特許第6105992号(P6105992)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6105992
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】連続浸炭炉
(51)【国際特許分類】
   C23C 8/20 20060101AFI20170316BHJP
【FI】
   C23C8/20
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-58744(P2013-58744)
(22)【出願日】2013年3月21日
(65)【公開番号】特開2014-181400(P2014-181400A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2016年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000167200
【氏名又は名称】光洋サーモシステム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻田 博己
(72)【発明者】
【氏名】森 英視
【審査官】 祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭47−029230(JP,A)
【文献】 実開昭49−098403(JP,U)
【文献】 特開昭56−108089(JP,A)
【文献】 特開平08−254392(JP,A)
【文献】 実開昭51−101313(JP,U)
【文献】 特開平09−078124(JP,A)
【文献】 実開昭53−088971(JP,U)
【文献】 特開昭52−140165(JP,A)
【文献】 特開2010−229508(JP,A)
【文献】 特開2008−291298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 8/00−12/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物に浸炭処理を施す浸炭ゾーン、及び当該浸炭ゾーンを通過した被処理物に拡散処理を施す拡散ゾーンが設けられた炉体と、前記炉体内において前記浸炭ゾーン及び前記拡散ゾーンへ順次被処理物を搬送する搬送装置と、前記炉体内の雰囲気を生成するためのガスを供給するガス供給装置と、を備えている連続浸炭炉であって、
前記炉体は、前記浸炭ゾーンを含む第1炉体部と、前記拡散ゾーンを含むとともに、前記第1炉体部とは異なる高さに配置された第2炉体部と、前記第1炉体部の搬送終端と前記第2炉体部の搬送始端とを接続する第3炉体部とを有しており、
前記搬送装置は、前記第1炉体部において被処理物を搬送する第1搬送部と、前記第2炉体部において被処理物を搬送する第2搬送部とを別個に有しており、
前記ガス供給装置は、前記第1炉体部にガスを供給する第1ガス供給部と、前記第2炉体部にガスを供給する第2ガス供給部とを別個に有していることを特徴とする連続浸炭炉。
【請求項2】
前記第1ガス供給部及び前記第2ガス供給部は、それぞれ前記第1炉体部及び前記第2炉体部における被処理物の搬送方向に沿って配置されたガス供給配管を有し、当該ガス供給配管にはガスを吹き出すための複数の吹出孔が前記搬送方向に間隔をあけて形成されている、請求項1に記載の連続浸炭炉。
【請求項3】
前記第1搬送部及び前記第2搬送部の搬送速度が、それぞれ調整可能に構成されている、請求項1又は2に記載の連続浸炭炉。
【請求項4】
前記第1炉体部の搬送終端の下方に前記第2炉体部の搬送始端が配置され、両者の間で前記第3炉体部が上下方向に沿って配置されており、前記被処理物が、前記第1炉体部の搬送終端から前記第2炉体部の搬送始端へ落下することによって移動するように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の連続浸炭炉。
【請求項5】
前記第1炉体部の搬送終端から前記被処理物を落下させたときの、前記第2炉体部に対する前記被処理物の落下位置を制御するように、先端が前記第2炉体部の内側空間まで延びている位置制御部材が設けられている、請求項4に記載の連続浸炭炉。
