特許第6106479号(P6106479)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東電工株式会社の特許一覧

特許6106479フィルタ濾材およびフィルタ濾材の製造方法
<>
  • 特許6106479-フィルタ濾材およびフィルタ濾材の製造方法 図000003
  • 特許6106479-フィルタ濾材およびフィルタ濾材の製造方法 図000004
  • 特許6106479-フィルタ濾材およびフィルタ濾材の製造方法 図000005
  • 特許6106479-フィルタ濾材およびフィルタ濾材の製造方法 図000006
  • 特許6106479-フィルタ濾材およびフィルタ濾材の製造方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6106479
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】フィルタ濾材およびフィルタ濾材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/16 20060101AFI20170316BHJP
   B01D 46/52 20060101ALI20170316BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20170316BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   B01D39/16 E
   B01D46/52 A
   B01D69/10
   B01D69/12
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-58044(P2013-58044)
(22)【出願日】2013年3月21日
(65)【公開番号】特開2014-180641(P2014-180641A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2015年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】堀江 百合
(72)【発明者】
【氏名】新井 雅弘
【審査官】 関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−107526(JP,A)
【文献】 特開2003−265910(JP,A)
【文献】 特開平03−293008(JP,A)
【文献】 特開平06−178905(JP,A)
【文献】 特開2005−266004(JP,A)
【文献】 特表2016−508866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/00−41/04
B01D 46/00−46/54
B01D 29/00−29/96
B01D 53/22
B01D 61/00−71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被濾過気体に含まれる粒子を捕集する多孔質層と、該多孔質層の少なくとも一方の面に貼合わされる基材層とを備える濾材原反が複数箇所で屈曲されて襞状に形成されてなるフィルタ濾材であって、
前記濾材原反が一方向に沿って屈曲されて形成される屈曲部と、濾材原反の屈曲部以外の領域が板状に形成されてなる平板部と、濾材原反の一方の面側および他方の面側における各平板部の間に形成されて隣り合う屈曲部同士の間隔を保持する複数の間隔保持部とを備え、
前記平板部は、多孔質層と基材層とが貼合わされる貼合部と、多孔質層と基材層とが貼合わされない非貼合部とを備え、
前記濾材原反の一方の面側に形成される各間隔保持部と、濾材原反の他方の面側に形成される各間隔保持部とは、各平板部における貼合部を介して重なり合うように形成されており、
隣り合う平板部における貼合部同士が間隔保持部を介して接着されることを特徴とするフィルタ濾材。
【請求項2】
前記貼合部は、前記屈曲部に対して交差する方向に沿って連続的、又は、断続的に形成されており、前記間隔保持部は、各平板部における貼合部の面積の内側に形成されると共に、屈曲部に対して交差する方向に沿って連続的、又は、断続的に形成されることを特徴とする請求項1に記載のフィルタ濾材。
【請求項3】
前記貼合部と前記間隔保持部との接触面積は、貼合部の面積に対して10%以上100%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルタ濾材。
【請求項4】
前記多孔質層と前記基材層とが熱ラミネートされることで貼合部が形成されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のフィルタ濾材。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載のフィルタ濾材を形成するフィルタ濾材の製造方法であって、
