(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A) 5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンから選択される少なくとも一種以上のポリチオールと、
(B)m−キシリレンジイソシアネート、2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートから選択される少なくとも一種以上のポリイソシアネートと、
(C)2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−クロロベンゾトリアゾールからなる紫外線吸収剤と、
を含む、光学材料用重合性組成物。
【背景技術】
【0002】
プラスチックレンズは、無機レンズに比べ、軽量で割れ難く、染色が可能なため、眼鏡レンズ、カメラレンズ等の光学素子に急速に普及してきている。これまでに様々なレンズ用樹脂が開発され使用されており、その中でも代表的な例として、ポリイソシアネートとチオール化合物を含む重合性組成物から得られるチオウレタン系成形体が挙げられる。チオウレタン系成形体は、高屈折、低分散、耐衝撃性等に優れた光学材料の一つである(特許文献1〜4)。
【0003】
一方、従来から、眼が波長380〜400nmの紫外線に曝露することによる悪影響が、問題視されている。さらに、近年、自然光、オフィス機器の液晶ディスプレイや、スマートフォンまたは携帯電話等の携帯機器のディスプレイ等からの発光に含まれる波長420nm程度の青色光により、眼の疲れや痛みを感じるなど、眼への影響が問題となってきており、眼が、紫外線から420nm程度の青色光に曝露する量を低減させることが望まれてきている。
【0004】
波長420nm程度の青色光の眼への影響については、非特許文献1に記載されている。非特許文献1では、411nmと470nmのピーク波長の異なる青色LED光の照射による網膜神経細胞(ラットの培養網膜神経R28細胞)へのダメージを検証している。その結果、411nmにピーク波長を有する青色光の照射(4.5W/m
2)は24時間以内に網膜神経細胞の細胞死を引き起こすのに対し、470nmにピーク波長を有する青色光では、同じ量の照射でも細胞に変化は起こらないことが示されている。つまり、波長400〜420nmの青色光の暴露を抑えることが目の障害予防に重要であることが示されている。
また、長い間、眼に青色光の照射を浴びることは、眼精疲労やストレスを受けることが懸念されており、加齢黄斑変性を引き起こす要因と考えられている(非特許文献1)。
特許文献5〜7には、ベンゾトリアゾール系化合物等の紫外線吸収剤を含むプラスチックレンズが開示されている。
【0005】
プラスチックレンズを構成するチオウレタン系成形体は、ポリイソシアネートとチオール化合物を主成分とする重合性組成物を硬化して得られ、従来から種々のチオール化合物が提案されている。特許文献8、9には、チオール化合物とポリイソシアネートを用いることにより高屈折率、低分散のチオウレタン系成形体が得られることが記載されている。
当該文献には、チオール化合物として、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン(以下、ポリチオールBという)や、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン(ポリチオールA1)、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン(ポリチオールA2)、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンを含むチオール化合物(ポリチオールA3)(以下、ポリチオールA1、A2、A3単独または2種以上の混合物をポリチオールAという)等が、挙げられている。
【0006】
ポリチオールAとポリイソシアネートとから得られるチオウレタン系成形体は、ポリチオールBと同一のポリイソシアネートとから得られるチオウレタン系成形体と比較すると、その屈折率、アッベ数等の光学的な物性は、ほぼ同一値を示している(特許文献9)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の光学材料用重合性組成物を実施の形態により説明する。
<光学材料用重合性組成物>
本実施形態の光学材料用重合性組成物は、
(A)5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンから選択される少なくとも一種のポリチオールと、
(B)ポリイソシアネートと、
(C)極大吸収ピークが350nm以上370nm以下の範囲である1種以上の紫外線吸収剤と、を含む。
【0014】
本実施形態の光学材料用重合性組成物について、具体例を用いて説明するが、本発明は以下の例示化合物に限定されるものではない。また例示化合物を単独で用いてもよいし、複数組み合わせて用いてもよい。
【0015】
[ポリチオール(A)]
ポリチオール(A)は、 5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンから選択される少なくとも一種以上含む化合物である。
ポリチオール(A)は、公知公用の方法で製造することができる。たとえば、国際公開第2007/129450号パンフレット実施例5記載の方法で製造することができる。
【0016】
本実施形態において、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリチオール(A)以外のチオール化合物(以下、その他のチオール化合物)を含んでいてもよい。
ポリチオール(A)以外のチオール化合物としては、例えば、脂肪族チオール化合物、芳香族チオール化合物等が挙げられる。
【0017】
