特許第6106302号(P6106302)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6106302
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】屋根の融雪装置
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/00 20060101AFI20170316BHJP
   E04D 13/10 20060101ALI20170316BHJP
   E04H 9/16 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   E04D13/00 D
   E04D13/10 J
   E04H9/16 J
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-45016(P2016-45016)
(22)【出願日】2016年3月8日
【審査請求日】2016年9月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516070726
【氏名又は名称】株式会社サンユー販売
(74)【代理人】
【識別番号】100129159
【弁理士】
【氏名又は名称】黒沼 吉行
(72)【発明者】
【氏名】佐 藤 敏 美
【審査官】 津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−092529(JP,A)
【文献】 特開平01−142181(JP,A)
【文献】 特開2004−270222(JP,A)
【文献】 特開2008−156857(JP,A)
【文献】 実公昭49−024489(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/00
E04D 13/10
E04H 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根に積もった雪をヒーターの熱で融かす屋根の融雪装置であって、
屋根の傾斜面に対して立ち上げ状に存在する雪止め部を備え、当該屋根の傾斜面に設置される本体部材と、
前記雪止め部の近傍に配置されると共に、当該雪止め部が支持する雪を融かすヒーター部材とからなり、
前記本体部材は、屋根の傾斜面に沿って設けられる底部と、当該底部の先端側から立ち上がって存在する雪止め部と、当該雪止め部の上端側と底部の基端側とに架設状に設けられた蓋部とからなり、
当該蓋部は、前記ヒーター部材に雪が降り積もる事ができる大きさの開口を備えると共に、前記底部及び/又は雪止め部に対して着脱自在、若しくは揺動自在に設けられて、前記ヒーター部材の脱落を阻止可能とする、屋根の融雪装置。
【請求項2】
前記本体部材は、前記雪止め部が、前記ヒーター部材の設置位置よりも、屋根の傾斜面の下方側に立設状に存在するようにして、前記屋根の傾斜面に設置される、請求項1に記載の屋根の融雪装置。
【請求項3】
記ヒーター部材は、前記底部又は雪止め部に対して着脱自在に設けられている、請求項1に記載の屋根の融雪装置。
【請求項4】
前記雪止め部はネット状又は格子状に形成されている、請求項1〜3の何れか一項に記載の屋根の融雪装置。
【請求項5】
前記本体部材の底部の下面には、屋根面との間に空間を確保するスペーサ部材が設けられている、請求項1〜4の何れか一項に記載の屋根の融雪装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建築物の屋根に積もった雪を効率よく融かす為の装置に関し、特に屋根の軒先に積もった雪を溶かして、庇の損壊などを阻止するようにした屋根の融雪装置に関する。
【背景技術】
【0002】
