特許第6106122号(P6106122)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6106122
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】溶接検査ロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   B23K 31/00 20060101AFI20170316BHJP
   B25J 13/00 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   B23K31/00 K
   B25J13/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-76423(P2014-76423)
(22)【出願日】2014年4月2日
(65)【公開番号】特開2015-196187(P2015-196187A)
(43)【公開日】2015年11月9日
【審査請求日】2016年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100159684
【弁理士】
【氏名又は名称】田原 正宏
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 英行
(72)【発明者】
【氏名】小田 勝
【審査官】 青木 正博
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−332906(JP,A)
【文献】 特開2014−046449(JP,A)
【文献】 特開平08−309295(JP,A)
【文献】 特開2015−009253(JP,A)
【文献】 米国特許第04579380(US,A)
【文献】 米国特許第04819978(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 31/00
B25J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーボモータによって駆動される2つの爪をアーム先端に備えたロボットを備えており、溶接して取付けられた溶接部品を含むワークの溶接検査を実行するロボットシステムであって、
前記溶接部品に対して、前記2つの爪によって所定の力で負荷を付与したときの、前記2つの爪の相対位置を検出する位置検出部と、
前記相対位置と所定の基準相対位置との間の誤差を計算する誤差計算部と、
前記誤差が所定の閾値以下であるときに前記ワークが良品であると判定するとともに、前記誤差が前記所定の閾値よりも大きいときに前記ワークが不良品であると判定する判定部と、
を備える、ロボットシステム。
【請求項2】
前記ワークの種類に応じて、前記溶接部品に負荷を付与するときの力の大きさと、前記基準相対位置と、前記所定の閾値と、のうちの少なくともいずれか1つを変更する設定変更部をさらに備える、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
サーボモータによって駆動される2つの爪をアーム先端に備えたロボットを備えており、溶接して取付けられた溶接部品を含むワークの溶接検査を実行するロボットシステムであって、
前記2つの爪が前記溶接部品にそれぞれ接触したときの前記2つの爪の第1の相対位置を検出するとともに、前記溶接部品に対して、前記2つの爪によって所定の力で負荷を付与したときの、前記2つの爪の第2の相対位置を検出する位置検出部と、
前記第1の相対位置と前記第2の相対位置との間の変化量を計算する変化量計算部と、
前記変化量と所定の基準変化量との間の誤差を計算する誤差計算部と、
前記誤差が所定の閾値以下であるときに前記ワークが良品であると判定するとともに、前記変化量が前記所定の閾値よりも大きいときに前記ワークが不良品であると判定する判定部と、
を備える、ロボットシステム。
【請求項4】
前記ワークの種類に応じて、前記溶接部品に負荷を付与するときの力の大きさと、前記基準変化量と、前記所定の閾値と、のうちの少なくともいずれか1つを変更する設定変更部をさらに備える、請求項3に記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記2つの爪で前記ワークを把持し、前記ワークを所定の箇所まで搬送するようロボットを制御する搬送制御部をさらに備えており、
前記搬送制御部は、良品であると判定された前記ワークを第1の箇所まで搬送するとともに、不良品であると判定された前記ワークを前記第1の箇所とは異なる第2の箇所まで搬送するようにロボットを制御するように構成される、請求項1から4のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項6】
