特許第6106172号(P6106172)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6106172体外受精の成功予測に関する新しい方法及びキット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6106172
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】体外受精の成功予測に関する新しい方法及びキット
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/04 20060101AFI20170316BHJP
   C12Q 1/68 20060101ALI20170316BHJP
   G01N 27/62 20060101ALI20170316BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20170316BHJP
【FI】
   C12Q1/04ZNA
   C12Q1/68 A
   G01N27/62 V
   !C12N15/00 A
【請求項の数】22
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2014-524957(P2014-524957)
(86)(22)【出願日】2011年8月12日
(65)【公表番号】特表2014-522669(P2014-522669A)
(43)【公表日】2014年9月8日
(86)【国際出願番号】NL2011050563
(87)【国際公開番号】WO2013025095
(87)【国際公開日】20130221
【審査請求日】2014年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】515208717
【氏名又は名称】アートプレッド ビー. ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】クック,ディルク ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ラーフェン,ヨゼフ ステファヌス エリザベート
(72)【発明者】
【氏名】マフディッド,デルシャド ママ
(72)【発明者】
【氏名】ベッカース,ニコール ヘーティエ マリア
【審査官】 星 浩臣
(56)【参考文献】
【文献】 特表平08−507924(JP,A)
【文献】 特表2007−530030(JP,A)
【文献】 特表2010−515909(JP,A)
【文献】 特表2002−505099(JP,A)
【文献】 J. Assist. Reprod. Genet., 2007, Vol. 24, No. 9, pp. 395-399
【文献】 Fertil. Steril., 2000, Vol. 74, No. 6, pp. 1118-1124
【文献】 Jpn. J. Antibiot., 1992, Vol. 45, No. 8, pp. 1065-1070
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00−3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.尿もしくは膣サンプルを取得するステップ;
b.前記のサンプル中に存在する細菌の総量のパーセンテージとして、Lactobacillus属に属する細菌及びStaphylococcus属に属する細菌の量を決定するステップ;及び
c.前記の細菌間の割合に基づき、妊娠成功の見込みを計算するステップであって、妊娠成功の見込みは、式:
Y = a* (%Lactobacillus)−b*(%Staphylococcus)−c
によって決定されるステップ、
(但し、前記式中、
aは、0.025から0.051までの値を有し;
bは、0.04から0.07までの値を有し;
cは、−1.10から−0.66までの値を有し;
%Lactobacillusは、細菌の総量のパーセンテージとして表現される細菌Lactobacillusの量であり;
%Staphylococcusは、細菌の総量のパーセンテージとして表現される細菌Staphylococcusの量であり;
Yは、成功の見込みを表し;かつ
0.5に等しい又は0.5より高いY値は、成功を予測し、0.5より低い値は、失敗を予測する成功の見込みを表す。);
を含む、被験者における妊娠成功又は不成功の見込みを計算する方法。
【請求項2】
前記被験者は、IVF又はICSI等の人工授精方法を経ている又はその対象である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Lactobacillusの種は、Lactobacillus crispatusである、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
Staphylococcusの種は、Staphylococcus aureusである、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記細菌の量の測定は、PCRによって実行される、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
Staphylococcusは、プライマー5’−GAGTAACACGTGGATAACCTACCTATAAGAC−3’及び5’−GCATCGTTGCCTTGGTAAGC−3’を使用して決定される、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
Lactobacillusは、プライマー5’−GATTTACTTCGGTAATGACGTTAGGA−3’及び5’−AGCTGATCATGCGATCTGCTTTC−3’を使用して決定される、
請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記細菌の量の測定は、質量分析法によって実行される、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
妊娠成功の前記見込みは、式:
Y = a* (%Lactobacillus)−b*(%Staphylococcus)−c
によって決定される、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
(但し、前記式中、
aは、0.025から0.051までの値を有し;
bは、0.04から0.07までの値を有し;
cは、−1.10から−0.66までの値を有し;
%Lactobacillusは、細菌の総量のパーセンテージとして表現される細菌Lactobacillusの量であり;
%Staphylococcusは、細菌の総量のパーセンテージとして表現される細菌Staphylococcusの量であり;かつ、
Yは、成功の見込みを表す。)
【請求項10】
aは、0.025から0.04までの値を有する、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
bは、0.04から0.06までの値を有する、
請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
cは、−1.06から−0.9までの値を有する、
請求項9乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記細菌は、中流の尿サンプル中で検出される、
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記のaのステップは、膣スミア等の膣に関するサンプルを取得するステップである、
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記妊娠成功又は不成功の見込みを予測することは、子宮内の受精卵の安定成功又は不成功の見込みを予測することである、
請求項1乃至14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
妊娠成功の見込みを予測するキットであって、
a.被験者からのサンプル中の細菌の総量を測定する手段;
b.細菌Lactobacillusの量を測定する手段;
c.細菌Staphylococcusの量を測定する手段;
d.請求項9乃至12のいずれか一項に記載された前記式に従い前記見込みを計算する手段;
を含む、キット。
【請求項17】
