【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、LED電源回路にフライバック方式を採用した場合、LED負荷の負荷電流が断続したり、負荷電流の大きくが増減したりするのに伴って、補助電源回路が出力する補助電圧が変動してしまう、という課題があった。
【0007】
特許文献1記載の電源装置では、制御回路を内蔵するコントローラICのVcc端子にトランスの補助巻線から取得した補助電圧が供給される。また、コントローラICにはVcc端子と制御回路とを結ぶ補助電源ラインに並列に、ダミー抵抗と半導体スイッチの直列回路が設けられ、また、Vcc端子に供給される補助電圧の検出手段も設けられている。そして、補助電圧の検出値が所定範囲(11〜23V)から外れそうになった場合に、半導体スイッチをオンまたはオフさせてダミー抵抗の接続・切り離しを実行して、補助電圧を増減する調整を行なっている。これにより、LED負荷の負荷電流の変化に伴う補助電圧の変動を抑えて、所定範囲の補助電圧をVcc端子に供給できるようにしている。
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の電源装置は、LED負荷の負荷電流の変化に起因する補助電圧の変動に伴って、半導体スイッチを小まめに切り換えなければならず、適切な半導体スイッチの制御回路を要する。そのため、コントローラICの構成が複雑になっていた。発明者は、コントローラICの構成を複雑にすることなく、LED負荷の負荷電流の変化に伴う補助電圧の変動を抑えられる制御構成を検討する余地があると考えた。
【0009】
本発明は上述の課題に鑑みなされたものであり、照明負荷の負荷電流が断続したり、負荷電流の大きくが増減したりする場合であっても、補助電源回路が出力する補助電力が変動してしまうことなく、安定した補助電力を制御回路に供給できる補助電源回路を備えた照明用電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明の照明用電源装置では、制御回路を動作させるための補助電力を、トランスの補助巻線からフライバック方式で取り出すのではなく、トランスの補助巻線からフォワード方式に類似した方式で取り出すことにした。具体的には、トランスの補助巻線からの補助電圧を取り出す方向(この方向は補助巻線に接続するダイオードの極性を示す。)を、従来のフライバック方式で取り出す補助電圧の方向とは逆にした。
【0011】
すなわち、本発明の照明用電源装置は、
一次巻線、二次巻線、三次巻線および共通コアを有するトランスと、前記一次巻線に直列に接続されたスイッチング素子と、前記一次巻線および前記スイッチング素子の直列回路へ直流電力を加える直流出力回路と、前記二次巻線に直列に接続された二次側ダイオードと、前記スイッチング素子をオンオフ制御する制御回路と、前記制御回路用の補助電源回路と、を備える照明用電源装置であって、前記二次巻線と前記二次側ダイオードの直列回路の両端に生じる直流電力によって照明負荷を点灯する。
前記二次側ダイオードの極性は、前記スイッチング素子がオンのときに前記二次巻線の誘導電流の流れを阻止する向きで設けられている。
前記補助電源回路は、前記三次巻線に直列に接続された三次側ダイオード
と、さらに直列に接続されたインダクターと、を有し、
前記三次側ダイオードの極性は、前記スイッチング素子がオンのときに前記三次巻線の誘導電流の流れを許可する向きで設けられ、
前記スイッチング素子がオンのときに前記三次巻線の誘導電流に基づく補助電力が前記制御回路に供給され
、
前記インダクターは、前記補助電力に与える前記直流電力の変動の影響を軽減することを特徴とする。
なお、本発明の照明用電源装置において、上記のインダクターに代えて、抵抗を接続してもよい。
【0012】
ここで、本発明では共通コアに複数の巻線が形成されたトランスを用いている。三次巻線や四次巻線は、これらから取り出される電力を制御回路の駆動のために用いるので、補助巻線とも呼ぶ。
図5を用いて説明すると、トランスTにおいて、スイッチング素子がオンのときに一次巻に生じる磁束Φの向きは、一次巻線Taに印加される電圧の極性と、一次巻線Taのコイルの極性(右巻きや左巻きといったもの)とによって決まる。同時に、二次巻線Tbに生じる誘導起電力の向きは、二次巻線Tbのコイルの極性によって決まる。電気回路では、コイルの極性が黒丸などで表わされているので、二次巻線Tbに生じる誘導起電力の向きを、コイルの極性から容易に識別し得る。三次巻線や四次巻線に生じる誘導起電力の向きも同様である。なお、通常のトランスでは、一次巻線のコイルの極性(黒丸の位置)と逆起電力の向きとの関係が、二次巻線や三次巻線でのコイルの極性と誘導起電力の向きとの関係と同じになっている。
【0013】
