特許第6106004号(P6106004)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社不二工機の特許一覧

<>
  • 特許6106004-圧力センサ 図000002
  • 特許6106004-圧力センサ 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6106004
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】圧力センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 19/06 20060101AFI20170316BHJP
   G01L 19/14 20060101ALI20170316BHJP
   G01L 19/00 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   G01L19/06 A
   G01L19/14
   G01L19/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-71168(P2013-71168)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-194388(P2014-194388A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2015年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】高月 修
(72)【発明者】
【氏名】青山 倫久
(72)【発明者】
【氏名】向井 元桐
(72)【発明者】
【氏名】住吉 雄一朗
【審査官】 公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第102980713(CN,A)
【文献】 特開2001−182585(JP,A)
【文献】 特開2009−109313(JP,A)
【文献】 特開2009−085723(JP,A)
【文献】 特開2006−208043(JP,A)
【文献】 特開2005−106796(JP,A)
【文献】 実開平07−023256(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0050168(US,A1)
【文献】 特開昭59−050326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00−23/32,27/00−27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力検出素子と、
該圧力検出素子が内面に固定されたべースと、
該べースに対向して配置された受け部材と、
前記べースと前記受け部材とで挟持されたダイアフラムと、
該ダイアフラムを挟持した状態の前記べース及び前記受け部材を、両者が互いに離間するのを防止するように両者を挟持する挟持部材であって、前記ベース及び前記受け部材のいずれか一方側から装着され、両者が互いに押圧される方向に荷重を加えた状態で前記ベース及び前記受け部材のいずれか他方側に溶接接合された挟持部材と、
前記ベースと前記ダイアフラムとの間の空間に封入され、前記受け部材と前記ダイアフラムとの間の空間内の圧力を前記圧力検出素子に伝達する液体とを備え、
前記挟持部材は、前記ダイアフラムを挟持した状態のベース及び受け部材の外径より大きい内径を備えた円筒部と、前記円筒部の上部に連続して設けられ、前記円筒部の中心軸に対して垂直な平面を有する外周部と、前記円筒部の上部に前記外周部を介して連続して形成され、前記中心軸の方向に傾斜するように設けられた傾斜部と、を有し、前記傾斜部と前記外周部とが連結された部分の内壁と前記ベース及び前記受け部材の一方との間に空隙が形成されると共に、前記傾斜部が弾発力を持って前記ベースと前記受け部材とが互いに押圧された状態で、前記ベース及び前記受け部材のいずれか他方側に溶接接合されていることを特徴とする圧力センサ。
【請求項2】
前記荷重は、前記挟持部材と前記ベース及び前記受け部材の一方との間に形成された空隙を押し縮めるように加えられることを特徴とする請求項1記載の圧力センサ。
【請求項3】
