特許第6105896号(P6105896)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6105896液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6105896
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/04 20060101AFI20170316BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20170316BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20170316BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20170316BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20170316BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20170316BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20170316BHJP
   A61Q 1/06 20060101ALI20170316BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20170316BHJP
   A61Q 1/08 20060101ALI20170316BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20170316BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20170316BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20170316BHJP
   C08G 81/00 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   C08G77/04
   A61K8/891
   A61K8/92
   A61Q5/00
   A61Q19/00
   A61Q1/04
   A61Q17/04
   A61Q1/06
   A61Q1/10
   A61Q1/08
   A61Q5/06
   A61Q1/02
   C08L83/04
   C08G81/00
【請求項の数】11
【全頁数】44
(21)【出願番号】特願2012-232543(P2012-232543)
(22)【出願日】2012年10月22日
(65)【公開番号】特開2013-241562(P2013-241562A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2015年10月19日
(31)【優先権主張番号】特願2012-98200(P2012-98200)
(32)【優先日】2012年4月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000110077
【氏名又は名称】東レ・ダウコーニング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】正富 亨
(72)【発明者】
【氏名】宮野 淳
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 哲
(72)【発明者】
【氏名】神崎 康枝
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−526362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/04
A61K 8/891
A61K 8/92
A61Q 1/02
A61Q 1/04
A61Q 1/06
A61Q 1/08
A61Q 1/10
A61Q 5/00
A61Q 5/06
A61Q 17/04
A61Q 19/00
C08G 81/00
C08L 83/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RSiO3/2 (式中、Rはフェニル基またはナフチル基である)で示されるアリールシロキシ単位を、ポリマーを構成する全シロキシ単位の20〜50モル%含有し、かつ、分子中のSi原子1モルに対するフェニル基またはナフチル基のモル数が平均して1.20〜1.65の範囲にあることを特徴とする、液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン。
【請求項2】
下記平均組成式(1)で示される請求項1に記載の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン。
平均組成式(1):

(RRRSiO1/2)a(RRSiO2/2)b(R SiO3/2)c(R’ SiO3/2)d(SiO4/2)e (1)

(式中、R〜Rは各々独立に一価の有機基または水素原子であり、Rはフェニル基またはナフチル基であり、R’はアリール基以外の一価の有機基または水素原子であり、0.20≦c≦0.50であり、a+b+c+d+e=1.0であり、R〜Rの一部または全部はアリール基であり、a〜eは、分子中のSi原子1モルに対するフェニル基またはナフチル基のモル数が平均して1.20〜1.65の範囲となる数である。)
【請求項3】
下記平均組成式(1−1)で示される請求項1または請求項2に記載の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン。
平均組成式(1−1):

(RA2RSiO1/2)a’( RA RSiO2/2)b’( RA SiO3/2)c’ (1−1)

(式中、RAはフェニル基またはナフチル基であり、R〜Rは各々独立に一価の有機基または水素原子であり、0.10≦b’≦0.40かつ0.20≦c’≦0.50であり、a’+b’+c=1.0であり、a’〜 c’は分子中のSi原子1モルに対するフェニル基またはナフチル基のモル数が平均して1.20〜1.65の範囲となる数である。)
【請求項4】
屈折率が1.50以上であり、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィ)で測定した重量平均分子量が500〜2,000の範囲であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン。
【請求項5】
(A)請求項1〜4のいずれかに記載の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン および
(B)油剤(ただし、成分(A)に該当するものを除く) を含有してなり、組成物全体の屈折率が1.45以上であり、25℃における組成物全体の粘度が100〜100,000mPa・sの範囲にあるアリール基含有ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項6】
前記の成分(B)が、下記構造式(2−1)または構造式(2−2)で示されるフェニル基含有オルガノポリシロキサンであることを特徴とする、請求項5に記載のアリール基含有ポリオルガノシロキサン組成物。
構造式:
【化1】
(式中、Rは、フェニル基、アラルキル基、水素原子、水酸基または炭素原子数1〜20のアルキル基もしくはフッ化アルキル基から選択される基であり、このうちモル比で少なくとも50%がフェニル基であり、n1またはn2は0〜1000の範囲の数であり、n3は1〜1000の範囲の数である。)
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンを含有する化粧料組成物。
【請求項8】
請求項5または請求項6に記載の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン組成物を含有する化粧料組成物。
【請求項9】
さらに、(C)1種類以上の親油性化粧品原料を含有する、請求項7または請求項8に記載の化粧料組成物。
【請求項10】
メイクアップ化粧料、毛髪化粧料または皮膚化粧料のいずれかである、請求項7〜9のいずれかに記載の化粧料組成物。
【請求項11】
(A−1)25℃で固体であり、ポリマーを構成する全シロキシ単位の50モル%以上がRSiO3/2 (式中、Rはフェニル基またはナフチル基である)で示されるアリールシロキシ単位であるアリール基含有ポリオルガノシロキサン、RSiX3−n4(ORn4 (式中、Rはフェニル基またはナフチル基であり、Xはハロゲン原子であり、Rは、各々独立に、水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基であり、n4は0〜3の範囲の数である)で示されるオルガノシランおよび該オルガノシランの縮合反応物から選ばれる1種類以上の有機珪素化合物
(A−2)下記構造式(3)で示されるアリール基含有オルガノポリシロキサンオリゴマー、
構造式(3):
【化2】
(式中、R10は、各々独立に、一価の有機基であり、このうちモル比で少なくとも50%がフェニル基またはナフチル基であり、n5は0〜10の範囲の数である。)および
(A−3)触媒 を混合する工程(I)、
工程(I)の混合物を、平衡化反応させる工程(II)
を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐構造を有し、液状かつアリール基(主にフェニル基またはナフチル基)の含有量が高いために高屈折率を呈し、油剤または親油性成分との相溶性に優れ、さらに、油剤と混合した場合、長期間保管しても、加水分解に伴う、濁りを生じることがなく、非水系の化粧料にも安定的に配合することができ、かつ、少量で厚みのある外観を与え、化粧崩れが起こりにくく、化粧効果の持続性に優れた新規な液状アリール基含有オルガノポリシロキサンに関するものである。また、本発明は、新規な液状アリール基含有オルガノポリシロキサンを用いてなるアリール基含有ポリオルガノシロキサン組成物、化粧料組成物および当該液状オルガノポリシロキサンの簡便な製造方法に関する。なお、本件発明に係る新規な液状アリール基含有オルガノポリシロキサンは、本件出願人が特開2011−136935号公報において提案した化粧料原料および光沢化粧料と共通の用途に用いることができ、同様に、本件発明に係る新規な液状アリール基含有オルガノポリシロキサンと油剤からなる組成物は、特表2007−535586号公報および特開2009−019033号公報に提案されている各種のフェニルシルセスキオキサン樹脂組成物と共通の用途に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
フェニルシルセスキオキサン樹脂に代表されるフェニル基を有するシリコーン樹脂やメチルフェニルポリシロキサンは化粧料の成分として広く使用されており、毛髪等に光沢を与えることも知られている(例えば、特許文献1参照)。また、INCI名では、「フェニルトリメチコン」として知られるメチルフェニルポリシロキサンは、化粧料にツヤと光沢を付与することができることから、化粧料の分野で広く使用されている(特許文献2)。さらに、フェニル基を有するシリコーン化合物が、高屈折率を有することは広く知られており、屈折率のコントロールにおいて、ポリシロキサン側鎖の置換基をフェニル基とすることで、高屈折率化することができることも知られている(例えば、非特許文献1または非特許文献2)。また、特許文献3には、フェニル基含有量が50%以上のアルキルフェニルポリシロキサンを必須の構成成分とする、透明感とつややかさにすぐれた化粧料が提案されている。
【0003】
しかしながら、フェニル基を有するシリコーン樹脂は透明感および屈折率に優れるが、その粘度調整が困難であり、通常のシリコーンオイルで希釈して使用すると、組成物全体の屈折率が1.50以上(より好適には1.55〜1.60)に維持することができず、その屈折率が低下して化粧料に十分な光沢を付与することができないという問題があった。一方、メチルフェニルポリシロキサンは、屈折率に優れるものであるが、フェニル基の置換率を50%以上とし、かつ200mPa・sを超えるような高粘度のメチルフェニルポリシロキサンを容易に製造することが一般に困難であり、さらに、鎖状のメチルフェニルポリシロキサンは、三次元架橋構造を有しないため、低粘度を呈し、化粧料から溶出しやすく、単独で配合した場合、特に化粧料に対する継続的な光沢の付与および使用感の改善は十分に満足できるものではなかった。
【0004】
一方、特許文献4には、パーソナルケア組成物等に有用であり、適用後の粉剤の耐久性及び持続性を強化するアルキル−フェニルシルセスキオキサン樹脂組成物が開示されており、特許文献5には、光沢の付与等を目的として、重量平均分子量2,000〜30,000のプロピルフェニルシルセスキオキサン樹脂と、フェニルシリコーン等の芳香族溶媒および任意で共溶媒を含有してなる化粧用組成物が開示されている。
【0005】
しかしながら、これらのプロピルフェニルシルセスキオキサン樹脂を含有する組成物は、高屈折率であるため、化粧料に対する継続的な光沢の付与に一定の効果を発揮するものであるが、その外観、使用感においてさらなる改善が求められていた。さらに、かかる組成物は、プロピルフェニルシルセスキオキサン樹脂と特にフェニルシリコーンとの相溶性が不十分となってオイル成分の分離を生じやすく、均一な組成物を容易に得ることが困難であった。特に、該成分を配合した化粧料の保存安定性が不十分であるという問題があった。また、その粘度をコントロールすることが困難であるという問題があった。さらに、シリコーンパウダーとフェニルシリコーンオイルを併用した系では、使用感を改善できるが、ツヤや輝きといった外観や十分な屈折率と透明感の点で、さらなる改善が求められており、さらにその保存安定性も十分に満足できるものではなかった。
【0006】
そこで、本件出願人らは、特許文献6において、組成物全体が高屈折率を呈し、フェニルシルセスキオキサン樹脂とフェニル基含有オルガノポリシロキサンが均一に相溶しているために、化粧料への配合安定性、取り扱い性にすぐれ、その粘度を容易に調整可能なフェニル基含有オルガノポリシロキサン組成物として、(A)重量平均分子量が500〜2,000の範囲であり、樹脂を構成するシロキシ単位の15モル%以上がフェニルシロキシ単位(CSiO3/2)であるフェニルシルセスキオキサン樹脂および(B)25℃で液状であり、屈折率1.45以上のフェニル基含有オルガノポリシロキサンを所定の範囲で含有してなるフェニル基含有オルガノポリシロキサン組成物を提案した。
【0007】
一方、これらの公知文献中には、本発明の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンのような、分岐状のシリコーン系油剤について開示されていない。さらに、特許文献1〜6の実施例等で用いられているTPh型のフェニルシルセスキオキサンは、構造上、フェニル基の含有量がSi原子1モルに対して、1.0を超えるものではなく、また、T分岐ユニットの含有量を50モル%以下にすることが好適であるようなアリール基含有ポリオルガノシロキサンは一切開示されていない。また、T型のアリールシロキシ単位の含有量を限定し、かつ、フェニル基の含有量がSi原子1モルに対して、1.0を超えるような液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンは具体的に開示されていない。また、そのようなアリール基含有ポリオルガノシロキサンが、油剤と混合した際の組成物の安定性に優れ、加水分解に伴う、濁りを生じることがなく、非水系の化粧料にも安定的に配合することができるという技術的課題の存在および技術的効果についていかなる記載も示唆もなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭62−234012号公報