この構成によれば、二次側ダイオードの極性が、スイッチング素子がオンのときに二次巻線の誘導電流の流れを阻止する向きで設けられているので、オンのときにはトランスに磁気エネルギーが蓄積される。そしてオフになると、二次巻線での起電力の向きが変わるので、蓄積された磁気エネルギーが二次巻線と二次側ダイオードを流れる電流として取り出される。このようにして、照明負荷への直流電力が、トランスの二次巻線からフライバック方式で取り出される。これに対して、補助電源回路の三次側ダイオードの極性は、スイッチング素子がオンのときに三次巻線の誘導電流の流れを許可する向きで設けられているので、オンのときに誘導電流が三次巻線と三次側ダイオードを流れる。オフのときには三次巻線での起電力の向きが変わるので、三次巻線に電流は流れない。このようにして、制御回路への補助電力が、トランスの三次巻線からフォワード方式に類似した方式で取り出される。すなわち、照明負荷への直流電力は、スイッチング素子がオンのときに取り出され、補助電力はオフのときに取り出されるので、それぞれ取り出されるタイミングがずれる。そうすると、照明負荷への直流電流が増減したからといって、それに伴って三次巻線から取り出される補助電力が変動してしまうことは無くなる。従って、照明負荷に流れる直流電流には依存しない安定した補助電圧を制御回路に供給することができる。また、従来の補助電源回路に比べると、追加すべき半導体スイッチなどの部品が無いので、少ない部品点数で補助電源回路を構成することができる。
【0014】
また、本発明の照明用電源装置において、前記補助電源回路は、
さらに、前記三次巻線の誘導電流によって充電され
る三次側コンデンサを有し、前記三次側コンデンサの端子間電圧が前記制御回路に供給されることが好ましい
。
【0015】
ここで、補助電圧の取り出し方式について、従来のフライバック方式の利点は、三次巻線から取り出される補助電圧がトランスへの入力電圧の変動などの影響を受けにくいということである。本発明では、補助電圧をフォワード方式に類似した方式で三次巻線から取り出す構成にしたので、補助電圧がトランスへの入力電圧に依存することになる。例えば、トランスへの入力電圧に突入電流があると、三次巻線にも突入電流が生じ、スパイク状のパルス電圧として制御回路に印加されてしまうおそれがある。この突入電流は、直流出力回路に入力する交流電圧に起因するものが多い。
しかし、上記の構成によれば、三次巻線と三次側ダイオードの直列回路に対して、さらにインダクタンスの小さいインダクターまたは抵抗を直列に接続し、また、これらで構成された直列回路に対して並列に三次側コンデンサを接続したので、仮に一次巻線に突入電流があったとしても、挿入されたインダクターまたは抵抗によって、三次巻線での突入電流の発生が抑制される。
【0016】
また、本発明の照明用電源装置において、
前記トランスは、さらに、前記三次巻線と異なる巻線数の四次巻線を有し、
前記補助電源回路は、前記直流出力回路の入力電圧値に応じて、前記三次巻線と前記四次巻線のいずれを使うかを判断する判断手段と、
前記判断手段の判断に応じて、前記補助電源回路と前記三次巻線との接続、および、前記補助電源回路と前記四次巻線との接続を切り換える切り換え手段と、を有することが好ましい。
【0017】
または、本発明の照明用電源装置において、
前記三次側ダイオードのアノード側端子は、前記スイッチング素子がオンのときに生じる誘導起電力による前記三次巻線の正極側端子に接続されている。
前記トランスは、さらに四次巻線を有し、
前記誘導起電力による前記四次巻線の負極側端子は、前記三次側ダイオードと前記三次巻線の接続点に接続されている。
前記補助電源回路は、さらに、
前記誘導起電力による前記四次巻線の正極側端子にアノード側端子が接続された四次側ダイオードと、
該四次側ダイオードのカソード側端子と前記三次側コンデンサの負極側端子との間に接続された四次側コンデンサと、
前記直流出力回路の入力電圧値に応じて、前記三次側コンデンサの端子間電圧に前記制御回路を接続するか、前記四次側コンデンサの端子間電圧に前記制御回路を接続するかを判断する判断手段と、
前記判断手段の判断に応じて前記2つの接続を切り換える切り換え手段と、を有することが好ましい。
【0018】
以上の構成では、補助巻線としてトランスに三次巻線および四次巻線を設け、また、補助電源回路に判断手段および切り換え手段を設けた。判断手段および切り換え手段は、直流出力回路の入力電圧値に応じて、三次巻線から取り出した補助電力を用いるか、四次巻線から取り出した補助電力を用いるかを切り換えるためのものである。または、判断手段および切り換え手段は、直流出力回路の入力電圧値に応じて、三次巻線からの補助電力だけを用いるか、三次巻線と四次巻線の両方から取り出した補助電力を用いるかを切り換えるためのものでもよい。これらの構成によれば、例えば、直流出力回路に入力される交流電圧が100V系と200V系のように異なる電圧に切り換わるようになっている場合に、入力電圧に応じて適切な補助巻線に切り換えることができる。従って、補助電源回路での電力損失の増加を抑えることができる。
【0019】
また、本発明の照明器具は、前記照明用電源装置と、この照明用電源装置により点灯制御される照明負荷と、前記照明負荷の調光を制御する調光装置と、を備えることを特徴とする。
この構成によれば、照明器具の調光制御により、照明負荷に流れる直流電流が大きく変化する場合であっても、これに伴って補助電源回路から出力される補助電力が変動するということが無く、安定した調光制御が可能になる。