積雪地域においては、屋根に積もった雪が氷結して屋根端や雨樋を破損したり、軒先にできた雪や氷柱が落下する等の問題があった。そこでこれ等の問題を解決するために、従前においては、屋根の軒先に融雪の為の装置や設備を設けることが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1(実用新案登録第3021180号公報)では、軒先融雪器を操作し易く、且つ屋根に安定し易くするべく、屋根の軒先のカラクサ部に、軒先融雪器の両側の延長に曲がり金具を付設し、カラクサ部とワンタッチで着脱出来るようにし、屋根係金具で軒先に吊るすようにした軒先融雪器が提案されている。この軒先融雪器は、雪止め部が円形なので太陽熱を多く吸収して雪が融け易いものとなっている。
【0004】
また特許文献2(特開平9−256563号公報)では、屋根のひさし部分に雪が積もらないようにすることにより、屋根の上部に積もった雪が自然と軒下へ滑り落ちるようにする融雪設備が提案されている。この融雪設備は、屋根のトタン板のひさし部分に、熱感知センサーと連動した電熱線を設置し、その上からヒーティング板をかぶせ、同ヒーティング板を耐熱耐水ボンドとルーフヒーティング用トタン止め金具によって屋根のトタン板と固定させるものとなっている。
【0005】
そして特許文献3(実用新案登録第3065733号公報)では、融雪ヒーターを用いた屋根融雪装置を提案しており、三角形状の本体パネル内に融雪ヒーターを内蔵し、これを軒先固定フックと支持枠調整ボルトによって屋根上の雪止め枠に固定して装着する事が提案されている。そしてこの文献には、従来提案されている「電熱板を用いた屋根の融雪装置」は、主に屋根材の下にヒーターを敷き込む工法であって、施工に当っては屋根材の損傷をおこしたり、また降雪期の取付け作業は困難であったことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3021180号公報
【特許文献2】特開平9−256563号公報
【特許文献3】実用新案登録第3065733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1にかかる軒先融雪器は、軒先部分に空洞部を形成し、当該空洞部によって大気との接触面積を大きくして、融雪を促進するものである。そして更に融雪効率を高める為に、特許文献2では、屋根の軒先部分に電熱線を設置して、当該電熱線から発する熱によって、強制的に雪を解かすようにした融雪設備が提案されている。
【0008】
しかしながら、この特許文献2で提案されている融雪設備は、軒先に積もった雪を解かす点では優れているものの、その施設が困難であり、且つ積雪の落下を阻止するものではない。
【0009】
この点、特許文献3で提案されている屋根融雪装置は、融雪ヒーターを内蔵した三角形状の本体パネルを敷設するだけで良い事から、設置容易性は高まっている。しかし、この特許文献3で提案されている屋根融雪装置は、三角形状の本体パネルの上面と、内蔵する融雪ヒーターとの間には空間が存在する事から、当該本体パネル内の気体を温めなければならず、熱効率が未だ十分ではなかった。
【0010】
そこで本発明は、気体を介在させることを無くして、効率よく雪を解かす事ができるようにした屋根の融雪装置を提供する事を第1の課題とする。
【0011】
また、前記特許文献3にかかる屋根融雪装置は、本体パネルが三角形状に形成されている事から、屋根の軒先部分の傾斜を緩やかにする事は可能であるが、積もった雪の落下を阻止するものではなかった。この為、仮に融雪能力以上に降雪した場合や、気温が著しく低い場合には、当該本体パネル上に積雪してしまい、これが落下する事も否定できなかった。
【0012】
そこで本発明では、屋根、特に軒先部分に積もった雪の落下を確実に阻止し、更に屋根の軒先部分に積もった雪を効率的に溶かす事のできる屋根の融雪装置を提供する事を第二の課題とする。
【0013】
更に、電熱線などを用いたヒーターを使用して強制的に積雪を融かす場合には、ヒーター同士の電気的な接続部において、漏電やショートが発生する可能性がある事から、定期的なメンテナンスが必要となる。そして前記特許文献3で提案されている屋根融雪装置では、本体パネルを複数接続して設置されることから、電気的な接続部分も複数存在してしまう。
【0014】
そこで本発明は、設置後におけるメンテナンスの容易性を向上させるべく、ヒーターにおける電気的な接続部分を、可能な限り減じる事ができるようにした屋根の融雪装置を提供する事を第三の課題とする。
【0015】
