、該入力回路の作動状態を該入力回路に接続して設置された手段によりモニタし、
前記手段が前記入力回路の障害を検出すると、前記搬送システムの次の運行を中止する運行モードに該搬送システムのソフトウェアを切り換える制御命令を該搬送システムの制御ユニットへ送り、
前記入力回路に供給され前記搬送システムの安全を判断する信号を、前記搬送システムのセーフティ・クリティカル特性を測定するセンサの給電を切断することによって切断し、
前記搬送システムのセーフティ・クリティカル特性を測定するセンサの給電を切断したとき、前記入力回路の作動状態を判断することを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、該方法は、前記手段が前記入力回路の障害を検出すると、該搬送システムの安全ブレーカを開いて該搬送システムの駆動装置への給電を遮断することを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法において、該方法は、前記手段が前記入力回路の障害を検出すると、該搬送システムの駆動装置の機械的ブレーキを作動させることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項17ないし19のいずれかに記載の方法において、前記搬送システムの安全を判断する信号が切断したとき、試験信号を前記入力回路に供給することを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法において、
届いた信号の信号経路を前記入力回路において二重化し、
該二重化した信号経路の両方に試験信号を順に供給することを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項17ないし21のいずれかに記載の方法において、安全スイッチおよび/または安全スイッチの直列回路を前記入力回路に接続することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送システムの安全回路の作動状態の試験に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送システム、特にエレベータの安全回路に関する設計指示および設計規則は、とりわけ、マイクロプロッセサ技術やソフトウェア技術の進歩の結果、変化し続けている。新しい設計指示および設計規則の結果として、マイクロプロッセサ制御およびデータバスアーキテクチャに基づく電子安全回路が設計される。たとえば、エレベータの作動を測定するセンサの多くは、同じデータバスに接続することができ、エレベータの作動は、そのデータバスに接続された遠隔電子監視ユニットによってモニタすることができる。
【0003】
エレベータの安全回路の目的は、すべての作動状況においてエレベータの安全作動を確実にすることにある。またこれに関連して、マイクロプロセッサ制御の監視ユニット、データバス、センサ、測定ケーブル、その他もろもろの電子安全回路の多くの基本素子に対して、改定版EN81では少なくともSIL2もしくはSIL3の安全度水準のエレベータ水準が求められる。適切な安全水準を達成するために、前述の基本素子は、しばしば二重にしなければならない。その一方、二重にすることは必要とする部品、回路および配線の量を増加させることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回路や配線が増加しさらに複雑になると、接続ミス、配線ミス、配線への誤った電圧接続等のリスクも増加する。接続される装置に対する動作電圧は、しばしば信号線と同じケーブルで送られる。導体の絶縁破壊はショートや信号線への動作電圧接続を引きおこすことがある。前述の理由で、とりわけ、従来技術よりも簡略でより信頼性のある電子安全回路が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、電子安全回路を簡略化するという問題点を、特に電子安全回路の診断法の改良で改善することである。この目的を達成するために、本発明は、請求項1に記載されたインタフェースユニットと、請求項16に記載された搬送システムと、また請求項17に記載された方法とを開示している。本発明の望ましい実施形態は、従属請求項に開示する。
【0006】
搬送システムの安全回路に関する本発明によるインタフェースユニットは、搬送システムの安全を判定する信号のための入力回路を含む。さらにこのインタフェースユニットは、前述の入力回路の作動状況の試験手段を含む。本発明によるインタフェースユニットは、電子インタフェースユニットが好ましい。本発明による入力回路の作動状態のモニタリングによれば、たとえば、入力回路に対する安全スイッチまたは同様の部品および/またはこれらの部品のデータ転送経路を二重化する必要なくして、当該部品の安全度水準SIL3への対応が可能となる。
