特許第6106422号(P6106422)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6106422
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】輸送用コンテナ
(51)【国際特許分類】
   B65D 19/12 20060101AFI20170316BHJP
【FI】
   B65D19/12 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-274703(P2012-274703)
(22)【出願日】2012年12月17日
(65)【公開番号】特開2014-118185(P2014-118185A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000153546
【氏名又は名称】株式会社日立物流
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 隆史
【審査官】 西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−348033(JP,A)
【文献】 特開2007−039053(JP,A)
【文献】 実開昭62−048940(JP,U)
【文献】 実開昭57−062957(JP,U)
【文献】 実開昭51−052462(JP,U)
【文献】 特開2000−281063(JP,A)
【文献】 特公昭52−048554(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 19/00−19/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、このベースに立設した背面枠と、この背面枠にヒンジを介して取り付けた左
右一対の側面枠と、前記ベースの前側角部に立設した左右一対の正面支柱と、この一対の
正面支柱に両端部を係止した複数のステイバーとを有し、前記ベースにフォークリフトの
フォークが差し込み可能に形成された輸送用コンテナにおいて、
前記背面枠の上端部であって左右の端部近傍と前記一対の正面支柱の上端部とを接続す
る上面段積みレールと、前記正面支柱の下端部であって左右の両外側に一端を有し前記ベ
ースの下面を前後に延びる下面段積みレールとを設け、前記下面段積みレールの前後端部
を平板で閉塞し、前記一対の正面支柱に、前記ステイバーを保持する保持部材と前記側面枠を保持する保持手段を形成し、前記側面枠を前記背面枠周りにほぼ270°回転可能にし、
輸送用コンテナを複数段段積みする場合には前記上面段積みレールを前記下面段積みレ
ールに重ね合わせ、輸送用コンテナを複数段ネスティングする場合は、左右の前記側面枠
を前記背面枠の背面に重ね合せて回動保持することを特徴とする輸送用コンテナ。
【請求項2】
前記ヒンジは上下方向に離隔して2か所配設されており、上下に配置された前記ヒンジ
間にスタビライザーを配置したことを特徴とする請求項1に記載の輸送用コンテナ。
【請求項3】
ベースと、このベースに立設した背面枠と、この背面枠にヒンジを介して取り付けた左
右一対の側面枠と、前記ベースの前側角部に立設した左右一対の正面支柱と、この一対の
正面支柱に両端部を係止した複数のステイバーとを有し、前記ベースにフォークリフトの
フォークが差し込み可能に形成された輸送用コンテナにおいて、
前記背面枠の上端部であって左右の端部近傍と前記一対の正面支柱の上端部とを接続す
る上面段積みレールと、前記正面支柱の下端部であって左右の両外側に一端を有し前記ベ
ースの下面を前後に延びる下面段積みレールとを設け、前記下面段積みレールの前後端部
を平板で閉塞し、前記一対の正面支柱に、前記ステイバーを保持する保持部材と前記側面枠を保持する保持手段を形成し、前記側面枠を前記背面枠周りにほぼ270°回転可能にし、
輸送用コンテナを複数段段積みする場合には前記上面段積みレールを前記下面段積みレ
ールに重ね合わせ、輸送用コンテナを複数段ネスティングする場合は、左右の前記側面枠
を前記背面枠の背面に回動保持し、
前記ベースの上面に、前記ステイバーの両端部が嵌合するステイバー差込み用穴を形成
し、ネスティング時に前記ステイバーを前記ベースに保持することを特徴とする輸送用コンテナ。
【請求項4】
前記上面段積みレール及び下面段積みレールは、同サイズのアングル材を山形に配置し
て形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の輸送用コン
テナ。
【請求項5】
