(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6105958
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】組立式吊りバンド及び立てバンド
(51)【国際特許分類】
F16L 3/14 20060101AFI20170316BHJP
F16L 3/10 20060101ALI20170316BHJP
F16B 2/10 20060101ALI20170316BHJP
F16B 37/04 20060101ALI20170316BHJP
F16B 1/00 20060101ALI20170316BHJP
F16B 37/02 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
F16L3/14 Z
F16L3/10 Z
F16B2/10 B
F16B37/04 M
F16B1/00 A
F16B37/02 A
F16B37/02 D
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-20367(P2013-20367)
(22)【出願日】2013年2月5日
(65)【公開番号】特開2014-152793(P2014-152793A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2015年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】503259495
【氏名又は名称】株式会社昭栄製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095647
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】金城 俊晴
(72)【発明者】
【氏名】永田 護
【審査官】
柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−344159(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第19524294(DE,A1)
【文献】
特開平09−317949(JP,A)
【文献】
実開平04−001790(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3044474(JP,U)
【文献】
特開2006−132585(JP,A)
【文献】
特開2012−117593(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/154037(WO,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第00908637(EP,A2)
【文献】
独国特許出願公開第102008036386(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 3/14
F16B 1/00
F16B 2/10
F16B 37/02
F16B 37/04
F16L 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方端に公差結合構造を有し、他方端に壁面や床に固定されている支持部材を挟持する起立した取付片を有して、互いに連結及び分離自在とした組立式の構成である一対の半円弧状のバンド片と、一方のバンド片の取付片に摺動可能に取付ける2つの雌ネジ部を有する雌ネジプレートと、各雌ネジ部に螺合する2本の取付ボルトとからなる立てバンドであって、上記交差結合構造は、一方のバンド片の先端に略T字状の係合突部を形成し、他方のバンド片の先端に前記係合突部が係入可能な係合穴部を形成して互いに係合可能としたものであり、上記一対のバンド片の一方の取付片には各取付ボルトの軸部が挿通可能な2つの長孔を設け、他方の取付片には各取付ボルトの頭部が挿通可能な下部の大穴と取付ボルトの軸部が挿通可能な上部の小穴を連結してなる2つの変形長孔を設け、上記各取付ボルトを上記変形長孔、支持部材の透孔、上記長孔、雌ネジプレートの雌ネジ部に挿通、螺合して、各取付ボルトを締め付けることで支持部材と結合することを特徴とする立てバンド。
【請求項2】
