特許第6106042号(P6106042)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 未来工業株式会社の特許一覧

特許6106042配設体支持装置、配設装置、及び、配設体の設置方法
<>
  • 特許6106042-配設体支持装置、配設装置、及び、配設体の設置方法 図000002
  • 特許6106042-配設体支持装置、配設装置、及び、配設体の設置方法 図000003
  • 特許6106042-配設体支持装置、配設装置、及び、配設体の設置方法 図000004
  • 特許6106042-配設体支持装置、配設装置、及び、配設体の設置方法 図000005
  • 特許6106042-配設体支持装置、配設装置、及び、配設体の設置方法 図000006
  • 特許6106042-配設体支持装置、配設装置、及び、配設体の設置方法 図000007
  • 特許6106042-配設体支持装置、配設装置、及び、配設体の設置方法 図000008
  • 特許6106042-配設体支持装置、配設装置、及び、配設体の設置方法 図000009
  • 特許6106042-配設体支持装置、配設装置、及び、配設体の設置方法 図000010
  • 特許6106042-配設体支持装置、配設装置、及び、配設体の設置方法 図000011
  • 特許6106042-配設体支持装置、配設装置、及び、配設体の設置方法 図000012
  • 特許6106042-配設体支持装置、配設装置、及び、配設体の設置方法 図000013
  • 特許6106042-配設体支持装置、配設装置、及び、配設体の設置方法 図000014
  • 特許6106042-配設体支持装置、配設装置、及び、配設体の設置方法 図000015
  • 特許6106042-配設体支持装置、配設装置、及び、配設体の設置方法 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6106042
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】配設体支持装置、配設装置、及び、配設体の設置方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/12 20060101AFI20170316BHJP
【FI】
   H02G3/12 060
   H02G3/12 050
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-148587(P2013-148587)
(22)【出願日】2013年7月17日
(65)【公開番号】特開2015-23626(P2015-23626A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 真之
【審査官】 木村 励
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−92646(JP,A)
【文献】 特開2003−333730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁裏に配置された造営材に対して配設体を設置するための配設体支持装置であって、
前記造営材に固定される固定部、及び、当該固定部から前記造営材の側方に延びる支持部を備えた配設体支持具と、
前記支持部の少なくとも一部に磁着可能であり、前記配設体を支持部に固定するための磁着体と、を備えてなり、
前記配設体の底壁外面を前記支持部に当接させた状態で、前記底壁を介して前記磁着体を前記支持部に磁着することによって、前記支持部に前記配設体を支持可能であり、
前記磁着体は、前記配設体の前面開口部から前記底壁を介して前記支持部に着脱可能であることを特徴とする配設体支持装置。
【請求項2】
壁裏に配置された造営材に対して配設体を設置するための配設体支持装置であって、
前記造営材に固定される固定部、及び、当該固定部から前記造営材の側方に延びる支持部を備えた配設体支持具と、
前記支持部の少なくとも一部に磁着可能であり、前記配設体を支持部に固定するための磁着体と、を備えてなり、
前記配設体の底壁外面を前記支持部に当接させた状態で、前記底壁を介して前記磁着体を前記支持部に磁着することによって、前記支持部に前記配設体を支持可能であり、
前記磁着体には、当該磁着体を把持するための把持部が設けられていることを特徴とすることを特徴とする配設体支持装置。
【請求項3】
前記配設体の底壁内面には、前記磁着体を保持するための保持部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の配設体支持装置。
【請求項4】
前記配設体の底壁外面には、前記支持部が収容される凹部が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の配設体支持装置。
【請求項5】
前記配設体は、前記支持部に対してスライド可能に支持されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の配設体支持装置。
【請求項6】
前記配設体の底壁には、ビスが挿通される貫通孔が設けられており、前記支持部には、前記ビスが螺入するビス孔が設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の配設体支持装置。
【請求項7】
前記磁着体には、当該磁着体を把持するための把持部が設けられていることを特徴とすることを特徴とする請求項に記載の配設体支持装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の配設体支持装置と、
当該配設体支持装置の支持部に磁着体によって支持された、底壁及び側壁からなる周壁を有する配設体と、を備えることを特徴とする配設装置。
【請求項9】
壁裏に設置された造営材に対して配設体を設置するための配設体の設置方法であって、
固定部及び当該固定部から側方に延びる支持部を備えた配設体支持具を前記造営材に前記固定部を介して固定するステップと、
前記配設体の底壁外面を前記支持部に当接させるように前記配設体を配置するステップと、
前記配設体の底壁内面に配置された磁着体を前記支持部の少なくとも一部に前記底壁を介して磁着することによって、前記支持部で前記配設体を支持するステップと、を含み、