【請求項6】
前記ガス供給装置は、前記第1炉体部における雰囲気圧力と、前記第2炉体部における雰囲気圧力とを均衡させるように前記第1ガス供給部及び前記第2ガス供給部から供給するガス流量を制御するガス供給制御部を備えている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の連続浸炭炉。
【請求項7】
前記第3炉体部、又は、前記第3炉体部と前記第1炉体部又は前記第2炉体部との境界には、前記被処理物の通過面積を確保しつつ、前記第1炉体部と前記第2炉体部との間の雰囲気ガスの流通面積を縮小させて当該雰囲気ガスの流通を抑制する抑制部材が設けられている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の連続浸炭炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雰囲気ガス中で複数の被処理物を連続的に浸炭処理する連続浸炭炉に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼部品等の被処理物の表面層の炭素を増加させることにより当該表面層のみを硬化し、耐摩耗性等を向上させる方法として、変成炉を用いずに炭化水素ガス等を炉内に直接供給し、この炉内で炭化水素を分解させて浸炭ガスを生成する炉内変成方式のガス浸炭方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、このガス浸炭方法を用いた浸炭炉として、炉内に被処理物を連続的に供給して浸炭処理を行う連続浸炭炉がある。この連続浸炭炉は、炉内を入口側から順に昇温ゾーン、浸炭ゾーン、拡散ゾーン等に分け、搬送装置によって被処理物を搬送しながら各ゾーンを通過させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−303444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の連続浸炭炉は、炉内における浸炭ゾーンと拡散ゾーンとが一つの空間となっているため、各ゾーンに適した雰囲気に制御することが困難であった。特に、浸炭ゾーンにおいては短時間の処理を実現するためにカーボンポテンシャルを高め、拡散ゾーンにおいては被処理物の表面層に浸透した炭素を拡散させるためにカーボンポテンシャルを下げることが望まれるが、このような雰囲気の制御を行うことが困難であった。
【0005】
また、炉体内で被処理物を搬送する搬送装置として搬送ベルト(回走ベルト)が用いられる場合、炉体の入口から出口まで被処理物の搬送速度が一定となるため、各ゾーンにおける被処理物の通過時間、すなわち処理時間を搬送速度によって設定することができず、各ゾーンの長さによって当該処理時間を設定していた。そのため、被処理物の種類等に応じて各ゾーンにおける処理時間を調整するために設備の大幅な変更が必要であった。
【0006】
本発明は、浸炭ゾーンと拡散ゾーンのそれぞれにおいて適切な雰囲気に制御することを可能にするとともに、各ゾーンにおける被処理物の処理時間を適切に設定することができる連続浸炭炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、被処理物に浸炭処理を施す浸炭ゾーン、及び当該浸炭ゾーンを通過した被処理物に拡散処理を施す拡散ゾーンが設けられた炉体と、前記炉体内において前記浸炭ゾーン及び前記拡散ゾーンへ順次被処理物を搬送する搬送装置と、前記炉体内の雰囲気を生成するためのガスを供給するガス供給装置と、を備えている連続浸炭炉であって、
前記炉体は、前記浸炭ゾーンを含む第1炉体部と、前記拡散ゾーンを含むとともに、前記第1炉体部とは異なる高さに配置された第2炉体部と、前記第1炉体部の搬送終端と前記第2炉体部の搬送始端とを接続する第3炉体部とを有しており、
前記搬送装置は、前記第1炉体部において被処理物を搬送する第1搬送部と、前記第2炉体部において被処理物を搬送する第2搬送部とを別個に有しており、