前記濾材原反における前記平板部となる領域に形成される前記貼合部を介して重なり合うように濾材原反の両面に接着剤を配置した後、濾材原反を襞状に屈曲させて複数の屈曲部および複数の平板部を形成すると共に、濾材原反の一方の面側および他方の面側における各平板部の間で、濾材原反の一方の面側の接着剤同士および他方の面側の接着剤同士を接合し、貼合部を介して重なり合うように濾材原反の一方の面側および他方の面側に間隔保持部を形成することを特徴とするフィルタ濾材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被濾過気体に含まれる粒子を捕集するフィルタ濾材に関し、特に、該粒子を捕集する多孔質層と、該多孔質層に貼合わされる基材層とを備える濾材原反がプリーツ加工されてなるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体や液晶を製造する工場のクリーンルーム等で使用されるフィルタ濾材としては、被濾過気体に含まれる粒子を捕集する多孔質層(例えば、ポリテトラフルオロエチレンからなるもの等)と、該多孔質層の少なくとも一方の面に貼合わされる基材層(例えば、不織布等)とを備える濾材原反がプリーツ加工されてなるものが知られている。
【0003】
多孔質層と基材層とを貼合わせる方法としては、例えば、多孔質層と基材層とを熱ラミネートする方法が知られている。具体的には、熱可塑性を有する素材からなる基材層を用い、多孔質層と基材層とを積層した状態で加熱しつつ、多孔質層と基材層とを圧着する方法や、斯かる基材層を加熱した状態で多孔質層と積層して圧着する方法が知られている(特許文献1および2参照)。これらの方法では、軟化した基材層の一部が多孔質層の孔に入り込むことによるアンカー効果によって、多孔質層と基材層とが貼合わされることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−990号公報
【特許文献2】特開2009−101254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように、熱ラミネートによって多孔質層と基材層とを貼合わせる場合、軟化した基材層の一部が多孔質層の孔に入り込み、多孔質層の孔が閉塞される。このため、多孔質層の通気性が低下し、圧力損失の高いフィルタ濾材となってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、フィルタ濾材の製造時における多孔質層の通気性の低下を抑制し、圧力損失を比較的低くすることができるフィルタ濾材、および、該フィルタ濾材の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るフィルタ濾材は、被濾過気体に含まれる粒子を捕集する多孔質層と、該多孔質層の少なくとも一方の面に貼合わされる基材層とを備える濾材原反が複数箇所で屈曲されて襞状に形成されてなるフィルタ濾材であって、前記濾材原反が一方向に沿って屈曲されて形成される屈曲部と、濾材原反の屈曲部以外の領域が板状に形成されてなる平板部と、濾材原反の一方の面側および他方の面側における各平板部の間に形成されて隣り合う屈曲部同士の間隔を保持する複数の間隔保持部とを備え、前記平板部は、多孔質層と基材層とが貼合わされる貼合部と、多孔質層と基材層とが貼合わされない非貼合部とを備え、前記濾材原反の一方の面側に形成される各間隔保持部と、濾材原反の他方の面側に形成される各間隔保持部とは、各平板部における貼合部を介して重なり合うように形成されており、隣り合う平板部における貼合部同士が間隔保持部を介して接着されることを特徴とする。
【0008】
斯かる構成によれば、平板部に非貼合部が形成されることで、平板部の全体に貼合部が形成される場合よりも、圧力損失の低いフィルタ濾材を得ることができる。具体的には、非貼合部では、多孔質層と基材層とが貼合わされていないため、多孔質層の孔に基材層の一部が入り込んで該孔が閉塞されたり、多孔質層と基材層とを接着する接着剤によって多孔質層の孔が閉塞されたりしていない。このため、非貼合部の方が貼合部よりも通気性が高くなる。
【0009】
また、フィルタ濾材を通過する被濾過気体は、平板部を主に透過することになるため、非貼合部が平板部に形成されることで、平板部の全体に貼合部が形成されている場合よりも、フィルタ濾材の通気性が高くなる。以上のように、平板部に非貼合部を備えることで、圧力損失の低いフィルタ濾材を得ることができる。
【0010】
また、斯かるフィルタ濾材は、平板部同士の間隔が広がるような方向(以下、引き伸ばし方向とも記す)に引き伸ばされた状態で使用される場合があるが、斯かる場合であっても、多孔質層と基材層とが部分的に分離してしまうのを防止することができる。具体的には、引き伸ばし方向にフィルタ濾材が引き伸ばされると、濾材原反の一方の面側に形成される間隔保持部(以下、一方面側間隔保持部とも記す)と濾材原反の他方の面側に形成される間隔保持部(以下、他方面側間隔保持部とも記す)とが引き伸ばし方向に沿って引き離されることになる。この際、一方面側間隔保持部と他方面側間隔保持部とが平板部を介して重なり合う領域(以下、間隔保持部重合部とも記す)では、平板部を形成する濾材原反が一方面側間隔保持部によって一方の面側に引っ張られると共に、他方面側間隔保持部によって他方の面側に引っ張られることになる。このため、間隔保持部重合部では、多孔質層と基材層とを引き離すような力が濾材原反に加わり、多孔質層と基材層との間に空間が形成される虞がある。