前記磁着体は、前記配設体の前面開口部から前記底壁を介して前記支持部に着脱可能であることを特徴とする配設体の設置方法。
【請求項10】
前記磁着体によって前記支持部で前記配設体を支持した状態で、前記配設体を前記支持部にビスで固定するステップと、
前記配設体を前記支持部にビスで固定した後、前記磁着体を前記配設体の前面開口部から取り外すステップと、をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の配設体の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁内の所定位置に配線ボックス等の配設体を設置するための配設体支持装置、配設装置、及び、配設体の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、壁内で配設体を間柱などの造営材に対して支持及び固定するための種々の設置手段が利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1は、壁内に配置される配設体としてのボックス(2)を、軽量間柱(41)に支持及び固定するためのボックス支持装置を開示している。このボックス支持装置は、2本の間柱(41)に架設された固定具(21)にボックス(2)を支持及び固定するものである。該固定具(21)は、ボックス(2)を支持及び固定するための支持部としての外側固定板(22)及び内側固定板(23)からなる固定板と、固定部として該固定板の両端に配置され、間柱(41)にビスで固定されるフランジ(25)と、を備える。また、ボックス(2)の底壁(4)背面には水平方向に一定幅の凹部(5)が形成されており、当該凹部(5)に固定具(21)を水平方向に収容可能である。特許文献1の図7に示されているとおり、凹部(5)の側壁(5b)に奥行方向に複数の突条(5d)を設けることにより、弾性保持力を高め、ボックス(2)が固定具(21)に対してその長さ方向に移動するのを防止することができる。あるいは、特許文献1の図8に示されているとおり、この凹部(5)は、その上下の開口縁部にボックス(2)の成形後の型抜きに支障をきたさない範囲で極く小さな突条(5c)を水平方向に設けることにより、凹部(5)の開口幅を固定具(21)より僅かに小さく形成し、内部に固定具(21)を強制的に圧入して、弾性的に保持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−333730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の固定具(21)において、突条(5c、5d)が設けられていない場合、ボックス(2)を固定具(21)の凹部(5)に収容した状態では、ボックス(2)が固定具(21)から脱落し易いため、ボックス(2)を手で押さえながら、ビス等で固定部(21)に固定しなければならない。そのため、作業効率が低下するといった不具合が存在した。そして、ボックス(2)の凹部(5)に突条(5c)を設けた場合、固定具(21)の凹部(5)にボックス(2)を圧入することにより、ボックス(2)を脱落防止に固定具(21)に配置する。しかしながら、圧入作業の際、ボックス(2)を壁表側から固定具(21)に対して強い力で押し込まなければならない。そのため、圧入時に突条(5c)自体に負担がかかり破損する虞があると共に、固定具(21)のフランジ部(25)と間柱(41)との間に負担がかかって連結強度が低下する虞があった。さらに、ボックス(2)を壁表側から押圧するための空間が存在しない、又は、非常に狭い場合には、ボックス(2)に壁表側から力を加えることができず、ボックス(2)を固定具(21)に支持させる作業が困難であった。他方、ボックス(2)の脱落防止のために凹部(5)に突条(5d)を設けた場合も、突条(5d)の弾性力に抗して凹部(5)内に固定具(21)を強い力で圧入しなければならないため、同様の問題が生じる。それ故、従来構造では、配設体(ボックス(2))を配設体支持具(固定具(21))に対して弱い力でも簡単に支持させることが可能な配設体支持装置が求められている。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、壁内の所定位置で配設体支持具に対して配設体を容易に設置可能とすることにより、造営材への配設体の設置作業を改善する配設体支持装置、配設装置、及び、配設体の設置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の配設体支持装置は、壁裏に配置された造営材に対して配設体を設置するための配設体支持装置であって、造営材に固定される固定部、及び、当該固定部から造営材の側方に延びる支持部を備えた配設体支持具と、支持部の少なくとも一部に磁着可能であり、配設体を支持部に固定するための磁着体と、を備えてなり、配設体の底壁外面を支持部に当接させた状態で、底壁を介して磁着体を支持部に磁着することによって、支持部に配設体を支持可能であり、磁着体は、配設体の前面開口部から底壁を介して支持部に着脱可能であることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の配設体支持装置は、壁裏に配置された造営材に対して配設体を設置するための配設体支持装置であって、造営材に固定される固定部、及び、当該固定部から造営材の側方に延びる支持部を備えた配設体支持具と、支持部の少なくとも一部に磁着可能であり、配設体を支持部に固定するための磁着体と、を備えてなり、配設体の底壁外面を支持部に当接させた状態で、底壁を介して磁着体を支持部に磁着することによって、支持部に配設体を支持可能であり、磁着体には、当該磁着体を把持するための把持部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の配設体支持装置は、請求項1又は2の配設体支持装置において、配設体の底壁内面には、磁着体を保持するための保持部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の配設体支持装置は、請求項1から3のいずれかの配設体支持装置において、配設体の底壁外面には、支持部が収容される凹部が設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