前記ベースの占有面積は、横方向がほぼ2150mmで奥行き方向がほぼ1700mm
であり、床面から前記上面段積みレールまでの高さがほぼ1800mmであることを特徴
とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の輸送用コンテナ。
【請求項6】
ネスティング時には、輸送用コンテナを5段重ねてフォークリフトで移動可能としたこ
とを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の輸送用コンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を収容しフォークリフトで搬送可能な輸送用コンテナに係り、特に積み重ね使用可能で、かつ不使用時にはネスティング積み重ね保管可能な輸送用コンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物や各種資源ごみなどを回収し再利用するリサイクルシステムの確立に伴い、それらを運搬する専用のコンテナが求められている。そのため、使用後の運搬および保管に便利なように、折り畳み式のものが種々提案されている。
【0003】
例えば特許文献1では、側面パネル等の着脱が不要で、簡単容易にネスティングすることができる輸送用パレットを得るために、後ろ側左右一対の支柱から前側左右一対の支柱までを荷支持台部の周縁に沿って閉じるL型側面パネルを設けている。そしてこのL型側面パネルは、背面パネルに重なる折り畳み姿勢を形成できるよう、後側左右一対の支柱に揺動可能に軸支されている。さらにこのL型側面パネルのいずれか一方の前側端には、前面パネルを折り畳み可能に設けている。これにより、前側パネル及び左右一対のL型側面パネルを、背面パネルの前側に重ねるように折り畳んで、ネスティング積み重ねが可能にしている。
【0004】
また、特許文献2では、着脱自在な前側パネルを備えた入れ子式にネスティングが可能な搬送用パレットを得るために、底板部と左右両側パネルと、後ろ側パネルと、着脱自在に前側パネルを備えた入れ子式の搬送用パレットにおいて、後ろ側パネルの背面に、取り外した前側パネルを着脱自在に支持している。
【0005】
さらに、非特許文献1には、各社のネスティングラックが開示されている。これらのラックは、代表的には、4本の上下に延びる支柱と各支柱の上端部を接続し、積み重ね時に位置決め材として用いられる前後に延びる2本のガイド部材と、後ろ側の2本の支柱を接続する連結部材と床面を構成する網状または平面状の床部材とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−348033号公報
【特許文献2】特開2002−37259号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Google 画像検索、”ネスティングラック”、[online][平成24年11月16日検索]、インターネット(URL:http://www.google.com/search?q=%E3%83%8D%E3%82%B9%E3%83%86%E3%8…)(特にその第1〜第3頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
廃家電等に使用される輸送用コンテナでは、使用時には2段重ね等の段積み構成となり、不使用時には保管スペース確保の点から5段から10段にも及ぶいわゆるネスティング積み重ね構成となっている。そのため、段積み構成時には容易に上下のコンテナの位置決めが可能となるとともに、下段部のコンテナには、上段部の荷重を支持できることが求められる。一方、ネスティング時には下段のコンテナに上段のコンテナが容易にアクセスできること、およびネスティングに適したコンテナ形状に変換できること、具体的には前側枠(パネル)や左右の両側枠(パネル)を容易に折り畳めるまたは取り外せること、使用時のために素早く元の形状に戻せること、部材を取り外す場合には部材の遺失の恐れを少なくすること、等の多くの事柄が要求される。
【0009】
そのため、上記特許文献1の搬送用パレットでは、両側面パネルを背面パネル周りに回転可能にして、ネスティング時に背面パネルの前側に両側面パネルを保持している。しかしながらこの公報に記載の搬送用パレットでは、使用時に物品が載置される荷支持台部内に作業者が入り込むようになるので、廃家電等を収容した後の用済み後に折り畳んで使用する場合には、破損品が荷支持台部内に落ちている場合もあり、作業への支障をきたす場合もある。
【0010】