前記ベースと前記受け部材とが互いに押圧される方向に、前記ベース及び前記受け部材のいずれか他方の周縁部と前記平面とに前記荷重を加えた状態で前記挟持部材が前記溶接接合されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力検出素子を収容した受圧空間に液体を封入した液封入式の圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧力検出素子が収容された受圧空間内に液体を封入し、圧力検出室に外部から加えられた圧力を液体を介して圧力検出素子に伝えることで、圧力検出素子から外部圧力に応じた電圧信号を出力する圧力センサが種々提案されている。
【0003】
上記液封入式圧力センサの一例として、特許文献1には、外部からの圧力を導入する圧力導入管と底部に形成された貫通穴で接続され、圧力検出素子と外周に沿った溶接部で接続される蓋部材を備え、蓋部材の外周部から貫通穴に至る縦断面の少なくとも一部をL字状に形成することで、蓋部材の内面に流体圧が作用した際における、溶接部を支点とした回転方向への力を低減し、溶接部の破断を防止する圧力センサが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−308397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献に記載の圧力センサにおいては、CO等の高圧冷媒を用いた冷凍機器、空調機器の冷媒流路等の圧力の検出に用いた場合には、繰り返し高い圧力が上記溶接部等に加えられるため、溶接部に割れなどが発生し、破損に繋がるおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、CO等の高圧冷媒が通過する流路等の圧力の検出に用いた場合でも、高圧による破損を防止し、安全な圧力センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、圧力センサであって、圧力検出素子と、該圧力検出素子が内面に固定されたべースと、該べースに対向して配置された受け部材と、前記べースと前記受け部材とで挟持されたダイアフラムと、該ダイアフラムを挟持した状態の前記べース及び前記受け部材を、両者が互いに離間するのを防止するように両者を挟持する挟持部材であって、前記ベース及び前記受け部材のいずれか一方側から装着され、両者が互いに押圧される方向に荷重を加えた状態で前記ベース及び前記受け部材のいずれか他方側に溶接接合された挟持部材と、前記ベースと前記ダイアフラムとの間の空間に封入され、前記受け部材と前記ダイアフラムとの間の空間内の圧力を前記圧力検出素子に伝達する液体とを備え、前記挟持部材は、前記ダイアフラムを挟持した状態のベース及び受け部材の外径より大きい内径を備えた円筒部と、前記円筒部の上部に連続して設けられ、前記円筒部の中心軸に対して垂直な平面を有する外周部と、前記円筒部の上部に前記外周部を介して連続して形成され、前記中心軸の方向に傾斜するように設けられた傾斜部と、を有し、前記傾斜部と前記外周部とが連結された部分の内壁と前記ベース及び前記受け部材の一方との間に空隙が形成されると共に、前記傾斜部が弾発力を持って前記ベースと前記受け部材とが互いに押圧された状態で、前記ベース及び前記受け部材のいずれか他方側に溶接接合されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、挟持部材の傾斜部が弾発力を持ってベースと受け部材とが互いに押圧された状態で、挟持部材がベース及び受け部材のいずれか他方側に溶接接合されているため、繰り返し圧力に対する耐久性が向上し、両者の間に繰り返し高圧が付加された場合でも両者が離間することがなく、べースと受け部材とが溶接接合されている場合でも溶接部の割れを回避し、圧力センサの破損を防止することができる。また、挟持部材の外周部が挟持部材の中心軸に対して垂直な平面を有するように構成し、この垂直な平面を利用することにより、べースと受け部材とが互いに押圧される方向に容易に荷重を加えることができる。
【0009】
上記圧力センサにおいて、前記荷重を前記挟持部材と前記ベース及び前記受け部材の一方との間に形成された空隙を押し縮めるように加えるようにすれば、前記挟持部材の弾性力で前記ベース及び挟持部材を効果的に押圧することができ、当該圧力センサの耐久性がさらに向上する。
【0010】
