【実施例】
【0012】
実施例に係るヒュームフードにつき、
図1から
図11を参照して説明する。以下、
図3及び
図5の紙面左側をヒュームフードの正面側(前方側)として説明する。
図1の符号1は、化学実験等を行う際に使用されるヒュームフードである。このヒュームフード1は、筐体2の内部に処理室3を有し(
図3参照)、この処理室3内の空気を排気するための排気装置4が筐体2の上部に設けられている。
【0013】
図2及び
図3に示すように、筐体2の前面側の開口は、その上方に強化ガラス等で構成された固定ガラス板5が固定されている。また、固定ガラス板5の下方位置には、筐体2の開口を開閉するために昇降される前面扉6が設けられている。更に、この前面扉6は、固定ガラス板5と同様に強化ガラス等で構成された昇降ガラス板7を有しており、この昇降ガラス板7の下端縁には、使用者が把持する把持辺8が取り付けられている。使用者は、この把持辺8を掴んで前面扉6を昇降させることで、筐体2の開口を開閉させることができる。
【0014】
また、前面扉6は、その左右下端がワイヤ等で構成された吊架線材9,9に接続された状態で吊架されている。
図1に示すように、前面扉6を吊架する左右一対の吊架線材9,9は、複数の滑車10を介して筐体2の一方の側部(本実施例では左側部)に設けられた重量のある金属板等で構成される錘11に接続されている。この錘11の重量と前面扉6の重量とを同一にしてバランスを取ることで、使用者が前面扉6を軽い力で昇降できるようになっている。
【0015】
図2に示すように、筐体2の前面側の上部位置は、開閉可能な化粧パネル12で覆われている。また、この化粧パネル12を開放することで、筐体2の上部位置にある吊架線材9、滑車10、排気装置4、及び制御基板(図示略)等のメンテナンスを行うことができる。更に、化粧パネル12には、ヒュームフード1の作動状態を示す複数のランプ13が設けられており、このランプ13の点灯を制御する点灯基板(図示略)が化粧パネル12の裏面側に設けられている。
【0016】
図3に示すように、固定ガラス板5及び前面扉6は、筐体2の開口の左右側辺に設けられる左右一対のレール部材14に保持されている。また、前面扉6は、レール部材14内に配置される落下防止装置(図示略)を介して吊架線材9に吊架されている。この落下防止装置は、前面扉6の左右下端のそれぞれに設けられ、吊架線材9が切断されたり、吊架線材9が錘11から外れたりした場合などの非常時に作動して、前面扉6の落下を防止するために設けられている。
【0017】
また、前面扉6を上昇させて所定の開口量(約3分の1)まで開放した状態で、使用者が処理室3内に手を差し入れて実験を行うようにしている。なお、処理室3内で行う実験は、排気装置4を作動させながら行うようになっており、前面扉6下方の開口から処理室3内に空気が給気されるとともに、処理室3内の空気が排気装置4から排気されるようになっている。このように処理室3内を流れる空気は、常に一方向に流れるようになっており、処理室3内で発生したガス等が使用者に向かって逆流しないようになっている。更に、本実施例では、面風速が約0.5m/sが確保されるようになっている。
【0018】
また、前面扉6が一定の開口量以上に開かれると、前面扉6下方の開口から流れ込む給気量が排気装置4の排気量を上回り、処理室3内の空気が使用者側に向かって逆流してしまう虞がある。これを防止するめに、前面扉6が一定の開口量以上に開かないように規制するストッパ部材16が設けられている。なお、ストッパ部材16は、筐体2の開口の左右側辺のうち左方側にのみ設けられている(
図2参照)。また、処理室3内の清掃やメンテナンスを行う際には、ストッパ部材16を操作すると前面扉6の規制状態を解除できるようになっており、前面扉6を全開させることができる。
【0019】
図3に示すように、筐体2を構成する背面板17の前面側には、処理室3内の空気を排気装置4まで導くための排気通路18を形成する上下2枚のバッフル板19,20が取り付けられている。これらのバッフル板19,20のうち、下方側に配置される下部バッフル板20は、背面板17の前面に設けられる円筒形状をなすスペーサ部材21を介して取り付けられている。また、上方側に配置される上部バッフル板19は、その上端縁が筐体2を構成する天井板22の下面に設けられる保持フレーム23に保持されるとともに、その下端縁が下部バッフル板20の上部に設けられた固定具24に保持される。
【0020】
次に、上部バッフル板19を取り付ける際に用いる固定具24について
図4から
