特許第6106268号(P6106268)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6106268
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】燃料インジェクター
(51)【国際特許分類】
   F02M 61/10 20060101AFI20170316BHJP
   F02M 47/00 20060101ALI20170316BHJP
   F02M 51/00 20060101ALI20170316BHJP
   F02M 61/12 20060101ALI20170316BHJP
   F02M 45/00 20060101ALI20170316BHJP
   F02M 51/06 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   F02M61/10 P
   F02M47/00 A
   F02M51/00 F
   F02M61/10 G
   F02M61/10 W
   F02M61/12
   F02M45/00 C
   F02M51/06 K
【請求項の数】12
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-516545(P2015-516545)
(86)(22)【出願日】2013年5月29日
(65)【公表番号】特表2015-519515(P2015-519515A)
(43)【公表日】2015年7月9日
(86)【国際出願番号】EP2013061054
(87)【国際公開番号】WO2013186051
(87)【国際公開日】20131219
【審査請求日】2015年2月10日
(31)【優先権主張番号】12171811.8
(32)【優先日】2012年6月13日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514160386
【氏名又は名称】デルファイ・インターナショナル・オペレーションズ・ルクセンブルク・エス・アー・エール・エル
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 靖子
(72)【発明者】
【氏名】グラハム,マーク
【審査官】 櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−239735(JP,A)
【文献】 特開2009−079485(JP,A)
【文献】 特開2006−161678(JP,A)
【文献】 特開2011−085103(JP,A)
【文献】 特開2006−274841(JP,A)
【文献】 特開2008−115824(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/088781(WO,A1)
【文献】 独国特許出願公開第10348929(DE,A1)
【文献】 国際公開第2004/070192(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 61/10
F02M 61/12
F02M 51/00
F02M 51/06
F02M 45/00
F02M 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃エンジンへ燃料を送達するのに使用するための燃料インジェクターであって、前記燃料インジェクターは、
ノズル本体と前記ノズル本体の中に配置されているバルブニードルとを有するノズルであって、前記バルブニードルは、閉位置と開位置との間の移動の範囲にわたって、前記ノズル本体に形成されたバルブニードルシートに対して移動可能であり、これにより、少なくとも1つのノズル出口部を通した燃料送達を制御する、ノズルを含み、
前記バルブニードルは、ピストンガイドの中に配置されているニードルスリーブと協働し、
前記バルブニードルは、前記ニードルスリーブに対して移動可能であり、前記ニードルスリーブは、前記ピストンガイドに対して移動可能であり、
前記燃料インジェクターは、前記ニードルスリーブに対する前記バルブニードルの位置を制御するための第1の制御チャンバーと、前記ピストンガイドに対する前記ニードルスリーブの位置を制御するための第2の制御チャンバーとを含み、第1のノズル制御バルブが、前記第1の制御チャンバーの中の圧力を制御するために設けられており、第2のノズル制御バルブが、前記第2の制御チャンバーの中の圧力を制御するために設けられており、
前記バルブニードルが、前記バルブニードルシートと反対の側の端面に、前記バルブニードルシートと反対の側で前記ニードルスリーブの内側表面に形成されているニードルスリーブシートに密封係合可能な第1の接触表面を有し、前記第1の接触表面と前記ニードルスリーブシートとが第2のバルブを形成し、
前記ニードルスリーブが、前記バルブニードルシートと反対の側の端面に、前記バルブニードルシートと反対の側で前記ピストンガイドの内側表面に形成されているピストンガイドシートに密封係合可能な第2の接触表面を有し、前記第2の接触表面と前記ピストンガイドシートとが第3のバルブを形成している、燃料インジェクター。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料インジェクターであって、前記ニードルスリーブが、後退位置と前進位置との間の移動の範囲を通して移動可能である、燃料インジェクター。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の燃料インジェクターであって、前記バルブニードルおよび前記ニードルスリーブが、一緒に、または、互いに独立して移動可能である、燃料インジェクター。
【請求項4】
請求項1、2、または3のいずれか一項に記載の燃料インジェクターであって、前記バルブニードルが、前記バルブニードルシートと協働するための第1のバルブを含む、燃料インジェクター。
【請求項5】
請求項に記載の燃料インジェクターであって、前記バルブニードルが、前記ニードルスリーブシートを通過する第1の流体経路を提供するための第1の開口部をさらに含む、燃料インジェクター。
【請求項6】
請求項に記載の燃料インジェクターであって、前記ピストンガイドが、前記ピストンガイドシートを通過する第2の流体経路を提供するための第2の開口部をさらに含む、燃料インジェクター。
【請求項7】
請求項1からまでのいずれか一項に記載の燃料インジェクターであって、前記ニードルスリーブを付勢するためのスリーブスプリングをさらに含む、燃料インジェクター。
【請求項8】
内燃エンジンへ燃料を送達するのに使用するための燃料インジェクターであって、前記燃料インジェクターは、
バルブニードルを有するノズルであって、前記バルブニードルは、閉位置と開位置との間の移動の範囲にわたって、バルブニードルシートに対して移動可能であり、少なくとも1つのノズル出口部を通した燃料送達を制御する、ノズルを含み、
前記バルブニードルは、ピストンガイドの中に配置されている制御部材と協働し、
前記バルブニードルは、前記制御部材に対して移動可能であり、前記制御部材は、前記ピストンガイドに対して移動可能であり、
前記燃料インジェクターは、前記制御部材に対する前記バルブニードルの位置を制御するために前記バルブニードルと前記制御部材との間に設けられた第1の制御チャンバーと、前記ピストンガイドに対する前記制御部材の位置を制御するために前記制御部材と前記ピストンガイドとの間に設けられた第2の制御チャンバーとを含み、
第1のノズル制御バルブが、前記第1の制御チャンバーの中の圧力を制御するために設けられており、第2のノズル制御バルブが、前記第2の制御チャンバーの中の圧力を制御するために設けられており、前記第1のノズル制御バルブは、前記第1の制御チャンバーを高圧燃料供給ラインまたは低圧燃料戻りラインのいずれかに流体連通するように選択的に動作可能な三方バルブであり、前記第2のノズル制御バルブは、前記第2の制御チャンバーを高圧燃料供給ラインまたは低圧燃料戻りラインのいずれかに流体連通するように選択的に動作可能な三方バルブである、燃料インジェクター。
【請求項9】
燃料インジェクターを動作させる方法であって、前記燃料インジェクターは、少なくとも1つのノズル出口部を通した燃料送達を制御するためにノズル本体に形成されたバルブニードルシートに対して移動可能なバルブニードルを有するノズルを含み、前記バルブニードルは、ピストンガイドの中に移動可能に取り付けられているニードルスリーブと協働し、
前記方法は、前記少なくとも1つのノズル出口部に対して前記バルブニードルを変位させるために、前記バルブニードルおよび/または前記ニードルスリーブを作動させるステップを含み、