【特許文献2】特開平01−168607号公報
【特許文献3】特開平07−089844号公報(特登録3207030)
【特許文献4】特表2007−535586号公報
【特許文献5】特開2009−19033号公報
【特許文献6】特開2011−136935号公報
【非特許文献1】東レ・ダウコーニング社カタログ「パーソナルケア用シリコーン No.Y517」P.13、2009年2月1日発行
【非特許文献2】シリコーンハンドブック(日刊工業新聞社、伊藤邦雄 著、p.404)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本件出願人らは、上記の特許文献6において提案した高屈折率のフェニル含有率の高いシリコーン樹脂組成物において、今回、解決すべき新たな技術的課題を発見した。TPh型のフェニルシルセスキオキサンは、油剤と混合した場合、加水分解を受けやすく、経時で白濁し、化粧料原料あるいは化粧品製品としての安定性に問題を生じる場合がある。特に、白濁の原因である水分の混入は、非水系の化粧料組成物の安定性・配合処方に悪影響を及ぼす場合がある。また、本件出願人が、上記の特許文献6において提案した高屈折率のフェニル含有率の高いシリコーン樹脂組成物は、一般に、油剤や親油性成分との相溶性、配合安定性に優れるものであったが、有機紫外線吸収剤等の親油性成分の中でも特に難溶性で相溶性に乏しい成分に対しては、その組成によって、さらにその相溶性、配合安定性を改善する余地が残されていた。さらに、公知のフェニル含有率の高いシリコーン系油剤は、透明感に優れる一方、張りやツヤのある唇や肌の質感を実現するための「厚みのある化粧の仕上がり」において改善の余地があり、かつ、化粧崩れが起こりやすく、化粧効果の持続性において、改善の余地が残されていた。
【0010】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものである。本発明の目的は、公知のTフェニルレジン(フェニルシルセスキオキサン)やアルキル−フェニルシルセスキオキサン樹脂組成物などに比して、油剤または親油性成分との相溶性に優れ、さらに、油剤と混合した場合、長期間保管しても、加水分解に伴う、濁りを生じることがなく、非水系の化粧料にも安定的に配合することができる、新規液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンおよびそれを用いてなる油剤と高屈折率の組成物、化粧料組成物および該新規液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討した結果、RSiO3/2 (式中、Rはアリール基である)で示されるアリールシロキシ単位を、ポリマーを構成する全シロキシ単位の20〜50モル%含有し、かつ、分子中のSi原子1モルに対するアリール基のモル数が平均して1.20〜1.65の範囲にあることを特徴とする、液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンおよびその製造方法により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。特に、特定のシロキサン単位の組み合わせからなり、その平均分子量が500〜2,000の範囲である液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンにより、より良く上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0012】
また、本発明者らは、(A)上記の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン および
(B)油剤(ただし、成分(A)に該当するものを除く) を含有してなり、組成物全体の屈折率が1.45以上であり、25℃における組成物全体の粘度が100〜100,000mPa・sの範囲にあるアリール基含有ポリオルガノシロキサン組成物、当該液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンまたはその組成物を含有する化粧料組成物、特に、さらに(C)1種類以上の親油性化粧品原料を含有する化粧料組成物により、より良く上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0013】
すなわち、上記目的は、
「[1] RSiO3/2 (式中、Rはアリール基である)で示されるアリールシロキシ単位を、ポリマーを構成する全シロキシ単位の20〜50モル%含有し、かつ、分子中のSi原子1モルに対するアリール基のモル数が平均して1.20〜1.65の範囲にあることを特徴とする、液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン。
[2] 下記平均組成式(1)で示される[1]に記載の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン。
平均組成式(1):
(RRRSiO1/2)a(RRSiO2/2)b(R SiO3/2)c(R’ SiO3/2)d(SiO4/2)e (1)
(式中、R〜Rは各々独立に一価の有機基または水素原子であり、Rはアリール基であり、R’はアリール基以外の一価の有機基または水素原子であり、0.20≦c≦0.50であり、a+b+c+d+e=1.0であり、R〜Rの一部または全部はアリール基であり、a〜eは、分子中のSi原子1モルに対するアリール基のモル数が平均して1.20〜1.65の範囲となる数である。)
[2-1] アリール基がフェニル基またはナフチル基であり、さらに、0.10≦b≦0.40である、 [2]に記載の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン。
[3] 下記平均組成式(1−1)で示される、[1]または[2]に記載の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン。
平均組成式(1−1):
(RA 2RSiO1/2)a’( RA RSiO2/2)b’( RA SiO3/2)c’ (1−1)
(式中、RAはフェニル基またはナフチル基であり、R〜Rは各々独立に一価の有機基または水素原子であり、0.10≦b’≦0.40かつ0.20≦c’≦0.50であり、a’+b’+c=1.0であり、a’〜 c’は分子中のSi原子1モルに対するフェニル基またはナフチル基のモル数が平均して1.20〜1.65の範囲となる数である。)
[3-1] 下記平均組成式(1−2)または(1−3)で示される、[1]〜[3]のいずれかに記載の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン。
平均組成式(1−2):
(Ph2MeSiO1/2)a’’(Ph MeSiO2/2)b’’(Ph SiO3/2)c’’ (1−2)
平均組成式(1−3):
(Ph2MeSiO1/2)a’’(Ph MeSiO2/2)b’’(Np SiO3/2)c’’ (1−3)
(式中、Phはフェニル基であり、Meはメチル基であり、Npはナフチル基であり、0.10≦b’≦0.40であり、0.20≦c’’≦0.50であり、a’’+b’’+c’’=1.0であり、かつ、a’’〜 c’’は、[2×a’’+b’’+c’’]/[ a’’+b’’+c’’]=1.20〜1.65の関係を満たす範囲の数である。)
[4] 屈折率が1.50以上であり、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィ)で測定した重量平均分子量が500〜2,000の範囲であることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかに記載の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン。
[4-1] 屈折率が1.55〜1.65であり、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィ)で測定した重量平均分子量が550〜1,750の範囲であることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかに記載の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン。
[5] (A)[1]〜[4]のいずれかに記載の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン および
(B)油剤(ただし、成分(A)に該当するものを除く) を含有してなり、組成物全体の屈折率が1.45以上であり、25℃における組成物全体の粘度が100〜100,000mPa・sの範囲にあるアリール基含有ポリオルガノシロキサン組成物。
[6] 前記の成分(B)が、下記構造式(2−1)または構造式(2−2)で示されるフェニル基含有オルガノポリシロキサンであることを特徴とする、[5]に記載のアリール基含有ポリオルガノシロキサン組成物。
構造式:
【化1】
(式中、Rは、フェニル基、アラルキル基、水素原子、水酸基または炭素原子数1〜20のアルキル基もしくはフッ化アルキル基から選択される基であり、このうちモル比で少なくとも50%がフェニル基であり、n1またはn2は0〜1000の範囲の数であり、n3は1〜1000の範囲の数である。)
[6-1] 前記成分(B)が、ジメチルテトラフェニルジシロキサンまたはトリメチルペンタフェニルトリシロキサンである、[5]または[6]に記載のアリール基含有ポリオルガノシロキサン組成物。
[7] [1]〜[4]のいずれかに記載の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンを含有する化粧料組成物。
[8] [5]または[6]に記載の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン組成物を含有する化粧料組成物。
[9] さらに、(C)1種類以上の親油性化粧品原料を含有する、[7]または[8]に記載の化粧料組成物。
[9-1] 前記成分(C)が、(C1)有機紫外線吸収剤である[9]に記載の化粧料組成物。
[10] メイクアップ化粧料、毛髪化粧料または皮膚化粧料のいずれかである、[7]〜[9-1]のいずれかに記載の化粧料組成物。
[11] (A−1)25℃で固体であり、ポリマーを構成する全シロキシ単位の50モル%以上がRSiO3/2 (式中、Rはアリール基である)で示されるアリールシロキシ単位であるアリール基含有ポリオルガノシロキサン、RSiX3−n4(ORn4 (式中、Rはアリール基であり、Xはハロゲン原子であり、Rは、各々独立に、水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基であり、n4は0〜3の範囲の数である)で示されるオルガノシランおよび該オルガノシランの縮合反応物から選ばれる1種類以上の有機珪素化合物、
(A−2)下記構造式(3)で示されるアリール基含有オルガノポリシロキサンオリゴマー、
構造式(3):
【化2】
(式中、R10は、各々独立に、一価の有機基であり、このうちモル比で少なくとも50%がアリール基であり、n5は0〜10の範囲の数である。)
(A−3)触媒 を混合する工程(I)、
工程(I)の混合物を、平衡化反応させる工程(II)
を含むことを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンの製造方法。
[11-1] 前記の成分(A−1)が、実質的にPh SiO3/2単位のみからなる固体状フェニルシルセスキオキサンであり、前記の成分(A−2)が、下記構造式(3−1)で示されるフェニル基含有オルガノポリシロキサンオリゴマーであり、
構造式(3−1):
【化3】
(式中、R10’は、各々独立に、一価の有機基であり、このうちモル比で少なくとも50%がフェニル基であり、n5’は0〜1の範囲の数である。)
前記の成分(A−3)が、アルカリ性触媒であることを特徴とする、[11]に記載の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンの製造方法。
[11-2] 前記工程(I)が、成分(A−1)〜成分(A−3)および(A−4)溶剤 を混合する工程であり、
工程(II)が工程(I)の混合物を、80℃〜200℃の範囲で加熱攪拌しながら平衡化反応させる工程であり、
同工程(II)の後、さらに溶剤を除去する工程を含むことを特徴とする[11]または[11-1]に記載の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンの製造方法」により達成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、公知のTフェニルレジン(フェニルシルセスキオキサン)やアルキル−フェニルシルセスキオキサン樹脂組成物などに比して、油剤または親油性成分との相溶性に優れ、さらに、油剤と混合した場合、長期間保管しても、加水分解に伴う、濁りを生じることがなく、非水系の化粧料にも安定的に配合することができかつ、少量の使用で厚みのある化粧仕上がりを実現でき、化粧崩れが起こりにくく、化粧効果の持続性に優れた新規液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンおよびそれを用いてなる油剤と高屈折率物との組成物、化粧料組成物および該新規液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンの製造方法を提供することができる。さらに、本発明に係る新規液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンは、メイクアップ化粧料、毛髪化粧料または皮膚化粧料に好適に配合することができ、使用感、外観および色調に優れた各種化粧料を提供することができる。また、本発明に係る新規液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンは、従来公知のシリコーン系油剤に比べて高屈折率であるため、酸化チタン等の高屈折率の粉体と共に使用した場合、粉体と油剤の屈折率の差が小さいため、肌上における透明感に優れ、肌上で白浮きが低減されため、皺部分に化粧膜が溜っても目立つことなく、自然な外観が得られるという利点がある。一方、比較的低屈折率のシリコーンエラストマー粒子などと組み合わせた場合には、粉体と油剤の屈折率の差が十分大きいために、従来の化粧料用油剤に比べて、優れたソフトフォーカス効果が得られるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】コラーゲンフィルムの上に、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン(左)と実施例のサンプル(右、サンプルNo.4)を各々0.1g滴下した直後のサンプルの外観
図2図1のサンプルを、ティッシュペーパーで上から軽く抑えた後のサンプルの外観(白点線はサンプルの広がった範囲のおよその外縁を示す)
図3】比較例2の組成物(左)と、実施例3(サンプルNo.3)のサンプル(右)とを50℃、1カ月保存した後の外観変化(=濁りの有無)の写真
図4】スライドガラス上に実施例15の液状口紅(右)と比較例10の液状口紅(左)を塗布した時のつや、光沢の写真
図5】スライドガラス上に実施例26の組成物(左)と比較例13の組成物(右)を塗布した時のソフトフォーカス効果の写真
図6】肌上に実施例28のファンデーション(右)と比較例15のファンデーション(左)を塗布した時の肌表面の顕微鏡観察結果の写真
図7】PETフィルム上に実施例29の顔料プレミックススラリー(左)と比較例16の顔料プレミックススラリー(右)を塗布し、黒線より下部分にメトキシケイヒ酸エチルヘキシルを滴下してスパチュラで混合した場合の色調変化を比較した写真
