【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1にかかる軒先融雪器は、軒先部分に空洞部を形成し、当該空洞部によって大気との接触面積を大きくして、融雪を促進するものである。そして更に融雪効率を高める為に、特許文献2では、屋根の軒先部分に電熱線を設置して、当該電熱線から発する熱によって、強制的に雪を解かすようにした融雪設備が提案されている。
【0008】
しかしながら、この特許文献2で提案されている融雪設備は、軒先に積もった雪を解かす点では優れているものの、その施設が困難であり、且つ積雪の落下を阻止するものではない。
【0009】
この点、特許文献3で提案されている屋根融雪装置は、融雪ヒーターを内蔵した三角形状の本体パネルを敷設するだけで良い事から、設置容易性は高まっている。しかし、この特許文献3で提案されている屋根融雪装置は、三角形状の本体パネルの上面と、内蔵する融雪ヒーターとの間には空間が存在する事から、当該本体パネル内の気体を温めなければならず、熱効率が未だ十分ではなかった。
【0010】
そこで本発明は、気体を介在させることを無くして、効率よく雪を解かす事ができるようにした屋根の融雪装置を提供する事を第1の課題とする。
【0011】
また、前記特許文献3にかかる屋根融雪装置は、本体パネルが三角形状に形成されている事から、屋根の軒先部分の傾斜を緩やかにする事は可能であるが、積もった雪の落下を阻止するものではなかった。この為、仮に融雪能力以上に降雪した場合や、気温が著しく低い場合には、当該本体パネル上に積雪してしまい、これが落下する事も否定できなかった。
【0012】
そこで本発明では、屋根、特に軒先部分に積もった雪の落下を確実に阻止し、更に屋根の軒先部分に積もった雪を効率的に溶かす事のできる屋根の融雪装置を提供する事を第二の課題とする。
【0013】
更に、電熱線などを用いたヒーターを使用して強制的に積雪を融かす場合には、ヒーター同士の電気的な接続部において、漏電やショートが発生する可能性がある事から、定期的なメンテナンスが必要となる。そして前記特許文献3で提案されている屋根融雪装置では、本体パネルを複数接続して設置されることから、電気的な接続部分も複数存在してしまう。
【0014】
そこで本発明は、設置後におけるメンテナンスの容易性を向上させるべく、ヒーターにおける電気的な接続部分を、可能な限り減じる事ができるようにした屋根の融雪装置を提供する事を第三の課題とする。
【0015】
更に従前においては、屋根に積もった雪を融かすために、電気によって発熱するシート状のルーフヒーターも提供されている。かかるルーフヒーターは、外側に樹脂層が存在しており、ある程度の補強はなされているが、高温および風雨に晒される状況下における長期的な耐候性については、少なからず不安要素を含んでいる。また屋根材に使用されるトタン等はその端部が鋭利である事から、設置時において当該ルーフヒーターが損傷を受ける可能性も否定できない。
【0016】
そこで本発明では、ルーフヒーターを使用しながらの、その耐候性を向上させると共に、設置時における損壊のおそれをなくした屋根融雪用ヒーター部材を提供することを第4の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題の少なくとも何れかを解決するために、本発明では屋根に積もった雪を融かすための融雪作用部と、屋根からの落雪を阻止する為の落雪防止作用部を伴って形成した屋根の融雪装置を提供するものである。
【0018】
即ち本発明にかかる屋根の融雪装置は、屋根に積もった雪をヒーターの熱で融かす屋根の融雪装置であって、屋根の傾斜面に対して立ち上げ状に存在する雪止め部を備え、当該屋根の傾斜面に設置される本体部材と、前記雪止め部の近傍に配置されると共に当該雪止め部が支持する雪を融かすヒーター部材とから構成する。
【0019】
前記ヒーター部材は、熱によって雪を融かすためのものであって、電気的な抵抗によって熱を発するものである他、温水などの加熱媒体を通すことにより熱を発するものであっても良い。その他にも遠赤外線を放出するか、或いは大気熱を吸収する等によって、何らかの方法によって熱を放出するように構成したものであって良い。
【0020】
ただし、当該ヒーター部材は、電気抵抗によって熱を発するもの(電熱装置)を使用する事により、そのオン/オフを容易に管理する事ができる。更にこの場合には、例えば外気温や降雪量によって、ヒーター部材の発熱温度を調整する事もできる。その為に、当該融雪装置は、更にヒーター部材のオン/オフや、消費電力量をコントロールする為の制御装置を伴って構成する事もできる。
【0021】
