特許第6106263号(P6106263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6106263
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】半翅目昆虫種に対して毒性のタンパク質
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/325 20060101AFI20170316BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20170316BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20170316BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20170316BHJP
   A01H 5/00 20060101ALI20170316BHJP
   A01H 5/02 20060101ALI20170316BHJP
   A01H 5/04 20060101ALI20170316BHJP
   A01H 5/06 20060101ALI20170316BHJP
   A01H 5/08 20060101ALI20170316BHJP
   A01H 5/10 20060101ALI20170316BHJP
   A01H 5/12 20060101ALI20170316BHJP
   A01H 1/00 20060101ALI20170316BHJP
   A01N 61/00 20060101ALI20170316BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   C07K14/325
   C12N15/00 AZNA
   C12N5/10
   C12N1/21
   A01H5/00 A
   A01H5/02
   A01H5/04
   A01H5/06
   A01H5/08
   A01H5/10
   A01H5/12
   A01H1/00 A
   A01N61/00 D
   A01P7/04
【請求項の数】20
【全頁数】97
(21)【出願番号】特願2015-504744(P2015-504744)
(86)(22)【出願日】2013年4月5日
(65)【公表番号】特表2015-514116(P2015-514116A)
(43)【公表日】2015年5月18日
(86)【国際出願番号】US2013035388
(87)【国際公開番号】WO2013152264
(87)【国際公開日】20131010
【審査請求日】2016年3月22日
(31)【優先権主張番号】61/621,436
(32)【優先日】2012年4月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501231613
【氏名又は名称】モンサント テクノロジー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ・エイ・ボーム
(72)【発明者】
【氏名】アルテム・ジー・エブドキモフ
(72)【発明者】
【氏名】ファーハッド・モシリ
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・ジェイ・ライデル
(72)【発明者】
【氏名】エリック・ジェイ・スターマン
(72)【発明者】
【氏名】モリッツ・フォン・レッヒェンベルク
(72)【発明者】
【氏名】ハロン・ブ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・エム・ウォラコット
(72)【発明者】
【氏名】メイイン・ジェン
【審査官】 名和 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0064394(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0295207(US,A1)
【文献】 J.Invertebr.Pathol.,2007,95(3),p.175-180
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号34に記載されるアミノ酸配列を含む昆虫阻害ポリペプチドであって、前記昆虫阻害ポリペプチドは半翅目昆虫種に対する阻害活性を呈する、昆虫阻害ポリペプチド
【請求項2】
前記半翅目昆虫種は、リグス(Lygus)種エムポアスカ(Empoasca)種、およびアムラスカ(Amrasca)種から成る群から選択される、請求項に記載の昆虫阻害ポリペプチド
【請求項3】
前記半翅目昆虫種は、リグス・ヘスペルス(Lygus hesperus)、リグス・リネオラリス(Lygus lineolaris)アムラスカ・デバスタンス(Amrasca devastans)、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項に記載の昆虫阻害ポリペプチド
【請求項4】
列番号201に記載される配列と99%同一性であるヌクレオチド配列を含む、請求項1から3のいずれかに記載の昆虫阻害ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項5】
前記ポリヌクレオチドは、配列番号201に記載される配列と100%同一性である、請求項4に記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
アグロバクテリウム、リゾビウム、バチルス、エシェリキア、シュードモナス、およびサルモネラから成る群から選択される細菌宿主細胞、または植物宿主細胞である、請求項4または5に記載のポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
【請求項7】
前記細菌宿主細胞は、バチルス・チューリンゲンシスまたは大腸菌である、請求項6に記載の宿主細胞。
【請求項8】
配列番号34に記載されるアミノ酸配列を含む昆虫阻害ポリペプチドをコードする配列番号201に記載される配列と99%同一性であるポリヌクレオチドを含む、トランスジェニック植物またはその部分。
【請求項9】
前記ポリヌクレオチドは、配列番号201に記載されるヌクレオチド配列を含む、請求項8に記載のトランスジェニック植物またはその部分。
【請求項10】
前記トランスジェニック植物は、アルファルファ、アーモンド、バナナ、オオムギ、マメ、ビート、ブロッコリ、キャベツ、アブラナ属、ナス(brinjal)、ニンジン、キャッサバ、ヒマ、カリフラワー、セロリ、ヒヨコマメ、ハクサイ、セロリ、柑橘類、ココナツ、コーヒー、トウモロコシ、クローバ、綿、ウリ、キュウリ、ダグラスファー、ナス(eggplant)、ユーカリ、亜麻、ニンニク、ブドウ、グアー、ホップ、リーキ、マメ類、レタス、テーダマツ、キビ、メロン、ネクタリン、ナッツ、オートムギ、オクラ、オリーブ、タマネギ、観賞植物、ヤシ、牧草、パパイヤ、エンドウ、モモ、ピーナッツ、コショウ、キマメ、マツ、ジャガイモ、ポプラ、カボチャ、ラジアータマツ、ダイコン、ナタネ、コメ、台木、ライムギ、ベニバナ、低木、ソルガム、サザンパイン、大豆、ホウレンソウ、スクオッシュ、イチゴ、テンサイ、サトウキビ、ヒマワリ、スイートコーン、モミジバフウ、サツマイモ、スイッチグラス、茶、タバコ、トマト、ライコムギ、芝草、スイカ、およびコムギから成る群から選択される、請求項8に記載のトランスジェニック植物またはその部分。
【請求項11】
前記トランスジェニック植物またはその部分は綿植物である、請求項10に記載のトランスジェニック植物またはその部分。
【請求項12】
記部分は、花粉、胚珠、種子、実、葉、花、茎、根、および細胞から成る群から選択される、請求項8に記載のトランスジェニック植物またはその部分。
【請求項13】
請求項1に記載の昆虫阻害ポリペプチドまたは前記昆虫阻害ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、昆虫阻害組成物。
【請求項14】
前記昆虫阻害ポリペプチドとは異なり、鱗翅目、鞘翅目、異翅目、または同翅目の1つ以上の有害生物種に対する活性を呈する少なくとも1つの昆虫阻害剤をさらに含む請求項13に記載の昆虫阻害組成物であって、前記少なくとも1つの昆虫阻害剤は、昆虫阻害タンパク質、昆虫阻害dsRNA分子、および昆虫阻害化学物質から成る群から選択される、昆虫阻害組成物。
【請求項15】
半翅目の有害生物を制御する方法であって、前記半翅目の有害生物阻害量の請求項1から3のいずれかに記載の昆虫阻害ポリペプチドを与えることを含む、方法。
【請求項16】
前記与えることは、綿植物において前記昆虫阻害ポリペプチドを発現させることによる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
半翅目の有害生物を制御する方法であって、前記半翅目の有害生物を請求項に記載のトランスジェニック植物またはその部分に曝露することを含み、前記トランスジェニック植物またはその部分は、半翅目阻害量の前記昆虫阻害ポリペプチドを発現する、方法。
【請求項18】
請求項に記載のトランスジェニック植物またはその部分から得られる商品産物であって、前記商品産物は、植物バイオマス、油、食物、動物飼料、、フレーク、ふすま、リント、および皮から成る群から選択され、検出可能な量の前記昆虫阻害ポリペプチドを含む、商品産物。
【請求項19】
植物を半翅目の有害生物の侵入に対して抵抗性にする方法であって、操作された半翅目の毒素タンパク質(eHTP)をコードする配列番号201に記載されるヌクレオチド配列を含む組み換えポリヌクレオチドを植物細胞に導入するステップと、前記植物細胞から、昆虫阻害量のeHTPを発現するトランスジェニック植物を再生するステップと、半翅目の有害生物の侵入抵抗を前記トランスジェニック植物の特性として実証するステップと、を含み、
前記植物は、任意に、
a.双子葉植物および単子葉植物から成る群から選択されるか、
b.アルファルファ、アーモンド、バナナ、オオムギ、マメ、ビート、ブロッコリ、キャベツ、アブラナ属、ナス(brinjal)、ニンジン、キャッサバ、ヒマ、カリフラワー、セロリ、ヒヨコマメ、ハクサイ、セロリ、柑橘類、ココナツ、コーヒー、トウモロコシ、クローバ、綿、ウリ、キュウリ、ダグラスファー、ナス(eggplant)、ユーカリ、亜麻、ニンニク、ブドウ、グアー、ホップ、リーキ、マメ類、レタス、テーダマツ、キビ、メロン、ネクタリン、ナッツ、オートムギ、オクラ、オリーブ、タマネギ、観賞植物、ヤシ、牧草、パパイヤ、エンドウ、モモ、ピーナッツ、コショウ、キマメ、マツ、ジャガイモ、ポプラ、カボチャ、ラジアータマツ、ダイコン、ナタネ、コメ、台木、ライムギ、ベニバナ、低木、ソルガム、サザンパイン、大豆、ホウレンソウ、スクオッシュ、イチゴ、テンサイ、サトウキビ、ヒマワリ、スイートコーン、モミジバフウ、サツマイモ、スイッチグラス、茶、タバコ、トマト、ライコムギ、芝草、スイカ、およびコムギから成る群から選択されるか、または
c.前記eHTPとは異なる昆虫阻害タンパク質、昆虫阻害dsRNA分子、および昆虫阻害化学物質から成る群から選択される補助的薬剤を含み、
前記eHTPとは異なる前記昆虫阻害タンパク質は、Cry1毒素、Cry2毒素、Cry5毒素、Cry7毒素、Cry9毒素、およびVIP3毒素から成る群から選択され、
前記昆虫阻害化学物質は、ピレトリンおよび合成ピレスロイド;オキサジアジン(oxadizine)誘導体;クロロニコチニル;ニトログアニジン誘導体;トリアゾール;有機リン酸;ピロール;ピラゾール;フェニルピラゾール;ジアシルヒドラジン;生物学的/発酵産物;およびカルバメートから成る群から選択される、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、前記半翅目昆虫有害生物は、植物虫(カスミカメムシ科を含む)、セミ科からのセミ、ヨコバイ(例えば、エンポアスシニ(Empoascini)族を含むオオヨコバイ科からのエムポアスカ(Empoasca)種、アムラスカ(Amrasca)種、例えば、アムラスカ・ビグッチュラ(Amrasca biguttula)、アムラスカ・デバスタンス、アウストロアスカ・ヴィリジグリセア(Austroasca viridigrisea)、アシンメトラスカ・デセデンス(Asymmetrasca decedens)、エムポアスカ・デシピエンス(Empoasca decipiens)、エムポアスカ・ディスティングエンダ(Empoasca distinguenda)、エムポアスカ・ドリチ(Empoasca dolichi)、エムポアスカ・ファバエ(Empoasca fabae)、エムポアスカ・ケリ(Empoasca kerri)、エムポアスカ・クラエメリ(Empoasca kraemeri)、エムポアスカ・オヌキイ(Empoasca onukii)、エムポアスカ・サカイイ(Empoasca sakaii)、エムポアスカ・スミチ(Empoasca smithi)、エムポアスカ・ビティス(Empoasca vitis)、ヤコビアスカ・リビカ(Jacobiasca lybica)、ソナサスカ・ソラナ(Sonasasca Solana)、エリスロニューリニ(Erythroneurini)族、例えば、エムポアスカナラ・ナグプレンシス(Empoascanara nagpurensis)、タイアアサメンシス(Thaiaassamensis)、ジグニディア・クユミ(Zygnidia quyumi)、ニルバニアエ(Nirvaniae)族、ソフォニア・ルフォファスシア(Sophonia rufofascia)、ウンカ科、例えば、ニラパルヴァータ・ルーゲンス(Nilapoarvata lugens)、ソガテラ・フルシフェラ(Sogatella furcifera)、サッポロトビウンカ(Unkanodes sapporonus)、およびアシブトウンカ科、例えば、ゾフィウマ・ロブラタ(Zophiuma lobulata))、ウンカ(ビワハゴロモ上科およびウンカ科から)、ツノゼミ(ツノゼミ科から)、キジラミ(キジラミ科から)、コナジラミ(コナジラミ科から)、アブラムシ(アブラムシ科から)、ネアブラムシ(ネアブラムシ科から)、コナカイガラムシ(コナカイガラムシ科から)、カイガラムシ(カタカイガラムシ科、マルカイガラムシ科、およびワタフキカイガラムシ科から)、グンバイムシ(グンバイムシ科から)、カメムシ(カメムシ科から)、ナガカメムシ(例えば、ブリッサス(Blissus)種、およびナガカメムシ科からの他の種子虫)、アワフキムシ(アワフキムシ科から)、ヘリカメムシ(ヘリカメムシ科から)、ツツガムシおよびアカホシカメムシ(ホシカメムシ科から)、アクロステルヌム・ヒラレ(Acrosternum hilare)(アオカメムシ)、アナサ・トリスティス(Anasa tristis)(ヘリカメムシ)、ブリッサス・ロイコプテルス・ロイコプテルス(Blissus leucopterus leucopterus)(ヒメコバネナガカメムシ)、コリスカ・ゴシピイ(Corythuca gossypii)(コットンレースバグ(cotton lace bug))、シルトペルティス・モデスタ(Cyrtopeltis modesta)(トマトバグ(tomato bug)、ディスデルクス・スツレルス(Dysdercus suturellus)(アカホシカメムシ)、ユースキスツス・セルバス(Euschistus servus)(ブラウンスティンクバグ(brown stink bug))、ユースキスツス・バリオラリウス(Euschistus variolarius)(ワンスポッテッドスティンクバグ(one−spotted stink bug))、グラプトステツス(Graptostethus)種(種子虫の複合)、レプトグロッスス・コルクルス(Leptoglossus corculus(リーフ・フッテッドパインシードバグ(leaf−footed pine seed bug))、リグス・リネオラリス(ミドリメクラガメ)、リグス・ヘスペルス(ウエスタンターニッシュプラントバグ(western tarnish plant bug))、ネザラ・ビリヅラ(Nezara viridula)(ミナミアオカメムシ)、オエバルス・プグナクス(Oebalus pugnax)(イネカメムシ)、オンコペルツス・ファスシアツス(Oncopeltus fasciatus)(ラージミルクウィードバグ(large milkweed bug))、およびシューダトモスセリス・セリアツス(Pseudatomoscelis seriatus)(ワタノミハムシ)から成る群から選択される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる、2012年4月6日に出願された米国仮出願第61/621,436号への優先権を主張する。
【0002】
配列表の組み込み
サイズが529,794バイトであり(オペレーティングシステムMS−Windowsにおいて測定)、2013年4月4日に作成された、「38_21_56191_APCT_Sequence Listing_ST25.txt」という名称のファイルに含有される配列表は、電子提出(米国特許庁EFS−Web出願システムを使用)によって同時に出願され、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、概して、昆虫阻害タンパク質の分野に関する。具体的には、本発明は、作物植物および種子の農学的に関連する有害生物、特に、半翅目種の昆虫有害生物に対する昆虫阻害活性を呈するタンパク質に関する。
【背景技術】
【0004】
バチルス・チューリンゲンシス(Bt)に由来する昆虫阻害タンパク質は、ヒト、脊椎動物、および植物に対しては非毒性である。これらのタンパク質はまた、生分解性であり、安全であり、かつ害虫を制御する上で有効である。これらのタンパク質のうちの一部は、これらのタンパク質を含有する製剤、もしくはそれらを発現する微生物を植物に噴霧すること、これらのタンパク質を含有する処理剤で種子を処理すること、または植物に組み込まれた保護剤として、作物植物および作物植物の種子においてこれらのタンパク質を発現させることによって、作物植物の農学的に関連する有害生物を制御するために使用されてきた、かつ使用されている。
【0005】
ある半翅目種、特に、アムラスカ(Amrasca)、エムポアスカ(Empoasca)、およびリグス(Lygus)虫は、綿およびアルファルファの有害生物であり、典型的に、広域スペクトルの化学物質、例えば、エンドスルファン、アセフェート、およびオキサミルを使用して制御され、これらは、環境内に残存し得、かつ環境に有害である。少数のBtタンパク質が、鞘翅目および鱗翅目の有害生物種を制御するように、農業従事者による商業的使用のために、製剤において、または作物植物のトランスジェニック形質として開発されているが、半翅目の有害生物種の商業的制御における使用のために開発されたBtタンパク質はない。
【0006】
