特許第6106468号(P6106468)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6106468
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】静電容量センサーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01H 11/00 20060101AFI20170316BHJP
   H01H 36/00 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   H01H11/00 G
   H01H36/00 J
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-40870(P2013-40870)
(22)【出願日】2013年3月1日
(65)【公開番号】特開2014-170637(P2014-170637A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2015年8月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】小林 佑輔
【審査官】 関 信之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−238661(JP,A)
【文献】 特開2012−242871(JP,A)
【文献】 特開2010−244776(JP,A)
【文献】 特開昭61−283917(JP,A)
【文献】 実開昭59−037703(JP,U)
【文献】 特開2010−267607(JP,A)
【文献】 特開2008−310556(JP,A)
【文献】 特開2008−181806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 11/00
H01H 36/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面と裏面とを有するフィルム基材上において前記表面と前記裏面との少なくともいずれかに回路パターンを形成する工程と、
前記回路パターンが形成された前記フィルム基材に対して雄型を用いて前記雄型の外面に倣うように前記フィルム基材を成形する第一成形工程と、
前記第一成形工程の終了後、前記回路パターンが形成された前記フィルム基材に対して前記雄型が接する面と反対面に接する金型を用いて前記反対面を前記金型に倣うように成形する第二成形工程と、
を備えることを特徴とする静電容量センサーの製造方法。
【請求項2】
前記第一成形工程は圧空成形であり、
前記第二成形工程はインサートインジェクションであることを特徴とする請求項1に記載の静電容量センサーの製造方法。
【請求項3】
前記フィルム基材における前記反対面に加飾フィルムを設ける工程をさらに備える請求項1または請求項2に記載の静電容量センサーの製造方法。
【請求項4】
前記回路パターンを形成した後前記雄型を用いた成形をする前に前記回路パターンを覆う保護層を前記フィルム基材上に形成する工程をさらに備える請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の静電容量センサーの製造方法。
【請求項5】
前記保護層は絶縁性を有することを特徴とする請求項4に記載の静電容量センサーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量センサーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムの表面に加飾層を形成し、フィルムの裏面に電極層を形成する静電容量センサーの製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の静電容量センサーの製造方法では、表面が曲面の取付箇所内に静電容量センサーが設置される場合でも、操作面の裏面に静電容量センサーを近接して配置することができる。ここで、操作面の裏面と静電容量センサーとの間に空隙があると、入力体の指等と電極層との間で想定される静電容量が設計値からずれる。これにより、特許文献1に記載の静電容量センサーの製造方法では、操作面と静電容量センサーとの間に空隙を生じないようにして検出感度の低下を防止できる。
【0003】
一方、加飾フィルムと電極フィルムとを別々に用意し、それらを貼り合わせる静電容量センサーの製造方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載の静電容量センサーの製造方法では、加飾フィルムと電極フィルムとが別体であるために、導電ラインが溶剤で滲んだり、損傷したりするおそれがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−267607号公報