前記方法は、前記バルブニードルシートと反対の側で前記ニードルスリーブの内側表面に形成されているニードルスリーブシートに対する前記バルブニードルの位置を制御するために、第1の制御チャンバーの中の動作圧力を制御するように第1のノズル制御バルブを動作させるステップと、前記バルブニードルシートと反対の側で前記ピストンガイドの内側表面に形成されているピストンガイドシートに対する前記ニードルスリーブの位置を制御するために、第2の制御チャンバーの中の動作圧力を制御するように第2のノズル制御バルブを動作させるステップとを含み、
前記第1のノズル制御バルブを動作させるステップは、前記ニードルスリーブシートと、前記バルブニードルにおける前記バルブニードルシートと反対の側の端面とで構成される第2のバルブを開閉することを含み、
前記第2のノズル制御バルブを動作させるステップは、前記ピストンガイドシートと、前記ニードルスリーブにおける前記バルブニードルシートと反対の側の端面とで構成される第3のバルブを開閉することを含む、燃料インジェクターを動作させる方法。
【請求項10】
請求項に記載の方法であって、前記バルブニードルを第1の方向に変位させるように前記バルブニードルおよび前記ニードルスリーブが同時にまたは逐次的に移動させられ、および/または、前記バルブニードルを第2の方向に変位させるように前記バルブニードルおよび前記ニードルスリーブが同時にまたは逐次的に移動させられる、方法。
【請求項11】
燃料インジェクターを動作させる方法であって、前記燃料インジェクターは、少なくとも1つのノズル出口部を通した燃料送達を制御するために移動可能なバルブニードルを有するノズルを含み、前記バルブニードルは、ピストンガイドの中に移動可能に取り付けられている制御部材と協働し、
前記方法は、前記少なくとも1つのノズル出口部に対して前記バルブニードルを変位させるために、前記バルブニードルおよび/または前記制御部材を作動させるステップを含み、
前記方法は、前記制御部材に対する前記バルブニードルの位置を制御するために、前記バルブニードルと前記制御部材との間に設けられた第1の制御チャンバーの中の動作圧力を制御するように第1のノズル制御バルブを動作させるステップと、前記ピストンガイドに対する前記制御部材の位置を制御するために、前記制御部材と前記ピストンガイドとの間に設けられた第2の制御チャンバーの中の動作圧力を制御するように第2のノズル制御バルブを動作させるステップとを含み、前記第1のノズル制御バルブ及び前記第2のノズル制御バルブの各々が三方バルブであり、前記第1のノズル制御バルブを動作させるステップは、前記第1のノズル制御バルブを介して前記第1の制御チャンバーを高圧燃料供給ラインまたは低圧燃料戻りラインのいずれかに流体連通するように選択的に動作することを含み、前記第2のノズル制御バルブを動作させるステップは、前記第2のノズル制御バルブを介して前記第2の制御チャンバーを高圧燃料供給ラインまたは低圧燃料戻りラインのいずれかに流体連通するように選択的に動作することを含む、燃料インジェクターを動作させる方法。
【請求項12】
請求項9、10、または11のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成されている燃料インジェクター制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃エンジンの燃焼室の中へ燃料を噴射するための燃料インジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料インジェクター1は、図1を参照して、背景技術によって説明されることとなる。インジェクター1は、ノズル本体部3と、インジェクターノズル5と、移動可能に装着されたインジェクターニードル7とを含む。インジェクターノズル5は、複数のノズル孔部9を含み、ノズル孔部9は、インジェクターニードル7によって選択的に開閉され、燃焼室(図示せず)の中へ燃料を噴射することが可能である。具体的には、インジェクターニードル7は、インジェクターノズル5に形成されている下側バルブシート(換言すれば、弁座)13と協働するための下側バルブ(換言すれば、弁)11を有している。インジェクターニードル7を下向きの方向に付勢し、下側バルブシート13に下側バルブ11を着座させ、それによって、ノズル孔部9を閉鎖するために、スプリング15が、スプリングチャンバー17の中に設けられている。
【0003】
インジェクターニードル7の上側端部は、ピストンガイド20に形成されている制御チャンバー19の中へ延在している。制御チャンバー19は、入口オリフィス21を介してスプリングチャンバー17に流体連通している。ドレン経路23(それは、狭窄したドレンオリフィス25を有している)は、制御チャンバー19から低圧燃料戻りライン(図示せず)への流体経路を形成している。インジェクターニードル7は、制御チャンバー19をシールするために、ノズル本体部3に形成されている上側バルブシート31と協働するための上側バルブ29を有している。3方向制御バルブ(図示せず)が、ドレン経路23を選択的に開放および閉鎖するために設けられており、制御チャンバー19の中の燃料圧力を制御する。3方向バルブは、電気機械的なソレノイド(図示せず)によって作動させられる。
【0004】
燃料供給ライン33は、燃料ポンプ(図示せず)からインジェクターノズル5およびスプリングチャンバー17へ高圧燃料を供給する。制御チャンバー19は、入口オリフィス21を介して燃料供給ライン33に選択的に流体連通している。インジェクターニードル7が持ち上げられると、上側バルブ29が上側バルブシート31に配置され、制御チャンバー19は、入口オリフィス21から隔離される。
【0005】
3方向制御バルブが閉鎖されているときには、制御チャンバー19と低圧燃料戻りラインとの間に流体連通は存在しない。したがって、インジェクターノズル5およびスプリングチャンバー17の中の燃料圧力は均一になり、スプリング15は、インジェクターニードル7を閉位置へ付勢し、閉位置では、図1に示されているように、下側バルブ11が下側バルブシート13に着座させられ、ノズル孔部9が閉鎖される。
【0006】
逆に、3方向制御バルブが開けられているときには、制御チャンバー19を低圧燃料戻りライン27に流体連通した状態に置く経路が形成され、制御チャンバー19の中の燃料圧力が低減される。したがって、インジェクターノズル5の中の燃料圧力は、制御チャンバー19の中の燃料圧力よりも高くなり、インジェクターニードル7に加えられる圧力が、スプリング15の付勢に打ち勝つ。インジェクターニードル7は、上向きに変位させられ、下側バルブシート13から下側バルブ11を離間させる(unseating)。それによって、ノズル孔部9が開放され、燃料が、インジェクターノズル5から燃焼室の中へ噴射される。インジェクターニードル7の上向きの変位によって、上側バルブ29が上側バルブシート31に着座させられ、それによって、ドレン経路23を閉鎖し、低圧戻りラインへの燃料のフローを阻止する。
【0007】
インジェクターニードル7は、2つの定常状態位置(完全開または完全閉)の間で移動することが可能である。インジェクターニードル7の開放速度および閉鎖速度は、インジェクターニードル7にかかる圧力のバランス、および、スプリング15によって加えられる付勢力によって制御される。開放速度および閉鎖速度は、構成要素の幾何学形状に部分的に関係する圧力のバランスによって決定される。インジェクターニードル7の最大リフトは、構成要素の幾何学形状によって決定される。入口オリフィス21および出口オリフィス25のサイズ決めは、インジェクターニードル7が移動することが可能な速度に関して主要な制御を提供する。3方向制御バルブが開放されると、燃料は逃げるが、入口オリフィス21を介して再供給される。入口オリフィス21が出口オリフィス25と比較して大きい場合には、インジェクターニードル7のリフトの減衰が増加される。逆に、入口オリフィス21が出口オリフィス25と比較して小さい場合には、インジェクターニードル7が持ち上がる速度が増加される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
燃料インジェクター1を用いて、図2に図示されているような噴射速度(換言すれば、噴射率)のパターン形状を有する燃料を噴射することが可能である。噴射率形状は、レール圧力によって影響を受ける可能性があるが、動作の間にそのプロファイル(例えば、初期噴射速度または閉鎖速度)を基本的に調節する能力は存在しない。
【0009】
「増強(intensifier)タイプ」のシステムは、コモンレールシステムの中の噴射速度の柔軟性を発生させるために使用され得るが、依然として、実現され得る噴射率形状にいくつかの制限を提示する。加えて、増強システムは、一般的に、増強ピストンが油圧駆動される方式に起因して、設計によって、固有の油圧非効率性を有している。
【0010】
本発明は、少なくとも好適な実施形態において、改善された燃料インジェクターを提供することを提示する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の態様は、燃料インジェクターと、燃料インジェクターを動作させる方法と、燃料インジェクター制御装置とに関する。