特に、当該ヒーター部材が電気抵抗によって熱を発するもの(電熱装置)である場合には、その熱源としてシート状のルーフヒーターを使用する事が望ましい。当該ルーフヒーターであれば、その長さや幅を自由に設計する事ができ、屋根の傾斜方向に幅広く設置する事ができるためである。特に効率的な融雪する為には、当該ルーフヒーターは10cm以上の幅、特に15cm以上の幅で形成するのが望ましい。更に、当該ルーフヒーターであれば、設置する建築物の軒先全体に設置する場合でも、その長さに応じて調整する事ができ、その結果、ルーフヒーター同士の電気的な接続部分を省略するか、又は減らして、メンテナンスの容易性を高める事ができる。
【0022】
そしてヒーター部材の熱源としてシート状のルーフヒーターを使用する場合、当該ルーフヒーターは、少なくとも何れかの面を金属板で被覆してヒーター部材とすることが望ましい。屋根面は直射日光や風雨に晒されるものであり、かかる過酷な環境下に設置される事から、風雨や氷雪から保護し、耐久性を向上させる為である。なお、ルーフヒーターを覆う金属板は、設置時において上方の面に存在することが望ましく、ルーフヒーターの上面とした面の両方を覆うように設けても良い。このように、金属板で被覆したルーフヒーターからなる屋根融雪用ヒーター部材であれば、
耐候性が向上する事から、直射日光に晒される屋根面に直接設置する事ができる。しかも設置時におけるルーフヒーターの損傷を阻止する事ができるため、上記本発明にかかる屋根の融雪装置に限らず、様々な用途で使用する事ができる。
【0023】
そして本発明にかかる屋根の融雪装置では、本体部材を備える。この本体部材は屋根の傾斜面に設置され、少なくとも、屋根の傾斜面に対して立ち上げ状に存在する雪止め部を備えている。当該本体部が雪止め部を備えている事から、本発明にかかる屋根の融雪装置は、屋根に積もった雪の落下を阻止する事ができる。かかる雪止め部は、少なくとも屋根に積もった雪を抑える事ができればよい事から、棒状又は面状に屋根面から突出するように形成する他、環状に形成して屋根面に延設する事もできる。
【0024】
そして当該雪止め部の近傍には、前記ヒーター部材が存在する事から、この雪止め部によって支持され、落下が阻止された積雪は、当該雪止め部の近傍に配置されているヒーター部材によって融かされることになる。即ち本発明にかかる屋根の融雪装置は、前記ヒーター部材と、この雪止め部との相互作用によって、屋根に積もった雪を迅速に融かし去ることができる。
【0025】
かかる雪止め部は、屋根の傾斜面に対して立ち上げ状に存在することが望ましく、これにより積雪量が多い場合であっても、屋根からの落雪を阻止する事ができる。そして、当該雪止め部は、屋根に積もった雪が落下しない様に、これを支持するものである事から、板状、網状、格子状等、少なくとも積もった雪を支持できるように形成される必要がある。また、この雪止め部が立上る高さは、当該屋根の融雪装置を設置する地域の降雪量に応じて適宜設定することができる。但し、降雪時期以外においても、そのまま設置しておく場合には、台風などの影響を考慮して、強風に飛ばされない高さ及び構造に形成する事が望ましい。よって、当該雪止め部はネット状又は格子状に形成するのが望ましい。
【0026】
また上記本体部材は、雪止め部材を備えれば良い事から、当該雪止め部材だけによって構成する事もできる。この場合、当該本体部材は、屋根の傾斜面に直接設置する事ができる。
【0027】
また、この雪止め部は、本体部材の一部として形成する事ができる。即ち、当該本体部材は、屋根の傾斜面に沿って設けられる底部と、当該底部から立ち上がって存在する雪止め部とからなる、L字状に形成する事ができる。このように形成した本体部材では、前記ヒーター部材を、前記底部又は雪止め部に対して着脱自在に設けることができる。ヒーター部材を本体部材の底部又は雪止め部に着脱自在に設置することにより、メンテナンスに際しては、当該ヒーター部材だけを取り外すことができ、これにより作業性を向上させることができる。また当該本体部材の底部は、板状に形成する他、フレームによって輪郭形状を形成すると共に、その内部に補強用のフレームを橋架け状に設置する事もできる。即ち、この本体部材の底部は、板状である他、これに開口部を設けた多孔板、或いはメッシュ部材、フレーム部材によって形成することができる。
【0028】
そして、上記の様に形成した底部に対するヒーター部材の取付は、フックや紐、或いはボルトなどのネジによって着脱自在に取り付けることができ、その他にも、底部に固定可能な板状の押さえ部材で保持することもできる。
【0029】
