(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6106003
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】熱変色性筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 29/02 20060101AFI20170316BHJP
【FI】
B43K29/02 F
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-71089(P2013-71089)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-193573(P2014-193573A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2016年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】星野 貴宣
【審査官】
砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−153087(JP,A)
【文献】
特開2009−126102(JP,A)
【文献】
特開2011−93164(JP,A)
【文献】
特開2011−93165(JP,A)
【文献】
特開2009−184279(JP,A)
【文献】
特開2011−46203(JP,A)
【文献】
特開2014−128933(JP,A)
【文献】
特開2014−141081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 5/00− 8/24
B43K 24/00−27/12
B43K 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の本体の端部に、熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で該筆跡を熱変色可能な低摩耗性の弾性材料からなる摩擦部を備え、且つ、内部に熱変色性インキを収容した熱変色性筆記具であって、前記本体の摩擦部側の端部の外面に、前記摩擦部の外周を包囲する保護部材を設け、前記保護部材が、軸方向に移動可能に設けられるとともに弾発体により軸方向前方に常時付勢され、前記摩擦部の非使用時、前記保護部材の頂部が前記摩擦部の頂部よりも軸方向前方に突出し、前記摩擦部の使用時、被筆記面と前記保護部材の頂部との接触により、前記保護部材が軸方向後方に移動してなることを特徴とする熱変色性筆記具。
【請求項2】
前記保護部材が筒状である請求項1記載の熱変色性筆記具。
【請求項3】
前記本体の摩擦部側の端部の外面に軸方向前方に開口する環状の出没孔が設けられ、前記出没孔より後方に該出没孔より大きい内径を有する環状の収容孔が連設され、前記出没孔と前記収容孔との間に段部が形成され、前記保護部材が、筒状部と、該筒状部の後端部外面より径方向外方に突出する凸部とを備え、前記筒状部が前記出没孔内及び前記収容孔内に軸方向に摺動自在に設けられ、前記凸部が前記収容孔内に軸方向に摺動自在に収容され、前記収容孔内に前記弾発体が収容され、前記摩擦部の非使用時、前記凸部が前記段部に係止される請求項2記載の熱変色性筆記具。
【請求項4】
前記保護部材の頂部が凸曲面状である請求項1乃至3の何れかに記載の熱変色性筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状の本体の端部に、熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で該筆跡を熱変色可能な低摩耗性の弾性材料からなる摩擦部を備え、且つ、内部に熱変色性インキを収容した熱変色性筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱変色性筆記具において、軸胴の後端やキャップの頂部に摩擦体を設ける構成が開示されている。(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2007−223302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1の熱変色性筆記具は、非使用時、ペンケース、ペン立て、または衣服のポケット等に収納して保管すると、摩擦部が常に外部に露出しているため、摩擦部が、他の物品(例えば、他の筆記具外面、ペンケースの内面、ペン立ての底面、または衣服のポケット内面等)に接触することにより、摩擦部表面に塵や埃が付着し、摩擦部表面が汚れることがあり、その汚れた状態の摩擦部を用いて紙面を摩擦すると、紙面が汚れてしまう不具合があった。