【0011】
しかしながら、一方面側間隔保持部と他方面側間隔保持部とが平板部における貼合部を介して重なり合うように形成されると共に、貼合部同士を接着するように構成されることで、一方面側間隔保持部と他方面側間隔保持部とが引き伸ばし方向に沿って離間した際にも、一方面側間隔保持部と他方面側間隔保持部との間に位置する多孔質層と基材層との貼合わせ状態が貼合部によって維持される。これにより、多孔質層と基材層とが引き離されるのを防止することができ、多孔質層と基材層との間に空間が形成されてフィルタ濾材の圧力損失が増加するのを抑制することができる。
【0012】
また、前記貼合部は、前記屈曲部に対して交差する方向に沿って連続的、又は、断続的に形成されており、前記間隔保持部は、各平板部における貼合部の面積の内側に形成されると共に、屈曲部に対して交差する方向に沿って連続的、又は、断続的に形成されることが好ましい。
【0013】
また、前記貼合部と前記間隔保持部との接触面積は、貼合部の面積に対して10%以上100%以下であることが好ましい。更に、前記多孔質層と前記基材層とが熱ラミネートされることで貼合部が形成されることが好ましい。
【0014】
本発明に係るフィルタ濾材の製造方法は、上記に記載のフィルタ濾材を形成するフィルタ濾材の製造方法であって、前記濾材原反における前記平板部となる領域に形成される前記貼合部を介して重なり合うように濾材原反の両面に接着剤を配置した後、濾材原反を襞状に屈曲させて複数の屈曲部および複数の平板部を形成すると共に、濾材原反の一方の面側および他方の面側における各平板部の間で、濾材原反の一方の面側の接着剤同士および他方の面側の接着剤同士を接合し、貼合部を介して重なり合うように濾材原反の一方の面側および他方の面側に間隔保持部を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、フィルタ濾材の製造時における多孔質層の通気性の低下を抑制し、圧力損失を比較的低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係るフィルタ濾材を示した斜視図。
図2】本実施形態に係るフィルタ濾材で使用する濾材原反を示した斜視図と一部拡大断面図。
図3】(a)は、同実施形態に係るフィルタ濾材を平板部に交差する面で切断した断面図、(b)は、間隔保持部重合部をフィルタ濾材の長さ方向および幅方向に沿った面で切断した断面図。
図4】本実施形態に係るフィルタ濾材の断面図。
図5】(a)は、他の実施形態に係るフィルタ濾材を構成する濾材原反を示した斜視図、(b)は、同実施形態に係るフィルタ濾材の間隔保持部を示した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図1〜4を参照しながら説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付しその説明は繰り返さない。
【0018】
本実施形態に係るフィルタ濾材1は、図1に示すように、被濾過気体に含まれる粒子を捕集する濾材原反2が複数箇所で屈曲されて襞状に形成(以下、プリーツ加工とも記す)されてなるものである。また、フィルタ濾材1は、濾材原反2が一方向に沿って屈曲されて形成される複数の屈曲部1aと、該屈曲部1a以外の領域が板状に形成されてなる複数の平板部1b(具体的には、屈曲部1a,1a間の平板状の部位)と、濾材原反2の一方の面側および他方の面側における各平板部1bの間に形成されて隣り合う屈曲部1a,1a同士の間隔を保持する複数の間隔保持部3とを備える。
【0019】
間隔保持部3は、隣り合う平板部1b,1bにおける対向する一対の対向面(以下、濾材対向面とも記す)1c,1cの間に配置されて、各濾材対向面1c,1cに接着される。これにより、隣り合う平板部1b,1b(具体的には、一対の濾材対向面1c,1c)が間隔保持部3を介して連結される。
【0020】
間隔保持部3は、一対の濾材対向面1c,1cのそれぞれに接着剤が塗布されてなるビード部3a,3a同士が連結されることで形成される。具体的には、各屈曲部1aの山側面を横断するように線状に接着剤が塗布されてビード部3aが形成される。そして、隣り合うビード部3a,3aにおける一対の濾材対向面1c,1c間に位置する部位同士が連結されることで、間隔保持部3が形成される。ビード部3aを構成する接着剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、ホットメルトを用いることができる。ビード部3aの厚みとしては、所望する各屈曲部1a間の間隔に応じて適宜設定することができる。