雌ネジプレートの雌ネジ部が、プレート板の左右両端を取付片の横幅及び厚さに合わせてそれぞれコの字状に折曲して、取付片を内側に抱持しながら上記長孔に沿って上下に摺動可能とすると共に、プレート板の上記取付片に設けた長孔と対応する位置において、外側面方向に直接2つのタップ穴を形成してその内周に雌ネジを切って2本の取付ボルトをそれぞれ螺合可能とした構成である請求項1記載の立てバンド。
【請求項3】
雌ネジプレートの雌ネジ部が、薄板からなるプレート板の左右両端を取付片の横幅及び厚さに合わせてそれぞれコの字状に折曲して、取付片を内側に抱持しながら上記長孔に沿って上下に摺動可能とすると共に、このプレート板の外側に、プレート板に設ける取付ボルトの通孔と連通して厚板の外側面方向に突出する2つのタップ穴を形成してその内周に雌ネジを切って2本の取付ボルトをそれぞれ螺合可能とした雌ネジ板を溶接の手段により固着した構成である請求項1記載の立てバンド。
【請求項4】
雌ネジプレートの雌ネジ部が、薄板からなるプレート板の左右両端を取付片の横幅及び厚さに合わせてそれぞれコの字状に折曲して、取付片を内側に抱持しながら上記長孔に沿って上下に摺動可能とすると共に、プレート板の上記取付片に設けた長孔と対応する位置に取付ボルトの通孔を設け、この通孔と連通して外側に、内周を雌ネジとした2つのナットをカシメ、溶接、またはろう付けによって固着して2本の取付ボルトをそれぞれ螺合可能とした構成である請求項1記載の立てバンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガスや水道等の各種配管を天井等から吊り下げるために使用する配管用の組立式吊りバンド及び床面や壁面等に沿って配管するために使用する立てバンドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の天井等に各種の配管を吊り下げて設置するために、配管が必要な場所に適当間隔で予め吊りボルトが下方に垂下して設けられている。そして、この吊りボルトにはナットを介してターンバックルが取付けられる。さらにこのターンバックルに対して、吊りバンドが垂下して固定される。
【0003】
基本的な吊りバンドは、配管の外周面に適合するC字状に湾曲した支持部材と、この支持部材の両端部から上方へ起立する一対の取付部材とからなり、一対の取付部材には連通するボルト孔が設けられている。そして、配管を取付けるには、配管を支持部材で抱持すると共に、前記一対の取付部材でターンバックルの下端脚部を挟み、前記ボルト孔及びターンバックルの下端脚部に設けられた透孔にボルトを挿通させ、他方からナットを締着して固定するということが行われ、このターンバックルを天井の吊りボルトに取付ける。
【0004】
しかしながら、上記従来の吊りバンドを用いた配管の吊り下げ作業においては、ボルトを片方の手に持ち、連通させた状態の取付部材に設けられた小さなボルト孔及びターンバックルの下端脚部に設けられた透孔に片側から挿通させると共に、挿通させたボルトの先端側で、もう一方の手にナットを持って所定位置に保持し、ナットを前記ボルトと正確に螺合させて締着しなければならない。この作業は天井近辺という高所、狭所での作業であり、非常に手間がかかるばかりでなく、ナットは小さく持ち難いため、誤ってナットを落下させてしまうことも多く、部品の損失や、その探索といった作業効率の悪化など、多くの不都合を有していた。
【0005】
このような作業性の悪さに対応するため、例えば、特許文献1に記載の配管用吊りバンドでは、吊りバンド(支持部材)を分割してヒンジ機構で連結すると共に、ボルト又はナットの一方を、直接吊り金具の取付部材にカシメ、溶接等によって固着すると共に、他方のナット又はボルトを回動自在に固定するようにしている。
【0006】
また、特許文献2に記載の組立式配管バンドでは、分割した一対の湾曲バンド片を、専用ピンを用いることなく、T字状のヒンジ軸部と、これが挿通可能な受入孔を有するヒンジ軸受部をそれぞれ配設して互いに係合可能とするものであるが、ターンバックルへの取付は、ボルトの廻り止めを施すものの、上記従来の方法とほぼ同様の作業によるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−152063号公報
【特許文献2】特開2000−46245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献2に開示されたものは、ボルトの廻り止めを施したものの、ボルト・ナットの締着はほぼ従来と同様に作業を余儀なくされ、上述したナットの落下等の不都合は解消されていない。