【0005】
本発明は前記従来の問題点を解決するものであって、非使用時に摩擦部が汚れることを防止できる熱変色性筆記具を提供しようとするものである。
【0006】
尚、本発明において、「前」とは摩擦部側を指し、「後」とはその反対側を指す。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の第1の発明は、筒状の本体2の端部に、熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で該筆跡を熱変色可能な低摩耗性の弾性材料からなる摩擦部31を備え、且つ、内部に熱変色性インキを収容した熱変色性筆記具であって、前記本体2の摩擦部31側の端部の外面に、前記摩擦部31の外周を包囲する保護部材4を設け、前記保護部材4が、軸方向に移動可能に設けられるとともに弾発体5により軸方向前方に常時付勢され、前記摩擦部31の非使用時、前記保護部材4の頂部が前記摩擦部31の頂部よりも軸方向前方に突出し、前記摩擦部31の使用時、被筆記面6と前記保護部材4の頂部との接触により、前記保護部材4が軸方向後方に移動してなることを要件とする。
【0008】
前記第1の発明の熱変色性筆記具1は、前記本体2の摩擦部31側の端部の外面に、前記摩擦部31の外周を包囲する保護部材4を設け、前記保護部材4が、軸方向に移動可能に設けられるとともに弾発体5により軸方向前方に常時付勢され、前記摩擦部31の非使用時、前記保護部材4の頂部が前記摩擦部31の頂部よりも軸方向前方に突出し、前記摩擦部31の使用時、被筆記面6と前記保護部材4の頂部との接触により、前記保護部材4が軸方向後方に移動してなることにより、非使用時、ペンケース、ペン立て、または衣服のポケット等に収納して保管しても、保護部材4により摩擦部31が、他の物品(例えば、他の筆記具外面、ペンケースの内面、ペン立ての底面、または衣服のポケット内面等)に接触することが回避され、非使用時に摩擦部31が汚れることを防止できる。尚、本発明で筒状の本体2は、例えば、一端にペン先を備え且つ内部に熱変色性インキを収容した軸筒、または該軸筒のペン先側に着脱自在に装着されるキャップ等が挙げられる。本発明で、保護部材4が摩擦部31の外周を包囲するとは、例えば、保護部材4が、摩擦部31の外周を完全に包囲する筒状体からなる構成、摩擦部31の外周の一部または大部分を包囲する半筒状体からなる構成、または摩擦部31の外周を包囲するよう間隔を置いて分散配置される複数の突出片からなる構成等が挙げられる。
【0009】
本願の第2の発明は、前記第1の発明の熱変色性筆記具1において、前記保護部材4が筒状であることを要件とする。
【0010】
前記第2の発明の熱変色性筆記具1は、前記保護部材4が筒状であることにより、非使用時、ペンケース、ペン立て、または衣服のポケット等に収納して保管しても、保護部材4により摩擦部31が完全に包囲され、摩擦部31が他の物品(例えば、他の筆記具外面、ペンケースの内面、ペン立ての底面、または衣服のポケット内面等)に接触することが確実に回避され、非使用時に摩擦部31が汚れることを確実に防止できる。
【0011】
本願の第3の発明は、前記第2の発明の熱変色性筆記具1において、前記本体2の摩擦部31側の端部の外面に軸方向前方に開口する環状の出没孔23が設けられ、前記出没孔23より後方に該出没孔23より大きい内径を有する環状の収容孔24が連設され、前記出没孔23と前記収容孔24との間に段部25が形成され、前記保護部材4が、筒状部41と、該筒状部41の後端部外面より径方向外方に突出する凸部42とを備え、前記筒状部41が前記出没孔23内及び前記収容孔24内に軸方向に摺動自在に設けられ、前記凸部42が前記収容孔24内に軸方向に摺動自在に収容され、前記収容孔24内に前記弾発体5が収容され、前記摩擦部31の非使用時、前記凸部42が前記段部25に係止されることを要件とする。
【0012】
前記第3の発明の熱変色性筆記具1は、前記本体2の摩擦部31側の端部の外面に軸方向前方に開口する環状の出没孔23が設けられ、前記出没孔23より後方に該出没孔23より大きい内径を有する環状の収容孔24が連設され、前記出没孔23と前記収容孔24との間に段部25が形成され、前記保護部材4が、筒状部41と、該筒状部41の後端部外面より径方向外方に突出する凸部42とを備え、前記筒状部41が前記出没孔23内及び前記収容孔24内に軸方向に摺動自在に設けられ、前記凸部42が前記収容孔24内に軸方向に摺動自在に収容され、前記収容孔24内に前記弾発体5が収容され、前記摩擦部31の非使用時、前記凸部42が前記段部25に係止されることにより、保護部材4及び弾発体55を筒体の摩擦部31側の端部に適正に配置することができる。