半翅目に特異的な毒性タンパク質が、当該技術分野において報告されている。TIC807は、半翅目の有害生物種に対して毒性であるとして、米国特許出願公開第US2008−0295207 A1号において開示される、バチルス・チューリンゲンシスタンパク質である。TIC807のアミノ酸配列に酷似する、鱗翅目種に対して毒性として報告されるCry51Aa1タンパク質もまた、開示されている(Huang et al.,(2007) J.Invertebr.Pathol.95(3),175−180)が、半翅目に特異的な活性は報告されなかった。Baumらは、リグス有害生物種に対して毒性であることが報告されるタンパク質である、TIC853を開示した(米国特許出願公開第US2010−0064394 A1号)。AXMI−171と称されるタンパク質は、半翅目昆虫、特に、リグス・ヘスペルス(Lygus hesperus)のいくらかの限られた阻害を呈することが報告された(米国特許出願公開第US2010−0298207 A1号、実施例18)。
【0007】
これらのタンパク質のすべては、リグス・ヘスペルスのみに対する狭い範囲の毒性を呈し、植物における発現によって達成可能であるとは考えられない高用量においてのみ、他のリグス有害生物種に対する毒性効果を呈する。先行技術における半翅目の毒性タンパク質と比較して、半翅目の有害生物種に対する広い宿主域を呈する植物上および内で、かつ低濃度の有効用量で使用することができる、毒素タンパク質の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0008】
本明細書において説明される組み換え操作された半翅目の毒性タンパク質(本明細書において、「操作された毒素タンパク質」、「操作された毒性タンパク質」、「操作された半翅目の毒性タンパク質」、または「操作された半翅目の毒素タンパク質」と称され、また、2つ以上のかかるタンパク質の群において言及される時、短縮形で「eHTP(eHTP’s)」、および単数で言及される時、「eHTP」と称される)は、自然発生のバチルス・チューリンゲンシス殺虫毒素の誘導体であり、TIC807(配列番号2)、TIC807_M2(配列番号8)、Cry51Aa1(配列番号182)、TIC853(配列番号184)、およびAXMI−171(配列番号206)が、半翅目の有害生物種、特に、リグス・ヘスペルス昆虫種を対象とする生物制御活性を呈することがこれまでに説明されている(参照は本明細書の他の箇所で引用される)。本発明の組み換え半翅目昆虫毒性タンパク質は、アムラスカ、エムポアスカ、およびリグス種の昆虫有害生物、ならびにこれらの種の昆虫有害生物の各々に系統発生学的に関連する他の昆虫有害生物種、ならびにさらに半翅目の有害生物種のアムラスカ、エムポアスカ、およびリグス種によって使用される突刺および吸汁機構を使用して、植物を摂食する、昆虫有害生物の昆虫に対して特に毒性である。それらが由来し、1つのリグス種において毒性効果を達成するために、およびリグスの2番目に密接に関連する種において非常に低いもしくは事実上検出不可能な毒性効果を呈するために、適度に高い〜高い用量のタンパク質を各々必要とする、前駆体殺虫毒素であるTIC807(配列番号2)、TIC807_M2(配列番号8)、Cry51Aa1(配列番号182)、TIC853(配列番号184)、およびAXMI−171(配列番号206)とは異なり、本発明のeHTPタンパク質は、半翅目内の有害生物のスペクトルに跨る宿主域の毒性効果を含む、該目の昆虫有害生物に対する、驚くべきかつ予想外の低用量の毒性効果を呈する。
【0009】
本発明のeHTPは、各々、配列番号2、配列番号8、配列番号182、または配列番号184のうちのいずれかに記載される毒素タンパク質のうちの1つ以上の、1次アミノ酸配列と比較して、少なくとも1つのアミノ酸置換、1つのアミノ酸付加、または1つのアミノ酸欠失を含有する。ある実施形態において、配列番号2(TIC807)、配列番号8(TIC807_M2)、配列番号182(Cry51Aa1)、配列番号184(TIC853)、および/または配列番号206(AXMI−171)のうちのいずれかに記載される毒素の任意の1つ以上よりも、リグス有害生物種に対する少なくとも約2〜約260倍大きい阻害活性を含有する、eHTPが提供される。任意に、eHTPは、配列番号2(TIC807)および配列番号182(Cry51Aa1)から成る群から選択される毒素タンパク質に対して、少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を呈する。ある実施形態において、配列番号2、配列番号8、配列番号182、または配列番号184のうちのいずれかのアミノ酸配列と比較した時、少なくとも1つのアミノ酸置換、少なくとも1つのアミノ酸付加、または少なくとも1つのアミノ酸欠失を含有するeHTPが提供される。eHTPは、配列番号2、配列番号8、配列番号182、および配列番号184に記載されるもののバチルス・チューリンゲンシスタンパク質の活性および標的有害生物種スペクトルと比較して、増加したまたはより大きいリグス阻害活性および標的有害生物種スペクトルを呈する。前述のeHTPの各々は、少なくとも、集合的に、または代替的に、(i)配列番号2の溶媒露出アミノ酸残基におけるアミノ酸置換、付加、もしくは欠失、(ii)配列番号2の溶媒露出アミノ酸残基の3つの連続した残基内のアミノ酸置換、付加、もしくは欠失、または(iii)配列番号180に記載されるようなアミノ酸配列を含有する。前述のeHTPは、各々、少なくとも、TIC807のアミノ酸位置に従って付番されるアミノ酸配列位置を参照して、12位がアスパラギン酸によって置き換えられるアスパラギン、46位がセリンによって置き換えられるフェニルアラニン、52位がメチオニンによって置き換えられるイソロイシン、54位がヒスチジンによって置き換えられるチロシン、68位がアラニンによって置き換えられるトレオニン、70位がアラニンによって置き換えられるグルタミン、87位がセリンによって置き換えられるアラニン、93位がアラニンによって置き換えられるトレオニン、95位がアラニンによって置き換えられるセリン、105位がアラニンによって置き換えられるグリシン、117位がアラニンによって置き換えられるセリン、119位がアラニンによって置き換えられるセリン、125位がシステイン、ヒスチジン、アルギニン、フェニルアラニン、セリン、グルタミン、リジン、トレオニン、アスパラギン、アラニン、ロイシン、バリン、メチオニン、アスパラギン酸、もしくはチロシンによって置き換えられるグルタミン酸塩、128位がアラニンによって置き換えられるグリシン、133位がグルタミン酸、チロシン、もしくはトリプトファンによって置き換えられるトレオニン、134位がアラニン、バリン、ロイシン、フェニルアラニン、リジン、システイン、もしくはメチオニンによって置き換えられるイソロイシン、135位がセリン、アラニン、バリン、トリプトファン、もしくはトレオニンによって置き換えられるグルタミン酸塩、137位がヒスチジン、チロシン、トレオニン、グルタミン酸、セリン、アラニン、グルタミン、グリシン、イソロイシン、トリプトファン、リジン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、もしくはアルギニンによって置き換えられるアスパラギン、138位がバリンによって置き換えられるフェニルアラニン、セリンによって置き換えられるAla139、アラニンによって置き換えられるThr145、セリン、バリン、トレオニン、システイン、ロイシン、アスパラギン酸、アラニン、グリシン、グルタミン酸、イソロイシン、チロシン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン(hystidine)、アラニン、アルギニン、トリプトファン、もしくはプロリンによって置き換えられるPhe147、148位がアラニンによって置き換えられるグルタミン、149位がアスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、アラニン、もしくはフェニルアラニンによって置き換えられるグルタミン、150位がセリン、ロイシン、バリン、グリシン、アスパラギン酸、トリプトファン、グルタミン酸、アスパラギン、チロシン、フェニルアラニン、プロリン、リジン、トレオニン、グルタミン、もしくはアルギニンによって置き換えられるアラニン、151位がアラニンによって置き換えられるセロイン(seroine)、153位がアラニンによって置き換えられるアスパラギン酸塩、155位がシステイン、イソロイシン、リジン、アスパラギン酸、ヒスチジン、チロシン、グルタミン、リジン、アスパラギン、トレオニン、アラニン、フェニルアラニン、アルギニン、メチオニン、プロリン、トリプトファン、セリン、もしくはバリンによって置き換えられるグルタミン酸塩、157位がシステイン、アスパラギン酸、トリプトファン、チロシン、メチオニン、アラニン、フェニルアラニン、バリン、ロイシン、プロリン、グルタミン酸、トレオニン、グリシン、イソロイシン、もしくはアルギニンによって置き換えられるアスパラギン、158位がアラニンによって置き換えられるイソロイシン、159位がアラニンもしくはトレオニンによって置き換えられるセリン、167位がアルギニンもしくはアラニンによって置き換えられるセリン、175位がアラニンによって置き換えられるバリン、177位がアラニンによって置き換えられるメチオニン、180位がアスパラギン酸によって置き換えられるアスパラギン、182位がアラニンによって置き換えられるトレオニン、187位がアラニンによって置き換えられるロイシン、196位が欠失するヒスチジン、197位が欠失するチロシン、198位が欠失するセリン、199位が欠失するヒスチジン、200位がアラニンによって置き換えられるチロシン、200位が欠失するチロシン、アラニンによって置き換えられるSer201、201位が欠失するセリン、208位がアラニンによって置き換えられるトリプトファン、217位がアスパラギンによって置き換えられるセリン、219位がアルギニンによって置き換えられるプロリン、223位がチロシンによって置き換えられるトリプトファン、235位がアラニンによって置き換えられるフェニルアラニン、239位がアラニンによって置き換えられるアスパラギン、241位がアラニンによって置き換えられるアスパラギン酸塩、243位がアラニンによって置き換えられるトレオニン、244位がイソロイシンによって置き換えられるバリン、245位がアラニンによって置き換えられるトレオニン、246位がフェニルアラニンによって置き換えられるチロシン、247位がアラニンもしくはリジンによって置き換えられるトレオニン、249位がアラニンもしくはアルギニンによって置き換えられるセリン、250位がアラニンによって置き換えられるバリン、251位がアラニンによって置き換えられるバリン、252位がアラニンによって置き換えられるセリン、273位がトリプトファンによって置き換えられるアルギニン、274位がアラニンによって置き換えられるトレオニン、275位がアラニンによって置き換えられるイソロイシン、282位がアラニンによって置き換えられるアルギニン、287位がアラニンもしくはフェニルアラニンによって置き換えられるヒスチジン、293位がアラニンによって置き換えられるセリン、295位がアラニンによって置き換えられるアスパラギン、299位がアラニンによって置き換えられるグルタミン酸塩、300位がアラニンによって置き換えられるメチオニン、303位がアラニンによって置き換えられるトレオニン、305位がアラニンによって置き換えられるプロリン、306位がアラニンによって置き換えられるイソロイシン、および308位がアラニンによって置き換えられるトレオニンから成る群から選択される1つの置換もしくは欠失を含有するか、またはタンパク質は、言及される置換および/もしくは欠失の任意の組み合わせを含む。eHTPは、配列番号2のアミノ酸残基、または(i)少なくとも約15%〜少なくとも約36%の相対的溶媒露出度を有するアミノ酸残基、および(ii)少なくとも約15%〜少なくとも約36%の相対的溶媒露出度を有するアミノ酸からの約3つの連続した残基の距離内に位置するアミノ酸残基から成る群から選択される、配列番号8、配列番号182、もしくは配列番号184の対応するアミノ酸位置において、少なくとも1つのアミノ酸置換、1つのアミノ酸付加、もしくは1つのアミノ酸欠失を含有する。本発明のeHTPは、配列番号2のThr93、Ser95、Ser97、Phe147、Gln149、Ser151、Asn180、Thr182、Val251、Gln253、およびSer255から成る群から選択されるアミノ酸残基における、少なくとも1つのアミノ酸置換、付加、もしくは欠失を含有する。前述のeHTPのうちのいずれかは、配列番号2のVal10、Ile14、Asn22、Asn23、Gly24、Ile25、Gln26、Gly27、Phe30、Gln38、Ile39、Asp40、Thr41、Ile43、Ser193、Thr194、Glu195、His196、Tyr197、Ser198、His199、Tyr200、Ser201、Gly202、Tyr203、Pro204、Ile205、Leu206、Thr207、Trp208、Ile209、Ser210、Tyr216、Ser217、Gly218、Pro219、Pro220、Met221、Ser222、Trp223、Tyr224、Phe225、Asn239、およびVal244から成る群から選択されるアミノ酸残基、または配列番号8、配列番号182、もしくは配列番号184の対応するアミノ酸残基位置において、少なくとも1つの追加のアミノ酸置換、付加、もしくは欠失を含有し得る。前述のeHTPのうちのいずれかは、S95A、F147A、Q149E、V251A、P219Rから成る群から選択される1つ以上の修飾、および配列番号2に記載されるようなアミノ酸残基196〜201からの任意の3つの連続したアミノ酸の欠失を含有してもよい。本発明のeHTPのうちのいずれかは、配列番号2、配列番号8、配列番号182、もしくは配列番号184のうちのいずれかに記載されるような基本的な自然発生のバチルス・チューリンゲンシスタンパク質と比較して、増加した溶解度を呈するようにさらに修飾することができ、eHTPは、配列番号2に記載されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも1つ以上のアミノ酸配列修飾を含有する。修飾(複数を含む)は、少なくとも、配列番号2内の58、59、198、199、201、もしくは202として定義されるアミノ酸位置のうちの1つ以上におけるリジン置換;配列番号2内の198、248、もしくは301として定義されるアミノ酸位置のうちの1つ以上におけるグルタミン酸残基置換;または配列番号2内の246、250、もしくは253として定義されるアミノ酸位置のうちの1つ以上におけるアルギニン残基置換を含有する。配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号
63、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号86、配列番号87、配列番号88、配列番号89、配列番号90、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号103、配列番号104、配列番号105、配列番号106、配列番号107、配列番号108、配列番号109、配列番号110、配列番号111、配列番号112、配列番号113、配列番号114、配列番号115、配列番号116、配列番号117、配列番号118、配列番号119、配列番号120、配列番号121、配列番号122、配列番号13、配列番号124、配列番号125、配列番号126、配列番号127、配列番号128、配列番号129、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135、配列番号136、配列番号137、配列番号138、配列番号139、配列番号140、配列番号141、配列番号142、配列番号143、配列番号144、配列番号145、配列番号146、配列番号147、配列番号148、配列番号149、配列番号150、配列番号151、配列番号152、配列番号153、配列番号154、配列番号155、配列番号156、配列番号157、配列番号158、配列番号159、配列番号160、配列番号161、配列番号162、配列番号163、配列番号164、配列番号165、配列番号166、配列番号167、配列番号168、配列番号169、配列番号170、配列番号171、配列番号172、配列番号173、配列番号174、配列番号175、配列番号176、配列番号177、配列番号178、配列番号179、配列番号202、および配列番号204、またはこれらの昆虫阻害断片から成る群から選択されるアミノ酸配列を有するeHTPが、本発明の好ましい実施形態である。本発明のeHTPによって阻害される標的の半翅目有害生物種としては、少なくとも、リグス・ヘスペルス、リグス・リネオラリス(Lygus lineolaris)、エムポアスカ・ファバエ(Empoasca fabae)、およびアムラスカ・デバスタンス(Amrasca devastans)、ならびに互いに系統発生学的に関連する、または植物を摂食するために突刺および吸汁手法を使用する、半翅目内の他の有害生物が挙げられる。
【0010】
有害生物を半翅目阻害量の本発明のeHTPと接触させることによって、半翅目の有害生物を制御する方法、ならびに少なくとも、半翅目制御量(もしくは半翅目阻害量)の本発明のeHTPのうちの1つ以上を含有する、昆虫阻害組成物が提供される。ある実施形態において、本明細書において開示されるeHTPのうちのいずれかを含む昆虫阻害組成物が提供される。これらの方法のある実施形態において、半翅目の有害生物は、綿畑、大豆畑、またはアルファルファ畑にいる。半翅目毒性もしくは半翅目制御組成物は、少なくとも1つ以上のeHTPとともに、昆虫阻害タンパク質、昆虫阻害dsRNA分子、および昆虫阻害化学物質から成る群から選択される補助的薬剤を含有することができる。これらの薬剤の各々は、半翅目制御特性を呈することができるか、鱗翅目種もしくは鞘翅目種といった半翅目種に関連しない有害生物を制御するための特性を呈することができるか、または1つ以上の半翅目種および1つ以上の鱗翅目もしくは鞘翅目種が同時に制御される二重方式の作用特性を呈し得る。
【0011】
