(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6106469
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】ΔΣA/Dコンバータ、およびそれを用いたオーディオ信号処理回路、電子機器、ΔΣ変調方法
(51)【国際特許分類】
H03M 3/02 20060101AFI20170316BHJP
【FI】
H03M3/02
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-40934(P2013-40934)
(22)【出願日】2013年3月1日
(65)【公開番号】特開2014-171035(P2014-171035A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2016年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】坂野 佳久
【審査官】
北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−283745(JP,A)
【文献】
特開2002−261614(JP,A)
【文献】
特開2009−260605(JP,A)
【文献】
米国特許第06369729(US,B1)
【文献】
特開2011−101247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 3/00−11/00
H03M 1/00−1/88
IEEE Xplore
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログの入力信号をデジタルの出力信号に変換するΔΣA/Dコンバータであって、
前記デジタルの出力信号をアナログの帰還信号に変換するD/Aコンバータと、
前記入力信号に応じた信号と前記帰還信号に応じた信号の差分に応じた差分信号を生成する差分演算回路と、
前記差分信号をフィルタリングする積分回路であって、直列に接続された複数ステージで構成され、各ステージは差動形式の積分器を含む積分回路と、
前記積分回路の出力信号を量子化し、前記出力信号を生成する量子化器と、
を備え、
各ステージの積分器は、差動形式のスイッチドキャパシタ回路と、完全差動型の演算増幅器と、を含み、
少なくともひとつのステージの前記スイッチドキャパシタ回路の基準電圧ラインには、ひとつ前のステージの前記演算増幅器の差動出力のコモンモード電圧が供給されることを特徴とするΔΣA/Dコンバータ。
【請求項2】
前記少なくともひとつのステージの積分器はそれぞれ、同じステージの前記スイッチドキャパシタ回路の前記基準電圧ラインに、その前のステージの前記演算増幅器の差動出力のコモン電圧を印加するバッファをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のΔΣA/Dコンバータ。
【請求項3】
前記スイッチドキャパシタ回路は、
前記基準電圧ラインと、
第1、第2キャパシタと、
第1、第2入力端子と、
第1、第2出力端子と、
前記第1入力端子と前記第1キャパシタの一端との間に設けられた第1スイッチと、
前記第2入力端子と前記第2キャパシタの一端との間に設けられた第2スイッチと、
前記第1キャパシタの一端と前記基準電圧ラインとの間に設けられた第3スイッチと、
前記第2キャパシタの一端と前記基準電圧ラインとの間に設けられた第4スイッチと、
前記第1キャパシタの他端と前記基準電圧ラインとの間に設けられた第5スイッチと、
前記第2キャパシタの他端と前記基準電圧ラインとの間に設けられた第6スイッチと、
前記第1キャパシタの他端と前記第1出力端子との間に設けられた第7スイッチと、
前記第2キャパシタの他端と前記第2出力端子との間に設けられた第8スイッチと、
を含み、
前記第1、第2、第5、第6スイッチがオンとなる第1フェーズと、前記第3、第4、第7、第8スイッチがオンとなる第2フェーズと、を交互に繰り返すことを特徴とする請求項1または2に記載のΔΣA/Dコンバータ。
【請求項4】
前記演算増幅器の一方の入力端子は、前記スイッチドキャパシタ回路の第1出力端子と接続され、その他方の入力端子は、前記スイッチドキャパシタ回路の第2出力端子と接続されており、
前記積分器は、