【0012】
さらなる態様では、本発明は、内燃エンジンへ燃料を送達するのに使用するための燃料インジェクターであって、燃料インジェクターは、
バルブニードルを有するノズルであって、バルブニードルは、閉位置と開位置との間の移動の範囲にわたって、バルブニードルシートに対して移動可能であり、少なくとも1つのノズル出口部を通した燃料送達を制御する、ノズルを含み、
バルブニードルは、ピストンガイドの中に配置されているニードルスリーブと協働し、
バルブニードルは、ニードルスリーブに対して移動可能であり、ニードルスリーブは、ピストンガイドに対して移動可能であり、
燃料インジェクターは、ニードルスリーブに対するバルブニードルの位置を制御するための第1の制御チャンバーと、ピストンガイドに対するニードルスリーブの位置を制御するための第2の制御チャンバーとを含み、第1のノズル制御バルブが、第1の制御チャンバーの中の圧力を制御するために設けられており、第2のノズル制御バルブが、第2の制御チャンバーの中の圧力を制御するために設けられている、燃料インジェクターに関する。
【0013】
ニードルスリーブおよびバルブニードルは、ピストンガイドの中で、互いに独立して移動させることが可能である。バルブニードルは、ニードルスリーブと共に、または、ニードルスリーブから独立して移動させられ、前記少なくとも1つのノズル出口部を通した燃料送達を制御することが可能である。バルブニードルは、ニードルスリーブに対して移動させることが可能であり、および/または、ニードルスリーブは、ピストンガイドに対して移動させることが可能である。バルブニードルおよびニードルスリーブを制御することによって、本発明による燃料インジェクターは、異なる燃料噴射率を提供するように構成することが可能である。燃料インジェクターは、燃焼室の中への燃料噴射のサイズを変更するように、例えば、大きい噴射および小さい噴射を提供するように制御することが可能である。
【0014】
ニードルスリーブの変位によりバルブニードルが前記閉位置と前記開位置との間の移動の範囲に沿って少なくとも途中まで移動させられるように、バルブニードルおよびニードルスリーブを構成することが可能である。ニードルスリーブは、後退位置と前進位置との間の移動の範囲にわたって移動可能とすることが可能である。バルブニードルは、ニードルスリーブの中に少なくとも部分的に配置することが可能である。
【0015】
バルブニードルは、前記閉位置から前記開位置へ移動するときに、第1の方向に移動することが可能である。逆に、バルブニードルは、前記開位置から前記閉位置へ移動するときに、第2の方向に移動することが可能である。使用時に、バルブニードルおよびニードルスリーブは、同時にまたは逐次的に変位させられ、バルブニードルを、前記第1の方向および/または前記第2の方向に変位させることが可能である。
【0016】
バルブニードルは、バルブニードルシートと協働するための第1のバルブを含むことが可能である。また、バルブニードルは、ニードルスリーブシートと協働するための第1の接触表面を含むことが可能である。ニードルスリーブシートは、バルブニードルのためのリフトストッパーを提供している。第1の接触表面は、随意的に、ニードルスリーブシートとのシールを形成することが可能である。それによって、第1の接触表面は、第2のバルブを提供することが可能である。第1のバルブは、バルブニードルの第1の端部に設けることが可能であり、第2のバルブは、バルブニードルの第2の端部に設けることが可能である。第2のバルブがニードルスリーブシートに着座させられるときには、ニードルスリーブシートを通過する燃料漏出を阻止することが可能である。この構成は、ニードルスリーブに対するバルブニードルの移動を制御するための3方向バルブと併用して使用することが可能である。第1の開口部は、ニードルスリーブシートを通過する第1の流体経路を提供するために、バルブニードルに設けることが可能である。この構成は、ニードルスリーブに対するバルブニードルの移動を制御するための2方向バルブと併用して使用することが可能である。
【0017】
ニードルスリーブは、ピストンガイドシートと協働するための第2の接触表面を有することが可能である。ピストンガイドシートは、ニードルスリーブのためのリフトストッパーを提供することが可能である。第2の接触表面は、随意的に、ピストンガイドシートとのシールを形成することが可能である。それによって、第2の接触表面は、第3のバルブを提供することが可能である。
【0018】
第3のバルブがピストンガイドシートに着座させられるときには、ピストンガイドシートを通過する燃料漏出を阻止することが可能である。この構成は、ピストンガイドに対するニードルスリーブの移動を制御するための3方向バルブを併用して使用することが可能である。第2の開口部は、ピストンガイドシートを通過する第2の流体経路を提供するために、ピストンガイドに設けることが可能である。この構成は、ピストンガイドに対するニードルスリーブの移動を制御するための2方向バルブと併用して使用することが可能である。
【0019】
ニードルスリーブが前進させられるときには、バルブニードルは、前記閉位置に向けて変位することが可能である。逆に、ニードルスリーブが後退させられるときには、バルブニードルは、前記開位置に向けて変位することが可能である。ニードルスリーブを付勢するために、スリーブスプリングを設けることが可能である。スリーブスプリングは、前進位置に向けてニードルスリーブを付勢するように配置することが可能である。
【0020】
バルブニードルおよび/またはスリーブガイドは、アクチュエーターによって変位させることが可能である。代替的に、バルブニードルおよび/またはスリーブガイドは、それぞれの制御チャンバーの中の燃料圧力によって制御することが可能である。第1の制御チャンバーは、ニードルスリーブに対するバルブニードルの位置を制御するために設けられている。第1のノズル制御バルブは、第1の制御チャンバーの中の圧力を制御するために設けられている。第2の制御チャンバーは、ピストンガイドに対するニードルスリーブの位置を制御するために設けられている。第2のノズル制御バルブは、第2の制御チャンバーの中の圧力を制御するために設けられている。
【0021】
第1のノズル制御バルブおよび/または第2のノズル制御バルブは、高圧燃料供給ラインに流体連通することが可能である。第1のノズル制御バルブおよび/または第2のノズル制御バルブは、低圧燃料戻りラインに流体連通することが可能である。第1のノズル制御バルブは、2方向バルブまたは3方向バルブのいずれかとすることが可能である。第2のノズル制御バルブは、2方向バルブまたは3方向バルブのいずれかとすることが可能である。
【0022】
バルブニードルのリフトは、ガイドスリーブのリフトと同じとすることが可能である。したがって、バルブニードルが移動する距離は、第1の制御バルブまたは第2の制御バルブのいずれかが作動させられるときに、同じになることとなる。例えば、この構成は、バルブニードルが、第1の制御バルブによって開放され、第2の制御バルブによって閉鎖される(または、その逆も同様)動作モードを提供することが可能である。代替的に、バルブニードルのリフトは、ガイドスリーブのリフトよりも大きくするか、または小さくすることが可能である。この構成は、異なるリフト状態、例えば、第1および第2の部分的なリフト状態、ならびに、第3の完全なリフト条件を提供することとなる。
【0023】
さらなる態様では、本発明は、少なくとも1つのノズル出口部を通した燃料送達を制御するために移動可能なバルブニードルを有するノズルを含む燃料インジェクターであって、バルブニードルは、ピストンガイドの中に移動可能に取り付けられているニードルスリーブと協働する、燃料インジェクターに関する。
【0024】
一層さらなる態様では、本発明は、燃料インジェクターを動作させる方法であって、燃料インジェクターは、少なくとも1つのノズル出口部を通した燃料送達を制御するために移動可能なバルブニードルを有するノズルを含み、バルブニードルは、ピストンガイドの中に移動可能に取り付けられているニードルスリーブと協働し、
方法は、前記少なくとも1つのノズル出口部に対してバルブニードルを変位させるために、バルブニードルおよび/またはニードルスリーブを移動させるステップを含み、
方法は、ニードルスリーブに対するバルブニードルの位置を制御するために、第1の制御チャンバーの中の動作圧力を制御するように第1のノズル制御バルブを動作させるステップと、ピストンガイドに対するニードルスリーブの位置を制御するために、第2の制御チャンバーの中の動作圧力を制御するように第2のノズル制御バルブを動作させるステップとを含む、燃料インジェクターを動作させる方法に関する。
【0025】