本発明のeHTPをコードする組み換えポリヌクレオチドが提供される。本発明のポリヌクレオチドを含有する微生物もまた、提供され、かかる微生物内のかかるポリヌクレオチドは、動作的に連結された機能的な遺伝子調節要素から本発明のeHTPを発現するように設計される発現カセット内に機能的に位置付けられる。微生物は、細菌細胞、ならびにトランスジェニック植物細胞を含むことが意図される。かかるトランスジェニック植物細胞は、同様に組み換えポリヌクレオチドを含有する全植物、または植物部分へ再生させることができる。各々が半翅目阻害量のeHTPを発現する、細菌細胞、またはトランスジェニック植物細胞、植物、もしくは植物部分にかかわらず、微生物に有害生物を曝露することによって、半翅目の有害生物を制御する方法もまた、提供される。組み換えポリヌクレオチドは、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号186、配列番号187、配列番号188、配列番号189、配列番号190、配列番号191、配列番号192、配列番号193、配列番号194、配列番号195、配列番号196、配列番号197、配列番号198、配列番号199、配列番号200、配列番号201、および配列番号203、または本発明のタンパク質のうちの1つ以上をコードするように組み立てることができる他の配列から成る群から選択されるヌクレオチド配列を含有してもよい。ある実施形態において、組み換えポリヌクレオチドは、組み換えポリヌクレオチドによってコードされるeHTPとは異なる、1つ以上の昆虫阻害剤をコードするヌクレオチド配列をさらに含むことができる。トランスジェニック植物部分は、種子、実、葉、花、花粉、茎、根、またはこれらの任意の部分である。トランスジェニック植物部分は、種子、実、葉、花、茎、または根の再生不可能な部分であってもよい。また、半翅目の有害生物を制御する方法も提供され、トランスジェニック微生物、細菌、植物細胞、植物、または植物部分を、標的有害生物に曝露することを含み、微生物、細菌、植物細胞、植物、または植物部分は、組み換えポリヌクレオチドによってコードされる、半翅目阻害量のeHTPを発現する。
【0012】
検出可能な量のeHTPをコードする組み換えポリヌクレオチド、またはその任意の特徴的な半翅目制御部分を含有する、加工された植物産物もまた、提供される。かかる加工された産物としては、植物バイオマス、油、食物、動物飼料、、フレーク、ふすま、リント、外皮、および加工された種子が挙げられるが、これらに限定されない。加工された産物は、再生不可能であってもよい。
【0013】
組み換えポリヌクレオチドを植物細胞に導入すること、および組み換えポリヌクレオチドによってコードされる昆虫阻害量のeHTPを発現するトランスジェニック植物を選択することによって、トランスジェニック植物を作製する方法もまた、提供される。該方法は、本明細書において提供されるeHTPのうちのいずれかをコードする組み換えポリヌクレオチドを植物細胞に導入することと、組み換えポリヌクレオチドによってコードされる昆虫阻害量のeHTPを発現するトランスジェニック植物を選択することと、を含む。
【0014】
本発明の他の実施形態、特性、および利点は、以下の発明を実施するための形態、実施例、および特許請求の範囲から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】eHTPタンパク質濃度に対してプロットされるリグス種の致死率を例解する。図1Aは、自然発生のTIC807タンパク質を含有する対照試料と比較した、種々の濃度の4つの異なるeHTPに応答する、リグス・ヘスペルス個体群の致死率を例解する。図1Bは、自然発生のTIC807タンパク質を含有する対照試料と比較した、種々のタンパク質濃度の3つの異なるeHTPに応答する、リグス・リネオラリス個体群の致死率を例解する。
図2】TIC807もしくは関連するタンパク質内の同じアミノ酸位置の相対位置と比較して、毒性効果を増加させる、および/または宿主域特異性を広げる、結果をもたらすのに有効な変化の相対位置を示す、本発明の半翅目毒性タンパク質の原子構造のリボン図を例解する。2つの表面パッチが、リボン図における原子構造内の特定の残基位置を囲む球体によって例解される:[1]1つの球体は、S95(配列番号2に記載されるようなS95位に対する)のベータ炭素原子からの約9.2〜約12.2オングストロームの原子半径を有する;[2]別の球体は、P219(配列番号2に記載されるようなP219位に対する)のベータ炭素原子からの約9.2〜約12.2オングストロームの原子半径を有する。これらの球体内にあるリボン構造内のアミノ酸への変化は、その特定の位置において自然発生のアミノ酸を有するタンパク質と比較して、増加した毒性特性およびより広い宿主域毒性効果を引き起こす結果をもたらすのに有効である。
図3】互いに、および自然発生のTIC807タンパク質と比較した、13の異なるeHTPに関するリグス種の個体群致死率を例解するチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本出願は、eHTP(操作された半翅目種毒性タンパク質)を説明する。本発明のeHTPは、当該技術分野においては既知であり、先行技術のタンパク質は、1つ以上の半翅目の有害生物種を対象とする改善された毒性特性を呈するように操作されず、広い宿主域レベルの阻害活性を呈しないため、eHTPという用語の範囲および定義内ではないと見なされる、TIC807、TIC853、Cry51Aa1、およびAXMI−171といったタンパク質からは区別されるものとする。eHTPは、驚くべきことに、かつ予想外に、半翅目および関連する有害生物種に対して高レベルの毒性活性を呈する。さらにより予想外であり、かつ驚くべき、これらのeHTPのさらなる特性は、これらのタンパク質が、本発明のeHTPに対する基本的基盤を提供する前駆タンパク質と比較して、より広い宿主域の毒性特性を呈するという発見である。TIC807(配列番号2)、Cry51Aa1(配列番号8)、TIC853(配列番号184)、およびAXMI−171(配列番号206)といった、基本的またはベースライン骨格毒素タンパク質は、本発明のeHTPタンパク質の生物学的な抗半翅目活性または宿主域の幅および範囲を呈しない。
【0017】
バチルス・チューリンゲンシス種に由来する半翅目毒性タンパク質の2000超の異なるアミノ酸配列変異体が試験されて、ベースライン骨格タンパク質であるTIC807、TIC853、およびCry51Aa1のスペクトルおよび活性と比較した時、拡大された半翅目種の宿主域阻害スペクトルをもたらし、また、劇的に増加した半翅目種の阻害活性も提供する、本明細書において説明される特異的なアミノ酸挿入、置換、または欠失を識別した。アミノ酸残基は、(a)骨格タンパク質のうちの1つ以上に対して、増強された半翅目阻害スペクトルおよび/もしくは改善されたリグス阻害活性をもたらすように修飾することができる、(b)骨格タンパク質のうちの1つ以上の折り畳み構造を呈する、折り畳まれた昆虫阻害タンパク質の表面パッチにおいて蓄積する、ならびに/または(c)半翅目種を制御する、およびeHTPタンパク質によって影響される半翅目種の範囲を広げるための、得られるeHTPタンパク質の平均有効用量を減少させる結果をもたらすのに有効な、骨格タンパク質アミノ酸配列のうちの1つ以上の特定の位置で生じる、ベースライン骨格タンパク質において、識別される。
【0018】
半翅目の有害生物種は、標的植物の外側表面を切り裂くもしくは突刺することによって、植物および植物組織を摂食し、次いで、たまった滲出物を吸汁するもしくは吸い込むことによって、切り裂きもしくは突刺位置にたまる浸軟された植物滲出物を消費する昆虫を意味することが意図される。かかる昆虫としては、以下の植物虫の一覧を含むが、これらに限定されない、成虫および幼虫が挙げられる:カスミカメムシ科、セミ科からのセミ、オオヨコバイ科からのヨコバイ(例えば、エムポアスカ種、アムラスカ種)、ビワハゴロモ上科およびウンカ科からのウンカ、ツノゼミ科からのツノゼミ、キジラミ科からのキジラミ、コナジラミ科からのコナジラミ、アブラムシ科からのアブラムシ、ネアブラムシ科からのネアブラムシ、コナカイガラムシ科からのコナカイガラムシ、カタカイガラムシ科、マルカイガラムシ科、およびワタフキカイガラムシ科からのカイガラムシ、グンバイムシ科からのグンバイムシ、カメムシ科からのカメムシ、ナガカメムシ科からのナガカメムシ(例えば、ブリッサス(Blissus)種)ならびに他の種子虫、アワフキムシ科からのアワフキムシ、ヘリカメムシ科からのヘリカメムシ、ならびにホシカメムシ科からのツツガムシおよびアカホシカメムシ。半翅目からの他の有害生物としては、アクロステルヌム・ヒラレ(Acrosternum hilare)(アオカメムシ)、アナサ・トリスティス(Anasa tristis)(ヘリカメムシ)、ブリッサス・ロイコプテルス・ロイコプテルス(Blissus leucopterus leucopterus)(ヒメコバネナガカメムシ)、コリスカ・ゴシピイ(Corythuca gossypii)(コットンレースバグ(cotton lace bug))、シルトペルティス・モデスタ(Cyrtopeltis modesta)(トマトバグ(tomato bug))、ディスデルクス・スツレルス(Dysdercus suturellus)(アカホシカメムシ)、ユースキスツス・セルバス(Euschistus servus)(ブラウンスティンクバグ(brown stink bug))、ユースキスツス・バリオラリウス(Euschistus variolarius)(ワンスポッテッドスティンクバグ(one−spotted stink bug))、グラプトステツス(Graptostethus)種(種子虫の複合)、レプトグロッスス・コルクルス(Leptoglossus corculus)(リーフ・フッテッドパインシードバグ(leaf−footed pine seed bug))、リグス・リネオラリス(ミドリメクラガメ)、リグス・ヘスペルス(ウエスタンターニッシュプラントバグ(western tarnish plant bug))、ネザラ・ビリヅラ(Nezara viridula)(ミナミアオカメムシ)、オエバルス・プグナクス(Oebalus pugnax)(イネカメムシ)、オンコペルツス・ファスシアツス(Oncopeltus fasciatus)(ラージミルクウィードバグ(large milkweed bug))、およびシューダトモスセリス・セリアツス(Pseudatomoscelis seriatus)(ワタノミハムシ)が挙げられる。より具体的には、オオヨコバイ科としては、エンポアスシニ(Empoascini)族、例えば、アムラスカ・ビグッチュラ(Amrasca biguttula)、アムラスカ・デバスタンス、アウストロアスカ・ヴィリジグリセア(Austroasca viridigrisea)、アシンメトラスカ・デセデンス(Asymmetrasca decedens)、エムポアスカ・デシピエンス(Empoasca decipiens)、エムポアスカ・ディスティングエンダ(Empoasca distinguenda)、エムポアスカ・ドリチ(Empoasca dolichi)、エムポアスカ・ファバエ(Empoasca fabae)、エムポアスカ・ケリ(Empoasca kerri)、エムポアスカ・クラエメリ(Empoasca kraemeri)、エムポアスカ・オヌキイ(Empoasca onukii)、エムポアスカ・サカイイ(Empoasca sakaii)、エムポアスカ・スミチ(Empoasca smithi)、エムポアスカ・ビティス(Empoasca vitis)、ヤコビアスカ・リビカ(Jacobiasca lybica)、ソナサスカ・ソラナ(Sonasasca Solana)、エリスロニューリニ(Erythroneurini)族、例えば、エムポアスカナラ・ナグプレンシス(Empoascanara nagpurensis)、タイアアサメンシス(Thaiaassamensis)、ジグニディア・クユミ(Zygnidia quyumi)、ニルバニアエ(Nirvaniae)族、例えば、ソフォニア・ルフォファスシア(Sophonia rufofascia)、ウンカ科、例えば、ニラパルヴァータ・ルーゲンス(Nilapoarvata lugens)、ソガテラ・フルシフェラ(Sogatella furcifera)、サッポロトビウンカ(Unkanodes sapporonus)、およびアシブトウンカ科、例えば、ゾフィウマ・ロブラタ(Zophiuma lobulata)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
本発明のeHTPは、骨格タンパク質のうちの1つ以上と比較して、72(72)の異なるアミノ酸位置におけるアミノ酸残基の置換および欠失を含む、1つ以上のアミノ酸配列修飾を含有する。かかる修飾は、TIC807(配列番号2)、またはTIC807_M2(配列番号8)、Cry51Aa1(配列番号182)、およびTIC853(配列番号184)といった、関連するタンパク質を含むが、これらに限定されない、骨格タンパク質のうちの1つ以上と比較した時、半翅目昆虫に対する増加した毒性および/または増強された阻害スペクトルを伴うeHTPを提供する。eHTPは、限定されないが、配列番号180として記載されるアミノ酸配列において「X」として説明される、これらの72の位置のうちのいずれかにおける、少なくとも1つのアミノ酸置換または1つのアミノ酸欠失の修飾を含むが、配列番号2、配列番号8、配列番号182、または配列番号184のアミノ酸配列を含まない。本発明のeHTPはまた、ベースラインもしくは骨格タンパク質のスペクトルおよび活性と比較した時、増強された半翅目阻害スペクトルおよび/または改善された半翅目阻害活性を呈する。
【0020】
eHTPは、段落[0009]において上に記載されるように、TIC807(配列番号2)の相対位置の少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む。eHTPはまた、これらの前述のアミノ酸置換および/または欠失のうちの少なくとも2つ、3つ、4つ、またはそれ以上を含むことができ、かつこれらのアミノ酸置換および/または欠失のうちの少なくとも2つ、3つ、4つ、またはそれ以上、ならびに配列番号2の残基196〜201内の任意の3つの隣接するアミノ酸の欠失を含むこともできる。したがって、eHTPは、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号86、配列番号87、配列番号88、配列番号89、配列番号90、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号103、配列番号104、配列番号105、配列番号106、配列番号107、配列番号108、配列番号109、配列番号110、配列番号111、配列番号112、配列番号113、配列番号114、配列番号115、配列番号116、配列番号117、配列番号118、配列番号119、配列番号120、配列番号121、配列番号122、配列番号123、配列番号124、配列番号125、配列番号126、配列番号127、配列番号128、配列番号129、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135、配列番号136、配列番号137、配列番号138、配列番号139、配列番号140、配列番号141、配列番号142、配列番号143、配列番号144、配列番号145、配列番号146、配列番号147、配列番号148、配列番号149、配列番号150、配列番号151、配列番号152、配列番号153、配列番号154、配列番号155、配列番号156、配列番号157、配列番号158、配列番号159、配列番号160、配列番号161、配列番号162、配列番号163、配列番号164、配列番号165、配列番号166、配列番号167、配列番号168、配列番号169、配列番号170、配列番号171、配列番号172、配列番号173、配列番号174、配列番号175、配列番号176、配列番号177、配列番号178、配列番号179、配列番号202、および配列番号204として記載されるタンパク質、ならびにその昆虫阻害断片を含む。
【0021】
本発明のeHTPは、少なくとも1つのアミノ酸位置において、異なるアミノ酸残基が、(i)骨格タンパク質のうちの任意の1つ以上における同じ残基位置と比較して、少なくとも約15%〜少なくとも約36%の相対的アミノ酸溶媒露出度を有する、ならびに/または(ii)骨格タンパク質のうちの1つ以上の1次アミノ酸配列における対応するアミノ酸残基位置と比較して、少なくとも約15%〜少なくとも約36%の相対的溶媒露出度を有するアミノ酸から約3つの連続したアミノ酸残基の距離内に位置する、配列番号2(TIC807)を含む、骨格タンパク質のうちの任意の1つ以上とは異なる任意のアミノ酸配列を呈し、骨格タンパク質のうちの1つ以上と相関する活性と比較した時、広がった半翅目阻害スペクトルおよび/もしくは増加した半翅目阻害活性を呈する。「増加したスペクトル」という語は、特定の単一の有害生物に対する毒性効果を呈する2つの異なるタンパク質に関して、増加したスペクトルを呈するタンパク質が、その特定の単一の有害生物、ならびに同じ系統発生学的な目内の1つ以上の他の有害生物、または特定の単一の有害生物が属する目以外の1つ以上の異なる系統発生学的な目内の1つ以上の他の有害生物に対する毒性効果を呈するということを意味することが意図される。「増加した半翅目阻害活性」という語は、かかる増加した活性を呈する特定のタンパク質が、標準化された条件下で、特定の単一の有害生物における致死率、発育阻止、有病率、摂食の停止、または別の測定可能な表現型効果といった特定の影響を達成するように、対照タンパク質よりも、より低い量のそのタンパク質を必要とするということを意味することが意図される。
【0022】