更に従前においては、屋根に積もった雪を融かすために、電気によって発熱するシート状のルーフヒーターも提供されている。かかるルーフヒーターは、外側に樹脂層が存在しており、ある程度の補強はなされているが、高温および風雨に晒される状況下における長期的な耐候性については、少なからず不安要素を含んでいる。また屋根材に使用されるトタン等はその端部が鋭利である事から、設置時において当該ルーフヒーターが損傷を受ける可能性も否定できない。
【0016】
そこで本発明では、ルーフヒーターを使用しながらの、その耐候性を向上させると共に、設置時における損壊のおそれをなくした屋根融雪用ヒーター部材を提供することを第4の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題の少なくとも何れかを解決するために、本発明では屋根に積もった雪を融かすための融雪作用部と、屋根からの落雪を阻止する為の落雪防止作用部を伴って形成した屋根の融雪装置を提供するものである。
【0018】
即ち本発明にかかる屋根の融雪装置は、屋根に積もった雪をヒーターの熱で融かす屋根の融雪装置であって、屋根の傾斜面に対して立ち上げ状に存在する雪止め部を備え、当該屋根の傾斜面に設置される本体部材と、前記雪止め部の近傍に配置されると共に当該雪止め部が支持する雪を融かすヒーター部材とから構成する。
【0019】
前記ヒーター部材は、熱によって雪を融かすためのものであって、電気的な抵抗によって熱を発するものである他、温水などの加熱媒体を通すことにより熱を発するものであっても良い。その他にも遠赤外線を放出するか、或いは大気熱を吸収する等によって、何らかの方法によって熱を放出するように構成したものであって良い。
【0020】
ただし、当該ヒーター部材は、電気抵抗によって熱を発するもの(電熱装置)を使用する事により、そのオン/オフを容易に管理する事ができる。更にこの場合には、例えば外気温や降雪量によって、ヒーター部材の発熱温度を調整する事もできる。その為に、当該融雪装置は、更にヒーター部材のオン/オフや、消費電力量をコントロールする為の制御装置を伴って構成する事もできる。
【0021】
特に、当該ヒーター部材が電気抵抗によって熱を発するもの(電熱装置)である場合には、その熱源としてシート状のルーフヒーターを使用する事が望ましい。当該ルーフヒーターであれば、その長さや幅を自由に設計する事ができ、屋根の傾斜方向に幅広く設置する事ができるためである。特に効率的な融雪する為には、当該ルーフヒーターは10cm以上の幅、特に15cm以上の幅で形成するのが望ましい。更に、当該ルーフヒーターであれば、設置する建築物の軒先全体に設置する場合でも、その長さに応じて調整する事ができ、その結果、ルーフヒーター同士の電気的な接続部分を省略するか、又は減らして、メンテナンスの容易性を高める事ができる。
【0022】
そしてヒーター部材の熱源としてシート状のルーフヒーターを使用する場合、当該ルーフヒーターは、少なくとも何れかの面を金属板で被覆してヒーター部材とすることが望ましい。屋根面は直射日光や風雨に晒されるものであり、かかる過酷な環境下に設置される事から、風雨や氷雪から保護し、耐久性を向上させる為である。なお、ルーフヒーターを覆う金属板は、設置時において上方の面に存在することが望ましく、ルーフヒーターの上面とした面の両方を覆うように設けても良い。このように、金属板で被覆したルーフヒーターからなる屋根融雪用ヒーター部材であれば、耐候性が向上する事から、直射日光に晒される屋根面に直接設置する事ができる。しかも設置時におけるルーフヒーターの損傷を阻止する事ができるため、上記本発明にかかる屋根の融雪装置に限らず、様々な用途で使用する事ができる。

【0023】
そして本発明にかかる屋根の融雪装置では、本体部材を備える。この本体部材は屋根の傾斜面に設置され、少なくとも、屋根の傾斜面に対して立ち上げ状に存在する雪止め部を備えている。当該本体部が雪止め部を備えている事から、本発明にかかる屋根の融雪装置は、屋根に積もった雪の落下を阻止する事ができる。かかる雪止め部は、少なくとも屋根に積もった雪を抑える事ができればよい事から、棒状又は面状に屋根面から突出するように形成する他、環状に形成して屋根面に延設する事もできる。
