(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6105754
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】ベースバンド近距離磁気ストライプ・データ送信機のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G06K 19/06 20060101AFI20170316BHJP
G06K 7/08 20060101ALI20170316BHJP
G07G 1/00 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
G06K19/06 206
G06K7/08 040
G07G1/00 311D
【請求項の数】31
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-553762(P2015-553762)
(86)(22)【出願日】2014年1月10日
(65)【公表番号】特表2016-507104(P2016-507104A)
(43)【公表日】2016年3月7日
(86)【国際出願番号】US2014010964
(87)【国際公開番号】WO2014113278
(87)【国際公開日】20140724
【審査請求日】2015年7月17日
(31)【優先権主張番号】13/867,387
(32)【優先日】2013年4月22日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/826,101
(32)【優先日】2013年3月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/754,608
(32)【優先日】2013年1月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515234749
【氏名又は名称】サムスン ペイ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウォルナー、ジョージ
【審査官】
甲斐 哲雄
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第7357319(US,B1)
【文献】
特表2003−515228(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/151226(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/00−19/18
G06K 7/00− 7/14
G07G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースバンド近距離磁気ストライプ・データ送信機のためのシステムであって、
支払いお財布アプリケーションを含み、ペイメント・カードの磁気ストライプ・データを含むパルスのストリームを送信するように構成される携帯電話と、
ドライバ及びインダクタを含む磁気ストライプ送信(MST)装置とを含み、
前記MST装置は、前記携帯電話から前記パルスのストリームを受信し、前記受信されたパルスのストリームを増幅し、成形し、前記磁気ストライプ・データを含む一連の磁気パルスを前記インダクタから生成し、送出するように構成され、
前記送出された磁気パルスは、磁気読み出しヘッドによって遠隔で検出され、前記磁気読み出しヘッドは前記インダクタと接触しないように構成され、
前記インダクタは、1つ又は複数の巻線を含み、
前記1つ又は複数の巻線は、磁束線を発生するように構成され、前記磁束線は、前記磁気読み出しヘッドの検知開口部を含むための、且つタイミングを合わされた、前記ドライバからの各電流パルスが当該電流パルスの終了時にその最大電流値に到達するように設定されるインダクタンス値を生成するための寸法を持つようにされた領域にわたって広げられ、それによって前記磁気読み出しヘッド中に最大誘導電圧が生じる、システム。
【請求項2】
前記磁気読み出しヘッドは、前記磁気パルスを電気パルスに変換する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記磁気読み出しヘッドは、販売時点情報管理システム(POS)装置中に含まれ、
前記POS装置は、中央処理装置(CPU)をさらに含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記MST装置は、前記ペイメント・カードからの前記磁気ストライプ・データを検出するように構成される磁気ストライプ・リーダ(MSR)ヘッドをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記送出された磁気パルスは、前記磁気読み出しヘッドによって遠隔で、2.54〜5.08cm(1〜2インチ)の範囲の距離から検出される、請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