の配設体支持装置は、請求項1から4のいずれかの配設体支持装置において、配設体は、支持部に対してスライド可能に支持されることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の配設体支持装置は、請求項1から5のいずれかの配設体支持装置において、配設体の底壁には、ビスが挿通される貫通孔が設けられており、支持部には、ビスが螺入するビス孔が設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の配設体支持装置は、請求項の配設体支持装置において、磁着体には、当該磁着体を把持するための把持部が設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の配設装置は、請求項1から7のいずれか一項に記載の配設体支持装置と、当該配設体支持装置の支持部に磁着体によって支持された、底壁及び側壁からなる周壁を有する配設体と、を備えることを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の配設体設置方法は、壁裏に設置された造営材に対して配設体を設置するための配設体の設置方法であって、固定部及び当該固定部から側方に延びる支持部を備えた配設体支持具を造営材に固定部を介して固定するステップと、配設体の底壁外面を支持部に当接させるように配設体を配置するステップと、配設体の底壁内面に配置された磁着体を支持部の少なくとも一部に底壁を介して磁着することによって、支持部で配設体を支持するステップと、を含み、磁着体は、配設体の前面開口部から底壁を介して支持部に着脱可能であることを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載の配設体設置方法は、請求項9の配設体設置方法において、磁着体によって支持部で配設体を支持した状態で、配設体を支持部にビスで固定するステップと、配設体を支持部にビスで固定した後、磁着体を配設体の前面開口部から取り外すステップと、をさらに含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、配設体の底壁外面を支持部に当接させた状態で、底壁を介して磁着体を支持部に磁着することによって支持部が配設体を支持可能である。すなわち、本発明の配設体支持装置では、磁着体が所定強度の磁力を有しており、当該磁着体から放射される磁力線が配設体の底壁を貫通して、十分な強度で磁性体(磁性金属)を含む支持部に作用する。この磁力による磁着体と支持部との引力が、磁着体と支持部との間に配設体を挟持するための挟圧力として機能する。そして、当該磁着体が配設体底壁を介して支持部に間接的に磁着することによって配設体を支持部に支持させることができる。すなわち、本発明の配設体支持装置では、配設体の底壁外面を支持部の表面に宛がうだけで、磁着体の磁力によって、配設体を配設体支持具に対して脱落防止状態で簡単に設置することができる。したがって、本配設体支持装置は、壁内の所定位置で配設体支持具に対して配設体を容易に設置可能であり、造営材への配設体の設置作業をより一層改善することができる。さらに、磁着体が配設体の前面開口部から支持部に間接的に着脱可能であることにより、磁着体を配設体の底壁内面に容易に配置可能であると共に、(例えば、ビスによる本固定後に)前面開口部を介して磁着体を底壁内面から容易に取り外すことが可能である。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、配設体の底壁外面を支持部に当接させた状態で、底壁を介して磁着体を支持部に磁着することによって支持部が配設体を支持可能である。すなわち、本発明の配設体支持装置では、磁着体が所定強度の磁力を有しており、当該磁着体から放射される磁力線が配設体の底壁を貫通して、十分な強度で磁性体(磁性金属)を含む支持部に作用する。この磁力による磁着体と支持部との引力が、磁着体と支持部との間に配設体を挟持するための挟圧力として機能する。そして、当該磁着体が配設体底壁を介して支持部に間接的に磁着することによって配設体を支持部に支持させることができる。すなわち、本発明の配設体支持装置では、配設体の底壁外面を支持部の表面に宛がうだけで、磁着体の磁力によって、配設体を配設体支持具に対して脱落防止状態で簡単に設置することができる。したがって、本配設体支持装置は、壁内の所定位置で配設体支持具に対して配設体を容易に設置可能であり、造営材への配設体の設置作業をより一層改善することができる。さらに、磁着体には把持部が設けられていることにより、把持部を把持して磁着体を配設体底壁から容易に取り外すことができる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2の発明の効果に加えて、配設体の底壁内面には、磁着体を保持するための保持部が設けられていることにより、支持部に磁力が作用しない場合においても、保持部が磁着体を配設体底壁内面に落下しないように保持する。このため、保持部に磁着体が保持された状態で配設体を支持部に近接させることにより、磁着体で配設体を支持部に対して磁着することができる。したがって、造営材への配設体の設置作業をより一層改善することができる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1から3のいずれかの発明の効果に加えて、配設体の底壁外面に支持部が収容される凹部が設けられていることにより、支持部を凹部に収容した状態で磁着体を介して配設体を支持部に磁着可能である。そして、凹部の上下側壁面が支持部の上下の端縁部に当接することにより、配設体の上下方向(支持部の長手軸との直交方向)の移動を規制し、配設体が重みで支持部からずり落ちることを防止することができる。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1から4のいずれかの発明の効果に加えて、配設体が支持部に対してスライド可能に支持されることにより、配設体を支持部の長手方向に沿って側方スライドさせて配設体の位置調整を簡単に行うことができる。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1から5のいずれかの発明の効果に加えて、配設体の底壁には、ビスが挿通される貫通孔が設けられており、尚且つ、支持部には、ビスが螺入するビス孔が設けられている。すなわち、磁着体で配設体を支持部に支持(仮固定)した状態で、貫通孔及びビス孔にビスを螺着することで、配設体を配設体支持具に簡単に本固定することができる。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、請求項の発明の効果に加えて、磁着体には把持部が設けられていることにより、把持部を把持して磁着体を配設体底壁から容易に取り外すことができる。
