特許第6105790号(P6105790)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6105790酸性乳含有高清澄飲料の製造方法および酸性乳の高清澄化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6105790
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】酸性乳含有高清澄飲料の製造方法および酸性乳の高清澄化方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/70 20060101AFI20170316BHJP
   A23L 2/38 20060101ALI20170316BHJP
   A23C 9/00 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   A23L2/00 K
   A23L2/38 P
   A23C9/00
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-111646(P2016-111646)
(22)【出願日】2016年6月3日
【審査請求日】2016年6月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】阿部 彰宏
【審査官】 藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−154652(JP,A)
【文献】 特開昭57−144937(JP,A)
【文献】 特開昭50−016422(JP,A)
【文献】 特開2008−067625(JP,A)
【文献】 特開2011−184314(JP,A)
【文献】 特公昭49−020508(JP,B1)
【文献】 特表2004−520851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00
A23C 9/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA/FROSTI/WPIDS/WPIX(STN)
日経テレコン
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳タンパク質を含み、かつpHが3.5未満である酸性乳を準備する工程と、
95℃以上130℃以下の温度で前記酸性乳を加熱殺菌する工程と、
前記加熱殺菌する工程の後、前記酸性乳の液温が45℃以下となるように前記液温を降温させる工程と、
をこの順で含む酸性乳含有高清澄飲料の製造方法であって
前記加熱殺菌する工程の後、5分以内に前記降温させる工程を開始し、
前記降温させる工程において、前記液温が55℃以上95℃未満の温度領域にある時間が2分未満となるように前記酸性乳を冷却し、
前記酸性乳含有高清澄飲料の波長650nmにおける吸光度が0.02以下である、酸性乳含有高清澄飲料の製造方法。
【請求項2】
前記酸性乳含有高清澄飲料の波長650nmにおける吸光度が0.009以下である、請求項1に記載の酸性乳含有高清澄飲料の製造方法。
【請求項3】
前記降温させる工程において、前記酸性乳の冷却を開始してから前記液温が45℃になるまでの降温時間が2分未満である、請求項1または2に記載の酸性乳含有高清澄飲料の製造方法。
【請求項4】
前記降温させる工程の後に、前記酸性乳を容器に充填する工程をさらに含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の酸性乳含有高清澄飲料の製造方法。
【請求項5】
乳タンパク質を含み、かつpHが3.5未満である酸性乳を準備する工程と、
95℃以上130℃以下の温度で前記酸性乳を加熱殺菌する工程と、
前記加熱殺菌する工程の後、前記酸性乳の液温が45℃以下となるように前記液温を降温させる工程と、
をこの順で含み、
前記加熱殺菌する工程の後、5分以内に前記降温させる工程を開始し、
前記降温させる工程において、前記液温が55℃以上95℃未満の温度領域にある時間が2分未満となるように前記酸性乳を冷却し、
前記降温させる工程の後に測定した前記酸性乳の波長650nmにおける吸光度が0.02以下となるように前記酸性乳を調製する、酸性乳の高清澄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性乳含有高清澄飲料の製造方法および酸性乳の高清澄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸性乳飲料は、独特の味わいを呈する嗜好性の高い清涼飲料の1種として知られている。この酸性乳飲料にはカゼイン等の乳タンパク質が、必須成分として含まれている。そして、酸性乳飲料中において上記乳タンパク質は、複数の分子が会合してなるコロイド粒子の状態で該飲料中に分散している。つまり、従来の酸性乳飲料には、乳タンパク質からなる上記コロイド粒子が、不溶物として分散された状態で存在しているといえる。そのため、従来の酸性乳飲料には、通常、上記コロイド粒子の分散状態を安定化させて、かかるコロイド粒子が凝集して沈殿することを抑制する目的で、ペクチンや大豆多糖類等の増粘剤が配合されている(特許文献1等)。
