(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
付勢部材によって上記アイドラプーリを介して上記歯付きベルトの外面を付勢して、当該歯付きベルトに張力を付与するオートテンション機構をさらに備える、請求項1ないし5のいずれかに記載のベルト駆動装置。
【背景技術】
【0002】
ワーク搬送用のロボットとして、直線状の移動行程に沿ってハンドを移動させる機構(直線移動機構)をもつものが知られている(たとえば特許文献1参照)。直線移動機構をもつ搬送ロボットは、いわゆる多関節型ロボットに比較して構成が簡単で安価であり、たとえば、半導体装置の製造工程、あるいは、液晶表示パネルの製造工程において、各処理室へのウエハ、あるいはガラス基板等の薄板状ワークの搬入あるいは搬出用のロボットとして多用されている。
【0003】
特許文献1に記載された搬送ロボットにおいては、直線移動機構としてベルト駆動式の駆動装置が採用されている。このベルト駆動装置は、同文献の
図11等に表れているように、駆動源からの駆動力によって回転駆動させられる駆動プーリ(335)および従動プーリ(336a,336b)を含む複数のプーリに無端状の出力ベルト(337)が掛け回された構成とされている。上記複数のプーリは、実質的に互いに平行な回転軸線周りに回転可能とされており、出力ベルト(337)には、ハンド(4A)に連結された連結部材(42a)が設けられている。ハンド(4A)は、直線状のガイドレールによってスライド可能に支持されており、連結部材(42a)が従動プーリ(336a,336b)の間の移動区間を往復動することによって直線状に移動させられる。駆動プーリ(335)と従動プーリ(336a,336b)との間には、出力ベルト(337)の外面に当接して当該出力ベルト(337)に張力を付与するアイドラプーリ(336c,336d)が設けられている。
【0004】
近年では、たとえば、液晶表示パネルの製造において取り扱うパネルサイズが大型化する傾向にあり、これにともなってワークを保持するハンドの移動距離についても長大化が求められる。また、生産性向上の観点から、高速かつ高精度でのワーク搬送が求められる。これに対し、上述のベルト駆動装置を用いた搬送ロボットでは、ハンドの移動距離を長くするには、ハンドを支持するガイドレール、および出力ベルトを長尺化することにより比較的容易に対応することができる。また、高速搬送への対応については、駆動プーリおよび従動プーリを歯付きプーリによって構成し、出力ベルトとして、内面に駆動プーリおよび従動プーリに噛み合う凹凸歯が形成されたタイミングベルト(歯付きベルト)を用いる。これにより、出力ベルトと駆動プーリあるいは従動プーリとの間のベルト走行方向への滑りをなくすことができる。
【0005】
複数のプーリに出力ベルトが掛け回されたベルト駆動装置では、これらプーリの回転軸線どうしの平行度の精度を高めることが望まれる。しかしながら、実際には、複数のプーリのそれぞれの製作誤差やこれらプーリの組付け時の誤差等により、回転軸線どうしの平行度の精度を十分によくするのは困難である。出力ベルトについても、個体差のばらつきがある。このようなことから、出力ベルトの走行時には、当該出力ベルトがプーリの軸線方向の一方側に片寄ってしまい、プーリ(駆動プーリ・従動プーリ)の軸線方向端部に設けられた鍔部に出力ベルトの側縁が接触する場合がある。この場合、出力ベルトの走行状態が不安定になり、このようなベルトの走行を続けると、出力ベルトが破損するおそれがある。また、出力ベルトの全長を長くし、あるいは高速でのワーク搬送に対応すべく出力ベルトの走行速度を速くすると、走行時のベルトの幅方向への変位量が大きくなりやすく、上記した不都合がより顕著となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、駆動プーリおよび従動プーリに無端状の歯付きベルトが掛け回された構成のベルト駆動装置において、ベルトの走行時の片寄りを抑制するのに適したベルト駆動装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を採用した。