【特許文献2】特開2010−244776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載の静電容量センサーの製造方法では、静電容量センサーの表面に加飾層を配置しているので、耐薬品性や耐傷性の点で不十分である。また、特許文献1に記載の静電容量センサーの製造方法では、薬品や傷の影響による意匠の劣化に伴う意匠性の悪化が懸念される。そして、特許文献1に記載の静電容量センサーの製造方法において、フィルムの裏面に加飾層を配置し、その上に電極層を積層した場合、電極の印刷時に加飾層に溶剤や熱によるダメージを与えてしまう。
【0006】
一方、特許文献2に記載の静電容量センサーの製造方法では、それぞれ別々に用意された加飾フィルムと電極フィルムとを貼り合わせた後に、フォーミング、インサート成形を実施している。そのために、フォーミング時の伸びやインサート成形時の耐熱性といった課題に耐えうる接着剤層の選定が困難である。また、特許文献2に記載の静電容量センサーの製造方法において、電極フィルムと加飾フィルムとをそれぞれ三次元に成形した後に貼り合わせる場合、それぞれが三次元形状を有している部材を貼り合わせるのは困難である。
【0007】
そして、特許文献1及び特許文献2に記載の静電容量センサーの製造方法では、フォーミングの工程において、配線や電極の印刷の厚みが表面側から視覚的に認識されてしまう、所謂“あたり”となって発生する。“あたり”とは、フォーミング工程において、例えば、金型面に印刷段差があるフィルムを用いてフォーミングすることにより、フォーミング時の圧力により印刷段差が金型面に押し付けられることにより、その印刷段差の厚み分がフィルムの反対面(表層側)に転写し、凹凸が発生することを言う。このフォーミング工程によって発生した“あたり”は、インサート成形実施後も、静電容量センサーの表面の外観に模様のように残ってしまう。この印刷段差が金型面とは接しないフィルム面にある場合も、フォーミング工程後には表層側に印刷段差の凹凸がそのまま残るため、インサート成形実施後に、外観に模様のように残ってしまう。ここで、例えば、印刷の厚みを打ち消すように、静電容量センサーと加飾層との間に中間層を配置したとしても、完全に無くすことは難しい。特に、配線を銀ペーストにより形成した場合、配線は、細線かつ硬さを有するために、配線の形状が“あたり”として静電容量センサーに残りやすい。そこで、フォーミング金型を雌型にすることが考えられる。しかし、雌型のフォーミング金型を採用した場合、静電容量センサーと加飾層とのずれが大きくなるために、位置ずれを生じやすく、位置決め精度を高くできない。加えて、2枚のフィルムを貼り合わせた成型品にフォーミングを実施する場合、2枚のフィルムを貼り合わせしているために、伸びと耐熱性、接着性を両立させることができる接着剤層の選定が難しい。すなわち、特許文献1及び特許文献2に記載の静電容量センサーの製造方法では、フォーミング及びインサート成形の工程において、表面に加飾層及び電極層の印刷厚みが転写され外観を悪くするという課題を有する。
【0008】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたもので、印刷の厚みが視覚的に認識されない良好な表面外観を実現でき位置決め精度を向上することができる静電容量センサーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の一態様は、表面と裏面とを有するフィルム基材上において前記表面と前記裏面との少なくともいずれかに回路パターンを形成する工程と、前記回路パターンが形成された前記フィルム基材に対して雄型を用いて前記雄型の外面に倣うように前記フィルム基材を成形する第一成形工程と、前記第一成形工程の終了後、前記回路パターンが形成された前記フィルム基材に対して前記雄型が接する面と反対面に接する金型を用いて前記反対面を前記金型に倣うように成形する第二成形工程と、を備えることを特徴とする静電容量センサーの製造方法である。
【0010】
なお、上記の静電容量センサーの製造方法において、前記第一成形工程は圧空成形であり、前記第二成形工程はインサートインジェクションであってもよい。
【0011】
また、上記の静電容量センサーの製造方法において、前記フィルム基材における前記反対面に加飾フィルムを設ける工程をさらに備えてもよい。
【0012】
さらに、上記の静電容量センサーの製造方法において、前記回路パターンを形成した後前記雄型を用いた成形をする前に前記回路パターンを覆う保護層を前記フィルム基材上に形成する工程をさらに備えてもよい。
【0013】
加えて、上記の静電容量センサーの製造方法において、前記保護層は絶縁性を有してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、印刷の厚みが視覚的に認識されない良好な表面外観を実現でき位置決め精度を向上することができる静電容量センサーの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施の形態の静電容量センサーの製造方法により製造された静電容量センサーの上方から視た外観斜視図である。
