特許第6106446号(P6106446)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6106446
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】感知センサー及び感知装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 5/02 20060101AFI20170316BHJP
【FI】
   G01N5/02 A
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-14139(P2013-14139)
(22)【出願日】2013年1月29日
(65)【公開番号】特開2014-145651(P2014-145651A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2015年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091513
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133776
【弁理士】
【氏名又は名称】三井田 友昭
(72)【発明者】
【氏名】茎田 啓行
(72)【発明者】
【氏名】忍 和歌子
【審査官】 北川 創
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−145566(JP,A)
【文献】 特開2007−078490(JP,A)
【文献】 特開2005−274165(JP,A)
【文献】 特開2008−058086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 5/02
G01N 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料液中の感知対象物を圧電振動子の周波数変化に基づいて測定するための感知センサーにおいて、
発振周波数を測定するための測定器に接続される接続端子を備えると共に、一面側に凹部が形成された配線基板と、
圧電片に励振電極を設けて構成され、前記凹部を塞ぎ且つ振動領域が凹部と対向するように前記配線基板に固定されると共に、励振電極が前記接続端子に電気的に接続され、一面側に試料液中の感知対象物を吸着する吸着膜が形成された圧電振動子と、
前記圧電振動子を含む配線基板の一面側との間に、一端側から他端側へ向けて毛細管現象により試料液を流通させる流路を形成すると共に、当該流路の一端側の天井面に開口する試料液の注入口をなす注入側貫通孔と当該流路の他端側の天井面に開口する試料液の流出口をなす流出側貫通孔とを備えた合成樹脂からなる下部側流路形成部材と、
前記下部側流路形成部材に形成され、前記流出側貫通孔の上側がその底部に開口する凹部と、
前記下部側流路形成部材を前記配線基板との間に押圧した状態で挟み込む上部側部材と、
前記流出側貫通孔に設けられ、前記流路内の試料液を毛細管現象により吸い上げるための多孔質のフィルタと、
前記フィルタにより吸い上げられた試料液を貯留するために、前記下部側流路形成部材に形成された前記凹部を塞ぐことにより廃液領域を形成すると共に、前記フィルタの上面に接するように設けられ、前記下部側流路形成部材よりも試料液に対する親和性が高い材質よりなる、下部側流路形成部材とは独立した板状の部材である廃液領域形成部材と、
前記流路に試料液を流通させるために前記廃液領域に開口した通気口と、を備えることを特徴とする感知センサー。
【請求項2】
前記下部側流路形成部材に形成された凹部の周縁部に沿って段部が設けられ、
前記段部に廃液領域形成部材の周縁部が載置されることを特徴とする請求項1記載の感知センサー。
【請求項3】
前記廃液領域形成部材は、ケイ素酸化物からなり、
前記下部側流路形成部材において、前記廃液領域形成部材に密着する部位は、プラズマ洗浄されていることを特徴とする請求項1または2に記載の感知センサー。
【請求項4】
前記流入側貫通孔には、多孔質のフィルタが設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の感知センサー。
【請求項5】
請求項1ないし
のいずれか一項に記載の感知センサーと前記測定器とを含むことを特徴とする感知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感知対象物がその表面に設けられた吸着膜に吸着することで固有振動数が変わる圧電振動子を用いて感知対象物を感知するための感知センサー及びこの感知センサーを含む感知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床分野においてはPOCT(Point of core TEST)と呼ばれる簡便な検査方法が普及している。このPOCTとしては、例えば糖尿病患者が自ら行う血糖値自己モニタリングや、患者がインフルエンザウイルスに感染しているか否かを診断するために行うインフルエンザウイルス検査がある。また、例えば食品中に含まれるアレルゲンなどの所定の成分の有無を検出する試験にも用いられる。