【0009】
本発明よって提供されるベルト駆動装置は、それぞれの外周に回転方向において凹凸状の噛合歯が形成されて歯付きプーリとして構成された駆動プーリおよび従動プーリと、内面が上記噛合歯に噛み合う凹凸歯とされ、上記駆動プーリおよび従動プーリに掛け回された無端状の歯付きベルトと、上記歯付きベルトの外面に当接するベルト走行面を有し、このベルト走行面の幅方向における中間部が両端部よりも大径となるように膨出する形状とされたアイドラプーリと、を備えることを特徴としている。
【0010】
好ましい実施の形態においては、上記従動プーリは、第1および第2の従動プーリを含み、上記歯付きベルトの移動経路のうち上記第1および第2の従動プーリの間において上記歯付きベルトが掛け回された区間が直線移動区間として設定されており、上記アイドラプーリは、上記歯付きベルトの移動方向において上記駆動プーリを挟んだ両側に対をなして配置されている。
【0011】
好ましい実施の形態においては、対をなす上記アイドラプーリのそれぞれにおいて、当該アイドラプーリの軸線に対して、上記ベルト走行面の周方向において当該ベルト走行面と上記歯付きベルトの外面とが接触する範囲のなす角度である巻き付け角度は、50°以上である。
【0012】
好ましい実施の形態においては、上記歯付きベルトには、上記直線移動区間において往復動させられるキャリッジが設けられている。
【0013】
好ましい実施の形態においては、上記駆動プーリの軸線方向に対する上記アイドラプーリの軸線方向の角度を調整可能な角度調整機構をさらに備える。
【0014】
好ましい実施の形態においては、付勢部材によって上記アイドラプーリを介して上記歯付きベルトの外面を付勢して、当該歯付きベルトに張力を付与するオートテンション機構をさらに備える。
【0015】
好ましい実施の形態においては、上記歯付きベルトの内面の上記凹凸歯は、当該歯付きベルトの幅方向に対して傾いて形成されており、上記駆動プーリおよび従動プーリのそれぞれの上記噛合歯は、上記凹凸歯に対応するようにそれぞれの軸線方向に対して傾いている。
【0016】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態につき、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0019】
図1〜
図3は、本発明に係るベルト駆動装置を備えて構成された搬送ロボットの一例を示している。搬送ロボットAは、たとえば液晶表示パネル用の基板等といった薄板状のワークWを搬送するためのものである。この搬送ロボットAは、固定ベース1と、この固定ベース1に支持された旋回ベース2と、旋回ベース2に支持されたガイド体3と、ガイド体3の内部に収容されたベルト駆動装置4(
図2参照)と、ガイド体3によって各別に支持された2つのハンド5A,5Bとを備えている。ハンド5A,5Bは、上記薄板状のワークWを水平姿勢で保持するためのものである。
【0020】
旋回ベース2は、固定ベース1に対して昇降可能とされ、かつ垂直状の旋回軸Os周りに回転可能に支持されている。固定ベース1の内部には、図示しない昇降用モータおよび旋回用モータが設けられており、これらモータの駆動により、旋回ベース2は昇降あるいは旋回させられる。ガイド体3は、平面視において長矩形の箱状とされている。ガイド体3の内部には、ハンド5A,5Bを各別に支持するための図示しないガイドレールが設けられている。ハンド5A,5Bは、上記ガイドレールに支持されながら、互いが干渉することなく水平直線状の移動行程GLに沿ってスライド可能となっている。
【0021】
図1〜
図4に表れているように、ハンド5A,5Bには、ガイド体3の長手方向に延びる複数のホーク状の保持片51a,51bが一体形成されており、これらの保持片51a,51b上に上記薄板状のワークWが載置保持される。なお、
図3および
図4においては、
図1および
図2と異なり、ハンド5A,5Bの双方が固定ベース1の上方に位置する状態を示している。
【0022】