【0007】
本発明の好ましい実施形態において、インタフェースユニットは、入力回路に供給され搬送システムの安全を判断する信号を切断する手段を含む。インタフェースユニットは、搬送システムの安全を判断する前述の信号が切断されているときに入力回路の作動状況を判断するよう設定されている。結局、搬送システムの安全を判断する信号における信号/信号の変化が作動状況のモニタリングに影響を与えることなく、入力回路の作動状況をモニタすることができる。
【0008】
本発明の好ましい実施形態において、搬送システムの安全を判断する信号は、搬送システムのセーフティ・クリティカル特性を測定するセンサで形成され、センサは、最も好ましくは入力回路に接続された安全スイッチもしくは安全スイッチの直列回路である。搬送システムの安全を判断する信号を切断する手段は、この場合、センサ、最も好ましくは安全スイッチもしくは安全スイッチの直列回路への給電を切断するように設定され、前述の搬送システムのセーフティ・クリティカル特性を測定する。
【0009】
本発明の好ましい実施形態において、インタフェースユニットは、入力回路に試験信号を供給する手段を含む。このインタフェースユニットは、搬送システムの安全を判断する信号が切断されているとき入力回路に試験信号を供給するよう設定されている。
【0010】
いくつかの実施形態において、インタフェースユニットは、搬送システムの安全回路の通信バスへメッセージを送る通信回路を含む。結局、インタフェースユニットでは、搬送システムの安全を判断する信号によって示された搬送システムの作動状況についての情報を通信バス内の一つまたはそれ以上のノードに向けて送ることができ、そのことが搬送システムの、特に搬送システムの安全に関する診断法を改善する。
【0011】
本発明の好ましい実施形態において、入力回路は、入力回路に届いた信号の信号経路を診断するためのノードを含む。いくつかの実施形態において、インタフェースユニットは、2つの信号処理要素を含み、前述の二重化された信号経路の1番目が第1の信号処理要素につながり、2番目が第2の信号処理要素につながる。本発明のいくつかの実施形態において、前述の第1および第2の信号処理要素はマイクロプロッセサを含む。インタフェースユニットは、好ましくはこの場合メモリを含み、さらに好ましくは各マイクロプロッセサにそれぞれのメモリを含み、そのメモリに実行すべきプログラムが格納される。二重化信号経路は、入力回路の冗長度を増加させ、その結果入力回路の信頼性が改善する。また同時に、入力回路の状態のモニタリングも改善できる。
【0012】
本発明の好ましい実施形態において、第1の試験信号を二重化された信号経路の第1番目に、また第2の試験信号を二重化された信号経路の第2番目に供給するようインタフェースユニットを設定する。本発明の最も好ましい実施形態において、試験信号を二重化された信号経路の両方に順に供給するようインタフェースユニットを設定する。二重化された信号経路の第1番目に供給された第1の試験信号がこの場合二重化された信号経路の第2番目に許容されるより大きい変化が生じると、入力回路が障害状態にあり、また逆の場合は反対に判断するようインタフェースユニットを設定する。さらに、二重化された信号経路の第1番目に供給された第1の試験信号が二重化された信号経路の第1番目に許容されるより小さい変化が生じると、入力回路が障害状態にあり、また逆の場合は反対に判断するようインタフェースユニットを設定する。両方の二重化信号経路を順に試験することにより、各試験結果を比較して両信号経路の作動状況を確認することができる。
【0013】
本発明の好ましい実施形態において、入力回路は、搬送システムの安全を判断する2つまたはそれ以上の信号に対する接続部を含み、インタフェースユニットは、接続回路に届くそれぞれの異なった信号の信号経路の作動状態を順に判断するよう設定されている。このタイプの試験シーケンスにより、入力回路のすべてのチャネルの作動状態が集中的にかつ基本的に同時に判断でき、試験の信頼性が改善され、たとえば試験結果での環境要因の影響等が減少する。
【0014】
本発明の好ましい実施形態において、インタフェースユニットは、搬送システムの安全を判断する入力回路に届くすべての信号が切断されているとき、入力回路の作動状態を判断するよう設定する。
【0015】
また本発明は、搬送システムにも関係し、これは、搬送システムの安全回路に対して上記で示した一つまたはいくつかの実施形態によるインタフェースユニットを含む。