【0003】
このような簡便な検査に、QCM(Quartz Crystal Microbalance)を利用した感知センサーを用いることが検討されている。QCMは、水晶振動子の電極表面に物質が付着するとその質量に応じて共振周波数が変動する性質を利用するものである。特許文献1には、水晶振動子の表面に感知対象物を吸着する吸着膜を設け、当該水晶振動子に試料液を供給し、水晶振動子の周波数の変化に基づいて感知対象物の定量検査を行う感知センサーが記載されている。具体的には、感知対象物を含まない参照液を供給したときの前記周波数と、感知対象物の有無や濃度が未知である試料液を供給したときの前記周波数とを検出し、これらの周波数の差分が前記吸着膜に吸着された感知対象物の質量に対応するものとして感知対象物の検出や濃度の測定を行っている。
【0004】
しかし、この感知センサーでは水晶振動子の表面に液体を供給すると、液体が水晶振動子の表面に貯留されたままの状態になる。従って、同じ感知センサーに前記参照液を入れて周波数測定を行った後に試料液を入れると、試料液が参照液により希釈され、感知対象物の質量に加えて試料液の質量が水晶振動子の周波数に影響を与えてしまう結果、正常に測定が行えなくなるおそれがある。そこで、参照液を供給する感知センサーと、試料液を供給する感知センサーと、を夫々用意して測定を行うが、このように複数の感知センサーを用いることで測定のコストがかさんでしまうという問題がある。また、QCMには水晶振動子の表面に試料液を連続的に流すと共にその表面から試料液を排出するフロースルーセル方式が知られているが、この方式は通常、ポンプを必要とするので装置が大掛かりになってしまい、インフルエンザウイルス検査のような簡便な検査には向かない。
【0005】
特許文献2には、PDMS(ジメチルポリシロキサン)製の第1の流路形成部材とガラス製の基板とを接合させてQCMセンサーを構成する例が記載され、特許文献3には、アクリル樹脂製の流路形成部材にシリコン樹脂を充填して音響整合材を構成する例が記載されている。しかしながら、これら特許文献2及び特許文献3は、いずれもフロースルーセル方式のQCMセンサーであり、これらによっても本発明の課題を解決することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-206792号公報(図2図3など)
【特許文献2】特開2006−47031号公報(0020など)
【特許文献3】特開2008−151721号公報(0035など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情の下になされたものであり、その目的は、簡便に感知対象物の検出または定量を行うことができる感知センサー及び感知装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、試料液中の感知対象物を圧電振動子の周波数変化に基づいて測定するための感知センサーにおいて、
発振周波数を測定するための測定器に接続される接続端子を備えると共に、一面側に凹部が形成された配線基板と、
圧電片に励振電極を設けて構成され、前記凹部を塞ぎ且つ振動領域が凹部と対向するように前記配線基板に固定されると共に、励振電極が前記接続端子に電気的に接続され、一面側に試料液中の感知対象物を吸着する吸着膜が形成された圧電振動子と、
前記圧電振動子を含む配線基板の一面側との間に、一端側から他端側へ向けて毛細管現象により試料液を流通させる流路を形成すると共に、当該流路の一端側の天井面に開口する試料液の注入口をなす注入側貫通孔と当該流路の他端側の天井面に開口する試料液の流出口をなす流出側貫通孔とを備えた合成樹脂からなる下部側流路形成部材と、
前記下部側流路形成部材に形成され、前記流出側貫通孔の上側がその底部に開口する凹部と、
前記下部側流路形成部材を前記配線基板との間に押圧した状態で挟み込む上部側部材と、
前記流出側貫通孔に設けられ、前記流路内の試料液を毛細管現象により吸い上げるための多孔質のフィルタと、
前記フィルタにより吸い上げられた試料液を貯留するために、前記下部側流路形成部材に形成された前記凹部を塞ぐことにより廃液領域を形成すると共に、前記フィルタの上面に接するように設けられ、前記下部側流路形成部材よりも試料液に対する親和性が高い材質よりなる、下部側流路形成部材とは独立した板状の部材である廃液領域形成部材と、
前記流路に試料液を流通させるために前記廃液領域に開口した通気口と、を備えることを特徴とする。


【発明の効果】
【0009】