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンについて、詳細に説明する。
【0017】
本発明に係る液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンは、RSiO3/2 (式中、Rはアリール基である)で示されるアリールシロキシ単位を、ポリマーを構成する全シロキシ単位の20〜50モル%含有し、かつ、分子中のSi原子1モルに対するアリール基のモル数が平均して1.20〜1.65の範囲にあることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンは、室温(25℃)で液状で、流動性を有し、動粘度が500〜50,000mPa・sの範囲であることが好適であり、750〜20,000mPa・sの範囲であることがより好ましく、特に、850〜15,000mPa・sの範囲であることが特に好ましい。後述のように、本発明に係る液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンは、その平均分子量が2000以下であることが好ましく、液状で粘度が前記範囲の透明液体であることが好ましい。
【0019】
Rであるアリール基は、本発明に係る液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンに、1.50以上の高い屈折率を与える成分であり、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基等の炭素原子数6〜14のアリール基、またはこれらのアリール基の水素原子の一部または全部を塩素、フッ素等のハロゲン原子で置換した官能基が例示される。工業的には、フェニル基またはナフチル基が特に好ましく、ナフチル基は特に1−ナフチル基が好ましい。また、フェニル基またはナフチル基の含有量は、分子中のSi原子1モルに対して、アリール基のモル数が平均して1.20〜1.65の範囲にあることが必要であり、1.50以上の高い屈折率を与えるために、Si原子1モルに対して、アリール基のモル数が平均して1.30〜1.65の範囲であることが好ましく、1.35〜1.55の範囲が最も好ましい。アリール基のモル数が前記上限を超えるものは工業的に生産が困難であり、前記下限未満では、屈折率が十分ではなく、高屈折かつ高透明性の化粧料原料として不適である。
【0020】
さらに、本発明の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンは、RSiO3/2 (式中、Rはアリール基である)で示されるアリールシロキシ単位の含有量が、ポリマーを構成する全シロキシ単位の20〜50モル%の範囲である。RSiO3/2単位の量が前記上限を超えると、油剤としての流動性が低下し、取り扱い性が悪化する。一方、RSiO3/2単位の量が前記下限未満では、低粘度過ぎるため化粧料等に配合した場合の配合安定性が悪化するほか、化粧時の外観が十分な厚みに欠け、化粧崩れが起こりやすくなり、化粧効果の持続性が低下するため好ましくない。
【0021】
好適には、本発明の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンは、下記平均組成式(1)で示される、トリオルガノシロキシ単位(M単位)、ジオルガノシロキシ単位(D単位)、モノオルガノシロキシ単位(T単位)、4官能性のシロキシ単位(Q単位)の任意の組み合わせからなるものである。
平均組成式(1):
(RRRSiO1/2)a(RRSiO2/2)b(R SiO3/2)c(R’ SiO3/2)d(SiO4/2)e (1)
【0022】
式中、R〜Rは各々独立に一価の有機基または水素原子であり、Rはアリール基であり、R’はアリール基以外の一価の有機基または水素原子であり、0.20≦c≦0.50であり、a+b+c+d+e=1.0であり、R〜Rの一部または全部はアリール基であり、a〜eは、分子中のSi原子1モルに対するアリール基のモル数が平均して1.20〜1.65の範囲となる数である。好適には、本発明の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンは、RRSiO2/2で表わされるジオルガノシロキシ単位(D単位)を含有することが好ましく、0.10≦b≦0.40であることが好ましく、0.15≦b≦0.30が特に好ましい。同様に、その他のM単位, T単位, Q単位の和である、(a+d+e)は、0.10≦(a+d+e)≦0.70であり、0.20≦(a+d+e)≦0.65が特に好ましい。
【0023】
R〜Rは、具体的には、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、フルオロアルキル基等のハロゲン置換アルキル基、炭素原子数9〜30の長鎖アルキル基、フェニル基、ナフチル基、水酸基などが挙げられるが、これに限定されない。工業的には、R〜Rは、メチル基、ビニル基、フェニル基、ナフチル基または水酸基であることが好ましい。ここで、RおよびRは、アリール基であることが好ましく、フェニル基が特に好ましい。Rはメチル基、ビニル基または水酸基であることが好ましい。Rは、アリール基であることが好ましく、フェニル基が特に好ましい。Rは、アリール基であることが好ましく、フェニル基が特に好ましい。
【0024】
Rはアリール基であり、前記同様にフェニル基またはナフチル基(1−ナフチル基)であることが好ましい。
【0025】
R’は、アリール基以外の一価の有機基または水素原子であり、具体的には、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、フルオロアルキル基等のハロゲン置換アルキル基、炭素原子数9〜30の長鎖アルキル基、水酸基などが挙げられるが、これに限定されない。工業的には、R’は、メチル基、ビニル基または水酸基であることが好ましい。
【0026】
本発明の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンにおいて、RSiO3/2 (式中、Rはアリール基である)で示されるアリールシロキシ単位の含有量は、ポリマーを構成する全シロキシ単位の20〜50モル%の範囲であるから、平均組成式(1)において、各シロキサン単位の和:a+b+c+d+e=1.0とした時、RSiO3/2 (式中、Rはアリール基である)で示されるアリールシロキシ単位の数であるcは、0.20≦c≦0.50となることが必要である。また、本発明の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンにおいて、Si原子1モルに対して、アリール基のモル数が平均して1.20〜1.65の範囲であるから、a〜eは、R〜Rにアリール基に該当する官能基が含まれている場合、当該アリール基の数を勘案して、分子中のSi原子1モルに対するアリール基のモル数が平均して1.20〜1.65の範囲となる数である。例えば、分子中のR〜Rが全てアリール基に相当する官能基であった場合、a〜eは、(3a+2b+c)/(a+b+c+d+e)=1.20〜1.65となる範囲の数であり、分子中のR〜Rが全てアリール基に相当しない官能基であった場合、a〜eは、c/( a+b+c+d+e)=1.20〜1.65となる範囲の数である。ただし、いずれの場合においても、0.20≦c≦0.50となることが必要である。なお、a〜eは、Si原子1モルに対して、アリール基のモル数が平均して1.30〜1.65となる範囲の数が好ましく、1.35〜1.55となる範囲の数が最も好ましい。
【0027】
高屈折率を実現する観点から、本発明の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンとして、下記平均組成式(1−1)で示されるジアリールオルガノシロキシ単位(MAryl(2)単位)、アリールオルガノシロキシ単位(DAryl単位)、アリールシロキシ単位(TAryl単位)からなるものが好適に例示される。
平均組成式(1−1):
(RA2RSiO1/2)a’( RA RSiO2/2)b’( RA SiO3/2)c’ (1−1)
【0028】
式中、RAはフェニル基またはナフチル基であり、R〜Rは各々独立に一価の有機基または水素原子であり、0.20≦c’≦0.50であり、a’+b’+c’=1.0であり、a’〜 c’は分子中のSi原子1モルに対するフェニル基またはナフチル基のモル数が平均して1.20〜1.65の範囲となる数である。好適には、b’は0.10≦b’≦0.40の範囲の数であり、0.15≦b’≦0.30の範囲であることがより好ましい。
【0029】
R〜Rは、具体的には、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、フルオロアルキル基等のハロゲン置換アルキル基、炭素原子数9〜30の長鎖アルキル基、フェニル基、ナフチル基、水酸基などが挙げられ、工業的には、メチル基、ビニル基、フェニル基、ナフチル基または水酸基であることが好ましい。
【0030】
R〜Rは全てメチル基であることが、工業生産上、最も好ましく、その場合、本発明の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンは、下記平均組成式(1−2)または(1−3)で示される。
平均組成式(1−2):
(Ph2MeSiO1/2)a’’(Ph MeSiO2/2)b’’(Ph SiO3/2)c’’ (1−2)
平均組成式(1−3):
(Ph2MeSiO1/2)a’’(Ph MeSiO2/2)b’’(Np SiO3/2)c’’ (1−3)
【0031】
式中、Phはフェニル基であり、Meはメチル基であり、Npはナフチル基であり、0.10≦b’≦0.40であり、0.20≦c’’≦0.50であり、a’’+b’’+c’’=1.0であり、かつ、a’’〜 c’’は、[2×a’’+b’’+c’’]/[ a’’+b’’+c’’]=1.20〜1.65の関係を満たす範囲の数である。
【0032】
なお、平均組成式(1−1)または(1−2)において、a’〜 c’またはa’’〜 c’’は、Si原子1モルに対して、アリール基のモル数が平均して1.30〜1.65となる範囲の数が好ましく、1.35〜1.55となる範囲の数が最も好ましい。
【0033】
本発明に係る液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンは、化粧料に配合した際に、透明感があり、使用時に継続的なツヤ、輝きおよび光沢を付与することができることが好適であるから、その屈折率が1.50以上の高屈折率であることが好ましく、屈折率が1.50〜1.65の範囲であることが特に好ましく、1.55〜1.65の範囲が最も好ましい。
【0034】
本発明に係る液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンは、公知のTフェニルレジン(フェニルシルセスキオキサン)やアルキル−フェニルシルセスキオキサン樹脂組成物などに比して、遥かに低粘度かつ低分子量であり、単独で高屈折率の「油剤」として取り扱い作業性および配合安定性に優れたものを得ることができるという技術的利点がある。具体的には、本発明に係る液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンは、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィ)で測定した重量平均分子量が2,000以下であることが好ましく、500〜2,000の範囲がより好ましく、550〜1,750の範囲がさらに好ましく、600〜1000の範囲が最も好ましい。かかる低重合度であることにより、他の油剤や親油性成分との親和性および相溶性がさらに改善され、組成物全体を容易に高屈折率にできることはもちろん、取り扱い作業性および配合安定性が格段に改善される。
【0035】
かかる液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンは、先行技術文献に具体的に開示されておらず、公知のTフェニルレジン(フェニルシルセスキオキサン)やアルキル−フェニルシルセスキオキサン樹脂組成物などに比して、油剤または親油性成分との相溶性に優れ、さらに、油剤と混合した場合、長期間保管しても、加水分解に伴う、濁りを生じることがなく、非水系の化粧料にも安定的に配合することができるという顕著な技術的効果を奏するものである。
【0036】
加えて、本発明の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンは、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン等の公知のフェニルポリシロキサンに比べて、肌上での化粧効果の持続性に優れ、化粧料のツヤ、輝きおよび光沢を継続的に維持できるという利点を有する。具体的には、油剤として肌上に塗布した場合、油剤の肌上への拡散または浸透に伴う化粧崩れが起こりにくく、長時間にわたって化粧効果が維持される。このため、本発明の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンは、肌上で拡散しにくいため、化粧時に所望の厚み、ツヤ、透明感のある光沢を備えたリッチな仕上がりにすることができ、かつ、長時間にわたって化粧直しが不要である。特に、本発明の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンは少量の使用でも、唇、目元などに厚みを感じさせるメークを施すことができ、全体およびピンポイントの化粧崩れを防止して、仕上げ直後の美しいメークの状態を保持できる利点がある。
【0037】
このため、本発明の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンは、特に、化粧料、特に光沢性のあるメイクアップ化粧料の原料として有用である。特に、ツヤ、光沢感および感触に優れ、少量でも厚みのある仕上がりを実現し、かつ化粧崩れがしにくく化粧効果の持続性に優れたメイクアップ化粧料の原料として、有用である。
【0038】
さらに、本発明の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンは他の油性成分に比較して屈折率が高く、かつ粉体または着色剤との親和性に優れるため、特に着色剤と予め配合し表面を被覆しておくことにより、他の成分を配合した際にも着色剤の色調変化を抑制するため、リップスティック、リップグロス、アイシャドウ、頬紅等の化粧料を調製する際にも、容易かつ簡便に色調を調整することができる利点がある。
【0039】
また、本発明の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンは、皮膚化粧料、毛髪化粧料にも配合することができ、特に、皮膚化粧料に配合した場合、肌なじみ等の使用感に優れる利点がある。同様に、本発明に係る新規液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンは、従来公知のシリコーン系油剤に比べて高屈折率であるため、酸化チタン等の高屈折率の粉体と共に使用した場合、粉体と油剤の屈折率の差が小さいため、肌上における透明感に優れ、白浮きを起こさず、自然な仕上がりとなる利点がある。一方、ソフトフォーカス効果を目的としたシリコーンエラストマー粒子と組み合わせた場合には、粉体と油剤の屈折率の差が十分大きいために、従来の化粧料用油剤に比べて、優れたソフトフォーカス効果が得られるという利点がある。このように、本発明に係る液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンは、目的とする化粧効果および使用する粉体との組み合わせに応じ、種々の有利な効果を発揮できる点で有用である。
【0040】