前記細菌Lactobacillusの量を測定する手段は、プライマー5’− GATTTACTTCGGTAATGACGTTAGGA−3’及び5’− AGCTGATCATGCGATCTGCTTTC−3’を含む、
請求項16に記載のキット。
【請求項18】
前記細菌Staphylococcusの量を測定する手段は、プライマー5’−GAGTAACACGTGGATAACCTACCTATAAGAC−3’及び5’−GCATCGTTGCCTTGGTAAGC−3’を含む、
請求項16又は17に記載のキット。
【請求項19】
前記被験者からのサンプル中の細菌の総量を測定する手段は、細菌の16s rDNAに特異的な一般的なプライマーセットを含む、
請求項16乃至18のいずれか一項に記載のキット。
【請求項20】
前記一般的なプライマーセットは、少なくとも1つの順方向及び少なくとも1つの逆方向EUBプライマーを含む、
請求項19に記載のキット。
【請求項21】
前記見込みを計算する手段は、前記の測定された細菌値を入力として受け取ることができ、請求項9乃至12のいずれか一項に記載の前記式に従い前記見込みを計算するプロセッサを含む、
請求項16乃至20のいずれか一項に記載のキット。
【請求項22】
前記プロセッサは、前記キットを使用する人が読み取ることができるシグナル伝達手段に前記見込みを出力することができる、
請求項21に記載のキット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトの繁殖の分野に、より具体的には、ヒトの繁殖が失敗している状況に関する。係る状況において、女性が妊娠するのを補助するために、人工的な方法が整っているが、これらの処置の成功は低く、より重要なことに、予測不可能である。本発明は、これより、体外受精における成功の可能性を予測するための、より信頼できる方法を供する。
【背景技術】
【0002】
低受胎は、西洋の世界において、10から15%までのカップルに影響を及ぼす。この低受胎は、状況の半分において、女性を原因に帰することができ、20から26%において男性を原因に帰し、25から30%において、原因が知られていない(EVERS, J.L., 2002, LANCET 360:151−159)。多くのカップルは、彼らの子供への望みを満たすために、体外受精(IVF)又は顕微授精(ICSI)を始める。これらの技術の成功率は、開始されたサイクルあたり約25%である(ANDERSEN, A. ET AL. 2007, HUM. REPROD. 22: 1513−1525)。もしこの成功率が改善され得るなら、非常に感情的かつ経済的な恩恵があろう。補助された妊娠治療の個人的及び社会的責任の観点において、自然妊娠に関する、非常に低い成功の見込みを有するカップルと、高い見込みを有するカップルとを特定することが望ましい。特に、不妊の原因が知られていないカップルは、高い比率の自然妊娠を示し、彼らのために、妊娠管理が望ましくあり得る(BRANDES, M. ET AL., 2011, HUM. REPROD. 26: 360−368)。したがって、処置を改善することのため、及び、個々の場合において、続けるかどうかを決定するための両方のために、IVF/ICSIの後に、女性が妊娠するであろうか、及び、生児出生を与えるであろうかどうかを正確に予測することができるモデルに関する必要性がある。10年を超える間、年齢、以前に失敗したIVFの試みの数及び不妊に関する確からしい理由を含む臨床データに基づいて、生児出生の見込みを予測するモデルが利用できた。大きいグループに関して、観察された生児出生に対する予測率は、40から60%であった(NELSON, S.M. AND LAWLOR D.A. 2011, PLOS MEDICINE 8: 1−10)。これらの著者は、年齢、不妊の原因、使用され(得る)手順、卵子のソース及び不妊治療(CHILD WISH)の期間に関するより多くの階層を使用して、140,000を超える女性からのデータに基づいて改善されたモデルを開発した。新しいモデルのROC曲線下面積(AUROC)が、この新しいモデルがどれくらい良好に機能するかのために使用されるとき、僅かに、しかしながら重大な増大が報告された(0.6184から0.6335へと)。このモデルは、より大きいグループの女性(10,000より多い)に関して良好な予測を与えるようである。しかしながら、このモデルが個人ベースにおいてどのくらい良好に予測するかは、未だ知られていない。
【0003】
生児出生へのルートは、3つの決定的なステップに分類され得、卵子の受精、女性環境による受精した卵子の受容、及び実際の生児出生への更なる成長である。第1のステップが(IVF及びICSI等で)人工的に対処されるなら、生児出生に至る見込みは、第2のステップに関するマーカーによって説明され得る。しかしながら、受精した卵子の受容の責任を負う要因は、実質的には知られていない。したがって、この第2のステップで成功を予測するであろう基準を確立することは、現在不可能である。
【0004】
したがって、個人ベースで成功したIVF/ICSI処置の見込みをより信頼性良く予測することができるモデルに関して、依然必要性がある。
【発明の概要】
【0005】
現在、発明者らは、個人ベースでのIVF/ICSI処置成功の(又は不成功の)見込みにおける予測を75−100%まで増大させるモデルを開発できることがわかった。
【0006】
本発明は、被験者における妊娠成功の見込みを予測する方法を含み、当該方法は:
a.尿サンプルを取得するステップ;
b.前記のサンプル中に存在する細菌の総量のパーセンテージとして、細菌種Lactobacillus及びStaphylococcusの量を決定するステップ;及び
c.前記の細菌間の割合に基づき、妊娠成功の見込みを予測するステップ;
のステップを含む。
【0007】
好ましくは、前記方法において、被験者は、IVF又はICSI等の人工授精に関して、経験している又はその対象である。別の好ましい実施形態において、Lactobacillus属は、Lactobacillus crispatusであり、Staphylococcus属は、Staphylococcus aureusである。
【0008】
更に好ましいものは、細菌の量の測定は、PCRで、より好ましくはqPCRで実行され、この方法において、その後Staphylococcusは、好ましくは、プライマー5’−GAGTAACACGTGGATAACCTACCTATAAGAC−3’及び5’−GCATCGTTGCCTTGGTAAGC−3’を使用して決定され、Lactobacillusは、好ましくは、プライマー5’− GATTTACTTCGGTAATGACGTTAGGA−3’及び5’− AGCTGATCATGCGATCTGCTTTC−3’を使用して決定される。
【0009】
あるいは、細菌の量の測定は、質量分析法、より好ましくはMALDI−TOF質量分析法によって実行される。
【0010】
本発明に係る方法でより具体的には、妊娠成功の見込みは、式によって決定される:
Y = a* (%Lactobacillus)− b*(%Staphylococcus)− c
ここで、
aは、0.025から0.051までの値を有し;
bは、0.04から0.07までの値を有し;
cは、−1.10から−0.66までの値を有し;
%Lactobacillusは、細菌の総量のパーセンテージとして表現される細菌Lactobacillusの量であり;
%Staphylococcusは、細菌の総量のパーセンテージとして表現される細菌Staphylococcusの量であり;かつ、
Yは、成功の見込みを表す。
【0011】
好ましくはこの式において、aは、0.025から0.04までの値を有し、また好ましくは、bは、0.04から0.06までの値を有し、更に好ましくはcは、−1.06から−0.9までの、より好ましくは−1.06から−1.01までの値を有する。
【0012】
細菌が検出されるサンプルは、尿サンプルであり得、好ましくは、細菌は、中流の尿サンプルで検出されるが、サンプルは、また、膣スミア等の膣サンプルであっても良い。
【0013】
本発明はまた、妊娠成功の見込みを予測するためのキットを含み:
a.被験者からのサンプル中の細菌の総量を測定する手段;
b.細菌Lactobacillusの量を測定する手段;
c.細菌Staphylococcusの量を測定する手段;
d.上記定義された式に従い前記見込みを計算する手段;
を含む。
【0014】