本発明の感知センサーによれば、試料液が毛細管現象により注入口から圧電振動子の一面側の流路を介して廃液領域へ向かい、試料液中に含まれる感知対象物が圧電振動子に設けられた吸着膜に吸着される。従って、試料液を注入口から廃液領域へ向けて流すためにポンプなどの機器を設ける必要が無いため、装置の大型化や複雑化を防ぎ、簡便に測定を行うことができる。また、試料液は圧電振動子の一面側の流路を流通して、当該流路の下流側に設けられた廃液領域に貯留されるので、背景技術の項目で説明したように参照液に続いて供給された試料液が、当該参照液により希釈されることが抑えられ、測定精度の低下が抑えられる。さらに、廃液領域には、前記流路から流出した試料液がその表面を伝わって流れるように、流路形成部材よりも試料液に対する親和性が高い材質よりなる廃液領域形成部材が設けられている。このため、試料液が廃液領域形成部材に沿って濡れ拡がりやすく、流路内の試料液がスムーズに廃液領域に流れていくので、測定を速やかに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る感知装置の斜視図である。
図2】感知装置を構成する感知センサーの斜視図である
図3】感知センサーの各部の上面側を示した分解斜視図である。
図4】感知センサーの各部の下面側を示した分解斜視図である。
図5】感知センサーの縦断面図である。
図6】感知センサーの平面図である。
図7】感知センサーの縦断面図である。
図8】感知装置の構成を示すブロック図である。
図9】感知センサーにて液体が流通する様子を示す縦断面図である。
図10】感知センサーの他の例を示す縦断面図である。
図11】感知センサーを用いた実験のグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施の形態に係る感知装置1について説明する。この感知装置1は、例えば人間の鼻腔の拭い液から得られた試料液中のインフルエンザウイルスの有無を検出し、人間のインフルエンザウイルスの感染の有無を判定することができるように構成されている。図1の外観斜視図に示すように、感知装置1は測定器11をなす発振回路ユニット12と演算装置13とを備えており、発振回路ユニット12は例えば同軸ケーブル14を介して演算装置13に接続されている。演算装置13の筐体15前面に設けられた表示部16は、例えば周波数あるいは周波数の変化分等の測定結果を表示する役割を果たす。発振回路ユニット12には感知センサー2が着脱自在に接続される。
【0012】
続いて、感知センサー2について、図2図7を参照して説明する。図3及び図4は感知センサー2の各部材の表側、裏側を夫々示した分解斜視図、図5は感知センサー2の長さ方向(図5中X方向)に沿って切断した縦断面図、図6は感知センサー2の配線基板3を示す平面図、図7は感知センサーを図5のA−A´線に沿って切断した縦断面図である。図中3は配線基板であり、この配線基板3は直線方向に延伸された形状を有し、直線方向(長さ方向)の他端側は、上記の発振回路ユニット12の差し込み口17に差し込まれる差し込み部31を形成している。また、配線基板3には貫通孔32が形成されており、この貫通孔32を配線基板3の裏面側から塞ぐようにフィルム33が固着されている。この貫通孔32及びフィルム33によって配線基板3の一面側(表面側)に開口した凹部が形成される。
【0013】
配線基板3の表面には、貫通孔32の外縁近傍から差し込み部31側に伸びるように、3本の配線34、35、36が設けられており、これら配線34〜36の両端部は、夫々端子部341、351、361、接続端子341、351、361を形成している。また、配線基板3には貫通孔37及び切り欠き38、39が夫々形成されている。
【0014】
この配線基板3には前記貫通孔32を一面側から塞ぐように水晶振動子4が設けられている。水晶振動子4の水晶片41は例えば円形に構成され、水晶振動子4の表面側及び裏面側には夫々励振電極42、43が形成されている。表面側の励振電極42は例えば略コ字状に形成され、裏面側の励振電極43は互いに平行に設けられた2つの励振電極431、432を備えている。表面側の励振電極42と励振電極431、432とは、水晶片41を介して互いに対向するように形成されている。表面側の励振電極42には共通の引出電極44が設けられていて、この引出電極44の先端側は水晶片41の裏面側に引き回されている。また、裏面側の励振電極431、432には夫々引出電極441、442が接続されている。
【0015】
さらに、表面側の励振電極42において、便宜上励振電極431、432に対向している各領域を励振電極421、422とすると、励振電極421の表面には、感知対象物であるインフルエンザウイルスと選択的に結合する抗体により構成された吸着膜451が設けられている。一方、励振電極422の表面にはインフルエンザウイルスと励振電極422との結合を阻害する阻害膜452が設けられている(図8参照)。こうして、水晶片41と励振電極421、431とにより第1の水晶振動子4Aが構成され、水晶片41と励振電極422、432とにより第2の水晶振動子4Bが構成される。これら水晶振動子4A、4Bは、引出電極44が配線基板3の配線351、引出電極441、442が配線基板3の配線361、341の夫々に重なるように設けられる。このように設けると、水晶振動子4の各電極及び配線基板3の各配線の厚さは極めて小さいため、水晶振動子4の周縁部は配線基板3に接し、水晶振動子4は配線基板3に略水平な状態で設けられる。