また、従来の酸性乳飲料は、該飲料中に分散されている上記コロイド粒子による影響で白濁したものがほとんどである。
【0003】
市場に流通させることを目的とした酸性乳飲料の代表的な製造プロセスにおいては、内容物である飲料溶液を調製し、得られた飲料溶液を均質化処理した後に、加熱殺菌した上で容器に充填することが行われていた(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−41018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
酸性乳飲料を含む各種清涼飲料の需要は、一般に、止渇する目的で消費者が該飲料を摂取する夏場などの気温が高い時期に増大する傾向にあるとされている。しかし、従来の酸性乳飲料は、背景技術の項で述べたとおり、不溶物として含まれている乳タンパク質による影響で白濁したものである。そのため、従来の酸性乳飲料は、炭酸飲料、スポーツドリンク、果実の風味を付与した水様飲料等といった透明度の高い清澄飲料と比べて、止渇飲料としての需要が低下する傾向にあった。
こうした事情を踏まえ、本発明者は、酸性乳飲料のように酸性乳特有の味わいを呈することが可能であり、かつ高清澄な清涼飲料を実現すべく、その設計指針について鋭意検討した。
【0006】
しかし、特許文献1等に記載されている従来の酸性乳飲料は、該飲料中に乳タンパク質からなるコロイド粒子が不溶物として含まれている以上、その透明度を向上させるという点において限界を有していた。
【0007】
そこで、本発明は、酸性乳を含むことを前提とした飲料の高清澄化技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、従来の酸性乳飲料中に不溶物として含まれていた乳タンパクからなるコロイド粒子の分散状態を改良することにより該飲料の高清澄化を図るのではなく、乳タンパク質を可溶物として含む酸性乳を作製する手法を確立することが、該酸性乳を含むことを前提とした高清澄化飲料を実現するための設計指針として有効であることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明によれば、乳タンパク質を含み、かつpHが3.5未満である酸性乳を準備する工程と、
95℃以上130℃以下の温度で前記酸性乳を加熱殺菌する工程と、
前記加熱殺菌する工程の後、前記酸性乳の液温が45℃以下となるように前記液温を降温させる工程と、
をこの順で含む酸性乳含有高清澄飲料の製造方法であって
前記加熱殺菌する工程の後、5分以内に前記降温させる工程を開始し、
前記降温させる工程において、前記液温が55℃以上95℃未満の温度領域にある時間が2分未満となるように前記酸性乳を冷却し、
前記酸性乳含有高清澄飲料の波長650nmにおける吸光度が0.02以下である、酸性乳含有高清澄飲料の製造方法が提供される。
【0010】
さらに、本発明によれば、乳タンパク質を含み、かつpHが3.5未満である酸性乳を準備する工程と、
95℃以上130℃以下の温度で前記酸性乳を加熱殺菌する工程と、
前記加熱殺菌する工程の後、前記酸性乳の液温が45℃以下となるように前記液温を降温させる工程と、
をこの順で含み、
前記加熱殺菌する工程の後、5分以内に前記降温させる工程を開始し、
前記降温させる工程において、前記液温が55℃以上95℃未満の温度領域にある時間が2分未満となるように前記酸性乳を冷却し、
前記降温させる工程の後に測定した前記酸性乳の波長650nmにおける吸光度が0.02以下となるように前記酸性乳を調製する、酸性乳の高清澄化方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、酸性乳を含むことを前提とした飲料の高清澄化技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<酸性乳含有高清澄飲料の製造方法>
本実施形態に係る酸性乳含有高清澄飲料の製造方法(以下、本製造方法とも示す。)は、次の3工程をこの順で含む。第1の工程は、乳タンパク質を含み、かつpHが3.5未満である酸性乳を準備する工程である。第2の工程は、95℃以上130℃以下の温度で酸性乳を加熱殺菌する工程である。第3の工程は、上記第2の工程(加熱殺菌する工程)の後、酸性乳の液温が45℃以下となるように上記液温を降温させる工程である。そして、本製造方法は、上記第3の工程(降温させる工程)において、液温が55℃以上95℃未満の温度領域にある時間が2分未満となるように酸性乳を冷却する。また、本製造方法において、上記第3の工程(降温させる工程)の後に測定した酸性乳の波長650nmにおける吸光度は、0.02以下となる。
