特許第6105940号(P6105940)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6105940酸性飲料及び耐熱性好酸性菌の増殖抑制方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6105940
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】酸性飲料及び耐熱性好酸性菌の増殖抑制方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/42 20060101AFI20170316BHJP
   A23L 2/38 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   A23L2/00 N
   A23L2/38 C
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-1978(P2013-1978)
(22)【出願日】2013年1月9日
(65)【公開番号】特開2014-132850(P2014-132850A)
(43)【公開日】2014年7月24日
【審査請求日】2015年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】奥川 奨
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 優子
【審査官】 福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−182683(JP,A)
【文献】 特開2009−055813(JP,A)
【文献】 特開2005−245351(JP,A)
【文献】 特開2007−126373(JP,A)
【文献】 特開2006−232805(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/074960(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/080328(WO,A1)
【文献】 特開2013−192483(JP,A)
【文献】 特開2009−136191(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/005725(WO,A1)
【文献】 横田 明・藤井建夫 監修,好熱性好酸性菌−Alicyclobacillus属細菌−,株式会社建帛社,2004年12月10日,p.1, p.75-85
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アリサイクロバチルス属細菌の静菌有効量のカテキン類を含み、かつ、カフェイン、没食子酸、高度分岐環状デキストリン、及びサポニンを含まず、
前記静菌有効量は前記酸性飲料の質量に対して0.004質量%以上1.0質量%以下であり、pHが3.0以上4.0以下である酸性飲料。
【請求項2】
前記カテキン類は、エピガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート、ガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート、及びエピカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群より選ばれる1種以上を含む請求項1記載の酸性飲料。
【請求項3】
前記カテキン類の少なくとも一部は精製カテキン組成物の形態で配合される請求項1又は2記載の酸性飲料。
【請求項4】
前記カテキン類の少なくとも一部は茶抽出物の形態で配合され、前記静菌有効量は前記酸性飲料の質量に対して0.02質量%以上である請求項1から3いずれか記載の酸性飲料。
【請求項5】
前記茶抽出物は、「べにふうき」、「べにふじ」、「べにほまれ」、「やえほ」、「するがわせ」、「ゆたかみどり」、「かなやみどり」、「おくむさし」、「青心大パン」、「青心烏龍」、「大葉烏龍」、「紅花」、「べにひかり」、「やまかい」、「やまみどり」、「からべに」、「香駿」、「そうふう」もしくは「おくみどり」、又はこれらの混合物の茶葉からの抽出物を含む請求項4記載の酸性飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性飲料及び耐熱性好酸性菌の増殖抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸性飲料の殺菌において、従来行われてきた60〜90℃程度の加熱処理では、酸性条件下のおける耐熱性好酸性菌、主としてアリサイクロバチルス属細菌は完全に死滅しにくく、飲料中で増殖した場合、異臭や風味の劣化がもたらされることが知られている。また、従来よりも高温で殺菌処理を施すことにより死滅することも可能であるが、熱によって酸性飲料の風味、外観が損なわれるという問題があった。