【0016】
前記配線基板3の一面側には、水晶振動子4を挟み込むように下部側流路形成部材5が設けられている。この下部側流路形成部材5は流路形成部材をなす板状部材であり、配線基板3の差し込み部31を構成する他端部側を露出させ、水晶振動子4が設けられる一端部側を覆うように形成されている。この下部側流路形成部材5は例えば自己吸着性が高い合成樹脂例えばPDMS(ポリジメチルシロキサン)により構成されている。下部側流路形成部材5はプラズマ洗浄されて、その表面が活性化されると共に表面の有機物が除去された状態で、図示のように配線基板3に接着される。このようにPDMSにより構成することにより、配線基板3への吸着性が高くなり、後述するように水晶振動子4に液体を供給したときに、配線基板3と下部側流路形成部材5との間からの液体の漏れが抑えられる。また、プラズマ洗浄を行うことにより、下部側流路形成部材5と前記液体との親和性が高められて当該液体の流通が容易になる上、下部側流路形成部材5と配線基板3との密着性がさらに高められる。
【0017】
下部側流路形成部材5の裏面側には、水晶振動子4及び配線34〜36が収まるようにこれらの外形に沿って凹部51が設けられている。この凹部51には、水晶振動子4に夫々重なる位置に、下部側流路形成部材5の厚さ方向に貫通する貫通孔52、53が形成されている。また、これら貫通孔52、53を囲む枠部54が下側に突出して設けられている。この枠部54は、図6に示すように、励振電極42を囲むように設けられ、励振電極42の長さ方向における一端側及び他端側近傍には夫々貫通孔52、53が配置される。前記枠部54に囲まれる領域は流路57を形成し、この流路57は水平な天井面を備え、流路57の下面は水晶振動子4により構成される。また、前記励振電極421(431)、422(432)は貫通孔52と貫通孔53とを結ぶ線に対して、互いに対称に設けられている。前記貫通孔52、53には夫々入口側フィルタ55及び出口側フィルタ56が挿入され、後述のように、液体は入口側フィルタ55から流路57内に入り込み、出口側フィルタ56を介して排出される。図6は、配線基板3と水晶振動子4、枠部54、上部側フィルタ55、下部側フィルタ56を示す平面図である。下部側流路形成部材5には配線基板3の貫通孔37に対応する位置に貫通孔58が形成される。なお、下側流路形成部材5はPDMSの他に例えばアクリル樹脂等の合成樹脂や水晶などにより構成することができる。
【0018】
下部側流路形成部材5の上面側には、廃液領域6を形成するための凹部61が設けられている。この凹部61は、例えば前記下部側流路形成部材5の貫通孔54に重なる位置から配線基板3の他端側へ向かって広がるように、前記流路37の下流側に形成され、凹部61の底面の一端側には前記貫通孔54が貫通している。この凹部61には、当該凹部61の開口部を塞ぐように、廃液領域形成部材63が設けられている。この廃液領域形成部材63は、前記下部側流路形成部材5よりも試料液に対する親和性が高い材質より構成されている。こうして、前記流路57から流出した試料液がその表面を伝わって流れるように、廃液領域形成部材63と下部側流路形成部材5とを組み合わせて前記廃液領域6が形成されている。この例では、試料液はインフルエンザウイルスの有無を検出するために人間の鼻腔の拭い液から得られたものであって、試料液は水性であるので、廃液領域形成部材63はPDMSよりも親水性が高い材質であるガラスのプレートにより構成されている。
【0019】
そして、凹部61には、例えば図7に示すように、その内周に沿って一段下がる段部62が形成されており、この段部62にプレート状の廃液領域形成部材63の周縁部を載置することにより、前記廃液領域6が形成されている。前記段部62は凹部61の周縁部に沿って設けられればよく、必ずしも周縁部の全周に亘って設けられる必要はない。例えば廃液領域形成部材63は、その平面形状が例えば凹部61の開口部の平面形状と揃うように形成され、段部62に載置されたときに、凹部61の開口部を塞ぎ、かつ廃液領域形成部材63の表面の高さ位置が下部側流路形成部材5の凹部61以外の領域の高さ位置と揃うように構成されている。また、廃液領域形成部材63の厚さは凹部61の深さよりも小さく形成され、廃液領域形成部材63を段部62に載置したときには、凹部61と廃液領域形成部材63の下面との間に廃液領域6が形成される。この廃液領域6は試料液を貯留するものであるため、例えば廃液領域6の深さは1mm程度に設定される。さらに、この例では凹部61は廃液領域形成部材63の下方側において、差し込み部31側に切りかかれて広がるように構成されている。
【0020】