図2】同静電容量センサーの下方から視た外観斜視図である。
図3図1の静電容量センサーのA−A線断面図である。
図4】本発明の一実施の形態の静電容量センサーの製造方法の手順を説明するフローチャートである。
図5】同静電容量センサーの製造方法の第1工程の模式図である。
図6】同静電容量センサーの製造方法の第2工程の模式図である。
図7】同静電容量センサーの製造方法の第2工程の要部拡大図である。
図8】同静電容量センサーの製造方法の第3工程の前段の模式図である。
図9】同静電容量センサーの製造方法の第3工程の後段の模式図である。
図10】同静電容量センサーの製造方法の第3工程の要部拡大図である。
図11】同静電容量センサーの製造方法の第4工程の前段の模式図である。
図12】同静電容量センサーの製造方法の第4工程の後段の模式図である。
図13】同静電容量センサーの製造方法の第1変形例の第1工程の模式図である。
図14】同静電容量センサーの製造方法の第1変形例の第2工程の模式図である。
図15】同静電容量センサーの製造方法の第2変形例の第1工程の模式図である。
図16】同静電容量センサーの製造方法の第3変形例の第1工程の模式図である。
図17】同静電容量センサーの製造方法の第4変形例の第1工程の模式図である。
図18】同静電容量センサーの製造方法の第5変形例の第1工程の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る静電容量センサーの製造方法の一実施の形態を、図1から図18を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施の形態の静電容量センサーの製造方法により製造された静電容量センサーの上方から視た外観斜視図である。図2は、静電容量センサーの下方から視た外観斜視図である。図3は、図1の静電容量センサーのA−A線断面図である。
【0017】
図1図2、及び図3に示すように、静電容量センサー10は、センサーシート11、及び加飾フィルム12を備える。なお、本明細書において、上、上方、上面、表面とは、図3においてセンサーシート11から加飾フィルム12を臨む方向を意味する。また、本明細書において、下、下方、下面、裏面とは、図3においてフィルム基材17から支持体18を臨む方向を意味する。
静電容量センサー10は、例えばタッチスイッチに適用される。
【0018】
センサーシート11は、下方から、電極13と配線14とを有する回路パターン16、フィルム基材17、及び支持体18が順次積層されてなる。
【0019】
図2に示すように、電極13は、光透過性を有し、平面視において放射状に広がる三角形を円周方向に配列されている。本実施形態では、複数の電極13がセンサーシート11に形成されている。ここで、電極13は、照光させたいエリアに該当する部分であり、光透過性の材料にて形成される。
配線14は、複数の電極13の外縁部に一部が重複するように配され、各電極13の各々に対して独立して接続されている。配線14は、接続部19まで延長されている。配線14は、例えば、金属薄膜、金属粒子含有樹脂層(銀ペースト)等の光透過性を有さない部材により成形されている。
【0020】
回路パターン16(本実施形態では電極13及び配線14からなる。)は、銀インク、カーボンインク、導電性ポリマー、金属ナノワイヤー等の導電部材により形成されている。また、照光可能なセンサーシート11を形成する場合には、電極13はITO等の金属酸化物、導電性ポリマー、あるいは金属ナノワイヤーを含む光透過性導電膜によって形成されていることが好ましい。配線14は、低抵抗な金属材料(例えば銀インク)により形成されていることが好ましい。電極13の厚みは、照光可能な場合、例えば1μm以下にて形成され、配線14は、5〜15μm程度とされる。回路パターン16において、電極13は、任意の一つが操作時に、入力体であるユーザーの指と間接的に対向する。配線14を銀インクにより形成する場合は、酸化・硫化防止のためにカーボンインクにより重ね印刷し、外部接続部20を形成することが好ましい。
【0021】
フィルム基材17には、電極13と配線14とがスクリーン印刷により形成されている。フィルム基材17は、電極13の位置する中央部から外方に突出する接続部19を有する。接続部19には、配線14の端部が配置されている。
【0022】
支持体18は、フィルム基材17に一体化してフィルム基材17を補強する。支持体18を形成する樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ABS樹脂、ポリプロピレン、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0023】
図1に示すように、加飾フィルム12は、照光により模様を示す部材である。加飾フィルム12は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、アクリル樹脂等光透過性を有する材料を用いて薄板に成形され、三次元成形により中空の半球形状に形成されている。加飾フィルム12は、その中央部に、不図示の模様を形成してもよい。