本発明に係る液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンは、以下に示す方法により、工業的に容易に生産することができる。
【0041】
すなわち、以下に示す成分(A−1)〜(A−3)、任意で成分(A−4)を均一に混合する工程(I)、
上記工程(I)の混合物を、加熱攪拌しながら平衡化反応させる工程(II)、
および、任意で溶剤を除去する工程を含む製造方法により、本発明に係る液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンを得ることができる。
(A−1)25℃で固体であり、ポリマーを構成する全シロキシ単位の50モル%以上がRSiO3/2 (式中、Rはアリール基である)で示されるアリールシロキシ単位であるアリール基含有ポリオルガノシロキサン、RSiX3−n4(ORn4 (式中、Rはアリール基であり、Xはハロゲン原子であり、Rは、各々独立に、水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基であり、n4は0〜3の範囲の数である)で示されるオルガノシランおよび該オルガノシランの加水分解縮合物から選ばれる1種類以上の有機珪素化合物
(A−2)下記構造式(3)で示されるアリール基含有オルガノポリシロキサンオリゴマー、
構造式(3):
【化4】
(式中、R10は、各々独立に、一価の有機基であり、このうちモル比で少なくとも50%がアリール基であり、n5は0〜10の範囲の数である。)
(A−3)触媒 および
(A−4)溶剤
【0042】
成分(A−1)は、RSiO3/2 (式中、Rはアリール基である)で示されるアリールシロキシ単位を、全シロキシ単位の50%以上含むアリール基含有ポリオルガノシロキサン、RSiX3−n4(ORn4 (式中、Rはアリール基であり、Xはハロゲン原子であり、Rは、各々独立に、水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基であり、n4は0〜3の範囲の数である)で示されるオルガノシランおよび該オルガノシランの加水分解縮合物から選ばれる1種類以上の有機珪素化合物である。これらは、いずれも、本発明に液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンのポリマー中にRSiO3/2 (式中、Rはアリール基である)で示されるアリールシロキシ単位として導入される原料成分である。
【0043】
RSiO3/2 (式中、Rはアリール基である)で示されるアリールシロキシ単位を、全シロキシ単位の50モル%以上含むアリール基含有ポリオルガノシロキサンは、RSiO3/2 (式中、Rはアリール基である)で示されるアリールシロキシ単位(T単位)のみからなるT型のポリオルガノシロキサン樹脂、さらに、ジオルガノシロキシ単位(D単位)やモノオルガノシロキシ単位(M単位)等を含む、MDT型のポリオルガノシロキサン樹脂が例示される。特に、全シロキシ単位の90〜100モル%が該アリールシロキシ単位であることが好ましく、95〜100モル%が該アリールシロキシ単位であることが特に好ましく、最も好適には、成分(A−1)は、全シロキシ単位の100モル%がPh SiO3/2単位(式中、Phはフェニル基である)からなる固体状フェニルシルセスキオキサンである。これらは、実質的に該アリールシロキシ単位のみからなる固体状フェニルシルセスキオキサンの例示である。
【0044】
同様に、成分(A−1)として、RSiX3−n4(ORn4 (式中、Rはアリール基であり、Xはハロゲン原子であり、Rは、各々独立に、水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基であり、n4は0〜3の範囲の数である)で示されるオルガノシランまたは該オルガノシランの縮合反応物を使用することもできる。特にn4が3以外の数である場合、成分(A−1)は、ハロゲン原子Xが水との加水分解により縮合する加水分解縮合反応物であることが好ましい。
【0045】
RSiX3−n4(ORn4で示されるオルガノシランは、加水分解または縮合反応により、RSiO3/2 (式中、Rはアリール基である)で示されるアリールシロキシ単位(T単位)を含む縮合反応物を与える成分であり、Rは、前記同様に、フェニル基またはナフチル基であることが好ましい。また、Xは塩素(Cl)であることが好ましく、ORで示される基は、水酸基またはメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基であることが好ましい。n4は0〜3の範囲の数であり、例えば、Xが塩素原子であり、ORで示される基がメトキシ基であるとき、n4が0であれば、成分(A−1)は、アリールトリクロロシランであり、n4が3であれば、成分(A−1)は、アリールトリメトキシシランである。なお、n4が3以外の場合には、当該オルガノハロシランの加水分解のため、反応系に水を添加することが好ましい。上記式で表わされるオルガノシランは、フェニルトリクロロシラン、フェニルメトキシジクロロシラン、フェニルジメトキシクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、ナフチルトリクロロシラン、ナフチルメトキシジクロロシラン、ナフチルジメトキシクロロシラン等が例示されるが、これらに限定されるものではない。これらのオルガノシラン類は、1種類または2種類以上を用いることができ、後述する成分(A−2)と反応後の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン中のアリールシロキシ単位の含有量が全シロキシ単位の20〜50モル%となるような部数で使用される。さらに、これらのオルガノシラン類は、事前に、単独でまたは加水分解を伴って縮合反応されたオルガノシランの縮合反応物であっても良い。なお、当該オルガノシランのみからなる縮合反応物は、T型のポリオルガノシロキサン樹脂となる。ここで、成分(A−1)として、n4が3以外の場合における加水分解縮合物を用いた場合、塩酸等の酸性物質が副生するため、そのまま酸性物質により平衡化反応を行うか、事前に縮合反応物を塩基性物質等で中和してから、平衡化反応の原料に用いることもできる。ただし、本発明の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンの平衡化反応には、アルカリ触媒の使用が好ましいため、事前に縮合反応を行って中和した縮合物を成分(A-1)に用いることが好ましい。
【0046】
これらの成分(A−1)は、RSiX3−n4(ORn4で示されるオルガノシランと、RSiO3/2 (式中、Rはアリール基である)で示されるアリールシロキシ単位を、全シロキシ単位の50%以上含むアリール基含有ポリオルガノシロキサンは、いずれも制限なく、本発明の製造方法に用いることができ、オルガノシランと当該アリール基含有ポリオルガノシロキサンの混合物であっても良い。また、成分(A−1)は、その必要に応じて、後述する成分(A−2)であるアリール基含有オルガノポリシロキサンオリゴマーまたは任意の溶媒(成分(A−4))に溶解して反応系に添加することもできる。
【0047】
成分(A−2)は、上記構造式(3)で示されるアリール基含有オルガノポリシロキサンオリゴマーであり、成分(A−1)との反応量を制御して、本発明に係る液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン中のアリールシロキシ単位の含有量を全シロキシ単位の20〜50モル%となるように調整するための主たる原料であり、1種類であってもよく、2種類以上の混合物であっても良い。
【0048】
上記構造式(3)において、R10は、各々独立に、一価の有機基であり、具体的には、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、フルオロアルキル基等のハロゲン置換アルキル基、炭素原子数9〜30の長鎖アルキル基、フェニル基、ナフチル基であり、このうちモル比で少なくとも50%がアリール基(フェニル基またはナフチル基)である。n1は0〜10の範囲の数であり、0〜5の範囲の数であることがより好ましく、0〜1の範囲の数であることが最も好ましい。なお、R10は、50〜90モル%がアリール基(フェニル基またはナフチル基)であることが好ましい。
【0049】
具体的に、成分(A−2)は、以下のフェニルテトラシロキサン、フェニルトリシロキサンまたはフェニルジシロキサンが例示できるが、これらに限定されるものではない。本発明の成分(A−2)として、最も好適には、トリメチルペンタフェニルトリシロキサンおよびジメチルテトラフェニルジシロキサンである。
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【0050】
成分(A−3)は上記成分の触媒であり、任意の酸触媒またはアルカリ性触媒が使用できるが、アルカリ性触媒が好ましく、アルカリ金属水酸化物触媒であることが特に好ましい。具体的には、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属の水酸化物;ナトリウム−t−ブトキシド,カリウム−t−ブトキシド,セシウム−t−ブトキシド等のアルカリ金属のアルコキシド;ナトリウムシラノレート化合物,カリウムシラノレート化合物,セシウムシラノレート化合物等のアルカリ金属のシラノール化合物が例示され、特に好ましくは水酸化セシウムである。該触媒は通常純度90重量%以上のものが使用される。その使用量は、反応スケールおよび所望とする反応速度に応じて適宜選択することができるが、一般的には、成分(A−1)および成分(A−2)の和を100質量部としたとき、0.01〜1.0質量部の範囲であり、0.05〜0.5質量部の範囲であることが好ましい。
【0051】
成分(A−4)は溶剤であり、成分(A−1)の種類および成分(A−2)の使用量に応じて、任意で用いることができる。特に、成分(A−1)が、実質的に、RSiO3/2 (式中、Rはアリール基である)で示されるアリールシロキシ単位のみからなるアリール基含有ポリオルガノシロキサンである場合、取り扱い性および、反応中のレジン状シリコーンの析出防止や、他の成分との混合等の反応の観点から、溶剤を用いることが好ましい。使用することのできる有機溶剤は、具体的には、トルエン,キシレンなどの芳香族系有機溶剤;アセトン,メチルイソブチルケトン等のケトン系有機溶媒;ヘキサン,ヘプタン,オクタン等の脂肪族系有機溶剤が例示され、好ましくは芳香族系有機溶剤である。また、この有機溶剤を配合すると、得られたアリール基含有ポリオルガノシロキサンから、合成時の縮合反応による遊離水を共沸により除くことが容易となるので好ましい。また、上記組成物の製造時に有機溶剤を使用する量は任意であるが、成分(A−1)および成分(A−2)の和を100質量部とした場合に、0〜1000質量部の範囲内であり、平衡化反応後のストリッピング工程が容易になることから、10〜200質量部の範囲での使用が好ましい。加えて、溶剤中の固形分濃度を管理することによって、反応系の平衡状態を管理し、得られる液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンの分子量を制御し、生成物の分子量範囲を安定化することができるため、工業生産上、製品の分子量等の規格化を図る上で有用である。
【0052】
成分(A−1)〜成分(A−3)、および任意で成分(A−4)の混合は、パドルミキサー等の周知の混合装置または混練装置により行うことができ、反応容器中で行って良く、別容器で混合した任意の成分をさらに反応容器へ移液してもよい。
【0053】
平衡化反応は、成分(A−1)および成分(A−2)のシロキサン結合の切断と再結合がランダムに起こり、その結果、反応系中に存在する各オルガノポリシロキサン中のシロキサン単位が再分配されて目的とする、本発明に係る液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンを形成する反応である。平衡化反応は、成分(A−3)である触媒の存在下、加熱によって進行する。
【0054】
平衡化反応の条件は特に限定されないが、一般的には、30〜250℃で、上記混合物を加熱攪拌しながら行う。反応が円滑に進行することから、反応温度は80℃〜200℃の範囲内であることが好ましく、特に100℃〜150℃の範囲内であることが好ましい。本発明に係る液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンの製造方法においては、80℃〜200℃の範囲内で加熱攪拌を行った後、必要に応じて、生成した水を系から除去し、さらに、加熱還流することが好適である。特に、有機溶剤を使用する場合には、有機溶剤の沸点が80〜200℃の範囲にあるものを選択することにより、還流温度で容易に平衡化反応を行うことができる。一方、温度が前記下限未満では、平衡化反応が十分に進行しないか長時間を要するため工業的な生産効率が悪く、逆に温度が高すぎるとケイ素に結合した有機基の分解が起こることがあるため、好ましくない。
【0055】
フェニルトリメトキシシラン、ナフチルトリメトキシシラン等の加水分解性オルガノシランを成分(A−1)として用いる場合には、加水分解性基に対して必要量もしくは過剰の水を反応系に添加し、加水分解反応を行いながら上記の平衡化反応を行うことによって、目的とする液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンを得ることができる。加水分解反応が十分でなく、加水分解性基が残存していると、油剤と混合した場合に加水分解を受けやすくなるため、経時で白濁し、化粧料原料あるいは化粧品製品としての安定性に問題を生じる場合がある。
【0056】
平衡化反応は、任意の時点で系を冷却することで終結させることができ、反応に用いたアルカリ金属触媒は、炭酸ガス、酢酸、塩酸等の酸性物質またはトリメチルクロロシランなどのクロロシラン類と中和反応させて中和塩を形成させることにより、濾過、水洗等によって容易に系から除去することができる。なお、平衡化反応の進行は、反応液を少量抜き出して中和してから、得られた液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンの分子量または粘度を測定することにより、容易に所望の粘度または分子量の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンを得ることができる。
【0057】
未反応の成分(A−2)は、後述する(B)油剤と成分として重複するため、得られた本発明に係る液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンと未反応の成分(A−2)からなる組成物は、本発明にかかるアリール基含有ポリオルガノシロキサン組成物であり、所望により、そのまま化粧料原料として用いることもできる。
【0058】
溶剤は、組成物の屈折率を低下させる場合があるので、再平衡化反応後に、ストリッピング等の公知の手段により除去することが好ましい。減圧度や留去手段は、装置の性能および反応のスケールに応じて、適宜選択することができるが、得られた液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン中の有機溶剤の含有量は、3質量%未満であることが好ましく、0〜2質量%であることがより好ましい。また、実質的に有機溶剤の含有量が0質量%であることが最も好ましい。
【0059】
次に、本発明に係る(A)液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン および(B)油剤からなるアリール基含有ポリオルガノシロキサン組成物について説明する。本発明に係る(A)液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンは、単独でも高屈折率の油剤として使用可能な成分であるが、油剤と混合した場合、化粧料原料としての有用性がさらに改善される。
