特許第6105910号(P6105910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6105910-ドアサッシュ及びその製造方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6105910
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】ドアサッシュ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/04 20060101AFI20170316BHJP
   B23K 11/11 20060101ALI20170316BHJP
   B23K 11/00 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   B60J5/04 M
   B23K11/11 540
   B23K11/00 570
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-259614(P2012-259614)
(22)【出願日】2012年11月28日
(65)【公開番号】特開2014-104872(P2014-104872A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年11月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000240949
【氏名又は名称】片山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】山下 力
(72)【発明者】
【氏名】三宅 篤男
(72)【発明者】
【氏名】鳥畑 博道
(72)【発明者】
【氏名】原田 裕輔
【審査官】 岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−063250(JP,A)
【文献】 特開2011−177761(JP,A)
【文献】 特開2008−273343(JP,A)
【文献】 特開2008−080949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/04
B23K 11/00
B23K 11/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一枚の板材からロール成形により断面形成される車両のドアサッシュであって、
ドアサッシュの長手方向と直交する断面は、
車両の外側に位置するアウター面部と、
前記アウター面部から両側を裏側に折り返して重ねた二重部と、
前記二重部のうち、インサイド側の板材はランチャンネル保持部を形成するとともに袋状に折り曲げて形成した袋状部を有し、
前記袋状部はランチャンネル保持部から室内側に折り返したインサイド面と、当該インサイド面の先端から略直角方向に折り返したインナー面と、当該インナー面の先端から車外側に折り返したアウトサイド面を有し、
前記二重部のうちアウトサイド側の板材は、ウェザストリップ保持部を形成するとともに当該アウトサイド側の板材の先端側を前記袋状部の閉断面内側であって、前記アウトサイド面にのみ部分的に重ねて溶接接合した溶接部を有することを特徴とするドアサッシュ。
【請求項2】
前記溶接部は接合面に凸面部を形成してあることを特徴とする請求項1記載のドアサッシュ。
【請求項3】
前記請求項1又は2記載のドアサッシュの製造方法であって、前記二重部に一方の電極を配置し、他方の電極を前記部分的に重ねたアウトサイド面に配置し、当該部分的に重ねたアウトサイド面に溶接することを特徴とするドアサッシュの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両のドアフレームを構成するドアサッシュ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドアにはドアガラスが昇降可能に備えられており、このドアガラスを摺動保持するのにドアサッシュが取り付けられている。
このドアサッシュは、枠形状の内側にドアガラスを納めるランチャンネルを保持し、枠形状の外側にドアと車体との間をシールするためのウェザストリップを保持する構造になっている。
この種のドアサッシュはドアとしての剛性が要求されるとともに、車両としての軽量化が要求されている。
従来から帯状の一枚の板材を用いてロール成形によりドアサッシュを製造することが行われている。
特許文献1は一枚の板材をロール成形し、車両の外側に位置するアウター面部と、車両の室内側に位置する閉断面からなる袋状部との間を三重に重ね合せ、その部分で溶接したロール成形品を開示する。
このようなランチャンネル、及びウェザストリップを保持する部分を三枚重ねする構造ではドアサッシュが重くなる。
また、三重部を電気抵抗溶接やレーザー溶接するのに比較的大きな出力の溶接機が必要になる。
そこで特許文献2にこの三枚重ねの部分を二枚重ねにしたもの、特許文献3に一枚のみにしたものが提案されている。
上記特許文献2,3の断面構造にあっては、少なくとも2枚重ねとなる2箇所の溶接が必要であるととともに、ランチャンネル及びウェザストリップの保持部の剛性が不充分になる恐れがある。
特許文献4は車外側の外側面部と室内側の閉断面部との間の第1及び第2保持部を二枚重ねにするとともに、断面の重心より離れた箇所に重合部分又は厚い板厚の部分を形成する断面構造を開示する。
同公報の記載によれば断面2次モーメントの向上を目的とし、第1及び第2保持部に有する断面の重心よりも離れた部分を重ね合せるか、板厚を厚くするものである。
より具体的には、室内側に位置する閉断面からなる袋状部の最も室内側の第2の重合部(123)を厚くするのが目的である。
そのためには同公報図1に示すように、閉断面部(115)の最も室内側のコーナー部W3,W4にスキ間ができやすいために、このW3,W4もレーザー溶接する必要がある。
また、このような板材の重ね合せ部は、電極を対向させることができない。
したがって、電気抵抗溶接を採用することができないのでレーザー溶接を採用せざるを得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−104139号公報
【特許文献2】特開2010−12892号公報
【特許文献3】特開2010−12891号公報