好ましくは係るキットにおいて、細菌Lactobacillusの量を測定する手段は、プライマー5’−GATTTACTTCGGTAATGACGTTAGGA−3’及び5’−AGCTGATCATGCGATCTGCTTTC−3’を含み、細菌Staphylococcusの量を測定する手段は、プライマー5’−GAGTAACACGTGGATAACCTACCTATAAGAC−3’及び5’−GCATCGTTGCCTTGGTAAGC−3’を含む。また好ましくは係るキットにおいて、被験者からのサンプル中の細菌の総量を測定する手段は、細菌の16s rDNAに対して特異的な一般的なプライマーセットを含み、より好ましくは、前記一般的なプライマーセットは、少なくとも1つの順方向及び少なくとも1つの逆方向EUBプライマーを含む。
【0015】
更に好ましくは前記キットにおいて、前記見込みを計算する手段は、入力として測定された細菌値を受信することができ、上記定義された式に従い前記見込みを計算するプロセッサを含み、好ましくは前記プロセッサは、当業者が読み取ることができるシグナル伝達手段へと前記見込みを出力することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の説明及び実施例では、多くの専門用語が使用される。係る専門用語に与えられ得る範囲を含む、明細書及び特許請求の範囲の明確かつ一貫した理解を供するために、以下の定義が供される。本明細書で他の定義がない限り、使用される全ての技術的及び科学的専門用語は、本発明が属する当業者が通常理解するものと同じ意味を有する。
【0017】
“IVF”又は体外受精は、女性の卵巣からの卵子(複数の卵子)が除去される治療である。それらは、実験室的手順で精子と受精され、その後、受精した卵子(胚)が、女性の子宮に戻される。
【0018】
“ICSI”は、卵細胞質内精子注入法、受精を達成するために精子が直接卵子へと注入される試験管受精手順を表す。ICSIは、主に男性不妊のためになされ、IVF治療の一部を形成し得る。
【0019】
“中流の尿”は、本明細書で、尿の出だしが丁寧に取り除かれた後の、尿のフローの中間の間に採集される尿試料として定義される。中流の尿サンプルはまた、“クリーンキャッチ試料(clean catch specimen)”とも呼ばれる。
【0020】
“尿路感染症”は、尿路の如何なる部分に影響を及ぼす細菌感染である。症状は、排尿に対する頻繁な感覚及び/必要性、排尿の間の痛み及び混濁尿を含む。
【0021】
“16S rDNA”は、メッセンジャーRNAのタンパク質鎖への翻訳が達成される、リボソームの成分をその後形成する、RNAのタイプをコードする細胞核の核小体におけるDNAである。種々の器官のリボソームRNAの遺伝子配列の比較が、器官間の進化論の関係を決定するために使用される。
【0022】
現在、本発明者らは、子宮内の受精した卵子の安定の成功を予測する要因の1つが、女性の尿生殖器領域における細菌個体群の構成によって形成されることを発見している。細菌個体群の組成(腸内又は膣内のように)が、それらの直接の環境の表れであり、この組成が、その環境内で変わる時に変わり得るということが、知られている。このことは、例えば、全てのヒトの母集団群に亘り、胃腸内の常在細菌が、我々が遭遇する種々の細菌種の無作為の収集ではないという発見において明らかである。それらは、それらの宿主によって供される環境と動的平衡にある区別できる母集団である(Blaser, M.J. and Falkow, S., 2009, Nature Rev. Microbiol. 7:887−894)。ヒトの腸は、受け入れられる細菌の住処となる。それらは、ヒトの腸細胞が不足し、それらの宿主の食生活に対して応答するキャパシティを参照するので(De Filippo, C. et al., 2010, PNAS 107: 14691−14696)。食生活における変化は、実際に、細菌が生息している環境の化学的組成における変化である。腸内微生物叢の組成に影響を及ぼすであろう他の環境的要因は、(免疫)防御システム、細胞表面特性及びそれらが住処としている生態的地位の物理的特性等の宿主因子を含む(Backhed, F. et al., 2005, Science 307: 1915−1920)。
【0023】
尿生殖路からの例は、膣条件が変わる時に起こる膣内細菌個体群における変化である。通常、膣は、1から6までの細菌種を含み、Lactobacillusによって影響が及ぼされる個体群を好む低pH環境を供する(Fredricks, D.N. et al., 2005, New Eng. J. Med., 353: 1899−1911)。Lactobacilliは更に、低pHを維持し、さらに、他の細菌に対してそれらの生態的地位を活発に防御する。細菌性膣炎を有する女性において、pHはより高く、膣内細菌個体群は、17種にまで拡張され、Lactobacilliの存在は大いに低減され、病原性バクテリアに有利になる。細菌個体群構成におけるこのシフトの開始は、Lactobacillus属における減少又は他の細菌の湿潤のいずれかであり得る。しかしながら、継続によって、Lactobacillus属における減少、pHにおける増大、及び新しい状況で成長するStaphylococcus等の種における増大の間の変化するバランスであろう。もしこれらのシフトが、膣症の症状に先行するかどうかは、未だ確立されていない。
【0024】
細菌個体群が特定の状況を予測するために使用され得るという指摘は、バクテリアの個体群が、広範囲の16s rDNA解析で調査された、尿道炎を有する又は有さない男性における小さい研究で発見された(Riemersma, W.A. et al., 2003, J. Clin. Microbiol. 41:1977−1986)。3つのこれまでは知られていない細菌の存在が、尿道炎の欠如と関連付けられた。
【0025】
本発明で行った調査において、発明者らは、基本的に2つの質問を尋ねており:女性の内部環境が妊娠を達成するためにIVF又はICSIに適しているかどうかの情報を、女性における尿細菌個体群が保存するか?及び細菌の個体群が、尿路感染症に関する変更されたリスクに関連しているか?である。第1の目標の裏の考えは、IVF又はICSIの成功に対する第1のステップが、卵子が巣を作らなければならない期間の間の、女性の内部環境による、異物、受精卵の受け入れであるということである。この内部環境は、ホルモン制御下にあろう。この制御の性質は、完全には知られていないが、子宮内の状況だけでなく、尿路等の体内の他の状況にも影響を及ぼすであろうと思われる。その結果、それは、その尿路における、異物の受け入れ、常在細菌個体群に影響を及ぼすである。この考えに基づき、調査を推進する2つの仮設が明確に述べられ:第1は、女性内の細菌個体群は、受精した卵子がどれくらい良好に受け入れられるであろうかを示すということであり、第2は、女性が妊娠するときに、彼女の中で起こる環境的変化に、尿中の細菌個体群が反応するであろうということである。妊娠の間、尿路は、腎盂及び尿道の膨張、膀胱の移動及び膀胱平滑筋の緩和及び化学的変化に関連する尿停滞等の解剖学的変化を経る(尿pH、尿オスモル濃度、糖尿及びアミノ酸尿)。これらの変更された条件は、常在細菌とは別の細菌種に、より快適であると期待され得る。常在細菌は、研究において、尿路それ自身(の感染)に内在する問題の源であり得るので、また、尿中の細菌個体群組成と尿路感染との間の関係が調査された。
【0026】
この研究において、5つの細菌種/菌種のコアグループが、調査された全ての環境下(妊娠した、妊娠していない、IVF/ICSI後で妊娠していない)で発見されたようであった。Lactobacillus crispatus及びStaphylococcus aureusが、全てのサンプルの大部分で存在しており、一方、E. coli, Streptomyces sp.及びuncultured bacterium isolate CH96Fc_H10は、より少ない数のサンプルで発見された。全ての女性において、全個体群の70%以上が、全個体群の10%以上として個々に存在していた最大4つのタイプから成った。これは、5つの述べれられた細菌種プラス他のタイプのショートリストを含んでいた(表5参照)。多くの細菌タイプが、1又は少数のサンプルにおける、小さいパーセンテージで発見された(表3参照)。
【0027】
我々の全ての検査条件下において、女性内に発見された5つの細菌種のコアグループが、高い見込みで外のプール(outside pool)から尿路へと侵入し、尿路内の条件によりよく適合し、又は宿主によってよりよく受け入れられる、種を意味し得る。第2のグループは、まれに発見されるが、時間とともに個々の女性に残り、更に優占種になり得る種から成る。なぜこれらの種がそうそう発見されないかの理由は、これらの細菌に関して、尿路が外のプールに晒されることが、全ての女性に関して同じでない又は特定の宿主因子が、小サブセットの女性にだけそれらの存在を許す、ということであり得る。1つの単一のサンプルでのみ発見された多くの種は、尿路内で良好に生存しない通りすがり(passers-by)を意味し得る。