脂肪族チオール化合物としては、例えば、メタンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,2−シクロヘキサンジチオール、3,4−ジメトキシブタン−1,2−ジチオール、2−メチルシクロヘキサン−2,3−ジチオール、1,2−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,3−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2−メルカプトエチルチオ)メタン、1,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)エタン、1,3−ビス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,3−ビス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(3−メルカプトプロピルチオ)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアン、2−(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)−1,3−ジチエタン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2−メルカプトエチルチオメチル)メタン、ビス(2,3−ジメルカプトプロピル)スルフィド、2,5−ジメルカプト−1,4−ジチアン、エチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコール(2−メルカプトアセテート)、ジエチレングリコール(3−メルカプトプロピオネート)、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール(3−メルカプトプロピオネート)、3−メルカプト−1,2−プロパンジオールビス(2−メルカプトアセテート)、3−メルカプト−1,2−プロパンジオールジ(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパン(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、グリセリントリス(2−メルカプトアセテート)、グリセリントリス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−シクロヘキサンジオールビス(2−メルカプトアセテート)、1,4−シクロヘキサンジオールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルスルフィド(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルスルフィド(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチルジスルフィド(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルジスルフィド(3−メルカプトプロピオネート)、チオグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン等が挙げられる。
【0018】
芳香族チオール化合物としては、例えば、1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,2−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3−トリメルカプトベンゼン、1,2,4−トリメルカプトベンゼン、1,3,5−トリメルカプトベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、2,5−トルエンジチオール、3,4−トルエンジチオール、1,4−ナフタレンジチオール、1,5−ナフタレンジチオール、2,6−ナフタレンジチオール、2,7−ナフタレンジチオール、1,2,3,4−テトラメルカプトベンゼン、1,2,3,5−テトラメルカプトベンゼン、1,2,4,5−テトラメルカプトベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトエチル)ベンゼン、2,2'−ジメルカプトビフェニル、4,4'−ジメルカプトビフェニル等が挙げられる。
【0019】
これら例示化合物のうち、脂肪族チオール化合物、エステル結合を含む脂肪族チオール化合物が好ましく、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアン、2−(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)−1,3−ジチエタン、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)がより好ましく、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)が特に好ましい。
【0020】
[ポリイソシアネート(B)]
ポリイソシアネート(B)は、分子内に少なくとも2つ以上のイソシアナト基を有する化合物である。分子内に硫黄原子等を含んでいてもよい。ポリイソシアネート(B)は、二量体、三量体、プレポリマーであってもよい。
【0021】
本実施形態におけるポリイソシアネート(B)としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物、含硫脂肪族ポリイソシアネート化合物、含硫芳香族ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0022】
脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2−ジメチルペンタンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカトリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、ビス(イソシアナトエチル)カーボネート、ビス(イソシアナトエチル)エーテル等が挙げられる。