【0024】
図3に示すように、配線14は、接続部19の端部に外部接続部20を有する。この外部接続部20には、コネクタ21が装着される。そして、コネクタ21は、回路基板22に装着されることにより、配線14を不図示の検出回路に電気的に接続させる。
加飾フィルム12の下面には、加飾層23が形成されている。加飾層23の下面には、接着剤層24が形成されている。接着剤層24は、光透過性を有する、例えば、アクリル系の粘着剤やホットメルトタイプの接着剤である。
【0025】
次に、静電容量センサーの製造方法について説明する。
図4は、静電容量センサーの製造方法の製造手順を説明するフローチャートである。図5は、静電容量センサーの製造方法の第1工程の模式図である。図6は、静電容量センサーの製造方法の第2工程の模式図である。図7は、静電容量センサーの製造方法の第2工程の要部拡大図である。図8は、静電容量センサーの製造方法の第3工程の前段の模式図である。図9は、静電容量センサーの製造方法の第3工程の後段の模式図である。図10は、静電容量センサーの製造方法の第3工程の要部拡大図である。図11は、静電容量センサーの製造方法の第4工程の前段の模式図である。図12は、静電容量センサーの製造方法の第4工程の後段の模式図である。
【0026】
図4に示すように、まず、ステップS101において、表面25と裏面26とを有するフィルム基材17上において表面25に回路パターン16を形成する第1工程を行う。ステップS101の後にステップS102を行う。
図5に示すように、第1工程では、フィルム基材17の表面25に電極13、配線14がスクリーン印刷により形成される。
【0027】
図4に示すように、ステップS102においては、回路パターン16が形成されたフィルム基材17に対して雄型50を用いて雄型50の外面に倣うようにフィルム基材17を成形する第2工程を行う。ステップS102の後にステップS103を行う。
図6に示すように、第2工程では、フィルム基材17の裏面26側から雄型50により圧空成形する。圧空成形により、フィルム基材17は、凸面27及び凹面28を有する中空の半球形状に形成される。第2工程により、フィルム基材17の凸面27の湾曲形状に追従して電極13、配線14が変形される。
図7に示すように、電極13、配線14を有する回路パターン16は、フィルム基材17の表面25上に凹凸を有して形成される。
【0028】
図4に示すように、ステップS102の後のステップS103においては、ステップS102の工程にてサンプルをフォーミング後、インサートインジェクションに適した形状へ外形トリミングする。ステップS103の後にステップS104を行う。ステップ104においては、回路パターン16が形成されたフィルム基材17に対して凹面28と反対の凸面27に接するキャビティ型60を用いて凸面27をキャビティ型60に倣うように成形する第3工程を行う。ステップS104の後にステップS105を行う。
【0029】
図8に示すように、第3工程の前段では、キャビティを有するキャビティ型60と、コア型61とを用いてインサートインジェクション成形を行なう。キャビティを有するキャビティ型60のキャビティ内面には、静電容量センサー10の表面形状を規定する凹凸が彫り込まれている。コア型61は、支持体18の形状を規定する。
キャビティ型60とコア型61とを用いたインサートインジェクション成形は、フィルム基材17の凸面27側に凹型のキャビティ型60を、フィルム基材17の凹面28側にコア型61を配置し、フィルム基材17は、キャビティ型60に固定される。そして、コア型61の樹脂注入孔62から支持体18となる射出樹脂29を注入して高圧及び高温で押圧する。インサートインジェクション成形により、フィルム基材17の凸面27に配置されている回路パターン16は、フィルム基材17の凸面27内に埋め込まれる。フィルム基材17の凸面27内に埋め込まれた回路パターン16は、成形面30において凹凸がなくなる。
【0030】
図9に示すように、第3工程の後段では、キャビティ型60及びコア型61が開かれる。
図10に示すように、成形面30において凹凸のない回路パターン16を有するセンサーシート11が製造される。
【0031】
図4に示すように、ステップS105においては、フィルム基材17の凸面27に加飾フィルム12を設ける第4工程を行う。ステップ105の後にステップS106を行う。
図11に示すように、第4工程では、三次元加飾工法により、センサーシート11の凸面27にセンサーシート11の成形面30に追従させて加飾フィルム12を貼り合わせた成形品31が製造される。なお、加飾フィルム12を成形面30に追従させる具体的な工法としては、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、超高圧成形またはTOM工法等によるオーバーレイ成形工法が挙げられる。