前記ドライバは、高出力ドライバ回路を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記1つ又は複数の巻線の前記インダクタンス値と抵抗値の比が、10μH/オームと80μH/オームの間の範囲にある、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記1つ又は複数の巻線は、エナメル絶縁磁気ワイヤを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記1つ又は複数の巻線は、剛性又は可撓性のプリント回路基板上にレイアウトされたコンダクタ・トレースを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記1つ又は複数の巻線は、矩形に形作られた巻線を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記MST装置は、前記携帯電話から前記携帯電話のオーディオ・ジャックへの有線接続を介して前記磁気ストライプ・データを受信するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記MST装置は、前記携帯電話から無線接続を介して前記磁気ストライプ・データを受信するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記MST装置は、前記携帯電話からブルートゥース(商標)無線接続を介して前記磁気ストライプ・データを受信するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記携帯電話は、別個のセキュア無線メッセージを送信するようにさらに構成され、
前記磁気ストライプ・データ及び前記別個のセキュア無線メッセージは、認証目的のために組み合わされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
セキュア・マイクロコントローラをさらに含み、
前記セキュア・マイクロコントローラは、前記ペイメント・カードのデータのセキュア・ローカル記憶を形成し、前記ドライバのインダクタ・ドライバ回路を直接駆動する、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記MST装置は、前記セキュア・マイクロコントローラを使用して、前記ペイメント・カードのデータの一部又は全部を暗号化する、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
ペイメント・カードのデータ及び他の個人情報の安全確実な記憶のために揮発性及び不揮発性のメモリをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記ペイメント・カードの前記磁気ストライプ・データは、カード照合値(CVV)データを含み、
トランザクションのセキュリティが、前記CVVデータを動的に変化させることによって高められる、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記送出された磁気パルスは、トークン化された磁気ストライプ・データを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記トークン化された磁気ストライプ・データは、暗号化して生成されたトークンを含み、
前記暗号化して生成されたトークンは、トラック・データとしてフォーマットされる、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記送出された磁気パルスは、前記ペイメント・カードの2トラック以上の前記磁気ストライプ・データを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項22】
前記磁気ストライプ・データ以外のデータが、磁気ストライプ・データに似たものとなるようにフォーマットされ、
前記フォーマットされたデータは、前記MST装置を介してPOS装置の磁気読み出しヘッドに送られる、請求項1に記載のシステム。
【請求項23】
前記MST装置は、POS装置の磁気読み出しヘッドにクーポン及び申込みを送信するようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項24】
前記MST装置は、顧客の個人情報をPOS装置の磁気読み出しヘッドに送信するようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項25】