【0028】
本研究から判断され得ることは、女性が妊娠するとき、尿路内の細菌個体群の組成が劇的に変わるということである。妊娠前において、細菌個体群は、種々のLactobacillus菌株(主にL.crispatus)によって支配される。妊娠の間、Lactobacillusは、しばしば優占種になる、他の細菌、主にStaphylococcus aureusによって置き換えられる。それは、IVF/ICSIを経たが、妊娠していない女性において起こらなかったので、このシフトは、女性が経験した治療に依らなかった。
【0029】
勿論、妊娠を決定するより容易な方法があるので、尿路個体群が、女性が妊娠したかどうかを反映するという発見は、臨床的に無関係である。明らかに、女性の受胎状態が、尿路内の細菌個体群に影響を与えるという観察によって、関連性が与えられる。このことは、尿路内の細菌個体群が、宿主の内部的条件のマーカーであるという仮説を支持します。
【0030】
本研究は、このマーカー機能が、妊娠したい女性の受胎を診断するために、十分に特異的であるということを示す。実験に関するセクションから明らかであるように、IVF/ICSI治療前の尿中のLactobacillus属及びStaphylococcus属の相対的な存在で作られたモデルが成功するかどうかであろう。
【0031】
したがって、本発明は、被験者の妊娠成功の見込みを予測するための方法であって:
a.尿サンプルを取得するステップ;
b.前記のサンプル中に存在する細菌の総量のパーセンテージとして、細菌種Lactobacillus及びStaphylococcusの量を、決定するステップ;及び
c.前記の細菌間の割合に基づき、妊娠成功の見込みを予測するステップ;
のステップを含む方法を供する。
【0032】
IVF又はICSI等の人口受精方法を経ている又は適している被験者に関して好ましいが、係る方法は、そのような範囲に限られない。係る方法は、彼女らが自然な方法で妊娠する見込みがどうであろうかについて興味がある被験者に関しても、役に立ち得る。この観点において、サンプルが男性被験者から、若い女性から又はすでに妊娠した女性、即ち妊娠することができない被験者から取得されるとき、係る方法はまた、正しい予測を与えることができる:これらのサンプルから、テストの結果が否定的であるように思われる、ということは、注目に値します。勿論、人工授精が使用されない場合において、上記で計算された妊娠成功における見込みは、妊娠した見込みが、パートナーの不妊性によって又は女性被験者の著しい生理不全によって影響されないそれらの状況に関係があるだけである(例えば、子宮の不在、ホルモンの不均衡、等)。
【0033】
好ましくは、検出されるLactobacillus属は、Lactobacillus crispatusである。しかしながら、L.jensenii、L.iners及びL.gasseri等のまた別のLactobacillus属を検出することも有用であり得る。これらの属は、複数の女性で直面され、これらの属をLactobacillaeの群への包含は、上記の方法の予測力を増大させます。同じことが、Staphylococcus aureusだけでなく、S.epidermidis、
S.haemolyticus及びS.cohniiも、予測力に加えるために直面され、発見されるStaphylococcusにも当てはまります。好ましくは、本発明の方法における細菌種の検出は、PCR及び好ましくはqPCR等の分子生物学的アッセイを通じて行われる。係るアッセイにおいて、細菌は、検出される細菌に関して特異的であるプライマーを用いた増幅によって、検出され、定量化される。Lactobacillusの場合において、このことは、L.crispatusに関して特異的であるプライマーが使用され得るが、好ましくは、係るプライマーはまた、上述されたような他のLactobacillus属を認識するであろうということを意味する。現在、最適な検出方法は、例2で使用されるLactobacillusに特異的なプライマーを含む。
【0034】
操作の同様の方法はまた、主にS.aureusが検出され得るが、S.epidermidis、S.haemolyticus及びS.cohniiも包含され得る、Staphylococcus属の検出に適用する。またこの場合において、例2で示されるプライマーセットが最適な結果を与える。
【0035】
しかしながら、理解されるべきことは、使用され得るのが、検出されたLactobacillus及びStaphylococcusの絶対比率ではないということである。むしろ、細菌の総量に関するこれらの細菌のパーセンテージの比率が使用される。サンプル中における細菌の総量を決定するために、細菌の16s rDNAを認識するプライマーを使用することが好ましく、これは、全ての細菌中に存在する16S rDNAの保存部分を認識するプライマーを使用する機会をもたらす。細菌の16s rDNAに特異的であり、したがって、他の器官からの生物由来物質が存在するサンプル中における、細菌だけを認識することができるプライマーセットが、文献で記載されている。Wikipedia(http://en.Wikipedia.org/wiki/16S_ribosomal_RNA)では、次のプライマーが述べれている:
プライマー名 配列(5’−3’)
B27F AGA GTT TGA TCC TGG CTC AG
U1492R GGT TAC CTT GTT ACG ACT T
928F TAA AAC TYA AAK GAA TTG ACG GG
336R ACT GCT GCS YCC CGT AGG AGT CT
1100F YAA CGA GCG CAA CCC
1100R GGG TTG CGC TCG TTG
337F GAC TCC TAC GGG AGG CWG CAG
907R CCG TCA ATT CCT TTR AGT TT
785F GGA TTA GAT ACC CTG GTA
805R GAC TAC CAG GGT ATC TAA TC
533F GTG CCA GCM GCC GCG GTA A
518R GTA TTA CCG CGG CTG CTG G
非常に良好に適しているプライマーセットは、いくつかが利用可能である、所謂EUBプライマーを使用する(例えば、EUB f933及びEUB r1387;EUB 8f及びEUB536r、EUB341及びEUB534等)。また、EURプライマーに基づく、細菌の16s rDNAを検出するためのキットが商業的に利用可能である(Iris technologies Int., Cursdorf, GermanyからのOnar(登録商標)EUB kit等)。
【0036】
本発明の別の実施形態において、サンプル中の細菌の量が、質量分析、ラマン分光法及び同様の分光手段によって決定される。好ましくは量の係る測定において、MALDI−TOFが分析ツールとして使用される。
【0037】
全細菌の量及びLactobacillus及びStaphylococcusの量が決定されるとき、本発明の好ましい実施形態において、細菌の割合及び従って妊娠成功の見込みが、式に従い計算され得る:
Y = a* (%Lactobacillus)− b*(%Staphylococcus)− c
ここで、
aは、0.025から0.051までの値を有し;
bは、0.04から0.07までの値を有し;
cは、−1.10から−0.66までの値を有し;
%Lactobacillusは、細菌の総量のパーセンテージとして表現される細菌Lactobacillusの量であり;
%Staphylococcusは、細菌の総量のパーセンテージとして表現される細菌Staphylococcusの量であり;かつ、
Yは、成功の見込みを表す。
【0038】
Yの値は、式によって、0(成功の見込みがない)と1(確実な成功)との間の範囲にある見込みへと変換され得る:
見込み=eY/(1+eY)
使用される定数に依存して、Yの値は、4.44(100%Lactobacillus、a=0.051及びc=−0.66)から−8.1(100%Staphylococcus、b=0.07及びc=−1.1)までの間で変わるであろう。実際の妊娠に対する予測された妊娠の比較に関して、最善のカットオフ値は、見込み=0.5であると分かった。0.5に等しい又は0.5より高いY値は、そのとき成功を予測し、0.5より低い値は、失敗を予測する。このカットオフ値を用いて、式は、IVF/ICSIの第1の試みの後、86%の女性において、妊娠を正しく予測し、1年の間、多数の試みの後、92.3%の女性において、妊娠を正しく予測した。したがって、7.7%の場合において、女性はIVF/ICSIの後、妊娠したが、式は、失敗を予測した(偽陰性)。3.8%において、妊娠が、流産により達成されなかった。3.8%において、式は、実際の生児出生を外した。式が妊娠を予測した25%の場合において、進行中の妊娠が達成されなかった(偽陽性)。