前記演算増幅器の一方の入力端子と、その一方の出力端子の間に設けられた第3キャパシタと、
前記演算増幅器の他方の入力端子と、その他方の出力端子の間に設けられた第4キャパシタと、
をさらに含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のΔΣA/Dコンバータ。
【請求項5】
アナログのオーディオ信号をデジタル信号に変換する請求項1から4のいずれかに記載のΔΣA/Dコンバータと、
デジタル化されたオーディオ信号に所定の信号処理を施す信号処理部と、
を備えることを特徴とするオーディオ信号処理回路。
【請求項6】
請求項5に記載のオーディオ信号処理回路を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項7】
アナログの入力信号をデジタルの出力信号に変換するΔΣ変調方法であって、
前記デジタルの出力信号をアナログの帰還信号に変換するステップと、
前記入力信号に応じた信号と前記帰還信号に応じた信号の差分に応じた差分信号を生成するステップと、
積分回路を用いて、前記差分信号をフィルタリングするステップと、
前記積分回路を、直列に接続された複数ステージで構成し、各ステージは差動形式の積分器を含むステップと、
各ステージの積分器を、差動形式のスイッチドキャパシタ回路と、完全差動型の演算増幅器と、により構成するステップと、
前記積分回路の出力信号を量子化し、前記出力信号を生成するステップと、
少なくともひとつのステージの前記スイッチドキャパシタ回路の基準電圧ラインに、ひとつ前のステージの前記演算増幅器のコモンモード電圧を供給するステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ΔΣ変調方式のA/Dコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
オーディオ信号処理などにおいて、ΔΣ変調を利用したA/Dコンバータ(ΔΣA/Dコンバータともいう)が広く利用されている。ΔΣA/Dコンバータを用いることにより、量子化誤差に起因するノイズスペクトラムを、オーディオ帯域外に移動させることができる。これをノイズシェーピングと呼ぶ。
【0003】
図1は、一般的なΔΣA/Dコンバータ2を示すブロック図である。ΔΣA/Dコンバータ2は、入力アナログ入力信号S
INをデジタル信号D
OUTに変換する。A/Dコンバータ2は、主として差分演算回路10、積分回路20、量子化器30、D/Aコンバータ40を備える。
【0004】
差分演算回路10は、アナログ入力信号S
INと、アナログ帰還信号S
FBとの差分を示す差分信号S
DIFFを生成する。積分回路20は、差分信号S
DIFFを積分(フィルタリング)する。量子化器30は、積分された差分信号を量子化する。量子化されたデジタル値D
OUTは、アナログデジタル変換の結果として出力される。D/Aコンバータ40は、量子化されたデジタル値D
OUTをアナログ帰還信号S
FBに変換し、差分演算回路10にフィードバックする。
【0005】
積分回路20は、離散時間型あるいは連続時間型で構成される。離散時間型の積分回路20は、スイッチドキャパシタ回路と演算増幅器の組み合わせによって構成される(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−172412号公報
【特許文献2】特開2009−33303号公報
【特許文献3】特開2011−101247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図2は、本発明者が検討した積分回路20rの構成を示す回路図である。入力アナログ信号S
INは差動信号であり、積分回路20rは、差動形式で構成される。積分回路20rには、直列に接続された複数の離散時間型積分器22_1、22_2、…(単に積分器ともいう)が設けられる。積分器22の個数は、フィルタの次数に応じて定められる。積分回路20rは、複数の積分器22に加えて、係数回路や加算器を備えるが、
図2には、これらが省略されている。
【0008】
積分器22は、スイッチドキャパシタ回路24と演算増幅器26、キャパシタC1、C2を含む。複数のステージそれぞれの積分器22のスイッチドキャパシタ回路24には、共通の基準電圧V
REFが与えられる。しかしながら、現実的には、各ステージの演算増幅器26にオフセット電圧が存在し、オフセット電圧の量もステージごとにばらつく。したがってすべてのステージで基準電圧V