【0016】
また本発明は、搬送システムでの入力回路の作動状態をモニタリングする方法にも関係する。本発明による方法によれば、入力回路の作動状態は入力回路に関連して設けた手段でモニタされる。
【0017】
本発明の好ましい実施形態において、搬送システムの安全を判断する信号が切断されているとき、入力回路に供給されるべき信号、すなわち搬送システムの安全を判断する信号は切断され、そして入力回路の作動状態が判断される。上述の入力回路に供給されるべき信号は、最も好ましくは、搬送システムのセーフティ・クリティカル特性を測定するセンサへの給電を切断することにより切断される。
【0018】
本発明の好ましい実施形態において、搬送システムの安全を判断する前述の信号が切断されているとき、試験信号が入力回路に供給される。
【0019】
本発明の最も好ましい実施形態において、届いた信号の信号経路は、入力回路で二重化され、二重化された信号経路の両方に順に試験信号が供給される。
【0020】
本発明の最も好ましい実施形態において、安全スイッチおよび/または安全スイッチの直列回路は、入力回路に接続されている。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態において、接続デバイスの入力回路が障害となったことが検出されると、障害についての情報が通信バスを経由してエレベータの安全回路の電子監視ユニットに送られる。通信バスから不良情報を受信すると、電子監視ユニットは制御命令を形成し、エレベータシステムのソフトウェアをエレベータの次の走行を中止する運行モードに切り換える。走行を中止するために、電子制御ユニットは、エレベータの安全ブレーカも制御し、エレベータの巻上機への電流供給を切断し、また機械的ブレーキの電磁石への電流供給を止めることにより巻上機の機械的ブレーキを作動させる。電子監視ユニットは、本発明に提示したやり方で自身の入力回路での不良状態を検出したときもまた、上述の手順を実行する。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態において、観測された入力回路の障害についての情報は、データ転送リンクを経由してサービスセンタに送られる。このようにして、特にエレベータの遠隔操作/遠隔モニタリングに関して、エレベータの診断法を改善させることができる。上述のデータ転送リンクは、たとえばインターネット接続もしくはそれに相当する有線接続で可能であり、またデータ転送リンクは、たとえば、GSM接続での、もしくはそれに相当する電磁波に基づくデータ転送接続での無線でも実現され得る。
【0023】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、搬送システムの安全を判断する信号の二重化ノードに2つの抵抗が接続され、ノードから出た二重化信号の第1の二重化信号経路は第1の抵抗を経由し、第2の二重化信号経路は第2の抵抗を経由する。この後、第1の信号経路が第1の信号処理要素につながり、また第2の信号経路が第2の信号処理要素につながるように、二重化信号経路の両方がインタフェースユニットの信号処理要素につながっている。本発明のいくつかの好ましい実施形態において、第1のプルダウン抵抗が前述の第1の抵抗と第1の信号処理要素との間の信号経路において、また第2のプルダウン抵抗が前述の第2の抵抗と第2の信号処理要素との間の信号経路において接続されている。さらに、第1のプルアップ抵抗が、前述の第1の抵抗と第1の信号処理要素との間の信号経路において接続され、このプルアップ抵抗は、制御可能なスイッチで正の信号電圧に接続され、スイッチを閉じることにより、正の信号電圧から試験信号が信号経路に供給されて前述の二重化された信号経路を試験できる。第2のプルアップ抵抗が前述の第2の抵抗と第2の信号処理要素との間の信号経路において再度接続され、このプルアップ抵抗は第2の制御可能なスイッチで正の信号電圧に接続され、スイッチを閉じることにより、正の信号電圧から試験信号が信号経路に供給されて前述の二重化された信号経路を試験できる。
【0024】
本発明による搬送システムは、たとえばエレベータシステム、エスカレータシステム、もしくは動く歩道システムが可能である。用語エレベータシステムは特に、カウンタウェイト有り、または無しの乗客/荷物を垂直方向に運搬することを意図したエレベータシステムを言う。
【発明の効果】
【0025】
本発明により、入力回路/インタフェースユニットの信頼性は、入力回路の監視/診断の改良により改善することができる。この理由で、たとえば確実な安全スイッチ/安全スイッチの直列回路を入力回路に接続することも可能である。このタイプの安全スイッチで、安全スイッチ/ケーブル布設を二重化することなくSIL3安全水準が達成でき、そのため本発明による安全スイッチおよびインタフェースユニットの組合せで搬送システムの安全回路が簡素化される。