ベルト駆動装置4は、ハンド5A,5Bを上記ガイドレール上にてスライド移動させるためのものであり、ハンド5A,5Bに対応して対をなして設けられている(
図2参照)。固定ベース1の内部には、ハンド5A,5Bをそれぞれ駆動するための図示しないハンド用モータが設けられており、固定ベース1、旋回ベース2、およびガイド体3の内部に跨るようにして、上記ハンド用モータの駆動力をベルト駆動装置4に伝達するための駆動力伝達機構が設けられている。なお、旋回ベース2の支持構造、ハンド5A,5Bの支持構造、およびベルト駆動装置4への駆動力伝達機構については、詳細な図示説明は省略したが、たとえば特開2008−272847号公報記載の構造と同様の構造によって実現することができる。
【0023】
図4は、本発明の実施形態に係るベルト駆動装置を示している。本実施形態のベルト駆動装置4は、駆動プーリ41と、従動プーリ42,42と、アイドラプーリ43,43と、これらプーリに掛け回された無端状の出力ベルト44(歯付きベルト)と、を備えている。駆動プーリ41、従動プーリ42,42、およびアイドラプーリ43,43は、それぞれガイド体3に支持されており、実質的に互いに平行な軸線周りに回転可能とされている。なお、
図4以降の図面においては、ハンド5Aに対応するベルト駆動装置4について示すが、ハンド5Bに対応するベルト駆動装置についても
図4以降に示すベルト駆動装置4と同様の構成を有する。
【0024】
図5〜
図7に表れているように、出力ベルト44は、内面に凹凸歯441が形成されたタイミングベルト(歯付きベルト)として構成されている。本実施形態では、出力ベルト44は、たとえば長尺化に容易に対応可能なオープンエンドベルトを用いて作製される。オープンエンドベルトは、軸方向に沿って延びた凹凸条を有する円筒状のベルト材料を一定幅で螺旋状に切り出したものであり、このオープンエンドベルトの両端を熱融着によって接合することにより、所望の長さの無端状の出力ベルト44が形成される。このようにして得られた出力ベルト44の内面の凹凸歯441は、
図6に表れているように、幅方向に対して少し傾いている。
【0025】
出力ベルト44の材質としては、たとえば高温環境(たとえば160℃程度)での使用に対応可能なフッ化ビニリデン系のフッ素ゴム(FKM)が好適に用いられる。また、出力ベルト44は、ベルト主体部442に補強材としてのガラス心線が走行方向に沿って埋め込まれた高強度のものを採用することができる。ガラス心線を含むベルトは、引張荷重や温度変化に対する長さの変化率が比較的に小さい。出力ベルト44の寸法の一例を挙げると、走行方向の全長が5〜10m程度、幅方向の寸法L1が60mm程度、ベルト主体部442の厚さT1が2mm程度、凹凸歯441のピッチP1が8mm程度、幅方向に対する凹凸歯441の傾斜角度αが1°程度とされる。
【0026】
図4に表れているように、駆動プーリ41は、ガイド体3の長手方向における中央付近に配置されており、上記した駆動力伝達機構からの駆動力を受けて回転駆動する入力軸(図示略)と一体回転可能とされている。
【0027】
図5および
図8に表れているように、駆動プーリ41は、その外周部に回転方向において凹凸状の噛合歯411が形成された歯付きプーリとして構成されている。駆動プーリ41の軸線方向の両端部には、径方向に突出する環状の鍔部412が設けられている。噛合歯411は、出力ベルト44の凹凸歯441が噛み合う形状とされている。本実施形態では、噛合歯411は、出力ベルト44の凹凸歯441に対応するように軸線方向に対して傾いている。
【0028】
図8に表れているように、出力ベルト44は、幅方向の両端部が駆動プーリ41の両鍔部442との間に僅かな隙間を有する状態で装着されている。駆動プーリ41の寸法の一例を挙げると、噛合歯411が形成された外周部の径方向の寸法D1が130mm程度、両鍔部412間の寸法L2(噛合歯441の軸線方向長さ)が63mm程度とされる。なお、
図8において出力ベルト44は仮想線で表している。
【0029】