ドライバと、インダクタと、第1の磁気読み出しヘッドとを含む磁気ストライプ送信(MST)装置であって、
前記MST装置は、ペイメント・カードからの磁気ストライプ・データを受信し、前記受信された磁気ストライプ・データを処理し、前記処理済み磁気ストライプ・データを含む一連の磁気パルスを送出するように構成され、
前記インダクタは、タイミングを合わされた、前記ドライバからの電流パルスによって駆動されて、移動している磁気ストライプによって生成された変動磁場に似ている前記一連の磁気パルスがもたされることになり、
前記送出された磁気パルスは、販売時点情報管理システム(POS)装置中に含まれた第2の磁気読み出しヘッドによって遠隔で検出され、前記第2の磁気読み出しヘッドは前記インダクタと接触しないように構成され、
前記送出された磁気パルスは、前記ペイメント・カードの2トラック以上の前記磁気ストライプ・データを含み、
前記MST装置の前記第1の磁気読み出しヘッドは、前記MST装置のセキュア・メモリ中に、又はお財布携帯中に記憶するために、前記ペイメント・カードからの前記磁気ストライプ・データを読み出すように構成される、磁気ストライプ送信(MST)装置。
【請求項26】
ベースバンド近距離磁気ストライプ・データ送信機のためのシステムであって、
支払いお財布アプリケーションを含み、ペイメント・カードの磁気ストライプ・データを含むパルスのストリームを送信するように構成される携帯電話と、
ドライバ及びインダクタを含む磁気ストライプ送信(MST)装置と
を含み、
前記MST装置は、前記携帯電話から前記パルスのストリームを受信し、前記受信されたパルスのストリームを増幅し、成形し、前記磁気ストライプ・データを含む一連の磁気パルスを前記インダクタから生成し、送出するように構成され、
前記送出された磁気パルスは、磁気読み出しヘッドによって遠隔で検出され、前記磁気読み出しヘッドは前記インダクタと接触しないように構成され、
前記インダクタは、1つ又は複数の巻線を含み、
前記1つ又は複数の巻線は、磁束線を発生するように構成され、前記磁束線は、前記磁気読み出しヘッドの検知開口部を含むのに、且つタイミングを合わされた、前記ドライバからの各電流パルスが当該電流パルスの終了時にその最大電流値に到達するように設定されるインダクタンス値を生成するのに十分に広い寸法を持つようにされた領域にわたって広げられ、それによって前記磁気読み出しヘッド中に最大誘導電圧が生じ、
前記1つ又は複数の巻線は、矩形に形作られた巻線を含む、システム。
【請求項27】
ベースバンド近距離磁気ストライプ・データ送信機のためのシステムであって、
支払いお財布アプリケーションを含み、ペイメント・カードの磁気ストライプ・データを含むパルスのストリームを送信するように構成される携帯電話と、
ドライバ及びインダクタを含む磁気ストライプ送信(MST)装置とを含み、
前記MST装置は、前記携帯電話から前記パルスのストリームを受信し、前記受信されたパルスのストリームを増幅し、成形し、前記磁気ストライプ・データを含む一連の磁気パルスを前記インダクタから生成し、送出するように構成され、
前記インダクタは、タイミングを合わされた、前記ドライバからの電流パルスによって駆動されて、移動している磁気ストライプによって生成された変動磁場に似ている前記一連の磁気パルスがもたされ、
前記送出された磁気パルスは、前記ペイメント・カードの2トラック以上の前記磁気ストライプ・データを含むシステム。
【請求項28】
前記インダクタは、1つ又は複数の巻線を含み、
前記1つ又は複数の巻線は、磁束線を発生するように構成され、前記磁束線は、磁気読み出しヘッドの検知開口部を含むための、且つタイミングを合わされた、前記ドライバからの各電流パルスが当該電流パルスの終了時にその最大電流値に到達するように設定されるインダクタンス値を生成するための領域にわたって広げられ、それによって前記磁気読み出しヘッド中に最大誘導電圧が生じる、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記1つ又は複数の巻線は無指向性の磁場を生成するように構成されており、POS端末のカード読み出しスロットに挿入されることなく、前記MST装置に接続された前記携帯電話が前記POS端末に近づくときに前記無指向性の磁場の磁束線が前記磁気読み出しヘッドを通るように構成されており、前記カード読み出しスロットは前記磁気読み出しヘッドを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項30】
前記インダクタが無指向性の磁場を送出するように構成されている、請求項25記載の磁気ストライプ送信(MST)装置。
【請求項31】