【0021】
また、間隔保持部3は、各屈曲部1aの伸びる方向(長手方向)に間隔を空けて複数(本実施形態では、3つ)形成される。具体的には、隣り合う二つの屈曲部1a,1aのうち、一方の屈曲部1aの長手方向に間隔を空けて複数形成される各ビード部3aに対応するように、他方の屈曲部1aの長手方向に間隔を空けて複数のビード部3aが形成される。そして、隣り合うビード部3a,3a同士が連結されることで、各屈曲部1aの長手方向に間隔を空けて複数の間隔保持部3が形成される。
【0022】
前記濾材原反2は、図2に示すように、プリーツ加工される前の状態において、一方向に直交する他方向が長手となるように形成される。また、濾材原反2は、長尺状に形成されて巻き回された状態から巻き解かれることでシート状となるように構成されてもよく、所定の長さの枚葉体状に形成されたものであってもよい。また、濾材原反2は、被濾過気体に含まれる粒子を捕集する多孔質層2aと、通気性を有し、該多孔質層2aの少なくとも一方の面に積層される基材層2bとを備える。本実施形態では、多孔質層2aの一方の面に基材層2bが貼合わされて濾材原反2が形成される。
【0023】
前記多孔質層2aは、前記粒子を捕集可能な多孔質のシート材(以下、多孔質シートとも記す)を用いて形成される。該多孔質シートとしては、特に限定されるものではなく、フィルタ濾材1の用途に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をシート状に形成したPTFEシートを用いることができる。該PTFEシートを形成する方法としては、例えば、下記の方法を採用することができる。
【0024】
具体的には、PTFEファインパウダーに液状潤滑剤を添加してペースト状の混合物を形成する。液状潤滑剤としては、特に限定されるものではなく、混合物表面に適度な濡れ性を付与し得るものであればよく、抽出処理や加熱処理によって除去し得るものであれば特に好ましい。例えば、流動パラフィン、ナフサ、ホワイトオイルなどの炭化水素等が液状潤滑剤として用いられる。液状潤滑剤の添加量としては、特に限定されるものではなく、例えば、PTFEファインパウダー100質量部に対して、5質量部以上50質量部以下であることが好ましい。
【0025】
そして、前記混合物を予備成形し、予備成形体を成形する。予備成形は、混合物から液状潤滑剤が分離しない程度の圧力で行うことが好ましい。次に、得られた予備成形体を押出成形や圧延成形することでシート状に成形する。その後、得られた成形体を一軸延伸又は二軸延伸することで多孔質化させてPTFEシートとする。なお、延伸条件としては、特に限定されるものではなく、例えば、30℃以上400℃以下の温度環境で、延伸倍率が各軸1.5倍以上200倍以下であることが好ましい。また、延伸工程で焼成処理されない場合には、延伸工程後に融点以上の温度でPTFEシートを焼成することが好ましい。
【0026】
前記基材層2bは、通気性を有するシート材(以下、通気性シートとも記す)を用いて形成される。通気性シートとしては、特に限定されるものではなく、例えば、不織布や織布、ネット等を用いることができる。特に、多孔質層2a(多孔質層シート)と基材層2b(通気性シート)とを熱溶着(熱ラミネート)させる場合には、熱可塑性を有する素材からなる通気性シートを用いることが好ましい。例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリアミド、ポリエステル、芳香族ポリアミド、アクリル、ポリイミド等の合成繊維、これらの複合材等を用いることができる。なお、通気性シートが1成分から構成されていると、通気性シート全体が溶融して基材層2bとしての形態が保持されなくなる虞があるため、融点差のある2成分を原料とする通気性シートを用いることが好ましい。例えば、PET/PEの芯鞘繊維や、PP/PEの混紡不織布等を通気性シートとして用いることができる。
【0027】
濾材原反2は、多孔質層2aと基材層2bとが部分的に貼合わされて形成される。具体的には、濾材原反2は、多孔質層2aの一部と基材層2bの一部とが貼合されて形成される貼合部2cと、該貼合部2c以外の領域(即ち、多孔質層2aと基材層2bとが貼合されていない領域)からなる非貼合部2dとを備える。そして、貼合部2cには、多孔質層2aおよび基材層2bにおける対峙する面同士が貼合わされた領域(以下、貼合領域とも記す)A1が形成される。
【0028】
貼合部2cおよび貼合領域A1は、濾材原反2の長手方向に沿って(本実施形態では、帯状に)形成される。更に、貼合部2cおよび貼合領域A1は、濾材原反2の長手方向の略全長に亘って連続的に形成される。また、貼合部2cおよび貼合領域A1は、濾材原反2の幅方向に沿って間隔を空けて複数(本実施形態では、3つ)形成される。また、貼合部2cおよび貼合領域A1は、濾材原反2がプリーツ加工される際に屈曲される領域(以下、屈曲予定領域とも記す)A2に対して交差する方向に沿って(より詳しくは、交差するように)形成される。これにより、濾材原反2がプリーツ加工される際に、屈曲部1aの内側に貼合部2cおよび貼合領域A1の一部が形成されることになる。