前記ワークの種類に応じて、前記溶接部品に負荷を付与する前後の前記2つの爪の開口幅を変更する開口幅変更部をさらに備える、請求項1から5のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接検査を実行するロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ワークに溶接された溶接部品の溶接品質を検査するロボットシステムが公知である。例えば、特許文献1には、ロボットアームの先端に取付けられた超音波センサを使用して溶接品質を検査する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−278809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示される関連技術では、超音波センサ及びそれを制御するセンサ制御装置が必要になるので、構成が複雑である。
【0005】
そこで、簡素な構成でありながら、ワークに溶接された溶接部品の溶接品質を検査できるロボットシステムが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の1番目の態様によれば、サーボモータによって駆動される2つの爪をアーム先端に備えたロボットを備えており、溶接して取付けられた溶接部品を含むワークの溶接検査を実行するロボットシステムであって、前記溶接部品に対して、前記2つの爪によって所定の力で負荷を付与したときの、前記2つの爪の相対位置を検出する位置検出部と、前記相対位置と所定の基準相対位置との間の誤差を計算する誤差計算部と、前記誤差が所定の閾値以下であるときに前記ワークが良品であると判定するとともに、前記誤差が前記所定の閾値よりも大きいときに前記ワークが不良品であると判定する判定部と、を備える、ロボットシステムが提供される。
本願の2番目の態様によれば、1番目の態様に係るロボットシステムが、前記ワークの種類に応じて、前記溶接部品に負荷を付与するときの力の大きさと、前記基準相対位置と、前記所定の閾値と、のうちの少なくともいずれか1つを変更する設定変更部をさらに備えている。
本願の3番目の態様によれば、サーボモータによって駆動される2つの爪をアーム先端に備えたロボットを備えており、溶接して取付けられた溶接部品を含むワークの溶接検査を実行するロボットシステムであって、前記2つの爪が前記溶接部品にそれぞれ接触したときの前記2つの爪の第1の相対位置を検出するとともに、前記溶接部品に対して、前記2つの爪によって所定の力で負荷を付与したときの、前記2つの爪の第2の相対位置を検出する位置検出部と、前記第1の相対位置と前記第2の相対位置との間の変化量を計算する変化量計算部と、前記変化量と所定の基準変化量との間の誤差を計算する誤差計算部と、前記誤差が所定の閾値以下であるときに前記ワークが良品であると判定するとともに、前記変化量が前記所定の閾値よりも大きいときに前記ワークが不良品であると判定する判定部と、を備える、ロボットシステムが提供される。
本願の4番目の態様によれば、3番目の態様に係るロボットシステムが、前記ワークの種類に応じて、前記溶接部品に負荷を付与するときの力の大きさと、前記基準変化量と、前記所定の閾値と、のうちの少なくともいずれか1つを変更する設定変更部をさらに備えている。
本願の5番目の態様によれば、1番目から4番目のいずれかの態様に係るロボットシステムが、前記2つの爪で前記ワークを把持し、前記ワークを所定の箇所まで搬送するようロボットを制御する搬送制御部をさらに備えており、前記搬送制御部は、良品であると判定された前記ワークを第1の箇所まで搬送するとともに、不良品であると判定された前記ワークを前記第1の箇所とは異なる第2の箇所まで搬送するようにロボットを制御するように構成される。
本願の6番目の態様によれば、1番目から5番目のいずれかの態様に係るロボットシステムが、前記ワークの種類に応じて、前記溶接部品に負荷を付与する前後の前記2つの爪の開口幅を変更する開口幅変更部をさらに備えている。
【0007】
これら及び他の本発明の目的、特徴及び利点は、添付図面に示される本発明の例示的な実施形態に係る詳細な説明を参照することによって、より明らかになるであろう。
【発明の効果】
【0008】
上記構成を有するロボットシステムによれば、溶接部品に所定の負荷を付与したときの溶接部品の変位量に基づいて、溶接品質を判定する。それにより、溶接品質を検査するための専用のセンサ及びその制御装置が不要になるので、ロボットシステムの構成が簡素化される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係るロボットシステムの全体の構成を示す斜視図である。
図2】溶接検査の対象となるワークを示す斜視図である。
図3A】ワークの周囲を拡大して示す部分拡大図である。
図3B】ワークの周囲を拡大して示す部分拡大図である。
図4】一実施形態に係るロボットシステムの機能ブロック図である。