また、背面パネルの前側に両側面パネルを保管するとネスティング時の位置ずれが大きくなり、保管スペース効率が低下し、転倒のリスクが高くなる。さらに、搬送用パレットを使用するために段積みする時は下段の搬送用パレットの位置決め用凸上部材を上段の搬送用パレットの溝型部材に嵌合することが記載されているものの、2段の搬送用パレットを安定保持することについての考慮は不十分である。
【0011】
上記特許文献2では、背面パネルが固定式である上に左右両側パネルも固定式とし、前側パネルだけ着脱自在にすることが記載されている。この公報に記載の搬送用パレットではネスティングする際にも前側パネルだけを取り外すので、ネスティングに対する準備は簡単になる。しかし、両側面パネルおよび背面パネルが固定式であるため、ネスティングにおいては上段の搬送パレットを下段の搬送パレットに正確に位置決めして上段の搬送パネルを下段の搬送パレットに嵌合する必要があり、フォークリフトの操作の作業性が低下するおそれがある。
【0012】
非特許文献1には、各社のネスティングラックが開示されている。ネスティングラックは輸送用コンテナと異なり、原則として側面及び背面に抜け防止用の格子状衝立部(パネル)を有していない。必要な場合には、別体として格子状の衝立部(パネル)をラックの周囲に配置するようになっており、パネル一体型のコンテナで、段積みおよびネスティングの双方を簡単な構成でかつ容易に形状変化させて仕様を満足させることについては考慮されていない。また、本発明の対象となる比較的大型のコンテナでは、例えば積載量10tのトラックに数台を積み込む程度の大型である。そのため、各側面枠または柵は、重量20kgオーダーになり、この点でもネスティングラックとはその使用状況が相違する。
【0013】
本発明は上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は、比較的大型の輸送用コンテナを1人の作業者で安全かつ迅速に組み立てや折り畳みすることができるとともに、多段のネスティングと段積みの双方を簡単な構成で可能にすることにある。また、輸送用コンテナの荷載置部に作業者が立ち入らずに、上記作業をできるようにすることもその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成する本発明の特徴は、ベースと、このベースに立設した背面枠と、この
背面枠にヒンジを介して取り付けた左右一対の側面枠と、前記ベースの前側角部に立設し
た左右一対の正面支柱と、この一対の正面支柱に両端部を係止した複数のステイバーとを
有し、前記ベースにフォークリフトのフォークが差し込み可能に形成された輸送用コンテ
ナにおいて、前記背面枠の上端部であって左右の端部近傍と前記一対の正面支柱の上端部
とを接続する上面段積みレールと、前記正面支柱の下端部であって左右の両外側に一端を
有し前記ベースの下面を前後に延びる下面段積みレールとを設け、前記下面段積みレール
の前後端部を平板で閉塞し、前記一対の正面支柱に、前記前面枠を保持する保持部材と前
記側面枠を保持する保持手段を形成し、前記側面枠を前記背面枠周りにほぼ270°回転
可能にし、輸送用コンテナを複数段段積みする場合には前記上面段積みレールを前記下面
段積みレールに重ね合わせ、輸送用コンテナを複数段ネスティングする場合は、左右の前
記側面枠を前記背面枠の背面に重ね合せて回動保持したことにある。
【0015】
そしてこの特徴において前記ヒンジは上下方向に離隔して2か所配設されており、上下に配置された前記ヒンジ間にスタビライザーを配置するのが望ましく、前記ベースの上面に、前記前面枠を構成するステイバーの両端部が嵌合するステイバー差込み用穴を形成し、ネスティング時に前記ステイバーを前記ベースに保持することが好ましい。
【0016】
また、上記特徴において、前記上面段積みレール及び下面段積みレールは、同サイズのアングル材を山形に配置して形成されているのがよく、前記ベースの占有面積は、横方向がほぼ2150mmで奥行き方向がほぼ1700mmであり、床面から前記上面段積みレールまでの高さがほぼ1800mmであってもよい。さらに、ネスティング時には、輸送用コンテナを5段重ねてフォークリフトで移動可能とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、背面枠にヒンジ部を介して左右枠を取り付け、左右枠を背面枠の背面側に保持できるようにしたので、比較的大型の輸送用コンテナを1人の作業者で安全かつ迅速に組み立てや折り畳みすることができるとともに、多段のネスティングと段積みの双方を簡単な構成で可能である。また、輸送用コンテナの荷載置部に作業者が立ち入らずに、左右枠及び前面枠の折り畳みや復元、取付け、取り外し作業が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る輸送用コンテナの一実施例の斜視図である。