【0029】
一方、非貼合部2dは、貼合部2c同士の間に形成されると共に、濾材原反2における幅方向の両端部と貼合部2cとの間に形成される。非貼合部2dは、濾材原反2の長手方向に沿って(本実施形態では、帯状に)形成される。更に、非貼合部2dは、濾材原反2の長手方向の略全長に亘って連続的に形成される。該非貼合部2dでは、多孔質層2aと基材層2bとが密着した状態で積層される。
【0030】
上記のような濾材原反2を形成する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、多孔質層2aを形成する多孔質シートと、基材層2bを形成する通気性シートとの間にホットメルトや感圧型の接着剤を配置し、多孔質シートと通気性シートとを圧着する方法を採用することができる。又は、通気性シートを加熱して軟化させて多孔質シートと圧着(換言すれば、熱ラミネート)する方法を採用することができる。
【0031】
多孔質シートと通気性シートとを圧着する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、一対のローラー部材(図示せず)の間に、多孔質シートと通気性シートとを積層させつつ搬送し、多孔質シートと通気性シートとを連続的に圧着する方法を採用することができる。又は、一対のプレート(図示せず)間に、枚葉体状の多孔質シートおよび通気性シートを積層した状態で配置し、枚葉体毎に断続的に圧着を行う方法を採用することもできる。
【0032】
多孔質シートと通気性シートとを熱ラミネートする際には、表面温度が通気性シートの融点温度に設定された熱ローラーと、多孔質シートおよび通気性シートを積層状態で下方から支える支持ローラーとからなる一対のローラー部材が用いられる。そして、多孔質シートと通気性シートとが熱ラミネートされることで、通気性シートが軟化して多孔質シートの孔に入り込み、アンカー効果によって、多孔質シートと通気性シートとが貼合わされて貼合部2cおよび貼合領域A1が形成される。
【0033】
また、濾材原反2の長手方向に沿って帯状に貼合部2cおよび貼合領域A1を形成する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、熱ローラーの表面に回転方向に沿って凸状部を設け、該凸状部と他方のローラー部材との間で多孔質シートと通気性シートとを圧着するように構成することができる。これにより、熱ローラーの凸状部と接触する位置でのみ、通気性シートが軟化し、多孔質シートと通気性シートとが熱ラミネートされる。これにより、濾材原反2の長手方向に沿って、貼合部2cおよび貼合領域A1が帯状に形成されると共に、非貼合部2dが帯状に形成される。
【0034】
上記のように構成される濾材原反2を用いてフィルタ濾材1を形成する際には、まず始めに、濾材原反2がプリーツ加工される。具体的には、濾材原反2が長手方向に直交する幅方向に沿って複数箇所(即ち、各屈曲予定領域A2)で屈曲されて襞状に形成される。これにより、濾材原反2には、フィルタ濾材1における複数の屈曲部1aと複数の平板部1bとが形成される。
【0035】
次に、濾材原反2の両面に接着剤が塗布されてビード部3aが形成される。具体的には、襞状に形成された濾材原反2がプリーツ加工前の平らな状態に伸ばされつつ、濾材原反2の両面に接着剤が塗布されてビード部3aが形成される。該ビード部3aは、濾材原反2の貼合部2cの内側に形成される。また、濾材原反2の一方の面側および他方の面側に形成されるビード部(以下、一方面側ビード部および他方面側ビード部とも記す)3aのそれぞれは、濾材原反2の長手方向に沿って間隔を空けて複数形成されると共に、濾材原反2の幅方向に沿って間隔を空けて複数(本実施形態では、3つ)形成される。また、一方面側ビード部3aと他方面側ビード部3aとは、濾材原反2の長手方向に沿って略同一直線上に形成される。
【0036】
また、ビード部3aの形状としては、特に限定されるものではなく、本実施形態では、濾材原反2の長手方向に沿って線状に形成される。また、ビード部3aは、屈曲予定領域A2における屈曲部1aが形成された際に山側となる面の近傍に形成される。具体的には、ビード部3aは、濾材原反2における屈曲予定領域A2と交差するように形成される。本実施形態では、線状に形成されたビード部3aの略中央部でビード部3aと屈曲予定領域A2とが交差するように構成される。また、ビード部3aは、屈曲部1aが形成された際に山側となる面上に形成される。つまり、隣り合う屈曲予定領域A2,A2のうち、一方の屈曲予定領域A2と一方面側ビード部3aとが交差すると共に、他方の屈曲予定領域A2と他方面側ビード部3aとが交差するように構成される。
【0037】