また、上記圧力センサにおいて、前記ベースと前記受け部材とが互いに押圧される方向に、前記ベース及び前記受け部材のいずれか他方の周縁部と前記平面とに前記荷重を加えた状態で前記挟持部材が前記溶接接合されるように構成することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、CO等の高圧冷媒が通過する流路等の圧力の検出に用いた場合でも、高圧による破損を防止し、安全な圧力センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】本発明に係る圧力センサの一実施の形態を示す上面図である。
図1B図1AのA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1A及び図1Bは、本発明に係る圧力センサの第1の実施形態を示し、この圧力センサ1は、圧力検出素子2と、べース4と、べース4に対向して配置された受け部材5と、べース4と受け部材5とで挟持されたダイアフラム6と、ダイアフラム6を挟持した状態のべース4及び受け部材5をさらに挟持(保持)する挟持部材(保持部材)22とを備える。ベース4とダイアフラム6との間の受圧空間7には、オイル等の絶縁性の液体(封入液)が封入される。
【0015】
圧力検出素子2は、受圧空間7の内部でベース4に固定される。受け部材5とダイアフラム6との間には圧力導入空間としての加圧空間8が形成され、加圧空間8には冷媒等が流入する流入管3の内部空間が連通する。
【0016】
ベース4は、例えばプレス加工により成形され、周縁部(つば部)4cの内側から上方に膨出する膨出部を備え、下部が開口する蓋状に形成されている。この膨出部は、周縁部4cの内側から立ち上がる側面部4d及び側面部4dに連続して設けられた上面部4eより成る。べース4の膨出部下面(すなわち上面部4eの下面)には、圧力検出素子2が接着等により固定される。
【0017】
受け部材5は、例えばプレス加工により成形され、周縁部(つば部)5aの内側から下方に膨出する膨出部を備え、上部が開口する皿状に形成されている。この膨出部は、周縁部5aの内側から立ち下がる側面部5b及び側面部5bに連続して設けられた下面部5cより成る。受け部材5の膨出部中央(すなわち下面部5cの中央)の開口には流入管3がろう付け固定される。
【0018】
ダイアフラム6は、その外周縁部がベース4の周縁部4cと受け部材5の周縁部5aとの間に挟み込まれ、これら3つの部材4〜6は、ダイアフラム6の外周縁部が露出する外周縁部分においてレーザー溶接等によって同時に溶接され(溶接部14)、一体化される。受圧空間7は、べース4の上面部4eを貫通して形成された充填孔(不図示)から封入液が注入された後、べース4の上面において、充填孔がボール9をスポット溶接等を行うことによって封じられる。
【0019】
挟持部材22は、ダイアフラム6を挟持した状態のべース4及び受け部材5の外径より若干大きい内径を備えた円筒部22bと、円筒部22bの上部に外周部22cを介して連続して形成され、円筒部22bの中心軸方向に傾斜するように設けられた傾斜部22aとを備えており、ベース4の膨出部肩部と受け部材5の周縁部5aとを挟持(保持)することにより、べース4及び受け部材5が互いに離間するのを防止する。傾斜部22aは円錐台の側面形状を呈している。外周部22cは、挟持部材22の中心軸に対して垂直な平面を備えている。
【0020】
挟持部材22でベース4及び受け部材5を挟持するにあたっては、挟持部材22の円筒部22bをベース4側からベース4及び受け部材5の周縁部4c、5aの外周に装着し、傾斜部22aの内面がベース4の膨出部の肩部(すなわち側面部4dの傾斜部分)と当接・係合した状態で、挟持部材22の外周部22cと、受け部材5の、周縁部5aの下面に、ベース4と受け部材5とが互いに押圧される方向に荷重Fを加えた状態で、円筒部22bの下部が受け部材5の周縁部5aの側面にレーザー溶接等によって溶接接合される(溶接部15)。ベース4と受け部材5とが互いに押圧される方向に荷重を加えた状態で挟持部材22を溶接接合することで、繰り返し圧力に対する耐久性が向上する。
【0021】
この実施例においては、挟持部材22をベース4側からベース4及び受け部材5の周縁部4c、5aの外周に装着して、傾斜部22aの内面がベース4の膨出部の肩部と当接・係合した状態において、外周部22cの内壁とベース4の周縁部4cとの間に空隙Sが形成されるようにされている。したがって、この空隙Sを押し縮めるように荷重Fを加えれば外周部22cが微小距離、空隙S側に移動し、傾斜部22aが弾発力を持って側面部4dを押圧する。この状態で円筒部22bと周縁部5aとを溶接接合することで、挟持部材22は、ベース4の側面部4dを受け部材5側に応力を加えた状態で固定される。