【特許文献4】特開2003−63250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、電気抵抗溶接による接合も可能であり、軽量で生産性の高いドアサッシュ及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るドアサッシュは、一枚の板材からロール成形により断面形成される車両のドアサッシュであって、ドアサッシュの長手方向と直交する断面は、車両の外側に位置するアウター面部と、前記アウター面部から両側を裏側に折り返して重ねた二重部と、前記二重部のうち、インサイド側の板材はランチャンネル保持部を形成するとともに袋状に折り曲げて形成した袋状部を有し、前記袋状部はランチャンネル保持部から室内側に折り返したインサイド面と、当該インサイド面の先端から略直角方向に折り返したインナー面と、当該インナー面の先端から車外側に折り返したアウトサイド面を有し、前記二重部のうちアウトサイド側の板材は、ウェザストリップ保持部を形成するとともに当該アウトサイド側の板材の先端側を前記袋状部の閉断面内側であって、前記アウトサイド面にのみ部分的に重ねて溶接接合した溶接部を有することを特徴とする。
ここで、アウター面部とはドアの車外面を形成する部分をいい、本発明書では車外方向をアウト,車両の室内方向をインと表現し、枠状のドアサッシュの内側をインサイド,外側をアウトサイドと表現する。
【0006】
本発明に係るドアサッシュの特徴は、板材を折り曲げてウェザストリップ保持部を形成したその先を他方の袋状部を形成した板材のアウトサイド面の閉断面内側に部分的に重ねて溶接した点にある。
ここで、部分的に重ねると表現したのは、閉断面のアウトサイド側の側壁を形成するアウトサイド面の内側全面に重ね合せるのではなく、溶接代の部分だけを部分的に重ね合せることをいう。
このようにすると、図5に示すようにランチャンネルとウェザストリップとの保持部を形成する二重部に一方の電極1を配置し、他方の電極2をアウトサイド面の部分的に重ね合せた部分に配置し、当該部分的に重ねた部分に電気抵抗溶接が可能である。
ここで電気抵抗溶接はスポット溶接のみならず、ロール電極によるシーム溶接が含まれる。
また、必要に応じてレーザー溶接を採用してもよい。
【0007】
図5に示した方法で電気抵抗溶接する場合に電極2が溶接電極となることから、アウトサイド面12cと重ね片12dとの接触面の安定性が重要となる。
そこで本発明において、溶接部を形成するこの接合面にサッシュの長手方向に沿った帯状の凸面部を形成するのが好ましい。
このように接合面に帯状の凸面部を形成すると、溶接時の加圧力を高く設定することができるとともに、サッシュの断面剛性が向上する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るドアサッシュの断面構造は一枚の板材を用いてロール成形し、アウター面部の両側を裏面側に折り返して形成した二重部からなる連結部(保持部)の室内側に閉断面形状からなる袋状部を形成する際に、二重部を形成するインサイド側の板材で袋状部を形成するとともに、この袋状部のアウトサイド面の内側に板材の他方の先端側を重ねて溶接する構造にしたので、軽量で剛性に優れるとともに生産性の高いドアサッシュとなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係るドアサッシュの断面構造例を示す。
図2】袋状部の二重部付近の拡大図を示す。
図3】(a)はスポット溶接した例を示し、(b)はシーム溶接した例を示す。
図4】2ヶ所にわたって溶接した例を示す。
図5】溶接電極の配置例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下図面に基づいてドアサッシュ10の構造例及びその製造例を説明する。
図1にドアサッシュ10の断面構造を示し、図2に溶接部Wの拡大図を示す。
ドアサッシュ10は一枚の帯状の板材を用いて、ロールフォーミング加工により断面形状が成形される。
ドアサッシュ10の断面形状は車両の外側に位置するアウター面部11の両側を裏面側に折り返して二重部13を形成し、その室内側に閉断面形状からなる袋状部12を形成してある。
【0011】
ロール成形の手順としては、アウター面部11を先に成形しても袋状部12を先に成形してもよい。
二重部13の二枚の板材のうち、インサイド側の板材はアウター面11の裏面側に凸形状部16aを形成し、袋状部12の外側面16bとで凹部状のランチャンネル保持部16を形成する。
ランチャンネル保持部16はドアサッシュの内側に位置し、昇降するドアガラスを納めるランチャンネル20を保持する。
板材は袋状部12の外側面16bの先端から室内側に折り曲げてインサイド面12aを形成し、その先端を略直角方向アウトサイド側に折り曲げてインナー面12bを形成する。
インナー面12bの先端は外側に折り曲げてアウトサイド面12cを形成する。
アウトサイド面12cの先端は、斜めにアウトサイド側に曲げ起こした支持片15bとアウター面部11の裏面側に形成した突形状部15aとで凹部状のウェザストリップ保持部15を形成する。
保持部の二重部13を形成するアウトサイド側の板材の先端は袋状部12を形成するアウトサイド面12cの閉断面内側に差し込んだ重ね片12dとなっている。
重ね片12dは他方のアウトサイド面12cの内側に部分的に重なっている。
重ね片12dの接触面は図2に拡大図を示すように長手方向帯状の凸面部12eになっている。
【0012】
この袋状部の二重部14を電気抵抗溶接に属するスポット溶接し、溶接部Wを形成した例を図3(a)に示し、シーム溶接した例を図3(b)に示す。
本実施例は重ね片12dの接触面に凸面部12eを形成した例になっているが、逆に袋状部12を形成したアウトサイド面12c側の接触面に凸面部を形成してもよい。
このように凸面部12eを形成することで図5に示すように、電極1を保持部の二重部13に配置し、電極2を袋状部の二重部14に配置することでこの凸面部12eが安定した抵抗を有し、欠陥の少ない溶接部Wを形成する。
【0013】
溶接方法としてはレーザー溶接を用いてもよく、また図4に示すように保持部の二重部13と袋状部の二重部14の両方を溶接してもよい。
【符号の説明】
【0014】
10 ドアサッシュ
11 アウター面部
12 袋状部
12a インサイド面
12b インナー面
12c アウトサイド面
13 保持部の二重部
14 袋状部の二重部
15 ウェザストリップ保持部
16 ランチャンネル保持部
20 ランチャンネル
30 ウェザストリップ
W 溶接部
図1
図2
図3
図4
図5