また、ビード部3aと屈曲予定領域A2との交差位置からビード部3aの端部までの長さとしては、特に限定されるものではないが、ビード塗布長率が50%を超える長さであることが好ましい。ビード塗布長率とは、隣り合う屈曲予定領域A2,A2間の距離に対するビード部3aと屈曲予定領域A2との交差位置からビード部3aの一端部までの長さの割合をいう。つまり、ビード部3aは、屈曲予定領域A2との交差位置から隣り合う屈曲予定領域A2,A2間の領域(即ち、平板部1bとなる領域)(以下、平板部予定領域)A3の中央部を超える位置まで形成される。なお、隣り合う屈曲予定領域A2,A2間の距離とは、一方の屈曲予定領域A2の中央部と他方の屈曲予定領域A2の中央部とを濾材原反2の長手方向に沿って結んだ距離をいう。
【0038】
また、一方面側ビード部3aと他方面側ビード部3aとは、濾材原反2(具体的には、平板部予定領域A3)を介して重なり合うように形成される。より詳しくは、隣り合う屈曲予定領域A2,A2のそれぞれと交差する一方面側ビード部3aおよび他方面側ビード部3aのうち濾材原反2の長手方向に沿って同一直線上に形成されるもの同士が平板部予定領域A3で濾材原反2を介して重なり合うように形成される。また、一方面側ビード部3aと他方面側ビード部3aとは、平板部予定領域A3の内側に位置する端部同士が濾材原反2を介して重なり合うように形成される。また、平板部予定領域A3における一方面側ビード部3aと他方面側ビード部3aとの重なり合う位置としては、特に限定されるものではないが、濾材原反2の長手方向に沿った方向の略中央部であることが好ましい。
【0039】
上記のように、一方面側ビード部3aと他方面側ビード部3aとが形成されることで、一方面側ビード部3aと他方面側ビード部3aとが重なり合う領域では、一方面側ビード部3aと他方面側ビード部3aとの間に濾材原反2の貼合部2cが位置することになる。言い換えれば、一方面側ビード部3aと他方面側ビード部3aとは、濾材原反2の貼合部2cを介して重なり合うように形成される。
【0040】
ビード部3aを構成する接着剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、ホットメルトを用いることができる。ホットメルトを濾材原反2に塗布する際の温度としては、ホットメルトの成分によって異なるが、例えば、100℃以上250℃以下であることが好ましく、140℃以上230℃以下であることがより好ましい。
【0041】
上記のようにしてビード部3aが形成された濾材原反2は、各屈曲予定領域A2で再度屈曲されて襞状に形成される。これにより、図3(a)(b)に示すように、複数の屈曲部1aおよび複数の平板部1bが形成されると共に、各ビード部3aにおける各平板部1b間に位置する部位同士が接合して間隔保持部3が形成され、フィルタ濾材1となる。このため、ビード部3aを構成する接着剤にホットメルトを使用する場合には、ホットメルト同士が接合可能な程度に軟化している時(オープンタイム内)に、濾材原反2を再度襞状に形成することが好ましい。
【0042】
なお、以下の説明では、フィルタ濾材1における濾材原反2の長手方向に相当する方向をフィルタ濾材1の長さL1とする。また、フィルタ濾材1における濾材原反2の幅方向に相当する方向をフィルタ濾材1の幅L2とする。また、濾材原反2の一方の面側が山側となるように形成される屈曲部1aと、濾材原反2の他方の面側が山側となるように形成される屈曲部1aとの間の間隔をフィルタ濾材1の高さL3とする。
【0043】
上記のように形成されるフィルタ濾材1では、濾材原反2の一方の面側および他方の面側のそれぞれに間隔保持部3が形成される。また、各間隔保持部3は、フィルタ濾材1の高さL3方向の一方側から他方側に向かって直線状に形成される。また、フィルタ濾材1の一方の面側の各間隔保持部3(以下、一方面側間隔保持部3とも記す)および他方の面側の各間隔保持部3(以下、他方面側間隔保持部3とも記す)は、フィルタ濾材1の長さL1方向に沿って(具体的には、長さ方向に沿って直線状に)交互に配列される。
【0044】
そして、一方面側間隔保持部3と、他方面側間隔保持部3とは、平板部1b(具体的には、貼合部2c)を介して重なり合うように形成される。具体的には、一方面側間隔保持部3と他方面側間隔保持部3とは、平板部1bの中央側に位置する端部同士が平板部1b(具体的には、貼合部2c)を介して重なり合うように形成される。また、一方面側間隔保持部3と他方面側間隔保持部3とは、フィルタ濾材1の高さL3方向の略中央部で、平板部1b(具体的には、貼合部2c)を介して重なり合うように構成される。具体的には、屈曲部1aと平板部1bとの連結位置から各間隔保持部3の一端部までの長さが平板部1bにおける一対の屈曲部1a,1aとの連結位置間の長さに対して50%を超えるように構成されることで、フィルタ濾材1の高さL3方向の略中央部で一方面側間隔保持部3と他方面側間隔保持部3とが重なり合うように構成される。
【0045】