バルブニードルは、開位置へ変位させられるときには、第1の方向に移動することが可能であり、閉位置へ変位させられるときには、第2の方向に移動することが可能である。バルブニードルおよびニードルスリーブは、同時にまたは逐次的に移動させられ、バルブニードルを前記第1の方向に変位させることが可能である。バルブニードルおよびニードルスリーブは、同時にまたは逐次的に移動させられ、バルブニードルを前記第2の方向に変位させることが可能である。噴射率減衰は、(噴射事象の始まりおよび/または終わりにおいて)噴射率を変更するために増加または減少させることが可能である。噴射率減衰は、バルブニードルおよびニードルスリーブを同時にまたは逐次的に移動させることによって、制御することが可能である。バルブニードルは、シーケンスの中において、ニードルスリーブの前に移動させることが可能であり、または、バルブニードルは、シーケンスの中において、ニードルスリーブの後に移動させることが可能である。シーケンスは、噴射事象の始まりおよび終わりに関して、同じとするか、または、逆にすることが可能である。
【0026】
方法は、ニードルスリーブに対するバルブニードルの位置を制御するために、第1の制御チャンバーの中の動作圧力を制御するステップと、および/または、ピストンガイドに対するニードルスリーブの位置を制御するために、第2の制御チャンバーの中の動作圧力を制御するステップとを含むことが可能である。
【0027】
一層さらなる態様では、本発明は、本明細書で説明されている方法を実施するように構成されている燃料インジェクター制御装置に関する。燃料インジェクター制御装置は、方法を実施するための1つまたは複数のマイクロプロセッサーを含むことが可能である。
【0028】
一層さらなる態様では、本発明は、内燃エンジンへ燃料を送達するのに使用するための燃料インジェクターであって、燃料インジェクターは、
バルブニードルを有するノズルであって、バルブニードルは、閉位置と開位置との間の移動の範囲にわたって、バルブニードルシートに対して移動可能であり、少なくとも1つのノズル出口部を通した燃料送達を制御する、ノズルを含み、
バルブニードルは、ピストンガイドの中に配置されている制御部材と協働し、
バルブニードルは、制御部材に対して移動可能であり、制御部材は、ピストンガイドに対して移動可能であり、
燃料インジェクターは、制御部材に対するバルブニードルの位置を制御するための第1の制御チャンバーと、ピストンガイドに対する制御部材の位置を制御するための第2の制御チャンバーとを含み、
第1のノズル制御バルブが、第1の制御チャンバーの中の圧力を制御するために設けられており、第2のノズル制御バルブが、第2の制御チャンバーの中の圧力を制御するために設けられている、燃料インジェクターに関する。
【0029】
使用時に、バルブニードルは、制御部材に当接し、バルブニードルの移動を制限することが可能である。それによって、制御部材の位置は、バルブニードルのリフトを制御し、例えば、中間リフト位置を画定することが可能である。制御部材は、スリーブとすることが可能であり、スリーブの中にバルブニードルが部分的に配置される。代替的に、バルブニードルは、制御部材に当接するように配置することが可能であり、それによって、バルブニードルリフトを制御する。
【0030】
第1のノズル制御バルブおよび/または第2のノズル制御バルブは、それぞれの第1および第2の制御チャンバーを高圧燃料供給ラインに流体連通した状態に置くように、選択的に構成することが可能である。別個の組のノズル制御バルブを、第1および第2の制御チャンバーの中の圧力を低減させるために、例えば、それぞれの第1および第2の制御チャンバーを低圧ドレンに選択的に接続するために設けることが可能である。代替的に、第1のノズル制御バルブおよび/または第2のノズル制御バルブは、また、それぞれの第1および第2の制御チャンバーを低圧燃料戻りラインに流体連通した状態に置くように、選択的に構成することが可能である。第1のノズル制御バルブは、二方バルブまたは三方バルブとすることが可能である。第2のノズル制御バルブは、二方バルブまたは三方バルブとすることが可能である。
【0031】
一層さらなる態様では、本発明は、燃料インジェクターを動作させる方法であって、燃料インジェクターは、少なくとも1つのノズル出口部を通した燃料送達を制御するために移動可能なバルブニードルを有するノズルを含み、バルブニードルは、ピストンガイドの中に移動可能に取り付けられている制御部材と協働し、
方法は、前記少なくとも1つのノズル出口部に対してバルブニードルを変位させるために、バルブニードルおよび/または制御部材を作動させるステップを含み、
方法は、制御部材に対するバルブニードルの位置を制御するために、第1の制御チャンバーの中の動作圧力を制御するように第1のノズル制御バルブを動作させるステップと、ピストンガイドに対する制御部材の位置を制御するために、第2の制御チャンバーの中の動作圧力を制御するように第2のノズル制御バルブを動作させるステップとを含む、燃料インジェクターを動作させる方法に関する。
【0032】
さらなる態様では、本発明は、内燃エンジンへ燃料を送達するのに使用するための燃料インジェクターであって、燃料インジェクターは、
バルブニードルを有するノズルであって、バルブニードルは、閉位置と開位置との間の移動の範囲にわたって、バルブニードルシートに対して移動可能であり、少なくとも1つのノズル出口部を通した燃料送達を制御する、ノズルを含み、
バルブニードルは、ピストンガイドの中に配置されているニードルスリーブと協働し、
バルブニードルは、ニードルスリーブに対して移動可能であり、ニードルスリーブは、ピストンガイドに対して移動可能である、燃料インジェクターに関する。
【0033】
一層さらなる態様では、本発明は、燃料インジェクターを動作させる方法であって、燃料インジェクターは、少なくとも1つのノズル出口部を通した燃料送達を制御するために移動可能なバルブニードルを有するノズルを含み、バルブニードルは、ピストンガイドの中に移動可能に取り付けられているニードルスリーブと協働し、
方法は、前記少なくとも1つのノズル出口部に対してバルブニードルを変位させるために、バルブニードルおよび/またはニードルスリーブを移動させるステップを含む、燃料インジェクターを動作させる方法に関する。
【0034】
方向の用語(上側、下側、上部、底部、上向き、および、下向き)は、添付の図の中で図示されている燃料インジェクターの配向を参照して、本明細書で使用されている。これらの用語は、本発明による燃料インジェクターの動作的な構成または配向を限定していない。
【0035】
ここで、本発明の実施形態が、単なる例として、添付の図を参照して、説明されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】ピストンガイドの中に移動可能に取り付けられたバルブニードルを有する燃料インジェクターを示す図である。
図2図1の燃料インジェクターの噴射率を示す図である。
図3】本発明による燃料インジェクターの第1の実施形態を示す図である。
図4】本発明の第1の実施形態による燃料インジェクターのための制御バルブの概略図である。
図5図5aは本発明の第1の実施形態による燃料インジェクターによって提供される例示的な噴射率を示す図である。図5bは本発明の第1の実施形態による燃料インジェクターによって提供される例示的な噴射率を示す図である。
図6】本発明の第1の実施形態による燃料インジェクターの修正された配置を示す図である。
図7】本発明による燃料インジェクターとともに使用するための可変オリフィス燃料インジェクターノズルを示す図である。
図8a】本発明による燃料インジェクターの第2の実施形態を示す図である。
図8b】本発明による燃料インジェクターの第3の実施形態を示す図である。
図8c】本発明による燃料インジェクターの第4の実施形態を示す図である。
図9】本発明による燃料インジェクターの第5の実施形態を示す図である。
図10図10Aは本発明の第2の実施形態による燃料インジェクターの動作モードを図示する図である。図10Bは本発明の第2の実施形態による燃料インジェクターの動作モードを図示する図である。図10Cは本発明の第2の実施形態による燃料インジェクターの動作モードを図示する図である。
図11A図11Aは本発明の第1の実施形態による燃料インジェクターに関する噴射率チャートを示す図である。
図11B図11Bは本発明の第5の実施形態による燃料インジェクターに関する噴射率チャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、内燃エンジンの燃焼室(図示せず)へ高圧ディーゼル燃料を供給するための燃料インジェクター101に関する。本発明の実施形態は、図3から図8を参照して説明されることとなる。
【0038】