【0024】
請求項8に記載の発明によれば、請求項1から7のいずれかの発明の効果を配設装置として発揮することができる。すなわち、本発明の配設装置では、配設体の底壁外面を支持部の表面に宛がうだけで、磁着体の磁力によって、配設体を配設体支持具に対して脱落防止状態で簡単に設置することができる。したがって、本配設装置は、壁内の所定位置で配設体支持具に対して配設体を容易に設置可能であり、造営材への配設体の設置作業をより一層改善することができる。
【0025】
請求項9に記載の発明によれば、配設体の底壁外面を支持部に当接させた状態で、底壁を介して磁着体を支持部に磁着することによって支持部が配設体を支持可能である。すなわち、本発明の配設体設置方法では、磁着体が所定強度の磁力を有しており、当該磁着体から放射される磁力線が配設体の底壁を貫通して、十分な強度で磁性体(磁性金属)を含む支持部に作用する。この磁力による磁着体と支持部との引力が、磁着体と支持部との間に配設体を挟持するための挟圧力として機能する。そして、当該磁着体が配設体底壁を介して支持部に間接的に磁着することによって配設体を支持部に支持させることができる。すなわち、本発明の配設体設置方法では、配設体の底壁外面を支持部の表面に宛がうだけで、磁着体の磁力によって、配設体を配設体支持具に対して脱落防止状態で簡単に設置することができる。したがって、本配設体設置方法は、壁内の所定位置で配設体支持具に対して配設体を容易に設置可能であり、造営材への配設体の設置作業をより一層改善することができる。さらに、磁着体が配設体の前面開口部から支持部に間接的に着脱可能であることにより、磁着体を配設体の底壁内面に容易に配置可能であると共に、(例えば、ビスによる本固定後に)前面開口部を介して磁着体を底壁内面から容易に取り外すことが可能である。
【0026】
請求項10に記載の発明によれば、磁着体によって支持部に配設体を仮固定(磁着)した状態で、配設体を支持部にビスで固定するため、配設体を手で所定位置に維持することなく、配設体を支持部にビスで簡単に本固定することができる。さらに、配設体を支持部にビスで固定した後、磁着体を配設体の前面開口部から取り外すことにより、配設体に配設され得る電気系統への磁着体の磁力による悪影響を排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態の配設体支持装置及び配設装置による配設体支持構造の斜視図。
図2図1の配設体支持具の斜視図。
図3図2の配設体支持具の(a)平面図、(b)正面図及び(c)側面図。
図4図1の配線ボックス(配設体)の斜視図。
図5図4の配線ボックスの(a)正面図、(b)背面図、(c)側面図。
図6図5の(a)C−C断面図、及び、(b)D−D断面図。
図7図1の磁着体の斜視図。
図8図7の磁着体の(a)正面図、(b)側面図及び(c)縦断面図。
図9図1の配設体支持構造の(a)A−A断面図、(b)B−B断面図。
図10】本発明の一実施形態における配設装置(配設体支持装置)の分解斜視図。
図11】一実施形態の配設体の設置方法における各工程を示す模式図。
図12】一実施形態の配設体の設置方法における一工程(別例)を示す模式図。
図13】本発明の別実施形態(変形例1)の配設体支持構造を示す斜視図。
図14】本発明の別実施形態(変形例2、3)の磁着体を示す斜視図。
図15】本発明の別実施形態(変形例4)の配設体を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。
【0029】
図1は、本発明に係る一実施形態の配設装置10、配設体支持装置100による配設体支持構造の斜視図である。本実施形態の配設体支持構造では、配設体としてスイッチやコンセント等の配線器具を壁表に設置するための配線ボックス120が造営材Pに対して設置されている。配設装置10は、造営材Pに所定高さで固定された配設体支持具110と、当該配設体支持具110に支持(又は固定)された配線ボックス120と、該配線ボックス120の底壁121内面に配置された磁着体130と、を備える。また、配設体支持装置100は、配線ボックス120を配設体支持具110に支持するための装置であって、配設体支持具110及び磁着体130からなり、配線ボックス120を含まない概念である。そして、配設体支持構造は、造営材Pに対して固定及び設置された配設装置100及び配設装置10を含む全体構造を示す概念である。
【0030】
図1に示すとおり、配設装置10では、固定部111を介して造営材Pの側面に固定された配設体支持具110の支持部112表面に配線ボックス120の底壁121外面が当接しており、尚且つ、配線ボックス120の底壁121内面に磁着体130が配置されている。すなわち、配線ボックス120の底壁121外面を支持部112表面に当接させた状態で、底壁121を介して磁着体130が支持部112に磁着することによって、支持部112が磁力で配線ボックス120に支持されている。以下、本配線装置10を構成する配設体支持具110、配線ボックス120及び磁着体130について図2〜8を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態の配設体支持構造では、造営材Pが軽量型鋼材であるが、本発明はこれに限定されず、例えば、造営材を木柱等の他の形態としてもよい。
【0031】
図2は、配設体支持具110の斜視図であり、図3(a)〜(c)は、当該配設体支持具110の正面図、平面図及び側面図である。図2及び3に示すとおり、配設体支持具110は、その基端から先端まで延びる平面視L字形状の長板であり、その基端に位置し、造営材Pの側面に当接するように配置される固定部111と、当該固定部111からその先端(又は造営材Pの側方)に向けて長手状に延設された支持部112とからなる。換言すると、当該配設体支持具110はL字形状に屈曲しており、短片状の固定部111と長片状の支持部112とが略直角に連結されている。
