(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6106039
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】パンチプレス
(51)【国際特許分類】
B21D 28/36 20060101AFI20170316BHJP
B21D 37/18 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
B21D28/36 Z
B21D37/18
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-143455(P2013-143455)
(22)【出願日】2013年7月9日
(65)【公開番号】特開2015-16480(P2015-16480A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】村下 晴規
【審査官】
塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−235427(JP,A)
【文献】
特開平05−237700(JP,A)
【文献】
特開2010−089166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 28/36
B21D 37/18
B30B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上型ホルダに上下動自在に備えられたパンチ金型を打圧自在かつ前記上型ホルダに上下動自在に備えられたタップ金型を押圧自在なストライカを備え、前記パンチ金型及び前記タップ金型に対して流体を供給するための流体供給口を前記ストライカに備えたパンチプレスであって、前記流体供給口へ供給する流体供給回路を複数備え、前記各流体供給回路に、オイルタンクに接続した潤滑油回路とエア源に接続したエア回路とを接続した混合マニホルドを備え、前記パンチ金型及び前記タップ金型の使用に対応して前記流体供給回路の切換えを行うための回路切換え手段を備え、かつ前記ストライカにおける前記流体供給口内の残留オイルを噴出除去するために、前記潤滑油回路を連通遮断自在なソレノイドバルブを、前記各潤滑油回路に備えていることを特徴とするパンチプレス。
【請求項2】
請求項1に記載のパンチプレスにおいて、前記流体供給口と前記各流体供給路とを接続した接続路に、前記流体供給口側から各流体供給路側への流体の逆流を防止するための逆流防止弁を備えていることを特徴とするパンチプレス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばタレットパンチプレスなどのごときパンチプレスに係り、さらに詳細には、パンチ金型及びタップ金型の使用時に、ストライカから各金型に供給する流体を切換えることができるパンチプレスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばタレットパンチプレスなどのごときパンチプレスにおいては、上型ホルダに上下動自在に備えられているパンチ金型に潤滑油を供給するために、前記パンチ金型を打圧自在なストライカに流体供給口が備えられている(例えば特許文献1参照)。また、パンチプレスにおいては前記上型ホルダにタップ金型を上下動自在に備え、前記ストライカの流体供給口からタップ金型に対して切削油を供給することが行われている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−34061号公報
【特許文献2】特開2011−235427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、パンチプレスにタップ金型を装着してタッピング加工を行うとき、パンチ金型に対して供給する潤滑油を切削油として供給していた。すなわち従来は、パンチ金型に対する潤滑油とタップ金型に対する切削油とを共通に使用していて大きな問題はなかった。しかし、ワークとして例えばSUS430KD材等のタッピング加工を行うと溶着してタップ不良を生じることがある。そこで、タッピング加工専用の切削油に変更して前記ワークのタッピング加工を行うと、前述したごとき問題は解消される。
【0005】
したがって、パンチ金型の潤滑油としても、タッピング加工専用の切削油を使用することも考えられる。しかし、上記切削油は、パンチ金型の潤滑油と比較して極めて高価(約10倍)であるので、前記切削油を潤滑油として使用するには問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前述のごとき問題に鑑みてなされたもので、上型ホルダに上下動自在に備えられたパンチ金型を打圧自在かつ前記上型ホルダに上下動自在に備えられたタップ金型を押圧自在なストライカを備え、前記パンチ金型及び前記タップ金型に対して流体を供給するための流体供給口を前記ストライカに備えたパンチプレスであって、前記流体供給口へ供給する流体供給回路を複数備え、