【0024】
そして当該雪止め部の近傍には、前記ヒーター部材が存在する事から、この雪止め部によって支持され、落下が阻止された積雪は、当該雪止め部の近傍に配置されているヒーター部材によって融かされることになる。即ち本発明にかかる屋根の融雪装置は、前記ヒーター部材と、この雪止め部との相互作用によって、屋根に積もった雪を迅速に融かし去ることができる。
【0025】
かかる雪止め部は、屋根の傾斜面に対して立ち上げ状に存在することが望ましく、これにより積雪量が多い場合であっても、屋根からの落雪を阻止する事ができる。そして、当該雪止め部は、屋根に積もった雪が落下しない様に、これを支持するものである事から、板状、網状、格子状等、少なくとも積もった雪を支持できるように形成される必要がある。また、この雪止め部が立上る高さは、当該屋根の融雪装置を設置する地域の降雪量に応じて適宜設定することができる。但し、降雪時期以外においても、そのまま設置しておく場合には、台風などの影響を考慮して、強風に飛ばされない高さ及び構造に形成する事が望ましい。よって、当該雪止め部はネット状又は格子状に形成するのが望ましい。
【0026】
また上記本体部材は、雪止め部材を備えれば良い事から、当該雪止め部材だけによって構成する事もできる。この場合、当該本体部材は、屋根の傾斜面に直接設置する事ができる。
【0027】
また、この雪止め部は、本体部材の一部として形成する事ができる。即ち、当該本体部材は、屋根の傾斜面に沿って設けられる底部と、当該底部から立ち上がって存在する雪止め部とからなる、L字状に形成する事ができる。このように形成した本体部材では、前記ヒーター部材を、前記底部又は雪止め部に対して着脱自在に設けることができる。ヒーター部材を本体部材の底部又は雪止め部に着脱自在に設置することにより、メンテナンスに際しては、当該ヒーター部材だけを取り外すことができ、これにより作業性を向上させることができる。また当該本体部材の底部は、板状に形成する他、フレームによって輪郭形状を形成すると共に、その内部に補強用のフレームを橋架け状に設置する事もできる。即ち、この本体部材の底部は、板状である他、これに開口部を設けた多孔板、或いはメッシュ部材、フレーム部材によって形成することができる。
【0028】
そして、上記の様に形成した底部に対するヒーター部材の取付は、フックや紐、或いはボルトなどのネジによって着脱自在に取り付けることができ、その他にも、底部に固定可能な板状の押さえ部材で保持することもできる。
【0029】
また、前記本体部材は、屋根の傾斜面に沿って設けられる底部と、当該底部の先端側から立ち上がって存在する雪止め部と、当該雪止め部の上端側と底部の基端側とに架設状に設けられた蓋部とから構成する事ができる。このように形成した本体部材は、側面視において三角形となる。この様に形成した場合、当該蓋部は、底部及び/又は雪止め部に対して着脱自在、若しくは揺動自在に設けるのが望ましい。底部と、雪止め部と、蓋部材によって形成される空間内に対するヒーター部材の設置を容易に行う事ができ、また蓋部材を取り付けるか、又は閉じる事により、設置したヒーター部材の脱落を阻止する事ができる為である。よって本体部材が蓋部を備える場合には、ヒーター部材を底部に取付ける必要性は無くなるが、風などによるヒーター部材のバタつきを無くす上では、底部に固定するのが望ましい。
【0030】
そして蓋部材を着脱自在に設けた場合には、前記ヒーター部材を取り外して、雪が積もるように構成した蓋部材を設置することにより、大気との接触面積を増大させて、蓋部材に積もった雪を融かす屋根の融雪装置とする事ができる。即ち、本発明にかかる屋根の融雪装置において、蓋部材を設けた場合には、ヒーター部材を取り外すことにより、従前において落雪を阻止し、且つ大気によって雪を融かす融雪装置としても使用する事ができる。
【0031】