【0023】
脂環族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、1,2−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ビス(4−イソシアナトシクロへキシル)メタン、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、2,2−ビス(4−イソシアナトシクロへキシル)プロパン、2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、3,8−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、3,9−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、4,8−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、4,9−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン等が挙げられる。
【0024】
芳香族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、o−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトエチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトプロピル)ベンゼン、ビス(イソシアナトメチル)ナフタレン、ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、ベンゼントリイソシアネート、4,4'− ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0025】
含硫脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ビス(イソシアナトエチル)スルフィド、ビス(イソシアナトプロピル)スルフィド、ビス(イソシアナトメチル)スルホン、ビス(イソシアナトメチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトプロピル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトメチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトメチルチオ)エタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)エタン、1,5−ジイソシアナト−2−イソシアナトメチル−3−チアペンタン等が挙げられる。
【0026】
含硫芳香族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ビス(3−イソシアナトフェニル)スルフィド、ビス(4−イソシアナトフェニル)スルフィド、ビス(3−イソシアナトメチルフェニル)スルフィド、ビス(4−イソシアナトメチルフェニル)スルフィド、ビス(3−イソシアナトメチルベンジル)スルフィド、ビス(4−イソシアナトメチルベンジル)スルフィド、ビス(3−イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(4−イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(3−イソシアナトメチルフェニル)ジスルフィド、ビス(4−イソシアナトメチルフェニル)ジスルフィド等が挙げられる。
【0027】
これら例示化合物のうち、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物が好ましい。
具体的には、m−キシリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4'− ジフェニルメタンジイソシアネート、2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビス(4−イソシアナトシクロへキシル)メタン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが好ましく、
m−キシリレンジイソシアネート、2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートがより好ましく、
2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが特に好ましい。
【0028】
[紫外線吸収剤(C)]
紫外線吸収剤(C)は、クロロホルム溶液に溶解させた際の極大吸収波長が350nm以上370nm以下に極大吸収波長を有するものであれば特に限定されない。
【0029】
紫外線吸収剤(C)としては、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、を挙げることができる。
ベンゾフェノン系化合物としては、2,2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、2,2'−4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン等が挙げられる。
トリアジン化合物としては、ADEKA社製アデカスタブLA-F70、BASF社製TINUVIN400等が挙げられる。
【0030】
本実施形態においては、ベンゾトリアゾール系化合物を用いることが好ましく、ベンゾトリアゾール系化合物としては、直鎖アルキルエステル付加ベンゾトリアゾール系化合物、クロロ置換ベンゾトリアゾール系化合物等が挙げられる。