図11を参照して詳述する。なお、上部バッフル板19の下端縁は、左右方向に並設された3つの固定具24により保持されており、これらの固定具24は同一構成となっているので、所定の1つの固定具24を例として以下に説明する。
【0021】
図4に示すように、固定具24は、下部バッフル板20の上部に設けられた基台70と、この基台70の先端部に着脱可能に取り付けられ、上部バッフル板19の落下を阻止する落下阻止片71と、から構成されている。なお、基台70及び落下阻止片71は、ポリプロピレン等の合成樹脂で形成されている。更に、本実施例における基台70及び落下阻止片71は、樹脂成形が可能になっており、低コストで基台70及び落下阻止片71を量産することができる。
【0022】
また、基台70は、側面視で前方側に行くに従って窄まる略三角形状をなしている(
図8参照)。
図5に示すように、基台70は、その背面側が下部バッフル板20の上端部近傍の前面側に接触した状態で、下部バッフル板20の上端縁に掛止される掛止部72を有している。なお、この掛止部72は、基台70の背面上縁辺が後方に突出されることで形成されている。
【0023】
更に、基台70の下部には、取付ボルト等の螺合部材73が挿通される挿通孔74が形成されている。この挿通孔74に前方側から挿通された螺合部材73が、下部バッフル板20の配置孔75に配置されたスペーサ部材21に螺着されることで、基台70が下部バッフル板20に固定されている。
【0024】
なお、スペーサ部材21は、背面板17の後方から座金76を介して挿通された螺合部材77により固定されている。また、スペーサ部材21は、固定具24と同様に左右方向に3つ設けられており、下部バッフル板20は、その配置孔75にスペーサ部材21に先端部が嵌合され、下部バッフル板20の上端縁が水平をなすように取り付けられている。
【0025】
図5及び
図6に示すように、基台70には、上部バッフル板19の下端縁を滑動させる滑動面78が形成されている。この滑動面78は、上部バッフル板19を載置できる水平面となっている。また、基台70には、滑動面78の左右端部に傾斜部79が設けられており、上部バッフル板19が多少後方にずれても、この傾斜部79により上部バッフル板19の下端縁が滑動面78の前方側に寄せられるようになる。また、
図7に示すように、基台70の前端部には、落下阻止片71を取り付けるための左右方向に延びる係合条80が形成されている。
【0026】
図4に示すように、基台70の先端部に取り付けられる落下阻止片71は、正面視で正方形状をなす部材となっている。また、
図5及び
図10に示すように、この落下阻止片71の背面側には、基台70の前端部に係合される係合条81が形成されている。更に、基台70及び落下阻止片71にそれぞれ形成された係合条80,81は、側面視で互いに反転される略L字形状をなしている。
【0027】
また、落下阻止片71を基台70に取り付ける際には、係合条80,81同士を合わせた状態で、落下阻止片71を左右方向にスライド移動させるようにして係合条80,81同士を係合させる。なお、本実施例では、基台70を正面から見たときに、落下阻止片71を右側から左側までスライド移動させることで、落下阻止片71を取り付けられるようになっている。係合条80,81同士が係合された状態では、落下阻止片71が前後及び上下方向に移動不能に取り付けられる。
【0028】
図7及び
図10に示すように、基台70の係合条80の一端側及び落下阻止片71の係合条81の他端側には、それぞれ係合条80,81の溝内に突出される壁部として構成された停止部82,83が形成されている。そして、落下阻止片71は、基台70の係合条80に沿ってスライド移動される際に、その一端側の停止部82に当接されることで、落下阻止片71のスライド移動が停止される。同様に、落下阻止片71の係合条81の他端側の停止部83に基台70が当接されることでも、落下阻止片71のスライド移動が停止される。
【0029】
図5に示すように、落下阻止片71が基台70に取り付けられると、基台70の滑動面78の先端部から落下阻止片71が立設されるようになる。そのため、落下阻止片71により滑動面78に載置された上部バッフル板19の下端縁の落下を阻止することができる。
【0030】
図9から
図11に示すように、落下阻止片71の背面側の中央部には、傾斜部84が設けられており、上部バッフル板19が多少後方にずれても、この傾斜部84により上部バッフル板19の下端縁が滑動面78に寄せられるようになる。なお、この傾斜部84は、落下阻止片71の補強部ともなっている。
【0031】
図3及び