【0013】
以下、本製造方法の手順について、詳細に説明する。
【0014】
本製造方法においては、まず、乳タンパク質を含み、かつpHが3.5未満である酸性乳を準備する。
本実施形態における酸性乳とは、pHが7未満である乳、すなわち、pHが酸性を示す乳のことを指す。具体的には、本実施形態に係る酸性乳は、pHを3.5未満に制御することができるものであれば、乳酸菌やビフィズス菌などの微生物を用いて乳原料を発酵させて調製された発酵乳であっても、果汁や酸味料等の酸性成分を用いて乳原料を発酵させることなく調製された非発酵乳であってもよい。本製造方法に係る酸性乳を調製するために用いる上記乳原料としては、乳タンパク質を含むものであれば公知のものを使用することができ、たとえば、生乳、牛乳、全粉乳、脱脂粉乳、生クリーム、濃縮乳、部分脱脂乳、練乳、粉乳等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、本製造方法において準備する酸性乳は、pHが3.5未満となるように調整したものであれば、乳タンパク質が不溶物として含まれている従来の酸性乳飲料であってもよい。すなわち、本製造方法において準備する酸性乳は、市販の殺菌済み酸性乳飲料についてpHが3.5未満となるように調整したものであってもよい。
【0015】
本製造方法において準備する酸性乳は、該酸性乳中に含まれる乳タンパク質の水に対する溶解性を向上させる観点から、pH3.5未満のものである必要がある。かかる酸性乳のpHは、本製造方法により得られる飲料中に乳タンパク質が不溶物として析出することを防ぐ観点から、好ましくは、pH3.4以下であり、さらに好ましくは、pH3.3以下である。一方、酸性乳のpHの下限値は、本製造方法により得られる飲料中の香気成分が劣化することを抑制する観点から、たとえば、pH2.8以上とすることができる。そのため、酸性乳のpHの下限値が上記数値範囲内となるように制御された場合、結果として、本製造方法により得られる飲料の嗜好性を向上させることができる。
なお、乳タンパク質の等電点は、一般に、pH4.6であることが知られている。かかる等電点の値は、上記乳タンパク質の主成分として知られているカゼインの等電点(pH4.6)に起因している。
【0016】
本製造方法において準備する酸性乳の乳タンパク質含有量は、本製造方法により得られる飲料において、かかる飲料全量に対する乳タンパク質含有量が後述する数値範囲内となるように、制御されたものであることが好ましい。具体的には、本製造方法により得られる飲料全量に対する乳タンパク質含有量は、好ましくは、5ppm以上100ppm以下であり、さらに好ましくは、10ppm以上70ppm以下である。こうすることで、本製造方法により得られる飲料中に乳タンパク質が不溶物として析出することを抑制することができる。
【0017】
本製造方法において準備する酸性乳のBrix値は、本製造方法により得られる飲料の嗜好性を向上させる観点から、好ましくは、1°以上10°以下であり、より好ましくは、3°以上9°以下であり、さらに好ましくは、4°以上8°以下である。
【0018】
また、本製造方法において準備する酸性乳の酸度は、本製造方法により得られる飲料の嗜好性を向上させる観点から、好ましくは、0.05質量%以上0.3質量%以下であり、さらに好ましくは、0.1質量%以上0.2質量%以下である。なお、本実施形態に係る酸性乳の「酸度」とは、該酸性乳中に含まれている酸の量をクエン酸の相当量として換算した値、すなわち、クエン酸酸度(質量%)として表した数値を指す。
【0019】
本製造方法において準備する酸性乳の無脂乳固形分含有量は、本製造方法により得られる飲料において、かかる飲料全量に対する無脂乳固形分含有量が後述する数値範囲内となるように、制御されたものであることが好ましい。具体的には、本製造方法により得られる飲料全量に対する無脂乳固形分含有量は、好ましくは、0.001質量%以上0.1質量%以下であり、さらに好ましくは、0.002質量%以上0.05質量%以下である。こうすることで、本製造方法により得られる飲料中に、上記無脂乳固形分の1成分である乳タンパク質が不溶物として析出することを抑制することができる。
【0020】
また、本製造方法において準備する酸性乳は、飲料の高清澄化という観点において本発明の目的を損なわない範囲であれば、各種栄養成分、抽出物、甘味料、着色料、希釈剤、酸化防止剤等の食品添加物を含むものであってもよい。
【0021】
次に、本製造方法においては、準備した酸性乳を95℃以上130℃以下の温度で加熱殺菌する。これにより、加熱殺菌前の酸性乳が白濁したものである場合、すなわち、乳タンパク質が酸性乳中に分散した状態にある場合であったとしても、酸性乳中に不溶物として含まれている乳タンパク質を可溶化することができる。そのため、本製造方法によれば、上述した温度で準備した酸性乳を加熱殺菌することにより、結果として、高清澄化された殺菌済みの酸性乳を得ることができる。