eHTPは、折り畳まれた昆虫阻害タンパク質の2つの異なる表面パッチのうちの少なくとも1つ内に位置する、少なくとも1つのアミノ酸残基において、特に、TIC807を含む、骨格タンパク質のうちの1つ以上とは異なるアミノ酸配列を呈する(図2および表3のデータを参照されたい)。1つの表面パッチは、そのタンパク質が生理学的条件下で3次元構造に折り畳まれる時、配列番号2に記載されるようなSer95のベータ炭素(Cb)原子に対して、約9.2〜約12.2オングストロームの原子半径を有する球体(図2、球体[1])内に包含されるアミノ酸残基を含むとして定義され、これは、残基Thr93、Ser95、Ser97、Phe147、Gln149、Ser151、Asn180、Thr182、Val251、Gln253、およびSer255を含む。本明細書において使用される際、「Cb原子」という句は、アミノ酸残基側鎖におけるベータ炭素原子を指す。このため、Cb原子は、グリシル残基を除いて、全てのアミノ酸残基に存在するタンパク質側鎖における最初の炭素である。図1を参照すると、eHTPは、表面パッチ[1]のアミノ酸残基T93、S95、S97、F147、Q149、S151、N180、T182、V251、Q253、およびS255、または骨格タンパク質のうちの1つ以上、特に、配列番号2(TIC807)内の同等のアミノ酸の1つ以上の保存的もしくは非保存的置換を含むことができるが、これらに限定されない。eHTPは、T93A;S95A、S95V、S95L、もしくはS95I;F147T、F147C、F147D、F147G、F147E、F147Y、F147M、F147N、F147Q、F147H、F147R、F147W、F147P、F147A、F147V、F147L、もしくはF147I;Q149A、Q149C、Q149F、Q149E、もしくはQ149D;S151A;N180D;T182A;V251E、もしくはV251A、および/またはQ253Rといった、表面パッチ[1]のアミノ酸残基の1つ以上の置換を含むことができるが、これらに限定されない。本発明のeHTPの形態において、改善された半翅目阻害生物活性を与える結果をもたらすのに効果的な、修飾に受容的である、アミノ酸残基として識別されている、他方のまたは第2の表面パッチは、適用可能な骨格タンパク質のうちのいずれか1つが生理学的条件下で3次元構造に折り畳まれる時、Pro219のベータ炭素原子、または、特に、配列番号2に記載されるような骨格タンパク質のうちの1つ以上における同等のアミノ酸位置に対して、約9.2〜約12.2オングストロームの原子半径を有する球体(図2、球体[2])内に包含されるアミノ酸残基を含むとして定義され、これは、残基Val10、Ile14、Asn22、Asn23、Gly24、Ile25、Gln26、Gly27、Phe30、Gln38、Ile39、Asp40、Thr41、Ile43、Ser193、Thr194、Glu195、His196、Tyr197、Ser198、His199、Tyr200、Ser201、Gly202、Tyr203、Pro204、Ile205、Leu206、Thr207、Trp208、Ile209、Ser210、Tyr216、Ser217、Gly218、Pro219、Pro220、Met221、Ser222、Trp223、Tyr224、Phe225、Asn239、およびVal244を含む。かかるeHTPは、配列番号2(TIC807)のVal10、Ile14、Asn22、Asn23、Gly24、Ile25、Gln26、Gly27、Phe30、Gln38、Ile39、Asp40、Thr41、Ile43、Ser193、Thr194、Glu195、His196、Tyr197、Ser198、His199、Tyr200、Ser201、Gly202、Tyr203、Pro204、Ile205、Leu206、Thr207、Trp208、Ile209、Ser210、Tyr216、Ser217、Gly218、Pro219、Pro220、Met221、Ser222、Trp223、Tyr224、Phe225、Asn239、およびVal244を含む、表面パッチ[2]内の1つ以上の保存的もしくは非保存的アミノ酸残基置換および/または1つ以上のアミノ酸欠失を含むことができるが、これらに限定されない。eHTPは、配列His196、Tyr197、Ser198、His199、Tyr200、Ser201;Ser217Asn、Ser217Gln、Ser217Arg;および/またはPro219Arg、Pro219Asn、Pro219Glnにおける、任意の3つの隣接するアミノ酸残基の欠失といった、表面パッチ[2]内に位置するアミノ酸残基内の1つ以上の置換および/または欠失を含むことができるが、これらに限定されない。eHTPは、配列His196、Tyr197、Ser198、His199、Tyr200、Ser201;Ser217Asn、Ser217Gln、Ser217Arg;および/またはPro219Arg、Pro219Asn、Pro219Glnにおける、任意の3つの隣接するHisTyrSer残基の欠失といった、表面パッチ[2]内の1つ以上のアミノ酸残基置換および/または欠失を含むことができるが、これらに限定されない。eHTPは、折り畳まれた昆虫阻害タンパク質の2つの前述の表面パッチの各々において、少なくとも1つのアミノ酸修飾を有することができる。eHTPは、配列番号2(TIC807)に関する、残基T93、S95、F147、Q149、S151、N180、T182、H196、Y197、S198、H199、Y200、S201、W208、S217、P219、W223、N239、V244、もしくはV251において、1つ、または2つ以上の修飾の組み合わせを有することができる。保存的アミノ酸変化は、酸性、塩基性、中性極性、または中性非極性タイプのアミノ酸を、同じタイプの別のアミノ酸で置換することによって行うことができる。非保存的アミノ酸変化は、酸性、塩基性、中性極性、または中性非極性アミノ酸タイプを、異なるタイプのアミノ酸で置換することによって行うことができる。さらに、表4Bに列記されるeHTPタンパク質のうち、全ての267は、骨格タンパク質TIC807を含む、骨格タンパク質のうちの1つ以上と比較した時、リグス種に対して増加した毒性を呈する、アミノ酸配列変異体である。これらのアミノ酸配列変異体のうちの10のみが、2つの言及された表面パッチの外側に位置する骨格タンパク質のうちの1つ以上と比較して、修飾されたアミノ酸残基を呈する。
【0023】
先行技術は、骨格タンパク質と関連付けられる溶解度問題を教示する。eHTPは、骨格タンパク質のうちの1つ以上の観察された溶解度プロファイルとは対照的に、骨格タンパク質と比較して改善された溶解度を呈し、かつ概して、9.0未満のpHにおいて増加した溶解度を呈する。より生理学的なpHにおけるこの増加した溶解度は、eHTPが、大腸菌において、植物細胞において、植物細胞細胞質、植物細胞アポプラストにおいて、または植物細胞の色素体において発現される、もしくは植物細胞の色素体への輸送のために標的化される時、顕著である。配列番号2(TIC807)を含む、骨格タンパク質のうちの1つ以上に対して溶解度を改善するアミノ酸修飾としては、TIC807、または他の骨格タンパク質のうちのいずれかにおける適用可能な残基における、以下のアミノ酸位置:58、59、198、199、201、もしくは202のうちの1つ以上における、リジンアミノ酸残基の置換;またはアミノ酸位置198、248、もしくは301のうちの1つ以上におけるグルタミン酸アミノ酸残基の置換;またはアミノ酸位置246、250、もしくは253のうちの1つ以上におけるアルギニンアミノ酸残基の置換が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
上で説明されるeHTPを含む昆虫阻害組成物もまた、提供される。かかる組成物は、組成物に含まれるeHTPとは異なる、少なくとも1つの追加の昆虫阻害剤をさらに含んでもよい。昆虫阻害剤は、昆虫阻害タンパク質、昆虫阻害dsRNA分子、および昆虫有害生物を制御する上で有用な1つ以上の化学的薬剤を含む、任意の数の昆虫阻害剤から選択される。追加の阻害剤の例としては、TIC1415タンパク質、トビイロウンカの半翅目のオルソログを対象とするdsRNA、V−ATPase−E、21E01、アクチンオルソログの半翅目のオルソログを対象とするdsRNA、ADP/ATPトランスロカーゼ、α−チューブリン、リボソームタンパク質L9(RPL9)、またはV−ATPase Aサブユニット、AXMI−171(第US20100298207A1号)、Cry3A、Cry4Aa、Cry11Aa、およびCyt1Aa、DIG11、DIG5、Cry7、eCry3.1Ab、mCry3A、Cry8、Cry34/Cry35、Cry3、DIG2、Cry1、Cry1A.105、Cry2、Cry1F、VIP3、5307、およびCry9が挙げられるが、これらに限定されない。半翅目種を制御する上で有用な化学的薬剤としては、ピレトリンおよび合成ピレスロイド;オキサジジン(oxadizine)誘導体;クロロニコチニル;ニトログアニジン誘導体;トリアゾール;有機リン酸;ピロール;ピラゾール;フェニルピラゾール;ジアシルヒドラジン;生物学的/発酵産物;およびカルバメートが挙げられるが、これらに限定されない。これらのカテゴリ内の既知の駆除剤は、The Pesticide Manual,11th Ed.,C.D.S.Tomlin,Ed.,British Crop Protection Council,Farnham,Surry,UK(1997)に列記される。
【0025】
本組成物において有用であるピレスロイドとしては、ピレトリンおよび合成ピレスロイドが挙げられる。本方法における使用に好ましいピレトリンとしては、限定することなく、2,2−ジメチル−3−(2メチルプロペニル)−シクロプロパンカルボン酸の2−アリル−4−ヒドロキシ−3−メチル−2−シクロペンテン−1−オンエステル、ならびに/または(2−メチル−1−プロペニル)−2−メトキシ−4−オキソ−3−(2 プロペニル)−2−シクロペンテン−1−イルエステル、ならびにこれらのシスおよびトランス異性体の混合物が挙げられる(Chemical Abstracts Service Registry Number(「CAS RN」)8003−34−7)。
【0026】
本発明における使用に好ましい合成ピレスロイドとしては、(s)−シアノ(3−フェノキシフェニル)メチル4−クロロアルファ(1−メチルエチル)ベンゼンアセテート(フェンバレレート、CAS RN51630−58−1)、(S)−シアノ(3−フェノキシフェニル)メチル(S)−4−クロロ−アルファ−(1−メチルエチル)ベンゼンアセテート(エスフェンバレレート、CAS RN66230−04−4)、(3−フェノキシフェニル)−メチル(+)シス−トランス−3−(2,2−ジクロロ(dichoro)エテニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート(ペルメトリン、CAS RN52645−53−1)、(±)アルファ−シアノ−(3−フェノキシフェニル)メチル(+)−シス,トランス−3−(2,2−ジクロロエテニル)−2,2−ジメチル−シクロプロパンカルボキシレート(シペルメトリン、CAS RN52315−07−8)、(ベータ−シペルメトリン、CAS RN65731−84−2)、(シータシペルメトリン、CAS RN71697−59−1)、S−シアノ(3−フェノキシフェニル)メチル(±)シス/トランス3−(2,2−ジクロロエテニル)2,2ジメチルシクロプロパンカルボキシレート(ゼータ−シペルメトリン、CAS RN52315−07−8)、(s)−アルファ−シアノ−3−フェノキシベンジル(IR,3R)−3−(2,2−ジブロモビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート(デルタメトリン、CAS RN52918−63−5)、アルファ−シアノ−3−フェノキシベンジル2,2,3,3,−テトラメチルシクロプロパン(propoane)カルボキシレート(フェンプロパトリン、CAS RN64257−84−7)、(RS)−アルファ−シアノ−3−フェノキシベンジル(R)−2−[2−クロロ−4−(トリフルオロメチル)アニリノ]−3−メチルブタノエート(タウ−フルバリネート、CAS RN102851−06−9)、(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルフェニル)−メチル−(1アルファ,3アルファ)−(Z)−(±)−3−(2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート(テフルトリン、CAS RN79538−32−2)、(±)−シアノ(3−フェノキシフェニル)メチル(±)−4−(ジフルオロメトキシ)−アルファ−(1−メチルエチル)ベンゼンアセテート(フルシトリネート、CAS RN70124−77−5)、シアノ(4−フルオロ−3−フェノキシフェニル)メチル3−[2−クロロ−2−(4−クロロフェニル)エテニル]−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート(フルメトリン、CAS RN69770−45−2)、シアノ(4−フルオロ−3−フェノキシフェニル)メチル3−(2,2−ジクロロエテニル)−2,2−ジメチル−シクロプロパンカルボキシレート(darboxylate)(シフルトリン、CAS RN68359−37−5)、(ベータシフルトリン、CAS RN68359−37−5)、(トランスフルトリン、CAS RN118712−89−3)、(S)−アルファ−シアノ−3−フェノキシベンジル(Z)−(IR−シス)−2,2−ジメチル−3−[2−(2,2,2−トリフルオロ−トリフルオロメチル−エトキシカルボニル)ビニル]シクロプロパンカルボキシレート(アクリナトリン、CAS RN101007−06−1)、アルファ−シアノ−3−フェノキシベンジル−3−(2,2ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート(アルファ−シペルメトリン、CAS RN67375−30−8)の(IRシス)Sおよび(ISシス)Rエナンチオマー異性体対、[IR,3S)3(1’RS)(1’,2’,2’,2’−テトラブロモエチル)]−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボン酸(s)−アルファ−シアノ−3−フェノキシベンジルエステル(トラロメトリン、CAS RN66841−25−6)、シアノ−(3−フェノキシフェニル)メチル2,2−ジクロロ−1−(4−エトキシフェニル)シクロプロパンカルボキシレート(シクロプロトリン、CAS RN63935−38−6)、[1α,3α(Z)]−(±)−シアノ−(3−フェノキシフェニル)メチル3−(2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペニル)−2,2−ジメチル(cimethyl)シクロプロパンカルボキシレート(シハロトリン、CAS RN68085−85−8)、[1アルファ(s),3アルファ(z)]−シアノ(3−フェノキシフェニル)メチル−3−(2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート(ラムダシハロトリン、CAS RN91465−08−6)、(2−メチル[1,1’−ビフェニル]−3−イル)メチル3−(2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペニル)−2,2−ジメチル−シクロプロパンカルボキシレート(ビフェントリン、CAS RN82657−04−3)、5−1−ベンジル−3−フリルメチル−d−シス(1R,3S,E)2,2−ジメチル−3−(2−オキソ,−2,2,4,5テトラヒドロチオフェニリデンメチル)シクロプロパンカルボキシレート(カデトリン、RU15525、CAS RN58769−20−3)、[5−(フェニルメチル)−3−フラニル]−3−フラニル2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート(レスメトリン、CAS RN10453−86−8)、(1R−トランス)−[5−(フェニルメチル)−3−フラニル]メチル2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート(ビオレスメトリン、CAS RN28434−01−7)、3,4,5,6−テトラヒドロ−フタルイミドメチル−(IRS)−シス−トランス−クリサンテメート(テトラメトリン、CAS RN7696−12−0)、3−フェノキシベンジル−d,1−シス,トランス2,2−ジメチル−3−(2−メチルプロペニル)シクロプロパンカルボキシレート(フェノトリン、CAS RN26002−80−2);(エンペントリン、CAS RN54406−48−3);(シフェノトリン;CAS RN39515−40−7)、(プラレトリン、CAS RN23031−36−9)、(イミプロトリン、CAS RN72963−72−5)、(RS)−3−アリル−2−メチル−4−オキシクロペント(oxcyclopent)−2−エニル−(1A,3R;1R,3S)−2,2−ジメチル−3−(2−メチルプロプ−1−エニル)シクロプロパンカルボキシレート(アレトリン、CAS RN584−79−2)、(ビオアレトリン、CAS RN584−79−2)、および(ZXI8901、CAS RN160791−64−0)が挙げられる。前述の合成ピレスロイドのうちの1つ以上の混合物もまた、本発明において使用することができると考えられる。特に好ましい合成ピレスロイドは、テフルトリン、ラムダシハロトリン、ビフェントリン、ペルメトリン、およびシフルトリンである。さらにより好ましい合成ピレスロイドは、テフルトリンおよびラムダシハロトリンであり、なおより好ましいのは、テフルトリンである。
【0027】
オキサジアジン誘導体である殺虫剤は、主題発明において有用である。本発明における使用に好ましいオキサジアジン(oxadizine)誘導体は、米国特許第5,852,012号において識別されるものである。より好ましいオキサジアジン誘導体は、5−(2−クロロピリド−5−イルメチル)−3−メチル−4−ニトロイミノペルヒドロ−1,3,5−オキサジアジン、5−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−3−メチル−4−ニトロイミノペルヒドロ−1,3,5−オキサジアジン、3−メチル−4−ニトロイミノ−5−(1−オキシド−3−ピリジノメチル)ペルヒドロ−1,3,5−オキサジアジン、5−(2−クロロ−1−オキシド−5−ピリジニオメチル)−3−メチル−4−ニトロイミノペルヒドロ−1,3,5−オキサジアジン(oxidiazine);および3−メチル−5−(2−メチルピリド−5−イルメチル)−4−ニトロイミノペルヒドロ−1,3,5−オキサジアジンである。さらにより好ましいのは、チアメトキサム(CAS RN153719−23−4)である。
【0028】
クロロニコチニル殺虫剤もまた、主題発明において有用である。主題組成物における使用に好ましいクロロニコチニルは、米国特許第5,952,358号に説明されており、それらとしては、アセタミプリド((E)−N−[(6−クロロ−3−ピリジニル)メチル]−N’−シアノ−N−メチレンイミダミド(methyleneimidamide)、CAS RN135410−20−7)、イミダクロプリド(1−[(6−クロロ−3−ピリジニル)メトール]−N−ニトロ−2−イミダゾリジニミム(imidazolidinimime)、CAS RN138261−41−3)、およびニテンピラム(N−[(6−クロロ−3−ピリジニル)メチル]−N−エチル−N’−メチル−2−ニトロ−1,1−エテンジアミン、CAS RN120738−89−8)が挙げられる。
【0029】
ニトログアニジン殺虫剤は、本発明において有用である。かかるニトログアニジンとしては、米国特許第5,633,375号、第5,034,404号、および第5,245,040号において説明されるものが挙げられ得る。
【0030】
本発明において有用であるピロール、ピラゾール、およびフェニルピラゾールとしては、米国特許第5,952,358号において説明されるものが挙げられる。好ましいピラゾールとしては、クロルフェナピル(4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−1−エトキシメチル−5−トリフルオロメチルピロール−3−カルボニトリル、CAS RN122453−73−0)、フェンピロキシメート((E)−1,1−ジメチルエチル−4[[[[(1,3−ジメチル−5−フェノキシ−1H−ピラゾール−4−イル)メチレン]アミノ]オキシ]メチル]ベンゾエート、CAS RN111812−58−9)、およびテブフェンピラド(4−クロロ−N[[4−1,1−ジメチルエチル)フェニル]メチル]−3−エチル−1−メチル−1H−ピラゾール−5−カルボキサミド、CAS RN119168−77−3)が挙げられる。好ましいフェニルピラゾールは、フィプロニル(5−アミノ−[2,6−ジクロロ−4−(トリフルオロメチル)フェニル]−4−[(1R,S)−(トリフルオロメチル)スルフィニル]−1H−ピラゾール−3−カルボニトリル、CAS RN120068−37−3)である。