前記ガス供給装置は、前記第1炉体部にガスを供給する第1ガス供給部と、前記第2炉体部にガスを供給する第2ガス供給部とを別個に有していることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、浸炭ゾーンを含む第1炉体部と、拡散ゾーンを含む第2炉体部とを備え、両者は異なる高さに配置されるとともに、第3炉体部によって接続されている。このように、第1炉体部と第2炉体部との高さを異ならせることで、両者の間で雰囲気ガスを流通させ難くすることができる。したがって、各ゾーンにおける雰囲気を適切に維持することができる。また、第1炉体部と第2炉体部とには、それぞれガスを供給するガス供給部が別個に設けられているので、各ゾーンに適した雰囲気を容易に生成することができる。また、第1炉体部と第2炉体部とには、それぞれ搬送部が別個に設けられているので、各ゾーンに適した搬送速度で被処理物を搬送することができ、各ゾーンにおける処理時間を適切に設定することが可能となる。
【0009】
上記構成において、前記第1ガス供給部及び前記第2ガス供給部は、それぞれ前記第1炉体部及び前記第2炉体部における被処理物の搬送方向に沿って配置されたガス供給配管を有し、当該ガス供給配管にはガスを吹き出すための複数の吐出孔が前記搬送方向に間隔をあけて形成されていることが好ましい。これによって、第1炉体部及び第2炉体部の内部の雰囲気の均一化を図ることができる。
また、前記第1搬送部及び前記第2搬送部の搬送速度は、それぞれ調整可能に構成されていることが好ましい。
このような構成によって、被処理物の種類等に応じて浸炭ゾーン及び拡散ゾーンの通過時間、すなわち各ゾーンの処理時間を適切に調整することが可能となる。
【0010】
本発明は、前記第1炉体部の搬送終端の下方に前記第2炉体部の搬送始端が配置され、両者の間で前記第3炉体部が上下方向に沿って配置されており、前記被処理物が、前記第1炉体部の搬送終端から前記第2炉体部の搬送始端へ落下することによって移動するように構成されていることが好ましい。
このような構成によって、第1炉体部と第2炉体部の間の被処理物の移動を簡素な構造で行うことができる。
【0011】
前記第1炉体部の搬送終端から前記被処理物を落下させたときの、前記第2炉体部に対する前記被処理物の落下位置を制御するように、先端が前記第2炉体部の内側空間まで延びている位置制御部材が設けられていることが好ましい。
このような構成によって、第2炉体部に対して適切な位置に被処理物を落下させ、被処理物の乱れを防止することができる。
【0012】
前記ガス供給装置は、前記第1炉体部における雰囲気圧力と、前記第2炉体部における雰囲気圧力とを均衡させるように前記第1ガス供給部及び前記第2ガス供給部から供給するガス流量を制御するガス供給制御部を備えていることが好ましい。
このように、第1炉体部における雰囲気圧力と第2炉体部における雰囲気圧力とを均衡させることによって、第1炉体部及び第2炉体部相互間の雰囲気ガスの流通を抑制し、各炉体部における雰囲気を好適に維持することができる。
【0013】
前記第3炉体部、又は、前記第3炉体部と前記第1炉体部又は前記第2炉体部との境界には、前記被処理物の通過面積を確保しつつ、前記第1炉体部と前記第2炉体部との間の雰囲気ガスの流通面積を縮小させて当該雰囲気ガスの流通を抑制する抑制部材が設けられていることが好ましい。
このような構成によって、第1炉体部及び第2炉体部相互間の雰囲気ガスの流通をさらに抑制し、各炉体部における雰囲気をより好適に維持することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、浸炭ゾーンと拡散ゾーンのそれぞれにおいて適切な雰囲気に制御することができるとともに、各ゾーンにおける被処理物の処理時間を適切に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る連続浸炭炉を示す断面説明図である。
図2】第1炉体部の概略的な横断面図である。
図3】第3炉体部を拡大して示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る連続浸炭炉を示す断面説明図である。