図5に示すように、上部バッフル板19を取り付ける際には、まず、基台70から落下阻止片71を外した状態にしておく。そして、上部バッフル板19の上端縁を前述した天井板22の保持フレーム23に保持させる。なお、保持フレーム23は、天井板22の左右方向に延設されるフレーム状の部材であり、その下面には、上部バッフル板19の上端縁が嵌合される溝が形成されている。
【0032】
そして、上部バッフル板19の下端縁と基台70の滑動面78とが同じ高さ位置になるまで持ち上げて、上部バッフル板19の下端縁を前方から後方に向かって水平方向に移動させることで、上部バッフル板19を基台70上に載置する。そして、基台70に落下阻止片71を取り付けて作業を完了する。
【0033】
なお、上部バッフル板19を取り外す際には、まず、基台70から落下阻止片71を外した状態にしておく。そして、上部バッフル板19の下端縁を後方から前方に向かって水平方向に移動させることで、上部バッフル板19の下端縁が基台70の滑動面78上で滑動されて基台70から外れるとともに、上部バッフル板19の上端縁が保持フレーム23から外れて、上部バッフル板19が取り外される。
【0034】
以上、本実施例における固定具24にあっては、固定具24が、上部バッフル板19の下端縁を滑動させる滑動面78を有する基台70を備え、滑動面78が基台70の前端部まで延設されており、かつ上部バッフル板19の落下を阻止する落下阻止片71が基台に取り付けられることで、上部バッフル板19を固定具24に取り付ける際に、落下阻止片71を基台70から外せば、上部バッフル板19の下端縁を基台70の滑動面78上を滑動させて移動させることで上部バッフル板19を基台70に設けることができる。また、上部バッフル板19を固定具24を取り外す際に、落下阻止片71を基台70から外せば、上部バッフル板19の下端縁を基台70の滑動面78上を滑動させて移動させることで上部バッフル板19を基台70から取り外すことができる。そのため上部バッフル板19の下端縁を固定具24に対して落とし込んだり、または上部バッフル板19の下端縁を固定具24から持ち上げて外したりすることなく、上部バッフル板19を固定具24に着脱させることができるので、上部バッフル板19の固定具24に対する着脱作業を容易に行うことができる。
【0035】
また、落下阻止片71は、基台70に対して左右方向にスライド移動されることで、基台70に着脱されることで、落下阻止片71に対しては、上方向または後方向から上部バッフル板19の荷重が加わるようになっているため、落下阻止片71が基台70に対して左右方向にスライド移動されて着脱されることで、上部バッフル板19から落下阻止片71に加わる荷重が、落下阻止片71の着脱方向と異なる方向から加わるようになり、落下阻止片71と基台70との取付状態に影響を与えずに済むようになり、特に、落下阻止片71を基台70から取り外す作業を行い易くなる。
【0036】
また、落下阻止片71及び基台70には、互いに係合される左右方向に延びる係合条80,81が形成され、各係合条80,81は、各係合条80,81が互いに係合された状態で、落下阻止片71の左右いずれか一方向への移動を停止する停止部82,83を有することで、落下阻止片71を基台70に取り付ける際に、落下阻止片71の取付方向である一方向への移動が停止部82,83により停止されるため、落下阻止片71の基台70に対する左右方向の位置決めがなされるようになるので、落下阻止片71を基台70における左右方向の定位置に配置することができる。
【0037】
また、固定具24は、処理室3の背面板の上部側に配置される上部バッフル板19の下端縁を支持するものであり、基台70は、処理室3の背面板の下部側に配置される下部バッフル板20の上端縁に掛止される掛止部72を有することで、基台70の掛止部72が下部バッフル板20の上端縁に掛止されるので、この下部バッフル板20の上端縁を利用して、上部バッフル板19の下端縁が載置される基台70の滑動面を水平に保持することができる。
【0038】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0039】
例えば、前記実施例では、上部バッフル板19の下端縁を保持するための本発明の固定具24を用いているが、本発明の固定具24を下部バッフル板20の下端縁を保持するために用いてもよい。
【0040】
また、前記実施例では、基台70の係合条80及び落下阻止片71の係合条81の双方に停止部82,83が設けられているが、基台70の係合条80または落下阻止片71の係合条81のいずれか一方に停止部が設けられる態様であっても、落下阻止片71の位置決めを行うことができる。