図2図1に示した輸送用コンテナが備える右側面枠と正面支柱並びに背面枠との関係を詳細に示す図である。
図3図1に示した輸送用コンテナの部分図であり、段積みを説明する図である。
図4図1に示した輸送用コンテナを2段に段積みした状態を示す正面図及び側面図である。
図5】本発明に係る輸送用コンテナをネスティングする際の手順を説明する図である。
図6図1に示した輸送用コンテナを複数段段積みした状態の斜視図である。
図7図1に示した輸送用コンテナを複数段段積みした状態の正面図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る輸送用コンテナは、家電製品等の廃棄物や各種資源ごみなどの運搬に使用されることが多いが、それらに限らず、柵の隙間からこぼれ落ちないものであれば適用できる。ただし、柵状に形成してあるので、最大積載質量は等分布荷重で1000kg程度までとする。また、輸送用コンテナは、フォークリフトで使用するパレットと同一構造のベースを底部に有し、このベースの上面側であって背面に柵状の枠を、この背面枠に左右両側面枠を、ヒンジを介して取り付けた構造になっている。また前面は、複数のステイバーで封止して柵状の枠と同様の効果が得られるようにしている。さらに、空荷のときには、左右の側面枠を背面枠の背面側に折り畳んで10段までのネスティングを可能としている。
【0020】
また、本発明に係る輸送用コンテナは、トラック積載を前提にして大型に形成されている。ここで大型とは、例えば1人では支えにくいかもしくは支えられない形状、または一人では支えられない外枠部を有することを意味する。このように大型の輸送用コンテナではあるが、輸送用コンテナに搬送物を充填しても、2段に段積みして保管することが可能である。
【0021】
以下、本発明に係る輸送用コンテナの一実施例を、図面を用いて説明する。図1は、本発明に係る輸送用コンテナ100の一実施例の斜視図である。図1では、輸送用コンテナ100とともに運搬または輸送用コンテナ100内に保管される物品(搬送物)は、図示を省略している。
【0022】
輸送用コンテナ100は、略長方形状を有するベース40と、このベース40の上面であって背面側に配置された背面枠10を有する。背面枠10には、ヒンジ26を介して左右一対の側面枠20、30が取り付けられている。ヒンジ26は、上下方向に間隔をおいて2か所設けられている。
【0023】
底面部を構成するベース40は、矩形板からなる床面板43と、フォークガイド41を有している。ベース40の下面であって左右両端には、前後方向に延びる左段積みレール42a及び右段積みレール42bが設けられている。ベースの上面には、この輸送用コンテナ100の前面を封止するためのステイバー51を保持するステイバー差込み用穴43a、43bが形成されている。ステイバー51は両端部が90°折れ曲がったかすがい形状となっている。ステイバー差込み用穴43a、43bには、ステイバー51の折れ曲がり部が嵌合する。
【0024】
背面枠10は、ベース40の後端であって左右両端部よりもやや内側に一端部を取り付け、上方に延びる右背面支柱16aおよび左背面支柱16bと、左右両背面支柱16a、16bの上端部が取り付けられ横方向に延びる上面フレーム13とで外枠部が形成される。この外枠部に、上下方向に延び間隔をおいて配置された複数本の縦フレーム16cと、各縦フレーム16cの上下方向中間部を連結し横方向に延びる横桟とが取り付けられている。
【0025】
ベース40の前側端部であって、左右端には上方に延びる右正面支柱14および左正面支柱15が設けられている。左右正面支柱14、15の前面側には、輸送用コンテナ100を使用時にステイバー51の折れ曲がり部を嵌合するためのステイバー受け金具14c、15cが、上下方向に間隔をおいて複数個設けられている。左右正面支柱14、15の下端部であって前面側には、左右の下面段積みレール42a、42bの端部を閉塞する正面コーナープレート14b、15bが取り付けられている。図示を省略したが、左右の下面段積みレール42a、42bの後端部も、コーナープレートで閉塞されている。
【0026】
右正面支柱14の上部と背面枠10の上面フレーム13の右端部とを右上面段積みレール11が、左正面支柱15の上部と背面枠10の上面フレーム13の左端部とを左上面段積みレール12が、それぞれ連結している。2個の輸送用コンテナ100を段積みする場合に、下側の輸送用コンテナ100の右上面段積みレール11が上側の輸送用コンテナ100の右下面段積みレール42aと、下側の輸送用コンテナ100の左上面段積みレール12が上側の輸送用コンテナ100の左下面段積みレール43aに重なり合って、上側の輸送用コンテナ100を下側の輸送用コンテナ100に安定して保持することが可能になる。