既述のように廃液領域形成部材63は、下部側流路形成部材5よりも親水性が高い材質により構成されているが、親水性が高いとは濡れ性が大きく、水性の試料液が濡れ広がりやすいことをいい、下部側流路形成部材5よりも親水性が高いとは、液体が付着したときの接触角が下部側流路形成部材5よりも廃液領域形成部材63の方が小さいことをいう。また、水性の試料液とは、水との親和性が高い試料液をいう。
【0021】
このような廃液領域形成部材63は、既述のようにプラズマ洗浄された下部側流路形成部材5の凹部61の段部62に、廃液領域形成部材63の周縁部を載置して両者を押圧することにより、下部側流路形成部材5に接合される。また、廃液領域形成部材はガラスの表面を親水化した親水化ガラスにより形成するようにしてもよい。この親水化ガラスは、例えばガラスの表面に紫外線(UV)を照射してから、親水性コーティング剤を塗布することにより構成される。この親水化は、試料液と接触する面のみに施すようにしてもよい。
【0022】
下部側流路形成部材5の一面側には上部側流路形成部材7が設けられている。この上部側流路形成部材7は、例えばプラスチックなどの樹脂により構成された板状部材であり、下部側流路形成部材5を覆うように形成されている。上部側流路形成部材7には、当該上部側流路形成部材7を厚さ方向に貫通する貫通孔71が開口しており、この貫通孔71は前記下部側流路形成部材5の貫通孔52に重なる位置に形成されている。
【0023】
図3及び図4中の突起72は、配線基板3の貫通孔37及び下部側流路形成部材5の貫通孔58に進入し、これにより下部側流路形成部材5の横方向への位置ずれが抑えられる。また、図中の爪部73、74は、配線基板3と上部側流路形成部材7との間に水晶振動子4及び下部側流路形成部材5を挟んだ状態で、前記配線基板3の切り欠き38、39の裏面側の縁部に係合する。これにより、下部側流路形成部材5の枠部54が水晶振動子4の縁部を配線基板3の貫通孔32の外縁に押圧した状態となり、水晶振動子4が前記貫通孔32を塞ぐように配線基板3に固定される。
【0024】
上部側流路形成部材7の上面側には、液受け部75として構成される凹部が形成されており、この凹部内に前記貫通孔71が開口している。また、この上面側には前記廃液領域6と連通する通気口76が設けられており、この感知センサー2内を供給液が流通するときに各流路の気体はこの通気口76から感知センサー2の外部へ押し出される。
【0025】
前記入口側フィルタ55、出口側フィルタ56は例えば円柱状に構成され、前記貫通孔52、53に着脱自在に設けられる。これら入口側フィルタ55、出口側フィルタ56は、多孔質体であるセルロースや化学繊維束により構成されている。入口側フィルタ55は下部側流路形成部材5の貫通孔52を塞ぎ、その上端側が液受け部75に露出し、その下端側が下部側流路形成部材5の流路57内に進入するように設けられている。出口側フィルタ56は、図7に示すように、下部側流路形成部材5の貫通孔53を塞ぎ、その上端側が下部側流路形成部材5の凹部61内に進入して廃液領域形成部材63の下面に当接し、その下端側が下部側流路形成部材5の流路37内に進入するように設けられている。これらフィルタ55、56においては、前記セルロースや化学繊維束の繊維間の空隙を毛細管現象により供給液が流通する。従って、入口側フィルタ55の繊維間の孔(多孔質のフィルタの孔)は、試料液の注入口に相当する。
このように構成された感知センサー2は、配線基板3の差し込み部31を発振回路ユニット12の差し込み口17に差し込んだときに、水晶振動子4の各電極が発振回路811、812に電気的に接続できるようになっている。
【0026】
続いて、感知装置1を構成する演算装置13に設けられる各部について、図8を用いて説明する。前記発振回路811、812の後段にはスイッチ部82が設けられており、このスイッチ部82によって2つの発振回路811、812からの周波数信号を時分割して後段に取り込み、各振動領域の発振周波数を並行して求めることができる。第1の発振回路811からの出力をチャンネル1、第2の発振回路812からの出力をチャンネル2とすると、例えば1秒間をn分割(nは偶数)し、各チャンネルの発振周波数を1/n秒の処理で順次求めることにより、1秒間に少なくとも1回以上周波数を取得しているため、実質同時に各チャンネルの周波数を取得することができる。
【0027】
スイッチ部82の後段には測定回路部83が設けられている。測定回路部83は入力信号である周波数信号をディジタル処理して、各チャンネルの発振周波数を測定する。以下、チャンネル1、2の出力を夫々F1、F2で表す。また、演算装置13はデータバス80を備えており、データバス80にはCPU84、データ処理プログラム85を格納した記憶手段、メモリ86及び既述の測定回路部83が接続されている。更にデータバス80には既述の表示部16やキーボード等の入力手段87が接続されている。
【0028】
データ処理プログラム85は、測定回路部83から出力される信号に基づいて発振周波数「F1」の時系列データ及び発振周波数「F2」の時系列データを取得し、メモリ86に格納する。また、このデータ取得動作と同時に、同一の時間帯におけるチャンネル1から取得した発振周波数F1、チャンネル2から取得した発振周波数F2の各時系列データの差分「F1−F2」を夫々演算し、当該差分データの時系列データを取得してメモリ86に格納すると共に、この「F1−F2」のグラフを表示部16に表示する。