上記のように、一方面側間隔保持部3と他方面側間隔保持部3とが重なり合うことで、フィルタ濾材1の長さL1方向に沿って各間隔保持部3が平板部1bを介して重なり合う部位(以下、間隔保持部重合部とも記す)B1が形成される。該間隔保持部重合部B1は、フィルタ濾材1の高さL3方向の略中央部に形成される。また、間隔保持部重合部B1は、フィルタ濾材1の幅L2方向に間隔を空けて複数(具体的には、3箇所)形成される。フィルタ濾材1の幅L2方向における各間隔保持部重合部B1間には、間隔保持部3が形成されておらず、平板部1b間に空間が形成される。
【0046】
上記の構成を有するフィルタ濾材1は、被濾過気体の流れ方向に対して平板部1bが交差するように配置されて使用されてもよく、被濾過気体の流れ方向に高さL3方向が沿って配置されて使用されてもよい。そして、フィルタ濾材1では、被濾過気体が主に平板部1b(具体的には、平板部1bにおける非貼合部2d)を透過することになる。
【0047】
また、上記の構成を有するフィルタ濾材1は、外形(高さL3方向から見た形状)が所定の形成となるように形成された後、枠体(図示せず)に収められた状態で使用されてもよい。該枠体の形状としては、フィルタ濾材1を収容可能な形状であれば、特に限定されものではなく、例えば、内寸1180mm×1180mm、外寸1220mm×1220mm、厚み75mmの直方体状や、所定の内径を有する円形状のもの等が挙げられる。また、枠体の材質としては、特に限定されるものではなく、アルミニウム製のものを用いることができる。フィルタ濾材1と枠体との間には、コーキング剤が充填される。該コーキング剤としては、例えば、二液エポキシコーキング剤(具体的には、ヘンケル社製 マクロプラスト8104MC−18と、マクロプラストUK5400を3:1の比率で混合したもの)を使用することができる。
【0048】
以上のように、本発明に係るフィルタ濾材おとびその製造方法によれば、フィルタ濾材の製造時における多孔質層の通気性の低下を抑制し、圧力損失を比較的低くすることができる。
【0049】
即ち、前記フィルタ濾材1は、濾材原反2がプリーツ加工される際に、多孔質層2aと基材層2bとが相対的に位置ズレするのを防止することができる。具体的には、濾材原反2がプリーツ加工される際には、濾材原反2の屈曲予定領域A2に対し、多孔質層2aと基材層2bとが相対的に位置ズレするような方向(具体的には、多孔質層2aと基材層2bの対向面に沿った方向)に力が加わることになる。
【0050】
しかしながら、屈曲予定領域A2と貼合部2cとが交差することで、屈曲予定領域A2において多孔質層2aと基材層2bとの相対的な位置関係が固定される。このため、プリーツ加工を行う際に、多孔質層2aと基材層2bとの相対的な位置ズレを生じさせるような力が屈曲予定領域A2に加わっても、多孔質層2aと基材層2bとが相対的に位置ズレするのを防止することができる。
【0051】
平板部1bに非貼合部2dが形成されることで、平板部1bの全体に貼合部2cが形成される場合よりも、圧力損失の低いフィルタ濾材1を得ることができる。具体的には、非貼合部2dでは、多孔質層2aと基材層2bとが貼合わされていないため、多孔質層2aの孔に基材層2bの一部が入り込んで該孔が閉塞されたり、多孔質層2aと基材層2bとを接着する接着剤によって多孔質層2aの孔が閉塞されたりしていない。このため、非貼合部2dの方が貼合部2cよりも通気性が高くなる。
【0052】
また、フィルタ濾材を通過する被濾過気体は、平板部1bを主に透過することになるため、非貼合部2dが平板部1bに形成されることで、平板部1bの全体に貼合部2cが形成されている場合よりも、フィルタ濾材の通気性が高くなる。以上のように、平板部1bに非貼合部2dを備えることで、圧力損失の低いフィルタ濾材1を得ることができる。圧力損失の測定は、マノスターゲージ(最小目盛:1.0Pa)、又は、電気式微差圧計(精度:1.0Pa)を用いて行われる。
【0053】
また、フィルタ濾材1は、図4に示すように、平板部1b同士の間隔が広がるような方向(以下、引き伸ばし方向とも記す)に、ハンドリング時に引き伸ばされたり、引き伸ばされた状態で使用されたりする場合があるが、斯かる場合であっても、多孔質層2aと基材層2bとが部分的に分離してしまうのを防止することができる。具体的には、引き伸ばし方向にフィルタ濾材1が引き伸ばされると、一方面側間隔保持部3と他方面側間隔保持部3とが引き伸ばし方向に沿って(具体的には、一方面側間隔保持部3がX方向、他方面側間隔保持部3がY方向に)引き離されることになる。この際、間隔保持部重合部B1では、平板部1bを形成する濾材原反2が一方面側間隔保持部3によってX方向に引っ張られると共に、他方面側間隔保持部3によってY方向に引っ張られることになる。このため、間隔保持部重合部B1では、多孔質層2aと基材層2bとを引き離すような力が濾材原反2に加わり、多孔質層2aと基材層2bとの間に空間が形成される虞がある。
【0054】
しかしながら、一方面側間隔保持部3と他方面側間隔保持部3とが平板部1bにおける貼合部2cを介して重なり合うように形成されると共に、貼合部2c同士を接着するように構成されることで、一方面側間隔保持部3と他方面側間隔保持部3とが引き伸ばし方向に沿って離間した際にも、一方面側間隔保持部3と他方面側間隔保持部3との間に位置する多孔質層2aと基材層2bとの貼合わせ状態が貼合部2cによって維持される。これにより、多孔質層2aと基材層2bとが引き離されるのを防止することができ、多孔質層2aと基材層2bとの間に空間が形成されてフィルタ濾材1の圧力損失が増加するのを抑制することができる。