【0009】
また、特許文献1に開示されたものは、ボルト又はナットを固着することで作業効率の改善は期待できるものの、取付部材にナットを直接固着すると共に、他方のボルトを回動自在に固定するために、それぞれ特殊な構造を採用しなければならず、バンド自体の構造が複雑となり、その製作コストが嵩む要因となっている。また、ヒンジで結合する構造も、製作コストの増加につながる。
【0010】
さらに、これら吊りバンドによる作業は、高所で、しかも天井付近の狭い空間で作業するため、できるだけ軽量であることが望ましく、また、安価で容易に製造可能な資材が望まれている。
【0011】
本発明は、上記各課題を解決するために発明をしたものであって、ナットに代えて雌ネジ部を設けたプレートを別途設けることで、作業性の効率化を図ると共に、簡単な構成により、コストダウンが可能な吊りバンドを提供するものである。また、かかる構成は、吊りバンドのほか、立てバンドにも適用でき、さまざまな配管工事に汎用的に用いることのできる利便性の高いバンドを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した諸課題を解決するため、本発明は、一方端に公差結合構造を有し、他方端にターンバックルの取付脚部を挟持する起立した取付片を有して、互いに連結及び分離自在とした組立式の構成である一対の半円弧状のバンド片と、一方のバンド片の取付片に摺動可能に取付ける雌ネジ部を有する雌ネジプレートと、この雌ネジ部に螺合する取付ボルトとからなる組立式吊りバンドであって、上記交差結合構造は、一方のバンド片の先端に略T字状の係合突部を形成し、他方のバンド片の先端に前記係合突部が係入可能な係合穴部を形成して互いに係合可能としたものであり、上記一対のバンド片の一方の取付片には取付ボルトの軸部が挿通可能な長孔を設け、他方の取付片には取付ボルトの頭部が挿通可能な下部の大穴と取付ボルトの軸部が挿通可能な上部の小穴を連結してなる変形長孔を設け、上記取付ボルトを上記変形長孔、ターンバックルの取付脚部の透孔、上記長孔、雌ネジプレートの雌ネジ部に挿通、螺合して、取付ボルトを締め付けることでターンバックルと結合するという手段を採用した。
【0013】
そして、上記雌ネジプレートの雌ネジ部が、プレート板の左右両端を取付片の横幅及び厚さに合わせてそれぞれコの字状に折曲して、取付片を内側に抱持しながら上記長孔に沿って上下に摺動可能とすると共に、プレート板の上記取付片に設けた長孔と対応する位置において、外側面方向に直接タップ穴を形成してその内周に雌ネジを切って取付ボルトを螺合可能とした構成であるという手段を採用した。
【0014】
この場合、タップ穴がプレート板の内側面方向に突出するものである場合もある。
【0015】
または、上記雌ネジプレートの雌ネジ部が、薄板からなるプレート板の左右両端を取付片の横幅及び厚さに合わせてそれぞれコの字状に折曲して、取付片を内側に抱持しながら上記長孔に沿って上下に摺動可能とすると共に、このプレート板の外側に、プレート板に設ける取付ボルトの通孔と連通して厚板の外側面方向に突出するタップ穴を形成してその内周に雌ネジを切って取付ボルトを螺合可能とした雌ネジ板を溶接等の手段により固着した構成であるという手段を採用した。
【0016】
この場合も、タップ穴が雌ネジ板の内側面方向に突出するものである場合がある。
【0017】
または、雌ネジプレートの雌ネジ部が、薄板からなるプレート板の左右両端を取付片の横幅及び厚さに合わせてそれぞれコの字状に折曲して、取付片を内側に抱持しながら上記長孔に沿って上下に摺動可能とすると共に、プレート板の上記取付片に設けた長孔と対応する位置に取付ボルトの通孔を設け、この通孔と連通して外側に、内周を雌ネジとしたナットをカシメ、溶接、ろう付けその他適宜な手段によって固着した構成であるという手段を採用した。
【0018】
そして、上記記載の各組立式吊りバンドにおいて、上記交差結合構造を介して一対のバンド片をリング状に組み立て、対向する取付片でターンバックルの取付脚部を挟持した上、予め、取付ボルトを上記変形長孔、ターンバックルの取付脚部の透孔、上記長孔に挿通して雌ネジプレートの雌ネジ部に螺合しておくものであるという手段を採用した。
【0019】