これらのうちでも、クロロ置換ベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。より好ましくは2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−クロロベンゾトリアゾールが挙げられ、市販品として、BASF社製TINUVIN326、シプロ化成社製SEESEORB703、共同薬品社製Viosorb550、ケミプロ化成社製KEMISORB73等が挙げられる。紫外線吸収剤(C)が、クロロ置換ベンゾトリアゾール系化合物から選択された一種であることにより、波長420nm程度の青色光の透過をより効率的に抑制することができ、有害光の目への影響が軽減され眼精疲労やストレスなどの障害が抑制された光学材料を得ることができる。
【0031】
本実施形態において、紫外線吸収剤(C)としては、これら紫外線吸収剤の1種以上を用いることが好ましく、異なる2種以上の紫外線吸収剤(C)を含有してもよい。なお、紫外線吸収剤(C)を構成する何れの紫外線吸収剤も、極大吸収ピークが350nm以上370nm以下の範囲にある。
本実施形態において、紫外線吸収剤(C)以外に、極大吸収波長が350nm以上370nm以下の範囲に含まれない化合物を併用してもよい
【0032】
紫外線吸収剤(C)は、光学材料用重合性組成物100重量%中に、0.1〜1.5重量%、好ましくは0.3〜1.3重量%、より好ましくは0.4〜1.2重量%含むことができる。前記範囲内で効率的に、波長420nm程度の青色光の透過を抑制することができる。
なお、本実施形態において他の添加成分の量は少量であるため、光学材料用重合性組成物100重量%は、「ポリチオール(A)とポリイソシアネート(B)と紫外線吸収剤(C)との合計100重量%」、または「ポリチオール(A)とその他のチオール化合物とポリイソシアネート(B)と紫外線吸収剤(C)との合計100重量%」とすることもできる。
【0033】
本実施形態において、ポリイソシアネートにおけるイソシアナト基に対する、チオール化合物におけるメルカプト基のモル比率は0.8〜1.2の範囲内であり、好ましくは0.85〜1.15の範囲内であり、さらに好ましくは0.9〜1.1の範囲内である。上記範囲内で、光学材料、特に眼鏡用プラスチックレンズ材料として好適に使用される樹脂を得ることができる。
【0034】
(その他成分)
本実施形態の光学材料用重合性組成物は、さらに、その他の成分として、重合触媒、内部離型剤、樹脂改質剤、光安定剤、ブルーイング剤等を含んでいてもよい。
【0035】
(触媒)
触媒としては、ルイス酸、アミン、有機酸、アミン有機酸塩等が挙げられ、ルイス酸、アミン、アミン有機酸塩が好ましく、ジメチル錫クロライド、ジブチル錫クロライド、ジブチル錫ラウレートがより好ましい。
【0036】
(内部離型剤)
内部離型剤としては、酸性リン酸エステルを用いることができる。酸性リン酸エステルとしては、リン酸モノエステル、リン酸ジエステルを挙げることができ、それぞれ単独または2種類以上混合して使用することできる。
例えば、STEPAN社製のZelecUN、三井化学社製のMR用内部離型剤、城北化学工業社製のJPシリーズ、東邦化学工業社製のフォスファノールシリーズ、大八化学工業社製のAP、DPシリーズ等、を用いることができる。
【0037】
(樹脂改質剤)
本実施形態の光学材料用重合性組成物には、得られる樹脂の光学物性、耐衝撃性、比重等の諸物性の調節及び、重合性組成物の取扱い性の調整を目的に、樹脂改質剤を本発明の効果を損なわない範囲で加えることができる。
【0038】
樹脂改質剤としては、例えば、エピスルフィド化合物、アルコール化合物、アミン化合物、エポキシ化合物、有機酸及びその無水物、(メタ)アクリレート化合物等を含むオレフィン化合物等が挙げられる。
【0039】
(光安定剤)
光安定剤としては、ヒンダードアミン系化合物を用いることができる。ヒンダードアミン系化合物は、市販品としてChemtura社製のLowilite76、Lowilite92、BASF社製のTinuvin144、Tinuvin292、Tinuvin765、ADEKA社製のアデカスタブLA−52、LA−72、城北化学工業社製のJF−95等を挙げることができる。
【0040】
(ブルーイング剤)
ブルーイング剤としては、可視光領域のうち橙色から黄色の波長域に吸収帯を有し、樹脂からなる光学材料の色相を調整する機能を有するものが挙げられる。ブルーイング剤は、さらに具体的には、青色から紫色を示す物質を含む。
【0041】
光学材料用重合性組成物は、ポリチオール(A)、ポリイソシアネート(B)、紫外線吸収剤(C)と、必要に応じて、その他のチオール化合物、触媒、内部離型剤、その他添加剤を所定の方法で混合することにより得ることができる。
混合する際の温度は、通常25℃以下である。光学材料用重合性組成物のポットライフの観点から、さらに低温にすると好ましい場合がある。ただし、触媒、内部離型剤、添加剤のポリチオール(A)またはポリイソシアネート(B)への溶解性が良好でない場合は、あらかじめ加温して、溶解させることも可能である。
組成物中の各成分の混合順序や混合方法は、各成分を均一に混合することができれば特に限定されず、公知の方法で行うことができる。公知の方法としては、例えば、添加物を所定量含むマスターバッチを作製して、このマスターバッチを溶媒に分散・溶解させる方法などがある。
【0042】
<成形体>
本実施形態において、チオウレタン系成形体の製造方法は、特に限定されないが、好ましい製造方法として注型重合が挙げられる。はじめに、ガスケットまたはテープ等で保持された成型モールド間に光学材料用重合性組成物を注入する。この時、得られるプラスチックレンズに要求される物性によっては、必要に応じて、減圧下での脱泡処理や加圧、減圧等の濾過処理等を行うことが好ましい場合が多い。
【0043】