図4に表れているように、従動プーリ42,42は、ガイド体3の長手方向における両端付近に配置されている。従動プーリ42,42は、それぞれ支持軸(図示略)によって回転自在に支持されている。従動プーリ42,42は、それぞれ上記した駆動プーリ41と実質的に同一の構成とされており、
図9に表れているように、凹凸状の噛合歯421と、軸線方向の両端に設けられた鍔部422とを備えている。
【0030】
図4に表れているように、アイドラプーリ43,43は、出力ベルト44の移動方向において駆動プーリ41を挟んだ両側に対をなして配置されている。アイドラプーリ43,43は、それぞれ支持軸(図示略)によって回転自在に支持されている。アイドラプーリ43,43は、出力ベルト44の外面44aに当接して当該出力ベルト44に張力を付与するものである。
図10および
図11に表れているように、アイドラプーリ43は、出力ベルト44の外面44aに当接しながら軸線周りに回転するベルト走行面43aを有する。ベルト走行面43aは、軸線に沿った幅方向における中間部が両端部よりも大径となるように膨出するクラウン形状とされている。アイドラプーリ43の寸法の一例を挙げると、幅方向の寸法L3が100mm程度、幅方向中央の最大外径部の直径D2が100mm程度、幅方向端部の最小外径部の直径D3が98mm程度とされており、上記最大外径部は上記最小外径部よりも半径方向において1mm程度外側に膨出している。
【0031】
本実施形態では、アイドラプーリ43,43は、いずれも駆動プーリ41に隣接して配置されている。そして、
図4および
図10から理解されるように、各アイドラプーリ43においては、当該アイドラプーリ43の軸線に対して、ベルト走行面43aの周方向において当該ベルト走行面43aと出力ベルト44の外面44aとが接触する範囲のなす角度である巻き付け角度βは、たとえば50°以上とされる。
【0032】
本実施形態のベルト駆動装置4は、角度調整機構45(
図12参照)、およびオートテンション機構46(
図13参照)をさらに備えている。角度調整機構45は、駆動プーリ41の軸線方向に対するアイドラプーリ43の軸線方向の角度を調整するものであり、本実施形態では、一方のアイドラプーリ43について角度調整が可能とされている。たとえば、
図12に表れているように、アイドラプーリ43は、端部に取付フランジ431が連結された支持軸432に支持されおり、取付フランジ431は、ガイド体3(図示せず)に固定された支持ベース31に取り付けられている。取付フランジ431の適部には、複数ずつの貫通孔431aおよびネジ孔431bが形成されている。各貫通孔431aには、支持ベース31に植え込まれた取付ボルト311が挿通されており、この取付ボルト311の先端側からナット312を締め付けることにより、取付フランジ431が支持ベース31に締結される。各ネジ孔431bには、調整ボルト451が螺合されている。いずれかの調整ボルト451を締め付けて先端を支持ベース31に押し付けると、取付フランジ431における当該調整ボルト451の設置部位が支持ベース31から離間し、これにともないアイドラプーリ43の軸線方向が変わる。取付フランジ431における各調整ボルト451の設置部位と、支持ベース31との間隔を適宜調整することにより、アイドラプーリ43の軸線方向を調整することができる。
【0033】
オートテンション機構46は、付勢部材によって出力ベルト44の外面44aを付勢して、当該出力ベルト44に張力を付与するものである。
図13に表れているように、オートテンション機構46は、付勢部材としての圧縮コイルバネ461を備えている。この圧縮コイルバネ461は、ガイド体3(図示せず)に固定された支持部材32によって一定姿勢を保った状態で支持されるとともに、他方のアイドラプーリ43(上記した軸線方向の調整が可能なアイドラプーリ43とは異なる)の支持軸433を弾性的に押圧している。支持軸433は、支持部材32に形成された長孔32aに挿通されており、支持軸433(アイドラプーリ43)は長孔32aに沿ってスライド移動可能である。かかる構成により、出力ベルト44には、圧縮コイルバネ461の弾性力によって適度な張力が付与されている。