【0027】
次に本発明の特徴の一つである左右の側面枠20、30について、図2により説明する。なお、以下の説明では右側面枠20のみを取り上げるが、左側面枠30も同様の構成であるので、説明を省略する。図2(a)は、右側面枠20の正面図であり、図2(b)はこの右側面枠20の一部を構成する上ストッパ部23の正面図、図2(c)は右側面枠20を右背面支柱16aに回動可能に取り付けるヒンジ26の横断面図、図2(d)は右正面支柱14の一部を取り出した斜視図である。
【0028】
右側面枠20は、1本の丸パイプを折り曲げた外周フレーム21と、この外周フレーム21の両端部を連結する外周フレーム22とで、D字状に形成されている。そして上下方向に延び前後方向(図2(a)では左右方向)に間隔をおいて配置された複数の縦フレーム29の両端部が、外周フレーム21に取り付けられている。また、各縦フレーム29の中間部を連結するように横方向に延びる横桟25が配置されている。右側面枠20の前側であって上方角部および下方角部には上ストッパ部23及び下ストッパ部24がそれぞれ形成されている。上下ストッパ部23、24を連結するように、上下方向に延びる外周フレーム29aが配置されている。
【0029】
上ストッパ部23及び下ストッパ部24はほぼ同じ構成であるが、ストッパ部23、24を区画するストッパ取り付けフレーム23aが上下対称に形成されている点が相違している。図2(b)に示すように、L字型に曲げられたストッパ取り付けフレーム23aの上下に延びる部分と、上下に延びる外周フレーム22間を、長尺の平板で形成されたストッパ取り付けプレート23bが横方向に接続している。
【0030】
ストッパ取り付けプレート23bの前側端及び前後方向中間部(図2(b)では左右方向中間部)には、円筒形のストッパ支持パイプ23c、23dが取り付けられている。2つのストッパ支持パイプ23c、23d間であってストッパ取り付けプレート23bの下端側には円弧状に折り曲げられたストッパ抜け防止プレート23eが取り付けられている。横方向に延びる丸棒で形成されたストッパ23fの軸方向中間部にはストッパ取っ手23gがストッパ23fに直角に付設されている。
【0031】
一方、このストッパ23fに対向する右正面支柱14の背面側のストッパ14fに対応する位置近傍には、上下方向に長い長孔が形成されたストッパ差込みプレート14eが取り付けられている。ストッパ差込みプレート14eの長孔は、ストッパ差込み用穴14fとして用いられる。
【0032】
このように構成したストッパ部23を用いて、右側面枠20を右正面支柱14に保持するときは、初めにストッパ23fのストッパ取っ手23gよりも後ろ側の部分をストッパ支持パイプ23d内に保持して、ストッパ取っ手23gをストッパ抜け防止プレート23eの後ろ側(図2(b)で右側)で下向きに位置させ保持する。
【0033】
次いで、右側面枠20を右正面支柱14に対向する位置に位置付けて、ストッパ取っ手23gを上方に回動させた後、ストッパ抜け防止プレート23eを超えて前方に位置させる。ストッパ23fの前部がストッパ支持パイプ23cに挿入され、さらに右正面支柱14に取り付けたストッパ差込みプレート14eのストッパ差込み用穴14fにストッパ23fの先端部が挿入され、ストッパ23fが右正面支柱14に係合する。その後、ストッパ23fの意図しない抜けを防止するため、ストッパ取っ手23gを回動させ、ストッパ抜け防止プレートの前端とストッパ支持パイプ23cの後端との間の隙間にストッパ取っ手23gを保持する。これにより、右側面枠20は確実に右正面支柱14に保持される。
【0034】
ストッパ23fを外す場合は、上記の逆の手順をたどる。その際、右側面枠20が右正面支柱14から開放されたら、ストッパ抜け防止プレート23eと後側のストッパ支持パイプ23dとの間に形成される隙間に、ストッパ取っ手23gを位置決めする。この場合、ストッパ23gの前側先端は、外周フレーム22よりも右側面枠20の内部に位置するので、ストッパ23gが損傷する恐れも格段に低下する。
【0035】
上述したように、右側面枠20は右背面支柱16aにヒンジ26を介して取り付けられている。このヒンジ26の詳細を、図2(c)を用いて説明する。なお、上下に間隔をおいて配置される2個のヒンジ26は同一構造である。
【0036】
右側面枠20を構成する外周フレーム21は、右側面枠20の回動の際に摩擦抵抗が少なくなるよう、円筒形状をしている。同様の理由で、右背面支柱16aも円筒形状をしている。ここで、外周フレーム21の直径は、右背面支柱16aの直径よりも小さい。