重合条件については、光学材料用重合性組成物、触媒の種類と使用量、モールドの形状等によって大きく条件が異なるため限定されるものではないが、およそ、−50〜150℃の温度で1〜50時間かけて行われる。場合によっては、10〜150℃の温度範囲で保持または徐々に昇温して、1〜25時間で硬化させることが好ましい。
【0044】
本実施形態のチオウレタン系成形体は、必要に応じて、アニール等の処理を行ってもよい。処理温度は通常50〜150℃の間で行われるが、90〜140℃で行うことが好ましく、100〜130℃で行うことがより好ましい。
【0045】
本実施形態のチオウレタン系成形体は、注型重合時のモールドを変えることにより種々の形状の成形体として得ることができる。
本実施形態のチオウレタン系成形体は、高い屈折率及び高い透明性を備えており、成形体を所望の形状とし、必要に応じて形成されるコート層や他の部材等を備えることにより、様々な光学材料として用いることができる。
【0046】
<光学材料>
本実施形態の光学材料としては、プラスチックレンズ、カメラレンズ、発光ダイオード(LED)、プリズム、光ファイバー、情報記録基板、フィルター、発光ダイオード等を挙げることができる。特に、プラスチックレンズ、カメラレンズ、発光ダイオード等の光学材料、光学素子として好適である。
【0047】
本実施形態のチオウレタン系成形体を用いたプラスチックレンズは必要に応じて、片面又は両面にコーティング層を施して用いてもよい。コーティング層としては、プライマー層、ハードコート層、反射防止膜層、防曇コート膜層、防汚染層、撥水層等が挙げられる。これらのコーティング層はそれぞれ単独で用いることも複数のコーティング層を多層化して使用することもできる。両面にコーティング層を施す場合、それぞれの面に同様なコーティング層を施しても、異なるコーティング層を施してもよい。
【0048】
これらのコーティング層はそれぞれ、赤外線から目を守る目的で赤外線吸収剤、レンズの耐候性を向上する目的で光安定剤や酸化防止剤、レンズのファッション性を高める目的で染料や顔料、さらにフォトクロミック染料やフォトクロミック顔料、帯電防止剤、その他、レンズの性能を高めるための公知の添加剤を併用してもよい。ハードコート、反射防止コート等のコート層またプライマー層を設けてもよい。
【0049】
本実施形態のチオウレタン系成形体を用いたプラスチックレンズはファッション性やフォトクロミック性の付与などを目的として、目的に応じた色素を用い、染色して使用してもよい。レンズの染色は公知の染色方法で実施可能である。
【0050】
以上、本実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明の効果を損なわない範囲で様々な構成を採用することができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。樹脂の性能試験において、屈折率、アッベ数、耐熱性(Tg)は、以下の方法により評価した。
・屈折率(ne)、アッベ数(νe):プルフリッヒ屈折計を用い、20℃で測定した。
・耐熱性(Tg):TMAペネートレーション法(50g荷重、ピン先0.5mmφ、昇温速度10℃/min)でのガラス転移温度Tgを測定した。
・光透過率の測定方法:測定機器として、島津製作所社製 島津分光光度計 UV−1600を使用し、2mm厚のプラノーレンズを用いて紫外−可視光スペクトルを測定した。
【0052】
[実施例1]
ZelecUN(STEPAN社製) 0.10重量部、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−クロロベンゾトリアゾール(BASF社製 商品名BASF社製TINUVIN326、最大吸収波長352nm) 1.0重量部、2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンと2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンとの混合物 52.95重量部を20℃で撹拌混合し、均一溶液を得た。この均一溶液に5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンの混合物 47.05重量部、ジメチル錫(II)ジクロリド 0.05重量部を加えて20℃にて撹拌混合し、混合液を得た。この混合溶液を400Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターでろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型を重合オーブンへ投入、25℃〜120℃まで21時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出した。得られた成形体をさらに120℃で2時間アニール処理を行った。得られた成形体は透明性があり、屈折率(ne)1.62、アッベ数(νe)39、耐熱性126℃であり、光学材料用透明樹脂として好適であった。得られた成型体の紫外−可視光スペクトルを、分光光度計UV−1600(島津製作所社製)を用いて測定した。評価結果を、表−1に示した。
【0053】
[実施例2]
ZelecUN(STEPAN社製) 0.10重量部、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−クロロベンゾトリアゾール(BASF社製 商品名BASF社製TINUVIN326、最大吸収波長352nm) 0.8重量部、イソホロンジイソシアネート44.8重量部およびヘキサメチレンジイソシアネート8.7重量部を20℃で撹拌混合し、均一溶液を得た。この均一溶液に5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンの混合物 46.5重量部、ジメチル錫(II)ジクロリド 0.05重量部を加えて20℃にて撹拌混合し、混合液を得た。この混合溶液を400Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターでろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型を重合オーブンへ投入、25℃〜120℃まで21時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出した。得られた成形体をさらに120℃で2時間アニール処理を行った。得られた成形体は透明性があり、屈折率(ne)1.62、アッベ数(νe)38、耐熱性128℃であり、光学材料用透明樹脂として好適であった。得られた成型体の紫外−可視光スペクトルを、分光光度計UV−1600(島津製作所社製)を用いて測定した。評価結果を、表−1に示した。