【0032】
当該配設体支持具110の固定部111には、2つの固定孔111aが穿設されており、当該固定孔111aを介して造営材Pの側面にビスで該配設体支持具110を固定可能である。また、配設体支持具110の支持部112には、配線ボックス120を固定するための複数の長孔状のビス孔112aが長手方向に沿って穿設されている。そして、支持部112の幅方向の上下端縁がその裏面側に折れ曲がり、上下に一対の端縁部113を形成している。また、支持部112には、中央よりも先端側の所定位置で切断補助部114が形成されている。当該切断補助部114は幅方向に延びる2つの切り欠きであり、この切断補助部114で支持部112を折り曲げることにより、支持部112を2つに簡単に切断して、支持部112の長さを調整することができる。さらに、支持部112の表面には目盛り部115が刻印されており、配線ボックス120を取り付ける位置の目安として用いられる。
【0033】
なお、本実施形態の配設体支持具110は、金属材料を屈曲及び穿設加工することにより得られた。そして、当該金属材料は磁着体(磁石)が吸着可能な強磁性体から選択可能である。この強磁性金属材料として、硬度、耐腐食性等を踏まえると、例えば、フェライト系又はマルテンサイト系ステンレス鋼(SUS400系)等の非磁性でないステンレス鋼から選択されることが好ましい。しかしながら、本発明は、一実施形態の製法及び材質に限定されるものではない。例えば、配設体支持具全体を強磁性金属とすることなく、磁着体が磁着する支持部の一部だけを強磁性金属で形成し、他の部分を合成樹脂等の非磁性材料で形成することも可能である。
【0034】
また、本実施形態では、配設体支持具110の支持部112と略直角に屈折した固定部111を介して配設体支持具110が片持ち状態で造営材Pに固定される。しかしながら、本発明はこの形態に限定されることはない。例えば、固定部は、造営材Pに固定可能であればよく、L字屈曲させずに平面視直線状の形態とすることも可能である。あるいは、支持部の両端に固定部を設け、配設体支持具を2本の造営材の間に両持ち状態で固定することも可能である(変形例1参照)。すなわち、当業者であれば、配設体支持具の形状及び寸法を任意に設計することが可能である。
【0035】
図4は、本実施形態の配線ボックス120の斜視図であり、図5(a)〜(c)は、当該配線ボックス120の正面図、背面図及び側面図であり、尚且つ、図6(a)及び(b)は当該配線ボックス120のC−C横断面図及びD−D縦断面図である。
【0036】
図4及び図5に示すとおり、配線ボックス120は、底壁121及び側壁122からなる周壁を有する中空筺体である。当該配線ボックス120の正面(前面)には、側壁122先端に縁取られた前面開口部123が形成されている。当該前面開口部123には、その略中央に開口123aが設けられている。そして、配線器具(図示せず)をビスで取り付けるための器具取付部124が、上下一対の孔として該開口123aの縁部に穿設されている。さらに、側壁122には、ケーブル等を挿通するための孔を打ち抜き可能とする複数のノックアウト部122aが設けられている。
【0037】
また、図5(b)(c)に示すとおり、配設体支持具110の支持部112をスライド可能に収容する凹部125が、配線ボックス120の底壁121外面に凹設されている。他方、この凹部125によって底壁121内面が隆起している。当該凹部125は、一方の側壁122から対向する他方の側壁121まで一定の幅で直線状に延在している。また、この凹部125は、支持部112表面に当接する(底壁121外面の一部である)後壁面125aと、該後壁面125aから後方に略直角に延びる支持部112の上下端縁部113に当接可能な上側壁面125b及び下側壁面125cとによって形成されている。これら上側壁面125b及び下側壁面125c間に形成された開口縁は、支持部112が通過(又は挿通)可能な幅で形成されている。すなわち、平行に相対する上側壁面125b及び下側壁面125c間の距離は、支持部112を凹部125に正面(又は背面)から収容可能であるように、支持部112の短幅よりも大きく設定されている。そして、支持部112の凹部125内でのがたつきを抑えるべく、上記距離と支持部112の幅がほぼ等しく設定することが好ましい。また、当該凹部125に支持部112を収容した状態で、支持部112に対して配線ボックス120を側方にスライドさせることができる。後述するとおり、凹部125の上側壁面125b及び下側壁面125cは、支持部112の上側又下側の端縁部113に当接し、配線ボックス120を支持部112の長手方向に直線的にスライドさせる動作をガイドするように機能する。
【0038】
図5(a)及び図6(a)(b)に示すとおり、配線ボックス120の底壁121内面には、2つの保持部126が凹設されている。これら保持部126は、(底壁121を打ち抜かないように)円形状に凹設された被嵌合部126aと、当該被嵌合部126aに連設すると共にその内周壁の一部が切り欠かれて形成された細溝部126bとをそれぞれ備える。円形状の被嵌合部126aは、後述する磁着体130の円形状の嵌合部131aと嵌合可能な形状及び寸法で形成されている。また、細溝部126bは、保持部126の被嵌合部126aに嵌着された磁着体を取り外すために治具を挿入するための溝であり、例えば、把持部を備えない磁着体(図14(b)参照)等を使用した場合に用いられる。
【0039】
また、2つの保持部126は、凹部125の内面の隆起上に所定間隔で並設されていると共に、凹部125の上側壁面125b及び下側壁面125c間の略中間位置にそれぞれ配置されている。すなわち、配設体支持具110の支持部112が凹部125内に収容されたときに、2つの保持部126が支持部112前方に配置されるように設計されている。そして、保持部126を形成すべく、底壁121の内面が凹設されているため、保持部126の底部は、底壁121の他の部分と比較して薄い壁厚で形成されている。
【0040】
さらに2つの保持部126の略中央には、保持部126の径よりも小さい径の孔として、本固定用のビスを貫通させるための貫通孔127がそれぞれ穿設されている。この貫通孔127は、上側壁面125b及び下側壁面125c間の略中間に位置しており、凹部125に収容した支持部112のビス孔112aにほぼ合致するように配置されている。なお、本実施形態では、貫通孔127が予め穿設されているが、貫通孔127を閉塞するように薄壁を張設し、必要に応じて貫通孔を穿設することも可能である。