前記各流体供給回路に、オイルタンクに接続した潤滑油回路とエア源に接続したエア回路とを接続した混合マニホルドを備え、前記パンチ金型及び前記タップ金型の使用に対応して前記流体供給回路の切換えを行うための回路切換え手段を備え、かつ前記ストライカにおける前記流体供給口内の残留オイルを噴出除去するため
に、前記潤滑油回路を連通遮断自在なソレノイドバルブを、前記各潤滑油回路に備えていることを特徴とするものである。
【0008】
また、前記パンチプレスにおいて、前記流体供給口と前記各流体供給路とを接続した接続路に、前記流体供給口側から各流体供給路側への流体の逆流を防止するための逆流防止弁を備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、パンチ金型に対する流体供給回路とタップ金型に対する流体供給回路とを切換えて使用することができ、前述したごとき問題を解消し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係るパンチプレスの構成を概念的、概略的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1を参照するに、本発明の実施形態に係るパンチプレス1は、例えばタレットパンチプレスにおける上部タレットなどのごとき上型ホルダ3を備えていると共に、下部タレットなどのごとき下型ホルダ5を備えている。前記上型ホルダ3には板状のワークWの打抜き加工を行うパンチ金型7が着脱交換自在に備えられると共に、前記ワークWにタッピング加工を行うタップ金型(図示省略)が着脱交換自在に備えられるものである。前記下型ホルダ5には、前記パンチ金型7と対をなすダイ9が着脱交換自在に備えられている。
【0012】
また、前記パンチプレス1には、加工位置に位置決めされたパンチ金型7を打圧自在かつ加工位置に位置決めされたタップ金型を押圧自在のストライカ11が上下動自在に備えられている。なお、上記構成のごときパンチプレス1の構成はよく知られた構成であるから、前記パンチプレス1の構成についてのより詳細な説明は省略する。
【0013】
前記ストライカ11には、前記パンチ金型7を打圧するときには、パンチ金型7用の潤滑油を供給し、タップ金型を押圧するときには切削油を供給するための流体供給口13が備えられている。そして、前記流体供給口13には、パンチ金型7に対して潤滑油を供給するための第1の流体供給回路15が接続してあると共に、タップ金型に対して切削油を供給するための第2の流体供給回路17が接続してある。
【0014】
前記第1の流体供給回路15は、エア源19に接続したエア回路21Aを備えていると共に、当該エア回路21Aから分岐した潤滑油回路21Bを備えている。上記エア回路21Aには減圧弁23が備えられていると共に当該エア回路21Aを連通遮断自在のソレノイドバルブ25が備えられている。前記潤滑油回路21Bには減圧弁27が備えられていると共に、潤滑油を密封貯留したオイルタンク29が備えられている。また、潤滑油回路21Bには、潤滑油回路21Bを連通遮断自在のソレノイドバルブ31が備えられていると共に逆止弁(逆流防止弁)33が備えられている。
【0015】
そして、前記エア回路21Aと潤滑油回路21Bは、オイルとエアとを混合するための混合マニホールド35に接続してあり、この混合マニホールド35は、逆流防止弁(逆止弁)37を備えた接続路39を介して前記ストライカ11の流体供給口13に接続してある。
【0016】
前記第2の流体供給回路17の構成は、第1の流体供給回路15と同一の構成であり、オイルタンク29内に密封貯留されているオイルが、タップ金型用の切削油であることのみが異なるだけである。したがって、第1の流体供給回路15における構成要素と同一機能を奏する構成要素には同一符号を付することとして、重複した説明は省略する。
【0017】
前記構成において、第1の流体供給回路15におけるソレノイドバルブ25におけるソレノイドSOLを励磁してエア回路21Aを連通すると、エア源19からストライカ11の流体供給口13へエアを供給することになる。上述のように、エアを供給した状態にあるときに、ソレノイドバルブ31のソレノイドSOLを励磁すると、オイルタンク29から潤滑油が供給され、混合マニホールド35においてエアと潤滑油とが混合され、ストライカ11に対してオイルミストとして供給されることになる。この際、第2の流体供給回路17側の逆止弁37の作用により、第2の流体供給回路17側へ前記オイルミストが流入するようなことはないものである。
【0018】
既に理解されるように、第2の流体供給回路17側においても、ストライカ11の流体供給口13に対してエアのみを供給することや、エアと切削油とを混合したオイルミストを供給することができるものである。
【0019】