燃料インジェクター101は、ノズル本体部103と、インジェクターノズル105と、移動可能に取り付けられたインジェクターニードル107とを含む。インジェクターノズル105は、複数のノズル孔部109を含み、ノズル孔部9は、インジェクターニードル107によって選択的に開閉され、燃焼室(図示せず)の中へ燃料を噴射することが可能である。インジェクターニードル107の上側端部は、ガイドスリーブ111の中に配置されており、ガイドスリーブ111は、ノズル本体部103の中に移動可能に取り付けられている。
【0039】
インジェクターニードル107は、ガイドスリーブ111の中に形成されている第1のガイドボア113の中で軸線方向に移動可能である。第1のガイドボア113は、インジェクターニードル107のガイド部分上の緊密なクリアランスである。下側ニードルバルブ115が、インジェクターノズル5に形成されている下側バルブシート117と協働するために、インジェクターニードル107の底部端部に形成されている。インジェクターニードル107を下向きの方向に付勢し、下側ニードルバルブ115を下側バルブシート117に向けて押圧するために、第1のスプリング119が、第1のスプリングチャンバー121の中に設けられている。上側ニードルバルブ123が、ガイドスリーブ111の内側表面に形成されている上側バルブシート125と協働するために、インジェクターニードル107の上部端部に形成されている。第1のスプリング119の下側端部は、第1のスプリングシート127上に支持されており、第1のスプリング119の上部端部は、ガイドスリーブ111の下側端部表面129に係合している。
【0040】
ガイドスリーブ111は、ピストンガイド133の中に形成されている第2のガイドボア131の中で、軸線方向に移動可能である。第2のガイドボア131は、ガイドスリーブ111のガイド部分上の緊密なクリアランスである。スリーブバルブ135が、ピストンガイド133に形成されているガイドシート137と協働するために、ガイドスリーブ111の上部に形成されている。ガイドスリーブ111を下向きの方向に付勢する(それによって、下側ニードルバルブ115を下側バルブシート117に向けて押圧する)ために、第2のスプリング139が、第2のスプリングチャンバー141の中に設けられている。第2のスプリング139の下側端部は、第2のスプリングシート142によって支持されており、第2のスプリング139の上部端部は、ピストンガイド133の下側端部表面143に係合している。
【0041】
第1および第2のスプリングチャンバー121、141は、ノズル本体部103の中のそれぞれの第1および第2の同軸ボア145、147によって形成されている。第1のボア145は、第2のボア147よりも小さい直径を有しており、環状部149が、第1および第2のボア145、147の間に形成されている。環状部149は、上側表面150aおよび下側表面150bを有している。環状部149の上側表面150aは、ガイドスリーブ111のためのリフトストッパー151を形成している。流体経路153が、環状部149の中に設けられ、第1のスプリングチャンバー121と第2のスプリングチャンバー141との間の流体連通を維持している。
【0042】
高圧燃料供給ライン155は、燃料ポンプ(P)から、インジェクターノズル105、第1のスプリングチャンバー121、および第2のスプリングチャンバー141へ、高圧燃料を供給し、それらは、互いに流体連通している。また、燃料供給ライン155は、第1および第2の制御バルブ157、159に流体連通しており、第1および第2の制御バルブ157、159は、図4に概略的に示されているように、燃料インジェクター101の動作を制御するように構成されている。本実施形態では、第1および第2の制御バルブ157、159は、別々の電気機械的なソレノイドによって独立して作動させられ得る三方バルブである。ソレノイドのうちの一方または両方を通電することによって、インジェクターニードル107が下側バルブシート117から持ち上がり、燃焼室の中へ燃料を噴射するように、第1および第2の制御バルブ157、159は構成されている。しかし、ソレノイドのうちの1つまたは両方を非通電にすることによって、インジェクターニードル107が下側バルブシート117から持ち上がるように、第1および第2の制御バルブ157、159が構成され得るということが認識されることとなる。
【0043】
第1の制御チャンバー161は、ガイドスリーブ111に対するインジェクターニードル107の位置を制御するために、インジェクターニードル107とガイドスリーブ111との間に画定されている。第1の入口絞り部164を有する第1の入口オリフィス163が、ガイドスリーブ111の中に設けられ、燃料供給ライン155から(第2のスプリングチャンバー141を介して)第1の制御チャンバー161への流体経路を提供している。上側ニードルバルブ123は、第1の制御チャンバー161への流体経路を開閉する。上側ニードルバルブ123が、上側バルブシート125に着座させられているときには、流体経路は閉鎖されており、上側バルブシート125を通過する流体連通は遮断されている。逆に、上側ニードルバルブ123が着座していないときには、流体経路は開放されており、燃料供給ライン155と第1の制御チャンバー161との間の流体連通が許容されている。
【0044】
第1の制御ライン165(それは、第1の狭窄したオリフィス167を有している)は、第1の制御チャンバー161から第1の制御バルブ157への軸線方向の流体経路を形成している。第1の制御バルブ157は、第1の制御チャンバー161を、燃料供給ライン155または低圧燃料戻りライン169に流体連通した状態に選択的に置くように構成されている。図4では、第1の制御バルブ157は、第1の制御チャンバー161が燃料供給ライン155に流体連通しており、したがって、完全に加圧されている状態で、図示されている。第1の制御チャンバー161を燃料戻りライン169に流体連通した状態に置くために第1の制御バルブ157を作動させることによって、第1の制御チャンバー161は減圧される。
【0045】
第2の制御チャンバー171は、ピストンガイド133に対するガイドスリーブ111の位置を制御するために、ガイドスリーブ111とピストンガイド133との間に画定されている。第2の入口絞り部174を有する第2の入口オリフィス173が、ピストンガイド133の中に設けられ、燃料供給ライン155から(第2のスプリングチャンバー141を介して)第2の制御チャンバー171へ流体経路を提供している。スリーブバルブ135は、第2の制御チャンバー171への流体経路を開閉する。スリーブバルブ135がガイドシート137に着座させられているときには、流体経路は閉鎖されており、燃料供給ライン155と第2の制御チャンバー171との間の流体連通は遮断されている。逆に、スリーブバルブ135が着座していないときには、流体経路は開放されており、燃料供給ライン155と第2の制御チャンバー171との間の流体連通が許容されている。
【0046】
第2の制御ライン175(それは、第2の狭窄したオリフィス177を有している)は、第2の制御チャンバー171から第2の制御バルブ159への角度的にオフセットされた流体経路を形成している。第2の制御バルブ159は、第2の制御チャンバー171を、燃料供給ライン155または低圧燃料戻りライン169に流体連通した状態に選択的に置くように構成されている。第2の制御チャンバー171が燃料供給ライン155に流体連通しており、したがって、完全に加圧されている状態で、第2の制御バルブ159は、図4に図示されている。第2の制御チャンバー171を燃料戻りライン169に流体連通した状態に置くために第2の制御バルブ159を作動させることによって、第2の制御チャンバー171は減圧される。
【0047】
端部ガイド179が、ガイドスリーブ111の上部に設けられており、ガイドピストン133の中に形成されている端部ガイドボア181の中に配置されている。端部ガイド179は、端部ガイドボア181の中の緊密なクリアランスであり、端部ガイド179を通過する漏出を低減させる。第1の制御ライン165は、端部ガイド179に沿って軸線方向に延在している。
【0048】
本発明による燃料インジェクター101は、インジェクターニードル107およびガイドスリーブ111が互いに独立して移動することを可能にする。制御バルブ157、159は、インジェクターニードル107およびガイドスリーブ111を同時にまたは逐次的に変位させるように動作することが可能である。ここで、インジェクターニードル107およびガイドスリーブ111の制御が説明されることとなる。
【0049】
第1の制御バルブ157が、第1の制御チャンバー161を燃料供給ライン155に流体連通した状態に置くように作動させられると(そして、燃料戻りライン169との流体連通が遮断されると)、インジェクターノズル105および第1の制御チャンバー161の燃料圧力が均一になり、第1のスプリング119は、インジェクターニードル107を下向きに付勢し、下側ニードルバルブ115が下側バルブシート117に向けて変位させられるようになっている。
【0050】