【0034】
図4に表れているように、駆動プーリ41および従動プーリ42,42に掛け回された出力ベルト44の移動経路のうち、従動プーリ42,42の上方に位置する領域は、直線移動区間47aとなっている。出力ベルト44は、この直線移動区間47aにおいて往復動し得る。出力ベルト44における直線移動区間47aの所定部位には、キャリッジ48が設けられており、このキャリッジ48は、ハンド5Aに連結されている。これにより、駆動プーリ41の回転駆動によって出力ベルト44が往復動させられると、キャリッジ48は、出力ベルト44とともに直線移動区間47aにおいて往復動する。そして、このキャリッジ48の移動に伴って、ハンド5Aは、上記ガイドレールに支持されながら上記移動行程GLに沿って水平にスライドする。直線移動区間47aの長さ寸法は、ハンド5Aにより搬送されるワークWの大型化や搬送距離の長大化に対応すべく比較的に長い寸法に設定にされており、たとえば4m程度である。搬送ロボットAを用いたワークWの搬送に際しては、高速化が求められている。ワーク搬送時のハンド5A,5B(出力ベルト44)の移動速度は、たとえば最高3m/秒程度とされる。
【0035】
次に、上記した実施形態に係るベルト駆動装置4の作用について説明する。
【0036】
内面に凹凸歯441を有する出力ベルト44は、アイドラプーリ43,43によって外面側から張力が付与されている。アイドラプーリ43において、出力ベルト44の外面44aに当接するベルト走行面43aは、中間部が両端部より膨出しており、ベルト走行面43aの中間部において出力ベルト44に作用する張力は、他の部位よりも高い。ベルトは走行時に張力の高い方に寄る性質があるため、本実施形態の出力ベルト44が往復動する際には、
図11に表れているように、当該出力ベルト44は、ベルト走行面43aの中央寄りに位置するように矯正される。したがって、出力ベルト44の往復動時にプーリ軸線方向へ片寄るのを抑制することができる。これにより、駆動プーリ41および従動プー42,42の鍔部412,422への出力ベルト44の接触が抑制され、出力ベルト44の長寿命化を図ることができる。
【0037】
本実施形態では、歯付きプーリとして構成された駆動プーリ41や従動プーリ42,42をクラウン形状にするのではなく、出力ベルト44のフラットな外面44aに当接させるアイドラプーリ43,43をクラウン形状にしている。このような構成によれば、従動プーリ42,42等をクラウン形状にする場合に比べて、複雑な加工等を必要とせず、ベルト駆動装置4の製造コストの高騰化を抑制することができる。
【0038】
出力ベルト44の内面の凹凸歯441は、出力ベルト44の幅方向に対して傾いており、駆動プーリ41および従動プーリ42,42のそれぞれの噛合歯411,421は、凹凸歯441に対応してそれぞれの軸線方向に対して傾いている。このため、出力ベルト44の走行時には、上記した凹凸歯441の傾きに起因して幅方向の一方に片寄りやすい。また、出力ベルト44が直線移動区間47aにおいて往復動させられると、出力ベルト44は、一方向への走行時には幅方向の一方に変位しやすく、反対方向への走行時には幅方向の他方に変位しやすい。ここで、アイドラプーリ43によって出力ベルト44を幅方向の中央寄りに戻す矯正作用については、アイドラプーリ43が、駆動プーリ41に対してベルト走行方向の上流側に位置する場合よりも下流側に位置する場合の方が大きい。本実施形態では、駆動プーリ41を挟んだ両側にアイドラプーリ43,43が配置されている。この構成は、出力ベルト44が往復動する際に、出力ベルト44の幅方向両側への変位を抑制するのに適している。
【0039】
アイドラプーリ43,43は、駆動プーリ41に隣接して配置されており、アイドラプーリ43のベルト走行面43aにベルト44の外面44aが接触する巻き付け角度βは、50°以上である。このように一定以上の巻き付け角度βを確保することにより、出力ベルト44に対して張力が適切に付与されるとともに、出力ベルト44を幅方向中央寄りに戻す矯正作用が適切に発揮される。
【0040】