上記の様に、雪止め部は屋根に積もった雪の落下を阻止するものであり、前記ヒーター部材は雪止め部が支持する雪を融かすものである。よってヒーター部材が屋根面に沿う向きに展開するように設置される場合には、前記雪止め部が前記ヒーター部材の設置位置よりも屋根の傾斜面の下方側に立設状に存在するように、前記本体部材を前記屋根の傾斜面に設置することが望ましい。雪止め部が支持する雪を効率的に融かす事ができるようにするためである。また、当該ヒーター部材は、屋根面に交差する向きに展開するように設置する事もできる。例えば、当該ヒーター部材が板状、又はシート状に形成されている場合には、設置する屋根面に対して、立ち上げ状に設ける事ができる。この場合、当該ヒーター部材は、雪止め部に設置する事ができ、当該雪止め部が支持する雪を直接的に融かす事ができる。
【0032】
更に上記本発明にかかる屋根の融雪装置では、前記本体部材の底部の下面に、屋根面との間に空間を確保する為のスペーサ部材を設けることが望ましい。ヒーター部材によって融かされた雪が水となった場合に、これを堰き止める事が無いようにするためである。かかるスペーサ部材は、樹脂製の波板を使用する他、所定の長さを有する脚部材を前記底部の下面に設ける事によって実現する事ができる。特に当該スペーサ部材を柱状の部材として形成した場合には、設置する屋根面の起伏や凹凸に合わせて、その長さを調整する事もできる。
【0033】
上記屋根の融雪装置は、屋根に積もった雪を効率的に融かす為に使用できる事から、屋根面であればどこに設置しても良い。また一列に限らず、複数列に設ける事もできる。但し、屋根の軒先部におけるスガモリの現象を生じさせないようにするため、および屋根に積もった雪の落下を阻止する為には、少なくとも屋根における軒先部分に設置するのが望ましい。更に、当該屋根の融雪装置は、建築物における屋根に限らず、傾斜のある面であれば設置する事ができ、よって例えば傾斜させて設置されているソーラーパネルの傾斜する下方側に設置する事で、ソーラーパネルからの落雪を阻止する事もできる。また、屋根面にソーラーパネルを設置している場合には、当該ソーラーパネルよりも下側(屋根の傾斜方向の下側)に設置する事もできる。ソーラーパネルの上面は積もった雪が滑りやすい事から、当該ソーラーパネルから滑り落ちた雪を支持し、その落下を阻止する為に使用する事ができる。
【発明の効果】
【0034】
上記本発明にかかる屋根の融雪装置によれば、ヒーター部材を備えている事から、積もった雪を当該ヒーター部材の熱で強制的に融かす事ができる。更に、このヒーター部材の下方には、本体部材における雪止め部が設けられている事から、落雪を阻止しながらも、雪止め部によって支持されている雪を、当該ヒーター部材によって融かす事ができる。これにより、屋根、特に軒先部分に積もった雪の落下を確実に阻止し、更に屋根の軒先部分に積もった雪を効率的に溶かす事のできる屋根の融雪装置が実現する。
【0035】
また、本発明にかかる屋根の融雪装置において、ヒーター部材の発熱部としてルーフヒーターを使用した場合には、これを金属板で被覆した板状部材(パネル)として設置する事ができる。これにより当該ルーフヒーターの熱は、空気層を介すること無く直接金属板を温めることができ、効率的に雪を融かす事ができる。よって本発明により、気体を介在させることを無くして、効率よく雪を解かす事ができる屋根の融雪装置を提供する事ができる。
【0036】
またヒーター部材としてルーフヒーターを使用する事により、設置する屋根の大きさに応じたヒーター部材を形成する事ができる。そして上記本体部材は、少なくとも屋根面に対して立設上に設けられる雪止め部を備えればよい事から、長尺に形成する事ができ、これによりルーフヒーター同士の電気的な接続部分を極力少なくすることができる。そして電気的な接続部を省略又は減じる事ができる為、設置後におけるメンテナンスの容易性を向上させた屋根の融雪装置が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】第1の実施の形態にかかる屋根の融雪装置を設置した状態を示す斜視図
図2図1において屋根に設置している融雪装置を示す斜視分解図
図3】他の実施の形態にかかる屋根の融雪装置を示す(A)斜視図、(B)側面図
図4】スペーサ部材として樹脂製の波板を使用した屋根の融雪装置の(A)分解図、(B)斜視図
図5図3に示した屋根の融雪装置における他の使用例を示す斜視図
図6図2〜4に示した屋根の融雪装置の融雪作用を示す側面図