【0031】
本発明において有用であるジアシルヒドラジンとしては、ハロフェノジド(4−クロロベンゾエート−2−ベンゾイル−2−(1,1−ジメチルエチル)−ヒドラジド、CAS RN112226−61−6)、メトキシフェノジド(RH−2485;N−tert−ブチル−N’−(3−メトキシ−o−トルオイル)−3,5−キシロヒドラジド、CAS RN161050−58−4)、およびテブフェノジド(3,5−ジメチル安息香酸1−(1,1−ジメチルエチル)−2,(4−エチルベンゾイル)ヒドラジド、CAS RN112410−23−8)が挙げられる。
【0032】
アミトロール(CAS RN61−82−5)およびトリアザメートといったトリアゾールは、本発明の方法において有用である。好ましいトリアゾールは、トリアザメート(エチル[[1−[(ジメチルアミノ)カルボニル]−3−(1,1−ジメチルエチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イル]チオ]アセテート、CAS RN112143−82−5)である。
【0033】
エバーメクチン(アバメクチン、CAS RN71751−41−2)およびスピノサド(XDE−105、CAS RN131929−60−7)といった、生物学的/発酵産物は、本発明において有用である。
【0034】
有機リン酸殺虫剤もまた、本発明の成分のうちの1つとして有用である。好ましい有機リン酸(organophophate)殺虫剤としては、アセフェート(CAS RN30560−19−1)、クロルピリホス(CAS RN2921−88−2)、クロルピリホス−メチル(CAS RN5598−13−0)、ダイアジノン(CAS RN333−41−5)、フェナミホス(CAS RN22224−92−6)、およびマラチオン(CAS RN121−75−5)が挙げられる。
【0035】
加えて、カルバメート殺虫剤が、主題発明において有用である。好ましいカルバメート殺虫剤は、アルジカルブ(CAS RN116−06−3)、カルバリル(CAS RN63−25−2)、カルボフラン(CAS RN1563−66−2)、オキサミル(CAS RN23135−22−0)、およびチオジカルブ(CAS RN59669−26−0)である。
【0036】
化学殺虫剤が本明細書において説明される時、説明は、殺虫剤の塩形態、ならびに説明される殺虫剤の形態と同じ殺虫活性を呈する殺虫剤のいずれの異性および/または互変異性形態も含むことが意図されるということが理解されるものとする。
【0037】
本発明において有用である化学殺虫剤は、かかる殺虫剤としての取引において及第する任意の等級または純度のものとすることができる。不純物として商業的調製物において殺虫剤に付随する他の材料は、かかる他の材料が組成物を不安定にしないか、または殺虫剤成分のうちのいずれかの活性もしくは標的有害生物(複数を含む)に対するトランスジェニック事象を著しく低減もしくは破壊しない限り、主題発明および組成物において容認され得る。殺虫剤の生成に従事する当業者は、容認され得るそれらの不純物、および容認され得ないものを容易に識別することができる。
【0038】
eHTPは、修飾されたタンパク質が、親タンパク質、TIC807と比較して、リグス種、エムポアスカ種、および/もしくはアムラスカ種に対する、増強された半翅目阻害スペクトルならびに/または改善された半翅目阻害活性を呈するように、アミノ酸修飾によって関連する。「より活性」、「改善された活性」、「増強された特異性」、「増加した毒性効力」、「増加した毒性」、「改善された半翅目阻害活性」、「増強された半翅目阻害活性」、「改善されたリグス、エムポアスカ、および/もしくはアムラスカ阻害活性」、「より大きいリグス、エムポアスカ、および/もしくはアムラスカ阻害活性」、「より大きい半翅目阻害活性」、ならびに「増強されたリグス、エムポアスカ、および/もしくはアムラスカ阻害スペクトル」、ならびに「増強された半翅目阻害スペクトル」という句は、eHTPの活性と、半翅目昆虫に対するTIC807(配列番号2)、TIC807_M2(配列番号8)、Cry51Aa1(配列番号182)、TIC853(配列番号184)、および/もしくはAXMI−171(配列番号206)タンパク質の活性との比較を指し、本発明のeHTPに起因する活性は、TIC807タンパク質(配列番号2)、TIC807_M2(配列番号8)、Cry51Aa1(配列番号182)、TIC853(配列番号184)、および/もしくはAXMI−171(配列番号206)タンパク質に起因する活性よりも大きい。本明細書において提供されるeHTPは、配列番号2、配列番号8、配列番号182、および配列番号184のバチルス・チューリンゲンシスタンパク質と比較した時、増強された半翅目阻害スペクトルおよび/または改善されたもしくはより大きい半翅目阻害活性を呈し、半翅目の有害生物種としては、リグス・ヘスペルス、リグス・リネオラリス、エムポアスカ・ファバエ(Empoasca fabae)、およびアムラスカ・デバスタンスが挙げられる。アムラスカ・デバスタンスは、アムラスカ・ビグッチュラ・ビグッチュラ(Amrasca biguttula biguttula)とも呼ばれる。TIC807と比較して増強された昆虫阻害スペクトルおよび/または改善された昆虫阻害活性を呈するeHTPは、多くの異なる方法によって識別することができる。一般的に、eHTPタンパク質を識別するための例示的かつ非限定的な方法は、
(1)制御されたアッセイ条件下で、試験昆虫に、同一量の試験eHTPならびに対照TIC807(配列番号2)、TIC807_M2(配列番号8)、Cry51Aa1(配列番号182)、TIC853(配列番号184)、および/もしくはAXMI−171(配列番号206)タンパク質を投与し、試験および対照タンパク質の効力を測定および比較すること、ならびに/または
(2)制御されたアッセイ条件下で同等の昆虫個体群応答を引き起こす、試験eHTP、ならびに対照TIC807(配列番号2)、TIC807_M2(配列番号8)、Cry51Aa1(配列番号182)、TIC853(配列番号184)、および/もしくはAXMI−171(配列番号206)タンパク質のタンパク質用量(例えば、食餌中のタンパク質濃度)を判定する(即ち、用量応答曲線を得る)ことを含むことができる。
第2の手法において、比較のために使用される統計的に堅牢な用量応答値は、試験個体群の50%を殺滅するために必要とされる中央致死濃度(LC50)であろう。しかしながら、ある実施形態において、試験個体群の50%成長阻害をもたらすために必要とされる中央阻害濃度(「IC50」)を含むが、これに限定されない、他の値を使用することができる。この文脈において、「成長阻害」は、半翅目の生育の発育阻止および/または阻害を含むことができる。
【0039】
本明細書において使用される際、「昆虫阻害量」という句は、昆虫の生存能力、成長、昆虫の生育、昆虫の生殖、昆虫の摂食挙動、昆虫の交配挙動の任意の測定可能な阻害、および/または薬剤を含有する組成物を摂食する昆虫によって引き起こされる有害効果の任意の測定可能な減少を達成する上で有効である、該薬剤を含有する組成物の量を指す。同様に、「半翅目阻害量」は、生存能力、成長、生育、生殖、摂食挙動、交配挙動に関連する半翅目に属する標的昆虫の任意の測定可能な阻害、および/または植物を摂食する半翅目昆虫によって引き起こされる有害効果の任意の測定可能な減少をもたらす、本発明のタンパク質単独、または制御するために適用可能な半翅目種を標的とする他の薬剤との量を指す。同様に、「リグス、エムポアスカ、および/もしくはアムラスカ阻害量」は、本発明の1つ以上のタンパク質、即ち、eHTP、あるいは任意の測定可能な阻害、生存能力、成長、生育、生殖、摂食挙動、交配挙動、ならびに/またはそのeHTPを含有する組成物を摂食するリグス、エムポアスカ、および/もしくはアムラスカによって引き起こされる有害効果の任意の測定可能な減少をもたらす、他の薬剤を含有する組成物の量を指す。eHTPの文脈において本明細書において使用される際、「増強された半翅目阻害活性」または「より大きい増強された半翅目阻害活性」は、TIC807、Cry51Aa1(配列番号182)、TIC853(配列番号184)、および/もしくはAXMI−171(配列番号206)タンパク質を含む、骨格タンパク質のうちのいずれか1つ以上で観察される、対応する阻害活性に対する、半翅目の生存能力、成長、生育、生殖、摂食挙動、交配挙動の阻害の任意の測定可能な増加、ならびに/またはそのeHTPを含有する組成物を摂食する半翅目によって引き起こされる有害効果の任意の測定可能な減少を指す。同様に、「増強されたリグス、エムポアスカ、および/もしくはアムラスカ阻害活性」または「より大きい増強されたリグス、エムポアスカ、および/もしくはアムラスカ阻害活性」は、適用可能な量のTIC807(配列番号2)、Cry51Aa1(配列番号182)、TIC853(配列番号184)、および/もしくはAXMI−171(配列番号206)タンパク質を含むが、これらに限定されない、骨格タンパク質のうちの1つ以上のみを含有する同等の組成物もしくは植物で観察される、対応する阻害活性に対する、阻害、生存能力、成長、生育、生殖、摂食挙動、交配挙動の任意の測定可能な増加、ならびに/またはリグス、エムポアスカ、および/もしくはアムラスカの食餌中に提供される組成物もしくは植物中の本発明の1つ以上のeHTPの存在によって引き起こされる有害効果の任意の測定可能な減少を指す。
【0040】
eHTPの文脈において本明細書において使用される際、「増強されたリグス、エムポアスカ、および/もしくはアムラスカ阻害スペクトル」は、TIC807タンパク質で観察されるその特定のリグス種、エムポアスカ種、および/もしくはアムラスカ種の対応する阻害に対する、特定のリグス種、エムポアスカ種、および/もしくはアムラスカ種の生存能力、成長、生育、生殖、摂食挙動、交配挙動の阻害の任意の測定可能な増加、ならびに/または植物を摂食するそのリグス種、エムポアスカ種、および/もしくはアムラスカ種によって引き起こされる有害効果の任意の測定可能な減少を指す。ある実施形態において、本明細書において提供されるeHTPは、それらのeHTPがリグス・リネオラリスの増加した阻害を提供することができるという点で、TIC807に対して、増強されたリグス阻害スペクトルを呈する。
【0041】
本明細書において提供されるeHTPは、配列番号2(TIC807)、配列番号8(TIC807_M2)、配列番号182(Cry51Aa1)、配列番号184(TIC853)、および配列番号206(AXMI−171)のタンパク質よりも、リグス、エムポアスカ、および/もしくはアムラスカ有害生物種に対する、約2〜約260倍大きいリグス、エムポアスカ、および/もしくはアムラスカ阻害活性を呈することができる。本明細書において提供されるeHTPは、配列番号2(TIC807)、配列番号8(TIC807_M2)、配列番号182(Cry51Aa1)、配列番号184(TIC853)、および配列番号206(AXMI−171)のタンパク質よりも、リグス、エムポアスカ、および/もしくはアムラスカ有害生物種に対する、約3、4、5、7、8、10、12、15、20、25、27、30、38、46、50、52、54、66、91、122、186、243、または262倍大きいリグス、エムポアスカ、および/もしくはアムラスカ阻害活性を呈することができる。
【0042】
eHTPは、以下において致死率を引き起こすことによって、配列番号2(TIC807)、配列番号8(TIC807_M2)、配列番号182(Cry51Aa1)、配列番号184(TIC853)、および/もしくは配列番号206(AXMI−171)に勝る、増強された標的有害生物阻害スペクトルならびに/または改善された標的有害生物阻害活性を呈することができる:
(i)リグス・ヘスペルス昆虫種に対して、約0.3μg/mL〜約70μg/mLの用量で、
(ii)リグス・リネオラリス昆虫種に対して、約0.85μg/mL〜約100μg/mLの用量で、
(iii)リグス・ヘスペルスに対して、約0.3〜約70μg/mLのLC50値で測定、
(iv)リグス・リネオラリスに対して、約0.85〜約100μg/mLのLC50値で測定、または
(v)リグス種、エムラスカ(Emrasca)種、および/もしくはアムラスカ種に対して、TIC807、配列番号8、配列番号182(Cry51Aa1)、配列番号184(TIC853)、および/もしくは配列番号206(AXMI−171)のLC50値よりも2倍超低いLC50値で測定、または
(vi)アムラスカ・デバスタンスもしくはエムポアスカ・ファバエ(Empoasca fabae)昆虫種に対して、約0.69μg/mL〜約500μ/mLの用量で、または
(vii)アムラスカ・デバスタンスおよび/もしくはエムポアスカ・ファバエ(Empoasca fabae)に対して、約3.5〜約15μg/mLのLC50値で測定。
【0043】
表4Aおよび4Bは、アムラスカおよびリグス種致死率データとともに、例示的な本発明のeHTPを表にする。リグス種およびアムラスカ種に関して利用可能な致死率データは、(a)μg/mL LC50値として、または(b)L.ヘスペルス(hesperus)に対しては、約1〜約3μg/mL、もしくはL.リネオラリス(lineolaris)に対しては、約100μg/mLのタンパク質、およびアムラスカ・デバスタンスに対しては、約0.69〜500μg/mLの用量での致死率(%)としてのいずれかで報告される。TIC807(配列番号2)およびTIC807_M2(配列番号8)と比較して倍増した毒性は、LC50値が判定された、例示的なeHTPのために提供される。
【0044】
本発明のeHTPは、骨格タンパク質と比較して、半翅目の昆虫を制御する上で特に有用である。リグス・リネオラリスは、致死率を引き起こすために、高用量のTIC807タンパク質(例えば、100μg/mLを超過して)を必要とした。本発明の1つのeHTP、TIC807_M8(配列番号16)に関する用量応答曲線では、eHTPは、L.リネオラリスおよびL.ヘスペルスの両方に対して、際立って改善された毒性効果を呈するが、L.リネオラリスに対しては、eHTPは、223μg/mLの計算されたLC50値を呈する。食餌中に1000μg/mLを超過する著しく大きい用量のTIC807およびTIC807_M2タンパク質を提供することは、不可能であったため、L.リネオラリス種に対する50%超の致死率を引き起こすことができるタンパク質濃度毒性用量を達成することは、これまで不可能であった。したがって、TIC807およびTIC807_M2(配列番号8)タンパク質に関する、L.リネオラリスに対するLC50値は、判定されなかったが、むしろ223μg/mL超((>)223μg/mL)として推定された(表1および3、実施例4、ならびに図1Bを参照されたい)。
【0045】
反復的設計は、操作、試験、および選択の組み合わせ(かならずしもその順序ではない)を含むeHTPを開発および選択するための半ランダムな手法を指す(実施例1〜4を参照されたい)。「操作」という語は、関連する残基を識別して修飾することと、クローン作成することと、本明細書において説明されるeHTPを発現することを含むことが意図される。「試験」という語は、eHTPの半翅目活性を、TIC807(配列番号2)、TIC807_M2(配列番号8)、Cry51Aa1(配列番号182)、および/もしくはTIC853(配列番号184)といった骨格タンパク質の活性と比較すること、またはAXMI−171(配列番号206)といった別のタンパク質に対して、本発明のeHTPを比較することを指すことが意図される。「選択」という語は、「操作」のために、本発明の改善された変異体タンパク質、即ち、eHTP、および適用可能なアミノ酸残基を識別する行為を指すことが意図される。
【0046】
反復的設計は、本発明のタンパク質の原子構造(例えば、図2に記載されるような)の解明、ならびに「操作」のために修飾するように、アミノ酸残基の「選択」の半ランダムな手法を誘導および補完するための原子構造の使用を含み、この場合、昆虫阻害スペクトルおよび活性への改善をもたらすように修飾することができる、TIC807、TIC853、およびCry51Aa1といった、折り畳まれた昆虫阻害骨格タンパク質のループ、および表面露出領域における、アミノ酸残基の識別を含んだ。ループ、および表面露出領域における、かかるアミノ酸残基は、「操作」のために選択される。この場合、反復的設計は、自然発生の骨格タンパク質におけるそれらの位置に現れるもの以外のアミノ酸残基を含有するように修飾される時、本発明のeHTPタンパク質のうちの1つ以上をもたらす、関連するアミノ酸残基の蓄積を匿う、骨格タンパク質の3次元構造内の2つの異なる領域の識別を含んだ。
【0047】
最初に、骨格タンパク質TIC807と比較して、増加したリグス種阻害活性を呈した、反復的設計のこのプロセスで使用される骨格タンパク質TIC807(配列番号2)、および267の異なるeHTPが発見された。TIC807_M8(配列番号16)は、設計プロセスの初期段階で発見された。反復的操作・試験・選択のその後の段階は、骨格タンパク質と比較して、リグス種に対するなおより大きいレベルの毒性を呈し、また、毒性効果のより広い宿主域も呈した、他のeHTPタンパク質の発見につながった。7つの変異体(eHTP)は、TIC807と比較した時、両方のリグス種(L.ヘスペルスおよびL.リネオラリス)に対する、著しくより高いレベルの増加した毒性を呈した。これらの7つ、および本明細書において構築される他のeHTPに関するLC50値は、リグス・ヘスペルスおよびリグス・リネオラリス種に対して判定され、骨格タンパク質、特に、TIC807に関するLC50値と比較された。結果は、表1に示され、図3は、表1で表にされるように観察される結果をグラフで示す棒グラフである。
【表1】

ND=判定されず。LC50値は、8〜10の異なるタンパク質濃度を新たに孵化したリグス幼虫の個体群に提示し、幼虫に5日間摂食させ、次いで、提供される用量範囲にわたる致死率に関して採点することによって、判定される。
毒性、1のベースライン値として、TIC807に関して観察されたLD50を使用して、リグス・ヘスペルスに対して観察されるレベルと比較した、増加した活性の倍数に関して表示される。1000μg/mLを超過する著しく大きい量のタンパク質は、リグス・リネオラリスへの高い範囲の毒性用量応答を完了させるために、リグスの食餌中に提供することは不可能であった。したがって、LC50値は、TIC807またはTIC807_M2に関しては、判定されなかった。代わりに、低範囲における4つの用量のLC50推定が実施され、TIC807およびTIC807_M2に関して予想されたLC50値が、223μg/mL超であることを立証した。
【0048】
表1を参照すると、反復的設計プロセスは、リグス・ヘスペルスだけでなく、リグス・リネオラリスにも改善された毒性特性を呈するタンパク質を識別するための手段を提供した。
【0049】