前記送出された磁気パルスは、前記ペイメント・カードの2トラック以上の前記磁気ストライプ・データを含む、請求項26記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2013年1月20日出願の「ベースバンド近距離磁気ストライプ・データ送信機のためのシステム及び方法(SYSTEM AND METHOD FOR A BASEBAND NEARFIELD MAGNETIC STRIPE DATA TRANSMITTER)」と題する米国仮特許出願第61/754,608号に基づき優先権を主張し、これは本願の譲受人に譲渡されたものであり、その内容は、参照により本明細書に明示的に援用される。
【0002】
本出願は、2013年3月14日出願の「ベースバンド近距離磁気ストライプ・データ送信機のためのシステム及び方法(SYSTEM AND METHOD FOR A BASEBAND NEARFIELD MAGNETIC STRIPE DATA TRANSMITTER)」と題する米国特許出願第13/826101号の継続出願であり、それに基づき優先権を主張し、これは本願の譲受人に譲渡されたものであり、その内容は、参照により本明細書に明示的に援用される。
【0003】
本発明は、ベースバンド近距離磁気ストライプ・データ送信機のためのシステム及び方法に関し、詳細には、スマートフォン又は他の電子装置から販売時点情報管理システム・トランザクション端末中にペイメント・カードのデータを送信する磁気ストライプ・データ送信機に関する。
【背景技術】
【0004】
磁気ストライプ・ペイメント・カードは、ペイメント・カードのデータを含む磁気ストライプを担持する。磁気ストライプ・ペイメント・カードは、とりわけクレジット・カード、デビット・カード、ギフト・カード及びクーポン・カードを含む。データは、ストライプ中に埋め込まれた磁性粒子の配向を交互にすることによって、磁気ストライプ上に「書き込まれる」。カード・データは、カードを磁気ストライプ・リーダに通すことによって、販売時点情報管理システム(POS:Point of Sale)で磁気ストライプから読み出される。リーダは、リーダ・ヘッド及びその関連復号回路構成を含む。リーダにカードを通したとき、磁気ストライプは、リーダ・ヘッドの前を移動する。交互に代わる極性磁区を含む磁気ストライプが移動すると、リーダ・ヘッドの狭い検知開口部内で変動磁場が生じる。リーダ・ヘッドは、この変動磁場を等価の電気信号に変換する。復号回路構成は、この電気信号を増幅し、デジタル化して、当初磁気ストライプ上に書き込まれたのと同じデータ・ストリームを再現する。磁気ストライプのコード化は、国際規格ISO7811及び7813に述べられている。
【0005】
スマートフォンの普及と能力が高まるにつれて、お財布携帯としてそれらを使用し、その財布を使用して販売時点情報管理システムで支払いを済ましたいという要求が、ますます強くなっている。その採用に対する主な障害は、携帯電話と販売時点情報管理システム端末の間にデータ送信チャネルがなかったことである。いくつかの代替案が提案されている。これらは、携帯電話のスクリーン上に表示されたデータのPOS端末中への手動によるキー入力、携帯電話のスクリーン上に表示され、2次元バーコードリーダによって読み出される2次元バーコード、携帯電話に付随する無線周波数(RF)のIDタグ、及び携帯電話中のアプリケーションによって駆動される、内蔵の近距離無線通信(NFC:Near Field Communications)ハードウェアを含む。これらの方法の中で、2次元バーコード及びNFCは、最も期待できる。しかし、それらの広範な採用は、販売時点情報管理システムにおいて適切な読み出し装置の欠落によって妨げられており、また、NFCの場合、標準化されたNFC能力が多くのスマートフォンにないことによって妨げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7、954、716号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、スマートフォン又は他の電子装置から遠隔で販売時点情報管理システム・トランザクション端末中にペイメント・カードのデータ又は他の情報を送信するための改善された装置及び方法が必要とされている。
【0008】
本発明は、スマートフォン又は他の電子装置から遠隔で端末の磁気ストライプ・リーダを介して販売時点情報管理システム・トランザクション端末中にペイメント・カードのデータ又は他の情報を送信するベースバンド近距離磁気ストライプ・データ送信機のためのシステム及び方法を示す。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一般に、本発明の一態様は、携帯電話及び磁気ストライプ送信(MST:magnetic stripe transmission)装置を含むベースバンド近距離磁気ストライプ・データ送信機のためのシステムを提供する。携帯電話は、支払いお財布アプリケーションを含み、ペイメント・カードの磁気ストライプ・データを送信するように構成される。磁気ストライプ送信(MST)装置は、ドライバ及びインダクタを含む。MSTは、携帯電話から磁気ストライプ・データを受信し、受信された磁気ストライプ・データを処理し、処理済み磁気ストライプ・データを含む高エネルギー磁気パルスを送出するように構成される。