また、立てバンドとして、一方端に公差結合構造を有し、他方端に壁面や床等に固定されている支持部材を挟持する起立した取付片を有して、互いに連結及び分離自在とした組立式の構成である一対の半円弧状のバンド片と、一方のバンド片の取付片に摺動可能に取付ける2つの雌ネジ部を有する雌ネジプレートと、各雌ネジ部に螺合する2本の取付ボルトとからなる立てバンドであって、上記交差結合構造は、一方のバンド片の先端に略T字状の係合突部を形成し、他方のバンド片の先端に前記係合突部が係入可能な係合穴部を形成して互いに係合可能としたものであり、上記一対のバンド片の一方の取付片には各取付ボルトの軸部が挿通可能な2つの長孔を設け、他方の取付片には各取付ボルトの頭部が挿通可能な下部の大穴と取付ボルトの軸部が挿通可能な上部の小穴を連結してなる2つの変形長孔を設け、上記各取付ボルトを上記変形長孔、支持部材の透孔、上記長孔、雌ネジプレートの雌ネジ部に挿通、螺合して、各取付ボルトを締め付けることで支持部材と結合するという手段を採用した。
【0020】
そして、上記雌ネジプレートの雌ネジ部が、プレート板の左右両端を取付片の横幅及び厚さに合わせてそれぞれコの字状に折曲して、取付片を内側に抱持しながら上記長孔に沿って上下に摺動可能とすると共に、プレート板の上記取付片に設けた長孔と対応する位置において、外側面方向に直接2つのタップ穴を形成してその内周に雌ネジを切って2本の取付ボルトをそれぞれ螺合可能とした構成であるという手段を採用した。
【0021】
または、上記雌ネジプレートの雌ネジ部が、薄板からなるプレート板の左右両端を取付片の横幅及び厚さに合わせてそれぞれコの字状に折曲して、取付片を内側に抱持しながら上記長孔に沿って上下に摺動可能とすると共に、このプレート板の外側に、プレート板に設ける取付ボルトの通孔と連通して厚板の外側面方向に突出する2つのタップ穴を形成してその内周に雌ネジを切って2本の取付ボルトをそれぞれ螺合可能とした雌ネジ板を溶接等の手段により固着した構成であるという手段を採用した。
【0022】
または、上記雌ネジプレートの雌ネジ部が、薄板からなるプレート板の左右両端を取付片の横幅及び厚さに合わせてそれぞれコの字状に折曲して、取付片を内側に抱持しながら上記長孔に沿って上下に摺動可能とすると共に、プレート板の上記取付片に設けた長孔と対応する位置に取付ボルトの通孔を設け、この通孔と連通して外側に、内周を雌ネジとした2つのナットをカシメ、溶接、ろう付けその他適宜な手段によって固着して2本の取付ボルトをそれぞれ螺合可能とした構成であるという手段を採用した。
【発明の効果】
【0023】
上記構成からなる本発明の組立式吊りバンドは、一方のバンド片の取付片に取付ボルトと螺合する雌ネジ部を有する雌ネジプレートを摺動可能に取付けているので、従来のように、取付ボルトの締め付け時にナットを別途手で保持しておく必要がなく、ナットの落下を防止できるので、配管吊り下げ作業がし易く、作業性の効率化を図ることが可能となった。また、バンド片の取付片に直接雌ネジ部を取付けていないので、汎用性が高く、安価に製造できるという利点がある。
【0024】
また、容易に組み立て可能な交差結合構造を採用すると共に、雌ネジプレートに雌ネジ部を設けるようにしたので、構造が簡単となり、現場での組み立てが容易であり、また、安価に製造することが可能となり、大幅なコストダウンが実現できた。さらに、省スペース化も期待できる。
【0025】
特に、プレート板にタップ穴を形成してその内周に雌ネジを切って取付ボルトを螺合可能とした構成では、簡単な構成でその製造が容易であり、部材の軽量化を図ることができると共に、大幅なコストダウンが期待できる。
【0026】
同様に、プレート板に固着する雌ネジ板にタップ穴を形成してその内周に雌ネジを切って取付ボルトを螺合可能とした構成でも、簡単な構成でその製造が容易であり、部材の軽量化を図ることができると共に、大幅なコストダウンが期待できる。
【0027】
また、プレート板に内周を雌ネジとしたナットを固着して取付ボルトを螺合可能とした構成でも、同様に、構造が簡単となり、現場での組み立てが容易であり、また、安価に製造することが可能となった。
【0028】
そして、予め一対のバンド片をリング状に組み立て、さらに、取付ボルトを変形長孔、ターンバックルの取付脚部の透孔、長孔に挿通して雌ネジプレートの雌ネジ部に螺合しておくことにより、現場での組み付け作業が楽で、作業の手間を大幅に削減でき、作業効率の向上が期待できるものである。
【0029】