REFを共通とした場合、A/Dコンバータの精度が低下し、SN比が悪化する。なお、この課題を当業者の共通の認識ととらえてはならない。
【0009】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的は、ΔΣA/Dコンバータのノイズ特性の改善にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある態様は、アナログの入力信号をデジタルの出力信号に変換するΔΣA/Dコンバータに関する。ΔΣA/Dコンバータは、デジタルの出力信号をアナログの帰還信号に変換するD/Aコンバータと、入力信号に応じた信号と帰還信号に応じた信号の差分に応じた差分信号を生成する差分演算回路と、差分信号をフィルタリングする積分回路であって、直列に接続された複数ステージで構成され、各ステージは差動形式の積分器を含む積分回路と、積分回路の出力信号を量子化し、出力信号を生成する量子化器と、を備える。各ステージの積分器は、差動形式のスイッチドキャパシタ回路と、完全差動型の演算増幅器と、を含む。少なくともひとつのステージのスイッチドキャパシタ回路の基準電圧ラインには、ひとつ前のステージの演算増幅器の差動出力のコモンモード電圧が供給される。
【0011】
この態様によると、各ステージのスイッチドキャパシタ回路の基準電圧に、前段の演算増幅器のオフセット電圧が反映されるため、A/Dコンバータの電圧精度を高めることができ、ひいてはノイズ特性を改善することができる。
【0012】
少なくともひとつのステージの積分器はそれぞれ、同じステージのスイッチドキャパシタ回路の基準電圧ラインに、その前のステージの演算増幅器の差動出力のコモン電圧を印加するバッファをさらに含んでもよい。
【0013】
スイッチドキャパシタ回路は、基準電圧ラインと、第1、第2キャパシタと、第1、第2入力端子と、第1、第2出力端子と、第1入力端子と第1キャパシタの一端との間に設けられた第1スイッチと、第2入力端子と第2キャパシタの一端との間に設けられた第2スイッチと、第1キャパシタの一端と基準電圧ラインとの間に設けられた第3スイッチと、第2キャパシタの一端と基準電圧ラインとの間に設けられた第4スイッチと、第1キャパシタの他端と基準電圧ラインとの間に設けられた第5スイッチと、第2キャパシタの他端と基準電圧ラインとの間に設けられた第6スイッチと、第1キャパシタの他端と第1出力端子との間に設けられた第7スイッチと、第2キャパシタの他端と第2出力端子との間に設けられた第8スイッチと、を含んでもよい。スイッチドキャパシタ回路は、第1、第2、第5、第6スイッチがオンとなる第1フェーズと、第3、第4、第7、第8スイッチがオンとなる第2フェーズと、を交互に繰り返してもよい。
【0014】
演算増幅器の一方の入力端子は、スイッチドキャパシタ回路の第1出力端子と接続され、その他方の入力端子は、スイッチドキャパシタ回路の第2出力端子と接続されてもよい。積分器は、演算増幅器の一方の入力端子と、その一方の出力端子の間に設けられた第3キャパシタと、演算増幅器の他方の入力端子と、その他方の出力端子の間に設けられた第4キャパシタと、をさらに含んでもよい。
【0015】
本発明の別の態様は、オーディオ信号処理回路に関する。オーディオ信号処理回路は、アナログのオーディオ信号をデジタル信号に変換する上述のいずれかのΔΣA/Dコンバータと、デジタル化されたオーディオ信号に所定の信号処理を施す信号処理部と、を備える。
【0016】
本発明の別の態様は、電子機器に関する。電子機器は、上述のオーディオ信号処理回路を備える。
【0017】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を、方法、装置などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るΔΣA/Dコンバータによれば、ノイズを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一般的なΔΣA/Dコンバータを示すブロック図である。
【
図2】本発明者が検討した積分回路の構成を示す回路図である。
【
図3】実施の形態に係る積分回路の構成の一部を示す回路図である。
【
図4】完全差動型の演算増幅器の簡素化された回路図である。
【