【0041】
本実施形態の配線ボックス120は、合成樹脂で成形されたものであるが、本発明の配設体はこれに限定されることはない。例えば、配設体本体を金属製とすることも可能であり、当業者であればその材質等を任意に選択して構成可能である。また、各構成要素の数量、位置等を任意に設計することも可能である。さらに、本実施形態では、配設体を配線ボックス120として説明したが、本発明の配設体は、器具や管材や線材等を一般的に配設可能なものを含む概念であり、当該配線ボックスの用途に限定されることはない。すなわち、本発明の技術思想の範囲内であれば、配設体を例えば、配管ボックス、可撓管を把持するための管クリップ、継手又はジョイントボックス等に変更することも可能である。
【0042】
図7は、本実施形態の磁着体130の斜視図であり、且つ、図8(a)〜(c)は、当該磁着体130の正面図、側面図及び縦断面図である。
【0043】
図7及び図8に示すとおり、側面視T字形状の磁着体130は、所定長さで形成された筒状部131と、当該筒状部131の一端から張り出した把持部132と、当該筒状部131の内部でその他端に配置された磁石133とを備える。本実施形態では、筒状部131及び把持部132は一体的に成形された合成樹脂からなり、該筒状部131の内部に、磁石133が圧入されている。
【0044】
図8(a)に示すとおり、把持部132は、4隅が面取りされた矩形状の平板であり、磁着体130を配線ボックス120の保持部126から引き抜くときに指で摘まむことが可能な大きさを有している。また、把持部132には、ビスを一時的に保持するための一対のビス保持部132aが穿設されており、一対のビス保持部132aに2本のビス134(図7参照)を挿着してもよい。このビス134は、配線ボックス120の貫通孔127及び支持部112のビス孔112aに貫通して、配線ボックス120を配設体支持具110に本固定するものである。さらに、把持部132の両側縁には、第2のビス保持部として半円形状の一対の切り欠き部132bが切り欠かれている。この切り欠き部132bは、ビス保持部132aの代わりにビス134を保持可能であるが、ビス保持部132a及び切り欠き部132bの全てを使用することで、最大4本のビス134を保持することも可能である。
【0045】
図8(b)に示すとおり、筒状部131の先端には、上述した配線ボックス120の被嵌合部126aと嵌合するための嵌合部131aが設けられている。この嵌合部131aは、円形に凹設された被嵌合部126aとほぼ同じ径で形成されている。また、図8(c)に示すとおり、筒状部131は中空状の筒体であり、その内部に磁石133を圧入するための磁石圧入部131bを有する。当該磁石圧入部131bによって、磁石133が筒状部131の先端に固定されており、筒状部131の下端開口からその磁石133の外面が臨んでいる。
【0046】
本実施形態では、磁石133は、配線ボックス120の底壁121を磁着体130と配設体支持具110の支持部112との間に挟持して支持できるように、十分に強い磁力を有する。そして、当該磁石133には、非常に強力な磁力を有するネオジム磁石を採用することが好ましい。しかしながら、本発明の磁着体として、サマリウムコバルト磁石等の他の希土類磁石や、酸化鉄を主成分とするフェライト磁石等を採用することも可能である。すなわち、配設体を磁力で支持部に支持することに必要な磁力は、配設体の重量や配設体底壁の厚みに比例するため、これら条件に応じて、当業者であれば、磁着体(磁石)の材質及び寸法を適宜選択することが可能である。
【0047】
上述の説明を踏まえて、図9(a)(b)を参照して、図1の配設体支持構造をより詳細に説明する。図9(a)(b)は、図1のA−A断面図及びB−B断面図である。
【0048】
図9(a)に示すとおり、本実施形態の配設体支持構造では、配線ボックス120の凹部125内に支持部112を収容していると共に配線ボックス120の底壁121外面(後壁面125a)が支持部112の表面に当接している。また、図9(b)に示すとおり、1つの磁着体130が底壁121の保持部126に保持されている。より詳細には、磁着体130の筒状部131先端の嵌合部131aと、保持部126の被嵌合部126aとが嵌合関係にある。このとき、支持部112の正面に磁着体130が位置している。そして、底壁121に配置された磁着体130先端の磁石133からの磁力が、底壁121の薄肉部を介して磁性金属である支持部112に作用する。その結果、磁着体130の磁石131と支持部112との間に引力が発生し、磁着体130と支持部112とが協働して配線ボックス120の底壁121を挟圧する。この配設体支持構造では、凹部125の上下側壁面125b、cが支持部112の上下端縁部113に当接することにより、配線ボックス120の上下方向(支持部112の長手軸との直交方向)の移動を規制し、配線ボックス120が重みで支持部112からずり落ちることを防止している。すなわち、本実施形態の配設体支持構造では、ビスを使用しなくても、磁着体130の磁力によって配設体支持具110が配線ボックス120を安定的に支持している。
【0049】
なお、図1及び図9の実施形態では、1つの磁着体130を1つの保持部126に配置しているが、より強固に磁着すべく、2つの磁着体130を両方の保持部126に配置することも可能である。また、本実施形態では、支持部112の表面に配線ボックス120が支持されているが、支持部112の背面に取り付けるように配線ボックス120を配置することも可能である。
【0050】
次に、図10及び図11を参照して、配設体設置方法を説明する。図10は、本実施形態の配設体支持構造の分解斜視図である。なお、図10及び図11の説明では、磁着体130のビス保持部132aで本固定用のビス134を保持している。最初に、壁材Wに設けられる穿孔Hの位置(高さ)に合わせて配設体支持具110を固定する高さを設定して、配設体支持具110の固定部111を配置する位置を造営材P側面に罫書く。当該罫書きに沿って配設体支持具110を造営材Pに宛がい、造営材P側面に配設体支持具110の固定部111に設けられた固定孔111aにビスを貫通させることにより、配設体支持具110を造営材Pに固定する。
【0051】