さらに、上記吊りバンドの構成は、立てバンドにおいても適用可能であり、上記と同様の種々の効果が期待できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明に係る組立式吊りバンドの一実施形態の正面図である。
【
図2】本発明に係る組立式吊りバンドの一実施形態の分解斜視図である。
【
図3】(A)は雌ネジプレートの一実施形態の斜視図、(B)はその横断面図、(C)は雌ネジプレートの他の実施形態の横断面図である。
【
図4】(A)は雌ネジプレートのさらに他の実施形態を示す斜視図、(B)はその横断面図、(C)はさらに他の実施形態の斜視図、(D)はその横断面図である。
【
図5】A)は雌ネジプレートのさらに他の実施形態を示す斜視図、(B)はその横断面図である。
【
図6】(A)は立てバンドに適用した実施形態の正面図、(B)はその雌ネジプレートの一実施形態の斜視図、(C)、(D)は他の実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る組立式吊りバンドの好ましい実施形態を、添付した図面について説明する。
図1及び
図2において、1は吊りボルトで、天井スラブ等に公知の手段によって予め固定しておくものである。2はこの吊りボルト1に取付ナット3を介して高さ調節自在に取り付けるターンバックルである。このターンバックル2の下端部には透孔4a、4aを有する取付脚部4、4が互いに平行に垂下して形成されている。このターンバックル2を介して、本発明の吊りバンドを吊りボルト1に取り付けて配管を固定する。なお、この吊りボルト1及びターンバックル2の構成は、従来公知のものである。
【0032】
5は、本発明に係る吊りバンドであり、一対の半円弧状のバンド片6、7を所定の交差結合構造によって連結及び分離自在とした組立式の構成である。即ち、この交差結合構造として、例えば、一方のバンド片6の湾曲方向先端に略T字状の係合突部6aを形成すると共に、他方のバンド片7の湾曲方向先端に、前記係合突部6aが係入可能な略T字状の係合穴部7aを形成したものであって、前記係合突部6aを前記係合穴部7aに挿入して90度回転することで、両バンド片6、7が互いに交差して結合し、一連のリング状の吊りバンドを形成することができ、配管を抱持するようにしている。なお、かかるバンドの交差結合構造は、前述した特許文献2にも開示されているように公知の構成である。
【0033】
また、上記バンド片6、7の各他方端には、上記ターンバックル2の取付脚部4、4を外側から挟持する取付片8、9が起立して設けられ、一方の取付片8には後述する取付ボルトの軸部が挿通可能な上下方向の長孔8aが設けられ、もう一方の取付片9には、取付ボルトの頭部が挿通可能な下部の大穴と取付ボルトの軸部が挿通可能な上部の小穴を上下に連結してなる変形長孔9aが設けられている。
【0034】
次に、10は、上記一方のバンド片6の長孔8aを有する取付片8に摺動可能に取付ける雌ネジプレートであり、
図3(A)、(B)に示すように、比較的厚い板からなるプレート板10aの左右両端のそれぞれを上記取付板8の横幅及び厚さに合わせてコの字状に折曲し、内側に取付片8を挿通してこれを抱持しながら上記長孔8aに沿って上下方向に摺動できるようにしている。また、このプレート板10aの上記取付片8に設けた長孔8aと対応する位置において、プレート板10aを直接外側面方向に突出させてタップ穴10bを形成してその内周に雌ネジを切って取付ボルト12を螺合可能とした雌ネジ部11を構成している。ただし、後述するように、この雌ネジ部11は、かかる構成に限定するものではない。なお、12は、上記雌ネジ部11のタップ穴10bに螺合する雄ネジを軸部に有する取付ボルトである。
【0035】
かかる構成の本発明に係る吊りバンドは、先ず、一対のバンド片6、7を交差結合構造によりリング状に結合して、その内側に配管(図示せず)を抱持しつつバンド片6、7の上端に起立して設けた取付片8、9でターンバックル2の取付脚部4、4を外側から挟持する。この状態で、取付ボルト12を変形長孔9a、取付脚部4の透孔4a、長孔8a、雌ネジプレート10のプレート板10aのタップ穴10bに挿通して、取付ボルト12を締め付ければ、吊りバンド5とターンバックル2とを確実に結合できる。この場合、タップ穴10bは、その内径が徐々に径縮するロート状であるので、取り付けボルト12の先端を中心に案内し、締め付けが容易となる利点がある。そして、ターンバックル2の取付ナット3を介して天井スラブの吊りボルト1に取り付けることで配管が完了する。