【0054】
[実施例3]
ZelecUN(STEPAN社製) 0.10重量部、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−クロロベンゾトリアゾール(BASF社製 商品名BASF社製TINUVIN326、最大吸収波長352nm) 0.5重量部、m−キシリレンジイソシアネート 50.6重量部を20℃で撹拌混合し、均一溶液を得た。この均一溶液に5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンの混合物 49.4重量部、ジブチル錫(II)ジクロリド 0.01重量部を加えて20℃にて撹拌混合し、混合液を得た。この混合溶液を400Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターでろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型を重合オーブンへ投入、25℃〜120℃まで21時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出した。得られた成形体をさらに120℃で2時間アニール処理を行った。得られた成形体は透明性があり、屈折率(ne)1.67、アッベ数(νe)31、耐熱性も98℃であり、光学材料用透明樹脂として好適であった。得られた成型体の紫外−可視光スペクトルを、分光光度計UV−1600(島津製作所社製)を用いて測定した。評価結果を、表−1に示した。
【0055】
[実施例4]
ZelecUN(STEPAN社製) 0.10重量部、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−クロロベンゾトリアゾール(BASF社製 商品名BASF社製TINUVIN326、最大吸収波長352nm) 0.8重量部、イソホロンジイソシアネート 28.45重量部およびヘキサメチレンジイソシアネート 21.5重量部を20℃で撹拌混合し、均一溶液を得た。この均一溶液に5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンの混合物 37.55重量部、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート) 12.5重量部、ジメチル錫(II)ジクロリド 0.05重量部を加えて20℃にて撹拌混合し、混合液を得た。この混合溶液を400Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターでろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型を重合オーブンへ投入、25℃〜120℃まで21時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出した。得られた成形体をさらに120℃で2時間アニール処理を行った。得られた成形体は透明性があり、屈折率(ne)1.60、アッベ数(νe)39、耐熱性102℃であり、光学材料用透明樹脂として好適であった。得られた成型体の紫外−可視光スペクトルを、分光光度計UV−1600(島津製作所社製)を用いて測定した。評価結果を、表−1に示した。
【0056】
[比較例1]
5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンの混合物 を4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタンに変更した以外は実施例1と同様な方法で成形体を得た。得られた成形体は透明性があり、屈折率(ne)1.62、アッベ数(νe)38、耐熱性113℃であった。得られた成型体の紫外−可視光スペクトルを、分光光度計UV−1600(島津製作所社製)を用いて測定した。評価結果を、表−1に示した。
【0057】
[比較例2]
5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンの混合物を、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタンに変更した以外は実施例3と同様な方法で成形体を得た。得られた成形体は透明性があり、屈折率(ne)1.67、アッベ数(νe)31、耐熱性84℃であった。得られた成型体の紫外−可視光スペクトルを、分光光度計UV−1600(島津製作所社製)を用いて測定した。評価結果を、表−1に示した。
【0058】
[比較例3]