図7】他の実施の形態にかかる屋根の融雪装置を示す斜視図であり、(A)本体部材の外側にヒーター部材を設置した状態、(B)本体部材の内側にヒーター部材を設置した状態をそれぞれ示している。
図8】蓋部を開閉自在に設けた屋根の融雪装置を示す側面図
図9図7又は8に示した融雪装置における融雪状態を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照しながら本実施の形態にかかる屋根の融雪装置50を具体的に説明する。図1は、家屋Hの屋根Rに、第1の実施の形態にかかる屋根の融雪装置50を設置した状態を示す斜視図である。特にこの実施の形態では、屋根の軒先部分RFに屋根の融雪装置50を設置した状態を示している。この屋根の融雪装置50の設置に際しては、屋根の軒先部分RFに本体部材10を固定する。この本体部材10の固定には、図示しないが、従来から屋根の融雪装置50の設置に使用されているアングル材や、軒先融雪機取付金具として市販されているものを使用する事ができる。特にこの実施の形態では屋根Rの形状にあわせて、2つの屋根の融雪装置50を設置しており、それぞれの屋根の融雪装置50は、複数のモジュールを連結すること無く、一体状に形成されている。
【0039】
そして、当該本体部材10を屋根の軒先部分RFに設置した後においては、当該本体部材10の上にヒーター部材20を載せ、これを押さえ板、ボルト、ワイヤー、フックなどの公知の固定手段によって、着脱自在に一体化する。かかるヒーター部材20としては、ルーフヒーターを使用しており、従って設置する部分に応じた長さのものを予め準備しておくことで、電気的な接続部分を無くして設置する事ができる。そして各ヒーター部材20に対しては、発熱の為の電気を供給する電線(図示せず)が接続されることになる。なお、各ヒーター部材20ごとに、又は全てのヒーター部材20に共通する制御装置を設け、外気温や降雪量によって、当該屋根の融雪装置50のオン/オフをコントロールする事もできる。また外気温や積雪量を検知して、前記制御装置に検知信号を送る各種センサーを伴って形成する事もできる。
【0040】
図2は、上記図1において屋根Rに設置している融雪装置50を示す斜視分解図である。この図2に示す屋根の融雪装置50は、L字状に形成した本体部材10と、この本体部材10の底部13に設置されるヒーター部材20とで構成している。
【0041】
本体部材10は、L字状に曲折させた5本のL字フレーム11と、このフレームを一体化する板状の連結フレーム12とで構成されている。当該連結フレーム12は、L字フレームの曲折部と両端部を連結することにより本体部材10を形成している。この本体部材10において、設置時に屋根面に沿って配置される底部13には、ヒーター部材20を載せ置いて、これを前記した公知の固定手段によって、着脱自在に保持する事ができる。そしてこの底部13の前方から立ち上げ状に曲折している雪止め部14には、屋根Rに積もった雪を支持し、その落下を阻止する様に、金網15を添設している。よって、この雪止め部14は、前記L字フレーム11と、このL字フレーム間の空間を塞ぐように存在する金網15とで構成されている。
【0042】
また、底部13の下面には、屋根面に載置する際の脚部となるスペーサ部材16が設けられている。このスペーサ部材16によって、本体部材10の底部13が屋根面と接触しない状態で保持されることから、ヒーター部材20によって溶かされた雪が、水となって流れる為の流路を確保する事ができる。またこのスペーサ部材16は、下面にゴムなどの緩衝材を設けた柱状の脚部として形成していることから、屋根面との接触部の腐食などの劣化を阻止して、長期にわたって使用できる屋根の融雪装置50が実現する。
【0043】
本実施の形態におけるヒーター部材20は、前記ルーフヒーターと、その上部を覆う金属板とで構成しており、当該ヒーター部材20は略パネル状に形成されている、このようにパネル状に形成されたヒーター部材20は、設置に際して、そのまま前記本体部材10に固定するだけで良い事から、設置作業を容易に行う事ができる。なお、ルーフヒーターの上部を覆う金属板は、腐食しない様に形成された鋼板を使用する事が望ましく、例えば防錆塗料を塗布した屋根R用鋼板を使用する事ができる。