【0029】
続いて、感知センサー2を用い、試料液中のインフルエンザウイルスの有無を判定する工程について説明する。この感知センサー2は、発振回路ユニット12に接続された後、図9(a)に示すように図示しないインジェクタを用いて液受け部75に、例えば生理食塩水からなりインフルエンザウイルスを含まない参照液を滴下する。この参照液は毛細管現象により入口側フィルタ55に吸収され、当該フィルタ55内を流通し、流路57に流れ込んで水晶振動子4の一端部側の表面に供給される。
【0030】
水晶振動子4を構成する水晶片41の表面は親水性であるため、流路57内を濡れ広がろうとする作用が強く働く。その結果、毛細管現象によって参照液は流路57を水晶振動子4の他端部側へと流れ、流路57に広がった参照液に続いて入口側フィルタ55の参照液は、表面張力により水晶片41の表面へと引き出される。このようにして液受け部75から流路57へ連続して参照液が流れていく。なお、ここで毛細管現象とは上記のように液体が、当該液体が接する物体がなす空間内を、前記物体との界面張力により当該液体が有する表面張力に抗して自動で濡れ広がって移動することを指し、液体が移動する方向が上下方向である場合だけでなく、横方向であっても毛細管現象という用語を使用する。
【0031】
流路57を流れる参照液が、励振電極421、422表面に供給されると、既述のようにこれら励振電極421、422は流路57の入口側から出口側へ向かって見て対称に形成されているため、等しく水圧の影響を受ける。これによって第1の水晶振動子4A、第2の水晶振動子4Bの発振周波数F1、F2が共に等しく低下する。つまりF1−F2がこの水圧の影響を受けて変化することが抑えられるので、F1−F2の測定データにノイズが発生することが抑えられる。励振電極421、422及び電極表面に形成される各膜451、452も比較的親水性が高いため、各電極421、422表面においても参照液はスムーズに流れる。
【0032】
そして、水晶振動子4表面の参照液が出口側フィルタ56に供給されると、参照液は毛細管現象により出口側フィルタ56に吸収され、当該フィルタ56内を流れて廃液領域6へ滲み出る。廃液領域6の上面は親水性の廃液領域形成部材63により構成されているため、参照液は廃液領域形成部材63に対して濡れ拡がりやすく、例えば廃液領域6の深さが1mm程度の場合には、図9(b)に示すように、廃液領域形成部材63の表面(廃液領域6に臨む面)を伝わって流れていく。なお、図9(b)に示すθは、廃液領域形成部材63に対する参照液の接触角である。廃液領域形成部材63は、既述のように出口側フィルタ56から広がるように形成されているので、試料液は廃液領域形成部材63に沿って広がりながら流れ、出口側フィルタ56側から廃液領域6に貯留される。こうして入口側フィルタ55から出口側フィルタ56までの流路が参照液で満たされることにより、毛細管現象に加えてサイホンの原理が働き、引き続き自動的に液受け部75の参照液が水晶振動子4表面を通過して廃液領域6へ流れ込む。従って、廃液領域6の液流れと流路57までの液流れとがスムーズに繋がり、液受け部75から流路57を介して廃液領域6に向けて自動的に流れる液流れが形成されるので、液受け部75の参照液が廃液領域6まで安定した流速でスムーズに流れていく。廃液領域6の側壁部はPDMSにより構成されているが、流路57の参照液が自動的に廃液領域形成部材63に向けて流れてくるため、後から来る参照液により押し出されるようにして流れ、廃液領域6において出口側フィルタ56側から徐々に貯留されていく。
【0033】
液受け部75の参照液がすべて入口側フィルタ55に流れ込むと、入口側フィルタ55内の参照液が受ける圧力と、出口側フィルタ56内の参照液が受ける圧力とが等しくなり、参照液の流れが一旦停止する。その後、参照液と同様に試料液を液受け部へ供給すると、入口側フィルタ55に吸収されている参照液に加わる圧力が高くなり、サイホンの原理と毛細管現象とによって当該参照液は再び廃液領域6へ向かって流れ、試料液が入口側フィルタ55に吸収される。なお、図中試料液は参照液よりも濃いグレーで表示している。吸収された試料液は、参照液に続いて入口側フィルタ55から流路57に流れ込み、参照液と同様に流路57を流れ、流路57が参照液から試料液に置換される(図9(c))。
【0034】
このときにも、励振電極421、422が流路の入口側から出口側に見て対称に形成されているため、これらの電極421、422は流路57内の液の切り替わりによる圧力変化を均等に受け、当該圧力変化による第1の水晶振動子4A、第2の水晶振動子4Bの発振周波数が互いに揃って変化する。従って、このときにもF1−F2の測定データにノイズが発生することが抑えられる。
【0035】