第1の制御バルブ157が、第1の制御チャンバー161を燃料戻りライン169に流体連通した状態に置くように作動させられると(そして、燃料供給ライン155との流体連通が遮断されると)、第1の制御チャンバー161の中の燃料圧力は、インジェクターノズル105の中の燃料圧力よりも低く降下する。第1のスプリング119の付勢に打ち勝つ圧力が、インジェクターニードル107に加えられ、インジェクターニードル107が上向きに変位させられ、下側バルブシート117から下側ニードルバルブ115を持ち上げる。上側ニードルバルブ123は、上側バルブシート125に着座し、それによって、上側バルブシート125を通過する流体連通を防止する。
【0051】
第2の制御バルブ159が、第2の制御チャンバー171を燃料供給ライン155に流体連通した状態に置くように作動させられると(そして、燃料戻りライン169との流体連通が遮断されると)、第1の制御チャンバー161および第2の制御チャンバー171の中の燃料圧力が均一になり、第2のスプリング139は、リフトストッパー151に対してガイドスリーブ111を下向きに付勢する。インジェクターニードル107は、ガイドスリーブ111とともに下向きに変位させられる。
【0052】
第2の制御バルブ159が、第2の制御チャンバー171を燃料戻りライン169に流体連通した状態に置くように作動させられると(そして、燃料供給ライン155との流体連通が遮断されると)、第2の制御チャンバー171の中の燃料圧力は、第1の制御チャンバー161の中の燃料圧力よりも低く降下する。第2のスプリング139の付勢に打ち勝つ圧力が、ガイドスリーブ111に加えられ、ガイドスリーブ111が上向きに変位させられる。スリーブバルブ135は、ガイドシート137に着座し、それによって、ガイドシート137を通過する流体連通を防止する。インジェクターニードル107は、ガイドスリーブ111とともに移動し、下側ニードルバルブ115が、下側バルブシート117から持ち上がる。
【0053】
使用時に、第1および第2の制御バルブ157、159は、以下の動作モードを提供するように動作することが可能である。
【0054】
(i)第1の制御バルブ157が作動させられ、第1の制御チャンバー161を燃料戻りライン169に流体連通した状態に置き、インジェクターニードル107をガイドスリーブ111に対して変位させ、第2の制御バルブ159の作動がそれに続き、第2の制御チャンバー171を燃料戻りライン169に流体連通した状態に置き、ガイドスリーブ111をピストンガイド133に対して変位させるか、
(ii)第2の制御バルブ159が作動させられ、第2の制御チャンバー171を燃料戻りライン169に流体連通した状態に置き、ガイドスリーブ111をピストンガイド133に対して変位させ、第1の制御バルブ157の作動がそれに続き、第1の制御チャンバー161を燃料戻りライン169に流体連通した状態に置き、インジェクターニードル107をガイドスリーブ111に対して変位させるか、
(iii)第1および第2の制御バルブ157、159が同時に作動させられ、第1および第2の制御チャンバー161、171の両方を燃料戻りライン169に流体連通した状態に置き、インジェクターニードル107およびガイドスリーブ111を一緒に変位させるか、または、
(iv)第1および第2の制御バルブ157、159のうちの1つだけが作動させられ、第1の制御チャンバー161または第2の制御チャンバー171のいずれかを燃料戻りライン169に流体連通した状態に置く(したがって、インジェクターニードル107の最大リフトが噴射事象の間に得られないようになっている)。
【0055】
上記の動作シーケンスの任意の組合せを実施することが可能である。そのうえ、動作シーケンスは、インジェクターノズル107を前進または後退させるために実施することが可能である。したがって、開放噴射率、定常状態噴射率、および閉鎖噴射率のうちの1つまたは複数を、燃料インジェクター101によって制御することが可能である。
【0056】
例として、本発明による燃料インジェクター101の制御された動作によって実施される2つの異なる噴射率形状が、図5aおよび図5bに図示されている。図5aは、「逆ブート噴射」を示しており、そこでは、燃料が、メイン噴射の終わりに、非常に低い率で噴射される(ここで、インジェクターニードル107は、小さい定常状態リフトになる)。典型的に、メイン噴射の終わった後の小さい噴射は、通常、「密接連結した(close coupled)ポスト噴射」で行われることとなるが、バルブ遅延に起因して、小さい分離を得ることは非常に困難である。ポスト噴射がメイン噴射に近づくときに通常起こることとなるものは、噴射が1つにブレンドし始めるので、それが、非常に不安定になることとなるということである。
【0057】
図5bは、どのように、本発明が、インジェクターニードル107の減衰率の変更を可能にするかということを図示している。第1および第2の制御バルブ157、159は、同時にまたは独立して作動させることが可能であり、それは、(ノズル本体部103に対する)インジェクターニードル107の速度を変更することが可能であることを意味し、したがって、噴射率減衰を増減させることが可能である。噴射率は、(図5bは、単に、メイン噴射の前部において異なる噴射率を示しているが、)噴射事象の始まりまたは終わりの両方において変化することが可能である。減衰率は、オリフィス幾何学形状を変化させることなく変更することが可能であり、したがって、噴射しながら、および、エンジン稼働の間に、変化することが可能である。
【0058】
第1および第2の制御バルブ157、159の動作モードは、インジェクターニードル107に関して、3つの異なる定常状態のリフト状態を提供する。すなわち、
リフト状態1 − 第1の制御バルブ157だけが開放されている。
【0059】
リフト状態2 − 第2の制御バルブ159だけが開放されている。
【0060】
リフト状態3 − 第1および第2の制御バルブ157、159の両方が開放されている。
【0061】
また、この制御柔軟性は、(再度、多数の選択肢/置換とともに、)噴射の閉鎖部分に適用することも可能である。この結果、多数の異なる噴射率プロファイルを作り出すことが可能である。異なる動作モードは、エンジンが作動している間に、選択することが可能である。また、噴射率形状は、噴射ごとに変化させることが可能であり、パイロット噴射、メイン噴射、およびポスト噴射の間で異なる噴射率形状を選択することが含まれる。
【0062】
本実施形態による燃料インジェクター101は、第1のスプリング119の取り付け配置を変化させるように修正することが可能である。図6に示されているように、第1のスプリング119の上部端部は、環状部149の下側表面150bと係合するように構成することが可能である。この構成により、燃料インジェクター101に関して異なる動作特性を提供することが可能である。注目すべきことには、第1のスプリング119によって提供される付勢力は、スリーブガイド111の位置に応じて変化することとなる。
【0063】
ノズル本体部の中のニードル先端部およびニードルシートの設計は、既存の設計(Hemisac、Conical SacおよびVCO−Valve Covers Orifice)の中で使用されるものと同様とすることが可能であり、または、出願人のVON(Variable Orifice Nozzle)設計などのような、より複雑な配置を適用することが可能である。VON設計は、ニードルリフトの部分の間に、2つの異なるセットのノズル孔部を開放する(uncover)ことを可能にする。例として、VON設計を組み込んでいる一対の燃料インジェクター101が、図7に図示されている。第1および第2のセットの軸線方向に変位したノズル孔部109a、109bが設けられており、それは、インジェクターニードル107のリフト位置に応じて逐次的に開放され得る。左側のインジェクターノズル105に示されているように、インジェクターニードル107が第1の(部分的な)リフト位置にあるときに、第1のセットのノズル孔部109aだけが開放されている。右側のインジェクターノズル105に示されているように、インジェクターニードル107が第2の(完全な)リフト位置にあるときに、第1および第2のセットのノズル孔部109a、109bの両方が開放されている。VON設計は、出願人の欧州特許EP1626173B1および米国特許US7,599,488B2においてより詳細に説明されており、これらの文献の内容は、その全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれている。
【0064】