本実施形態のベルト駆動装置4は、駆動プーリ41の軸線方向に対するアイドラプーリ43の軸線方向の角度を調整するための角度調整機構45を備えている。出力ベルト44が長尺になると、出力ベルト44の個体差のばらつきが大きくなり、出力ベルト44の走行時に幅方向に片寄る影響についてもばらつきが出やすくなる。これに対し、本実施形態では、アイドラプーリ43の軸線方向を調整することにより、出力ベルト44の個体差のばらつきによる影響を抑制することができる。このことは、出力ベルト44の走行時における幅方向への変位を抑制するうえで好ましい。
【0041】
本実施形態のベルト駆動装置4は、
図13を参照して上述したように、オートテンション機構46を備えている。本実施形態のベルト駆動装置4を備えて構成された搬送ロボットAは、高温環境下で使用される場合がある。搬送ロボットAが高温環境下で使用されると、従動プーリ42,42の軸線間の距離が延びて出力ベルト44が引っ張られる場合がある。ここで、アイドラプーリ43は、圧縮コイルバネ461の弾性力を受けつつ出力ベルト44の張力が緩む方向に移動し、出力ベルト44には適度な張力が付与されることとなる。
【0042】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の技術的範囲は上記した実施形態に限定されるものではない。本発明に係るベルト駆動装置の各部の具体的な構成は、発明の思想から逸脱しない範囲内で種々な変更が可能である。
【0043】
上記実施形態では、
図4を参照して、アイドラプーリ43,43が駆動プーリ41に隣接して配置された場合を例に挙げて説明したが、本発明に係るクラウン形状のアイドラプーリの配置はこれに限定されない。たとえば、
図4に示す構成に代えて、直線移動区間を規定する従動プーリ42(第1および第2の従動プーリ)の近傍に、本発明に係るアイドラプーリを配置してもよい。
図14は、そのようなアイドラプーリ43を備えた構成の一例(ベルト駆動装置4A)を示している。従動プーリ42の近傍にアイドラプーリ43を配置する場合、このアイドラプーリ43に対し、従動プーリ42が位置する方とは反対側に追加の従動プーリ52を隣接して配置することにより、アイドラプーリ43の走行面における出力ベルト44の巻き付け角度を十分に確保することができる。
図14に示す場合、駆動プーリ41を挟む両側には、
図4におけるアイドラプーリ43に代えて普通の円筒状のアイドラプーリ49を配置しており、駆動プーリ41における出力ベルト44の巻き付け角度を十分に確保している。また、
図4に示す構成に加えて、直線移動区間を規定する従動プーリ42(第1および第2の従動プーリ)の近傍に、本発明に係るアイドラプーリを追加的に配置してもよい。
図15は、追加のアイドラプーリ53を備えた構成の一例(ベルト駆動装置4B)を示している。従動プーリ42の近傍にアイドラプーリ53を追加する場合、このアイドラプーリ53に対し、従動プーリ42が位置する方とは反対側に追加の従動プーリ52を隣接して配置することにより、アイドラプーリ53の走行面における出力ベルト44の巻き付け角度を十分に確保することができる。
【0044】
上記実施形態では、
図4を参照して、離間する一対の従動プーリ42,42の中間に駆動プーリ41が配置された場合を例に挙げて説明したが、駆動プーリ41の配置はこれに限定されない。
図4に示す構成に代えて、たとえば従動プーリ42,42のいずれか一方の位置に駆動プーリが配置された構成としてもよい。
図16は、そのような駆動プーリ41を備えた構成の一例(ベルト駆動装置4C)を示しており、
図4において駆動プーリ41が配置されたていた位置に従動プーリ42が配置されている。
【0045】
上記実施形態のベルト駆動装置は、出力ベルトを往復動させることにより、この出力ベルトの動きに応じてキャリッジ(移動対象物)を移動させるように構成されていたが、これに限定されない。本発明は、たとえば、駆動プーリに入力された回転駆動力を従動プーリの回転によって出力させることを目的として構成されたベルト駆動装置に適用することもできる。