本実施形態の連続浸炭炉10は、鉄鋼部品等の被処理物Wを搬送しつつ、昇温処理、浸炭処理、拡散処理、及び均熱処理等を連続して行うことによって被処理物Wの表面層を硬化させ、耐摩耗性等を向上させるために用いられる。この連続浸炭炉10は、炉体11と、この炉体11内で被処理物Wを搬送する搬送装置12と、炉体11を加熱する加熱装置13と、炉体11内にガスを供給するガス供給装置14と、を備えている。
【0017】
炉体11は、所謂マッフルによって構成されており、筒形状を呈するとともに、筒内部に処理空間が形成されている。また、炉体11には、被処理物Wの搬送方向Xの上流側(図1における左側)に、被処理物Wを炉内に受け入れるための搬入口11aが形成され、搬送方向Xの下流側(図1における右側)に、被処理物Wを炉外に取り出すための搬出口11bが形成されている。搬出口11bは、下向きに形成されており、浸炭処理後の被処理物Wを下方に落下させることで、焼き入れ等の後工程に被処理物Wを送るように構成されている。なお、本明細書においては、搬送方向Xを前後方向、搬送方向Xの上流側を前側、搬送方向Xの下流側を後側ということがある。
【0018】
炉体11は、昇温及び浸炭処理を行う昇温・浸炭ゾーン(昇温ゾーン及び浸炭ゾーン)A、拡散及び均熱処理を行う拡散・均熱ゾーン(拡散ゾーン及び均熱ゾーン)Bに区分されている。そして、炉体11は、昇温・浸炭ゾーンAが設けられた第1炉体部21と、拡散・均熱ゾーンBが設けられた第2炉体部22と、第1炉体部21と第2炉体部22とを接続する第3炉体部23と、第2炉体部22の搬送終端に接続された第4炉体部24を有している。
【0019】
第1炉体部21と第2炉体部22とは、前後方向に沿って配置されている。また第1炉体部21と第2炉体部22とは、互いに異なる高さに配置されている。具体的に、第1炉体部21は、第2炉体部22よりも上位に配置されている。また、第1炉体部21の後端(搬送終端)の下方に第2炉体部22の前端(搬送始端)が位置付けられている。第1炉体部21の後端と第2炉体部22の前端とは、上下方向に沿って配置された第3炉体部23によって接続され、互いに連通されている。また、第4炉体部24は、第2炉体部22の後端から下方に延びており、その下端部に搬出口11bが形成されている。したがって、第1〜第4炉体部21〜24は、平面視で略一直線状に配置されている。
【0020】
搬送装置12は、複数のローラにメッシュベルト(搬送ベルト)を巻きかけて回走させるメッシュベルト型の搬送装置とされている。また、本実施形態の搬送装置12は、第1炉体部21に設けられた第1搬送部31と、第2炉体部22に設けられた第2搬送部32とからなっている。
【0021】
第1搬送部31は、複数のローラ33と、このローラ33に巻き掛けられた無端状の第1メッシュベルト34と、いずれかのローラ33を回転駆動する第1駆動モータ35とを備えている。第1メッシュベルト34は、第1炉体部21の前方から搬入口11aを通って第1炉体部21内へ侵入し、専ら被処理物Wを載置して搬送する載置搬送部分34aと、第1炉体部21の搬送終端から下方に曲げられて第3炉体部23内を通る上下通過部分34bと、上下通過部分34bの下端から前方に曲げられて炉体11外へ排出される戻り部分34cとを有している。第1メッシュベルト34の戻り部分34cは、図3にも示されるように、第2炉体部22の前端壁22aに形成された開口22bを通過して炉体11外へ排出されている。
【0022】
第2搬送部32は、複数のローラ36と、このローラ36に巻き掛けられた無端状の第2メッシュベルト37と、いずれかのローラ36を回転駆動する第2駆動モータ38とを備えている。第2メッシュベルト37は、第2炉体部22の前方から、前記開口22bを通って第2炉体部22内に侵入し、被処理物Wを載置して搬送する載置搬送部分37aと、第2炉体部22の搬送終端から下方に曲げられて第4炉体部24内を通る上下通過部分37bと、この上下通過部分37bの下端から前方に曲げられて炉体11外へ排出される戻り部分37cとを有している。第2メッシュベルト37の戻り部分37cは、第4炉体部24の前端壁24aに形成された開口24bを通過して炉体11外へ排出されている。
【0023】