【0044】
図3は他の実施の形態にかかる屋根の融雪装置50を示す(A)斜視図、(B)側面図である。特にこの実施の形態にかかる屋根の融雪装置50は、本体部材10はL字状の斜辺部分を連架する蓋部17を設けて、側面視三角形状に形成している。即ち、この実施の形態にかかる本体部材10は、屋根Rの傾斜面に沿って設けられる底部13と、当該底部13の先端側から立ち上がって存在する雪止め部14と、当該雪止め部14の上端側と底部13の基端側とに架設状に設けられた蓋部17とで構成されている。この蓋部17は、雪止め部14の上端側に兆番金具などを用いて揺動自在に取り付けられており、これにより、当該蓋部17は、図3(B)に示す様に、底部13の基端側において開閉するように構成されている。当該蓋部17が開閉する事から、前記パネル状のヒーター部材20の設置に際しては、当該蓋部17を開けて設置することができ、設置容易性を高めた屋根の融雪装置50となっている。
【0045】
かかる蓋部17は、底部13と雪止め部14とを補強する機能を有する他、底部13に設置したヒーター部材20を支持する為に機能する事ができる。即ち、当該蓋部17を設けることにより、ヒーター部材20を底部13に固定する必要性を無くすことができる。但し、当該ヒーター部材20が風に煽られてバタつく事態を阻止する為には、更に当該ヒーター部材20を底部13に対して着脱自在に固定する事ができる。また、開閉する蓋部17は、閉じた状態においては、ネジやフックなどによって固定することが望ましい。
【0046】
そしてこの実施の形態に示す屋根の融雪装置50において、この蓋部17は、少なくとも雪が底部13に設けたヒーター部材20に降り積もる事ができるように、十分に広い開口を備えて構成される。即ち、少なくとも雪が蓋部17の上に降り積もり、ヒーター部との接触が阻害される事の無いように構成される。
【0047】
図4は、上記図3に示した屋根の融雪装置50に関連し、スペーサ部材16として樹脂製の波板を使用した状態における(A)分解図、(B)斜視図を示している。この図に示す様に、蓋部17は、底部13と雪止め部14とからなるL字状のフレー部分に対して着脱自在に設ける事もできる。このように、当該蓋部17を着脱自在に設けた場合には、後述する図5に示す様に、異なる蓋部17を取り付けて使用する事もできる。なお、この蓋部17は、ネジやフックなどの公知の固定具によって、底部13や雪止め部14に固定する事ができる。
【0048】
また、本実施の形態にかかる屋根の融雪装置50において、スペーサ部材16は、樹脂製の波板で形成している。そしてこの波板は、当該波板の山が延伸する方向を、屋根Rの傾斜方向に沿う向きとする事により、溶けた雪が水となって流れる為の流路を確保する事ができる。
【0049】
図5は、前記図3に示した屋根の融雪装置50における他の使用例を示す斜視図である。即ち、この実施の形態にかかる屋根の融雪装置50は、蓋部17として、金網15を設けた蓋部17を使用している。このように蓋部17に金網15を張ることにより、雪は蓋部17の金網15に降り積もり、当該蓋部17の下方には空間が存在することになる。そしてこの空間には大気が滞留する事から、蓋部17に降り積もった雪を大気の熱によって融かす事ができる。したがって、この実施の形態では、ヒーター部材20を省略する事ができる。また、この実施の形態においてヒーター部材20を設置した場合には、滞留する大気をヒーター部材20によって温めて、蓋部17上の雪を融かす事ができる。即ち前記図3に示した屋根の融雪装置50は、蓋部17を変更する事により、異なる方法で雪を融かす事の出来る屋根の融雪装置50が実現する。
【0050】
図6は、上記図2〜4に示した屋根の融雪装置50の融雪作用を示す側面図である。この図に示す様に、屋根Rに降る雪は、ヒーター部材20上において熱によって融かされ、当該軒先部分に堆く積もることは無くなる。この時、降雪量が多く、ヒーター部材20における融雪能力を超えて雪が降り積もったとしても、本体部材10における雪止め部14によって支持され、その落下を阻止する事ができる。そして雪止め部14が支持している雪は、その後、ヒーター部材20によって融かされる事から、軒先の庇部分に雪が降り積もり、その重さによって庇が損壊するといった事態を回避する事ができる。