また、前記本体部材は、屋根の傾斜面に沿って設けられる底部と、当該底部の先端側から立ち上がって存在する雪止め部と、当該雪止め部の上端側と底部の基端側とに架設状に設けられた蓋部とから構成する事ができる。このように形成した本体部材は、側面視において三角形となる。この様に形成した場合、当該蓋部は、底部及び/又は雪止め部に対して着脱自在、若しくは揺動自在に設けるのが望ましい。底部と、雪止め部と、蓋部材によって形成される空間内に対するヒーター部材の設置を容易に行う事ができ、また蓋部材を取り付けるか、又は閉じる事により、設置したヒーター部材の脱落を阻止する事ができる為である。よって本体部材が蓋部を備える場合には、ヒーター部材を底部に取付ける必要性は無くなるが、風などによるヒーター部材のバタつきを無くす上では、底部に固定するのが望ましい。
【0030】
そして蓋部材を着脱自在に設けた場合には、前記ヒーター部材を取り外して、雪が積もるように構成した蓋部材を設置することにより、大気との接触面積を増大させて、蓋部材に積もった雪を融かす屋根の融雪装置とする事ができる。即ち、本発明にかかる屋根の融雪装置において、蓋部材を設けた場合には、ヒーター部材を取り外すことにより、従前において落雪を阻止し、且つ大気によって雪を融かす融雪装置としても使用する事ができる。
【0031】
上記の様に、雪止め部は屋根に積もった雪の落下を阻止するものであり、前記ヒーター部材は雪止め部が支持する雪を融かすものである。よってヒーター部材が屋根面に沿う向きに展開するように設置される場合には、前記雪止め部が前記ヒーター部材の設置位置よりも屋根の傾斜面の下方側に立設状に存在するように、前記本体部材を前記屋根の傾斜面に設置することが望ましい。雪止め部が支持する雪を効率的に融かす事ができるようにするためである。また、当該ヒーター部材は、屋根面に交差する向きに展開するように設置する事もできる。例えば、当該ヒーター部材が板状、又はシート状に形成されている場合には、設置する屋根面に対して、立ち上げ状に設ける事ができる。この場合、当該ヒーター部材は、雪止め部に設置する事ができ、当該雪止め部が支持する雪を直接的に融かす事ができる。
【0032】
更に上記本発明にかかる屋根の融雪装置では、前記本体部材の底部の下面に、屋根面との間に空間を確保する為のスペーサ部材を設けることが望ましい。ヒーター部材によって融かされた雪が水となった場合に、これを堰き止める事が無いようにするためである。かかるスペーサ部材は、樹脂製の波板を使用する他、所定の長さを有する脚部材を前記底部の下面に設ける事によって実現する事ができる。特に当該スペーサ部材を柱状の部材として形成した場合には、設置する屋根面の起伏や凹凸に合わせて、その長さを調整する事もできる。
【0033】
上記屋根の融雪装置は、屋根に積もった雪を効率的に融かす為に使用できる事から、屋根面であればどこに設置しても良い。また一列に限らず、複数列に設ける事もできる。但し、屋根の軒先部におけるスガモリの現象を生じさせないようにするため、および屋根に積もった雪の落下を阻止する為には、少なくとも屋根における軒先部分に設置するのが望ましい。更に、当該屋根の融雪装置は、建築物における屋根に限らず、傾斜のある面であれば設置する事ができ、よって例えば傾斜させて設置されているソーラーパネルの傾斜する下方側に設置する事で、ソーラーパネルからの落雪を阻止する事もできる。また、屋根面にソーラーパネルを設置している場合には、当該ソーラーパネルよりも下側(屋根の傾斜方向の下側)に設置する事もできる。ソーラーパネルの上面は積もった雪が滑りやすい事から、当該ソーラーパネルから滑り落ちた雪を支持し、その落下を阻止する為に使用する事ができる。
【発明の効果】
【0034】
上記本発明にかかる屋根の融雪装置によれば、ヒーター部材を備えている事から、積もった雪を当該ヒーター部材の熱で強制的に融かす事ができる。更に、このヒーター部材の下方には、本体部材における雪止め部が設けられている事から、落雪を阻止しながらも、雪止め部によって支持されている雪を、当該ヒーター部材によって融かす事ができる。これにより、屋根、特に軒先部分に積もった雪の落下を確実に阻止し、更に屋根の軒先部分に積もった雪を効率的に溶かす事のできる屋根の融雪装置が実現する。
【0035】
また、本発明にかかる屋根の融雪装置において、ヒーター部材の発熱部としてルーフヒーターを使用した場合には、これを金属板で被覆した板状部材(パネル)として設置する事ができる。これにより当該ルーフヒーターの熱は、空気層を介すること無く直接金属板を温めることができ、効率的に雪を融かす事ができる。よって本発明により、気体を介在させることを無くして、効率よく雪を解かす事ができる屋根の融雪装置を提供する事ができる。
【0036】
またヒーター部材としてルーフヒーターを使用する事により、設置する屋根の大きさに応じたヒーター部材を形成する事ができる。そして上記本体部材は、少なくとも屋根面に対して立設上に設けられる雪止め部を備えればよい事から、長尺に形成する事ができ、これによりルーフヒーター同士の電気的な接続部分を極力少なくすることができる。そして電気的な接続部を省略又は減じる事ができる為、設置後におけるメンテナンスの容易性を向上させた屋根の融雪装置が実現する。