【0026】
上述した概要は、以下に提示される本発明のさらなる特徴および利点とともに、本発明のいくつかの実施形態についての以下の記載からより良く理解されるが、この記載は、本願発明の適用分野を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明による1つのエレベータの安全回路を表すブロック図である。
図2】本発明による入力回路の一部分を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1によるエレベータの安全回路において、インタフェースユニット1は、通信バス10に接続されている。さらにノード17も、通信バス10に接続され、そのノードによりインタフェースユニット1は、通信回路9を使用し通信バス10を経由して通信する。図1のインタフェースユニット1の大きさは発明を説明するためにノード17に対して誇張されている。本発明のこの実施形態において、インタフェースユニット1はまた、エレベータの安全回路の電子監視ユニットとして機能し、このユニットは、ノード17に接続されたセンサから通信バス10を経由してデータを受信し、もし必要ならば、エレベータの安全ブレーカ18を制御する。安全ブレーカ18はリレーであり、その接点はリレーの制御コイルへの給電が止まると開く。安全ブレーカ18のリレー接点はエレベータの安全回路に接続され、安全ブレーカ18のリレー接点が開くとエレベータのエレベータかごを駆動する巻上機(図1には示さず)の機械的ブレーキの電磁石への給電が止まり、機械的ブレーキが作動する。また、これに関連して巻上機の電気モータへの電流供給が切断される。インタフェースユニット1は、エレベータの安全が危険にさらされたと検知すると、安全ブレーカ18のリレー接点を開くように制御する。
【0029】
インタフェースユニット1は、エレベータのセーフティ・クリティカル特性を測定するセンサ7a、7b、7c、8の測定信号3a、3bのための入力回路2を含む。本発明のこの実施形態において、エレベータのセーフティ・クリティカル特性を測定するセンサ7a、7b、7c、8は、強制開離安全スイッチであり、これはエレベータ基準EN-81による安全水準SIL3を満たすものである。結局、これらの安全スイッチは二重化せずに、たとえばエレベータ昇降路への入口の状態/施錠をモニタリングするため、またエレベー昇降路の終端領域の安全空間をモニタリングするために使用できる。
【0030】
図1によれば、エレベータ昇降路への様々な入口の状態/施錠をモニタリングする安全スイッチ7a、7b、7cは、互いに直列に接続され、スイッチの直列回路は、インタフェースユニット1の入力回路2へとつながっている。またスイッチの直列回路は、インタフェースユニット1からその動作電圧を受ける。さらに図1において、エレベータの過速度調速機の作動状態を判断する安全スイッチ8が別途、インタフェースユニット1の入力回路2につながっている。これに関して、入力回路2に接続されたセンサ/安全スイッチ7a、7b、7c、8は、図1に示すものとは別のやり方を選ぶこともできることを記しておく。さらに、図1によれば、通信バス10に接続されたノード17のうちの1つまたはそれ以上は入力回路2を含んでよく、この場合、そのノードに接続された安全スイッチは本発明によるやり方で入力回路を経由して検出できるものとする。
【0031】
様々な数のノード17を通信バス10に接続させることができ、1つのノードはエレベータかごに(図1には示さず)、好ましくは、エレベータかごの屋根に取り付けることができ、その場合に、エレベータ昇降路でのエレベータの位置を測定するセンサと、エレベータかごのドアの位置を測定するセンサ(図1には示さず)とをそのノードに接続できる。1つのノードは、エレベータ昇降路に取り付けることができ(図1には示さず)、エレベータ昇降路の終端近くにおけるエレベータかごの動きの許容限界を決めるセンサ(図1には示さず)、終端緩衝器その他の作動状態を決めるセンサなどの機械的安全装置をそのノードに取り付けることができる。
【0032】