図5】ワークを搬送するためにワークをハンドによって保持した状態を示す側面図である。
図6】他の形態を有するワークを示す斜視図である。
図7図4のロボットシステムによって溶接検査を実行する際の工程の流れを示すフローチャートである。
図8】別の実施形態に係るロボットシステムの機能ブロック図である。
図9図8のロボットシステムによって溶接検査を実行する際の工程の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図示される実施形態の構成要素は、本発明の理解を助けるために縮尺が適宜変更されている。また、同一又は対応する構成要素には、同一の参照符号が複数の図面にわたって使用される。
【0011】
図1は、一実施形態に係るロボットシステム10の全体の構成を示す斜視図である。ロボットシステム10は、溶接部品を含むワークの溶接品質を検査する溶接検査ロボットシステムである。ロボットシステム10は、図示されないロボット制御装置によって制御されるロボット20を備えている。
【0012】
ロボット20は、回転可能な胴部を有するベース22と、ベース22に対して回転可能に取付けられる下腕24と、下腕24に対して回転可能に取付けられる上腕26と、上腕26に対して回転可能に取付けられる手首部28と、手首部28に取付けられるハンド30と、を備えている。図1に例示されるロボット20は六軸ロボットであるものの、任意の構成を有するロボットにも本発明は適用可能である。
【0013】
ハンド30は、ハンド30から突出して延在していて、互いに接近し、又は離間するように相対的に移動可能な一対の爪32を有している。爪32は、可動範囲内において任意の開口幅を有するようにサーボモータ34によって制御される。ハンド30の爪32は、溶接検査を実行する際に、所定の力で溶接部品に負荷を付与するように制御される。
【0014】
図2は、溶接検査の対象となるワーク50を示す斜視図である。ワーク50は、概ね直方体の形状を有する本体52と、本体52の上面52aに溶接された2つの溶接部品54と、を有している。各々の溶接部品54は、ワーク50に溶接された基部54aと、本体52の上面52aから離間するように基部54aから延在する板状の平板部54bと、をさらに有している。溶接部品54の基部54aは、例えばスポット溶接、レーザ溶接など公知の溶接方法によって本体52に溶接される。溶接部品54は、平板部54bが互いに平行に延在するように取付けられている。図示されたワーク50は一例にすぎず、当業者であれば、本発明を利用して他の形態を有するワークの溶接検査をも実行できることを認識するであろう。
【0015】
図3A及び図3Bは、ワーク50の周囲を拡大して示す部分拡大図である。溶接検査を実行する際、ロボット20は、先ず図3Aに示されるように、作業台56に載置されたワーク50に対して、ハンド30を所定の位置に位置決めする。このとき、ハンド30の爪32の間に溶接部品54がそれぞれ位置するようにハンド30が位置決めされる。
【0016】
そして、図3Bに示されるように、ハンド30の爪32は、互いに接近するように閉方向に駆動される。このとき、爪32を駆動するサーボモータ34は、所定のトルクで回転するよう制御される。トルクは、溶接検査を実行する際に溶接部品54に付与されるべき負荷に応じて決定される。閉方向に駆動される爪32は、溶接部品54の平板部54bの面に接触し、さらに、トルクの大きさに応じた所定の力で溶接部品54に負荷を付与するように駆動される。
【0017】
図4は、一実施形態に係るロボットシステム10の機能ブロック図である。図示されるように、ロボットシステム10は、位置検出部60と、誤差計算部62と、判定部64と、搬送制御部66と、開口幅変更部68と、設定変更部70と、を備えている。
【0018】
位置検出部60は、2つの爪32の相対的位置を検出する。本実施形態において、爪32は、サーボモータ34によって開閉するように駆動される。したがって、例えばサーボモータ34の回転位置を検出することによって、爪32の相対的位置を検出できる。サーボモータ34の回転位置は、例えばロータリエンコーダによって検出される。溶接検査を実行する際に、位置検出部60は、爪32が所定の力で溶接部品54に負荷を付与したときの爪32の相対位置を検出するように構成される。爪32の相対位置は、位置検出部60から誤差計算部62に出力される。
【0019】
誤差計算部62は、位置検出部60によって検出された爪32の相対位置と、予め定められる基準相対位置との間の誤差を計算する。基準相対位置は、例えば、溶接検査に合格したワーク50に対して、溶接検査と同一の条件で負荷を付与したときの爪32の相対位置である。したがって、基準相対位置は実験によって求められる。誤差計算部62によって計算された誤差は、判定部64に出力される。
【0020】
判定部64は、誤差計算部62によって計算された誤差と、予め定められる閾値とを比較し、誤差が閾値以下である場合、当該ワーク50を良品であると判定する。他方、誤差が閾値よりも大きい場合、判定部64は、当該ワーク50を不良品であると判定する。判定結果は、搬送制御部66に出力される。