【0060】
具体的には、本発明のアリール基含有ポリオルガノシロキサン組成物は、組成物全体が高屈折率を呈し、液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンと他の油剤が均一に相溶しているために、化粧料への配合安定性、取り扱い性にすぐれ、その粘度を容易に調整可能であり、かつ、長期間保管しても、加水分解に伴う、濁りを生じないという利点を有する。また、少量の使用であっても、厚みのある化粧仕上がりを実現でき、唇、目元などに若々しくツヤのある質感を実現できる。さらに、化粧崩れが起こりにくく、長時間にわたって化粧効果が維持されるという利点を有する。
【0061】
本発明組成物は、組成物全体の屈折率が1.45以上であり、25℃における組成物全体の粘度が100〜100,000mPa・sの範囲にあることを特徴とする。本発明に係る(A)液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンは、任意の(B)油剤との混和性および相溶性に優れるため、組成物全体の粘度を調整し、かつ高屈折率を維持したまま、化粧料に対するツヤ、透明感よび使用感の改善を実現することができる。組成物全体の屈折率は、好適には、1.45〜1.60の範囲であり、特に、屈折率1.45以上の(B)油剤の使用が好適であるが、これに限定されるものではなく、屈折率1.45未満の低屈折率の油剤との組成物であっても、成分(A)の配合比を調整することで、屈折率1.45以上の高屈折率の組成物を相溶性よく調整できる利点がある。
【0062】
本発明に係る(A)液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンは、任意の(B)油剤との配合比は任意であるが、具体的には、前記の成分(A)および成分(B)の配合比を、1:0.1〜1:10の範囲で調整する事により、組成物全体の屈折率が1.45〜1.60の範囲であり、25℃における組成物全体の粘度が100〜100,000mPa・sの範囲にあるフェニル基含有オルガノポリシロキサン組成物を容易に得ることができる。特に25℃における粘度が250mPa・s以下のジシロキサンまたはトリシロキサンを成分(B)として使用する場合、(A)成分および(B)成分の配合比を、1:0.1〜1:10の範囲で調整する事で、極めて容易に高屈折率かつ低粘度〜高粘度の任意の組成物を得ることができる利点がある。
【0063】
本発明に係る(A)液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンは、25℃における粘度を比較的低く設計することが可能であり、かつ、油剤との相溶性に優れるために、組成物全体の粘度を容易に100〜100,000mPa・sの範囲に調整することができる。組成物全体の粘度範囲は、500〜50,000mPa・sの範囲であることがより好ましい。組成物の粘度が前記上限を超えると、化粧料原料としての取り扱い性が低下する場合があり、前記下限未満のものは、本発明に係る(A)液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンを用いた場合、極めて粘度の低い油剤を用いない限り調製が困難であり、高屈折率原料としての特性十分に活かせない場合がある。
【0064】
(B)油剤は、シリコーンオイル、炭化水素油、エステル油、植物性油脂類、動物性油脂類、高級アルコール類、液状脂肪酸、トリグリセライド、人工皮脂から選択される1種類または2種類以上の油剤が例示される。特に、屈折率が1.45以上の油剤が好ましいが、これに限定されるものではなく、高級脂肪酸エステル類や安息香酸エステル類などの非シリコーン系の油剤であっても、任意の比率で混和して、高屈折率のアリール基含有ポリオルガノシロキサン組成物を得ることができる。なお、これらの油剤は、特許文献6(特開2011−136935号公報)に具体的に例示されているが、これらに限定されない。
【0065】
特に、成分(B)は、成分(A)との相溶性および組成物全体の使用感の観点から、フェニル基含有オルガノポリシロキサンであることが好ましい。例えば、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン,分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体,分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジフェニルポリシロキサン,分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体,トリメチルペンタフェニルトリシロキサンが例示される。
【0066】
本発明の(B)成分として、特に好適には、下記構造式(2−1)または構造式(2−2)で示されるフェニル基含有オルガノポリシロキサンである。下式中、Rは前記同様の基であり、このうちモル比で少なくとも50%がフェニル基であり、n1またはn2は0〜1000の範囲の数であり、n3は1〜1000の範囲の数である。n1またはn2は0〜10の範囲の数であることが好ましく、n3は1〜10の範囲の数であることが好ましい。特に、n1が0〜5の範囲の数であることが好ましく、n3が1〜5の範囲の数であり、かつ(n2+n3)は2〜5の範囲の数であることが好ましい。
構造式(2):
【化11】
【0067】
上記構造式(2−1)または(2−2)で示されるフェニルトリメチコン、フェニルテトラシロキサン、フェニルトリシロキサンまたはフェニルジシロキサンは、25℃における粘度が250mPa・s以下であり、屈折率が1.55以上であるため、本発明の(B)成分として、最も好適である。これらの特性を生かすことによって、べたつきがなく、特に無機粉体と組合わせたときに無機粉体の白浮きを抑え、透明性を向上させ、皮膚または毛髪にぎらつきのない自然なつややかさを付与する化粧料原料を提供することができる利点がある。
【0068】
上記油剤のうち、また、ポリブテン、水素化ポリブテン、パラフィンワックス、ワセリン、ラノリン、ミツロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ステアリルアルコール、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘニン酸、ラノリン脂肪酸、硬化ヒマシ油等から選択されるは1種類以上の油剤は、メイクアップ化粧料、特に、唇/目元/睫毛に適用するメイクアップ化粧料の基材として本発明の化粧料に好ましく配合される。
【0069】
これらの成分を均一に混合して、本発明のアリール基含有ポリオルガノシロキサン組成物を得るための手段は特に限定されるものではないが、ボールミル,振動ミル,ニーダミキサー,スクリューエクストルーダー,パドルミキサー,リボンミキサー,バンバリーミキサー,ロスミキサー,ヘンシェルミキサー,フロージェットミキサー,ホバートミキサー,ロールミル等の周知の混合装置または混練装置により、室温で混練する方法が挙げられる。
【0070】
さらに、本発明に係る(A)液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンは、(B)油剤だけでなく、有機紫外線吸収剤等の(C)1種類以上の親油性化粧品原料と、任意に混和して均一に溶解するため、公知のフェニル基含有オルガノポリシロキサンに比して、配合の自由度や配合安定性に優れるという特徴を有する。
【0071】
(C)1種類以上の親油性化粧品原料は、化粧品に使用される親油性の原料であって、上記の油剤以外のものであれば特に制限されるものではないが、油剤の増粘・ゲル化剤、有機系の紫外線防御成分が例示される。特に、本発明に係る(A)液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンは、有機系の紫外線防御成分と特に相溶性に優れており、サリチル酸系、PABA系、ベンゾフェノン系、ケイ皮酸系、ベンゾイルメタン系等の殆どの有機系の紫外線防御成分を少量でも均一に溶解できる。特に、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル等のUV−Bに対応した紫外線防御成分にも、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸等のUV−Aに対応した紫外線防御成分にも高い相溶性を示すため、複数の紫外線防御成分を組み合わせて配合した場合でも、配合安定性が低下しない点で、有用である。
【0072】
なお、油剤の増粘・ゲル化剤、有機系の紫外線防御成分は、特許文献6(特開2011−136935号公報)に具体的に例示されているが、これらに限定されるものではない。
【0073】
本発明に係る(A)液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンは、任意の(C)1種類以上の親油性化粧品原料との配合比は任意であるが、具体的には、前記の成分(A)および成分(C)の配合比を、1:0.1〜1:10の範囲で調整する事により、有機系の紫外線防御成分のように公知のフェニル基含有オルガノポリシロキサンに対して溶解性の低い親油性化粧品原料でも、均一な混合物を得ることができる。
【0074】
さらに、本発明に係る(A)液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンを含有する組成物はは、上記の成分(B)および/または成分(C)の他、さらに、(D)粉体または着色剤を含んでもよい。これらの粉体または着色剤は、成分(A)〜成分(C)と均一に混合することができ、特に、粉体成分、特に無機粉体またはパール顔料と組み合わせることにより、透明感を向上させ、皮膚や毛髪にぎらつきのない自然なつやと輝きを付与する化粧料原料として使用することができる。特に、本発明の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンは、粉体または着色剤(顔料等)との親和性に優れ、特に着色剤と予め配合することにより、全体の色調変化を抑制し、各種化粧料の色調を容易かつ簡便に調整することができる利点がある。
【0075】
これに加えて、本発明に係る新規液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンは、従来公知のシリコーン系油剤に比べて高屈折率であるため、酸化チタン等の高屈折率の粉体成分と共に使用した場合、粉体と油剤の屈折率の差が小さいため、肌上における透明感に優れ、肌上で白浮きを起こすことなく、自然な仕上がり感が得られるという利点がある。一般に、パウダーファンデーション等のメークアップ化粧料は、酸化チタン(屈折率2.70前後)等の高屈折率の化粧料用粉体を多く含む剤型においては、化粧料の凝集防止を目的として、ジメチコン等、シリコーン系の油剤が使用される。この時、粉体とシリコーン系油剤の屈折率の差が大きい場合、製品全体が白っぽくなり、肌上での透明感や自然な仕上がり感が損なわれるという不利が生じるが、本願発明に係る新規液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンは屈折率が1.55〜1.60のシリコーン系油剤を容易に提供することができ、屈折率の差を抑制して、透明感に優れたメークアップ化粧料、スキンケア用の皮膚化粧料等を提供できる利点がある。

一方、ファンデーションや下地等の化粧料にはしわ隠し(ソフトフォーカス)効果を目的として、屈折率が比較的低い(屈折率1.40〜1.50前後)のシリコーンエラストマー粒子が配合されることが多いが、ジメチルシリコーンオイル等の従来の化粧品用油剤を用いると、油剤と粒子の屈折率が近いために、塗布後に透明性が高く、ソフトフォーカス効果が不十分になる場合がある。これに対し、本願発明に係る新規液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンは屈折率が1.55〜1.60のシリコーン系油剤を容易に提供できるため、シリコーンエラストマーとの屈折率の差が大きいために、肌上で透明にならず、シリコーンエラストマー粒子のソフトフォーカス効果がより改善されるという利点がある。
【0076】
成分(D)は、粉体または着色剤であって、主に化粧料に使用される粉体または着色剤であり、これらの粉体または着色剤は通常の化粧料に使用されるものであれば、その形状(球状、棒状、針状、板状、不定形状、紡錘状等)や粒子径(煙霧状、微粒子、顔料 級等)、粒子構造(多孔質、無孔質等)を問わず、いずれのものも使用することができるが、これらの粉体及び/または着色剤を顔料として配合する場合、平均粒子径が1nm〜20μmの範囲にある無機顔料粉体、有機顔料粉体、樹脂粉体から選択される1種類又は2種類以上を配合することが好ましい。なお、粉体または着色剤は、特許文献6(特開2011−136935号公報)に具体的に例示されているが、これらに限定されるものではない。
【0077】
本発明の(A)液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンおよびそれを含有してなる組成物は、長期間保管しても、加水分解に伴う濁りを生じることがなく、高屈折率を呈し、各種の化粧料原料と均一に相溶するため、化粧料への配合安定性、取り扱い性に優れる点で化粧料原料として好適に使用することができる。該化粧料原料は、化粧料に配合した場合、化粧料の耐久性、耐水性、皮膚との親和性、撥水性、柔軟性、水蒸気透過性、ガス透過性、造膜性、充填剤の保持性、潤滑性を改善し、さらに、べたつきを生じない点でその使用感を大きく改善しうる。特に、該化粧料原料は、化粧料の透明性を向上させ、さらに、化粧料の使用時に継続的な厚み、ツヤ、輝きおよび光沢を付与することができ、無機粉体またはパール顔料と組み合わせたときには、これらの白浮きを抑制し、皮膚または毛髪にぎらつきのない自然なツヤ(グロス)を付与することができる。
【0078】
本発明にかかる(A)液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンおよびそれを含有してなる組成物は、該組成物を含有してなる化粧料の透明感を向上させ、さらに、肌や唇に塗布した際に、厚みと、つやと光沢を与えることができる成分であり、かつ化粧崩れを抑制して、化粧効果の持続性に優れるため、輝きと透明感が求められる光沢性のメイクアップ化粧料に用いる化粧料原料として特に有用である。さらに、本発明の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンは、化粧料に配合した場合、光沢、肌なじみ等の使用感に優れ、毛穴ぼかし(ソフトフォーカス)や自然な仕上がりが実現できる利点があり、スキンケア化粧料等の皮膚化粧料、ヘアコンディショナー等の毛髪化粧料の化粧料原料としても極めて有用である。
【0079】
本発明にかかる(A)液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンの化粧料への配合量は、化粧料の種類、形態、所望とする特性および他の成分との調和を鑑みて、適宜その処方を選択することができるが、一般的に、メイクアップ化粧料、皮膚化粧料または毛髪化粧料であれば、化粧料組成物全体の0.5〜50質量%の範囲であることが好適であり、1.0〜20質量%の範囲での使用が特に好ましい。
【0080】
本発明の化粧料組成物は、上記の(A)液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンの他に、前記の(B)油剤(特に、ワックス類および揮発性油剤)、(C)有機紫外線防御剤等の親油性化粧品原料、(D)粉体または着色剤、(E)界面活性剤、(F)皮膜形成剤、(G)水溶性高分子、(H)紫外線防御剤、(I)低級一価アルコール、(J)多価アルコール類および(K)水から選択される少なくとも1種の化合物を含有することができ、これらの成分を配合したメイクアップ化粧料であることが特に好ましい。また、これらの化粧料配合成分の好適な使用量は、公知の化粧料の処方(組成)に基づいて、適宜選択することができる。