【0036】
このとき、雌ネジを切ったタップ穴10bを有するプレート板10aで構成する雌ネジプレート10は取付片8に摺動可能に取付けているので、従来のように雌ネジを有するナットを片方の手で保持する必要がなく、取付ボルト12を挿通して締め付けるという簡単な作業手順でターンバックル2と結合できる。また、吊りバンドが、バンド片6、7を交差結合したものであるから、ターンバックル2の取付脚部4、4を挟持する際、その取付片8、9を合わせた対向位置にずれを生じやすいが、取付片8、9には、それぞれ長孔8a、及び、変形長孔9aを設けているので、上下方向のずれを該部で吸収して、確実に取付ボルト12を締め付けることができる。
【0037】
なお、かかる構成はプレート板10aの折曲加工が少し困難であるが、軽量化が期待できる。
【0038】
上述したように、雌ネジプレート10における雌ネジ部11の構成は、上記実施形態で説明したものに限定されない。
図3(C)、及び、
図4、
図5は、それぞれ雌ネジプレート10の他の実施形態を例示している。まず、
図3(C)について説明すると、プレート板10aの両端を取付片8の横幅及び厚さに合わせてそれぞれコの字状に折曲して、取付片8を抱持しながら上記長孔8aに沿って上下方向に摺動可能としている点は同じであるが、タップ穴10bを内側面方向に突出して形成したものである。かかる構成によっても、前記実施形態とほぼ同等の作用効果が期待できる。
【0039】
次に、
図4、
図5に示す実施形態について説明する。
図4(A)〜(D)については、雌ネジプレート10において、薄板からなるプレート板10aの左右両端を取付片8の横幅及び厚さに合わせてそれぞれコの字状に折曲して、取付片8を抱持しながら上記長孔8aに沿って上下方向に摺動できるようにしている点はほぼ同じであるが、この雌ネジプレート10には、例えば各図に示すように、プレート板10aの外側に、プレート板10aに設ける取付ボルトの通孔10cと連通して、厚板の外側面方向に突出させてタップ穴10dを形成し、その内周に雌ネジを切って取付ボルト12を螺合可能とした雌ネジ板10eを溶接等の手段により固着して雌ネジ部11を構成したものである。かかる構成によっても、前記実施形態とほぼ同等の作用効果が期待できる。この場合、プレート板10aに薄板を使用するので、折曲加工が容易であるが、溶接等の工程が付加されることになる。
【0040】
この場合、
図4(C)、(D)に示すように、前記実施形態と同様に、雌ネジ板10eのタップ穴10dを内側面方向に突出して形成することも可能である。
【0041】
次に、
図5について説明する。
図5においては、雌ネジプレート10は、薄板からなるプレート板10aの両端を取付片8の横幅及び厚さに合わせてそれぞれコの字状に折曲して、取付片8を抱持しながら長孔8aに沿って上下方向に摺動できるようにしている点はほぼ同じであるが、プレート板10aの上記取付片8に設けた長孔8aと対応する位置には取付ボルト12の通孔10cが設けられており、この通孔10cと連通して外側に、内周を雌ネジとしたナット10fをカシメ、溶接、ろう付けその他適宜な手段によって固着して雌ネジ部11を構成している。かかる構成によっても、前記実施形態とほぼ同等の作用効果が期待できるものであり、構造上、高い強度が期待できるものである。但し、ナット10fを取付ボルト12が連通して挿通できるように、正確な位置に固着する必要がある。
【0042】
なお、上述した各実施形態において、厚板にタップ穴を設ける構成のものは、ナットを固着する構成に比べて雌ネジ部分が少し潰れやすく、強度がわずかに弱いが、実用上の耐久性に問題はなく、十分に使用可能である。
【0043】
上記構成の各実施形態に係る吊りバンドにおいては、一対のバンド片6、7を交差結合してリング状とするので、出荷、輸送時には2つのバンド片6、7を重ねることが可能であり、省スペースとすることができる。また、雌ネジ部11を有する雌ネジプレート10がバンド片の一方に予め摺動可能に取付けられているので、工場の製造・組立段階で取付ボルト12を組み付けておくことが可能であり、輸送コストの低減や、作業現場の省力化を図ることが可能である。
【0044】