【0021】
搬送制御部66は、溶接検査が完了したワーク50を、検査の結果に応じて所定の目標位置まで搬送するようにロボット20を制御する。良品であると判定されたワーク50は、例えば、次の工程のためにワーク50を搬送するコンベヤに移動させられる。他方、不良品であると判定されたワーク50は、廃棄又はリサイクルするためにワーク50を搬送するコンベヤに移動させられる。
【0022】
このとき、溶接検査に使用されたハンド30をワーク50の搬送時に使用することができる。図5は、ワーク50を搬送するためにワーク50をハンド30によって保持した状態を示す側面図である。図示されるように、ハンド30は、溶接検査を実行するときよりも爪32の開口幅が拡大されており、それにより、ワーク50の本体52を安定して把持するようになっている。このようにハンド30をワーク50の搬送時にも使用することでロボットシステム10の構成を簡素化できる。
【0023】
設定変更部70は、ワーク50の種類に応じて、爪32によって溶接部品54に負荷を付与する際の力の大きさ、基準相対位置、又は判定部64による判定に使用される閾値を変更する。ワーク50の溶接部品54の強度は、溶接のタイプ、溶接部品54の基部54aの寸法、材料、その他の要素により、変化する。また、用途に応じて溶接部品に要求される強度も異なる。したがって、設定変更部70によって変更されるべき各々の値は、ワーク50の種類に応じて実験により求められる。
【0024】
開口幅変更部68は、溶接部品54に負荷を付与する前後において、爪32の開口幅を変更する。爪32の開口幅は、サーボモータ34の回転位置を変更することによって任意に設定できる。しかしながら、溶接検査を実行する際に、爪32の開口幅が大きすぎたり、或いは小さすぎたりすると、爪32が周囲の物体と干渉する虞がある。
【0025】
図6を参照して開口幅変更部68の作用について説明する。図6は、他の形態を有するワーク50を示す斜視図である。図6に示されるワーク50には、4つの溶接部品541〜544が本体52に溶接されている。例えば、互いに反対側に位置する第1の溶接部品541と第4の溶接部品544との間に取付けられた第2の溶接部品542及び第3の溶接部品543に対して、図3に示されるように爪32を介して負荷を付与する場合を考える。この場合、溶接検査を実行するためにハンド30の2つの爪32を、第1の溶接部品541と第2の溶接部品542との間、並びに第3の溶接部品543と第4の溶接部品都544の間にそれぞれ位置決めする必要がある。しかしながら、爪32の開口幅が大きすぎると、爪32が、第1の溶接部品541又は第4の溶接部品544に干渉してワーク50を破損する虞がある。本実施形態によれば、ワーク50の種類に応じて開口幅変更部68によって爪32の開口幅を適切に設定することによって、爪32がワーク50などに干渉するのを防止できる。また、開口幅変更部68によって変更される爪32の開口幅は、溶接検査を実行した後に爪32を溶接部品54から離間する際の爪32の位置決めにも利用される。
【0026】
図7は、図4のロボットシステム10によって溶接検査を実行する際の工程の流れを示すフローチャートである。先ず、ステップS101において、ロボット20を制御して、検査対象となるワーク50の溶接部品54が爪32の間に位置するように、ハンド30を位置決めする。このときの爪32の開口幅は、開口幅変更部68によって変更された大きさであってもよい。
【0027】
続いて、ステップS102において、サーボモータ34を所定のトルクで回転させて、爪32を閉方向に駆動し、ワーク50の溶接部品54に負荷を付与する。このときのトルクの大きさは、溶接部品54に負荷を付与する際に要求される力の大きさに応じて実験的に定められる。負荷の大きさは、例えば、ワーク50の溶接部品54を弾性変形させるのに十分であり、かつ、塑性変形には至らない程度の大きさに設定される。
【0028】
ステップS103では、溶接部品54に負荷を付与した状態で、位置検出部60によって、爪32の相対位置を取得する。ステップS104において、誤差計算部62によって、先の工程で取得した爪32の相対位置と、基準相対位置との間の誤差を計算する。
【0029】
ステップS105では、判定部64によって、ステップS104で計算した誤差と、予め定められる閾値とを比較して、ワーク50が良品であるか、或いは不良品であるかを判定する。具体的には、誤差が閾値以下である場合は、ステップS106に進み、ワーク50は良品であると判定する。他方、誤差が閾値よりも大きい場合は、ステップS107に進み、ワーク50は不良品であると判定する。
【0030】
図7には示されていないものの、ステップS106又はステップS107に続いて、搬送制御部66によってロボット20を制御し、良品か、又は不良品であるかに応じてそれぞれ異なる位置までワーク50を搬送してもよい。