【0003】
そのため、耐熱性好酸性菌を死滅させる方法に替えて、増殖を抑制する(静菌)方法が種々提供されている。
【0004】
例えば、耐熱性好酸性菌に対して静菌作用を有するものとして、乳酸、乳酸塩(特許文献1参照)若しくは酢酸、酢酸塩(特許文献2参照)、リモネン(特許文献3参照)、ホップ(特許文献4参照)、ジグリセリンミリスチン酸エステル(特許文献5参照)及びオオバギ抽出物(特許文献6参照)が知られている。
【0005】
一方、茶カテキンのうちガレートカテキン類及びテアフラビン類は、ボツリヌス菌を含む数種類の耐熱性有芽胞菌の芽胞ないし栄養細胞に対して顕著な抗菌活性を示すことが知られている(非特許文献1参照)。
【0006】
しかし、非特許文献1では、カテキンの抗菌スペクトルが中性域でのみ検討されており、静菌された菌も中性で増殖する菌のみである。ここで、エピガロカテキン−3−0−(3−0−メチル)ガレートは、雰囲気pHが変わると、状態が変わり、その静菌メカニズムが変化することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開2006/106673号公報
【特許文献2】特開2002−315546号公報
【特許文献3】特開2007−60929号公報
【特許文献4】特開2005−137241号公報
【特許文献5】特開2003−160411号公報
【特許文献6】特開2011−51915号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】日本食品工業学会誌第36巻12号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、新規の、耐熱性好酸性菌の増殖が抑制された酸性飲料及び耐熱性好酸性菌の増殖抑制方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、カテキンが酸性条件下において耐熱性好酸性菌の増殖を抑制するということを突き止め、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は、以下のようなものを提供する。
【0011】
(1)アリサイクロバチルス属細菌の静菌有効量のカテキン類を含み、pH4.0以下である酸性飲料。
【0012】
(2)前記カテキン類は、エピガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート、ガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート、及びエピカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群より選ばれる1種以上を含む(1)記載の酸性飲料。
【0013】
(3)前記カテキン類の少なくとも一部は精製カテキン組成物の形態で配合され、前記静菌有効量は前記酸性飲料の質量に対して0.004質量%以上である(1)又は(2)記載の酸性飲料。
【0014】
(4)前記カテキン類の少なくとも一部は茶抽出物の形態で配合され、前記静菌有効量は前記酸性飲料の質量に対して0.02質量%以上である(1)から(3)いずれか記載の酸性飲料。
【0015】
(5)前記茶抽出物は、「べにふうき」、「べにふじ」、「べにほまれ」、「やえほ」、「するがわせ」、「ゆたかみどり」、「かなやみどり」、「おくむさし」、「青心大パン」、「青心烏龍」、「大葉烏龍」、「紅花」、「べにひかり」、「やまかい」、「やまみどり」、「からべに」、「香駿」、「そうふう」及び「おくみどり」、もしくはこれらの混合物の茶葉からの抽出物を含む(4)記載の酸性飲料。
【0016】
(6)pHが4.0以下である酸性飲料にカテキン類を配合することで、前記酸性飲料中での耐熱性好酸性菌の増殖を抑制する方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、酸性飲料にカテキン類を配合することにより、酸性飲料中での耐熱性好酸性菌増殖が抑制された酸性飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0019】
本発明は、酸性条件下において、カテキン類を配合することにより、耐熱性好酸性菌の増殖を抑制可能であることに特徴を有する。以下、本発明の酸性飲料及び耐熱性好酸性菌の増殖抑制方法について説明する。
【0020】
本発明における酸性飲料は、pH4.0以下の飲料である。pHの下限は、特に限定されないが、官能性等の点で3.0以上であってよい。
【0021】
酸性飲料の具体例としては、果実飲料、炭酸飲料、スポーツ飲料、健康飲料、茶系飲料、乳性飲料及びアルコール飲料などが挙げられる。果実飲料、スポーツ飲料などの糖類含有飲料においては、耐熱性好酸性菌の増殖が問題であるので、本発明が有用である。