炉体11に形成された各開口11a、22b、24b等には、雰囲気ガスの漏出を抑制するためにガスカーテンを生成する装置(図示省略)が適宜設けられる。また、第1メッシュベルト34と第2メッシュベルト37とは、共通の開口22bを通過して炉体11の内外に配設されている。これによって炉体11に形成される開口を可及的に少なくし、雰囲気ガスの漏出をより抑制している。このような雰囲気ガスの漏出を防止することでガス消費量を抑制することができる。
【0024】
第1メッシュベルト34における載置搬送部分34aの上流側に供給された被処理物Wは、下流側へ搬送されることによって搬入口11aから第1炉体部21内に搬入される。そして、被処理物Wは、第1炉体部21内の昇温・浸炭ゾーンAを通過して載置搬送部分34aの終端まで搬送されると、第3炉体部23内で下方に落下し、第2メッシュベルト37の載置搬送部分37aで受け止められる。その後、被処理物Wは、さらに下流側へ搬送され、載置搬送部分37aの終端まで搬送されると、第4炉体部24内で下方に落下し、搬出口11bから炉体11外へ排出される。なお、第1炉体部21から第2炉体部22への被処理物Wの移動は自然落下によって行われるので、当該移動を短時間に行うことができるとともに、当該移動のための装置を不要とし、構成を簡素化することができる。
【0025】
第1搬送部31は、第1駆動モータ35における回転数(駆動周波数)の調整や、第1駆動モータ35からローラ33へ伝達される回転動力の変速比の調整等によって搬送速度を調整可能に構成されている。また、第2搬送部32も、第2駆動モータ38における回転数(駆動周波数)の調整や、第2駆動モータ38からローラ36へ伝達される回転動力の変速比の調整等によって搬送速度を調整可能に構成されている。
【0026】
炉体11を加熱する加熱装置13は、炉体11を外側から加熱する複数のヒータ13aを備え、これらのヒータ13aを個別に作動させることによって炉体11内部の温度を制御するように構成されている。具体的には、第1炉体部21の内部は、ヒータ13aによって浸炭に適した温度、例えば950℃に維持されるようになっている。また、第2炉体部22の内部は、ヒータ13aによって拡散処理や均熱処理に適した温度、例えば850℃に維持されるようになっている。また、ヒータ13aは、第3,第4炉体部23,24にも設けられ、第3,第4炉体部23,24における温度も所望に調節できるようになっている。
【0027】
ガス供給装置14は、炉体11内部にガスを供給することによって所定の雰囲気を生成するものである。ガス供給装置14は、第1炉体部21にガスを供給する第1ガス供給部41と、第2炉体部22にガスを供給する第2ガス供給部42とからなる。
第1ガス供給部41は、第1炉体部21内に炭化水素ガスと不活性ガスとを混合したガスを供給することによって所定の雰囲気を生成する。一方、第2ガス供給部42は、第2炉体部22内に不活性ガスを供給することによって所定の雰囲気を生成する。また、第1ガス供給部41と第2ガス供給部42とは、それぞれ第1炉体部21と第2炉体部22の雰囲気圧力が均衡するように、供給するガスの流量を制御することができる。これにより、第1炉体部21と第2炉体部22との間で雰囲気ガスをより流通し難くすることができ、好ましい。
【0028】
なお、第1炉体部21に供給する炭化水素ガスとしては、例えばアセチレンガスを採用することができ、第1,第2炉体部21,22に供給する不活性ガスとしては窒素ガスを採用することができる。ただし、炭化水素ガス及び不活性ガスとして、他のガスを採用してもよい。
【0029】
第1ガス供給部41は、第1炉体部21の上部及び下部に設けられた複数の供給配管44と、第1炉体部21内に供給するガスの流量を制御するガス供給制御部45とを備えている。各供給配管44は、第1炉体部21の長さ方向(前後方向)に沿って配置されている。また、供給配管44には、ガスを吹き出すための複数の吹出孔44aが長さ方向に間隔をあけて形成されている。これにより、第1炉体部21の雰囲気の均一化を図ることができる。なお、複数の吹出孔44aの間隔を等間隔とすることもでき、等間隔とすることにより第1炉体部21の雰囲気をより均一にすることができる。
【0030】