【0010】
本発明のこの態様の実施は、次の事項を含む。送出された高エネルギー磁気パルスは、磁気読み出しヘッドによって遠隔で検出されるように構成され、磁気読み出しヘッドは、高エネルギー磁気パルスを電気パルスに変換する。磁気読み出しヘッドは、販売時点情報管理システム(POS)装置中に含まれ、POSは、中央処理装置(CPU:central processing unit)をさらに含む。MST装置は、磁気ストライプ・データを検出するように構成される磁気ストライプ・リーダ(MSR:magnetic stripe reader)ヘッドをさらに含む。送出された高エネルギー磁気パルスは、2.54〜5.08cm(1〜2インチ)の範囲の距離から磁気読み出しヘッドによって遠隔で検出される。MSTドライバは、高出力ドライバ回路を含む。インダクタは、1つ又は複数の巻線を有し、磁束線を発生するように構成され、その磁束線は、磁気読み出しヘッドの検知開口部を含むのに十分広い寸法を持つようにされた領域にわたって広げられる。インダクタは、適正にタイミングを合わされた電流パルスが、それらの最大値に到達するように設定されるインダクタンス値を有し、それによって磁気読み出しヘッド中で最大誘導電圧が生じる。インダクタのインダクタンス値と抵抗値の比は、10μH/オームと80μH/オームの間の範囲中にある。1つ又は複数の巻線は、エナメル絶縁磁気ワイヤを含む。1つ又は複数の巻線は、剛性又は可撓性のプリント回路基板上にレイアウトされたコンダクタ・トレース(conductor trace)を含む。1つ又は複数の巻線は、矩形に形作られる。送出された高エネルギー磁気パルスは、2.54〜5.08cm(1〜2インチ)の範囲の距離から磁気読み出しヘッドによって遠隔で検出される。MST装置は、携帯電話から携帯電話のオーディオ・ジャックへの有線接続を介して磁気ストライプ・データを受信するように構成される。MST装置は、携帯電話から無線接続を介して磁気ストライプ・データを受信するように構成される。MST装置は、携帯電話からブルートゥース(商標)無線接続を介して磁気ストライプ・データを受信するように構成される。携帯電話は、別個のセキュア無線メッセージ及び磁気ストライプ・データを送信するようにさらに構成され、別個のセキュア無線メッセージは、認証目的で組み合わされる。MST装置は、セキュア・マイクロコントローラをさらに含むことができ、セキュア・マイクロコントローラは、ペイメント・カードのデータのセキュア・ローカル記憶を形成し、ドライバのインダクタ・ドライバ回路を直接駆動する。MSTは、セキュア・マイクロコントローラを使用して、ペイメント・カードのデータの一部又は全部を暗号化する。MST装置は、ペイメント・カードのデータ及び他の個人情報を安全確実に記憶するために、揮発性及び不揮発性のメモリをさらに含む。送出された高エネルギー磁気パルスは、トークン化された磁気ストライプ・データを含む。トークン化された磁気ストライプ・データは、暗号化されて生成されたトークンを含み、暗号化されて生成されたトークンは、トラック・データとしてフォーマットされる。送出された高エネルギー磁気パルスは、2つ以上のトラック・データを含む。磁気ストライプ・データ以外のデータは、磁気ストライプ・データに似たものとなるようにフォーマットされ、そのようにフォーマットされたデータは、MST装置を介してPOS装置の磁気読み出しヘッドに送信される。MST装置は、POS装置の磁気読み出しヘッドにクーポン及び特別サービス(offer)を送信するようにさらに構成される。MST装置は、POS装置の磁気読み出しヘッドに顧客の個人情報を送信するようにさらに構成される。
【0011】
一般に、別の態様では、本発明は、ドライバと、インダクタと、第1の磁気読み出しヘッドとを含む磁気ストライプ送信(MST)装置を提供する。MST装置は、ペイメント・カードのデータを含む磁気ストライプ・データを受信し、受信された磁気ストライプ・データを処理し、処理済み磁気ストライプ・データを含む高エネルギー磁気パルスを送出するように構成される。送出された高エネルギー磁気パルスは、販売時点情報管理システム(POS)装置中に含まれる第2の磁気読み出しヘッドによって検出されるように構成される。MST装置の第1の磁気読み出しヘッドは、MST装置のセキュア・メモリ中に、又はお財布携帯中に記憶するために、磁気ストライプ・ペイメント・カードのデータを読み出すように構成される。
【0012】
図を参照すると、同様の数字は、いくつかの図にわたって同様の要素を表す。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明によるベースバンド近距離磁気ストライプ・データ送信機システムの概観図である。