ZelecUN(STEPAN社製) 0.10重量部、2−(2'−ヒドロキシ−5'−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(共同薬品社製 商品名バイオソーブ583、最大吸収波長340nm) 0.05重量部、2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンと2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンとの混合物 52.95重量部を20℃で撹拌混合し、均一溶液を得た。この均一溶液に5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンの混合物 47.05重量部、ジメチル錫(II)ジクロリド 0.05重量部を加えて20℃にて撹拌混合し、混合液を得た。この混合溶液を400Paにて1時間脱泡を行った後、1μmPTFE製フィルターでろ過を行い、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型を重合オーブンへ投入、25℃〜120℃まで21時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出した。得られた成形体をさらに120℃で2時間アニール処理を行った。得られた成形体は透明性があり、屈折率(ne)1.62、アッベ数(νe)41、耐熱性130℃であり、光学材料用透明樹脂として好適であった。得られた成型体の紫外−可視光スペクトルを、分光光度計UV−1600(島津製作所社製)を用いて測定した。評価結果を、表−1に示した。
【0059】
[比較例4]
2−(2'−ヒドロキシ−5'−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(最大吸収波長340nm) 0.05重量部を1.5重量部に変更した以外は比較例3と同様な方法で成形体を得た。得られた成形体は透明性があり、屈折率(ne)1.62、アッベ数(νe)40、耐熱性125℃であり、光学材料用透明樹脂として好適であった。得られた成型体の紫外−可視光スペクトルを、分光光度計UV−1600(島津製作所社製)を用いて測定した。評価結果を、表−1に示した。
【0060】
[比較例5]
5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンの混合物 を4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタンに変更した以外は比較例3と同様な方法で成形体を得た。得られた成形体は透明性があり、屈折率(ne)1.62、アッベ数(νe)39、耐熱性116℃であった。得られた成型体の紫外−可視光スペクトルを、分光光度計UV−1600(島津製作所社製)を用いて測定した。評価結果を、表−1に示した。
【0061】
[比較例6]
2−(2'−ヒドロキシ−5'−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(最大吸収波長340nm) 0.05重量部を1.5重量部変更し、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンの混合物 を4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタンに変更した以外は比較例3と同様な方法で成形体を得た。得られた成形体は透明性があり、屈折率(ne)1.62、アッベ数(νe)38、耐熱性112℃であった。得られた成型体の紫外−可視光スペクトルを、分光光度計UV−1600(島津製作所社製)を用いて測定した。評価結果は表−1に示した。
【0062】
【表1】
【0063】
i−1 : 2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンと2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンとの混合物
i−2 : イソホロンジイソシアネート
i−3 : ヘキサメチレンジイソシアネート
i−4 :m−キシリレンジイソシアネート
【0064】
t−1: 5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンと4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンと4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンとの混合物
t−2 : 4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン
t−3 : ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)
【0065】
比較例3〜6の結果から、分子構造が類似しているチオール化合物である「5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンと4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンと4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンとの混合物」または「4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン」をチオールとして用い、同種のポリイソシアネートと、従来用いられてきた紫外線吸収剤であるバイオソーブ583(最大吸収波長340nm)とから得られる成形体は、屈折率、アッベ数、光透過度が、ほぼ一致する結果が得られた。つまり、バイオソーブ583を用いた場合、これらのチオール化合物の間に光学的な特性に差が認められなかった。
一方、実施例1と比較例1との比較、および実施例3と比較例2との比較から明らかなように、驚くべきことに、紫外線吸収剤として、特定の紫外線吸収剤(Tinubin326)を用いた場合、ポリチオールとして「5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンと4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンと4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンとの混合物」と「4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン」とを比較して、屈折率、アッベ数、透明性は、同一であるものの、波長420nm青色光の透過率が低く、有害な青色光の透過が効果的に抑制されることが判明した。