(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明車輌用前照灯を実施するための最良の形態について添付図面を参照して説明する。
【0016】
<1.
本発明の基本的構成例>
[1-1.車輌用前照灯の全体構成]
図1及び
図2は、
車輌用前照灯1の構成についての説明図であり、
図1は車輌用前照灯1の概略垂直断面図、
図2は車輌用前照灯1の概略正面図である。
【0017】
車輌用前照灯1は、ランプボデイ2とランプボデイ2の前端部に取り付けられたカバー3とによって構成された灯具外筐4の内部が灯室5として形成され、灯室5には、発光部6や投影レンズ12を備えたランプユニット20が配置されている(
図1及び
図2参照)。
車輌用前照灯1は、遠距離を照射するハイビーム(上向き・遠目)用の前照灯である。
【0018】
前記ランプユニット20は、灯室5に配置されたブラケット7に所要の各部が取り付けられて構成される。
ブラケット7は熱伝導性の高い金属材料によって形成され、上下両端部に被支持部7a、7a、7aが設けられている。ブラケット7の後面には放熱部材(放熱フィン)8が取り付けられている。放熱部材8の後面には放熱用ファン9が取り付けられている。
【0019】
ブラケット7の前面における中央部には発光部6が取り付けられている。詳細は後述するが、発光部6は、複数の半導体発光素子を光源として有している。
【0020】
ブラケット7の前面にはレンズホルダー11が取り付けられている(
図1参照)。レンズホルダー11は前後方向に貫通された略円筒状に形成され、発光部6を覆うようにしてブラケット7に取り付けられている。
レンズホルダー11の前端部には投影レンズ12が取り付けられている。投影レンズ12は前方に凸の略半球状に形成され、発光部6から出射された光を前方へ投影する。
【0021】
灯室5には、エクステンション(目隠し材)13が設けられている。
【0022】
ブラケット7の被支持部7a、7a、7aには、エイミングスクリュー10、10、10がそれぞれ螺合されて連結されている。ブラケット7は、エイミングスクリュー10、10、10を介してランプボデイ2に傾動自在に支持されている。エイミングスクリュー10が回転されると、このエイミングスクリュー10が螺合された以外の被支持部7a、7aを支点としてブラケット7が左右方向又は上下方向へ傾動され、光軸の調整(エイミング調整)が行われる。
【0023】
[1-2.発光部の構成]
図3は、発光部6の概略正面図である。
発光部6は、水平方向(左右方向)Hに配列された複数の半導体発光素子15、15、・・・を備える。この図では半導体発光素子15の配列数を9個としているが、半導体発光素子15の配列数は特に限定されない。
半導体発光素子15、15、・・・としては、例えば、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)が用いられている。
各半導体発光素子15は、それぞれベース板16の前面側に配置されており、各ベース板16は、それぞれ
図1に示したブラケット7の前面に取り付けられている。
【0024】
また、図中に拡大して示すように、半導体発光素子15、15、・・・の前方側(発光面側)には、第1リフレクタ(微小反射面:小リフレクタ)18が形成されている。第1リフレクタ18は、半導体発光素子15の前方側における上下左右の各位置に形成されている。これら上下左右の各位置の第1リフレクタ18を、それぞれ第1リフレクタ18u、第1リフレクタ18d、第1リフレクタ18l、第1リフレクタ18rと表記する。
第1リフレクタ18u、18d、18l、18rは、それぞれ半導体発光素子15による出射光を反射するように形成され、1つの半導体発光素子15と、その前方側に形成された上下左右の第1リフレクタ18u、18d、18l、18rとによって、発光ユニット6Aが構成される。
【0025】
発光部6には、発光ユニット6A、6A、・・・の前方に2つの第2リフレクタ(大リフレクタ)17、17が上下に離隔して設けられている。上下に位置する第2リフレクタ17、17の各反射面17u、17dは半導体発光素子15、15、・・・からの出射光を反射できるように水平方向Hに延在されている。
【0026】
なお、図示は省略したが、半導体発光素子15、15、・・・には点灯回路から各別に駆動電流が供給され、駆動電流が供給された半導体発光素子15、15、・・・は点灯され、駆動電流が供給されなかった半導体発光素子15、15、・・・は消灯された状態が維持される。
また、半導体発光素子15、15、・・・に対しては、点灯回路から供給される駆動電流の電流値を変更する制御を各別に行うことも可能とされている。
【0027】
[1-3.配光パターンについて]