eHTPをコードする組み換えポリヌクレオチド組成物もまた、提供される。ある実施形態において、eHTPは、タンパク質をコードするオープンリーディングフレームを伴うポリヌクレオチド分子が、プロモータ、および構築物が意図される系における発現のために機能的な任意の他の調節要素といった、要素に動作可能に連結される、組み換えDNA構築物で発現させることができる。例えば、植物機能性プロモータは、植物におけるタンパク質の発現を可能にするように、適用可能なeHTPコード配列に動作可能に連結させることができる。細菌において機能的なプロモータもまた、発現カセットにおける使用に対して企図される。適用可能な細菌、例えば、大腸菌、またはバチルス・チューリンゲンシス種において機能的なプロモータは、適用可能な細菌株における適用可能なタンパク質の発現のために、eHTPコード配列に動作可能に連結させることができる。eHTPコード配列に動作可能に連結させることができる、他の有用な要素としては、エンハンサ、イントロン、リーダ、コードされたタンパク質固定化タグ(HISタグ)、コードされた細胞内転座ペプチド(即ち、色素体移行ペプチド、シグナルペプチド)、翻訳後修飾酵素のためのコードされたポリペプチド部位、リボソーム結合部位、および植物または特定の標的有害生物種のいずれかにおける1つ以上の遺伝子の抑制のためのRNAiトリガとしての使用のために設計されるセグメントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
本明細書において提供される例示的な組み換えポリヌクレオチド分子としては、配列番号186、配列番号187、配列番号188、配列番号189、配列番号190、配列番号191、配列番号192、配列番号193、配列番号194、配列番号195、配列番号196、配列番号197、配列番号198、配列番号199、配列番号200、配列番号35、および配列番号201が挙げられるが、これらに限定されない。これらの配列は、配列番号4(TIC807_4)、配列番号6(TIC807_M1)、配列番号8(TIC807_M2)、配列番号10(TIC807_M3)、配列番号12(TIC807_M4)、配列番号14(TIC807_M5)、配列番号16(TIC807_M8)、配列番号18(TIC807_M6)、配列番号20(TIC807_M7)、配列番号22(TIC807_22)、配列番号24(TIC807_24)、配列番号26(TIC807_26)、配列番号28(TIC807_M9)、配列番号30(TIC807_M10)、配列番号32(TIC807_M11)、配列番号36(TIC807_M12)、および配列番号34(TIC807_M13)に記載されるようなアミノ酸配列を各々有する、それぞれのタンパク質をコードする。遺伝子コードの冗長性により、本発明のタンパク質をコードするための組み換えポリヌクレオチド分子のコドンは、同義コドンに対して置換されてもよく(サイレント置換とも呼ばれる)、本発明の範囲内である。このため、本明細書において開示されるeHTPのうちのいずれかをコードする組み換えポリヌクレオチドが提供される。
【0051】
eHTPコード配列を含む組み換えDNA構築物はまた、適用可能なeHTP、eHTPとは異なるタンパク質、または昆虫もしくは植物遺伝子阻害dsRNA分子をコードするDNA配列とともに共発現させるように構成することができる、1つ以上の昆虫阻害剤をコードするDNAの領域をさらに含むことができる。組み換えDNA構築物は、特定の構築物から発現されるように設計される全ての薬剤が、1つのプロモータから発現されるように、または別個の薬剤が各々、別個のプロモータ制御下にあるように、またはこれらのいくつかの組み合わせであるように、組み立てることができる。本発明のタンパク質は、1つ以上のタンパク質が、選択される発現系のタイプに依存して、他のオープンリーディングフレームおよび/またはプロモータが含有される、共通のヌクレオチドセグメントから発現される、多重遺伝子発現系から発現させることができる。
【0052】
eHTPコード配列を含む組み換えポリヌクレオチドまたは組み換えDNA構築物は、ベクター、例えば、プラスミド、バキュロウイルス、人工染色体、ビリオン、コスミド、ファージミド、ファージ、またはウイルスベクターによって、宿主細胞に送達することができる。かかるベクターは、宿主細胞におけるeHTPコード配列の安定したまたは一時的な発現、および、場合により、ポリペプチドへのその後の発現を達成するために使用することができる。eHTPコード配列を含む、および宿主細胞に導入される、外因性組み換えポリヌクレオチドまたは組み換えDNA構築物はまた、本明細書において、「導入遺伝子」と称される。
【0053】
任意の1つ以上のeHTPコード配列を発現する、任意の組み換えポリヌクレオチド(即ち、導入遺伝子)を含有する、トランスジェニック細菌、トランスジェニック植物細胞、トランスジェニック植物、およびトランスジェニック植物部分もまた、本明細書で提供される。「細菌細胞」または「細菌」としては、アグロバクテリウム、バチルス、エシェリキア、サルモネラ、シュードモナス、またはリゾビウム細胞が挙げられ得るが、これらに限定されないことが意図される。「植物細胞」または「植物」としては、アルファルファ、アーモンド(almont)、バナナ、オオムギ、マメ、ビート、ブロッコリ、キャベツ、アブラナ属、ナス(brinjal)、ニンジン、キャッサバ、ヒマ、カリフラワー、セロリ、ヒヨコマメ、ハクサイ、セロリ、柑橘類、ココナツ、コーヒー、トウモロコシ、クローバ、綿、ウリ、キュウリ、ダグラスファー、ナス(eggplant)、ユーカリ、亜麻、ニンニク、ブドウ、グアー、ホップ、リーキ、マメ類、レタス、テーダマツ、キビ、メロン、ネクタリン、ナッツ、オートムギ、オクラ、オリーブ、タマネギ、観賞植物、ヤシ、牧草、パパイヤ、エンドウ、モモ、ピーナッツ、コショウ、キマメ、マツ、ジャガイモ、ポプラ、カボチャ、ラジアータマツ、ダイコン、ナタネ、コメ、台木、ライムギ、ベニバナ、低木、ソルガム、サザンパイン、大豆、ホウレンソウ、スクオッシュ、イチゴ、テンサイ、サトウキビ、ヒマワリ、スイートコーン、モミジバフウ、サツマイモ、スイッチグラス、茶、タバコ、トマト、ライコムギ、芝草、スイカ、およびコムギ植物細胞または植物が挙げられることが意図される。ある実施形態において、トランスジェニック植物細胞から再生されるトランスジェニック植物およびトランスジェニック植物部分が提供され、トランスジェニック植物は、トランスジェニック種子から得ることができ、トランスジェニック植物部分は、切断、折割、粉砕、または別様に植物からの部分を分離することによって得ることができ、植物部分は、種子、実、葉、花、茎、根、またはこれらの任意の部分であり得、本明細書において提供されるトランスジェニック植物部分は、トランスジェニック植物部分の再生不可能な部分である。この文脈において使用される際、トランスジェニック植物部分の「再生不可能な」部分は、全植物を形成するように誘導することができない、または有性および/もしくは無性生殖が可能である全植物を形成するように誘導することができない部分である。植物部分の再生不可能な部分は、トランスジェニック花粉、胚珠、種子、実、葉、花、茎、または根の部分である。
【0054】
昆虫、またはリグスおよび/もしくはアムラスカ阻害量のeHTPを含有する、トランスジェニック植物を作製する方法もまた、本明細書において提供される。かかる植物は、本明細書において提供されるeHTPタンパク質のうちのいずれかをコードする組み換えポリヌクレオチドを植物細胞に導入することと、昆虫もしくは半翅目阻害量のeHTPを発現する当該植物細胞に由来する植物を選択することと、によって作製することができる。植物は、再生、種子、花粉、または分裂組織形質転換技術によって、植物細胞に由来することができる。
【0055】
昆虫または半翅目の侵入を制御するように、昆虫または半翅目阻害量のeHTPを発現する、トランスジェニック植物および宿主細胞が提供される。前述の植物種のうちのいずれも、植物が、適用可能なeHTPを発現するように設計されるポリヌクレオチド構築物で形質転換される限り、本明細書において提供される昆虫または半翅目の侵入から植物を保護するために使用することができる。
【0056】
本発明の追加の態様は、抗体、キット、eHTPもしくはその特徴的な断片、またはeHTPもしくはその特徴的な断片をコードするポリヌクレオチドを検出するための方法、本発明のタンパク質属の追加の昆虫阻害メンバを識別するための方法、昆虫の成長および/もしくは侵入を制御するための製剤および方法、ならびに植物および他のレシピエント宿主にかかる制御を提供するための方法を含む。各組成物、構築物、細胞、植物、製剤、方法、またはキットは、例えば、昆虫を阻害するように、これらのタンパク質のうちのいずれかの商業的使用を通じて、植物生産性を増加することによって、本発明のタンパク質の産業的用途を提供する。
【0057】
種子または果実もしくは野菜以外の植物産物は、商取引を経る、およびトランスジェニック植物もしくはトランスジェニック植物部分に由来する、商品または他の産物として意図され、該商品または他の産物は、本発明のeHTPに対応する、および商品または他の産物が得られた、植物または植物組織もしくは部分において産生または維持される、ヌクレオチドセグメント、RNA、もしくはタンパク質を検出することによって、商取引を通じて追跡することができる。商取引のかかる商品または他の産物としては、植物部分、バイオマス、油、食物、糖、動物飼料、、フレーク、ふすま、リント、加工された種子、および種子が挙げられるが、これらに限定されない。植物部分としては、植物種子、実、葉、花、茎、花粉、または根が挙げられるが、これらに限定されない。ある実施形態において、植物部分は、当該種子、実、葉、花、茎、花粉、または根の再生不可能な部分である。eHTPを含有する綿および亜麻植物実、およびこれらの再生不可能な部分もまた、提供される。
【0058】
検出可能な量のeHTP、その昆虫阻害断片、またはその任意の特徴的な部分を含有する、加工された植物産物もまた、本明細書で提供される。理論によって限定されることを求めることなく、検出可能な量の本明細書において提供されるeHTPのうちの1つ以上を含有する、かかる加工された植物産物は、ある実施形態において、半翅目によって伝染され得る望ましくない微生物の低減および/またはかかる微生物の望ましくない副産物の低減を呈することができると考えられる。ある実施形態において、その特徴的な部分は、配列番号180に記載されるような少なくとも約20〜約100以上の隣接するアミノ酸の任意のポリペプチドを含むことができ、特に、該ポリペプチドは、配列番号2、配列番号8、配列番号182、または配列番号184に存在する隣接するアミノ酸の対応するポリペプチドを含有せず、該ポリペプチドは、配列番号2に記載されるような対応するアミノ酸配列における、少なくとも1つのアミノ酸置換、付加、または欠失を含む。かかる置換、欠失、または付加は、段落[0009]で上に記載されるようなものである。
【0059】
検出可能な量のeHTPをコードする組み換えポリヌクレオチド、eHTP、もしくはその昆虫阻害断片、またはその任意の特徴的な部分を含有する、加工された植物産物が提供される。加工された産物は、植物バイオマス、油、食物、動物飼料、、フレーク、ふすま、リント、外皮、および加工された種子から成る群から選択される。

【0060】
作物植物の半翅目の侵入は、作物植物に、本発明のeHTPのうちの1つ以上をコードする組み換えポリヌクレオチド配列を提供することによって制御される。かかるトランスジェニック作物は、昆虫または半翅目阻害量の適用可能なeHTPを含有するように産生または処理され、かかる作物は、(i)eHTPを含むもしくはコードする任意の組成物を、植物、もしくは植物を生じさせる種子に適用すること、および/または(ii)植物、もしくは種子および最終的には植物を生じさせる植物細胞を、eHTPをコードするポリヌクレオチドで形質転換することによって、十分なeHTPを染み込ませる。植物は、昆虫または半翅目阻害量のeHTPを発現する導入遺伝子を含む、一時的にまたは安定して形質転換されたトランスジェニック植物であってもよい。植物は、eHTPを含む組成物が適用された、非トランスジェニック植物であってもよい。かかる方法において、植物は、双子葉植物であり、より具体的には、綿、大豆、またはアルファルファ植物であってもよい。半翅目昆虫としては、限定されないが、段落[0018]で上に記載される虫の一覧といった、成虫および幼虫が挙げられる。
【0061】
好ましくは、リグス種は、リグス・ヘスペルスまたはリグス・リネオラリスであり、エムポアスカ種は、エムポアスカ・ファバエ(Empoasca fabae)であり、アムラスカ種は、アムラスカ・デバスタンスである。
【0062】
本発明の他の特性および利点は、以下の発明を実施するための形態、実施例、および特許請求の範囲から明らかとなろう。
【0063】
実施例
上述を考慮して、当業者は、変更は、開示される特定の態様において行うことができ、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、同様もしくは類似の結果を依然として得ることができることを理解するべきである。このため、本明細書において開示される特定の詳細は、制限として解釈されないものとする。本出願が優先権の利益を主張する米国仮特許出願第61/621,436号、段落[0002]で言及される配列表、ならびに開示および特許請求される本発明への参考資料、特に、本出願で引用される参考文献および公開特許出願は、それらの全体が参照することにより本明細書に組み込まれる。
【実施例1】
【0064】
反復的操作・試験・選択手法
本実施例は、TIC807(配列番号2)と比較して、鞘翅目および/もしくは殺線虫活性、または半翅目昆虫種に対する増加した毒性を呈する、昆虫阻害タンパク質を識別および説明するために使用される、反復的(「再帰的」とも称され得る)操作・試験・選択手法のランダムな、組み合わせの、および発明的な態様を例解する。いくつかの設計手法が、リグス種に対するより大きい阻害活性を有するeHTPを操作するために採用され、手法としては、半ランダムな修飾、他の天然Btタンパク質とのTIC807のアライメントにおける差異の特異的修飾、および構造/機能支援設計を含んだが、これらに限定されなかった。多数の段階の操作および試験を実行して(連続して、および同時にの両方)、増加した毒性を呈するTIC807タンパク質変異体を選択した。データが収集された際、設計手法は調節された。この反復的操作・試験・選択手法はまた、eHTPと比較されるTIC807対照タンパク質のクローン作成、発現、精製、およびバイオアッセイ試験を含むステップを含んだが、これに限定されなかった。
【0065】
TIC807と比較して、増加したリグス毒性を呈した、約267の例示的なeHTPは、改善された昆虫阻害活性に関してアッセイされた、2000超の群の候補eHTP(即ち、「試験」タンパク質)から得られた。試験は、選択プロセスにおいて配列決定されなかったライブラリ突然変異に由来するいくつかの候補eHTPをコードする、組み換えヌクレオチドセグメントを含んだため、試験された候補eHTPの実際の総数は、2000よりもはるかに多かった。
【0066】
種々の量および純度のタンパク質ストックは、試験の目的および所望される試験スループットに依存して、調製された。例えば、より低い量およびより低い純度のタンパク質調製物は、バイオアッセイにおいてより多い数の変異体を走査するために調製された。より大きい量およびより高い純度のタンパク質ストックは、高性能のバイオアッセイのために調製された。改善された変異体の主に関連する残基位置が解明されたため、試験は、高性能のバイオアッセイの傾向があった。最初に、約2000の変異体を、リグス・ヘスペルスにおいて試験した。L.ヘスペルスからのデータに基づき、約600の変異体が設計され、次いで、リグス・リネオラリスにおいてさらに試験された。これらのうち、約267の変異体(表4B)は、TIC807と比較して、リグス・ヘスペルスおよび/またはリグス・リネオラリスに対する増加した毒性を実証した。これらの267の変異体は、両方のリグス種に対する増加した毒性を実証することが確認された、22の変異体を含んだ。さらなる確認および用量応答試験は、両方のリグス種に対するLC50値を判定するために、8用量複製バイオアッセイを使用してその後特性評価された7つの変異体に選択を狭めた。
【0067】
選択プロセスは、試験データの動的更新、操作手法を絶えず調節すること、および反復的段階を実施することを含んだ。同時に、労働集約的なクローン作成、タンパク質発現、タンパク質精製、およびバイオアッセイ実験が、候補eHTPを試験するために採用された。
【実施例2】
【0068】
操作手法
アライメントに基づく手法
Cry51:Cry51Aa1(配列番号182)、TIC853(配列番号184)、およびTIC807(配列番号2)のタンパク質メンバの多重配列アライメントを使用して、配列番号2(TIC807)に対する、変動の領域、例えば、195〜201位および211〜219位を識別した。これらの領域は、これらの領域におけるランダムなアミノ酸残基をコードする、縮重したオリゴヌクレオチドプライマーの使用を通じた飽和突然変異に対して標的化された。構築物ライブラリは、宿主細胞におけるその後のタンパク質発現のために調製された。
【0069】
Cry51Aa1(配列番号182)、TIC853(配列番号184)、およびTIC807(配列番号2)の多重配列アライメントは、TIC807に対する各位置の変異体に関する平均対距離を計算するために、BLOSUM80置換マトリクスとの組み合わせで使用された。より低い平均対距離を有する残基位置は、代替的なアミノ酸残基、例えば、G28X、G31X、F46X、E125X、F138X、F147X、S167X、Y216X、P218X、G234X、T247X、D268X、およびT308Xに対してコードする縮重したオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、代替的なアミノ酸残基で置換された。構築物ライブラリは、宿主細胞におけるその後のタンパク質発現のために調製された。
【0070】
走査手法
ポリヌクレオチド構築物は、配列番号2(TIC807)の全長にわたる全ての可能な位置において、単一アラニン置換または二重アラニン置換(アラニン−<親残基>−アラニン)を発現するように操作された。仮説実施例に関しては、表2を参照されたい。
【表2】
X=親残基
a=親残基はアラニン残基
A=アラニン残基に修飾
S=セリン残基に修飾
【0071】
アラニン残基が既にTIC807に存在した場合、セリンが代わりに置換された。TIC807と比較して増加した毒性を呈したタンパク質変異体は、増加した毒性をもたらしたそれらのアラニン置換残基における、組み合わせおよび飽和突然変異によってさらに試験された。走査手法はまた、操作・試験・選択の先の反復的段階からの蓄積された修飾を有する、改善された組み合わせ変異体において実施され、例えば、変異F46S、Y54H、S167R、S217N、および残基範囲196〜201内の隣接する三重欠失を有するTIC807_M2(配列番号8)は、改善されたTIC807_M2をさらに改善するために、単一のアラニン置換の追加の段階によってさらに操作された。主に関連する残基が識別され、組み合わせおよび飽和突然変異(例えば、A150X、E125X、E155X、F147X、I134X、N157X、Q149X、T133X、E135X、およびN137X)によってさらに試験された。これらの組み合わされた手法によって操作された変異体は、TIC807と比較して、増加した毒性へのさらなる改善を呈し、かつTIC807(配列番号2)の原子構造を活用する他の設計手法とさらに組み合わされた。