【0022】
茶系飲料は、アミノ酸などの栄養成分を多く含むので、耐熱性好酸性菌が増殖しやすく、本発明が有用である。茶系飲料は、緑茶、紅茶、ハーブティー及びこれらの混合物などの飲料でもよい。
【0023】
炭酸飲料においても、ガス圧が低い場合等、耐熱性好酸性菌の増殖を考慮する必要があるので、本発明は有用である。
【0024】
酸性飲料は、耐熱性好酸性菌の増殖を抑制するため、アリサイクロバチルス属細菌の静菌有効量のカテキン類を含む。アリサイクロバチルス属細菌の静菌有効量は、1000cfu/500mlになるようにアリサイクロバチルス属細菌を接種した酸性飲料を37℃で14日間培養したものを、寒天を主成分とする培地に1ml注入し、45℃で72時間培養した後、コロニー数をカウントした場合に、コロニー数が10個以下となる場合の含有量をいう。
【0025】
カテキン類の量は、酸性飲料を蒸留水で適宜希釈し、フィルターでろ過した試料について、島津製作所製の高速クロマトグラフ(型式SCL−10AVP)を用い、和光純薬製C18カラム(4.6mm×150mm)を装着し、カラム温度40℃でグラジエント法により分析することにより、測定される。移動相Aは蒸留水:アセトニトリル:リン酸を400:10:1で混合し、移動相Bはメタノール:移動相Aを1:2で混合して調整したものを使用する。流量は1ml/minとし、酸性飲料を20μl注入してUV検出器にて242nm、272nmの波長を測定する。
【0026】
カテキン類の酸性飲料に配合される形態は、特に限定されない。ただし、カテキン類は独特の渋味を有する一方、消費者の嗜好性の観点で、酸性飲料の渋味をある程度抑制することが好ましい。カテキン類は任意の原料を用いて配合することができるが、精製カテキン組成物は低量で耐熱性好酸性菌の増殖でき、渋味を抑制しやすい点で好ましい。また、精製カテキン組成物は、夾雑物を多量には含まないので、酸性飲料の製造におけるプロセス管理が容易である点からも好ましい。他方、茶抽出物は、安価であり、他成分とのバランスが良く官能性に優れる点で好ましい。
【0027】
茶抽出物とは、緑茶抽出物、紅茶抽出物又はこれらの混合物の茶葉からの抽出物などを指す。後述のように、メチル化カテキンの含有量が多い点で、「べにふうき」、「べにふじ」、「べにほまれ」、「やえほ」、「するがわせ」、「ゆたかみどり」、「かなやみどり」、「おくむさし」、「青心大パン」、「青心烏龍」、「大葉烏龍」、「紅花」、「べにひかり」、「やまかい」、「やまみどり」、「からべに」、「香駿」、「そうふう」及び「おくみどり」、もしくはこれらの混合物の茶葉からの抽出物が好ましい。
【0028】
精製カテキン組成物とは、例えば、茶からカテキン類を抽出し、濃縮して精製したもの、有機合成されたカテキン化合物などを指す。
【0029】
カテキン類の含有量下限は、用いるカテキン類の材料や酸性飲料に含まれる他成分等を考慮して設定される。カテキン類の少なくとも一部に精製カテキン組成物を用いる場合、カテキン類の含有量は、酸性飲料に対して0.004質量%以上であることが好ましい。カテキン類の少なくとも一部に茶抽出物を用いる場合、カテキン類の含有量は、酸性飲料に対して0.02質量%以上であることが好ましい。後述のようなメチル化カテキンを多く含む茶葉でない茶葉の抽出物を用いる場合、カテキン類の含有量は、酸性飲料に対して0.04質量%以上であることが好ましい。
【0030】
カテキン類の含有量の上限は特に限定されず、官能性、費用対効果等の観点で適宜設定されてよい。カテキン類の量は、例えば、酸性飲料の質量に対して1.0質量%以下、0.75質量%以下、0.50質量%以下、0.25質量%以下、0.01質量%以下、0.075質量%以下、0.05質量%以下であってよい。精製カテキン組成物を使用する場合、低量で耐熱性好酸性菌の増殖を抑制可能であり、苦味を抑制できる点で、0.04質量%以下でよい。茶抽出液を使用する場合、成分バランスの良さにより精製カテキン類よりも苦味を与えにくいため、0.05質量%以下であってもよい。さ
【0031】
カテキン類とは、例えば、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキン、エピガロカテキンガレート、エピカテキン、ガロカテキンカレートエピカテキンガレート、カテキンガレート及びこれらの異性体を指す。また、カテキン類にはメチル化カテキンが含まれる。
【0032】
メチル化カテキンとは、例えば、エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート、エピカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート、エピカテキン−3−O−(4−O−メチル)ガレート、エピガロカテキン−3−O−(4−O−メチル)ガレート、ガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート、カテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート、カテキン−3−O−(4−O−メチル)ガレート、ガロカテキン−3−O−(4−O−メチル)ガレート、エピガロカテキン−3−O−メチルエチルガレート、エピカテキン−3−O−メチルエチルガレート、エピカテキン−3−O−(3,5−O−ジメチル)ガレート及びこれらの異性化体を指す。