図1によれば、過速度調速機の安全スイッチ8とエレベータ昇降路への入口の状態/施錠をモニタリングする安全スイッチ7a、7b、7cの直列回路への給電は、直流電圧電流電源19から制御可能スイッチ6を経由してインタフェースユニット1から行なわれる。安全スイッチ7a、7b、7c、8の状態を読むと、スイッチ6は閉じられ、その場合に直流電源19の電圧は安全スイッチ7a、7b、7c、8を経由してインタフェースユニット1の入力回路2に逆流する。入力回路2は、プルダウン抵抗13a、13bを含み、安全スイッチ7a、7b、7c、8を経由して流れる信号3a、3bの信号経路は、この抵抗を通って直流電流電圧電源19の負電圧に接続する。プルダウン抵抗13a、13bにかかる電圧は、インタフェースユニット1のマイクロコントローラ16a、16bによって検出される。安全スイッチ7a、7b、7c、8は強制開離スイッチで、たとえばエレベータ昇降路のドアが開かれたときには安全スイッチ7a、7b、7cは開放となる。安全スイッチ7a、7b、7c、8が閉じると、入力回路2のプルダウン抵抗13a、13bに電圧が現われる。安全スイッチ7a、7b、7c、8の1つが開放されると、プルダウン抵抗13a、13bの端子間電圧は0となる。結局、プルダウン抵抗にかかる電圧を読むことにより安全スイッチ/安全スイッチの直列回路の状態は推測できる。
【0033】
1つの問題は、安全スイッチ7a、7b、7c、8の状態を電子インタフェースユニット1/ノード17で読み取るとき、安全スイッチの状態を読み取るインタフェースユニット1/ノード17は適切な基準にも合致しなければならないことである。そうでないと、誤って判断された安全スイッチの状態はエレベータのユーザに対して危険を引きおこすかもしれない。たとえば、入力回路2のプルダウン抵抗13a、13bが1つでも故障すると、安全スイッチ7a、7b、7c、8の開放が気付かれない結果となり、その結果エレベータの危険な状態が認識されないままになるかもしれない。この問題を解決するために、図1のインタフェースユニット1は、入力回路2の作動状態を試験するための手段4a、4b、5a、5b、6を備えている。次に入力回路2の作動状態の試験過程をより詳細に記述する。これに関して、図2は、たとえば図1の実施形態に適用可能な、インタフェースユニット1の入力回路2の1つの接続をより詳しく表している。
【0034】
図2によれば、エレベータ昇降路への入口の状態/施錠をモニタリングする安全回路の直列回路7a、7b、7cの測定信号3aは、直列抵抗16を経由して入力回路2に伝えられる。直列抵抗16のあと信号3aの信号経路は、ノード12において抵抗11a、11bにより二重化され、ノード12を出る二重化された信号経路の第1番目15aが第1の抵抗11aを経由し、ノード12を出る二重化された信号経路の第2番目15bが第2の抵抗11bを経由している。インタフェースユニット1は、ノード12から出た二重化された信号経路がつながる2つのマイクロプロッセサ16a、16bを含み、二重化された信号経路の第1番目15aが第1のマイクロプロッセサ16aにつながり、二重化された信号経路の第2番目15bが第2のマイクロプロッセサ16bにつながる。両方の二重化された信号経路15a、15bは、ノード12に接続された抵抗11a、11bとマイクロプロセッサとの間にプルアップ抵抗5a、5bおよびプルダウン抵抗13a、13bを含む。さらに、マイクロプロッセサ16a、16bの前の信号経路15a、15bにも、別々の直列抵抗14a、14bがある。プルアップ抵抗5a、5bは、二重化された信号経路15a、15bへ試験信号を供給するトランジスタ4a、4bによりの信号電圧20に接続されている。
【0035】
また、入力回路2は、エレベータ昇降路への入口の状態/施錠をモニタリングする安全回路の直列回路7a、7b、7cの測定信号3a用と同じように、過速度調速機の安全スイッチ8の測定信号3bと同様の回路を含む。もっとも、過速度調速機の安全スイッチ8の測定信号のインタフェースは回路図を簡素化するために図2からは省略されている。したがって、過速度調速機の安全スイッチ8の測定信号3bは入力回路2につながり、第1のマイクロプロッセサ16aが安全スイッチ8の信号3bの二重化された信号経路の第1番目15aを検出し、第2のマイクロプロッセサ16bが安全スイッチ8の信号3bの二重化された信号経路の第2番目15bを検出するようになっている。
【0036】