【0032】
図4に示すように、ステップS106においては、成形品31にトリミングを行う。
図12に示すように、成形品31をトリミングして外形を整えることにより静電容量センサー10が製造される。
【0033】
次に、本実施形態の静電容量センサー10の使用方法及び作用について説明する。
このような静電容量センサー10は、使用時には、コネクタ21を介して配線14が回路基板22上の検出回路に電気的に接続された状態となる。検出回路は、電極13に対して基準信号を出力する。すると、電極13に出力された基準信号により、電極13に電荷が蓄積される。そこで、加飾フィルム12に対して不図示の入力体が接近すると、電極13と入力体とが静電結合されることにより、電極13と入力体との間にキャパシタが構成される。そして、電極13と入力体との間の距離によって電極13と入力体との間の静電容量が変化し、検出回路は、この静電容量の変化を検出する。
【0034】
以上説明したように、本実施の形態の静電容量センサーの製造方法によれば、凹凸のない回路パターン16を有するセンサーシート11を製造できる。従って、本実施の形態の静電容量センサーの製造方法によれば、印刷の厚みが視覚的に認識されない良好な表面外観を実現できる。
【0035】
また、本実施の形態の静電容量センサーの製造方法によれば、凸面27にキャビティ型60を接触させて成形する工程がインサートインジェクションであるために、回路パターン16の位置決め精度を向上することができる。
【0036】
そして、本実施の形態の静電容量センサーの製造方法によれば、凹凸のない回路パターン16を有するセンサーシート11に加飾フィルム12を設けている。従って、本実施の形態の静電容量センサーの製造方法によれば、印刷の厚みが視覚的に認識されない良好な表面外観を実現できる。
【0037】
さらに、本実施の形態の静電容量センサーの製造方法によれば、フィルム基材17の単体状態にてフォーミング及びインサートインジェクション成形の工程を進ませることができる。従って、本実施の形態の静電容量センサーの製造方法によれば、位置ずれや形状が甘くなるといった不具合を回避することができる。
【0038】
さらにまた、本実施の形態の静電容量センサーの製造方法によれば、インサートインジェクション成形が終了した後のセンサーシート11に加飾フィルム12を貼り合わせることができる。従って、本実施の形態の静電容量センサーの製造方法によれば、接着剤層24が高温の射出樹脂で損傷することを回避することができる。
【0039】
加えて、本実施の形態の静電容量センサーの製造方法によれば、スルーホールやジャンパーといった段差が生じやすい形状を形成する場合、厚みの影響による外観悪化を防ぐ静電容量センサー10を製造することができる。
【0040】
さらに、本実施の形態の静電容量センサーの製造方法によれば、雄型50を用いているために、雌型を用いる場合と比較して、圧空成形時に、フィルム基材17の伸びによる位置ずれを少なくできる。
【0041】
またさらに、本実施の形態の静電容量センサーの製造方法によれば、三次元表面加飾工法により、センサーシート11の凸面27にセンサーシート11の成形面30に追従させて加飾フィルム12を貼り合わせる。従って、本実施の形態の静電容量センサーの製造方法によれば、フィルム基材17に対して加飾層23を位置ずれなく設けることができる。
【0042】
(変形例1)
図13は、静電容量センサーの製造方法の第1変形例の第1工程の模式図である。図13に示すように、第1工程では、フィルム基材17の表面25に代えて、フィルム基材17の裏面26に、電極13、配線14を有する回路パターン16をスクリーン印刷により形成している。
【0043】
図14は、静電容量センサーの製造方法の第1変形例の第2工程の模式図である。図14に示すように、第2工程では、フィルム基材17の裏面26側から雄型50により圧空成形する。圧空成形により、電極13、配線14は、フィルム基材17の凹面28の湾曲形状に追従して変形されて埋め込まれる。このとき、フィルム基材17の表面25には、電極13、配線14の体積に応じた転写面71が形成される。しかし、この転写面71は、以後の工程において、凹型のキャビティ型60によるインサートインジェクション成形により、凹凸のない面に成形される。
【0044】
第1変形例の静電容量センサーの製造方法によれば、回路パターン16を形成したフィルム基材17の裏面26側から雄型50により圧空成形する。そのため、第1変形例の静電容量センサーの製造方法によれば、回路パターン16に対して雄型50を直接的に押圧することにより位置ずれを確実に防止して回路パターン16を設置することができる。
【0045】
(変形例2)
図15は、静電容量センサーの製造方法の第2変形例の第1工程の模式図である。図15に示すように、第1工程では、フィルム基材17の表面25に、電極13、配線14の回路パターン16をスクリーン印刷により形成する。そして、第1工程では、電極13、配線14を覆って保護層72を形成する。保護層72は、絶縁性を有する。