【0033】
中でも、本発明におけるカテキン類は、エピガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート、ガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート、及びエピカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレートからなる群より選ばれる1種以上を含むことが、低量で耐熱性好酸性菌の増殖を抑制可能である点で、好ましい。
【0034】
耐熱性好酸性菌とは、酸性条件下で、かつ、60〜90℃といったような高温領域で生育が可能である芽胞菌を指す。耐熱性好酸性菌としては、アリサイクロバチルス(A.licyclobacillus)属細菌、(他の属の細菌を確認)が知られている。アリサイクロバチルス属に含まれる耐熱性好酸性菌は、例えば、アリサイクロバチルス・アシドテレストリス(A.acidoterrestris)、アリサイクロバチルス・アシドカルダリウス(A.acidocaldarius)、アリサイクロバチルス・サイクロヘプタニカス(A.cycloheptanicus)、アリサイクロバチルス・アシディフィラス(A.acidiphilus)、アリサイクロバチルス・ハーバリウス(A.herbarius)、及びアリサイクロバチルス・ヘスペリダム(A.hesperidum)を指す。
【0035】
本発明の酸性飲料には、カテキン類の他に、果汁、食塩、甘味料及び香料など、通常の飲料成分を任意に含んでもよい。酸性飲料のpHの調整のために、クエン酸、クエン酸ナトリウムなどの有機酸を含んでもよい。
【0036】
クエン酸及びクエン酸ナトリウムは耐熱性好酸性菌に対する抗菌性が低いので、従来、pH調整剤としては、耐熱性好酸性菌の増殖抑制効果を有する乳酸などを、単独もしくはクエン酸などと併用して使用せざるを得なかった。しかし、本発明ではカテキン類により耐熱性好酸性菌の増殖が抑制されるので、pH調整剤としてクエン酸、クエン酸ナトリウムを単独で使用することもできる。
【0037】
酸性飲料の製造方法は、特に限定されず、従来の公知の方法を用いてもよい。ただし、酸性飲料にカテキン類を添加することにより、耐熱性好酸性菌の増殖が抑制されるので、殺菌は低温、短時間で足り得る。これにより、加熱による風味の損失を抑制できるという点でも、本発明は有益である。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0039】
<実施例1>精製カテキン組成物の形態でカテキン類が配合された酸性飲料
果糖ぶどう液糖、レモン果汁、食塩、甘味料、無水クエン酸、クエン酸ナトリウム、香料、精製カテキン組成物「ポリフェノン70A」(三井農林社)を使用し、果汁含量が1質量%、カテキン量が表1に示す量、pH3.5の酸性飲料を作成した。
【0040】
各酸性飲料の耐熱性好酸性菌に対する静菌作用を確認するための試験を行った。耐熱性好酸性菌としては、アリサイクロバチルス・アシドテレストリス(A.acidoterrestris)を使用した。各酸性飲料を500mlPETボトル容器に充填し、耐熱性好酸性菌を1000cfu/500mlとなるように摂取した。PETボトルを37℃にて14日間静置した後、酸性飲料における異臭の有無の確認し、官能評価を行った。
【0041】
その結果、カテキンの質量%が0.02質量%、0.04質量%、0.004質量%及び0.008質量%の酸性飲料では異臭はなく、0質量%の酸性飲料では異臭があることが確認された(表1)。
【0042】
また、酵母エキス2.0g、可溶性デンプン2.0g、グルコース1.0g、寒天15.0gを主成分とした培地を作成し、0.5Mの硫酸でpH3.7±0.1に調整した。シャーレに前記酸性飲料を1ml注入し、その後、前記培地を15〜20ml注入して酸性飲料と培地を混釈した。シャーレで45℃、72時間培養して、コロニー数をカウントして生育の有無を確認した。
【0043】
その結果、カテキン量が0.02質量%、0.038質量%、0.004質量%及び0.008質量%の酸性飲料で、耐熱性好酸性菌の増殖が抑制された一方、0質量%の酸性飲料では耐熱性好酸性菌の増殖は抑制されなかったことが確認された(表1)。
【0044】
【表1】
【0045】
<実施例2>煎茶抽出物の形態でカテキン類が配合された酸性飲料