【0051】
なお、降雪後において好天時には、当該屋根の融雪装置50よりも上方に積もった雪が、屋根の融雪装置50にズレ落ちて移動する事も考えられる。しかし、この場合であっても、当該ズレ落ちてきた雪は、雪止め部14に支持され、これはヒーター部材20によって融かされる事から、屋根面の融雪を円滑に行う事ができる。
【0052】
図7は、他の実施の形態にかかる屋根の融雪装置50を示す斜視図であり、(A)本体部材10の外側にヒーター部材20を設置した状態、(B)本体部材10の内側にヒーター部材20を設置した状態をそれぞれ示している。特に、この実施の形態にかかる屋根の融雪装置50は、本体部材10における雪止め部14にヒーター部材20を設置して構成しており、当該ヒーター部材20は、設置する屋根面から立ち上がり状に設けられることになる。
【0053】
本体部材10における雪止め部14は、屋根面から立ち上がり状に存在する事から、当該雪止め部14にヒーター部材20を設置する事ができる。このヒーター部材20の設置に際しては、当該雪止め部14の外側に沿うように設ける他、当該本体部材10の内側に設ける事ができる。特に、当該ヒーター部材20を本体部材10の内側に設ける場合、横から差し入れて雪止め部14に固定する他、図8に示す様に、雪止め部14と底部13とに設けられる蓋部17を開閉自在に設ける事もできる。このような蓋部17を設ける事により、当該ヒーター部材20の設置作業を容易に行う事ができる。
【0054】
本実施の形態にかかる屋根の融雪装置50において、本体部材10は、底面部を雪止め部14よりも短く形成しているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、両者を同じ長さ、或いは底面部を雪止め部14よりも長く形成しても良い。
【0055】
図9は上記図7又は8に示した屋根の融雪装置50における融雪状態を示している。当該屋根の融雪装置50では、雪止め部14によって、屋根Rに積もった雪を支持し、当該雪止め部14に添接されたヒーター部材20によって、支持している雪を熱によって融かす事ができる。その結果、当該屋根の融雪装置50よりも下側に雪が存在する事は無くなり、軒先の庇が雪の重みで損壊するといった事態を回避する事ができる。
【0056】
そして、この屋根の融雪装置50の近傍における雪が解けた後においては、屋根Rに積もった雪は、当該屋根の融雪装置50側に滑り落ちてくることから、当該屋根面の雪を効果的に融かす事ができる。
【0057】
なお、上記幾つかの実施の形態にかかる図面では、同じ機能及び作用又は構造を有する部材については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略している。
【産業上の利用可能性】
【0058】
上記本発明にかかる屋根の融雪装置は、屋根面に積もった雪を融かす為に使用する事ができ、その他にもソーラーパネルに積もった雪を融かすために使用する事もできる。更に、、本発明にかかる屋根の融雪装置は、傾斜面における雪崩を阻止しながらも、迅速に雪を融かす為に使用する事ができることから、屋根以外の傾斜面に設置して、雪を融かす事もできる。
【符号の説明】
【0059】
10 本体部材
11 L字フレーム
12 連結フレーム
13 底部
14 部
15 金網
16 スペーサ部材
17 蓋部
20 ヒーター部材
20 各ヒーター部材
20 ヒーター部材
50 融雪装置
H 家屋
R 屋根
RF 軒先部分
【要約】
【課題】屋根、特に軒先部分に積もった雪の落下を確実に阻止し、更に屋根の軒先部分に積もった雪を効率的に溶かす事のできる屋根の融雪装置を提供する事。
【解決手段】 屋根に積もった雪をヒーターの熱で融かす屋根の融雪装置であって、屋根の傾斜面に対して立ち上げ状に存在する雪止め部を備え、当該屋根の傾斜面に設置される本体部材と、前記雪止め部の近傍に配置されると共に、当該雪止め部が支持する雪を融かすヒーター部材とからなる屋根の融雪装置とする。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9