次いで、図11(a)に示すとおり、保持部126に磁着体130を嵌合した状態の配線ボックス120を、前面開口部123を壁表側に臨ませると共にその底壁121外面を支持部112表面に対向させて、支持部112に近付ける。そして、配線ボックス120の凹部125内に支持部112を収容することで、磁着体130の磁石133が支持部112に底壁121の薄肉部を隔てて十分に近接する。その結果として、磁着体130の磁力によって磁着体130と支持部112とが協働して配線ボックス120の底壁121を挟持して、配線ボックス120が支持部111に支持される。このようにして、図1の配設体支持構造が構築される。なお、本設置方法では、予め磁着体130を保持部126で保持した状態で、配線ボックス120を支持部112に近接させたが、配線ボックス120を支持部112に近接させた後、磁着体130を配線ボックス120の底壁121内面に配置してもよい。
【0052】
続いて、図11(b)及び(c)を参照して、配設体支持構造の構築後に壁材Wを立設して配線ボックス120を支持部112に本固定する、本設置方法の追加の工程を説明する。配設体支持構造を構築した後、配線ボックス120の前面開口部123正面側及び底壁121外面側に壁材Wを立設する。そして、壁材Wの所定位置を特定して、ホルソー等で円形又は長円形状等の穿孔Hを形成する。ここで、壁材Wの構築時に造営材Pが側方に移動することがあるため、穿孔Hと前面開口部123との位置関係が側方にずれてしまう虞がある。このような場合、図11(b)に示すように、穿孔Hから手を入れて、支持部112に磁着した配線ボックス120を支持部112の長手方向に沿って側方スライドさせることにより、配線ボックス120の前面開口部123を穿孔Hを介して壁表に臨ませることができる。すなわち、支持部112を凹部125に収容した状態では、当該凹部125の上側及び下側壁面125b、cが支持部112の相対移動をガイドするため、配線ボックス120を長手方向に沿って直線的に側方スライドさせて位置調整することが容易である。なお、磁力によって配線ボックス120が長手方向に不意に動かないように支持部112に支持されているが、配線ボックス120を意図的にスライドさせる場合には、支持部112及び配線ボックス120の当接面が互いに平坦面であるので、両者を滑らかに相対スライドさせることが可能である。
【0053】
そして、配線ボックス120を支持部112上の所定位置に配置した後、配線ボックス120を配設体支持具110に本固定する。この配置形態では、一方の保持部126に1つの磁着体130が脱着可能に嵌合し、尚且つ、当該磁着体130のビス保持部132aには、本固定用の2本のビス134が挿着している。また、この支持構造において、配線ボックス120の貫通孔127と支持部112のビス孔112aとが合致している。
【0054】
図11(c)に示すとおり、配線ボックス120の前面開口部123を介して、一方の保持部126に配置された磁着体130からビス134を取り外し、他方の保持部126内の貫通孔127に該ビス134を挿通すると共にビス孔112aに該ビス134を螺入させることにより、ビス134で配線ボックス120を配設体支持具110に部分的に固定する。すなわち、磁着体130によって支持部112に配線ボックス120を仮固定(磁着)した状態で、配線ボックス120を支持部112にビス134で固定する作業を行うことができるため、配線ボックス120を手で持って所定位置に維持することなく、配線ボックス120の貫通孔127及び支持部112のビス孔112aにビス134を簡単に螺着することができる。
【0055】
続いて、図11(d)に示すとおり、配線ボックス120の前面開口部123から手を入れ、磁着体130の把持部132を指で摘まんで、磁着体130を保持部126から引き抜く。なお、磁着体130が配線ボックス120内に残存した場合、配設される配線器具や電子機器などの電気系統に磁着体130による強力な磁場が悪影響を及ぼす虞があるため、磁着体130を配線ボックス120の底壁121内面から離脱させることが好ましい。そして、磁着体130を引き抜いた状態で、残り1本のビス134を磁着体130から取り外し、当該ビス134を残りの保持部126内の貫通孔127及び(対応する)ビス孔112に螺着することにより、2本のビス134で配線ボックス120を配設体支持具110に本固定することができる。
【0056】
最後に、図示しないが、配線ボックス120の側壁122のノックアウト部122aを打ち抜いて形成した孔を介してボックス内部に引き込まれたケーブルに接続された配線器具を配線ボックス120の器具取付部124にビスで固定することにより、壁裏に配線構造を構築可能である。
【0057】
なお、本発明の配設体設置方法は、上記工程順序に限定されず、必要に応じて相互に入れ替え、又は、不要な工程を省略することが可能である。
【0058】
上述のとおり、配線ボックス120の一般的な設置方法を説明したが、上記配設体設置方法の例外として、本配設体支持装置100では、予め壁表側に壁材Wが立設した状態でも配線ボックス120を支持部112に対して簡単に配置することが可能である。図12は、配線ボックス120を配設体支持具110に配置する前に少なくとも壁表側に壁材Wが立設された場合において、配線ボックス120を支持部112に磁着する工程を示した模式図である。
【0059】
図12のように壁表側の壁材Wが立設したと共に造営材Pに配設体支持具110が固定された状態では、壁表空間から配設体支持具110の支持部112が壁材Wで遮蔽されている。そのため、この状態では、壁表側から配線ボックス120を支持部112に配置する工程(図11(a)参照)を実施することは事実上不可能である。例えば、従来技術(特許文献1)では、配線ボックス120を壁表側から力を込めて押圧して支持部112に取り付けることを前提としており、壁材Wが立設した状態では、配線ボックス120に後方への強い力を加えることができず、配線ボックス120を支持部112側に押圧することが非常に困難であった。そのため、配線ボックス120を配設体支持具110に取り付けるために、壁材Wを一旦取り壊し、あるいは、配設体支持具110を造営材Pから取り外すことが必要となる場合があった。
【0060】