【0039】
妊娠したい及びIVF/ICSIを続けるかどうかを決定するために予測検査を使用する女性は、特に、偽陰性予測を受け入れないであろうから、偽陰性予測を3.8%からゼロへと低減することが望ましい。その場合、カットオフ値は0.04へと下げられなければならない。しかしながら、このカットオフ値では、式は、全ての女性に関して妊娠を予測し、勿論これも望まれない。
【0040】
完了された妊娠の最善の予測に関して、式は、aが0.03から0.051までの値を有して、一方更に好ましくはbが0.056から0.064までの値を有して使用される。更に好ましくは、cは−1.06から−1.03までの値を有する。その後、妊娠を得るための見込みに関するカットオフは、好ましくは0.5である。
【0041】
対象者からのサンプルは、好ましくは尿サンプルであり、より好ましくは中流の尿サンプルである。係る中流の尿サンプルは、これが尿中の細菌個体群を最善に表すため、好ましい。これは、最初の尿は、尿道を洗い落としており、尿道にいる細菌を持って来るであろう。
【0042】
本発明の方法を膣のサンプルで実行することも可能である。同じタイプの細菌が膣中で直面されるので、妊娠成功におけるチャンスを予測するための、同様の割合及び好ましくは同様の式が、尿サンプルに関して使用され得るということは、もっともらしい。a、b及びcの値が最適化される必要があるが、係る最適化は、当業者の技術の良好な範囲内である。
【0043】
また、本発明の一部は、妊娠成功の見込みを決定するためのキットである。係るキットは、サンプル中の細菌の総量を決定する手段と、Lactobacillus及びStaphylococcusの細菌の両方を検出する手段を含む。さらに、係るキットは、上述された式に基づいて見込みを計算するための手段を含むであろう。係る見込みを計算するための手段は、好ましくは、細菌及び特定の上述された細菌の種/属の総量の検出の値を受けることができるプロセッサを含むであろう。プロセッサはその後、本発明の式に係るYを計算し、妊娠成功の見込みを出力するであろう。この出力は、数値の形式であっても良いが(式から得られるYの実際の値)、それは、例えば、赤(陰性)又は緑(陽性の見込み)のいずれかであろう、合図している光源を通じた、又は、負の値が、暗い赤色(強い陰性)から、明るい赤色(中程度の陰性)を経て、黄色(大よそゼロ)への階調度を示し、正の値が、黄色(大よそゼロ)から明るい緑色(中程度の陽性)を経て暗い緑色(強い陽性)への階調度を示す、Yの数値を表すカラーコード化されたバーを通じた、見込みを示すものであっても良い。係る方法において、被験者は、予測の信頼性の視覚的な示唆を受け取ることができる。全ての応用において、見込みに関するカットオフ値(0.5で標準設定である)が、偽陽性予測の数を増大させることを犠牲にして、偽陰性の予測の数を減らすために、低くされるというオプションを含んでも良い。勿論、Yの値を表す別の示唆が使用可能であり、当業者は、本発明の主旨から逸脱することなく、上記実施形態における変更を設計することができるであろう。
【0044】
(実施例)
(患者包含とグループ割当て)
2005年及び2006年において、ロッテルダムにあるEransmusMCのIVF病棟を訪れた98名の女性が、研究に登録された。これら98名の女性のうち40名(41%)が、3年の研究の間、場合によっては複数の試みの後、妊娠した。告知に基づく同意と、中流の尿採取をどのように実行するかについての指導を与えた後、女性は、1回目の訪問の間、中流の尿サンプルを送り、抗生物質の以前の使用及び以前のUTIについての質問に答えた。彼女らは、尿容器及び中流の尿の採取の手順を述べている折り畳み印刷物を受け取った。女性らは、彼女らが、妊娠の16週目で又は妊娠にならなかったそれらの女性に関する胚の配置後に相当する時間でのいずれかであるときに、2回目のサンプルを採取するようにリマインドされた。尿サンプルは、同じ日に病院に戻された又は凍結され、後日に戻された。2回目のサンプルの採取の後、妊娠の結果に関する、及び後の妊娠に関する、データを集めるために、最大3年の間、女性らの後を追った。
【0045】
98名の女性のうち16名は、質問書における全ての質問には答えなかった又はインタクトな(intact)第2の尿サンプルを返さなかった。これらは、2つの時間点でのサンプルを必要とする我々の発見研究からは除外された。残っている82名の女性から、1回目の尿サンプルに続いた、最初のIVF/ICSIサイクルによって妊娠した最初の21名が、発見研究のために含まれた。2回目のサンプルを採取したとき(胚の配置後16週)に妊娠していなかった21名の女性が、妊娠していない女性のグループに含まれた。包含期間の後、21名の妊娠していない女性のうちの1人が、彼女が自分の2回目のサンプルを採取したときに妊娠していたということがわかった。彼女は、妊娠したグループに再び割り当てられた。これにより、n=22の妊娠したグループ及びn=20の妊娠していないグループをもたらした。これらの42名の女性において、我々は、広域スペクトル16S rDNA解析によって、両方の尿サンプル中の細菌個体群を決定した。さらに、女性らについて、妊娠とその結果に関して、3年の間、臨床的に後を追った。全ての42名の女性の1度目の尿サンプル中に同定された細菌種が、IVF/ICSIの結果(妊娠した/妊娠していない)を予測するモデルを作るために使用された。女性が妊娠したときに起こった細菌個体群における変化が、UTIの主な原因における変化と比較された。後者は、別のグループから得られた(下記参照)。
【0046】
残っている40名の2つの尿サンプル及び完全な質問書の両方を戻した女性と、インタクトな1回目のサンプル及び完全な質問書の両方を戻した女性とから、我々は、n=42の、独立した検証グループを編成した。このグループにおいて、我々は、予測モデルに含まれる細菌に特異的なプライマーに基づいたqPCR検査を使用して、上述で得られる予測モデルを確認した。
【0047】
留意すべきことは、我々の選択プロトコルにより、我々の発見フェーズにおける、妊娠成功の割合は、22/42=52%であり、これは全グループの98名の女性に関する41%に比較されるということである。
【0048】
(除外基準)
16週の研究期間の間、抗生物質を使用した又はUTIを有した女性が除外された。
【0049】
(追跡調査(3年間))
妊娠したグループの4名の女性において、妊娠は、流産(3)又は子宮内死(IUD)に終わった。更なる治療の後、全ての4名が、2回目のサンプルが採取された後6ヶ月以内に妊娠成功した。
【0050】
失敗したIVFグループのうち12名の女性は、決して妊娠せず、7名は2回目のサンプルの採取の間妊娠していないが、別の時間点で妊娠した。これは:
患者6、1回目のサンプル後1年を超え、2回目のサンプル後1年内に妊娠
患者10、1回目のサンプル後1年以内に妊娠(双子)
患者14、1回目のサンプルの後1年以内に妊娠
患者19、一回目のサンプルの後1年以内、流産
患者58、は、1回目のサンプルの採取の前後に、自然妊娠であるとわかった。この方は、IUDに終わった。IVFが後に続き、胚の配置後16週に、2回目のサンプルが採取された。IVFは失敗した。この患者は、第1のIVF/ICSIの結果の結果及び妊娠による見込みの検査に関して、妊娠していないグループに割り当てられた。完全性のために、モデル作成は、また、妊娠したグループに割り当てられている患者58で実行された。彼女は、女性が1年以内に妊娠し得るかどうかの検査に関して、妊娠したグループに割り当てられた。
【0051】
患者78、1回目及び2回目のサンプルの後1年を超え、自然妊娠、流産。
【0052】
患者92、1回目及び2回目のサンプルの後1年を超え、妊娠(IVF)、流産、その後1回目のサンプルの後2年で自然妊娠成功。
【0053】
(IVF/ICSIの成功に関する予測モデル)
1回目の尿サンプルの細菌個体群のデータが、2つのモデルを作成するために、二項回帰分析へと入力された。モデル1は、1回目のIVF/ICSI試みによって妊娠が達成されるかどうかを予測する。モデル2は、1年間のIVF/ICSIの試み(1から3までの試み)によって、女性が妊娠するかどうかを予測する。このモデルに関して、モデルに基づく、1回目の尿サンプルの採取の後1年内に妊娠した/妊娠した患者10、14、19及び58は、妊娠したグループに再び割り当てられ、n=26の妊娠したグループ及びn=15の妊娠していないグループをもたらした。患者6、78及び92は、1年以内に妊娠していないグループにいた、これは、彼女らの妊娠が、2回目のサンプルの採取の後1年を超えて開始したからである。予測モデルは、16週で採取された尿サンプルに適用された。広域解析に基づくモデルは、独立の検査グループに認証された種特異的qPCR検査に変換された。