【
図2】必要な磁場を発生するために使用される代表的なインダクタの概略図である。
【
図3】本発明によるベースバンド近距離磁気ストライプ・データ送信機システムの別の実施例の概観図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、スマートフォン又は他の電子装置から販売時点情報管理システム・トランザクション端末中にペイメント・カードのデータを送信するベースバンド近距離磁気ストライプ・データ送信機のためのシステム及び方法を示す。
【0015】
ベースバンド近距離磁気ストライプ送信(MST:Magnetic Stripe Transmission)、すなわち本発明の主題は、パルス変調磁場を使用して、スマートフォンからPOS端末中に、所定の距離からデータを送信する。システムは、カードがリーダ・ヘッドに接触することも近接(1mm以下)することもなく、又はカード・リーダ・スロット中に挿入する必要もなく、カード・データをPOS端末のリーダ中に送信することができる。さらに、システムは、磁気ストライプ・カード、又はNarenda及び他による米国特許第7、954、716号に記載されているような先行技術による磁気ストライプのエミュレーション若しくは電子磁気ストライプに必要とされる機械に通す動作の必要性を解消する。
【0016】
磁場が、高出力ドライバ回路によって駆動される、特別設計のインダクタによって生成される。インダクタの独特な構造により、所定の距離からPOS端末中に位置決められた磁気ストライプ・リーダ・ヘッドに貫通することができる、複雑な無指向性の磁場がもたらされる。
【0017】
図2を参照すると、インダクタ124は、外形寸法が約40×30mm、束厚さが3mmである、1つ又は複数の矩形のワイヤ束(複数可)125を含む。インダクタ124は、適正にタイミングを合わされた電流パルスが各パルスの終了時にその最大値に到達するような値のインダクタンスを有する。また、磁気ストライプ・カードが磁気リーダ・ヘッドの前を通されたとき磁気リーダ・ヘッドによって理解される磁気信号に非常に似ている磁場をもたらすようにドライバ回路からの電流を成形するうえで、インダクタンス値と巻線抵抗値の比は決定的な事項である。一例では、巻線抵抗に対するインダクタンスの比は、80μH/オームである。
【0018】
インダクタの物理的な形状によって、磁束線が、リーダ・ヘッドの検知開口部を含むのに十分に広い領域にわたって広がることが保証される。インダクタ巻線は、エナメル絶縁磁気ワイヤとしてもよく、又は代替えとして、インダクタは、剛性又は可撓性のプリント回路基板上にレイアウトされたコンダクタ・トレースによって形成されたスパイラル・インダクタとして実現してもよい。
【0019】
インダクタは静止しているが、インダクタは一連のタイミングを合わされた電流パルスによって駆動され、移動している磁気ストライプによって生成される変動磁場に似ている一連の磁気パルスをもたらすことになる。標準の磁気ストライプのコード化の後に磁場変調が続き、次いで、それによってリーダの出力において、磁気ストライプから得られるはずのものに同一である電気パルスのストリームがもたらされることになる。
【0020】
MSTの重要な利点は、MSTが販売時点情報管理システム・カード支払い端末の既存のインフラと共に働くということである。NFC又は2次元バーコードとは異なり、外部リーダ又は新しい端末を設置する必要がない。
【0021】
図1を参照すると、本発明の一実施例100では、適切なドライバ122及びインダクタ124が小さなカプセル120中に収容され、カプセル120は、携帯電話110のオーディオ・ジャック112に接続される。スマートフォン110には、お財布ソフトウェア・アプリケーション102がロードされている。電話110は、そのオーディオ・ジャック112を介して磁気ストライプ送信機120に接続される。標準のISO/ABA磁気ストライプ・カード140を読むことが可能な通常のカード支払い端末を備えた販売時点の場所で支払いをするために、顧客は、そのスマートフォン110上でお財布アプリケーション102を選択し、支払いに使用したい組み込み済のペイメント・カード(すなわち、Visa、Mastercard、Amex)の1つを選択する。顧客は、販売時点情報管理システム端末140に携帯電話を近づけて(2.54〜5.08cm(1〜2インチ))保持し、電話110上の支払いアイコン/キー104を押す。電話110中のお財布アプリケーション102によって、選択されたカードの磁気ストライプ・データを含むパルスのストリームが、オーディオ・ジャック112を介してMST120に送られる。MST120は、そのパルスを増幅し、適切に変調された高エネルギーの磁気インパルス130に成形し、それを送出する。磁気インパルス130は、販売時点情報管理システム支払い端末140中に位置決められた磁気ストライプ・リーダ・ヘッド142によって検出され、電気パルスに変換される。