図4は、車輌用前照灯1による配光パターンTHを模式的に示した図である。なお、この
図4及び
図5では、半導体発光素子15の配列数を13個とした場合の例を挙げる。
【0028】
図4において、配光パターンTHは、各発光ユニット6Aから出射された光の分布T0、T1r、T2r、T3r、T4r、T5r、T1l、T2l、T3l、T4l、T5l、T6l、T7lが合成されて形成され、これらの光の分布Tは水平方向Hにおいて重なり合っている。なお、分布T0は、投影レンズ12の焦点Fに対応する位置に配置された発光ユニット6Aによる光の分布Tを意味する。また、分布Tの末尾の「r」「l」はそれぞれ分布T0に対して右側、左側を意味する。
【0029】
分布T0は、他の分布Tに対してその幅(水平方向Hにおける長さ)が最小とされる。一方、高さ(垂直方向Vにおける長さ)は他の分布Tに対して最大とされる。
また、右側の分布T1r〜T5rにあっては、右側へ行くに従って幅が順次大きくされ、高さは右側へ行くに従って順次小さくされている。
左側の分布T1l〜T7lについても同様に、左側へ行くに従って幅が順次大きくされ、高さは左側へ行くに従って順次小さくされている。
【0030】
車輌用前照灯1においては、先行車輌や対向車輌等に対する眩惑光の発生防止等のために以下のような点消灯制御が行われる。点消灯制御は、各半導体発光素子15を点消灯することで行われ、例えば、分布T3rとT4rにそれぞれ対応する半導体発光素子15、15が消灯されると、分布T2rとT5rとの間の領域が暗部(消灯領域)となる。
【0031】
配光パターンTHを実現するには、以下に示すように、半導体発光素子15間の配置間隔や左右の第1リフレクタ18l、18rの反射面の角度を適切に設定することが要請される。
図5は、半導体発光素子間の配置間隔と左右の第1リフレクタの角度についての説明図として示した発光部6の水平断面図である。なお、
図5では図示の都合上、半導体発光素子15は示しておらず、その各発光面の中心位置を縦方向の一点鎖線により表している。焦点Fと水平方向位置が同じとなる半導体発光素子15を便宜的に「15c」と表記する。
配光パターンTHを実現するには、半導体発光素子15の配置間隔及び半導体発光素子15に対して設けられた左右の第1リフレクタ18l、18r間の角度を、水平方向Hにおける中央部(焦点F近傍)よりも端部の方で大きく設定する。
【0032】
図5の例では、半導体発光素子15間の配置間隔については、半導体発光素子15cを基準とした左右4個までの範囲(合計9個)の配置間隔を「e」で同値としている。そして、これら9個の半導体発光素子15の外側の半導体発光素子15の配置間隔をそれぞれ「e」よりも大きな「f」としている。さらに、その左外側の半導体発光素子15の配置間隔を「f」よりも大きな「g」とし、さらに左外側の半導体発光素子15の配置間隔を「g」よりも大きな「h」としている。
【0033】
また、左右の第1リフレクタ18l、18r間の角度については、半導体発光素子15cを有する発光ユニット6A(発光ユニット6Acと表記する)とその右側5個及び左側5個(「E」で示す)の合計11個の発光ユニット6Aが有する左右の第1リフレクタ18l、18r間の角度の設定パターンを左右対称となるようにしている。
具体的に、本例の場合、発光ユニット6Acとその左右にそれぞれ3個目までとなる合計7個の発光ユニット6Aの第1リフレクタ18l、18r間の角度を「i」で同じとなるようにしている。そして、これら7個の発光ユニット6Aの外側の発光ユニット6A、6Aの第1リフレクタ18l、18r間の角度を「i」よりも大きな「j」で同じとし、さらにその外側の発光ユニット6A、6Aの第1リフレクタ18l、18r間の角度を「j」よりも大きな「k」で同じとなるようにしている。
【0034】
上記11個の発光ユニット6Aの左外側の発光ユニット6Aの第1リフレクタ18l、18r間の角度は「k」よりも大きな「l」とし、さらにその左外側の発光ユニット6Aの第1リフレクタ18l、18r間の角度は「l」よりも大きな「m」としている。
【0035】
図5で例示したように、半導体発光素子15の配置間隔及び半導体発光素子15に対して設けられた左右の第1リフレクタ18l、18r間の角度を、水平方向Hにおける中央部(焦点F近傍)よりも端部の方で大きく設定したことで、車輌用前照灯1の配光パターンとして、
図4に示したような良好な配光パターンを実現できる。
【0036】
[1-4.左右の第1リフレクタについて]
先の従来技術に関して述べたように、左右の第1リフレクタ18l、18rは、縦方向(垂直方向V)のスジムラを解消するために設けられている。
縦方向のスジムラの解消には、左右の第1リフレクタ18l、18rの反射面形状が重要となる。