図2は、第1炉体部21の概略的な横断面図である。
図2に示されるように、第1炉体部21の上部には、1本の供給配管44が設けられ、第1炉体部21の下部には、複数本(例えば、3本)の供給配管44が設けられている。また、上側の供給配管44からは左右両側にガスが吹き出され、下側の供給配管44からは上向きにガスが吹き出されている。下側の供給配管44から上向きに炭化水素ガスを含む混合ガスを吹き出すことによって、第1メッシュベルト34上の被処理物Wの下面側に対する浸炭を好適に促進することが可能となり、被処理物Wの全体を万遍なく浸炭処理し、浸炭ムラの発生を抑制することができる。なお、上側の供給配管44は、下側の供給配管44と同様に複数本設けられていてもよい。また、上側及び下側の供給配管44におけるガスの吹出方向は、いずれの方向であってもよい。ただし、下側の供給配管44は、図2に示されるように上向きにガスを吹き出すようにすることがより望ましい。
【0031】
第2ガス供給部42は、第2炉体部22の上部と下部とに設けられた供給配管46と、第2炉体部22に供給するガスの流量を制御するガス供給制御部47とを備えている。供給配管46は、第2炉体部22の長さ方向(前後方向)に沿って配置されている。また、供給配管46には、ガスを吹き出すための複数の吹出孔46aが長さ方向に間隔をあけて形成されている。これにより、第2炉体部22の雰囲気の均一化を図ることができる。なお、複数の吹出孔46aの間隔を等間隔とすることもでき、等間隔とすることにより第2炉体部22の雰囲気をより均一にすることができる。
【0032】
また、この第2ガス供給部42においても、第1ガス供給部41と同様に、第2炉体部22の上部に1本の供給配管46が設けられ、第2炉体部22の下部に複数本(例えば、3本)の供給配管46が設けられている。供給配管46からのガスの吹出方向は、第1ガス供給部41における供給配管44と同様であってもよいし、異なっていてもよい。また、上側の供給配管46は、下側の供給配管46と同様に複数本設けられていてもよい。また、上側及び下側の供給配管46におけるガスの吹出方向は、いずれの方向であってもよい。ただし、下側の供給配管46は、上向きにガスを吹き出すようにすることがより望ましい。
【0033】
第1炉体部21における昇温・浸炭ゾーンAでは、加熱装置13によって所定の温度まで昇温されるとともに、第1ガス供給部41により供給された炭化水素ガスを分解させて浸炭性ガスが生成される。これにより、被処理物Wの表面層に炭素が浸透する。このとき、第1炉体部21内の雰囲気は、要求される表面炭素濃度よりも高いカーボンポテンシャルとされる。一方、第2炉体部22は、第1炉体部21よりもやや低温の状態に維持され、しかも不活性ガスのみが供給されることで、カーボンポテンシャルを低下させた雰囲気とされる。そして、浸炭ゾーンで被処理物Wの表面層に浸入した炭素が拡散されることによって表面炭素濃度が所望に調整(低下)される。
【0034】
第1搬送部31によって昇温・浸炭ゾーンAを通過する被処理物Wの搬送速度は、第2搬送部32によって拡散・均熱ゾーンBを通過する被処理物Wの搬送速度よりも速く設定されている。そのため、第1炉体部21を通過した被処理物Wが第2炉体部22で滞留しないように、第1炉体部21への被処理物Wの供給ピッチが調整されている。
【0035】
また、昇温・浸炭ゾーンAや拡散・均熱ゾーンBにおける被処理物Wの処理時間は、被処理物Wの種類や浸炭の程度(硬化層深さ)等に応じて適切に設定することができる。具体的に、昇温・浸炭ゾーンAにおける被処理物Wの処理時間は、実質的に被処理物Wが第1炉体部21を通過する時間となるため、第1搬送部31における搬送速度を変更することによって当該処理時間を調整することができる。また、拡散・均熱ゾーンBにおける被処理物Wの処理時間は、実質的に被処理物Wが第2炉体部22を通過する時間となるため、第2搬送部32における搬送速度を変更することによって当該処理時間を調整することができる。
【0036】
図3は、第3炉体部23を拡大して示す断面説明図である。