【0046】
第2変形例の静電容量センサーの製造方法によれば、保護層72により、インサート成形時に、回路パターン16に対する衝撃を和らげることができる。従って、第2変形例の静電容量センサーの製造方法によれば、回路パターン16の位置ずれを確実に防止できる。
【0047】
(変形例3)
図16は、静電容量センサーの製造方法の第3変形例の第1工程の模式図である。図16に示すように、第1工程では、フィルム基材17の表面25に、電極13、配線14の回路パターン16をスクリーン印刷により形成し、これらの上に保護層73を一体に形成している。保護層73は、絶縁性を有し、回路パターン16上に単一の平坦面74を形成する。なお、保護層73は、厚膜印刷が可能なことから、UV硬化タイプのインクが適する。
【0048】
第3変形例の静電容量センサーの製造方法によれば、フィルム基材17に一体に形成された保護層73を有することにより、インサート成形時に、回路パターン16に対する衝撃を和らげることができる。従って、第3変形例の静電容量センサーの製造方法によれば、回路パターン16の位置ずれを確実に防止できる。
【0049】
また、第3変形例の静電容量センサーの製造方法によれば、保護層73により、回路パターン16上に平坦面74を形成するので、センサーシート11の厚みを均一にすることができる。
【0050】
そして、第3変形例の静電容量センサーの製造方法によれば、平坦面74を形成することで配線14の厚みの影響をより受けにくくすることができるので、図4に示したステップS104の工程にて平坦化が容易である。
【0051】
(変形例4)
図17は、静電容量センサーの製造方法の第4変形例の第1工程の模式図である。図17に示すように、本変形例は両面印刷の場合である。フィルム基材17の表面25には、電極13、配線14の回路パターン16をスクリーン印刷により形成しており、回路パターン16を覆って保護層75を形成している。保護層75は、表面に均一な平坦面76を有する。
【0052】
フィルム基材17の裏面26には、スルーホール77に収容された接続線78を通じて配線14に導通する接地層79を形成している。そして、接地層79を覆って保護層80を形成している。保護層80は、裏面に平坦面81を有する。なお、スルーホール77に収容した接続線78に代えて、配線14と接地層79とをジャンパー線で接続してもよい。
【0053】
第4変形例の静電容量センサーの製造方法によれば、保護層75及び保護層80により、センサーシート11の厚みを均一にすることができる。
【0054】
(変形例5)
図18は、静電容量センサーの製造方法の第5変形例の第1工程の模式図である。図18に示すように、本変形例は誘電接続を適用した場合である。誘電接続とは、誘電体を挟んで二つの導電体が配置された構成の接続のことである。フィルム基材17の表面25には、誘電接続用の電極82を形成しており、電極82を独立して覆う保護層83を形成している。保護層83は、表面に均一な平坦面84を形成している。ここで、例えば、フィルム基材(支持体)17に、電極13と対となる導電体が形成され、さらに検出回路を備えた基板を貼り付けることにより使用できる。そして、電極13への指の近接又は接触を誘導無線信号として導電体が受信することにより、検出が可能となる。
【0055】
第5変形例の静電容量センサーの製造方法によれば、誘電接続用の電極82を形成した場合に対応でき、端子部等の取り出しを不要とするためにトリミングする工程を簡単にすることができる。
【0056】
また、第5変形例の静電容量センサーの製造方法によれば、配線を有さないために、インジェクション成形を行う場合の高温・高圧樹脂によりインキ流れが生じ、電極が破損する影響を防止できる。
【0057】
以上、本発明の一実施形態及び変形例について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態及び変形例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上記一実施形態及び変形例に示したタッチスイッチに限定されず、三次元形状のタッチパネルにおいても同様に実施可能である。
また、上記一実施形態及び変形例に記載の技術事項を適宜組み合わせることもできる。
【符号の説明】
【0058】
10 静電容量センサー
11 センサーシート
12 加飾フィルム
13、82 電極
14 配線
16 回路パターン
17 フィルム基材
18 支持体
19 接続部
20 外部接続部
21 コネクタ
22 回路基板
23 加飾層
24 接着剤層
25 表面
26 裏面
27 凸面
28 凹面
29 射出樹脂
30 成形面
31 成形品
50 雄型
60 キャビティ型
61 コア型
71 転写面
72、73、75、80、83 保護層
74、76、81、84 平坦面
77 スルーホール
78 接続線
79 接地層
図1
図2
図3
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