【0022】
また、ベース4を、その周縁部4cよりも内側で支持することができるので、高圧導入時におけるベース4の変形を効果的に抑えることができ、ハーメチックシール4b部分に対する過度な応力が低減され、該シール部の破壊防止効果を強化することができる。
【0023】
なお、受け部材5の変形を抑えたい場合には、この挟持部材22を、上下方向に逆転させて取り付けるようにしても良く、この場合は、受け部材5側から傾斜部22aを受け部材5の膨出部の肩部(側面部5bの傾斜部分)に係合させ、荷重を加えた状態で円筒部22bをベース4の周縁部4cの側面に溶接接合させればよい。
【0024】
圧力検出素子2は、例えばピエゾ素子及び信号処理回路等から成るICチップである。ピエゾ素子は、強誘電体の一種であって圧電素子とも呼ばれ、振動や圧力等の力が加わると電圧が発生し、逆に電圧が加えられると伸縮する。
【0025】
圧力検出素子2は、ベース4の上面部4eに形成された貫通孔4aを挿通する出力用リードピン11(11A〜11C)及び調整用リードピン12(12A〜12E)にワイヤ10を介して電気的に接続される。出力用リードピン11は、圧力検出素子2で検出された圧力に応じた電圧信号を外部に出力するためのものであり、調整用リードピン12は、製造時の電圧補正用等に用いられる。この例においては、3本の出力用リードピン11A〜11C及び調整用リードピン12A〜12E、並びに上述の充填孔は、ベース4の中心から同一円周上に等角度で配置されている。
【0026】
ベース4の貫通孔4aは、出力用リードピン11及び調整用リードピン12を挿通させた後、ハーメチックシール4bによって封入液の漏れがないように封じられる。出力用リードピン11は、その上端部で図示されない基板に接続され、基板は、さらに図示されないコネクタを介して外部出力用リード線に接続される。
【0027】
上記構成を有する圧力センサ1は、流入管3から流入した冷媒の圧力変化によって加圧空間8の圧力が変化し、ダイアフラム6を変形させる。ダイアフラム6の変形により受圧空間7の内部の封入液の圧力が変化し、その圧力変化が圧力検出素子2へ伝播する。圧力検出素子2により検出された圧力は、電圧に変換され、補正回路にて圧力センサ1の特性に応じた所定の電圧補正がなされる。補正後の電圧信号は、出力用リードピン11、基板及びコネクタを介して外部出力用リード線へ伝送される。
【0028】
この圧力センサ1を、CO等の高圧冷媒を用いた空調機器の冷媒流路等の圧力を検出するために使用すると、流入管3から流入した冷媒の高い圧力が加圧空間8に繰り返し加わり、ベース4と受け部材5とを離間させる方向に大きな力が繰り返し作用するが、受け部材5及びダイアフラム6が溶接部14において一体化されていることに加え、べース4及び受け部材5が互いに押圧される方向に荷重を加えた状態で挟持部材22を溶接接合し、挟持部材22によってべース4及び受け部材5のそれぞれの周縁部を挟持しているため、溶接部14に割れなどが生ずるおそれがなく、圧力センサ1の破損を効果的に防止することができる。
【0029】
なお、上記実施の形態においては、挟持部材22の中心軸に対して垂直な平面として外周部22cを形成し、ベース4と受け部材5とが互いに押圧される方向に、外周部22cと受け部材5の周縁部5aの下面とに荷重Fを加えて挟持部材22を溶接接合したが、荷重Fを加える箇所は、外周部22c等に限定されず、空隙Sが押し縮められるように挟持部材22の傾斜部22a外周側等を利用してもよい
【0030】
また、空隙Sが押し縮められるように荷重Fが加えられるものとして説明したが、本発明は特にこれのみに限定されることはなく、挟持部材22をベース4又は受け部材5側から装着した際に当接する傾斜部22aの内面とベース4又は受け部材5との当接部を、傾斜部22aの外側から直接押圧するように荷重Fを加えてもよい。この場合、空隙Sは省略してもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 圧力センサ
2 圧力検出素子
3 流入管
4 べース
4a 貫通孔
4b ハーメチックシール
4c 周縁部
4d 側面部
4e 上面部
5 受け部材
5a 周縁部
5b 側面部
5c 下面部
6 ダイアフラム
7 受圧空間
8 加圧空間
9 ボール
10 ワイヤ
11(11A〜11C) 出力用リードピン
12(12A〜12E) 調整用リードピン
14、15 溶接部
22 挟持部材
22a 傾斜部
22b 円筒部
22c 外周部
図1A
図1B