燃料インジェクター101を制御するために使用される第1および第2の制御バルブ157、159のタイプおよび設計は柔軟性があり、様々なバルブの組合せを利用することが可能である。燃料インジェクター101は、第1の制御バルブ157および/または第2の制御バルブ159に関して、2方向バルブを利用するように修正することが可能である。回路の中で2方向バルブを使用するときには、充填オリフィスの配置を修正する必要がある。というのは、第1の制御チャンバー161および/または第2の制御チャンバー171は、2方向バルブ(それは、燃料供給ライン155に接続されていない)から充填されることとはならないからである。むしろ、関連の制御チャンバー161、171の充填オリフィスは、燃料供給ライン155からの燃料を常に給送されることとなる。(上記に説明されているように)2つの3方向バルブを使用することは、常時充填の必要性を回避する。
【0065】
ここで、1つまたは複数の2方向制御バルブ161、171と併用して使用するための燃料インジェクター101の実施形態が、図8a〜図8cを参照して説明されることとなる。これらの実施形態は、第1の実施形態の修正版であり、同様の参照番号は、同様の構成要素に関して使用されることとなる。第1および第2の制御バルブ157、159は、第1および第2の制御チャンバー161、171が完全に加圧されている状態で、図8a〜図8cに図示されている。
【0066】
図8aに示されているように、第2の実施形態では、第1の制御バルブ157は、2方向バルブであり、第2の制御バルブ159は、3方向バルブである。第1の制御バルブ157は、第1の制御チャンバー161から燃料戻りライン169への流体経路を選択的に開閉するように構成されている。第2の制御バルブ159は、本明細書で説明されている第1の実施形態から変更されていない。第1の制御バルブ157が開放されているときには、第1の制御チャンバー161は燃料戻りライン169に流体連通しており、第1の制御チャンバー161は減圧されている。逆に、第1の制御バルブ157が閉鎖されているときには、流体連通は遮断されている。インジェクターニードル107は、上側バルブシート125を通過する流体連通を確立するために、ニードルインジェクターボア183を提供するように修正されており、第1の制御バルブ157が閉鎖された後に第1の制御チャンバー161を再加圧することを可能にし、第1の制御チャンバー161と燃料戻りライン169との間の流体連通は遮断される。
【0067】
図8bに示されているように、第3の実施形態では、第1の制御バルブ157は、3方向バルブであり、第2の制御バルブ159は、2方向バルブである。第1の制御バルブ157は、本明細書で説明されている第1の実施形態から変更されていない。第2の制御バルブ159は、第2の制御チャンバー171から燃料戻りライン169への流体経路を選択的に開閉するように構成されている。第2の制御バルブ159が開放されているときには、第2の制御チャンバー171は、燃料戻りライン169に流体連通しており、第2の制御チャンバー171は減圧されている。逆に、第2の制御バルブ159が閉鎖されているときには、流体連通は遮断されている。ピストンガイド133は、ガイドシート137を通過する流体連通を確立するために、ピストンガイドボア185を提供するように修正されており、第2の制御バルブ159が閉鎖された後に第2の制御チャンバー171を再加圧することを可能にし、第2の制御チャンバー171と燃料戻りライン169との間の流体連通は遮断される。
【0068】
図8cに示されているように、第4の実施形態では、第1の制御バルブ157は、2方向バルブであり、第2の制御バルブ159は、2方向バルブである。第1の制御バルブ157は、第1の制御チャンバー161から燃料戻りライン169への流体経路を選択的に開閉するように構成されている。第2の制御バルブ159は、第2の制御チャンバー171から燃料戻りライン169への流体経路を選択的に開閉するように構成されている。インジェクターニードル107は、上側バルブシート125を通過する流体連通を確立するために、ニードルインジェクターボア183を提供するように修正されており、第1の制御バルブ157が閉鎖された後に第1の制御チャンバー161を再加圧することを可能にし、第1の制御チャンバー161と燃料戻りライン169との間の流体連通は遮断される。同様に、ピストンガイド133は、ガイドシート137を通過する流体連通を確立するために、ピストンガイドボア185を提供するように修正されており、第2の制御バルブ159が閉鎖された後に第2の制御チャンバー171を再加圧することを可能にし、第2の制御チャンバー171と燃料戻りライン169との間の流体連通は遮断される。
【0069】
燃料インジェクター101の第2、第3、および第4の実施形態の動作は、本明細書で説明されている第1の実施形態から変更されていない。
【0070】
ここで、本発明の第5の実施形態による燃料インジェクター201が、図9および図10を参照して説明されることとなる。同様の参照番号は、同様の構成要素に関して使用されているが、明確性を支援するために100ずつ増やされている。
【0071】
燃料インジェクター201は、ノズル本体部203と、インジェクターノズル205と、移動可能に取り付けられたインジェクターニードル207とを含む。インジェクターノズル205は、複数のノズル孔部209を含み、ノズル孔部209は、インジェクターニードル207によって選択的に開閉され、燃焼室(図示せず)の中へ燃料を噴射することが可能である。インジェクターニードル207の上側端部は、制御部材211と選択的に協働し、制御部材211は、ノズル本体部203の中に移動可能に取り付けられている。
【0072】
インジェクターニードル207は、ノズルガイド233に形成されている第1のガイドボア213の中で軸線方向に移動可能である。第1のガイドボア213は、インジェクターニードル207のガイド部分上の緊密なクリアランスである。下側ニードルバルブ215が、インジェクターノズル205に形成されている下側バルブシート217と協働するために、インジェクターニードル207の底部端部に形成されている。インジェクターニードル207を下向きの方向に付勢し、下側ニードルバルブ215を下側バルブシート217に向けて押圧するために、第1のスプリング219が、第1のスプリングチャンバー221の中に設けられている。制御部材211の下側表面によって画定されている上側バルブシート225と協働するために、上側ニードルシート223が、インジェクターニードル207の上部端部に形成されている。第1のスプリング219の下側端部は、第1のスプリングシート227上に支持されており、第1のスプリング219の上部端部は、ノズルガイド233の下側端部表面229に係合している。
【0073】
制御部材211は、ノズル本体部203の中に形成されている第2のガイドボア231の中で、軸線方向に移動可能である。第2のガイドボア231は、制御部材211のガイド部分上の緊密なクリアランスである。制御部材211は、ノズル本体部203に形成されているガイドシート237と協働するための制御部材バルブ235を含む。
【0074】
高圧燃料供給ライン255は、燃料ポンプ(P)から、インジェクターノズル205へ、および、第1のスプリングチャンバー221の中へ、高圧燃料を供給する。また、燃料供給ライン255は、第1および第2の制御バルブ257、259に選択的に流体連通しており、第1および第2の制御バルブ257、259は、図10A図10Cに概略的に示されているように、燃料インジェクター201の動作を制御するように構成されている。本実施形態では、第1および第2の制御バルブ257、259は、別々の電気機械的なソレノイドによって独立して作動させられ得る三方バルブである。ソレノイドのうちの一方または両方を通電することによって、インジェクターニードル207が下側バルブシート217から持ち上がり、燃焼室の中へ燃料が噴射されるように、第1および第2の制御バルブ257、259は構成されている。しかし、ソレノイドのうちの1つまたは両方を非通電にすることによって、インジェクターニードル207が下側バルブシート217から持ち上がるように、第1および第2の制御バルブ257、259が構成され得るということが認識されることとなる。
【0075】
第1の制御チャンバー261は、インジェクターニードル207と制御部材211との間において、第1のガイドボア213の中に形成されている。第1の制御チャンバー261は、制御部材211に対するインジェクターニードル207の位置を制御するように構成されている。第1の入口絞り部264を有する第1の入口オリフィス263が、ノズル本体部203に設けられ、燃料供給ライン255から第1の制御チャンバー261への流体経路を提供している。第1の制御バルブ257は、高圧燃料供給ライン255から第1の制御チャンバー261へ燃料を供給するように、または、第1の制御チャンバー261から燃料戻りライン269へ燃料を排出するように、選択的に動作可能である。
【0076】