【0054】
(妊娠していない及び妊娠した女性における、UTIの細菌個体群及び原因)
DNA解析で発見された細菌個体群は、UTI無しでの妊娠した/妊娠していない女性の尿道において、少ない数で存在している細菌を意味する。このデータは、エルビルにあるMaternity Hospitalに通っている女性からの、尿及び膣スミア培養物によって得られた妊娠した/妊娠していない女性におけるUTI及び膣感染症の原因におけるデータと比較された。トータルで2009年の間、599の尿培養成果(210の妊娠していない及び389の妊娠した)及び216の膣スミア培養成果(94の妊娠していない及び122の妊娠した)が得られた。
【0055】
表1.2つの患者グループの特徴
【0056】
【表1】
(方法)
(DNA精製)
バクテリア個体群組成が、広域スペクトル細菌16S rDNA解析によって評価された(Riemersma, W.A. et al., 2003, J. Clin. Microbiol. 41:1977−1986)。尿サンプルが、800gで10分間遠心分離された。その後、150μlのペレットが、DNA抽出及び精製のために使用された。150μl未満の体積を有するサンプルに対して、補償量の50mM Tris−HCl(pH7.5)−0.1mM EDTA−50mM グルコース緩衝溶液が添加された。先ず、75μlのリソスタフィン溶液(10mg/ml;Sigma, St Louis, Mo.)を添加し、混合物を37℃で30分間加熱した。その後、1mlのグアニジン溶解緩衝溶液(4mM グアニジンイソチオシアネート、0.1M Tris−HCl(pH6.4)、0.2M EDTA、0.1%Triton X−100)を添加し、50μlのセライト懸濁液を添加した後、混合物を室温で1時間保持した。サンプルを室温で10分間一定間隔で混合した。ボルテックス及び遠心分離後(エッペンドルフ型遠心分離機で14,000rpmで10分)、上澄みを廃棄し、ペレットをもう一つの溶解緩衝溶液(4M グアニジンイソチオシアネート、0.1M Tris−HCl;pH6.4)で2度、エタノール(70%)で2度、最後にアセトンで1度洗浄した。ペレットを真空乾燥し、100μlの10mM Tris−HCl(pH8.0)で乳化した。サンプルを56℃に10分間加熱し、遠心分離した(エッペンドルフ型遠心分離機で14,000rpmで10分)。上澄みは、50mM Tris−HCl、0.1mM EDTA及び50mMグルコースを含む緩衝溶液(pH7.5)中でのPCRに関するテンプレートとして使用した。
【0057】
(PCR)
精製DNAからの細菌の16S rDNAの単離は、遺伝子の保存された部分に方向付けられたプライマーを使用したPCR反応で実行した(EUB−L (5’−CTTTACGCCCATTTAATCCG−3’)及びEUB−R (5’−AGA−GTTTGATCCTGGTTCAG−3’))。PCRによって、小サブユニット(ssu)rRNA遺伝子の3’−端末側終端から得られた〜500−bp断片を作り出した(Wilson, K.H. et al., 1990, J. Clin. Microbiol. 28: 1942−1946)。5μlの精製DNA溶液に対して、45μlのPCR混合物を添加した(10μl 20mM デソキシヌクレオチド三リン酸塩貯蔵液(Amersham Life Science, Cleveland, Ohio)、5μl 10倍濃縮SuperTaq PCR緩衝溶液(HT Biotechnology, Cambridge, United Kingdom)、0.5μlの両プライマー、28.92μl蒸留水及び0.08μl SuperTaq ポリメラーゼ(15U/μl;HT Biotechnology, Cambridge, United Kingdom))。PCR反応は、94℃で5分間プリサイクル変性ステップ、続いて94℃(45s)での30サイクルの変性、55℃(45s)でのアニール及び72℃(45s)での伸長を含んだ。コントロールサンプルとして、追加のDNAサンプル無しでの50μlのPCR混合物を平行して行った。その後、PCR生成物の10μl部を、エチジウムブロマイドを含む1%アガロースゲル上で解析した。電気泳動を0.5X TBE(50mM Tris、50mMホウ酸塩、1mM EDTA)中で実行し;ゲルを含水エチジウムブロマイド中で染色し、UV照射下で撮影した。
【0058】
(増幅生成物のクローニング)
PCR増幅生成物は、尿中に存在していた種々の細菌から生じる16S rDNA断片の混合物を含む。これらの断片を分離するために、クローニング−形質転換ステップを実行した。各々のPCR生成物の3μlを、pGEM−T easy vectorでのライゲーションのために使用し、コンピテントEscherichia coli JM109細胞への熱ショックによって形質転換した。クローンをアンピシリン(100μg/ml)及びX−gal(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−B−D−ガラクトピラノシド;40μg/ml)を含むLB agarプレート上で、37℃で一晩培養した。形質転換は、ブルーホワイトコロニースクリーニングで確認した。
【0059】
(シークエンシング)
挿入でプラスミドを含む全てのクローンの、プラスミドを、QIAgen Miniprep kit(QIAgen, Venlo, The Netherlands)を使用して単離した。サンプルあたり、最大100クローンを使用した。各々のプラスミド単離に関してシークエンシングPCRを、16S rDNAの可変部分に方向付けられたT7プライマーで実行した(TAATACGACTCACTATAGGG)。結果の配列をBLASTデータベースにおけるオリジナルの細菌タイプを同定するために使用した。全ての結果を、解析されたクローンの総数に関連付け、特定の細菌タイプによってあらわされる個体群のパーセンテージを得た。したがって、100のクローンを解析し、20がLactobacillus crispatusに関する配列を得たとき、個体群の20%がLactobacillus crispatusである。
【0060】
我々のPCR方法は、本人の尿サンプル中におけるバクテリアの個体群の定量分析を得る。定量的データを得る培養物は、感染症の症状がない、これらの女性においては実行されなかった。
【0061】
(統計)
全ての統計学的検査を、PASW17.0プログラム(SPSS)で実行した。グループ内における1回目のサンプルと2回目のサンプルとの間の違いを、ペアスチューデントのt検定で、重要性を見つけるために検査した。グループ間の違いを、2つのグループの等分散性での、独立スチューデントのt検定で検査した。
【0062】
予測モデルを、二項回帰分析で得た。
【0063】
(結果)
(細菌個体群の組成及び安定性)
全ての尿サンプルを、1から10までの細菌タイプからなる細菌個体群を有していた。表2に、妊娠した1人と、妊娠していない1人との2人の女性に関する結果を示す。発見された細菌の種々のタイプは別として、これらの細菌個体群が、妊娠した又はしていない女性において時間に亘ってどれくらい安定であるかを決定することも、興味深い。安定性の第1の測定は、1回目のサンプルからの、2回目のサンプルで見直される細菌種の数を定性的に見ることです。表2において、これらは、ボールド体の数字で示されている。したがって、妊娠した女性に関して、4つの細菌種類の中から3つ(75%)が、16週を超える時間期間に亘って存在したままである(Lactobacillus crispatus strain ZDY35b, Staphylococcus aureus strain LA14及びPseudomonas acephalitica、75%重複)。妊娠していない女性において、重複は60%であった。
【0064】
安定性に関する第2の測定は、2つのサンプル間のパーセンテージにおける絶対不変重複部分である。妊娠した女性に関して、37%の個体群が、両方の時間地点に関して確認された(12% Lactobacillus crispatus, 15% Staphylococcus aureus, 10% Pseudomonas acephalitica)。Lactobacillus crispatusからStaphylococcus aureusへの大きいシフトが起こった。妊娠していない女性において、79%の個体群が、IVF前後で同一であった。