【0072】
表面露出残基
本発明のタンパク質の原子構造は、反復的操作・試験・選択手法の最中に判定され、各残基の相対的溶媒露出度(SA%)は、MolsoftのICM−Browser(Molsoft L.L.C.,11199 Sorrento Valley Road,S209,San Diego,CA92121)を使用して判定された。表3中、(A)および(B)の列に示される、実際のSA%は、配列番号185(TIC807_L11M)および配列番号8(TIC807_M2)として記載されるそれぞれのアミノ酸配列を有するタンパク質に関して計算された。TIC807およびTIC853の残基に関して予想されたSA%は、表3中、(A)および(C)の列にそれぞれ列記される。ともに、表3に報告される%SA値は、原子構造の各位置における各残基に関して標準的な伸長配座(Gly−XXX−Gly)における最大溶媒露出面積に対する、水分子によってプローブされる溶媒露出表面積のパーセンテージ(%)として計算される。表3は、Clustal Wアライメントにおいて並べられた残基ごとに、各タンパク質の残基を並べる。100超のSA%は、各残基に対する標準的な伸長配座(Gly−XXX−Gly)における最大溶媒露出面積が、水分子によってプローブされる実際の溶媒露出面積未満である時に、生じ得る。100超のSA%は、100%として表中に報告される。
【0073】
本明細書において説明される、組み合された操作・試験・選択手法は、配列番号2(TIC807)のP219のCb原子周辺で約9.2〜12.2オングストロームの半径を有する残基の表面パッチ(図2の[2])内に蓄積する、いくつかの主に関連する残基をもたらした:配列番号2(TIC807)のV10、I14、N22、N23、G24、I25、Q26、G27、F30、Q38、I39、D40、T41、I43、S193、T194、E195、H196、Y197、S198、H199、Y200、S201、G202、Y203、P204、I205、L206、T207、W208、I209、S210、Y216、S217、G218、P219、F220、M221、S222、W223、Y224、F225、N239、およびV244。これらの残基のうちの少なくとも半分は、15超、またはそれに等しいSA%値を呈する。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【表3-6】
【表3-7】
【表3-8】
【表3-9】
P1は、図2の表面パッチ[1]におけるアミノ酸を示す。
P2は、図2の表面パッチ[2]におけるアミノ酸を示す。
は、本明細書において説明される72の主に関連するアミノ酸のうちの1つを示す(図2を参照されたい)。
Clustal Wによって並べられるTIC807_L11M、TIC807_M2、およびTIC853の残基が示される。
#で印される数は、少なくとも約36%のSA%を表す。
【0074】
受容体結合
36%超のSA%値を有する残基、または配列番号2(TIC807)のS95のCb原子からの約9.2〜12.2オングストロームの半径における、36%超のSA%を有する残基の約3つの残基内の表面パッチ(図2の[1])は、増強されたリグス阻害スペクトルおよび/または改善されたリグス阻害活性を呈するeHTPを提供するように置換することができる、TIC807タンパク質の残基を含む領域として識別された。この表面パッチ領域は、標的昆虫受容体結合活性と関連付けられ得、配列番号2(TIC807)の残基T93、S95、S97、F147、Q149、S151、N180、T182、V251、Q253、およびS255を含む。eHTPは、S95A、F147A、Q149E、および/またはV251Aといった、表面パッチ1のアミノ酸残基の1つ以上の置換を含むことができるが、これらに限定されない。
【0075】
本明細書において説明される、組み合された操作・試験・選択手法は、置換または別様に修飾される時、eHTPを提供することができる、表面パッチ1に位置する残基を識別した。これらの残基は、TIC807と比較して、増強されたリグス阻害スペクトルおよび/または改善されたリグス阻害活性を提供するために、リグス昆虫腸における受容体へのeHTPの産生的結合にとって重要であり得る。eHTPを提供することができる表面パッチ1のアミノ酸残基の修飾は、昆虫のグリコシル化された受容体上で見出される糖類への結合を好む芳香族基および/または水素結合基を提供する置換を含む。
【0076】
膜結合
タンパク質のベータシート領域に位置するあるアミノ酸残基がTIC807の原子構造から識別され、芳香族残基で置換された。より具体的には、折り畳まれたTIC807ベータシート領域のアミノ酸L78、I123、H270、R273、I275が、フェニル(Pheny)アラニン、チロシン、またはトリプトファンで置換された。R273およびI275の芳香族アミノ酸置換が、増強されたリグス阻害スペクトルおよび/または改善されたリグス阻害活性を提供した、それらの残基間で行われた(表4、配列番号32、34、68、92、および122に関するデータを参照されたい)。これらの位置における残基のアミノ酸側鎖は、標的昆虫の膜と相互作用する可能性が高くあり得る。
【0077】
タンパク質分解活性部位
概して、タンパク質分解に関与すると考えられるグリシン残基は、タンパク質分解開裂動力学を改変するように、セリンで置換された。ループ領域におけるグリシン残基の存在は、より多くの柔軟性、および、したがってタンパク質分解への感受性を付与することができ、これは、昆虫阻害活性を増加させ得るか、または昆虫阻害活性を減少させ得る。構造的に識別されたループ領域における残基は、グリシン残基で置換され、改善は全く観察されなかった。既にグリシンであるループ内の位置(例えば、G18、G24、G27)は、タンパク質分解感受性を低減するための小さい残基であるセリンで置換され、改善は全く観察されなかった。
【0078】
組み合わされた構造設計手法
TIC807(配列番号2)の原子構造は、ライブラリ突然変異のためのループ領域を識別し、続いて、操作された変異体を試験するために使用された。配列番号2(TIC807)のアミノ酸位置211〜216で、ループは、ライブラリ突然変異され、試験された。配列番号2(TIC807)のアミノ酸位置75〜83、161〜167、および267〜276で、近接して連続したループは、ライブラリ突然変異され、試験された。
【0079】
TIC807の原子構造の分析は、構造的ループが配列番号2の残基113〜138に存在し、および変異体が、ループを安定させる、そして、不安定にするために操作されたことを示唆している。
【0080】
短ループによって接続された2本のベータストランドに跨る別の領域において、2本のベータストランドは、孔を形成するループの特徴である、配列番号2に関して、116〜121位および133〜138位で疎水性アミノ酸残基および親水性アミノ酸残基の交互のパターンを示した。発現ライブラリは、両方のベータストランドセグメントを修飾するために操作され、ライブラリ中の計288の可能な変異体において、残基V116、V118、およびI120をそれぞれの組み合わせ116V/Y/L/H/F/D、118V/Y/L/H/F/D、および120I/D/F/H/L/N/V/Yで置き換えた。この手順は、243の可能な変異体において、残基S117、S119、およびP121をそれぞれの組み合わせ117S/A/D/E/G/K/N/R/T、119S/A/D/E/G/K/N/R/T、および121P/S/Tと;252の可能な変異体において、残基I133、A135、およびF137をそれぞれの組み合わせ133I/D/F/N/V/Y、135A/D/F/H/L/V/Y、および137F/D/H/L/V/Yと;ならびに486の可能な変異体において、残基T134、E136、およびN138をそれぞれの組み合わせ134T/A/D/E/G/K/N/R/S、136E/A/D/G/K/N/R/S/T、および138N/A/D/G/S/Tと、について繰り返された。増強されたリグス阻害スペクトルおよび/または改善されたリグス阻害活性は、表4に示されるこれらの置換のうちのいくつかと関連付けられた。
【0081】
構造関数関係
TIC807の変異体を発現する、総計で2000超のクローン(混合ライブラリクローンを含む)が、TIC807と比較して、リグス種に対して増強されたリグス阻害スペクトルおよび/または改善されたリグス阻害活性について試験された。半ランダムな修飾、特異的修飾、および予測構造関数修飾は、構造モデリング、受容体結合能、金属結合能、オリゴマー形成能、表面電荷分布の均一性、孔形成能、イオンチャネル機能、ならびにTIC807と比較して増強されたリグス阻害スペクトルおよび/または改善されたリグス阻害活性を有するeHTPを識別することを目的とする表面露出パッチの識別を含む。これらのクローンは、バイオアッセイ試験のために発現された。
【実施例3】
【0082】
変異体および断片を含むTIC807のタンパク質発現および精製
対照タンパク質TIC807は、バチルス・チューリンゲンシス(Bt)において結晶形態または大腸菌において凝集形態で発現され得る309アミノ酸長さのタンパク質である。その試験変異体は、Btにおいて組み換え発現された。TIC807およびTIC807の変異体の発現特性は、Bt細胞および大腸菌細胞からそれぞれ抽出された優勢な結晶形態および凝集形態である。リグス生物活性について試験するために、試験試料および対照試料は、25mM炭酸ナトリウム緩衝液中に試料を可溶化し、遠心分離によって不溶化材料を除去することによって、リグスバイオアッセイに適合させた。試験試料および対照試料中のタンパク質の量は、総タンパク質法、例えば、ブラッドフォードアッセイ、ELISA法、または同等のものを使用して測定された。ゲル電気泳動は、可溶化組み換えタンパク質の純度およびストック濃度を決定するために使用された。C末端HISタグTIC807タンパク質は、大量のTIC807対照タンパク質の検出、精製、および定量化を容易にするために操作された。C末端HISタグTIC807および非タグTIC807試験試料は、別々にアッセイされ、リグスに対して同等の活性を有することが確認された(実施例4、5、および6を参照されたい)。
【0083】
部位特異的アミノ酸置換は、可溶化形態の発現を高めるために、TIC807_M13(配列番号34)に対して行われた。発明者は、本発明のタンパク質のより容易に可溶な変異体が、発現および精製を促進することができ(例えば、大腸菌の宿主細胞において発現される)、植物の宿主細胞において発現された時、昆虫阻害の有効性を増加させることができると仮定する。TIC807_M13(配列番号34)をコードする組み換えDNA構築物は、TIC807_M13に関して、修飾は、変異体#1については、I58KおよびP59K、変異体#2については、S198KおよびG199K、ならびに変異体#3については、S246R、V248E、およびQ250Rである、3つの異なる変異体を反映させるために3つの異なる方法で操作された。TIC807(配列番号2)に関して、修飾は、変異体#1については、I58KおよびP59K、変異体#2については、S201KおよびG202K、ならびに変異体#3については、S249R、V251E、およびQ253Rであるように、代替として記載され得、TIC807_M13(配列番号34)において反映される配列番号2(TIC807)の残基範囲196〜201内の隣接する三重欠失により、この位置相違が適合する。4つの操作された組み換えDNA構築物は、各々、クローン化され、大腸菌において発現された。4つの大腸菌調製物からの可溶性画分は、クーマシィー染色されたSDS−PAGEによって評価され、TIC807_M13(配列番号34)が可溶性画分において不検出であったが、対照的に、変異体#1、2、および3は可溶性であったことを示した。同様のアミノ酸置換は、非Btまたは植物宿主細胞において、単独でまたは組み合わせて、それらの溶解度を高めるために本発明のタンパク質に対して行われる。組み換えDNA構築物は、TIC807_M13変異体#3(TIC807_M14に改名;ヌクレオチド配列番号203およびアミノ酸配列番号204)をコードし、発現するように操作された。調製された大腸菌溶解物が浄化され、イオン交換およびゲル濾過法を含む、一連のカラムにおいて組み換えタンパク質が精製され、濃縮された。プールされたタンパク質画分が、定量化され、リグス昆虫に対して活性であることを決定した(実施例4、表4Bを参照されたい)。
【0084】
配列番号28、配列番号30、配列番号32、または配列番号36として記載されるアミノ酸配列を有するタンパク質等を含むが、これらに限定されない、本発明のタンパク質は、宿主細胞中に発現される、例えば、Bt、大腸菌中、または植物細胞もしくは植物細胞の区画内に発現される時、可溶性形態の発現を高めるために操作される。操作には、以下の位置58、59、198、199、201、もしくは202のうちの1つ以上における、リジンアミノ酸残基;または以下の位置198、248、もしくは301のうちの1つ以上におけるグルタミン酸、または以下の位置246、250、もしくは253のうちの1つ以上におけるアルギニンの置換が含まれる。
【0085】
C末端領域は、タンパク質の単量体の中心部から離れて突出する(図2を参照されたい)。組み換えDNA構築物は、TIC807_M8(配列番号16)のタンパク質断片(アミノ酸1〜301)である配列番号202のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードし、発現するように操作され、発現タンパク質は、精製され、定量化され、リグス昆虫に対して活性であることが判断された(実施例4、表4Bを参照されたい)。組み換えDNA構築物は、それぞれのTIC807位置A281、G289、S293、A301、およびS304で本発明のタンパク質のC末端部からの異なる切断を呈するTIC807断片をコードし、発現するように設計された。タンパク質断片は、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、および配列番号36として記載されるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードし、発現するように操作され、発現タンパク質断片は、リグス昆虫に対して試験試料として使用される。
【実施例4】
【0086】
操作されたタンパク質の半翅目活性
本実施例は、リグス属、例えば、リグス・ヘスペルスおよびリグス・リネオラリスを含む異翅目カスミカメムシ科、アムラスカ属、例えば、アムラスカ・デバスタンス、およびエムポアスカ、例えば、エムポアスカ・ファバエ(Empoasca fabae)を含むオオヨコバイ科のメンバが含まれるが、これらに限定されない、半翅目の昆虫の食餌中に提供される時、半翅目の昆虫に対して改善された殺虫活性または増強された殺虫特異性を有するeHTPを例解する。表4Bを含む本実施例は、リグス・ヘスペルスおよびリグス・リネオラリスの両方に対して本発明のBt発現組み換えタンパク質の増強されたリグス阻害スペクトルおよび/または改善されたリグス阻害活性を決定するために使用された摂食アッセイを例解する。組み換え細菌宿主細胞において発現されるタンパク質は、炭酸塩緩衝液中に可溶化され、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によって分析され、タンパク質濃度は、基準としてウシ血清アルブミン(BSA)を使用してデンシトメトリーによって決定された。この方法で調製されたタンパク質ストック(2X)は、摂食アッセイのための食餌と混合された。
【0087】
半翅目の種リグス・ヘスペルスおよびリグス・リネオラリスを用いた摂食アッセイは、伸縮性のあるParafilm(登録商標)シートとマイラーシートとの間にカプセル化されたリグス食餌を用いた96ウェルマイクロタイタープレート形式に基づいた。人工的な食餌は、Bio−Serv(登録商標)(Bio−Serv(登録商標)食餌F9644B,Frenchtown,NJ)から得られた。加熱滅菌した沸騰水(518mL)を、表面が滅菌されたミキサー中で156.3グラムのBio−Serv(登録商標)食餌F9644Bと混合した。4つの表面が滅菌された鶏卵の中身を添加し、混合物が滑らかになるまで混合し、次いで、1リットルの総体積になるように調整し、室温まで冷却し、これにより、2倍の食餌になった。2倍の食餌および2倍の試料を1:1の比率で混合することによって、試験試料は調製された。一枚のParafilm(登録商標)(Pechiney Plastic Packing,Chicago,IL)シートを、96ウェル形式のために設計された真空マニホールド(Analytical Research Systems,Gainesville,FL)上に置き、ウェルへのParafilm(登録商標)の押出が生じるのに十分である約−20ミリメートルの水銀の真空が適用された。20〜40マイクロリットルの試験試料を、Parafilm(登録商標)の押出に加えた。一枚のマイラーフィルム(Clear Lam Packaging,Inc.,Elk Grove Village,IL)を、試料が充填されたParafilm(登録商標)の押出上に置き、仮付けアイロン(Bienfang Sealector II,Hunt Corporation,Philadelphia,PA)を用いて密封され、それ故に、食餌が充填されたParafilm(登録商標)サシェ剤を形成した。これらのParafilm(登録商標)のサシェ剤を、希アガロース液中で懸濁されたリグスの卵が入っている平底96ウェルプレート上に置いた。孵化後、リグスの幼虫は、食餌が充填されたParafilm(登録商標)のサシェ剤を穿孔することによって食餌を摂取する。代替として、卵の代わりに新たに孵化させたリグスの幼虫を、各々のウェルに手作業で侵入させた。発育阻止および致死率スコアは、5日目に判定され、対照と比較した。データは、JMP4統計ソフトウェアを使用して分析した。試験濃度での各々のタンパク質については、8匹の幼虫から成る3つの個体群を、このバイオアッセイに供し、致死率スコアを表4B中に報告した。
【0088】
表1および表4Bに列記されるLC50の判定については、タンパク質を、8〜10の濃度で新たに孵化させたリグスの幼虫に提示し、用量範囲を超える致死率に関して採点する前に5日間、幼虫に摂食させた。各々の濃度については、8匹の幼虫から成る3つの個体群を、このバイオアッセイに供し、表1および表4B中のすべてのLC50の判定は、少なくとも1回繰り返された。
【0089】