【0022】
本製造方法における酸性乳の加熱殺菌温度は、95℃以上130℃以下であるが、乳タンパク質の水に対する溶解度を向上させる観点から、好ましくは、100℃以上120℃以下であり、さらに好ましくは、113℃以上120℃以下である。
【0023】
次いで、本製造方法においては、酸性乳の液温を45℃以下の温度まで降温させる。このとき、本製造方法においては、酸性乳の加熱殺菌温度に関係なく、該酸性乳の冷却を開始してから該酸性乳の液温が最初に45℃となるまでの間において、該酸性乳の液温が55℃以上95℃未満の温度領域にある時間が2分未満となるように酸性乳を冷却することが重要である。こうすることで、加熱殺菌後の酸性乳中に可溶物として含まれている乳タンパク質が、液温の低下に伴って不溶化することを抑制できる。つまり、本製造方法においては、加熱殺菌して得られた酸性乳の液温を降温させる際の温度プロファイルを上述した条件を満たすように制御することで、冷却後の酸性乳が白濁することを効果的に抑制することができる。言い換えれば、本製造方法においては、加熱殺菌して得られた酸性乳の液温を降温させる際の温度プロファイルを上述した条件を満たすように制御することで、乳タンパク質の水に対する溶解度、すなわち乳タンパク質の可溶性を保持したまま、酸性乳を冷却することができる。
【0024】
また、本製造方法においては、準備した酸性乳を加熱殺菌した後、所定の時間内に酸性乳の冷却処理を開始することが好ましい。具体的には、本製造方法における酸性乳の液温を降温させる工程は、加熱殺菌処理を終えてから、5分以内に開始することが好ましく、3分以内に開始するとより好ましく、2分以内に開始するとさらに好ましい。こうすることで、加熱殺菌したことにより昇温した酸性乳が、加熱殺菌後の保管時に自然冷却されることを抑制することができる。そのため、本製造方法において、加熱殺菌してから冷却処理を開始するまでの時間が上述した数値範囲内となるように制御した場合、結果として、加熱殺菌後の酸性乳中に可溶物として含まれている乳タンパク質が、不溶化して析出することを抑制できる。
【0025】
また、本製造方法に係る降温させる工程において、酸性乳の液温が55℃以上95℃未満の温度領域にある時間は、上述したように、2分未満であるが、好ましくは、1秒以上1分以下であり、さらに好ましくは、1秒以上30秒以下であり、最も好ましくは、1秒以上10秒以下である。こうすることで、乳タンパク質の水に対する溶解度、すなわち乳タンパク質の可溶性を保持したまま、酸性乳を冷却することができる。
【0026】
本製造方法において、酸性乳の液温の降温時間は、好ましくは、2分未満であり、より好ましくは、1秒以上1分以下であり、さらに好ましくは、1秒以上30秒以下であり、最も好ましくは、1秒以上10秒以下である。こうすることで、加熱殺菌後の酸性乳中に可溶物として含まれている乳タンパク質が、不溶化して析出することを効果的に防ぐことができる。なお、本製造方法における上記降温時間とは、酸性乳の冷却を開始してから該酸性乳の液温が最初に45℃となるまでの時間のことを指す。
【0027】
本製造方法において、加熱殺菌してから液温が45℃以下となるように冷却した後の状態にある酸性乳の波長650nmにおける吸光度は、0.02以下であるが、好ましくは、0.009以下であり、より好ましくは、0.006以下であり、さらに好ましくは、0.003以下である。
ここで、白濁した状態にある従来の酸性乳飲料の波長650nmにおける吸光度は、通常、1以上の値を示す場合がほとんどである。また、止渇飲料の1種として市場に流通している従来のスポーツドリンクの波長650nmにおける吸光度は、通常、0.2程度の値を示す場合がほとんどである。このことから、本製造方法により得られる加熱殺菌してから液温が45℃以下となるように冷却した後の状態にある酸性乳は、従来の酸性乳飲料や、スポーツドリンク等の止渇飲料と比べて、非常に透明性の高いものであるといえる。
【0028】
次いで、本製造方法においては、得られた酸性乳を容器に充填する。こうすることで、本実施形態に係る容器詰め酸性乳含有高清澄飲料を得ることができる。
【0029】
本製造方法において、容器に充填する酸性乳の液温は、特に限定されず、45℃以下であってもよいし、45℃以上であってもよい。
【0030】
また、酸性乳を充填する容器は、飲料業界で公知の密封容器であれば、適宜選択して用いることができる。その具体例としては、ガラス、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート(PET)等)、アルミ、スチール等の単体もしくは複合材料又は積層材料からなる密封容器が挙げられる。また、容器形状は、特に限定されるものではないが、たとえば、缶容器、ボトル容器等が挙げられる。さらに、本製造方法により得られる高清澄飲料を充填する容器の色は、特に限定されないが、無色透明であることが好ましい。