【0081】
また、本発明の化粧料組成物には、アミノ酸又はその塩、無機塩、有機酸又はその塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を化粧料の機能に応じて適宜配合することができる。
【0082】
さらに、本発明の化粧料組成物には、植物抽出エキス等の生理活性物質、pH調整剤、酸化防止剤、キレート剤、保湿成分、香料、防菌防腐剤等の通常化粧料に配合される各成分を配合することができるが、特にこれらに限定されるものではない。また、これらの成分は、本発明の目的を損なわない範囲で使用される。
【0083】
これらの成分は、特許文献6(特開2011−136935号公報)に具体的に例示されているものと共通であるが、これらに限定されるものではない。
【0084】
特に、本発明の(A)液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンを含有してなる化粧料組成物は、メイクアップ化粧料、毛髪化粧料または皮膚化粧料のいずれかであることが好ましい。特に、メイクアップ化粧料であることが好ましく、顔の各部位のうち、唇/目元/睫毛に適用するメイクアップ化粧料として好適に使用することができる。本発明に係るメイクアップ化粧料は、これらの部位に適用された場合、汗や皮脂による溶出、化粧崩れが継続的に抑制され、かつ、肌上で厚みのある仕上がりが実現でき、透明感のある質感とツヤ、輝きおよび光沢を付与することが出来、かつ、毛穴ぼかし(ソフトフォーカス)効果を向上させ、かつ色調を簡便に調製できるという利点がある。かかる好適な化粧料は、リップクリーム、練紅、リップグロス、口紅、リップライナー等の口唇化粧料、アイシャドウ、マスカラ、アイライナー、アイブロー、アイカラー等のアイメイク化粧料である。その具体例、剤形、製法およびパッケージについては、特許文献6(特開2011−136935号公報)に具体的に例示されているものと共通であるが、これらに限定されるものではない。同様に、本発明の(A)液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンを含有してなる化粧料組成物は、スキンケア化粧料として好適であり、肌なじみ等の使用感に優れ、ナチュラルな仕上がりを実現できる点で有用である。
【0085】
本発明にかかる(A)液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンは、本件出願人が特開2011−136935号公報において提案した化粧料原料および光沢化粧料と共通の用途に用いることができ、同様に、本件発明に係る新規な液状アリール基含有オルガノポリシロキサンと油剤からなる組成物は、特表2007−535586号公報および特開2009−019033号公報に提案されている各種のフェニルシルセスキオキサン樹脂組成物と共通の用途に用いることができる。より具体的には、本発明にかかる(A)液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンは、これらの特許文献に開示されたフェニル基含有オルガノポリシロキサン組成物または各種のフェニルシルセスキオキサン樹脂組成物の一部または全部を置き換えて使用することができ、係る使用形態は本願発明の範囲に包含されるものである。
【0086】
その具体的な製品としては、前記のメイクアップ化粧料、スキンケア化粧料のほか、皮膚洗浄剤製品、制汗剤製品、紫外線防御製品などの皮膚用化粧品;毛髪用洗浄剤製品、整髪料製品、毛髪用着色料製品、養毛料製品、ヘアリンス製品、ヘアコンディショナー製品、ヘアトリートメント製品等の頭髪用化粧品;浴用化粧品;発毛剤、育毛剤、鎮痛剤、殺菌剤、抗炎症剤、清涼剤、皮膚老化防止剤が例示されるが、これらに限定されない。
【0087】
前記の皮膚用化粧品は、頭皮、顔面(口唇、眉毛、頬を含む)、手指、爪、全身のいずれの部位についても用いることができる。具体的には、クレンジングジェル、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、洗顔クリーム、アイメークアップリムーバー、洗顔フォーム、液体石鹸(ボディソープ)、ハンドソープ、ゲル状石鹸、シェービングクリーム、除光液、アクネ対策化粧料等の皮膚洗浄剤製品;肌用クリーム、頭皮用トリートメント、スキンミルク、ミルクローション、乳液、フェイシャルパック、ボディパウダー、エッセンス、シェービングローション、マッサージ料、等のスキンケア製品;ファンデーション、リキッドファンデーション、油性ファンデーション、メイクアップベース、白粉、フェースパウダー、頬紅、リップクリーム、練紅、リップグロス、アイクリーム、マスカラ、眉墨、まつげ化粧品等のメイクアップ製品;デオドラント等の制汗剤;サンスクリーン剤、日焼け用薬剤(サンタン剤)等の紫外線防御製品が例示される。
【0088】
前記の頭髪用化粧品は、シャンプー、リンスインシャプー等の毛髪用洗浄剤;ヘアワックス、髪用カール保持剤、セット剤、ヘアクリーム、へアスプレー、ヘアリキッド等の整髪料製品;染毛料、ヘアカラースプレー、ヘアカラーリンス、ヘアカラースティック等の毛髪用着色料製品;ヘアトニック、ヘアトリートメントエッセンス、ヘアパック等の養毛料製品;オイルリンス、クリームリンス、トリートメントリンス、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント等のヘアリンス又はヘアコンディショニング製品が例示される。また、前記の浴用化粧品は、フォームバスが例示される。
【0089】
本発明にかかる化粧料の形態は特に限定されるものではなく、液状、W/O乳液状、O/W乳液状、W/Oクリーム状、O/Wクリーム状、固体状、ペースト状、ゲル状、粉末状、多層状、ムース状、ミスト状、顆粒状、フレーク状、碎石状等に好ましく適用が可能である。特に好ましい形態は、W/Oクリーム状、固体状、ペースト状、ゲル状、粉末状である。
【実施例】
【0090】
以下、実施例および比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。特に、本発明に係る化粧料の処方は、下記の実施例に開示した処方に限定されるものではない。粘度(動粘度)は25℃における測定値である。また、実施例および比較例において、Phはフェニル基を、Meはメチル基を、Npは1−ナフチル基をそれぞれ表す。また、「TPh単位」は、PhSiO3/2で表わされるフェニルシロキシ単位を表し、「TPh単位のみからなるフェニルシルセスキオキサン」は、同単位のみからなる固体状フェニルシルセスキオキサンである。なお、実施例、比較例に先立ち、各成分の物性値の測定方法および各サンプルの評価方法を以下に示す。
【0091】
〔オルガノポリシロキサンまたはオルガノポリシロキサン組成物の粘度〕
単一円筒型回転粘度計ビスメトロンVG−A1(芝浦システム製)を用いて25℃で測定した。
【0092】
[重量平均分子量、平均重合度の測定]
実施例、比較例において、重量平均分子量(Mn)は、以下の測定条件により、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析による測定結果から検量線法により求めた、ポリスチレン換算での重量平均分子量である。

測定温度:40℃(カラムオーブン温度)
試料:オルガノポリシロキサンを1重量%トルエン溶液として使用
検出器:RI検出器
更正曲線用ポリマー:標準ポリスチレン
【0093】
〔屈折率(RI)の測定〕
各成分およびオルガノポリシロキサン組成物の屈折率はアッベ(Abbe)屈折率計を用いて測定した。
【0094】
〔オルガノポリシロキサン組成物の外観評価〕
各オルガノポリシロキサンまたは組成物をガラス容器に取り、以下の基準で目視により評価した。
透明: サンプルが透明で、濁りが認められない。
白濁: サンプルが白く濁り、不透明な状態である。
【0095】
〔NMRによる構造解析〕
各オルガノポリシロキサンの構造は、29Si−核磁気共鳴スペクトル分析(日本電子株式会社製JNM−ECA500)により確認を行った。
【0096】
[実施例1]
温度計及びDean−Stark管と還流冷却管を取り付けた500mlのフラスコに、40gのTPh単位のみからなるフェニルシルセスキオキサン(217 FLAKE RESIN、東レ・ダウコーニング社製)と60gのトルエンを投入し、系が均一になるまで撹拌した。これに200gのトリメチルペンタフェニルトリシロキサン、40gのテトラフェニルジメチルジシロキサンおよび0.13gの水酸化セシウムを投入し、加熱しながら生成した水を留去し、更に4時間加熱環流を行った。冷却後、この系に1gの酢酸を投入し中和処理を行った。次いで、生成塩を濾過し、濾液を減圧下で加熱することによりトルエンを留去して237gの無色透明粘凋液体を得た。この液体は、粘度1070mPa・s、重量平均分子量770、屈折率1.578であり、29Si−核磁気共鳴スペクトル分析により、
構造式:
(PhMeSiO1/20.51(PhMeSiO2/20.28(PhSiO3/20.21
で示されるフェニル基含有シロキサン化合物であることが確認された。分子中のSi原子1モルに対するフェニル基のモル数は、1.51であった。
【0097】
[実施例2]
50gのTPh単位のみからなるフェニルシルセスキオキサン(上同)、142.5gのトリメチルペンタフェニルトリシロキサン、および47.5gテトラフェニルジメチルジシロキサンを使用した以外は、実施例1と同じ手順で合成を行い、236gの無色透明粘凋液体を得た。この液体は、粘度1760mPa・s、重量平均分子量810、屈折率1.579であり、29Si−核磁気共鳴スペクトル分析により、
構造式:
(PhMeSiO1/20.49(PhMeSiO2/20.26(PhSiO3/20.25
で示されるフェニル基含有シロキサン化合物であることが確認された。分子中のSi原子1モルに対するフェニル基のモル数は、1.49であった。
【0098】
[実施例3]
60gのTPh単位のみからなるフェニルシルセスキオキサン(上同)、135gのトリメチルペンタフェニルトリシロキサン、および45gテトラフェニルジメチルジシロキサンを使用した以外は、実施例1と同じ手順で合成を行い、236gの無色透明粘凋液体を得た。この液体は、粘度2950mPa・s、重量平均分子量850、屈折率1.579であり、29Si−核磁気共鳴スペクトル分析により、
構造式:
(PhMeSiO1/20.44(PhMeSiO2/20.26(PhSiO3/20.30
で示されるフェニル基含有シロキサン化合物であることが確認された。分子中のSi原子1モルに対するフェニル基のモル数は、1.44であった。
【0099】
[実施例4]
70gのTPh単位のみからなるフェニルシルセスキオキサン(上同)、127.5gのトリメチルペンタフェニルトリシロキサン、および42.5gテトラフェニルジメチルジシロキサンを使用した以外は、実施例1と同じ手順で合成を行い、235gの無色透明粘凋液体を得た。この液体は、粘度5530mPa・s、重量平均分子量900、屈折率1.579であり、29Si−核磁気共鳴スペクトル分析により、
構造式:
(PhMeSiO1/20.42(PhMeSiO2/20.23(PhSiO3/20.35
で示されるフェニル基含有シロキサン化合物であることが確認された。分子中のSi原子1モルに対するフェニル基のモル数は、1.42であった。
【0100】
[実施例5]
80gのTPh単位のみからなるフェニルシルセスキオキサン、120gのトリメチルペンタフェニルトリシロキサン、および40gテトラフェニルジメチルジシロキサンを使用した以外は、実施例1と同じ手順で合成を行い、234gの無色透明粘凋液体を得た。この液体は、粘度11460mPa・s、重量平均分子量940、屈折率1.579であり、29Si−核磁気共鳴スペクトル分析により、構造式
(PhMeSiO1/20.38(PhMeSiO2/20.22(PhSiO3/20.40
で示されるフェニル基含有シロキサン化合物であることが確認された。分子中のSi原子1モルに対するフェニル基のモル数は、1.38であった。
【0101】
[実施例6]
温度計及びDean−Stark管と還流冷却管を取り付けた300mlのフラスコに、30gの1−ナフチルトリメトキシシラン(Z−6874、東レ・ダウコーニング社製)と90gのトリメチルペンタフェニルトリシロキサン、および120gのトルエンを投入し、系が均一になるまで撹拌した。これに0.06gの水酸化セシウム、5gのイオン交換水および5gのメタノールの混合液を滴下した。加熱しながら、加水分解反応により生じたメタノールを除去し、さらに過剰の水分をトルエンとの共沸脱水により留去した。脱水後、更に4時間加熱環流を行った。系を冷却後、この系に0.5gの酢酸を投入し中和処理を行った。次いで、生成塩を濾過し、濾液を減圧下で加熱することによりトルエンを留去して109gの無色透明粘凋液体を得た。この液体は、粘度12100mPa・s、重量平均分子量730、屈折率1.596であり、29Si−核磁気共鳴スペクトル分析により、構造式
(PhMeSiO1/20.53(PhMeSiO2/20.27(NpSiO3/20.20
で示されるフェニル基/1−ナフチル基含有シロキサン化合物であることが確認された。分子中のSi原子1モルに対するナフチル基とフェニル基の合計モル数は、1.53であった。
【0102】
以下、実施例1〜6のサンプル(No.1〜6)について、その仕込み量、物性、および構造(各構成単位の比)をまとめたものを表1「液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンの組成と物性」に示す。
【0103】
[表1]液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンの組成と物性
【表1】
【0104】
[コラーゲンフィルムを用いた評価]
皮膚に類似した構造を有するコラーゲンフィルムを用いて、本発明に係る液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン(サンプルNo.4)の皮膚上における厚みおよび持続性を以下の方法により評価した。
1.コラーゲンフィルム(Naturin社製、Collagen Food Film)の上にサンプルNo.4およびトリメチルペンタフェニルトリシロキサンを各々0.1g滴下し、直後のサンプルの外観を観察した(図1
2.次いで、上記サンプル上から、ティッシュペーパー(王子ネピア株式会社、ジョイボタニカ170)2枚(1組)で上から軽く押さえた後、サンプルの外観変化を観察した(図2

上記評価の結果を図1および図2に示す。サンプルは、右が実施例に係る液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン(サンプルNo.2)であり、左が、メチルペンタフェニルトリシロキサンである。図2中、白点線はサンプルの広がった範囲のおよその外縁を示す。

液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン(サンプルNo.2)は、ティッシュペーパーで押さえた後、一部がティッシュペーパーに移行したが、油剤の層に厚みがありかつ大きく広がらず、ツヤのある外観を保っていた(図2−右)。
一方、メチルペンタフェニルトリシロキサンでは、ティッシュペーパーで押さえた後、油剤はティッシュペーパーまたはコラーゲンフィルムに染み込んで広く拡散してしまい、厚みとツヤは認められなかった(図2−左)。
【0105】
[実施例7、8]
表2に示す組成により、本発明の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン(サンプルNo.2またはNo.3)と、トリメチルペンタフェニルトリシロキサンを20:80の質量比で、120℃の温度条件下、機械力(ミキサー)を用いて均一になるまで攪拌混合し、本発明のオルガノポリシロキサン組成物(サンプルNo.7,8)を調製した。各々の粘度、屈折率、調製直後および保管後外観の評価結果を表中に示した。