前記第1,第2の流体供給回路15,17の各ソレノイドバルブ25,31における各ソレノイドSOLの励磁、解磁(消磁)を制御するために、制御装置41が備えられている。この制御装置41は例えばコンピュータから構成してあって、前記ストライカ11によってパンチ金型7を打圧する際には第1の流体供給回路15におけるソレノイドバルブ25,31のソレノイドSOLの励磁;消磁(解磁)の制御を行うものである。また、前記ストライカ11によってタップ金型を押圧する際には、第2の流体供給回路17におけるソレノイドバルブ25,31のソレノイドSOLの励磁、消磁の制御を行うものである。
【0020】
すなわち、パンチプレスにおいて、パンチ金型7による打抜き加工を開始する前(パンチ金型7を使用する直前)のタイミング、すなわちストライカ11が上死点から下降を開始してパンチ金型7に当接する前のタイミングでもって第1の流体供給回路15におけるソレノイドバルブ25のソレノイドSOLが所定時間だけ励磁される。したがって、ストライカ11がパンチ金型7に当接する前に、ストライカ11における流体供給口13からエアが噴出されることになる。すなわち、前記流体供給口13内の残留オイルが除去されることになる。
【0021】
その後、第1の流体供給回路15におけるソレノイドバルブ25のソレノイドSOL及びソレノイドバルブ31のソレノイドSOLが適宜のタイミングで励磁、消磁が繰り返され、パンチ金型7に対して潤滑油のオイルミストが供給されることになる。そして、前記パンチ金型7による打抜き加工が適数回行われてパンチング金型7の使用終了後のタイミング、すなわち、前記パンチング金型7による最終回の打抜き加工後に、前記ストライカ11が下降位置から上死点に戻るとき、又は戻ったときに、第1の流体供給回路15におけるソレノイドバルブ25のソレノイドSOLのみを励磁する。
【0022】
上記操作により、ストライカ11の流体供給口13に対してエアのみが供給され、上記流体供給口13からエアが噴出されることになる。すなわち、パンチ金型7に対するオイルミストの供給時の、流体供給口13内の残留オイルが噴出除去されることになる。
【0023】
次に、タップ金型を前記ストライカ11の下方位置に位置決めして使用する場合にも、前記ストライカ11によってタップ金型を押圧する前に、第2の流体供給回路17におけるソレノイドバルブ25のソレノイドSOLのみを励磁して、エアのみをストライカ11に供給すると、タップ金型を使用する前に、ストライカ11における流体供給口13内の残留オイルが噴出除去されることになる。そして、ストライカ11によってタップ金型を押圧するときに、第2の流体供給回路17におけるソレノイドバルブ25,31のソレノイドSOLを適宜のタイミングで励磁することにより、切削油のオイルミストをタップ金型に供給することができるものである。
【0024】
そして、タップ金型によるタッピング加工を適数回行った後、タッピング加工を終了すべく、ストライカ11を上死点へ復帰するとき、又は上死点に上昇復帰した後に、第2の流体供給回路17におけるソレノイドバルブ25のソレノイドSOLのみを励磁することにより、ストライカ11の流体供給口13に対してエアを供給する。すなわち前記流体供給口13からエアを噴出して、流体供給口13内の残留オイル(切削油)を除去することができる。
【0025】
以上のごとき説明より理解されるように、本実施形態によれば、パンチプレスにおいてパンチ金型7を使用する場合に潤滑油を供給するための第1の流体供給回路15と、タップ金型を使用する場合に切削油を供給するための第2の流体供給回路17とを備えている。そして、前記第1,第2の流体供給回路15,17の使用を切換えるための回路切換え手段としてのソレノイドバルブ25,31を備えている。したがって、パンチ金型7及びタップ金型のそれぞれに対して適正なオイルを供給することができ、前述したごとき問題を解消し得るものである。
【0026】
そして、第1の流体供給回路15の使用から第2の流体供給回路17の使用に切換えるとき、または第2の流体供給回路17の使用から第1の流体供給回路15の使用に切換えるときには、ストライカ11における流体供給口13内の残留オイルはエア噴出手段としてのエア回路21Aから供給されるエアによって噴出除去されるものである。したがって、第1,第2の流体供給回路15,17のオイルがストライカ11における流体供給口13内において混合するようなことはないものである。
【0027】
なお、ストライカ11における前記流体供給口13内の残留オイルを噴出除去するとき、ソレノイドバルブ25におけるソレノイドSOLの励磁を間欠的に行って、エアの供給を脈動的に行うことも可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 パンチプレス
3 上型ホルダ
7 パンチ金型
11 ストライカ
13 流体供給口
15 第1の流体供給回路
17 第2の流体供給回路
19 エア源
21A エア回路
21B 潤滑油回路
25 ソレノイドバルブ
29 オイルタンク
31 ソレノイドバルブ
35 混合マニホールド
37 逆止弁
39 接続路