流路57を広がった試料液は出口側フィルタ56に流れ、廃液領域6に流れ込み、入口側フィルタ55から廃液領域6に至るまで試料液が流れ続ける。このときに試料液中に測定対象物(この例ではインフルエンザウイルス)が含まれる場合には吸着膜451に当該インフルエンザウイルスが吸着され、この吸着量に応じて周波数F1が下降し、F1−F2が変化する。液受け部75の試料液がすべて入口側フィルタ55に流れ込むと、入口側フィルタ55内の試料液が受ける圧力と、出口側フィルタ56内の試料液が受ける圧力とが等しくなり、試料液の流れが停止する(図9(d))。このようにF1−F2の変化に基づいて試料液中のインフルエンザウイルスの有無の判定を行うことができる。また、発振振周波数差F1−F2の変化量と試料液中の感知対象物の濃度との関係式を取得しておき、この関係式と測定により得られた変化量とから、試料液中の感知対象物の濃度を求めてもよい。なお図9(c)及び図9(d)では廃液領域6内に参照液等が貯留される様子を示しているが、既述のように実際には参照液等は出口フィルタ56側から徐々に貯留されていくと推察される。
【0036】
この感知センサー2においては、試料液が毛細管現象により注入口から水晶振動子4の一面側の流路57を介して励振電極42の一端側から他端側へと流れ、試料液中に含まれる感知対象物が水晶振動子4に設けられた吸着膜451に吸着される。従って、試料液を流通されるためにポンプなどの機器を設ける必要が無いため、装置の大型化や複雑化を防ぎ、簡便に測定を行うことができる。また、先に供給した供給液は、後から供給液を供給すると廃液領域6に流されて、流路57から除去される。このため、上記の測定手法において先に供給された参照液により後から供給された試料液が希釈されることが抑えられ、このことによっても測定の感度が高くなる。
【0037】
さらに、廃液領域6は試料液に対する親和性の高い廃液領域形成部材63を備えているため、流路57から流出した試料液が廃液領域形成部材63に沿って濡れ拡がりやすい。従って、流路57内の試料液が廃液領域6にスムーズに流れるので、流路57内の参照液から試料液の置換に要する時間が短くて済み、測定に要する時間が短縮されて、測定を速やかに行うことができる。また、試料液の流速が安定するので、測定精度を安定させることができる。さらに、前記廃液領域6は、下部側流路形成部材5の表面に形成された凹部51を塞ぐように廃液領域形成部材63を設けることにより構成されているので、試料液との親和性が高い壁面を備えた廃液領域6を容易に構成することができる。さらに、上述の例では、下部側流路形成部材5に形成した凹部61に段部62を設け、この段部62に廃液領域形成部材63の周縁部を載置して廃液領域6を形成している。従って、仮に段部62と廃液領域形成部材63の周縁部との間の接着力が小さい部分が発生したとしても、廃液領域形成部材63の側方には下部側流路形成部材5が存在するので、側方への液漏れが防止できる。
【0038】
さらにまた、下部側流路形成部材5をPDMSよりなる合成樹脂、廃液領域形成部材63をガラスにより構成する場合には、両者の密着性が良好であるため、PDMS表面をプラズマ処理し、廃液領域形成部材63と下部側流路形成部材5との接触領域を押圧することによって、両者を容易かつ確実に接着することができる。従って、試料液の漏れのない廃液領域6を簡単に形成することができる。
【0039】
さらにまた、上述の例では、出口側フィルタ56の上端が廃液領域形成部材63の下面に接触するように設けられているので、流路57の出口側において、試料液が確実に廃液領域形成部材63に接触するため、流路57内の試料液がより速やかに廃液領域6に流れていく。
【0040】
ところで、廃液領域6に廃液領域形成部材63を設けない場合には、廃液領域6はその内壁面全体が合成樹脂(PDMS)により構成されるので、撥水性が高く、液体を弾いてしまう。従って、液体が廃液領域6に広がりにくいため、流路57から流出した液体が廃液領域6にスムーズに流れていかず、液受け部75から流路57を介して廃液領域6に向けて自動的に流れる液流れが形成されにくい。このため、液受け部75の参照液が廃液領域6まで流れるときの流速が廃液領域形成部材63を設ける場合に比べて遅くなったり、不安定になってしまう。
従って、廃液領域6に液体を速やかに流通させるためには、廃液領域6を親水化する必要があるが、合成樹脂の親水化は、親水化コーティング剤を供給する前に、合成樹脂の表面にシリカ膜を形成する工程が必要である。このため、ガラスの親水化に比べて工程数が多くなり、製造コストが増大してしまう。
また、廃液領域6のみを親水化しようとすると、さらに工程数が多くなり、廃液領域6のみの一様な親水化処理を行うことは困難である。一方、廃液領域6が形成される下部側流路形成部材5全体を親水化しようとすると、粘度の低い試料液を滴下した場合、下部側流路形成部材5と上部側流路形成部材7との隙間から試料液が漏れ出すおそれがある。従って、本発明のように流路形成部材と、流路形成部材よりも試料液に対する親和性が大きい廃液領域形成部材とを組み合わせて廃液領域を形成する効果は大きい。