第2の制御チャンバー271は、制御部材211の上方において、ピストンガイド233の中に形成されている。第2の制御チャンバー271は、制御部材211の位置を制御するように構成されている。第2の入口絞り部274を有する第2の入口オリフィス273は、ピストンガイド233に設けられており、燃料供給ライン255から第2の制御チャンバー271への流体経路を提供している。第2の制御バルブ259は、高圧燃料供給ライン255から第2の制御チャンバー271へ燃料を供給するように、または、第2の制御チャンバー271から燃料戻りライン269へ燃料を排出するように、選択的に動作可能である。
【0077】
本発明の第5の実施形態による燃料インジェクター201は、インジェクターニードル207および制御部材211が互いに独立して移動することを可能にする。第1および第2の制御バルブ257、259は、インジェクターニードル207および制御部材211が同時にまたは逐次的に変位させられるように動作することが可能である。ここで、インジェクターニードル207および制御部材211の制御が、図10A図10Cを参照して説明されることとなる。第1および第2の制御チャンバー261、271の中の高圧燃料が、これらの概略図の中において、濃い黒色によって図示されている。
【0078】
図10Aを参照すると、第1および第2の制御バルブ257、259が、第1および第2の制御チャンバー261、271を燃料供給ライン255に流体連通した状態に置くように作動させられると、第1および第2の制御チャンバー261、271の中の燃料圧力が、インジェクターノズル205の中の燃料圧力と均一になる。第1のスプリング219は、インジェクターニードル207を下向きに付勢し、下側ニードルバルブ215が、下側バルブシート217に向けて変位させられるようになっている。
【0079】
図10Bを参照すると、第1の制御バルブ257が、第1の制御チャンバー261を燃料戻りライン269に流体連通した状態に置くように動作させられると、第1の制御チャンバー261の中の燃料圧力は、インジェクターノズル205の中の燃料圧力よりも低く降下する。第1のスプリング219の付勢に打ち勝つ圧力が、インジェクターニードル207に加えられ、インジェクターニードル207が上向きに変位させられ、下側バルブシート217から下側ニードルバルブ215を持ち上げる。インジェクターニードル207は、上側ニードルバルブ223が制御部材211に当接するまで持ち上がる。それによって、インジェクターニードル207は、制御部材211によって決定される第1のリフト位置へ変位させられる。
【0080】
本実施形態では、第1および第2の制御バルブ257、259は、両方とも3方向バルブであり、それらは、それぞれの第1および第2の制御チャンバー261、271を、燃料供給ライン255または燃料戻りライン269のいずれかに連通した状態に置くように、選択的に動作することが可能である。燃料インジェクター201は、それぞれの第1および第2の制御チャンバー261、271を燃料戻りライン269に連通した状態に置くように選択的に動作可能な別々のバルブを含むことが可能である。
【0081】
図10Cを参照すると、第2の制御バルブ259が動作され、第2の制御チャンバー271を燃料戻りライン269に流体連通した状態に置くときには、第2の制御チャンバー271の中の燃料圧力が、インジェクターノズル205の中の燃料圧力よりも低く降下し、インジェクターニードル207および制御部材211が上向きに一緒に(すなわち、互いに同時に)変位させられる。それによって、インジェクターニードル207は、第2のリフト位置へ変位させられる。
【0082】
使用時に、第1および第2の制御バルブ257、259は、以下の動作モードを提供するように動作することが可能である。
【0083】
(i)第1の制御チャンバー261を燃料戻りライン269に流体連通した状態に置き、インジェクターニードル207を制御部材211に対して中間リフト位置へ変位させるように、第1の制御バルブ257が作動させられ、次いで、第2の制御チャンバー271を燃料戻りライン269に流体連通した状態に置き、制御部材211およびインジェクターニードル207を変位させ、それによって、インジェクターニードル207を完全なリフト位置へ変位させるように、第2の制御バルブ259が作動させられるか、
(ii)第2の制御チャンバー271を燃料戻りライン269に流体連通した状態に置き、制御部材211をピストンガイド233に対して中間リフト位置へ変位させるように、第2の制御バルブ259が作動させられ、次いで、第1の制御チャンバー261を燃料戻りライン269に流体連通した状態に置き、インジェクターニードル207を、インジェクターニードル207が制御部材211に当接する完全なリフト位置へ変位させるように、第1の制御バルブ257が作動させられるか、
(iii)第1および第2の制御チャンバー261を燃料戻りライン269に流体連通した状態に置き、インジェクターニードル207および制御部材211を完全なリフト位置へ一緒に変位させるように、第1および第2の制御バルブ257、259が同時に作動させられるか、または、
(iv)第1の制御バルブ257だけが作動させられ、これにより、第1の制御チャンバー261を燃料戻りライン269に流体連通した状態に置き、インジェクターニードルを中間リフト位置へ変位させる(したがって、インジェクターニードル207の最大リフトが噴射事象の間に得られないようになっている)。
【0084】
上記の動作シーケンスの任意の組合せを実施することが可能である。そのうえ、動作シーケンスは、インジェクターノズル207を前進または後退させるために実施することが可能である。したがって、開放時噴射率、定常状態噴射率、および閉鎖時噴射率のうちの1つまたは複数を、燃料インジェクター201によって制御することが可能である。
【0085】
燃料インジェクター201は、3方向バルブである第1および第2の制御バルブ257、259を参照して説明されてきた。代替的な構成では、第1および第2の制御バルブ257、259のうちの一方または両方を2方向バルブとすることが可能である。例えば、第1の入口ボアを、一定の圧力燃料給送を第1の制御チャンバー261へ供給するために設けることが可能であり、および/または、第2の入口ボアを、一定の圧力燃料給送を第2の制御チャンバー271へ供給するために設けることが可能である。この構成では、第1および/または第2の制御チャンバー261、271からの出口オリフィスは、それぞれの入口オリフィス263、273よりも大きくするべきである。第1の制御バルブ257および/または第2の制御バルブ259を2方向バルブとし、それぞれの第1および第2の制御チャンバー261、271の中の圧力を制御することが可能である。
【0086】
本発明の第1の実施形態による燃料インジェクター101の典型的な噴射チャートが図11Aに示されており、本発明の第5の実施形態による燃料インジェクター201に関する典型的な噴射チャートが、図11Bに示されている。
【0087】
図11Aを参照すると、インジェクターニードル107は、3つのリフト位置(第1の中間リフト位置、第2の中間リフト位置、および完全なリフト位置)へ変位させることが可能である。インジェクターニードル107およびガイドスリーブ111は、異なるリフト範囲を画定するように構成することが可能であり、それによって、インジェクターニードル107が第1または第2の中間リフト位置へ持ち上げられることを可能にする。インジェクターニードル107は、インジェクターニードル107およびガイドスリーブ111を持ち上げるように第1および第2の制御バルブ157、159が動作させられるシーケンスを制御することによって、第1の中間リフト位置または第2の中間リフト位置のいずれかへ変位させることが可能である。
【0088】
図11Bを参照すると、インジェクターニードル207は、2つのリフト位置(第1の中間リフト位置および完全なリフト位置)へ変位させることが可能である。第1の中間リフト位置は、制御部材211の構成によって決定され、制御部材211は、インジェクターニードル107のための停止位置を画定している。第1の制御チャンバー261を燃料戻りライン269に流体連通した状態に置くために第1の制御バルブ257を作動させることによって、インジェクターニードル207は、前記第1の中間リフト位置へ変位させることが可能である。それに続いて、第2の制御チャンバー271を燃料戻りライン269に流体連通した状態に置くために第2の制御バルブ259を作動させることによって、インジェクターニードル207を完全なリフト位置へ変位させることが可能である。第1および第2の制御バルブ257、259は、逐次的にまたは同時に作動させることが可能である。
【0089】
本発明の範囲を逸脱することなく、様々な変形および修正を、本明細書で説明されている実施形態に対して行うことが可能であるということが認識されることとなる。例えば、第1および第2の制御バルブ161、171を動作させるためのアクチュエーターは、圧電スタックを含むことが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図8c
図9
図10
図11A
図11B