図6及び
図7により、この点について説明する。
図6の水平断面図は、左右の第1リフレクタの反射面を放物面状とした従来の場合の説明図であり、
図7の水平断面図は、左右の第1リフレクタの反射面を平面形状とした場合の説明図である。なお、
図6に示すように、反射面が放物面状とされた場合にはそれぞれ第1リフレクタ18l’、18r’と表記する。
図6のように、反射面を放物面状とした場合には、配光パターン上に縦方向のスジムラが生じる(
図6の「配光パターン」を参照)。これは、放物面状とした場合は、投影レンズ12の焦点面Fs上において図中の「S」で示すような弱光量領域が形成されてしまうことに起因する。図中では破線矢印により、第1リフレクタ18l’、18r’による反射光を表しているが、これによると、焦点面Fs上における、隣接する発光ユニット6A、6Aの境界に対応した部分において、反射光が重なっていないことが確認できる。このために、焦点面Fs上において弱光量領域Sが生じる。
このような弱光量領域Sが生じた状態で、投影レンズ12が入射光を投影すると、配光パターン上において縦方向のスジムラが生じてしまう。
【0037】
一方、
図7に示すように、
左右の第1リフレクタ18l、18rの反射面を平面形状としている。つまり、水平断面で見たとき、これら左右の第1リフレクタ18l、18rの反射面の形状は直線状とされる。
左右の第1リフレクタ18l、18rの反射面が平面形状とされたことで、第1リフレクタ18l、18rの反射光が、焦点面Fs上における隣接する発光ユニット6A、6Aの間の領域で重なる(図中、破線矢印)。これにより、
図6に示したような焦点面Fs上における弱光量領域Sの発生が防止される。
この結果、この場合における配光パターンは、スジが解消された良好なパターンとなる(
図7に示す「配光パターン」参照)。
【0038】
このようにして、左右の第1リフレクタ18l、18rの反射面を平面形状としたことで、配光パターンにおける縦方向のスジムラを解消できる。
【0039】
また、左右の第1リフレクタ18l、18rの反射面を平面形状としたことによって、配光効率の向上も図られる。すなわち、放物面状の第1リフレクタ18l’、18r’は、配置スペースの制約から長さを長くすることが困難であり、十分な反射光量を得ることができないため、配光効率も低い傾向となるが、反射面を平面形状とすれば、反射面の長さを長くして反射光の光量を増大できるので、その分配光効率を向上できる。
【0040】
[1-5.左右の第1リフレクタの長さと角度の設定手法]
図8及び
図9により、左右の第1リフレクタ18l、18rの反射面の長さと角度の設定手法について説明する。図中の左側では、主に半導体発光素子15cの直射の範囲(図中、「Dr」)及び第1リフレクタ18l、18rによる反射光の範囲(「Dr」よりも外側の矢印で示す)と投影レンズ12との関係を示し、右側では左側の図における焦点面Fs付近を拡大し、半導体発光素子15cと第1リフレクタ18l、18r、及び焦点Fと共に、半導体発光素子15cの直射の範囲(図中の斜線部)と第1リフレクタ18l、18rによる反射光の範囲(梨地部分)とを示している。
図8は、左右の第1リフレクタ18l、18rの反射面の長さと角度の第1の設定例についての説明図である。
図8では、水平方向位置が焦点Fと同じとされた半導体発光素子15cについての設定例を表している。
図8の設定例は、半導体発光素子15cの発光面を、焦点面Fsから車輌進行方向(図中「X」で表す)とは逆側に3.0mmオフセットした位置に配置した場合における設定例である。
第1の設定例では、半導体発光素子15cに対して設けられた第1リフレクタ18l、18rのそれぞれの反射面の光軸Pに対する角度を11°とし、第1リフレクタ18l、18rの車輌進行方向における長さを2mmに設定している。
【0041】
図9は、左右の第1リフレクタ18l、18rの反射面の長さと角度の第2の設定例についての説明図である。
第2の設定例の第1の設定例との違いは、半導体発光素子15cの発光面の位置が、焦点面Fsから車輌進行方向とは逆側に5.0mmオフセットした位置とされている点である。
また、第2の設定例では、半導体発光素子15cに対して設けられた第1リフレクタ18l、18rのそれぞれの反射面の光軸Pに対する角度を7°とし、第1リフレクタ18l、18rの車輌進行方向における長さを4mmに設定している。
【0042】
ここで、先の
図4及び
図5では、配光パターンTHと左右の第1リフレクタ18l、18rの角度との関係性を示したが、
図4に示したような所定の配光パターンTHを得るためには、水平方向Hに配列された半導体発光素子15ごとに、左右の第1リフレクタ18l、18rに設定すべき反射面の角度及び長さにある程度の制約が生じる。