【0065】
【表2】
この分析を全グループに適用するは、下記のことを示す:
妊娠したグループに関して、細菌種の平均数は、両方のサンプルにおいて4であった。妊娠していないグループに関して、この数は、IVF/ICSI治療前が3であり、後が4であった。妊娠したグループにおいて、平均で、1.9±1.2のバクテリアのタイプが、両方のサンプルで存在していた。妊娠していないグループに関して、その数は、2.1±0.9であった。種々の種は、両方のグループ間で大きくは異ならなかった。
【0066】
1回目のサンプルと2回目のサンプルとの間の正確な重複は、妊娠したグループにおいてはかなり低く(p<0.001)、37±23%であり、これは妊娠していないグループの、68±24%と比較される。
【0067】
全体の細菌個体群は、妊娠していない女性において、定性的及び定量的の両方において、安定していた。妊娠した女性において、多くの個々の細菌タイプにおいて、大きいシフトが、既存の個体群内で起こった。このシフトの本質が下記に与えられる。
【0068】
【表3】

(細菌のタイプ及び優占種)
全79において、種々の細菌種が発見され、表3に概観が与えられる。大部分の解析に関して、BLASTデータバンクにおける、得られたDNA配列と種特異的配列との間の整合は、97%を超えた。より低い整合割合が、表に示される。大抵の種は、数サンプルだけに発見された。表4は、細菌種が発見された頻度を示す。
【0069】
表4 1つ以上のサンプル中に存在する種の数
【0070】
【表4】

N samples=ある特定の種が存在したサンプルの番号
N species=N samplesが適合する種の番号(したがって、49の種は、1のサンプルだけに発生し、一方、1の種は、75のサンプルに発生した)
(少数種)
大抵の種は、ただ1人の女性の、しばしばただ1つのサンプル中で、個体群の10%より少なく存在した。妊娠したグループにおいて、19の種が両方の時間地点で発見され(同じ女性でそうとは限らない)、16が1回目のサンプルに関して固有で、18が2回目のサンプルに関して固有であった。妊娠していないグループにおいて、16の細菌種が両方のサンプル中で発生し、14が1回目のサンプルに関して固有で、25が2回目のサンプルに関して固有であった。4つの別々のサンプルグループ(妊娠していない、妊娠した、IVF/ICSIが失敗する前、IVF/ICSIが失敗した後)に関して、固有の細菌種はなかった。
【0071】
(多数種)
5つの種が、全ての4つのサンプルグループ内で発生した。Lactobacillus crispatus及びStaphylococcus aureusは、全てのサンプルの大部分で存在していた。E coli、Streptomyces sp及びuncultured bacterium isolate CH96Fc_H10は、より少ないサンプルであるが、4つの全てのグループにおいて同様に存在していた。
【0072】
(優占種(前個体群の最大画分))
4サンプルのグループに関する優占種が示す平均割合は、各々、67±16%(妊娠したグループの1回目のサンプル、範囲48%から100%まで)、59±18%(妊娠したグループの2回目のサンプル、範囲22%から88%まで)、56±15%(妊娠していないグループの1回目のサンプル、範囲20%から100%まで)及び57±17%(妊娠していないグループの2回目のサンプル、範囲18%から100%まで)。優占種の概観は、表5で与えられる。
【0073】
【表5】

Lc=Lactobacillus crispatus, Lcu=Lactobacillus curvatus clone B225, Li=Lactobacillus iners, Lj=Lactobacillus jensenii isolate C72, Sa=Staphylococcus aureus, B RG4=Bacillus sp. RG4, Bcpb= Bacillus sp. CPB 8, Msb= Marine sediment bacterium ISA-3195 , S=Sphingomonas sp. FL13-1-1, Cc= Clostridium crispatus cTPY-17 , Bc= Bacillus clausii strain za-w-3, UbB= Uncultured bacterium clone Bermudas8-E3, UbE= Uncultured bacterium clone E67BE-207
妊娠したグループにおいて、種々の株のLactobacillusが、1回目の時間地点で採取された22のサンプルのうちの21での及び妊娠中に採取された4つのサンプルでの、優占種であった。妊娠中、Staphylococcus aureusは、高頻度の優占種であった。22人の女性のうち5人において、優占種は、両方のサンプルに関して同じであった。
【0074】
妊娠していないグループにおいて、1回目のサンプル中の優占種は、20人の女性のうち11人に関して、Lactobacillus属であった。6つのサンプルにおいて、それはStaphylococcusAaureusであった。優占種は、20人の女性のうち16人に関して、両方のサンプルにおいて同じであった。
【0075】
優占種のタイプに基づくと、細菌個体群は、失敗のIVF治療(IVF治療の効果がない)において安定であり、妊娠中に強い変化を受けるようである。
【0076】
(妊娠中及びIVF後の細菌個体群における特性変化)
妊娠中に発生する多数の細菌種のシフトは、主に、62±21%から18±16%までのLactobacillus属の減少であり(p<0.0001)、7±11%から41±29%までのStaphylococcus属の増大である(p<0.0001)。
【0077】
妊娠していないグループにおける、2回目のサンプルに対する1回目のサンプルの存在度は、Lactobacillus属、40±27に対する46±24、及び、Staphylococcus属、32±25に対する27±22、の両方に関して、変わらなかった。
【0078】
上記比較に関して、2回目のサンプルの採取の間妊娠していなかったが、1回目のサンプルの採取の後のある別の時間地点で妊娠した7人の女性は、妊娠していないグループに割り当てられた。7人のうち4人は、彼女らの1回目のサンプルにおいて、Staphylococcusを有していなかった。2人は、高存在でStaphylococcusを有し、続く第2年又は第3年で妊娠した(1人は流産し、1人は流産し、続いて2年後に自然妊娠に成功した)。7番目の女性は、高存在でStaphylococcusを有し、失敗したICSI、続いて失敗した1回目のIVF治療、その後、1年以内に自然妊娠した(流産)。
【0079】
(以前のUTI又は抗生物質の使用に対する、細菌個体群の関係)
妊娠したグループのうち、5人の女性(23%)が、過去にUTIを有していたと報告し、2人の女性(9%)が最近抗生物質を使用したと報告した。妊娠していないグループのうち、9人の女性(45%)が以前にUTIを有し、5人(25%)が最近抗生物質を使用した。違いは、統計学的には、有意ではなかった。以前のUTI又は抗生物質の使用を報告した女性における、細菌個体群の組成は、彼女らの各々のグループの別の女性におけるものとは有意に違わなかった。
【0080】
(IVF/ICSIの結果に対するIVF/ICSI前の細菌個体群)
IVF/ICSI治療前に得られた尿は、妊娠したグループと比較した妊娠していないグループに関して、より多くのStaphylococcus属(7±11%に対する27±22%、p<0.001)及びより少ないLactobacillus属(62±21%に対する46±24%、p<0.001)を含んだ。
【0081】
(妊娠した及び妊娠していない女性における、UTI及び膣感染症の主原因)
2009年に、エルビル(クルディスタン地域 イラク)にあるMaternity hospitalに通っている女性に関して、総数599の尿培養及び206の膣スミア培養が実行された。表6に、妊娠した又は妊娠していない各々である女性に関して、結果を示す。妊娠していない女性において、E coliが、全ての陽性の尿培養物の44%(70/158)で見受けられ、Staphylococcus aureusが22%(35/158)で見受けられた。妊娠した女性において、E coliが21%(75/350)で見受けられ、Staphylococcus aureusが50%で見受けられた(175/350)。
【0082】