図5】実施の形態に係るΔΣA/Dコンバータを利用した電子機器の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0021】
実施の形態に係るΔΣA/Dコンバータ2の全体構成は、
図1のΔΣA/Dコンバータ2と同様である。すなわちΔΣA/Dコンバータ2は、入力アナログ信号S
INを受け、それを出力デジタル信号D
OUTに変換する。ΔΣA/Dコンバータ2は、差分演算回路10、積分回路20、量子化器30、D/Aコンバータ40を備える。
【0022】
差分演算回路10は、入力アナログ信号S
INと、アナログ帰還信号S
FBとの差分を示す差分信号S
DIFFを生成する。積分回路20は、差分信号S
DIFFを積分(フィルタリング)する。量子化器30は、積分された差分信号を量子化する。量子化されたデジタル値D
OUTは、アナログデジタル変換の結果として出力される。D/Aコンバータ40は、量子化されたデジタル値D
OUTをアナログ帰還信号S
FBに変換し、差分演算回路10にフィードバックする。
【0023】
図3は、実施の形態に係る積分回路20の構成の一部を示す回路図である。積分回路20は、離散時間型であり、直列に接続された複数ステージの積分器22_1〜22_Nで構成される。ステージ数Nは特に限定されるものではなく、積分回路(フィルタ)の次数に応じたステージ数で構成すればよい。
【0024】
積分回路20は、複数の積分器22に加えて、係数回路や加算器を備えるが、
図3には、これらが省略されている。積分回路20は、公知の、あるいは将来利用可能な回路トポロジーで構成すればよい。
【0025】
積分器22は、差動形式のスイッチドキャパシタ回路24と、完全差動型の演算増幅器26、第1キャパシタC1、第2キャパシタC2を備える。なお、本発明において、スイッチドキャパシタ回路24や演算増幅器26それぞれの具体的な構成は特に限定されない。
【0026】
スイッチドキャパシタ回路24は、第1入力端子P1、第2入力端子P2、第1出力端子P3、第2出力端子P4、基準電圧ライン25、第1スイッチSW1〜第8スイッチSW8、第1キャパシタC11、第2キャパシタC12を含む。
【0027】
第1スイッチSW1は、第1入力端子P1と第1キャパシタC11の一端との間に設けられ、第2スイッチSW2は、第2入力端子P2と第2キャパシタC12の一端との間に設けられる。第3スイッチSW3は、第1キャパシタC11の一端と基準電圧ライン25との間に設けられ、第4スイッチSW4は、第2キャパシタC2の一端と基準電圧ライン25との間に設けられる。
【0028】
第5スイッチSW5は、第1キャパシタC11の他端と基準電圧ライン25との間に設けられ、第6スイッチSW6は、第2キャパシタC12の他端と基準電圧ライン25との間に設けられ、第7スイッチSW7は、第1キャパシタC11の他端と第1出力端子P3との間に設けられ、第8スイッチSW8は、第2キャパシタC12の他端と第2出力端子P4との間に設けられる。
スイッチドキャパシタ回路24は、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、第5スイッチSW5、第6スイッチSW6がオンとなる第1フェーズφ1と、第3スイッチSW3、第4スイッチSW4、第7スイッチSW7、第8スイッチSW8がオンとなる第2フェーズφ2と、を交互に繰り返す。
【0029】
この積分回路20において、少なくともひとつのステージ(本実施の形態では、第2ステージ以降、i=2、3、…N)のスイッチドキャパシタ回路24_iの基準電圧ライン25_iには、ひとつ前のステージの演算増幅器26_(i−1)の差動出力のコモンモード電圧V
COMが供給される。
【0030】
図4は、完全差動型の演算増幅器26の簡素化された回路図である。演算増幅器26は、差動対60と、テイル電流源62と、負荷回路64と、コモンモードフィードバック回路66と、を備える。コモンモードフィードバック回路66は、検出回路68、フィードバック回路70を含む。検出回路68は、演算増幅器26の出力端子OUT
PとOUT
Nに生ずる差動信号Vo
P、Vo
Nの中点電圧(コモンモード電圧V
COM=(Vo
P+Vo
N)/2)を検出する。フィードバック回路70は、検出されたコモンモード電圧V
COMが、所定の目標電圧V