左右の第1リフレクタ18l、18rの角度や長さは、このように良好な配光パターンTHを得る上でのある程度の制約が課される下で、半導体発光素子15cの直射の成分ができるだけ投影レンズ12に対して入射されるように設定すればよい。
【0043】
[1-6.上下の第1リフレクタについて]
上下の第1リフレクタ18u、18dは、その反射面の角度や長さの設定によって垂直方向Vにおける配光パターンを制御する役割を担い、第1リフレクタ18u、18dの反射面の角度や長さが適切に設定されない場合には、配光パターン上に水平方向のスジムラが生じることが分かっている。
【0044】
図10及び
図11により、水平方向のスジムラとその解消手法について説明する。
図10に示すように、上下の第1リフレクタ18u、18dの反射面の角度が比較的小さく、また長さが比較的短くされた場合は、図中の右側に示す配光パターンのように、水平方向のスジムラが生じてしまう(図中、矢印Zで表す)。水平方向のスジムラは、半導体発光素子15による直射光に基づくパターンと、第1リフレクタ18u、18dによる反射光に基づくパターンとの境界に生じることが分かっている。
【0045】
このような水平方向のスジムラを解消するために、
図11に示すように、上下の第1リフレクタ18u、18dの反射面の角度と長さを
図10の場合よりも拡大している。
角度についての具体的な数値例を挙げると、第1リフレクタ18u、18dの反射面の光軸Pに対する角度は、水平方向のスジムラが生じていた11°よりも拡大して、例えば26°に設定する。
また、第1リフレクタ18u、18dの反射面の長さは、図のように焦点面Fsを超えるまで拡大する。
【0046】
このように上下の第1リフレクタ18u、18dの反射面の角度と長さを大きく設定することで、
図11の右側に示した配光パターンのように、水平方向のスジムラを解消することができる。
【0047】
<2.
本発明の実施の形態>
続いて、
実施の形態について説明する。
なお、実施の形態の車輌用前照灯は、本発明の基本的構成例の車輌用前照灯1と比較して第2リフレクタ17、17と投影レンズ12の構成が異なる点以外は同様となる。以下では、既に説明した部分と同様となる部分については図示を省略して説明を行う。
【0048】
本実施の形態のようにハイビームとしての車輌用前照灯の場合は、ハイビームパターンを形成するため特に上側にパターンを広げる必要があるが、上下の第2リフレクタの長さを長くしてパターンを広げようとすると、点消灯制御時に下側の大リフレクタで反射された光に起因して点灯部分の光が消灯領域に映り込んでしまう虞がある。
すなわち、
図12に示すように、「Ac」で表す消灯領域に隣の点灯部分の光の一部「X」が映り込んでしまう。
【0049】
そこで、
本実施の形態では、図13に示すように、映り込みの原因とされる下側の第2リフレクタ17の反射面17dは短くし、上側の第2リフレクタ17の反射面17uの長さを長くして効率を稼ぐことで、消灯領域への映り込み防止と配光効率の低下の抑制との両立を図っている。
【0050】
一方、下側の第2リフレクタ17による反射光は、主に配光パターンにおける上側のパターンを形成し、上側の第2リフレクタ17による反射光は、主に配光パターンにおける下側のパターンを形成するため、下側の第2リフレクタ17を短くすると上側へのパターンの広がりが不十分となり、ハイビームとしての配光パターンの実現性に支障を来す虞がある。
【0051】
そこで、
本実施の形態では、上側の第2リフレクタ17による反射光を上向きに出射可能な制御面を有する投影レンズ19を用いる(
図14参照)。
図14に示すように、投影レンズ19は、その照射面(出射面)の上部の曲率が、外周側に行くにつれて小さくなるように構成され、破線により示した投影レンズ12の照射面の面形状と比較して、上部の曲率が小さくされている。
【0052】
従って、投影レンズ19を用いることで、上側の第2リフレクタ17による反射光を、図のように上向きに出射させることができる。
【0053】
このように
本実施の形態では、上側の第2リフレクタ17の反射面17uの長さを、下側の第2リフレクタ17の反射面17dの長さよりも長く設定し、且つ照射面上部の曲率が外側に行くにつれて小さく設定された投影レンズ19を用いたことで、ハイビームとしての配光パターンを実現しつつ、消灯領域への光の映り込みの防止と配光効率の低下の抑制との両立を図ることができる。
【0054】
なお、上記した最良の形態において示した各部の形状及び構造は、何れも本発明を実施するに際して行う具体化のほんの一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。