【0013】
本願の第4の発明は、前記第1、第2または第3の発明の熱変色性筆記具1において、前記保護部材4の頂部が凸曲面状であることを要件とする。
【0014】
前記第4の発明の熱変色性筆記具1は、前記保護部材4の頂部が凸曲面状(例えば半球面状)であることにより、摩擦部31の使用時、被筆記面6上をあらゆる方向に円滑に摺動させることができる。
【0015】
本発明において、前記摩擦部31を構成する弾性材料は、弾性を有する合成樹脂(ゴム、エラストマー)が好ましく、例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂(スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体)、フッ素系樹脂、クロロプレン樹脂、ニトリル樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等が挙げられる。前記摩擦部31を構成する弾性を有する合成樹脂は、高摩耗性の弾性材料(例えば、消しゴム等)ではなく、摩擦時に摩耗カス(消しカス)が殆ど生じない低摩耗性の弾性材料である。本発明において、前記保護部材4は、合成樹脂(例えば、ポリカーボネイト、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ABS樹脂等)または金属から構成されることが好ましい。また、前記本体22は、合成樹脂(例えば、ポリカーボネイト、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ABS樹脂等)または金属から構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の熱変色性筆記具は、非使用時に摩擦部が汚れることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態の摩擦部非使用時の要部縦断面図である。
【
図2】本発明の実施の形態の摩擦部使用時の要部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1及び
図2の本発明の実施の形態の熱変色性筆記具1を示す。
【0019】
・本体
本体2は、円筒状の内部材21と、該内部材21の後端部外周面に固着される円筒状の外部材22とからなる。前記本体2の内部材21及び外部材22は、合成樹脂または金属により形成される。前記本体2は、例えば、内部に熱変色性インキが収容され且つ該熱変色性インキが吐出可能なペン先を一端に備えた軸筒、または、前記軸筒のペン先側に着脱自在のキャップが挙げられる。前記本体2が軸筒の場合、軸筒の反ペン先側の端部に摩擦部31が設けられる。前記本体2がキャップの場合、キャップの閉鎖側端部に摩擦部31が設けられる。
【0020】
・内部材
前記内部材21は、前端部に、小径部21aと該小径部21aより後方に連設される大径部21bと、該大径部21bと小径部21aとの間に形成される肩部21cとを備える。前記内部材21の小径部21aの前端部には、取付孔21dが設けられる。前記取付孔21dの内周面には、内向突起が形成される。
【0021】
・外部材
前記外部材22は、前記内部材21の大径部21bの外周面に嵌着され且つ前記小径部21aの外周面を包囲する。前記外部材22の前端部内面には、環状突起22aが形成される。
【0022】
・摩擦部材
筒状の本体2の一端に、低摩耗性の弾性材料(例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂、SEBS樹脂)からなる摩擦部材3が固着される。前記摩擦部材3は、外部に露出する大径の前部と、本体2の取付孔21d(内部材21の取付孔21d)に嵌着される小径の後部とからなる。摩擦部材3の後部が取付孔21dに嵌入される。前記摩擦部材3の後部の外周面には、外向突起が形成され、該外向突起が、摩擦部材3の後部を取付孔21dに嵌入した際、前記取付孔21d内周面の内向突起と乗り越え係合される。前記大径の前部の頂部には凸曲面状の摩擦部31が形成される。
【0023】
・出没孔,収容孔,段部
前記本体2の内部材21の小径部21a外周周面と外部材22内周面との間には、環状空間が形成される。前記環状空間が、前記環状突起22aの内側に形成され且つ軸方向前方に開口する出没孔23と、該出没孔23より後方に連設される大径の収容孔24とからなる。前記出没孔23と前記収容孔24との間には段部25が形成される。