煎茶葉50gを1500mlの蒸留水(90℃)で7分間抽出した後にろ過を行い、煎茶抽出物を得た。酸性飲料に対するカテキン類を表2に示す量で含め、また精製カテキン組成物の代わりに煎茶抽出物を添加した他は、実施例1と同様の条件で、酸性飲料を作成した。
【0046】
前記酸性飲料を用い、実施例1と同様の条件で各酸性飲料に対して官能評価を行った。その結果、酸性飲料に対するカテキン量が0.04質量%の酸性飲料では異臭はなかった一方、0.02質量%、0.008質量%及び0.004質量%の酸性飲料では異臭があることが確認された(表2)。
【0047】
前記酸性飲料を用い、実施例1と同様の条件で各酸性飲料に対して耐熱性好酸性菌の増殖抑制効果を評価した。その結果、酸性飲料に対するカテキンの質量%が0.04質量%の酸性飲料では耐熱性好酸性菌の増殖は抑制された一方、0.02質量%、0.008質量%及び0.004質量%の酸性飲料では耐熱性好酸性菌の増殖が十分には抑制されなかったことが確認された(表2)。
【0048】
【表2】
【0049】
<実施例3>べにふうき茶抽出物の形態でカテキン類が配合された酸性飲料
べにふうき茶葉50gを1500mlの蒸留水(90℃)で7分間抽出した後にろ過を行い、べにふうき茶抽出物を得た。酸性飲料に対するカテキン類を表3に示す量とし、精製カテキン組成物の代わりにべにふうき茶抽出物を添加した他は、実施例1と同様の条件で、酸性飲料を作成した。
【0050】
前記酸性飲料を用い、実施例1と同様の条件で各酸性飲料に対して官能評価を行った。その結果、酸性飲料に対するカテキン類量が0.04質量%及び0.02質量%の酸性飲料では異臭はなく、0.009質量%及び0.004質量%の酸性飲料では異臭があることが確認された(表3)。
【0051】
前記酸性飲料を用い、実施例1と同様の条件で各酸性飲料に対して耐熱性好酸性菌の増殖抑制効果を評価した。その結果、酸性飲料に対するカテキン類量が0.04質量%及び0.02質量%の酸性飲料では耐熱性好酸性菌の増殖は抑制され、0.009質量%及び0.004質量%の酸性飲料では耐熱性好酸性菌の増殖が十分には抑制されなかったことが確認された(表3)。
【0052】
【表3】
【0053】
各実施例の結果を検討すると、精製カテキン組成物を使用した場合、酸性飲料中に精製カテキン組成物が0.004質量%以上あれば耐熱性好酸性菌の増殖を抑制することができることが確認された。また、煎茶抽出物を使用した場合、酸性飲料中に茶抽出物が0.04質量%以上あれば耐熱性好酸性菌の増殖を抑制することができ、べにふうき茶抽出物を使用した場合、酸性飲料中にべにふうき茶抽出物が0.02質量%以上あれば耐熱性好酸性菌の増殖を抑制することができることが確認された(表1〜3)。
【0054】
[カテキン分析]
各実施例及び比較例で使用した酸性飲料中に含まれるカテキンの定量分析を、下の手順で行った。酸性飲料を蒸留水で適宜希釈し、0.45μmフィルターでろ過した試料を、島津製作所製の高速クロマトグラフ(型式SCL−10AVP)を用い、和光純薬製C18カラム(4.6mm×150mm)を装着し、カラム温度40℃でグラジエント法により分析を行った。移動相Aは、蒸留水:アセトニトリル:リン酸を400:10:1で混合し、移動相Bはメタノール:移動相Aを1:2で混合して調整した。流量は1ml/minとし、酸性飲料を20μl注入してUV検出器にて242nm、272nmの波長を測定した。結果は表4に示す。
【0055】
【表4】
【0056】
精製カテキン組成物を使用した場合の結果に基づくと、実施例1においてエピガロカテキンガレート及びエピカテキンガレートの総カテキン量に対する割合が多いことから(表4)、これらが耐熱性好酸性菌の増殖抑制効果を有することが分かる。
【0057】
また、煎茶抽出物では、精製カテキン組成物を使用した場合と同程度のエピガロカテキンガレート及びエピカテキンガレートを含んでいるにもかかわらず(表4)、耐熱性好酸性菌の増殖抑制効果が確認されなかった(表2)。このことにより、煎茶抽出物の含まれるカテキン類以外の成分が耐熱性好酸性菌の生育を活性化させ、カテキン類の耐熱性好酸性菌に対する増殖抑制効果が落ちていることが推測される。
【0058】
煎茶抽出物とべにふうき茶葉抽出物を比較すると、前者ではメチル化カテキンがほとんど含まれていない一方、後者3ではメチル化カテキン、具体的には、エピガロカテキン−3−0−(3−0−メチル)ガレート、ガロカテキン−3−0−(3−0−メチル)ガレート及びエピカテキン−3−0−(3−0−メチル)ガレートが多く含まれていることが分かる(表4)。あわせて両者の増殖抑制効果を対比すると、カテキン類の中でも、エピガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、エピガロカテキン−3−0−(3−0−メチル)ガレート、ガロカテキン−3−0−(3−0−メチル)ガレート及びエピカテキン−3−0−(3−0−メチル)ガレート)が、耐熱性好酸性菌の増殖を抑制するのに適していることが示唆される。