入力回路2の作動状態の試験シーケンスは、次のように進められる。試験シーケンスの開始において第1のマイクロプロッセサ16aは、スイッチ6を開放に制御し、その場合、直流電源19から安全スイッチの直列回路7a、7b、7cへの給電を切断する。給電が切断され、したがって安全スイッチの直列回路7a、7b、7cの測定信号3aも切断された後、マイクロプロッセサ16a、16bは二重化された信号経路の信号電圧を検出する。二重化された信号経路の1つまたはそれ以上の信号経路の電圧がこの場合論理「1」レベルに相当している場合には、入力回路2が障害であると推測される。このマイクロプロッセサ16aがトランジスタ4aを導通となるように制御した後、この場合試験信号が信号電圧20からプルアップ抵抗5aを経由して二重化された信号経路の第1番目15aに供給される。第1のマイクロプロッセサ16aは、当該二重化された信号経路の第1番目15aから電圧を検出する。もし入力回路2の当該信号経路15aが正常であれば、マイクロプロッセサは論理「1」レベルに相当する電圧を検出する。また同時に、第2のマイクロプロッセサ16bは、二重化された信号経路の第2番目15bから同じ信号の電圧を検出する。当該信号経路15bが正常であれば、第2のマイクロプロッセサ16は論理「0」レベルに相当する電圧を検出する。また、入力回路2の二重化された信号経路の残りのものについて、入力回路が正常な状態であるなら、この場合、論理「0」電圧信号が検出される。また第1および第2のマイクロプロッセサ16a、16bは、互いに試験結果を比較し、もし試験結果が許容される内容と違った場合、すなわち、第1のマイクロプロッセサ16aが論理「0」電圧レベルを検出し、そして/または第2のマイクロプロッセサ16bが論理「1」レベルを検出した場合、入力回路が障害であると推測される。
【0037】
この後、第1のマイクロプロッセサ16aがトランジスタ4aを非導通となるように制御し第2のマイクロプロッセサ16bがトランジスタ4bを導通となるように制御し、このとき試験信号が信号電圧20からプルアップ抵抗5bを経由して二重化された信号経路の第2番目15bへ供給される。第2のマイクロプロッセサ16bは当該二重化された信号経路の第2番目15bから電圧を検出する。もし第2の入力回路の当該信号経路が正常ならば、第2のマイクロプロッセサは論理「1」レベルに相当する電圧を検出する。また同時に、第1のマイクロプロッセサ16aは二重化された信号経路の第1番目15aから同じ信号の電圧を検出する。当該信号経路15aが正常であれば、第1のマイクロプロッセサ16aは論理「0」レベルに相当する電圧を検出する。また、入力回路2の二重化された信号経路の残りのものについて、入力回路が正常な状態であるなら、この場合、論理「0」電圧信号が検出される。また第1および第2のマイクロプロッセサ16a、16bは、互いに試験結果を比較し、もし試験結果が許容される内容と違った場合、すなわち、第2のマイクロプロッセサ16bが論理「0」電圧レベルを検出し、そして/または第1のマイクロプロッセサ16aが論理「1」レベルを検出した場合、入力回路は障害であると推測される。
【0038】
この後、第1および第2のマイクロプロッセサ16a、16bは、過速度調速機の安全スイッチ8の測定信号3bの二重化された信号経路の回路を同じようにして試験する。
【0039】
さらに、第1のマイクロプロッセサ16aが二重化された信号経路の第1番目15aのすべてのトランジスタ4aを同時に導通となるように制御する試験が行われる。この場合、論理「1」電圧レベルは、各二重化された信号経路の第1番目15aから検出されるべきで、論理「0」電圧レベルは、各二重化された信号経路の第2番目15bから検出されるべきである。そうでなければ、入力回路2が障害であると推測される。この後、第2のマイクロプロッセサ16bが二重化された信号経路の第2番目15bのすべてのトランジスタ4bを同時に導通となるように制御することによって同様なやり方で試験が行われる。
【0040】
また、安全回路の正常作動している間、第1および第2のマイクロプロッセサ16a、16bは、同じ信号3a、3bの二重化された信号経路15a、15bを比較する。もしこの場合同じ信号の二重化された信号経路から検出された信号レベルが互いに異なっていれば、入力回路が障害であると推測される。
【0041】
入力回路2が障害であると推測すると、インタフェースユニット1(これはエレベータの安全回路における電子監視ユニットでもある)は、通信バス10を経由してエレベータ制御ユニットへ制御命令を送信し、エレベータシステムのソフトウェアをエレベータの次の走行を中止する運行モードに切り換える。走行を中止するために、インタフェースユニット1はエレベータの安全ブレーカも制御し、エレベータの巻上機への電流供給を切断し、また図1の実施形態に示したやり方で巻上機の機械的ブレーキを作動させる。
【0042】
本発明は、上記のように実施形態の少しの例を挙げて記載されている。本発明が上記の実施形態のみに限定されず、請求の範囲で定義される発明概念の範囲内において、他の多くの応用が可能であることは、当業者にとって明らかである。
【符号の説明】
【0043】
1 インタフェースユニット
2 入力回路
3a、3b 安全を判断する信号
4a、4b、5a、5b、6 試験する手段
7a、7b、7c、8 センサ
図1
図2