また、一方のバンド片7の取付片9には、取付ボルト12の頭部が挿通可能な下部の大穴と取付ボルト12の軸部が挿通可能な上部の小穴を上下に連結してなる変形長孔9aが設けられているので、配管施工時に、ターンバックル2の取付脚部4に取付ける際には、予め、取付ボルト12を取付脚部4の透孔4a、長孔8a、雌ネジプレート10の雌ネジ部11に挿通して仮止めしておき、最後に、取付ボルト12の頭部にバンド片7の変形長孔9aの大穴を通し、小穴方向へずらしたうえ、取付ボルト12を締め付けることにより、取付ボルト12を落下させることなく、両バンド片6、7の取付片8、9を対向させたときのずれを調整しつつ、確実にバンドの取付作業を行うことができる。
【0045】
次に、上記吊りバンドにおける雌ネジプレートに関する構成を立てバンドに適用した場合の実施形態を
図6について説明する。従来の立てバンドは、バンドに配管を抱持させ、バンドの端部をボルト及びナットにより壁面や床等に固定されているT字状の支持部材に固定することによって配管を抱持状態で支持する構成である。固定に用いられるボルト及びナットは、吊りバンドでは1組であったが、立てバンドの場合はバンドの回動防止のため基本的に2組が用いられている。そして、固定に用いられるボルト及びナットの螺合に関しては、上述した従来の吊りバンドと同様に、ボルトまたはナットの固定手段がなく、落下喪失の危険性があるなど、作業性の低いものであった。
【0046】
そこで、本発明においては、
図6に示すように、従来のナットに代え、上述した吊りバンドにおける実施形態と同様に、雌ネジ部を有する雌ネジプレートを採用することとしている。即ち、
図6において、16、17は一対の半円弧状のバンド片であって、前記実施形態と同様に、それぞれの端部に略T字状の係合突部とこの係合突部が係入可能な略T字状の係合穴部を形成し、両者を連結及び分離自在の組立式の構造としたものである。また、各バンド片16、17の他方端には、壁面や床等に固定されているT字状の支持部材(図示せず)を外側から挟持する取付片18、19が起立して設けられ、各取付片18、19には上記実施形態と同様に、取付ボルト22、22が挿通可能な長孔及び変形長孔(図示せず)が2箇所に設けられている。
【0047】
20は、上記2つの長孔を有する取付片18に摺動可能に取付ける雌ネジプレートであり、プレート板20aの両端を取付片18の幅及び厚さに合わせて折曲して、取付片18を抱持しながら摺動できるようにしている。この雌ネジプレート20は、例えば、同図(B)に示すものは、プレート板20aの上記取付片18に設けた2つの長孔と対応する位置において、外側方向に2つのタップ穴20bを2つ立ててその内周にそれぞれ雌ネジを切って取付ボルト22、22を螺合可能とした雌ネジ部21を構成したものである。
【0048】
また、同図(C)に示すものは、プレート板20aを左右両端のそれぞれを取付片18の横幅及び厚さに合わせてコ字状に折曲し、内側に取付片18を挿通して上下に摺動可能としている点は同じであるが、プレート板20aの外側に、プレート板20aに設ける取付ボルトの通孔と連通して、厚板の外側面方向に突出させて2つのタップ穴20cを形成し、その内周に雌ネジを切って2本の取付ボルト22、22を螺合可能とした雌ネジ板20dを溶接等の手段により固着して雌ネジ部21を構成している。
【0049】
さらに、同図(D)に示すものは、薄板からなるプレート板20aの外側に、プレート板20aに設けられる2つの取付ボルトの通孔と連通して、内周を雌ネジとした2つのナット20eを、それぞれカシメ、溶接、ろう付けその他適宜な手段によって固着して雌ネジ部21を構成したものである。
【0050】
これらの立てバンドに関する実施形態は、上述した吊りバンドにおける雌ネジプレートと基本的に同じ技術思想によるものであって、立てバンドの場合は、雌ネジ部を基本的に2箇所に増やしたものである。そのため、その作用効果については、上記吊りバンドの場合と同等である。
【符号の説明】
【0051】
1 吊りボルト
2 ターンバックル
3 取付ナット
4 取付脚部
4a 透孔
5 吊りバンド
6 バンド片
6a 係合突部
7 バンド片
7a 係合穴部
8 取付片
8a 長孔
9 取付片
9a 変形長孔
10 雌ネジプレート
10a プレート板
10b タップ穴
10c 通孔
10d タップ穴
10e 雌ネジ板
10f ナット
11 雌ネジ部
12 取付ボルト
16 バンド片
17 バンド片
18 取付片
19 取付片
20 雌ネジプレート
20a プレート板
20b タップ穴
20c タップ穴
20d 雌ネジ板
20e ナット
21 雌ネジ部
22 取付ボルト