【0041】
さらにまた、上述の感知センサー2は、自動で供給液が流れるように流路の高さが抑えられているため、試料液中の感知対象物は水晶振動子の吸着膜の近傍を流れるので、当該吸着膜に吸着されやすい。従って、測定の感度を高くすることができ、測定に要する時間が短くなる。
さらにまた、上記の感知センサー2においては水晶振動子上の流路を液体で満たした状態で、前記液体の液流れが形成されるため、特許文献1の感知センサーに比べて、供給液の液面の揺れにより第1の水晶振動子及び第2の水晶振動子の周波数が変動することを抑えることができる。さらに、滴下した液が毛細管を介して水晶振動子表面に供給されることにより、水晶振動子に直接供給液を滴下する場合に比べて、供給液の滴下の衝撃による周波数の変動を抑えられるため、精度高い測定を行うことができる。
【0042】
さらにまた、感知センサー2では、入口側フィルタ55の微細な孔が供給液の注入口を形成しており、さらに、廃液領域6の上側の一部の領域のみが気体の通気口として感知センサー2の外部に開放されている。これによって、感知センサー2内に進入した供給液が外部の空気に曝されて乾燥することが抑えられる結果、前記供給液の密度の変化が抑えられるので、精度高くF1−F2を検出することができる。なお、この感知センサー2においても、水晶振動子4A、4Bを分割した水晶片により構成し、各水晶片を互いにごく近くに配置してもよい。
また、試料液を感知センサー2に供給した後に、吸着膜に吸着された感知対象物と結合する増感材を含んだ供給液(増感液)を供給することができ、さらにそのように感知対象物に結合された増感材にさらに結合する増感材を含んだ増感液を供給して、増感を行うことができる。このような増感液を用いる場合にも当該増感液を流路に供給したときに先に供給された液が流路から排液されるので、増感液の希釈が防がれる。従って増感材の結合が速やかに起こるので、測定の感度を高くできると共に測定時間が長くなることを抑えることができる。
【0043】
以上において、必ずしも第1の水晶振動子4A及び第2の水晶振動子4Bを設ける必要はなく、吸着膜を備えた水晶振動子を一つ設ける構成であってもよい。吸着膜に感知対象物が吸着されると発振周波数が変化するため、例えば予め閾値を設定しておき、閾値を超えるか否かで感知対象物の有無を検出することができるからである。
【0044】
また廃液領域形成部材は、廃液領域6における試料液の濡れ拡がり性を向上させるために設けられるので、廃液領域形成部材は廃液領域6において、前記試料液がその表面を伝わって流れるように設けられればよい。例えば図10(a)に示すように、凹部61の底面を覆うように廃液領域形成部材91を設けるようにしてもよいし、図10(b)に示すように、上部側流路形成部材7に下側が開口する凹部77を形成し、この開口部を塞ぐように廃液領域形成部材92を設けるようにしてもよい。図10(b)の例では、下部側流路形成部材5と上部側流路形成部材7とにより流路形成部材が構成され、廃液領域形成部材92は下部側流路形成部材5の表面に載置されている。これら図10(a)、(b)の構成では、流路57からの液体を廃液領域形成部材63の表面に流出させるように出口側フィルタ56の上端が廃液領域形成部材63の表面と揃うか突出するように設けられている。
【0045】
また、廃液領域形成部材は、酸化ケイ素(SiO)や水晶により構成してもよい。さらに、試料液が油性であってもよく、この場合には、廃液領域形成部材は流路形成部材よりも親油性(親和性)が高い材質により構成される。
(評価試験)
感知センサー2を用いて上記の実施形態に従ってF1、F2及びF1−F2が変化する様子を調べた。この評価試験では試料液としてコーヒーを10マイクロリットル供給し、第1の水晶振動子の吸着膜としてはBSA(ウシ血清アルブミン)を用いた。廃液領域は、下部側流路形成部材5の表面に深さ1mm、幅3mmの凹部61を形成し、この凹部61の上面を透明な板ガラスにより塞ぐことにより形成した。
【0046】
図11は、発振周波数F1、F2、F1−F2の変化を示したグラフである。グラフの縦軸は発振周波数(単位:Hz)であり、横軸は発振周波数(単位:秒)である。点線でF1を示し、鎖線でF2を示し、実線でF1−F2を夫々示している。試料液が水晶振動子4上を流れると応力がかかり、応力変化で周波数が変化し、流れ終わったら安定するが、図11では波形が乱れていることから、試料液が水晶振動子4上を通過していくことが認められる。また、試料液がコーヒーであることから、試料液が流路37を通過して廃液領域6に流れることが透明な板ガラスを介して目視で確認できた。
【符号の説明】
【0047】
1 感知装置
2 感知センサー
3 配線基板
4 水晶振動子
41 水晶片
451 吸着膜
5 下部側流路形成部材
55 入口用フィルタ
56 出口用フィルタ
57 流路
6 廃液領域
61 凹部
63 廃液領域形成部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11