【0037】
外周フレーム21と右背面支柱16aは、間隔をおいて配置されている。そして、外周フレーム21の外周部を薄板状のヒンジプレート26aが、右背面支柱16aの外周部を薄板状のヒンジプレート26bがそれぞれ覆っている。各ヒンジプレート26a、26bの両端部は互いにオーバーラップしている。
【0038】
上下に配置された2個のヒンジ26間であって、外周フレーム21と右背面支柱16aの間の隙間には、上下に延びるスタビライザー28が配置されている。スタビライザー28およびヒンジプレート26a、26bのオーバーラップ部は、ボルト26c及びナット26dで締結されている。スタビライザー28は、上部に配置したヒンジ26と下部に配置したヒンジ26の回動角度が相違して右側面枠20が歪んで回動するのを防止し、上下のヒンジ26の回動角度を同期させる。このようなヒンジ26の構成としたので、右側面枠20は右背面支柱16aの周りに自由に回動できる。
【0039】
図2(d)に、正面支柱14、15の前面に設けたステイバー受け金具14c、15cの詳細を示す。ステイバー受け金具14c、15cは、平板をC字状に折り曲げた形状であり、ステイバー51の折り曲げた先端部がステイバー受け金具14c、15cに貫挿される。ステイバー受け金具14c、15cは、上下方向に間隔をおいて、5か所程度取り付けられている。なお、正面支柱14、15は角型鋼管製であり、そのベース40に近い根元部は補強のため支持棒14d、15dを内部に保持している。
【0040】
次に、このように構成した輸送用コンテナ100の段積みおよびネスティングについて説明する。初めに輸送用コンテナ100を2段に段積みする場合について、図3及び図4を用いて説明する。図3は、輸送用コンテナ100の段積みの様子を、下側の輸送用コンテナ100の左側の上端部と上側の輸送用コンテナの左側の下端部100だけを取り出して示した正面図(図3(a))及び側面図(図3(b))である。輸送用のコンテナ100の段積み作業では、左右をほぼ同時に段積み状態にする。また、輸送用コンテナ100の段積みは、輸送用コンテナ100の内部に物品が充填された状態でフォークリフトを使用して実行される。段積みは安全性を考慮して2段までとしているが、理論的には3段以上の段積みも可能である。
【0041】
上側の輸送用コンテナ100の左正面支柱15の下端部に隣り合って、左下面段積みレール42bが配設されている。左下面段積みレール42bは、等辺山形鋼の角部を上側にして伏せた形状で配置されており、下面側に凹部が形成されている。一方、下側の左正面支柱15bの上端部には、C字状に折り曲げた上面プレート15aが被せられており、上面プレート15aの左右方向の内側端部付近には、左下面段積みレール42bと同サイズの左上面段積みレール12が角部を上側にして伏せた形状で配置されている。左上面段積みレール12の前後方向端部には、左上面段積みレールの変形等を防止するために、補強プレート12aが上面プレート15aに固定されている。
【0042】
輸送コンテナ100の段積みの際には、上面段積みレール12の角部に下面段積みレール42bの凹部が重なるように、上側の輸送コンテナ100を引き下げる。その際、上側の輸送コンテナ100の下面段積みレール42bの前後方向端部が正面コーナープレート15bで閉塞されているので、上面段積みレール12と下面段積みレール42bの前後方向の食い違いを所定範囲内に収めることができる。これにより段積み後の荷崩れを防止できる。また、正面コーナープレート15bの前面に、下面段積みレール42bの断面3角形状をマーキングしておく(図4参照)ことにより、フォークリフトの作業者による、下面段積みレール42bと上面段積みレール12との位置合わせ作業を迅速化できる。
【0043】
図4は輸送用コンテナを2段に段積みした状態を示す正面図(図4(a))及び側面図(図4(b))である。上側の輸送用コンテナ100(C)と下側の輸送用コンテナ100(D)は、正面コーナープレート14b、15b上に表示したマーク14e、15eを利用して段積みされている。2段に段積みしたときの輸送用コンテナ全体の高さHは約4000mmであり、幅Wは約2280mm、奥行きLは約2150mmである。
【0044】
次に、輸送用コンテナ100のネスティングの例を、図5ないし図7を用いて説明する。図5は、ネスティングの手順を説明する図であり、輸送用コンテナ100の上面図である。初めに、前面枠を形成するステイバー51を、左右の正面支柱14、15から取り外し、ベース40に形成したステイバー差込み用穴43a、43bにその端部を差し込んで保持する。この状態を、図5(b)に示す。