図3に示されるように、第3炉体部23には、第1炉体部21における第1搬送部31から落下した被処理物Wが、第2炉体部22における第2搬送部32の適正位置に位置付けられるように、被処理物Wの落下位置を制御する位置制御部材50が設けられている。この位置制御部材50は、第3炉体部23における後壁部23aから下方に延長されることによって、その下端(先端)が第2炉体部22内に侵入する板材よりなる。また、位置制御部材50の下端部50aは、前斜め下方に傾斜している。したがって、第1搬送部31の搬送終端から下方に落下した被処理物Wが、第2搬送部32における搬送始端よりも下流側(図1において右側)に転がってしまうのを防止し、拡散・均熱ゾーンBにおける被処理物Wの処理時間が短縮してしまうのを抑制することができる。
【0037】
また、位置制御部材50は、第2炉体部22と第3炉体部23との境界付近における雰囲気ガスの流通面積を縮小させており、これによって第1炉体部21における雰囲気ガスと第2炉体部22における雰囲気ガスとが混ざり合うのを抑制する機能をも有している。つまり、位置制御部材50は、第1炉体部21と第2炉体部22との間で雰囲気ガスが流通するのを抑制する抑制部材としても機能し、これによって、各炉体部21,22における雰囲気を適切に維持することが可能となっている。なお、位置制御部材50は、その下端とベルト34,37との間に被処理物Wの通過を許容する面積が十分に確保されており、これによって被処理物Wの停滞を防止することができる。
【0038】
本実施形態の連続浸炭炉10は、昇温・浸炭ゾーンAを有する第1炉体部21と、拡散・均熱ゾーンBを有する第2炉体部22とが異なる高さに配置されているので、各炉体部21,22の間で相互に雰囲気ガスを流通し難くすることができる。また、第1,第2炉体部21,22に供給されるガスの流量は、第1炉体部21の雰囲気圧力と第2炉体部22の雰囲気圧力とが互いに均衡するように、第1,第2ガス供給部41,42のガス供給制御部45,47によって制御することができるので、第1炉体部21及び第2炉体部22の相互間で雰囲気ガスを流通し難くすることができ、各炉体部21,22内の雰囲気を好適に維持することができる。
【0039】
また、第1炉体部21と第2炉体部22とには、それぞれ第1,第2ガス供給部41,42が別個に設けられているので、各炉体部21,22内に適した雰囲気を容易に生成することができる。さらに第1炉体部21と第2炉体部22とには、それぞれ第1,第2搬送部31,32が別個に設けられているので、各炉体部21,22において被処理物Wを適切な搬送速度で搬送することができる。以上により、各ゾーンA,Bにおける処理を最適な条件で実行することができる。
【0040】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において適宜変更できるものである。
例えば、本発明における連続浸炭炉10は、炭化水素ガスを直接炉体内に供給する炉内変成方式のガス浸炭方法を適用したものに限られず、別途変成炉において変成された変成ガス(キャリアガス)を供給する方式のガス浸炭方法を適用したものであってもよい。
【0041】
また、本発明における連続浸炭炉10の炉体11は、上記実施形態のように第1炉体部21と第2炉体部22とが平面視で一直線状に配置されたものに限らず、所定の角度(例えば、90度や180度)で屈曲(又は反転)して配置されていてもよい。また、第1炉体部21と第2炉体部22とは、前者が下位に、後者が上位に配置されていてもよい。この場合、搬送装置12は、第1炉体部21から第2炉体部22へ被処理物Wを持ち上げて移動させるリフト装置等を備えればよい。
【0042】
第1炉体部21と第2炉体部22との間の雰囲気ガスの流通を抑制する抑制部材50は、第1炉体部21と第3炉体部23との境界付近に設けてもよいし、第3炉体部23内に設けてもよい。
【符号の説明】
【0043】
10:連続浸炭炉
11:炉体
12:搬送装置
13:加熱装置
14:ガス供給装置
21:第1炉体部
22:第2炉体部
23:第3炉体部
31:第1搬送部
32:第2搬送部
41:第1ガス供給部
42:第2ガス供給部
45:ガス供給制御部
47:ガス供給制御部
50:位置制御部材(抑制部材)
A :昇温・浸炭ゾーン
B :拡散・均熱ゾーン
W :被処理物
X :搬送方向
図1
図2
図3