【0106】
同表中に、本発明の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン(サンプルNo.2またはNo.3)単独の粘度、屈折率、調製直後および保管後外観の評価結果を示した。
【0107】
[比較例1、2]
表2に示す組成により、TPh単位のみからなるフェニルシルセスキオキサンと、トリメチルペンタフェニルトリシロキサンを20:80(比較例1)または25:75(比較例2)の質量比で、120℃の温度条件下、機械力(ミキサー)を用いて均一になるまで攪拌混合し、比較実験用のオルガノポリシロキサン組成物(サンプルNo.9,10)を調製した。各々の粘度、屈折率、調製直後および保管後外観の評価結果を表中に示した。
【0108】
[表2]液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンおよびオルガノポリシロキサン組成物
【表2】
【0109】
表1に示すとおり、本発明に係る液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン(サンプルNo.1〜6)は、無色透明で均一な液体であり、1.58〜1.60程度の高屈折率を示した。また、表1および表2に示す通り、本発明に係る液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンまたはその組成物は、製造直後および保管後であっても、透明な外観を維持しており、白濁は認められなかった。さらに、本発明に係る組成物も同様に、全体の屈折率が約1.58であったが、25℃における組成物全体の粘度が260〜270程度のサンプルを調整することができた。組成物の粘度は、各成分の混合比で決定されるので、成分(A)をサンプルNo.1〜6(粘度1070〜12100mPa・s)から選択し、成分(B)との混合比を20:80以外に調整することで、少なくとも、粘度260mPa・s未満の低粘度から12100mPa・sまでの粘度範囲で、容易に高屈折率の組成物を調整可能であろうことが分かる。
【0110】
一方、比較例1,2に係る比較実験用のオルガノポリシロキサン組成物では、製造直後は無色透明液体ではあるが経時で白濁してしまった。これらのサンプルは、特許文献6(特開2011−136935号公報)に開示された組成物に相当する。代表的な試験結果として、図3に、サンプルNo.3(右)と比較例2の組成物(左)を各々保管後の外観を示した。
【0111】
[実施例9〜10:液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンを含む組成物の屈折率]
本発明に係る液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン(サンプルNo.2またはサンプルNo.6)と、以下に示す各種油剤または親油性化粧料原料(紫外線吸収剤)を各混合比(1:9〜9:1)で混合したオルガノポリシロキサン組成物の屈折率を、室温においてアッベ(Abbe)屈折率計を用いて測定した結果を以下に示す。また、比較実験(比較例3)として、フェニルトリメチコン(商品名:SH556、東レ・ダウコーニング社製)と、各成分を同様の比率で混合した場合の組成物全体の屈折率を表中に示した。
【0112】
[表3]オルガノポリシロキサン組成物の屈折率
【表3】
【0113】
表3に示す通り、本発明に係る液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン(サンプルNo.2, No.6)は上記の油剤または親油性化粧料原料と混合した場合の屈折率がフェニルトリメチコン(SH556)よりも高いことが確認された。特に、本発明に係るサンプルNo.2またはNo.6の各成分に対する混合比が50%以上の範囲では、全ての組成物において、1.50以上の高い屈折率を維持していた。
【0114】
[実施例11〜12:液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンと紫外線吸収剤との相溶性]
液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン(サンプルNo.2またはサンプルNo.6)と2種類の紫外線吸収剤(各々、UV−A領域とUV−B領域に対応する有機紫外線吸収剤である)を各混合比(1:9〜9:1)で混合した際の溶解性を以下の基準で確認した。その結果を表4に示す。また、他のシリコーン系油剤を用いた比較実験のため、フェニルトリメチコン(商品名:SH556、東レ・ダウコーニング社製)またはジメチコン((商品名:SH200−6cs、東レ・ダウコーニング社製)を用いて、同様に相溶性を確認した結果を表中に示す。

溶解:シリコーン系油剤と紫外線吸収剤が均一に相溶した。
不溶:紫外線吸収剤の一部または全部がシリコーン系油剤中に溶解しなかった。
【0115】
[表4]紫外線吸収剤(親油性化粧料原料)との相溶性の比較
【表4】
【0116】
本発明に係る液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン(サンプルNo.2, No.6)は、2種類の紫外線吸収剤(各々、UV−A領域とUV−B領域に対応する有機紫外線吸収剤)のいずれとも、1:9〜9:1の範囲で均一に溶解して混合組成物を得られたが、ジメチコン(6cs)やフェニルトリメチコンでは、一方または両方の紫外線吸収剤と混合した場合、特に、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの配合比が5割を超える場合、均一な組成物を得ることができなかった。この点において、本発明に係る液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン(サンプルNo.2, No.6)は、親油性化粧料原料との相溶性に優れることが確認された。
【0117】
[実施例13〜26:化粧料]
以下、本発明に係る液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンを用いて、以下に示す処方により各種化粧料を調製し、その特性を以下に示す試験例および評価基準により評価した。以下の組成中、液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン(No.)は、実施例1〜6で得られた各サンプルNo.の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンを化粧料処方に用いたことを示す。また、表5〜表8に示す組成により、各表に記載の実施例に対応した比較処方で化粧料を調製し、その評価を記入した。
【0118】
[化粧料の試験例および評価基準]
化粧料の種類に応じて、以下の(1)〜(8)の特性を以下に示す基準で評価した。
(1)「保存安定性」
50℃にて1カ月保存した時に初期と同様の外観をしているものを○、経時で分離が見られたものを×とした。また、乳化できなかった組成については、×(*)として、表の外に乳化できない旨を記載した。
(2)「外観」
全体が均一でオイル分離や顔料分散の偏りがないものを○、不均一なものを×とした。
(3)「膜厚」
スライドガラス上に同量の口紅サンプルを塗布し、塗布直後および1時間経過した後の外観変化を目視にて観察した。
<評価基準>
(評価)○:厚みがあり広がっていない、△:やや広がりあり、×:厚みがなく広がり大
(4)「残留性」
肌に塗布してから1時間後に流水下に1分間さらした後の残留性を目視により観察した。
<評価基準>
(評価)○:試験前と変化なし、△:残留している、×:ほとんど残留していない
(5)「つや」
専門パネル(10名)に各処方を使用してもらい、官能で3段階評価し、その平均点で評価した。
<評価基準>
1:つやがない、3:つやが普通、5:つやが良い
(評価)○:4以上、△:2以上4まで、×:2以下
(6)「のび」
専門パネル(10名)に各処方を使用してもらい、官能で3段階評価し、その平均点で評価した。
<評価基準>
1:のびない、3:のびが普通、5:のびが良い
(評価)○:4以上、△:2以上4まで、×:2以下
(7)「肌なじみ」
専門パネル(10名)に各処方を使用してもらい、官能で3段階評価し、その平均点で評価した。
<評価基準>
1:なじまない、3:普通のなじみ、5:なじみが良い
(評価)○:4以上、△:2以上4まで、×:2以下
(8)「べたつき」
専門パネル(10名)に各処方を使用してもらい、官能で3段階評価し、その平均点で評価した。
<評価基準>
1:べたつきを感じる、3:ややべたつきを感じる、5:べたつきを感じない
(評価)○:4以上、△:2以上4まで、×:2以下
【0119】
[実施例13:透明リップスティック]
下表5に記載の成分を用いて透明リップスティックを調製した。(数字は全て質量%である)
比較のため、本発明の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン(No.1)を他の油剤で置き換えた組成および評価結果を、同表の比較例6、比較例7に示す。
[表5]透明リップスティックの評価結果
【表5】
*1:ダウコーニング社製、2−8178Gellant
*2:メルク社製、ロナフレアーバランスレッド
(調製方法)
前記原料を加熱混合し、均一混合することで透明リップスティックを得た。
(評価結果)
得られた透明リップスティックは、全体が均一で、透明感があり、かつツヤのある外観を維持していた。一方、比較例に係る透明リップスティックは、つや、残留性の評価が実施例に劣るものであった。
【0120】
[実施例14:油中水型日焼け止め化粧料]
下表6に記載の成分を用いて油中水型日焼け止め化粧料を調製した。(数字は全て質量%である)
比較のため、本発明の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン(No.1)を他の油剤で置き換えた組成および評価結果を、同表の比較例8、比較例9に示す。
[表6]油中水型日焼け止め化粧料の評価結果
【表6】
*1:東レ・ダウコーニング社製、SH556
*2:東レ・ダウコーニング社製、FZ−3196
*3:東レ・ダウコーニング社製、ES−5612フォーミュレーションエイド
×(*):乳化することができなかったため、評価せず。
(調製方法)
成分a〜gを均一になるまで撹拌する。
成分h〜kを均一になるまで撹拌する。
上記1を撹拌しながら成分2を少しずつ加えて乳化する。
(評価結果)
得られた油中水型日焼け止め化粧料は、乳化後の保存安定性、肌上での官能評価結果に優れるものであった。一方、比較例8に係る油中水型日焼け止め化粧料は肌上での官能評価結果に劣るものであり、比較例9に係る組成は、乳化することができなかった。
【0121】
[実施例15、16:液状口紅]
下表7に記載の成分を用いて液状口紅を調製した。(数字は全て質量%である)
比較のため、本発明の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンをフェニルトリメチコンで置き換えた組成および添加しない組成を同表の比較例10、比較例11に示す。なお、実施例15と比較例10の液状口紅について、スライドガラス上に液状口紅を0.5gずつ塗布した時の写真を図4に示す。
[表7]液状口紅の評価結果
【表7】
*1:千葉製粉社製、レオパールKL
*2:メルク社製、ロナフレアーバランスレッド
*3:東レ・ダウコーニング社製、VM−2270
*4:東レ・ダウコーニング社製、SH556

(調製方法)
表中に示す組成で各成分を85℃に加熱して均一混合し、液状口紅を得た。
(評価結果)
得られた液状口紅は、その外観、つや、感触(のび)、膜厚および残留性に優れるものであった。特に、図4に示す通り、フェニルメチコン(SH556)を配合した場合(図4左)等に比して、同一の塗布量で厚みのある質感を実現できるものであった(図4右)。一方、比較例10、11に係る液状口紅は特に、外観、残留性および膜厚の点で、本発明の実施例に劣るものであった。
【0122】
[実施例17:リップスティック]
下表8に記載の成分を用いてリップスティックを調製した。(数字は全て質量%である)
比較のため、本発明の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン(No.2)を重質流動イソパラフィンで置き換えた組成を、同表の比較例12に示す。
[表8]リップスティックの評価結果
【表8】
*1:メルク社製、ロナフレアーバランスレッド
*2:東レ・ダウコーニング社製、5562カルビノールフルイド

(調製方法)
前記原料を加熱混合し、均一混合することでリップスティックを得た。
(評価結果)
得られたリップスティックは、全体が均一で、ツヤのある外観を維持していた。一方、比較例に係るリップスティックは、つや、のび、べたつきの評価が実施例に劣るものであった。
【0123】
[実施例18:アイシャドウ]
下記成分から成るアイシャドウを調製した。(数字は全て質量%である)
(1)ポリエーテル変性シリコーン*1 10
(2)シクロペンタシロキサン 15
(3)アクリル変性シリコーン*2 30
(4)フェニル変性シリコーン*3 7.5
(5)液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン(No.1) 14.5
(6)水 2
(7)赤色202号 1
(8)青色1号 0.35
(9)酸化チタン 0.65
(10)カルビノール変性シリコーン*4
(11)シリコーンエラストマー粉体*5
(11)パール顔料*6 10
*1:東レ・ダウコーニング社製、BY11−030
*2:東レ・ダウコーニング社製、FA 4001 CM
*3:東レ・ダウコーニング社製、SH556
*4:東レ・ダウコーニング社製、5562カルビノールフルイド
*5:東レ・ダウコーニング社製、9701コスメティックパウダー
*6:メルク社製、チミロン(登録商標)スーパーブルー
(調製方法)
1.成分(1)〜(5)を室温で均一に混合する。
2.上記混合物を、高速攪拌しながらゆっくりと成分(6)を加え、均一混合する。
3.成分(7)〜(10)を加え、均一になるまで混合する。
4.成分(11)、(12)を加え、均一になるまで混合する。
(評価結果)
上記処方により、全体が均一で、優れたつやと光沢を有するアイシャドウ製品を得ることができた。
【0124】
[実施例19:頬紅]
下記成分から成る頬紅を調製した。(数字は全て質量%である)
(1)顔料*1 19
(2)マイカ 6.5
(3)パール顔料*2 11.5
(4)シリコーンエラストマー粉体*3
(5)液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン(No.1) 15.5
(6)液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン(No.2) 41.5
*1:メルク社製、コロロン レッドブラウン
*2:メルク社製、チミロン スーパーレッド
*3:東レ・ダウコーニング社製、9701コスメティックパウダー
(調製方法)
1.成分(1)〜(4)を均一に混合する。
2.さらに成分(4)、(5)を加え、均一になるまで混合する。
(評価結果)
得られた頬紅は、全体が均一なムース状であり、かつその状態が1カ月以上にわたり安定に保たれていた。
【0125】
[実施例20:マスカラ(エマルションタイプ)]
下記成分から成る油中水型エマルジョン型のマスカラを調製した。(数字は全て質量%である)
(1)ポリエーテル変性シリコーン*1 10
(2)カーボンブラック 25
(3)シリコーンエラストマー*2 10
(4)ジメチルポリシロキサン2cs 10
(5)アクリル変性シリコーン*3
(6)液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン(No.3) 4.3