LC50の判定については、タンパク質を、4つの濃度で新たに孵化させたリグス・リネオラリスの幼虫に提示し、用量範囲を超える致死率に関して採点する前に5日間、幼虫に摂食させた。リグス・リネオラリスのLC50の推定が、リグス・リネオラリスへの広範囲の毒性用量応答を完了するために、1000μg/mLを超える非常に多量のこれらのタンパク質が、リグスの食餌に提供され得なかったため、TIC807およびTIC807_M2において行われ、そのため、LC50値は、TIC807またはTIC807_M2については判定されなかった。代わりに、低範囲内の4用量のLC50の推定が行われ、表1および表4B中に報告された。TIC807_M14について推定されたリグス・リネオラリスのLC50は、4.4μg/mLであった。各々の濃度については、8匹の幼虫から成る3つの個体群が、このバイオアッセイに供された。
【0090】
表4Aおよび4Bを含む本実施例は、アムラスカ・デバスタンスに対して本明細書に開示されたBtが発現された組み換えタンパク質の増強された阻害スペクトルおよび/または改善された阻害活性を判定するために使用された摂食アッセイを例解する。リグス・ヘスペルスおよびリグス・リネオラリスに対して改善された殺虫活性または増強された殺虫特異性を有するTIC807変異体は、アムラスカ・デバスタンスに対して改善された殺虫活性を示す。
【0091】
TIC807およびTIC807_M13を、25mMの炭酸ナトリウム緩衝液、pH10中に溶解した。アムラスカ・デバスタンス卵がオクラ葉上で回収され、2%寒天が入っているペトリ皿中で培養された。孵化後、新生虫は、希釈された(1:5)リグス食餌を使用するバイオアッセイのために使用された。タンパク質および食餌は、同じ比率で混合され(タンパク質の最終濃度が500μg/mLになる)、試験容器に分注した。未処理対照は、緩衝液を食餌と混合することによって調製された。個々の新生虫を試験容器に侵入させ、このアッセイを25℃、60%相対湿度で培養した。20匹の新生幼虫が、各々の濃度、タンパク質、および2回の複製において試験された。対照は、1:5で希釈されたリグス食餌において、25mM炭酸ナトリウム緩衝液、pH10で維持された。昆虫の致死率は、5日目に判定された。致死率値は、以下の式:(処理における致死率(%)−制御における致死率(%))/(100−制御における致死率(%))×100によって計算された。表4Aは、5つの異なる濃度で、TIC807およびTIC807_M13に対するアムラスカ活性を示す。
【表4A】
【0092】
LC50値は、別々の試験においてTIC807およびTIC807_M13に対して決定された。配列番号2(TIC807)は、116.79μg/mLのLC50値および437.27μg/mLのLC90を示した。配列番号34(TIC807_M13)は、7.59μg/mLのLC50値および239.8μg/mLのLC90値を示した。
【0093】
アムラスカ・デバスタンスについて記載された摂食アッセイは、エムポアスカ・ファバエ(Empoasca fabae)に対して改善された殺虫活性および/または増強された殺虫特異性についてeHTPを試験するために使用される。リグス・ヘスペルスおよびリグス・リネオラリスに対して改善された殺虫活性または増強された殺虫特異性を有するTIC807変異体は、エムポアスカ・ファバエ(Empoasca fabae)に対して改善された殺虫活性を示す。
【0094】
リグス・ヘスペルスおよびリグス・リネオラリスに対してTIC807(配列番号2)、TIC807_M2(配列番号8)、TIC807_M10(配列番号30)、およびTIC807_M13(配列番号34)に対するCry51Aa1(配列番号182)のLC50値は、1つの試験セットにおいて決定された。TIC807_M2、TIC807_M10、およびTIC807_M12は、Cry51Aa1と比較して改善されたLC50値を示す。
【0095】
この手順への変形であって、結果に影響が出るはずのない変形が、存在し得ることは、当業者には明らかであるべきである。
【表4B-1】
【表4B-2】
【表4B-3】
【表4B-4】
【表4B-5】
【表4B-6】
【表4B-7】
【表4B-8】
【表4B-9】
【表4B-10】
【表4B-11】
【表4B-12】
【表4B-13】
【表4B-14】
【表4B-15】
【表4B-16】
【表4B-17】
【表4B-18】
【表4B-19】
【表4B-20】
【表4B-21】
【表4B-22】
【表4B-23】
【表4B-24】
【表4B-25】
【表4B-26】
【表4B-27】
【表4B-28】
【表4B-29】
【表4B-30】
【表4B-31】
【表4B-32】
【表4B-33】
【表4B-34】
【表4B-35】
【表4B-36】
【表4B-37】
【表4B-38】
【表4B-39】
【表4B-40】
【表4B-41】
【表4B-42】
【表4B-43】
ND=決定されず;は、約5μg/mLで試験した。
【実施例5】
【0096】
本発明のタンパク質メンバの昆虫阻害活性
TIC807_M1(配列番号6)、TIC807_M2(配列番号8)、TIC807_M3(配列番号10)、TIC807_M4(配列番号12)、TIC807_M5(配列番号14)、TIC807_M6(配列番号18)、TIC807_M7(配列番号20)、TIC807_M8(配列番号16)、TIC807_M9(配列番号28)、TIC807_M11(配列番号32)、TIC807_M13(配列番号34)、およびTIC807_M12(配列番号36)等であるが、これらに限定されない、本発明のタンパク質が調製され、リグス以外の植物の有害生物に対する生物活性について試験された。
【0097】
タンパク質TIC807_M10(配列番号30)、TIC807_M11(配列番号32)、TIC807_M12(配列番号36)、およびTIC807_M13(配列番号34)が調製され、他の鱗翅目、鞘翅目、異翅目、および同翅目からの有害生物に対する生物活性について試験された。タンパク質TIC807_M5(配列番号14)が調製され、鞘翅目の有害生物に対する生物活性について試験された。バイオアッセイは、表5に示されるような、昆虫におけるこれらのタンパク質の効果を評価するために行われた。摂食アッセイは、殺虫タンパク質を含む人工食餌において行われた。殺虫タンパク質は、実施例3に記載されるように調製され、試験される昆虫に応じて、昆虫に特異的な人工食餌を使用して局所に適用された。毒素は、緩衝中で懸濁され、ウェルあたり試料の500μg/mLの割合で適用され、TIC807_M5については1000μg/mLで、そしてその後乾燥させた。平均発育阻止スコアおよび個体群の致死率は、試験された昆虫種あたり8匹の昆虫から成る3つの個体群において判定された。結果は、未処理対照と比較して統計的に有意であった発育阻止および致死率等の昆虫の反応に対して陽性(+)として表された。結果は、昆虫が未処理対照(UTC)、つまり、上記の緩衝液のみが適用される食餌を与えるのと同様であった場合、陰性(−)として表された。
【表5】
UTC=未処理対照;ND=判定されず
CPB=コロラドハムシ(Leptinotarsa decemlineata);WCR=西洋トウモロコシ根虫(Diabrotica virgifera);ECB=欧州アワノメイガ(Ostrinia nubilalis);南西アワノメイガ(Diatraea grandiosella);CEW=アメリカタバコガ(Helicoverpa zea);FAW=ツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda);SGSB=ミナミアオカメムシ(Nezara virudula);NBSB=亜熱帯ブラウンスティンクバグ(brown stink bug)(Euschistus heros);GPA=モモアカアブラムシ(Myzus persicae)。
【0098】
本発明のタンパク質はまた、回虫由来の有害生物に対する生物活性について試験される。
【実施例6】
【0099】
本発明のタンパク質を発現する植物は、昆虫阻害活性を呈する
本実施例は、植物における本発明のタンパク質の発現を例解し、本発明のタンパク質を発現する綿植物が昆虫阻害活性を呈することを実証する。
【0100】
植物における本発明のタンパク質の発現で用いるポリヌクレオチドセグメントは、米国特許第7,741,118号で記載される方法に従って作製される。例えば、配列番号4(TIC807_4)、配列番号6(TIC807_M1)、配列番号8(TIC807_M2)、配列番号10(TIC807_M3)、配列番号12(TIC807_M4)、配列番号14(TIC807_M5)、配列番号16(TIC807_M8)、配列番号18(TIC807_M6)、配列番号20(TIC807_M7)、配列番号22(TIC807_22)、配列番号24(TIC807_24)、配列番号26(TIC807_26)、配列番号28(TIC807_M9)、配列番号30(TIC807_M10)、配列番号32(TIC807_M11)、および配列番号34(TIC807_M13)に記載されるようなアミノ酸配列を有する毒素タンパク質は、植物における使用のために設計されたポリヌクレオチドセグメントから発現し、本発明のタンパク質をコードし、これには、配列番号186、配列番号187、配列番号188、配列番号189、配列番号190、配列番号191、配列番号192、配列番号193、配列番号194、配列番号195、配列番号196、配列番号197、配列番号198、配列番号199、配列番号200、および配列番号201に記載されるようなポリヌクレオチド配列がそれぞれ含まれる。
【0101】
変異体タンパク質またはその昆虫阻害断片の各々をコードするポリヌクレオチドセグメント(またはポリヌクレオチド分子)が、単独でまたは相互に組み合わせて、あるいは、dsRNA媒介遺伝子抑制分子等の他の昆虫阻害タンパク質もしくは昆虫阻害剤と組み合わせて使用されることが意図される。そのような組み合わせは、相乗作用または適合機構において本発明のタンパク質と作用するように設計される。これらの組み合わせの目的は、有害生物、特に、昆虫有害生物の侵入からの植物および植物細胞の保護を達成することである。本発明の範囲内の特定の変異体タンパク質は、表4Bに列記され、出願されるように本願を通じて記載される配列番号に対応するタンパク質を含む。
【0102】
配列番号188(TIC807_M2、配列番号8をコードする)および配列番号192(TIC807_M8、配列番号16をコードする)からのポリヌクレオチドセグメントは各々、綿形質転換のために発現構築物に組み換え操作された。
【0103】
トランスジェニック綿植物(組み換え綿植物)が、産生され、有効性について試験された。種々の定量的および半定量的方法、例えば、PCR、ELISA、およびウェスタンによって判定される、それぞれの変異体タンパク質のコピー数が少なく、発現が高かった、再生成された(R0)トランスジェニック植物が選択された。R0綿葉組織における発現レベルは、典型的には、0.5〜500ppmの生体重の範囲であった。高レベルのタンパク質を発現するR0植物は、土に移され、自家受粉された。自家受粉されたR0植物の各々から30の種子が植えられ、導入遺伝子に対して同型の子孫が開花するように栽培された。本実施例の各々の構築物あたり4〜5事象あたり11〜18の植物が、リグスに対する有効性について試験された(表6A、6B、および6C)。プールされた陰性の別々の個体群からの形質転換されない綿品種の植物(子孫は導入遺伝子を含まず)、およびTIC807親タンパク質を発現する植物は、陰性対照としての役割を果たした。開花期の綿植物の1本の枝は、通気性のあるプラスチック製の「授粉」スリーブから作製されるメッシュバッグ(Vilutis and Co.Inc.,Frankfort,IL)に入れられ、複数本の枝は、同様の様式で設定された。各々のメッシュバッグは、ビニタイを使用して茎で固定された。約4〜6のリグス・ヘスペルス幼虫(孵化後24時間未満)は、1.4mLの円錐管(Matrix Technologies Corp.,NH)に入れられた。ふたが外された円錐管をメッシュバッグ中に滑らせることによって、メッシュバッグ中の枝に、幼虫が侵入した。メッシュバッグ中の全ての生存している昆虫がドライアイス上に回収される前の10〜11日間、昆虫に食餌を与えた。生存したものは、総質量を得るために計量された。致死率パーセントおよび生存したものの平均質量が計算された。行方不明の昆虫は、致死率パーセントの致死率計算に含まれた。表6A、6B、および6Cに示されるように、変異体タンパク質TIC807_M2およびTIC807_M8を発現する綿植物は、リグス・ヘスペルス幼虫の成長および生育に大いに影響を与えた。これらの結果に基づいて、これらの植物、種子、発現構築物は、さらなる生育を進めた。
【表6A】
【表6B】
【表6C】
Std Dev=標準偏差
SEM=標準誤差
Lo 95%=95%信頼区間の下限
Up 95%=95%信頼区間の上限
T分類=最小有意差検定を用いた、F値=101.1756、df=15,44、Pr<0.0001
【0104】
別の実施例において、TIC807_M11を発現する5つのトランスジェニック事象からの綿植物は、天然のリグスの侵入圧を有する畑試験において試験された。これらの植物は、非トランスジェニックレシピエント株(形質転換のために使用されたDP393遺伝資源)と比較して、畑の有効性を実証した。事象あたり5つの植物におけるリグス・リネオラリス昆虫の平均数は、非トランスジェニック対照由来の植物におけるリグス・リネオラリス昆虫の平均数よりも著しく低かった。5つの事象からの植物由来の実綿の産出量は、非トランスジェニック対照の実綿の産出量、例えば、栽培期にわたるスクエア保持(season−long square retention)に統計的に同等であった。
【0105】
別の同様の畑試験において、TIC807_M10を発現する7つのトランスジェニック事象由来の綿植物は、非トランスジェニック対照と比較して、畑の有効性を実証した。事象あたり5つの植物におけるリグス・リネオラリス昆虫の平均数は、非トランスジェニック対照由来の植物におけるリグス・リネオラリス昆虫の平均数よりも著しく低かった。7つのうちの3つの事象からの植物由来の実綿の収率は、非トランスジェニック対照の実綿の収率よりも統計的に高かった。
【0106】
別の実施例において、TIC807_M13を発現する34のトランスジェニック事象からの綿植物は、非トランスジェニック対照と比較して、栽培箱の有効性を実証した。メッシュバッグに、(本実施例の前半で記載された単一の枝を囲む代わりに)開花期に綿植物全体を囲むように入れた。事象あたり5つの植物が評価され、植物あたり回収されたリグス・リネオラリス昆虫(第二世代のリグスの幼虫から成虫)の平均数は、非トランスジェニック植物あたりリグス・リネオラリス昆虫の平均数よりも著しく低かった。
【0107】
同様の実験が、表1、表4A、および4Bに列記されるタンパク質を発現する植物を用いて行われる。
【実施例7】
【0108】
昆虫阻害活性を呈する本発明のタンパク質を発現するアルファルファ植物由来の組織
本実施例は、アルファルファ植物における本発明のタンパク質の発現を説明し、本発明のタンパク質を発現するアルファルファ植物由来の組織が昆虫阻害活性を呈することを実証する。
【0109】
配列番号192(TIC807_M8、配列番号16をコードする)からのポリヌクレオチドセグメントは、アルファルファ形質転換のために、3つの別々に構成された発現構築物に組み換え操作された。データを報告するために、3つの組み換え構築物が、[ER]、[ES]、および[ET]にコードされる。
【0110】
異系交配し、自家授粉されたトランスジェニックアルファルファ植物(組み換えアルファルファ植物)が、形質転換細胞から回収された。RT−PCR法および半定量的ウェスタン法のそれぞれによって判定される、コピー数が少なく、TIC807発現が高かった組み換えアルファルファ植物が選択された。別々の10の事象からのアルファルファ植物組織が、プールされ、凍結乾燥され、細かくされ、ストック緩衝液、25mM NaCarb、pH10.5中で再懸濁された。導入遺伝子を発現するTIC807_M8がないアルファルファ由来の植物組織は、対照として使用するために調製された。リグス食餌に組み込むために、ストック調製物を、100、300、および900倍に連続的に希釈した。実施例4の摂食アッセイ法を使用して、致死率および発育阻止スコアが5日目に判定され、対照と比較した(表7Aおよび7Bを参照されたい;データは、JMP4統計ソフトウェアを使用して分析された)。各々の試験試料および各々の希釈のために、8匹の幼虫から成る3つの個体群がこのバイオアッセイに供された。発育阻止スコアは、0=陰性対照に対する差がない、1=約25%少ない質量、2=約50%少ない質量、および3=約75%少ない質量である、視覚的な質量評価に相当する。8匹の幼虫から成る各々の個体群に関して発育阻止スコアの平均が報告される。
【表7A】
【表7B】
【実施例8】
【0111】
リグス種の阻害活性を呈するeHTPおよび第二の昆虫阻害タンパク質を共発現する植物
TIC1415およびTIC807_M13の種々の混合物を含むタンパク質試料が、調製され、バイオアッセイにおいて試験された。TIC1415タンパク質および他のリグス阻害タンパク質は、PCT特許出願公開国際公開第2012/139004号に記載される。試料混合物が、リグス・リネオラリスに与えられ、生物活性アッセイを使用した。また、TIC1415タンパク質のみおよびTIC807_M13のみを、陽性対照として調製した。緩衝液は、陰性対照として使用した。3つすべてのタイプの調製物からの試料は、リグス・リネオラリスに対して致死率を呈し、生存したものの発育を阻止した。致死率および発育阻止スコアは、緩衝液を与えられる昆虫の生物活性スコアと比較して有意であった(表8Aを参照されたい)。データは、拮抗作用がないことを示唆している。追加のバイオアッセイ試験が、相乗および/または相加効果を実証するために、混合物に対して行われる。
【表8A】
†個体群あたり8匹の幼虫から成る5つの個体群の平均値(平均(mean))
‡発育阻止スコアは、0=陰性対照に対する差がない、1=約25%少ない質量、2=約50%少ない質量、および3=約75%少ない質量である、視覚的な質量評価に相当する。8匹の幼虫から成る各々の個体群に関して発育阻止スコアの平均が報告される。
95%信頼区間で。
【0112】
トランスジェニックDNAを有する事象を含む綿植物は、それぞれのタンパク質TIC1415およびTIC807_M13を共発現するように設計された。そのような植物は、リグス・リネオラリスを侵入させたケージ化された全植物アッセイにおいて評価された。10の事象から5つの植物が各々、ケージ化され、植物あたり2対の雄および雌のL.リネオラリスを侵入させた。このアッセイは、綿植物の生育のための正常な環境条件下、栽培箱において21日間培養された。DP393陰性対照植物を、同様の様式で成長させた。3週間の期間の終了時、種々の生育期のリグスを計数した。生育における各々の段階でリグス・ヘスペルス昆虫の植物あたりの平均数を計算した(表8Bを参照されたい)。
【表8B】
図1
図2
図3
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]