REFと一致するように、演算増幅器26のバイアス状態(たとえばテイル電流源62が生成するテイル電流の量)をフィードバック制御する。コモンモードフィードバック回路66の構成は特に限定されず、離散時間型、あるいは連続時間型のさまざまな回路を利用することができる。
【0031】
i番目のステージの基準電圧ライン25_iに印加すべきコモンモード電圧V
COMは、前段の演算増幅器26_(i−1)の検出回路68によって検出されたコモンモード電圧V
COMを利用することができる。
【0032】
図3および
図4に示すように、少なくともひとつのステージ(第iステージ)の積分器22_iは、同じステージのスイッチドキャパシタ回路24_iの基準電圧ライン25_iに、その前のステージの演算増幅器26_(i−1)の差動出力のコモン電圧V
COMを印加するバッファ28_iを備える。
なお、検出回路68の出力インピーダンスが十分に低い場合には、バッファ28_iは省略してもよい。
【0033】
以上がΔΣA/Dコンバータ2の構成である。
各ステージi=2,3,…のスイッチドキャパシタ回路24_2、24_3、…の基準電圧V
REF2、V
REF3、…に、前段の演算増幅器26_1、26_2、…のオフセット電圧が反映されるため、A/Dコンバータ2の電圧精度を高めることができ、ひいてはノイズ特性を改善することができる。
【0034】
図5は、実施の形態に係るΔΣA/Dコンバータ2を利用した電子機器500の構成を示すブロック図である。電子機器500は、マイク502、オーディオ信号処理回路504、パワーアンプ506、スピーカ(ヘッドホン)508を備える。
【0035】
たとえば電子機器500は、ICレコーダ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、携帯電話などである。
マイク502は、音響信号をアナログの電気信号に変換する。
オーディオ信号処理回路504は、マルチプレクサ510、DSP(Digital Signal Processor)512、D/Aコンバータ514を含む。マルチプレクサ510は、マイク502から、および図示しない音源からのアナログオーディオ信号を受け、ひとつを選択する。A/Dコンバータ2は、マルチプレクサにより選択されたオーディオ信号S
INをデジタル信号D
OUTに変換する。DSP512は、デジタルのオーディオ信号D
OUTに、所定の信号処理を施す。信号処理には、フィルタリング、イコライジング、エコー、デジタルボリウム制御、ミキシングなどが例示される。D/Aコンバータ514は、DSP512からのデジタル信号をアナログのオーディオ信号に変換する。パワーアンプ506は、オーディオ信号処理回路504からのオーディオ信号にもとづいて、スピーカ508を駆動する。
【0036】
またΔΣA/Dコンバータ2によってデジタルに変換されたオーディオ信号は、図示しないメモリに保存されてもよい。この場合、DSP512は、デジタルオーディオ信号D
OUTを、所定のフォーマットで圧縮(エンコード)してもよい。
【0037】
図5の電子機器500によれば、オーディオ信号を、低ノイズでデジタル信号に変換することができるため、後にデジタル信号をアナログ信号に再変換して再生する際に、高音質なオーディオ信号を得ることができる。
【0038】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0039】
実施の形態では、ΔΣA/Dコンバータ2を、オーディオ信号をデジタル信号に変換する用途に使用する場合を説明したが、本発明はそれには限定されない。ΔΣA/Dコンバータ2は、温度センサ、流量計、磁気センサ、速度センサやジャイロセンサをはじめとする各種センサの出力をデジタル値に変換する用途に利用できる。
【0040】
実施の形態にもとづき、本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を離脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能である。
【符号の説明】
【0041】
2…ΔΣA/Dコンバータ、10…差分演算回路、20…積分回路、22…積分器、24…スイッチドキャパシタ回路、25…基準電圧ライン、26…演算増幅器、28…バッファ、30…量子化器、40…D/Aコンバータ、50…スイッチドキャパシタ回路、60…差動対、62…テイル電流源、64…負荷回路、66…コモンモードフィードバック回路、68…検出回路、70…フィードバック回路。