その結果得られた電気パルスは、復号器144によって復号され、その中央処理装置(CPU)146が、そのリーダ・スロットを通された標準の磁気ストライプ・カードを処理することになるのと同様に、中央処理装置(CPU)146によって処理される。小売商人が支払い金額を入力し、そのトランザクションが、POS端末140によってネットワーク150を介して支払いトランザクション・プロセッサ160に送られる。トランザクション・プロセッサ160は、トランザクション認証を返し、POS端末140は、レシートをプリントする。カード入力方法を除き、全トランザクションは、標準の磁気ストライプ・カードの場合と同様の方法で完結する。
【0022】
MST120の別の実施例では、セキュリティが、支払い端末を通じて送信されるトランザクションを別個のセキュア無線メッセージをプロセッサに送ることによって補完するスマートフォンによって向上され、2つのトランザクションは、認証目的のために組み合わされる。
【0023】
図3を参照すると、別の実施例では、MST120は、磁気ストライプ・リーダ(MSR)ヘッド142aと一体化されて、磁気ストライプ情報の読み出しと送信の両方を実施することができる単一装置が生成される。電子お財布102と連結したMSTとMSRの組み合わせは、ペイメント・カードを電子お財布中にロードし、ペイメント・カードのデータをPOSシステム140にその後で送信する好都合でセキュアな手段をもたらす。さらに、この実施例は、各個人がMSTを備えており、カードリーダがその人のMSTに含まれている状態で自分のカード情報を他の人の携帯電話に送信することができる場合、クレジット又はデビットのカードを使用して個人対個人の間の好都合な支払いを可能にする。
【0024】
別の実施例では、磁気ストライプの送信は、トークン化されたカード・データを販売時点情報管理システム端末に送信するために使用される。この実施例では、実際のペイメント・カード番号が、暗号化して生成されたトークンと置き換えられ、トークンは、標準の会員番号(PAN:Primary Account Number)に似たものとなるようにフォーマットされるトークン・データを含むトラック・データとしてフォーマットされる。PANは、有効な銀行識別コード(BIN:Bank Identification Number)を含んでもよい。そのようなトークンは、カード発行者からか、又は別のオンラインのソースからダウンロードされる、或いはローカルに生成される。トークンのMSTによる送信は、1つのトランザクションに関してのみ有効である、暗号化して生成されたトークンを送信することによって、有効なカード番号の送信に取って代わり、したがって、既存の販売時点情報管理システム・ハードウェアを変更する必要がなく、標準の磁気ストライプに固有なセキュリティのリスクがすべて解消される。他の実施例では、既存の販売時点情報管理システムのハードウェア及びソフトウェアとの互換性を高めるために、2つ以上のトラック・データが送信される。これらの実施例では、トラック1データの送信の後にトラック2データの送信が続いてもよい、或いはトラック2データの後にトラック1データが続いてもよい。
【0025】
さらなる実施例では、また、MST120は、カード・データのセキュア・ローカル記憶を形成し、インダクタ・ドライバ回路122を直接駆動するセキュア・マイクロコントローラ126を含む。この実施例は、MSTが電話から取り外されて記憶送信モードで作動することを可能にする。いくつかの実施例では、MSTは、カード・データ及び他の個人情報の安全確実な記憶のために、揮発性及び不揮発性のメモリをさらに含む。
【0026】
また別の可能な実施例は、電話110とMST120の間のブルートゥース(登録商標)通信を使用し、両方向通信が、MSTのセキュア・マイクロコントローラ126によって形成されたセキュア要素中に記憶されたカード・データの電話による検索を含む、セキュリティ及びフレキシビリティを高めるために、使用される。
【0027】
また別の可能な実装形態では、MST120は、その内蔵のセキュア・マイクロコントローラ126を使用して、カード・データの一部又は全部を暗号化し、磁場を介してそれを販売時点情報管理システム・カードリーダに送信する。
【0028】
また別の可能な実装形態では、ペイメント・カードのデータは、動的に変化させるカード照合値(CVV:card verification value)データを含む。この場合、トランザクションのセキュリティは、CVVデータの動的な変化によって高められる。
【0029】
本発明のいくつかの実施例を述べてきた。しかしながら、本発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに、様々な修正を行うことができることを理解されたい。したがって、他の実施例は、次の請求項の範囲に含まれる。