(7)イソドデカン 6.7
(8)水 23
(9)塩化ナトリウム 2
(10)防腐剤 適量
*1:東レ・ダウコーニング社製、BY22−008M
*2:東レ・ダウコーニング社製、EL−8050IDシリコーンオーガニックエラストマーブレンド
*3:東レ・ダウコーニング社製、FA 4002 ID
(調製方法)
1.成分(1)、(2)を混合する。
2.成分(3)〜(7)を混合する。
3.上記1を高速攪拌しながら、上記2を加えて混合する。
4.成分(8)〜(10)を混合する。
5.上記3を高速攪拌しながら、上記4を加えて乳化する。
(評価結果)
上記処方により、全体が均一なエマルジョン型のマスカラ製品を得ることができた。
【0126】
[実施例21:アイライナー(ジェル状)]
下記成分から成るアイライナーを調製した。(数字は全て質量%である)
(1)シリコーンレジンワックス*1 10
(2)シリコーンエラストマー粉体*2
(3)ステアリン酸グリセリン 2
(4)シリル化シリカ*3
(5)カーボンブラック 8
(6)イソドデカン 25
(7)MQレジン*4 15
(8)イソドデカン 26
(9)液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン(No.4) 8
*1:東レ・ダウコーニング社製、SW−8005 C30レジンワックス
*2:東レ・ダウコーニング社製、9701 コスメティックパウダー
*3:東レ・ダウコーニング社製、VM−2270アエロジェルファインパーティクル
*4:東レ・ダウコーニング社製、MQ−1640ソリッドレジン
(調製方法)
1.成分(1)〜(6)を混合する(75℃)。
2.成分(7)〜(9)を混合する(75℃)。
3.上記1を撹拌しながら上記2を加え、均一になるまで混合する。
4.撹拌しながら冷却する。
(評価結果)
上記処方により、全体が均一なジェルアイライナーを得ることができた。
【0127】
[実施例22:ヘアスタイリング剤(水中油型エマルジョン型)]
下記成分から成るヘアスタイリング剤を調製した。(数字は全て質量%である)
(1)ポリエーテル変性シリコーン*1
(2)水 48.3
(3)グリセリン 2
(4)アミノエラストマーエマルジョン*2 6.7
(5)液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン(No.1) 3
(6)フェニル変性シリコーン*3
(7)ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル*4 20
(8)セテアリルアルコール 15
(9)防腐剤 適量
*1:東レ・ダウコーニング社製、SH3771M
*2:東レ・ダウコーニング社製、CE−7080スマートスタイル
*3:東レ・ダウコーニング社製、SH556
*4:クローダ社製、グリセロックスHE
(調製方法)
1.成分(1)〜(4)を加熱溶解する(70℃)。
2.成分(5)〜(8)を加熱溶解する(70℃)。
3.上記1を撹拌しながら上記2をゆっくり加えて乳化する。
4.撹拌しながら冷却する。
5.成分(9)を加えて均一になるまで撹拌する。
(評価結果)
上記処方により、ヘアスタイリング剤を得ることができた。
【0128】
[実施例23:ファンデーション(リキッドタイプ)]
下記成分から成るリキッドファンデーションを調製した。(数字は全て質量%である)
(1)ポリエーテル変性シリコーン*1
(2)シリコーンエラストマー*2
(3)アルキル変性シリコーン*3
(4)トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル 2
(5)液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン(No.1) 2
(6)フェニル変性シリコーン*4 3.35
(7)疎水化処理酸化鉄黄*5 0.4
(8)疎水化処理酸化鉄赤*6 0.17
(9)疎水化処理酸化鉄黒*7 0.08
(10)酸化チタン 6
(11)グリセリン 15
(12)塩化ナトリウム 1
(13)水 残余
(14)防腐剤 適量
*1:東レ・ダウコーニング社製、ES−5300フォーミュレーションエイド
*2:東レ・ダウコーニング社製、EL−8050IDシリコーンオーガニックエラストマーブレンド
*3:東レ・ダウコーニング社製、SS−3408
*4:東レ・ダウコーニング社製、SH556
*5:三好化成社製、SA−IOY−8
*6:三好化成社製、SA−IOR
*7:三好化成社製、SA−IOB
(調製方法)
1.成分(1)〜(5)を混合する。
2.成分(6)〜(10)を混合する。
3.上記1と上記2を均一になるまで混合する。
4.成分(11)〜(13)を混合する。
5.上記3を撹拌しながら上記4をゆっくり加えて乳化する。
6.成分(14)を加えて均一になるまで混合する。
(評価結果)
上記処方により、リキッドファンデーションを得ることができた。
【0129】
[実施例24:水中油型日焼け止め料(クリームタイプ)]
下記成分から成る水中油型日焼け止め料を調製した。(数字は全て質量%である)
(1)シリコーン乳化剤プレミックス*1 10
(2)ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸*2 0.05
(3)メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 5
(4)ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 2
(5)液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン(No.2) 3
(6)水 40
(7)カルボマー(2%水溶液) 22.5
(8)水酸化ナトリウム(1%水溶液) 10.5
(9)ブチレングリコール 7
(10)防腐剤 適量
*1:東レ・ダウコーニング社製、FB−2540
*2:クラリアント社製、ホスタファットKL340D
(調製方法)
1.成分(1)〜(5)を均一になるまで混合する。
2.成分(6)〜(10)を均一になるまで混合する。
3.上記2を撹拌しながら上記1を加えて乳化する。
(評価結果)
上記処方により、水中油型日焼け止め料を得ることができた。
【0130】
[実施例25:リップスティック]
下記成分から成るリップスティックを調製した。(数字は全て質量%である)
(1)カルビノール変性シリコーン*1 26
(2)赤201号 0.6
(3)赤202号 0.6
(4)パール顔料*2
(5)キャンデリラワックス 8
(6)ビーズワックス 4
(7)カルナバロウ 1.5
(8)プロピルパラベン 0.2
(9)ワセリン 2
(10)フェニル変性シリコーン*3
(11)液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン(No.2) 6
(12)アクリル変性シリコーン*4 12
(13)ホホバ油 3.5
(14)トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル 20.6
*1:東レ・ダウコーニング社製、5562カルビノールフルイド
*2:メルク社製チミロン スーパーシェーンMP−1001
*3:東レ・ダウコーニング社製、SH556
*4:東レ・ダウコーニング社製、FA4001CM
(調製方法)
1.成分(1)〜(4)を均一になるまで混合する。
2.成分(5)〜(9)を80℃にて均一になるまで混合する。
3.上記2を撹拌しながら上記1を加えて混合する(80℃)。
4.上記3に成分(10)〜(14)を加えて混合する(80℃)。
5.容器に流し込む。
(評価結果)
上記処方により、リップスティックを得ることができた。
【0131】
[実施例26:口紅(パレット型)]
下記成分から成る口紅を調製した。(数字は全て質量%である)
(1)イソドデカン 39
(2)液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン(No.1) 9
(3)シリコーンレジン*1 15
(4)ジメチルシリコーン2cs 17
(5)赤色201号 1
(6)酸化鉄 1
(7)赤色202号 0.5
(8)酸化チタン 0.5
(9)ジメチコン2cs 3
(10)パール顔料*2
(11)シリル化シリカ*3
(12)シリコーンゴム粉末*4
(13)ビーズワックス 5
*1:東レ・ダウコーニング社製、MQ−1640フレークレジン
*2:メルク社製チミロン スーパーシェーンMP−1001
*3:東レ・ダウコーニング社製VM−2270アエロジルファインパーティクル
*4:東レ・ダウコーニング社製9701コスメティックパウダー
(調製方法)
1.成分(1)〜(4)を均一になるまで混合する。
2.成分(5)〜(9)を均一になるまで混合する。
3.上記2に上記1を加えて混合する。
4.上記3に成分(10)〜(12)を加えて加熱する(80℃)。
5.成分(13)を80℃で溶解し、上記4に加えて混合する。
6.45℃になるまで撹拌しながら冷却する。
7.平皿に流し込む。
(評価結果)
上記処方により、全体が均一な口紅を得ることができた。
【0132】
[実施例26:スキンクリーム]
下記成分からなる毛穴ぼかし用スキンクリームを調製した。(数字は全て質量%である)
【表9】
*1:東レ・ダウコーニング社製RM2051
*2:東レ・ダウコーニング社製EP−9215コスメチックパウダー
【0133】
(調製方法)
成分(1)を撹拌しながら成分(2)を徐々に添加して乳化させる。
上記1の乳化物を撹拌しながら成分(3)〜(6)を添加して分散させ、毛穴ぼかし用クリームを得た。
(評価結果)
得られた組成物を不揮発成分が10ミクロン厚となるようにスライドガラス上に塗布した後に文字の書かれた紙の上に置き、目視にて文字の見え具合を確認したところ、表9および図5に示すとおり、実施例26の方が文字(Dow Corning)がぼやけて見えたことから、本発明の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンは、低屈折率のジメチルシリコーンに比べて、シリコーンエラストマーパウダーと組み合わせた場合の毛穴ぼかし(ソフトフォーカス)効果がより優れることが分かった。
【0134】
[実施例27:乳液]
下記成分からなる乳液を調製した。(数字は全て質量%である)
【表10】
*1:東レ・ダウコーニング社製FZ−2233
*2:東レ・ダウコーニング社製2−1184フルイド
*3:東レ・ダウコーニング社製SH556
【0135】
(調製方法)
成分(1)〜(8)を室温で均一になるまで混合する。
成分(9)〜(13)を室温で均一になるまで混合する。
上記混合物1を高速撹拌しながら上記混合物2を加えて乳化する。
(評価方法)
「肌なじみ」
専門パネル(10名)に各処方を使用してもらい、官能で3段階評価し、その平均点で評価した。
<評価基準>
1:なじまない、3:普通のなじみ、5:なじみが良い
(評価)○:4以上、△:2以上4まで、×:2以下
【0136】
表10に示す通り、本発明に係る乳液は、比較例のものに比して、肌なじみを評価項目とする官能評価において高い評価を得た。このことから、本発明に係る乳液は、使用感に優れることが分かった。
【0137】
[実施例28:パウダーファンデーション]
下記成分から成るパウダーファンデーションを調製した。(数字は全て質量%である)
【表11】
*1:大日本化成社製タルクDN−SH
*2:大日本化成社製チタンDN−SH(2)
*3:ハイドロゲンジメチコン処理した三好化成社製SA−セリサイトFSEとハイドロゲンジメチコン処理した山口雲母工業所製マイカY−2300の2:1混合物
*4:松本油脂製薬社製マツモトマイクロスフェアM−100
*5:石原産業社製TTO−55C
*6:太平化学産業社製板状HAP−SC
【0138】
(調製方法)
成分(1)〜(10)を均一に混合後、粉砕器にて処理する。
成分(11)〜(18)を加熱溶解後、室温まで冷却する。
上記混合物1に混合物2を加えて混合し、粉砕器にて全体を粉砕する。
ふるいを通し、粒度をそろえた後、平皿に入れて圧縮成型する。
(評価方法)
「塗布した時のナチュラル感」
専門パネル(10名)に各処方を使用してもらい、官能で3段階評価し、その平均点で評価した。
<評価基準>
1:地肌と比較して白浮きが目立つ、3:地肌と比較して少し目立つ、5:地肌と比較して白浮きが見立たない
(評価)○:4以上、△:2以上4まで、×:2以下
また、得られたファンデーションをスポンジに取り、肌に塗布してマイクロスコープ(スカラ株式会社製、ビデオルーペVL−7EXII)にて肌表面の観察を行った結果、粘度5000csのジメチルポリシロキサンを用いた比較例15に比べ、実施例28の方が毛穴およびシワに入ったファンデーションが目立たないことが分かった。これは、ジメチルポリシロキサンに比べ、本発明に係る液状アリール基含有ポリオルガノシロキサン(No.4)の方が高屈折率であるため、酸化チタン等の高屈折率の粉体との屈折率の差が小さいため、肌上に塗布した場合、透明感があり、皺を際立たせない効果に優れることを意味する。
【0139】
[実施例29:ファンデーション用顔料プレミックス]
下記成分から成るファンデーション用顔料プレミックススラリーを調製した。(数字は全て質量%である)
【表12】
*1:三好化成社製SAチタンCR−50
*2:三好化成社製SAエクセルマイカJP−2
*3:三好化成社製SAイエローUXLO
*4:三好化成社製SAレッド
*5:三好化成社製SAブラック
【0140】
(調製方法)
全成分を均一になるまで混合してファンデーション用顔料プレミックススラリーを調製した。
(評価方法)
得られた顔料プレミックススラリーをPETフィルム上に広げ、黒線より下の部分にメトキシケイヒ酸エチルヘキシルを滴下してスパチュラで混合し、5分経過後に黒線より上の部分と下の部分の色調の変化を目視にて確認した。
【0141】
表12および図7に示す通り、実施例12は色調変化が起こらなったのに対し、比較例16は色調が暗くなる現象が見られた。このため、顔料をあらかじめ本発明の液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンと混合して色調変化を防ぐことで、色調の調整を簡便にできることが示唆される。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明に係る液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンは、比較的低分子量の油剤が設計可能であり、1.55以上の高屈折率を呈し、油剤または親油性成分との相溶性に優れ、さらに、他の油剤と混合した場合、長期間保管しても、加水分解に伴う、濁りを生じることがないため、公知のシリコーンオイルの使途、特に、高屈折率が求められる化粧品以外の用途にも適用可能である。さらに、ソフトフォーカス等の光学的特性に加え、顔料や色剤と共に配合すると色調の変化を抑制するため、塗料等の非化粧料用組成物に配合することもできる。その他、具体的な工業的用途として各種潤滑油、熱媒、作動油、スリップ剤、すべり剤、ブリードオイル、防汚塗料、有機樹脂への添加による応力緩和剤、光導波路・光ファイバー、液体現像剤、高屈折率希釈剤および液体レンズを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。さらに、本発明に係る液状アリール基含有ポリオルガノシロキサンは、他の硬化性シリコーンオイルと混合した場合に、組成物全体の屈折率を大幅に向上させ、かつ相溶性に優れるため、光学用高屈率シリコーンの一般的用途として知られる、光学用塗料、液晶画面のバックライト、信号機、屋外の大型ディスプレイや広告看板等の半導体素子、発光ダイオード等の封止材、リフレクター、光学ケース、光学用シリコーンレンズ等の原料あるいは添加剤成分として有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7