【0024】
・保護部材
前記出没孔23の内部及び収容孔24の内部に、筒状の保護部材4が軸方向に摺動自在に設けられる。前記保護部材4は、筒状部41と、該筒状部41の後端部外面より径方向外方に突出する凸部42とを備える。前記保護部材4の筒状部41が、前記出没孔23及び収容孔24の内部に軸方向に摺動自在に設けられる。前記保護部材4の凸部42が、前記収容孔24の内部に軸方向に摺動自在に設けられる。前記筒状部41の頂部が、凸曲面状(R曲面状)に形成される。また、前記保護部材4は、合成樹脂により一体に形成される。前記保護部材4を、透明性を有する合成樹脂により形成することにより、摩擦操作時、摩擦部31を視認することできる。
【0025】
・弾発体
前記保護部材4は、弾発体5(例えば、圧縮コイルスプリング、ゴムやスポンジ等の弾性体)により常時、前方に弾発付勢される。前記弾発体5は、前記収容孔24内に配置される。前記弾発体5の前端が保護部材4の後面に当接され、前記弾発体5の後端が内部材21の肩部21cに当接される。前記弾発体5の保護部材4を前方に付勢する弾発荷重は、少なくとも、熱変色性筆記具1全体の重量よりも高く設定される。
【0026】
・作用
摩擦部31の非使用時、保護部材4の筒状部41が、摩擦部31の出没孔23より前方に突出され、該筒状部41が摩擦部31を包囲し、筒状部41の頂部が摩擦部31の頂部よりも前方に位置してなる。それにより、摩擦部31が他の物品に接触することを回避される。摩擦部31の使用時、被筆記面6と保護部材4の筒状部41の頂部とが接触し、被筆記面6により保護部材4が後方に押圧され、保護部材4の後部が出没孔23内に没入され、摩擦部31を被筆記面6に押し当てて使用できる。それにより、摩擦操作前に、保護部材4を移動させる別の操作が不要となり、摩擦部31を迅速に使用できる。
【0027】
本実施の形態の熱変色性筆記具1は、前記本体2の摩擦部31側の端部の外面に、前記摩擦部31の外周を包囲する保護部材4を設け、前記保護部材4が、軸方向に移動可能に設けられるとともに弾発体5により軸方向前方に常時付勢され、前記摩擦部31の非使用時、前記保護部材4の頂部が前記摩擦部31の頂部よりも軸方向前方に突出し、前記摩擦部31の使用時、被筆記面6と前記保護部材4の頂部との接触により、前記保護部材4が軸方向後方に移動してなることにより、非使用時、ペンケース、ペン立て、または衣服のポケット等に収納して保管しても、保護部材4により摩擦部31が、他の物品(例えば、他の筆記具外面、ペンケースの内面、ペン立ての底面、または衣服のポケット内面等)に接触することが回避され、非使用時に摩擦部31が汚れることを防止できる。
【0028】
本実施の形態の熱変色性筆記具1は、前記保護部材4が筒状であることにより、非使用時、ペンケース、ペン立て、または衣服のポケット等に収納して保管しても、保護部材4により摩擦部31が、他の物品(例えば、他の筆記具外面、ペンケースの内面、ペン立ての底面、または衣服のポケット内面等)に接触することが確実に回避され、非使用時に摩擦部31が汚れることを確実に防止できる。
【0029】
本実施の形態の熱変色性筆記具1は、前記本体2の摩擦部31側の端部の外面に軸方向前方に開口する環状の出没孔23が設けられ、前記出没孔23より後方に該出没孔23より大きい内径を有する環状の収容孔24が連設され、前記出没孔23と前記収容孔24との間に段部25が形成され、前記保護部材4が、筒状部41と、該筒状部41の後端部外面より径方向外方に突出する凸部42とを備え、前記筒状部41が前記出没孔23内及び前記収容孔24内に軸方向に摺動自在に設けられ、前記凸部42が前記収容孔24内に軸方向に摺動自在に収容され、前記収容孔24内に前記弾発体5が収容され、前記摩擦部31の非使用時、前記凸部42が前記段部25に係止されることにより、保護部材4及び弾発体5を筒体の摩擦部31側の端部に適正に配置することができる。
【0030】
本実施の形態の熱変色性筆記具1は、前記保護部材4の頂部が凸曲面状(例えば半球面状)であることにより、摩擦部31の使用時、被筆記面6上をあらゆる方向に円滑に摺動させることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 熱変色性筆記具
2 本体
21 内部材
21a 小径部
21b 大径部
21c 肩部
21d 取付孔
22 外部材
22a 環状突起
23 出没孔
24 収容孔
25 段部
3 摩擦部材
31 摩擦部
4 保護部材
41 筒状部
42 凸部
5 弾発体
6 被筆記面