【0031】
本実施形態に係るロボットシステムによれば、以下のような効果が得られる。
(1)ハンドの爪を介して所定の力で溶接部品に負荷を付与する際の溶接部品の変位量に基づいて、溶接検査が実行される。したがって、溶接検査用の特別なセンサ及びその制御装置が不要になるので、ロボットシステムの構成を簡素化できる。
【0032】
(2)サーボモータで制御されるハンドを使用して溶接検査を実行するので、ワークの種類に応じて溶接検査の条件を適宜変更できる。また、サーボモータ駆動式のハンドであれば、ワークに負荷を付与する前後において、爪の開口幅を任意に変更できるので、溶接検査を実行する前後において、爪が周囲の物体に干渉するのを防止できる。
【0033】
(3)溶接検査を実行するため、また、ワークを搬送するために共通のハンドを使用するので、ロボットシステムの構成が簡素化される。特に、ハンドを小型化できる。
【0034】
図8は、別の実施形態に係るロボットシステム10の機能ブロック図である。図4と対比すると分かるように、本実施形態のロボットシステム10は、変化量計算部72をさらに備えている。本実施形態によれば、位置検出部60が、爪32の相対位置を二段階に分けて取得するように構成される。
【0035】
すなわち、位置検出部60は、溶接部品54に負荷を付与する前に、爪32を溶接部品54に接触させたときの爪32の相対位置(以下、「第1の相対位置」と称する。)を取得する。また、位置検出部60は、所定の力で溶接部品54に負荷を付与したときの爪32の相対位置(以下、「第2の相対位置」と称する。)を取得する。
【0036】
変化量計算部72は、第1の相対位置と第2の相対位置との間の変化量を計算する。すなわち、計算される変化量は、負荷を付与する前後における溶接部品54の変位量に相当する。
【0037】
図9は、図8のロボットシステムによって溶接検査を実行する際の工程の流れを示すフローチャートである。先ず、ステップS201において、ロボット20を制御して、爪32を溶接部品54に対して位置決めする。次いで、ステップS202において、サーボモータ34を回転させて、爪32が溶接部品54に接触するまで爪32を閉方向に駆動する。ステップS203では、位置検出部60によって第1の相対位置を取得する。
【0038】
ステップS204において、爪32を閉方向にさらに駆動し、所定の力で溶接部品54に負荷を付与する。ステップS205では、位置検出部60によって、溶接部品54に負荷を付与した状態における爪32の相対位置、すなわち第2の相対位置を取得する。
【0039】
続いてステップS206において、変化量計算部72によって、第1の相対位置と第2の相対位置との間の変化量を計算する。さらに、ステップS207において、誤差計算部62によって、計算された変化量と、予め定められる基準変化量との間の誤差を計算する。なお、基準変化量は、例えば、溶接検査に合格したワークに対して、溶接検査と同一の条件で負荷を付与したときの第1の相対位置と第2の相対位置との間の変化量である。
【0040】
ステップS208では、判定部64によって、ステップS207で計算された誤差と、予め定められる閾値とを比較し、ワーク50が良品であるか、又は不良品であるかを判定する。すなわち、誤差が閾値よりも大きい場合は、ステップS210に進み、ワーク50が不良品であると判定する。他方、誤差が閾値以下である場合は、ステップS209に進み、ワーク50が良品であると判定する。
【0041】
また、本実施形態においても、前述した実施形態と同様に、開口幅変更部68及び設定変更部70によって、ワーク50の種類に応じた調整が可能になっている。なお、本実施形態の場合、設定変更部70は、例えばワーク50の溶接部品54に負荷を付与するときの力の大きさ、基準変化量、閾値などを変更可能であるように構成される。
【0042】
本実施形態に係るロボットシステム10によっても、前述した実施形態と同様の効果(1)〜(3)が得られることは明らかであろう。
【0043】
以上、本発明の種々の実施形態について説明したが、他の実施形態によっても本発明の意図する作用効果を奏することができることは当業者に自明である。特に、本発明の範囲を逸脱することなく前述した実施形態の構成要素を削除又は置換することが可能であるし、公知の手段をさらに付加することもできる。また、本明細書において明示的又は暗示的に開示される複数の実施形態の特徴を任意に組合せることによっても本発明を実施できることは当業者に自明である。
【符号の説明】
【0044】
10 ロボットシステム
20 ロボット
30 ハンド
32 爪
34 サーボモータ
50 ワーク
52 本体
54 溶接部品
541〜544 溶接部品
60 位置検出部
62 誤差計算部
64 判定部
66 搬送制御部
68 開口幅変更部
70 設定変更部
72 変化量計算部
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9