【0045】
次に、左右の側面枠20、30に形成した上下ストッパ部23、24(図2(a)参照)を外し、左右の側面枠20、30を、ヒンジ26を利用して背面支柱16a、16bの周りに外側に回動させる(図5(b))。そして、ほぼ270°回動させて、右側面枠20、左側面枠30の順に、背面枠10の背面側に折り畳む。折り畳み終えたら、図示しないゴム紐等で背面枠10と右側面枠20および左側面枠30を相互に締結・保持する。この状態が、図5(c)である。左右側面枠20、30を折り畳み終えたら、フォークリフトのフォークをベース部に形成したフォークガイド41に挿入して輸送用コンテナ100を移動させる。
【0046】
図5(d)は2個の輸送用コンテナ100(A)、100(B)をネスティングする前の状態であり、図5(f)はネスティング後の状態である。下側の輸送用コンテナ100(B)の上側に前側から上側の輸送用コンテナ100(A)を差し込むように重ねる。2個の輸送用コンテナ100(A)、100(B)は、背面枠10の背面に折り畳んだ左右の側面枠20、30の厚さ分だけ前後方向の位置を変えながら積層される。
【0047】
複数の輸送用コンテナ100をネスティングした後のネスティング保管コンテナ200を、図6及び図7に示す。図6は5個の輸送用コンテナ100をネスティングした状態を示す斜視図であり、図7は10個の輸送用コンテナ100をネスティングした状態を示す正面図(図7(a))及び側面図(図7(b))である。上述したように前後方向には左右側面枠20、30の折り畳み量だけ段数を重ねるごとに輸送用コンテナ100の位置が移動する。また段数を重ねると、上下方向にはほぼベース40部の厚さ分だけ高くなる。左右方向の長さは変化しない。したがって、10段積層した場合であっても、幅方向長さWは約2280mmであり、高さは約3600mm、奥行き方向長さL1は約2760mmである。したがって、ネスティングにより、少ないスペースに多数の輸送用コンテナ100を保管することができる。
【0048】
上記実施例では、右側面枠を背面枠の背面側に折り畳んだ後、左側面枠を折り畳んでいるが、折り畳む順序はどちらが先でもかまわない。また、左右の側面枠を正面支柱に係止するストッパ部の形状も上記実施例に限るものではなくチェーン等で固定するものであってもよい。ただし、部品の紛失防止等の点で上記実施例に記載したものが好ましい。さらに左右側面枠及び背面枠を構成する各部品は、円管を加工したものを用いると経済的であると共に加工が容易になる。
【0049】
上記実施例によれば、段積みレールに型鋼(アングル材または等辺山形鋼)を用い、左右側面枠や背面枠前面枠に円管等の規格品を用いているので、輸送用コンテナを経済的に構成できる。また、ストッパ部やヒンジ部を簡素な構成としたので、多年の使用においても確実に左右側面枠を正面支柱に保持したり背面支柱周りに回動できる。
【0050】
また上記実施例によれば、ベースの上面を鋼板で覆い、背面枠及び左右側面枠を格子状に形成しているので、細かな部品がこの輸送用コンテナから落下したり、突き出たりするのを防止できる。さらに、ベースの四方からフォークリフトのフォークを差し込むことが可能であり、フォークリフトによる運搬作業が効率化する。
【符号の説明】
【0051】
10…背面枠、11…右上面段積みレール、12左上面段積みレール、12a…補強プレート、13…上面フレーム、14…右正面支柱、14a…上面プレート、14b…正面コーナープレート、14c…ステイバー受け金具、14d…支持棒、14e…ストッパ差込み部プレート、14f…ストッパ差込み用穴、15…左正面支柱、15a…上面プレート、15b…正面コーナープレート、15c…ステイバー受け金具、15d…支持棒、16a…右背面支柱、16b…左背面支柱、16c…縦フレーム、17…横桟、20…右側面枠、21、22…外周フレーム、23…上ストッパ部、23a…ストッパ取り付けフレーム、23b…ストッパ取り付けプレート、23c、23d…ストッパ支持パイプ、23e…ストッパ抜け防止プレート、23f…ストッパ、23g…ストッパ取っ手、24…下ストッパ部、25…横桟、26…ヒンジ、26a、26b…ヒンジプレート、26c…ボルト、26d…ナット、28…スタビライザー、29…縦フレーム、29a…外周フレーム、30…左側面枠、40…ベース、41…フォークガイド、42a…右下面段積みレール、42b…左下面段積みレール、43…床面板、43a、43b…ステイバー差込み用穴、51…ステイバー、61、62…回転、63…積み重ね、100…輸送用コンテナ、200…ネスティング保管コンテナ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7