これに対して、本配設体支持装置100では、図12に示すとおり、配設体支持具110の背面側の空間(又は背面側の壁材が立設された場合には上方の空間)から配線ボックス120を把持及び操作し、配線ボックス120の前面開口部123を壁材Wの裏面に当接させつつ、支持部112に直交方向から近接させる。そして、配線ボックス120の直交方向の移動で、支持部112を凹部125内に収容させる。このとき、配線ボックス120の保持部126に磁着体130が保持されていることにより、磁着体130が支持部112に底壁121を介して磁力で吸着し、配線ボックス120を配設体支持具110に(支持部112側に配線ボックス120を押圧することなく)簡単に支持させることができる。すなわち、本実施形態の配設体支持装置100では、壁表側に壁材Wが設置されていたとしても、壁材Wと支持部112との間の配置空間に配線ボックス120をねじ込んで、磁着体130の磁力で配線ボックス120を支持部112に磁着することにより、配設体支持構造を簡単に構築することができる。
【0061】
以下、本発明に係る一実施形態の配設装置10、配設体支持装置100及び配設体設置方法における作用効果について説明する。
【0062】
本実施形態の配設装置10、配設体支持装置100及び配設体設置方法では、配線ボックス120の底壁121外面を支持部112に当接させた状態で、底壁121を介して磁着体130を支持部112に磁着することによって該支持部112に配線ボックス120を支持可能である。すなわち、磁着体130が所定強度の磁力を有しており、当該磁着体130から放射される磁力線が底壁121(薄肉部)を貫通して、十分な強度で磁性金属からなる支持部112表面に作用する。この磁力による磁着体130と支持部112との引力が、磁着体130と支持部112との間に配線ボックス120の底壁121を挟持するための挟圧力として機能する。そして、当該磁着体130が底壁121を介して支持部112に間接的に磁着することによって配線ボックス120を支持部112に支持させることができる。また、造営材Pに固定された配設体支持具110の支持部112に対して、その前後及び上下方向から近接させて配線ボックス120を配設体支持具110に磁着することができる。そのため、配設体支持具110周囲のいずれかの空間が制限されている場合、空いている空間から配線ボックス120を操作して配設体支持具110に対して簡単に設置することができる。すなわち、本実施形態では、(圧入のための押圧力を加えることなく、あるいは、ビスを使用することをなく)配線ボックス120の底壁121外面を支持部112の表面に宛がうだけで、磁着体130の磁力によって、配線ボックス120を配設体支持具110に対して、脱落を防止しつつ、尚且つ、長手方向に不意に移動しないように簡単に設置することができる。
【0063】
本発明の一実施形態を説明したが、本発明の配設体支持装置、配設設置及び配設体設置方法の形態は、上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態では、磁着体130が保持部126に嵌合により保持されるが、嵌合の代わりに、粘着や磁着等によって保持することも可能である。また、本発明は、底壁を介して磁着体が支持部に磁着可能であればよく、必ずしも配設体に凹部や保持部を設けなくてもよい。さらに、配設体支持具の形状は、上記実施形態の配設体支持具110に限定されない。例えば、配設体支持具の支持部を幅狭の棒体のように構成してもよい。すなわち、本発明の配設体支持装置では、磁着体が支持部に磁着可能であれば、支持部の幅や厚みに依らずに、配設体を支持部に支持させることができる。以下、本発明の別実施形態の例示として変形例1〜4を説明する。
【0064】
(変形例1)
一実施形態の配設体支持装置100は、片持ち用の配設体支持具110を使用したが、図13の配設体支持装置200のように両持ち用の配設体支持具210を採用してもよい。この配設体支持具210は、長手状の支持部212の両端に固定部211を有する。そして、2本の造営材Pの間に、2つの固定部211を介して、配設体支持具210が架設されている。磁着体130により、配線ボックス120を、壁表側の空間又は上下空間から支持部212の任意の位置に磁着することが可能である。
【0065】
(変形例2)
また、本発明の磁着体は、上記実施形態の磁着体130の形態に限定されない。例えば、図14(a)の磁着体230は、2つの保持部126に同時に嵌合可能であるように、先端が2又に別れた本体部231と、1つの把持部232と、当該本体部231先端に配置された2つの磁石233とを備える。本体部231先端は、2つの嵌合部231aを形成し、配線ボックス120の両保持部126にそれぞれ嵌合可能である。当該磁着体230は、配設体の底壁の厚みや重量に応じて、より強力な吸着力が必要な場合に使用することが可能である。
【0066】
(変形例3)
あるいは、図14(b)の磁着体330のように、筒状部や把持部を設けない磁石333だけの簡易な形状とすることも可能である。この形態では、配線ボックス120の保持部126の細溝部126bに先端が鋭利なドライバ等の工具や治具を挿し込むことにより保持部126に嵌合した磁着体330を取り外すことができる。
【0067】
(変形例4)
一実施形態では、配線ボックス120の保持部126の中心に貫通孔127が設けられているが、本発明はこれに限定されない。図15の配線ボックス220では、底壁221の略中央に1つの保持部226が設けられており、該保持部226の両脇に、2つの貫通孔227が設けられている。この形態では、保持部226で磁着体130を保持した状態で、両方の貫通孔127にそれぞれビス134を螺着することが可能である。
【0068】
本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。
【符号の説明】
【0069】
10 配設体構造
100 配設体支持装置
110 配設体支持具
111 固定部
111a 固定孔
112 支持部
112a ビス孔
113 縁端部
120 配線ボックス(配設体)
121 底壁
122 側壁
123 前面開口部
124 器具取付部
125 凹部
125a 後壁面
125b 上側壁面
125c 下側壁面
126 保持部
126a 被嵌合部
126b 細溝部
127 貫通孔
130 磁着体
131 筒状部
131a 嵌合部
131b 磁石圧入部
132 把持部
132a ビス保持部
132b 切り欠き部
133 磁石
P 造営材
W 壁材
H 穿孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15