膣スミアに関して、全ての陽性のスミアのうち、E coliが、29%(24/84)で見受けられた病原菌で、Staphylococcusが29%(25/84)で見受けられた病原菌であった。妊娠した情勢に関して、前記の数は、E coliに関して38%(28/74)であり、Staphylococcus aureusに関して49%(36/74)であった。尿に関して及びより少ない程度で膣スミアに関して、妊娠中にStaphylococcus aureusの存在が増大し(p<0.001)、E coliの存在が減少する(p<0.001)向きへのシフトがあった。
【0083】
表6
【0084】
【表6】

Pseudo.=pseudomonas species、Kleb.=Klebsiella species、enterob.=enterobacter species、Streptoc.=streptococcus speciesである。
【0085】
(IVF/ICSIの成功の見込みに関する予測モデル)
モデルは、1回目の尿サンプルで同定された細菌種の入力で、二項回帰分析によって作られた(IVF/ICSI前、n=42)。Lactobacillus属及びStaphylococcus属が、モデルに有意に寄与された。1回眼のIVF/ICSI後の妊娠の最善予測は、モデルY= 0.030*%Lactobacillus−0.057*%Staphylococcus−1.031で得られた。患者58が妊娠したグループに割り当てられたとき(彼女は、1回目のサンプルが採取されたころに妊娠した)、方程式はY=0.034*%Lactobacillus−0.064*%Staphylococcus−0.668になり、前記の%は、86%から96%まで増大して、妊娠を正しく予測した。1年の予測の間、方程式は、Y=0.051*%Lactobacillus−0.056*%Staphylococcus−1.053になった。表7は、1回目のIVF/ICSI試みのモデル及び1年期間のモデルに関するクロス集計値を示す。1年期間のモデルにおいて、複数のIVF/ICSI試みがなされた。
【0086】
表7
【0087】
【表7】

2つのモデルに関するROC曲線は、曲線の下の領域から(0.819、1回目の試み及び0.901、1年)、1年以内の妊娠が最も良好に予測され得るように見えるということを示す。この1年の予測において、不妊症の原因が、4つの偽陽性予測のうち3つ及び2つの偽陰性予測のうち1つに関して男性であった。4つの偽陽性予測のうち1つ及び2つの偽陰性予測のうち1つに関して、原因は不明であった。
【0088】
不妊性の下人と我々のモデルの予測力との間に関係性が存在するかどうかのテストのために、我々は、既知の原因の不妊症(n=30)及び未知の原因の不妊症(n=12)に、女性を細分化した(表8)。
【0089】
表8
【0090】
【表8】

2回目のサンプルの採取の間、妊娠しなかった女性、n=20に関して、新しいIVF/ICSI試みが開始された。2回目のサンプルに基づいて、これらの女性が、次の12ヶ月内でのこれらの新しい試みによって妊娠するかどうかを予測するために、1年のモデルを使用した。4人の女性は、その期間に妊娠した(患者10、14、19及び58)。表9は、モデルによって予測された結果に対する実際の結果を示す。新しい試みによって妊娠がもたらされる予測は、14/15(93%)のケースで正しかった。
【0091】
表9
【0092】
【表9】

モデルが妊娠の16番目の週で得られた尿に適用されたとき、モデルは、これらの女性がの誰も、続くIVF/ICSI治療から妊娠しないであろうと予測した。
【0093】
(Leave−one−outモデル)
予測モデルを検証するために、我々は、Leave−one−out手順を適用した。この手順において、モデルは、41の患者のデータから作られ、このモデルを、無視された患者からの尿データに適用し、この患者がIVF/ICSIの開始の1年内に妊娠するか否かを予測した。結果(表10)は、全グループの42で得られた結果と完全に整合する(表7)。
【0094】
表10
【0095】
【表10】

検証グループにおいて、モデルは、28のうちの24の妊娠及び16のうちの12の失敗を正しく予測した(表10)。
【0096】
(既存のモデル(5)に対する比較)
Nelsonからのモデルにおいて、生児出生に関する個々の見込みは、年齢、不妊治療の期間及びいくつかの別の臨床的パラメータに基づいて予測される。我々は、我々の研究グループに関するこれらのデータをモデルに入力し、生児出生が無い女性に対する、1年内での観察された生児出生を有する女性に関するその結果を比較した。予測見込みは、両方のグループに関して違わなかった(p=0.18、独立t−検定)。
【0097】
表11
【0098】
【表11】

(例2)
(Staphylococcus属及びLactobacillus属に関するqPCR)
例1で示された予測モデルは、Lactobacillus、Staphylococcus及び存在する細菌の総数の存在に関するデータを使用するので、それら3つの値を測定するために特異的に方向付けられたqPCR法を展開することを決定した。
【0099】
尿サンプルにおいて、PCRは、一般的なプライマーセット(EUB−R、EUB−L)で実行される。このPCRの生成物は、尿中の全ての細菌から得られる16S rDNAの混合物であり、したがって、細菌の総数に関して表現する。
【0100】
続いて、この全混合物において、qPCRが、3つのプライマーセット、一般的なプライマーセット、(複数のタイプの)Lactobacillusに関して特異的なプライマーセット及び(複数のタイプの)Staphylococcusに関して特異的なプライマーセットで実行される。
【0101】
最初のPCR生成物の全DNA含有量は、nanodropアッセイを介して測定される。この分析におけるDNAは、ほとんど全て、16S rDNAを含む。このnanodrop分析に基づいて、各々のアッセイにおけるDNAの全量は同じに保たれ得る。
【0102】
一般的なプライマーは、全ての16S rDNA断片と反応し、したがって、細菌個体群の100%を定義するCT値を提示する。一般的なプライマーセットは、また、最初のPCR生成物の希釈系列に関して検査されるであろう(1、0.8、0.6、0.4、0.2、0.1)。この希釈系列は、各々、全体の約80%、60%、40%、20%及び10%のDNAの量と整合するCT値をもたらすであろう。
【0103】
特異的なプライマーセットでのqPCRアッセイは、一般的なプライマーセットで得られたCT値と等しい(もし個体群が1つの種だけを含むなら)又はそれより高い(もし検査された種が、全個体群の一部だけであるなら)CT値をもたらすであろう。希釈系列に基づいて、パーセンテージが、この特異的なCT値に整合するかが決定され得る。
【0104】
(Staphylococcus aureusプライマーセット(下記中で公開されるように)):
Molecular analysis of bacterial population structure and dynamics during cold storage of untreated and treated milk. Rasolofo EA, St−Gelais D, LaPointe G, Roy D. Int J Food Microbiol. 2010 Mar 31;138(1−2):108−18. Epub 2010 Jan 20):
順方向(nt 61)プライマー 5’−GAGTAACACGTGGATAACCTACCTATAAGAC−3’
逆方向(nt 241)プライマー 5’−GCATCGTTGCCTTGGTAAGC−3
断片サイズ 201bp
(Lactobacillus crispatusプライマーセット(下記中で公開されるように)):
Quantitative PCR Assessments of Bacterial Species in Women with and without Bacterial Vaginosis. Marcela Zozaya−Hinchliffe, Rebecca Lillis,David H. Martin, and Michael J. Ferris, J Clin Microbiol. 2010 May; 48(5): 1812−1819; Published online 2010 March 19. doi: 10.1128/JCM.00851−09. PMCID: PMC2863870)
順方向プライマー GATTTACTTCGGTAATGACGTTAGGA
逆方向プライマー AGCTGATCATGCGATCTGCTTTC
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]