【0031】
<酸性乳の高清澄化方法>
本実施形態に係る酸性乳の高清澄化方法は、次の3工程をこの順で含む。第1の工程は、乳タンパク質を含み、かつpHが3.5未満である酸性乳を準備する工程である。第2の工程は、95℃以上130℃以下の温度で酸性乳を加熱殺菌する工程である。第3の工程は、上記第2の工程(加熱殺菌する工程)の後、酸性乳の液温が45℃以下となるように上記液温を降温させる工程である。そして、本実施形態に係る酸性乳の高清澄化方法は、上記第3の工程(降温させる工程)において、液温が55℃以上95℃未満の温度領域にある時間が2分未満となるように酸性乳を冷却し、かつ上記第3の工程(降温させる工程)の後に測定した酸性乳の波長650nmにおける吸光度が0.02以下となるように酸性乳を調製する必要がある。
【0032】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
<酸性乳の準備>
白濁した状態にある市販の殺菌済み乳酸菌飲料に対して、下記表1に示す配合比率となるように、果糖ぶどう糖液糖と、砂糖と、食塩とを、予め水に溶解させてから添加混合した。なお、上記市販の殺菌済み乳酸菌飲料は、必要に応じて、予め水で希釈したものを使用した。
次いで、得られた混合液のpHが3.3となるように、クエン酸、乳酸、およびクエン酸三ナトリウムからなる所定量の酸味料を添加混合することによりpHを調整した。このようにして得られた溶液を、後述する実施例および比較例の飲料を作製するために用いる酸性乳として準備した。得られた酸性乳のBrix値は、8.0°であり、クエン酸酸度は、0.15%であった。
【0035】
<実施例および比較例に係る容器詰め飲料の作製>
上述した方法で準備した酸性乳に対して、115℃で30秒間の加熱殺菌処理を実施した。次いで、得られた殺菌処理済み酸性乳の液温が下記表1に示す温度となるように10秒間弱の冷却処理を施し、その直後に該酸性乳を透明な容器に充填し、2分間保持した。なお、上記冷却処理は、加熱殺菌処理の終了後5秒以内に開始した。また、冷却処理終了後から上述した2分間の保持を完了するまでの間において、該酸性乳の液温が下記表1に示す冷却処理終了後の温度から2℃以上低下することはなかった。
その後、容器内に充填されている該酸性乳の液温が20℃となるように水冷した。このようにして得られた容器詰め酸性乳を、各実施例および各比較例に係る酸性乳含有高清澄飲料として作製した。
【0036】
得られた各飲料について、次の評価を実施した。
【0037】
・不溶物の量;各飲料の外観について、熟練したパネラーが以下の評価基準に従って目視にて評価を実施した。
5:不溶物は含まれていなかった。
4:高清澄飲料として、実用上問題ないレベルであるが、極わずかの不溶物が含まれていた。
3:高清澄飲料として、実用上問題ないレベルであるが、少量の不溶物が含まれていた。
2:高清澄飲料として、実用上問題がある程度の不溶物が含まれていた。
1:高清澄飲料として、実用上問題がある程度の不溶物が大量に含まれていた。
【0038】
・波長650nmにおける吸光度:分光光度計を用いて各飲料の波長650nmにおける吸光度を測定した。なお、吸光度測定は、20℃の温度条件下、石英セルを用いて実施した。
【0039】
上記評価項目に関する評価結果を、以下の表1にまとめる。
【0040】
【表1】
【0041】
各実施例の酸性乳含有高清澄飲料は、いずれも、透明性に優れ、かつ不溶物量の少ない高清澄化された飲料であった。一方、各比較例の酸性乳含有高清澄飲料は、波長650nmにおける吸光度が各実施例と同様の値を示すという点において透明性に優れたものであるが、不溶物が沈殿したものであった。そのため、各比較例の酸性乳含有高清澄飲料は、実用上、改善の余地を有したものであった。
表1からも分かるように、各実施例の製造プロセスは、各比較例に係る製造プロセスと比べて、得られる飲料中に不純物が発生することを抑制することができる。このことから、各実施例に係る酸性乳含有高清澄飲料の製造プロセスでは、該飲料の製造工程において、水に対して可溶な状態にある乳タンパク質が熱変性して不溶化することを、各比較例に係る酸性乳含有高清澄飲料の製造プロセスと比べて、効果的に抑制できているものと考えられる。
【要約】
【課題】酸性乳を含むことを前提とした飲料の高清澄化技術を提供する。
【解決手段】乳タンパク質を含み、かつpHが3.5未満である酸性乳を準備する工程と、95℃以上130℃以下の温度で前記酸性乳を加熱殺菌する工程と、前記加熱殺菌する工程の後、前記酸性乳の液温が45℃以下となるように前記液温を降温させる工程と、をこの順で含み、前記降温させる工程において、前記液温が55℃以上95℃未満の温度領域にある時間が2分未満となるように前記酸性乳を冷却し、前記降温させる工程の後に測定した前記酸性乳の波長650nmにおける吸光度が0.02以下である。
【選択図】なし