【0055】
なお、本発明に係るフィルタ濾材およびその製造方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、上記した複数の実施形態の構成や方法等を任意に採用して組み合わせてもよく(1つの実施形態に係る構成や方法等を他の実施形態に係る構成や方法等に適用してもよく)、さらに、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0056】
例えば、上記実施形態では、貼合部2cが濾材原反2の長手方向の全域に亘って連続的に形成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、図5(a)に示すように、濾材原反2の長手方向に沿って貼合部2eが断続的に形成されてもよい。例えば、貼合部2eは、濾材原反2の屈曲予定領域A2と交差することなく、平板部予定領域A3の内側に形成される。そして、貼合部2eの内側に一方面側ビード部3aと他方面側ビード部3aとが形成される。これにより、フィルタ濾材1が形成されると、図5(b)に示すように、平板部1bにおける屈曲部1aから離間した位置(具体的には、平板部1bの中央部)に間隔保持部3’が形成される。
【0057】
また、上記実施形態では、濾材原反2が幅方向に沿って複数箇所で屈曲されているが、これに限定されるものではなく、枚葉体状に形成された濾材原反の中心部が放射線状に複数箇所で屈曲されて円錐状のフィルタ濾材が形成されてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、多孔質層2aと基材層2bとからなる濾材原反2を用いてフィルタ濾材1が構成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、多孔質層2aの両面に基材層2bが貼合わされてなる濾材原反を用いてフィルタ濾材が構成されてもよい。又は、基材層2bの両面に多孔質層2aが貼合わされてなる濾材原反を用いてフィルタ濾材が構成されてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、一方面側ビード部3aおよび他方面側ビード部3aは、濾材原反2の長手方向に沿って間隔を空けて複数形成されているが、これに限定されるものではなく、濾材原反2の長手方向に沿って連続的(即ち、線状)に形成されてもよい。
【実施例】
【0060】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0061】
<実施例1>
1.多孔質シート
多孔質シートとして、PTFEシートを使用した。具体的には、PTFEファインパウダー(ダイキン工業社製 商品名:F104)100重量部に対し、液状潤滑剤(ノルマルデカン)19重量部を添加してペースト状の混合物とした。そして、該混合物を予備成形した後、押し出し成形することで、押し出し方向が長手となる平板状の成形体を得た。その後、該平板状の成形体を厚みが0.4mmとなるように圧延した。そして、平板状の成形体から液状潤滑剤を除去するべく、乾燥炉内で該成形体を150℃で加熱した。その後、平板状の成形体を280℃の環境下で長手方向に沿って15倍に延伸すると共に、100℃の環境下で長手方向に直交する幅方向に沿って15倍に延伸し、PTFEシートを得た。
【0062】
2.通気性シート
通気性シートとして、長尺状のPET/PE芯鞘不織布(ユニチカ社製 商品名:T1003WDO)を用いた。
【0063】
3.濾材原反の作製
前記多孔質シートと通気性シートとの長手方向が略平行となるように、通気性シートの両面に多孔質シートを積層しつつ、一対のローラー部材(前記熱ローラーと前記支持ローラー)の間に搬送し、多孔質シートと通気性シートとを貼合わせて、図2に示すような、濾材原反2を作製した。具体的には、熱ローラーとして、回転方向に沿って形成される凸状部を3つ備えるものを用い、該凸状部と支持ローラーとの間でのみ多孔質シートと通気性シートとが200℃で熱ラミネートされて貼合部2cが形成されるようにした。
【0064】
該貼合部2cは、濾材原反2の長手方向の略全域に亘って一体的、且つ、帯状に形成される。また、貼合部2cの幅は、1cmとし、隣り合う貼合部2c同士の幅方向の中央部間の間隔は、5cmとした。また、貼合部2cの厚みは、0.32mmであり、非貼合部2dの厚みは、0.45mmであった。なお、濾材原反2の面積に対する貼合部2cの総面積の割合(ラミネート比率)は、20%とした。また、各ローラー部材としては、外径(軸心から凸状部の先端までの径)が200mmのものを用いた。また、各シートの搬送速度は、10m/minとし、貼合わせ時の圧力は、0.8MPaとした。
【0065】
4.プリーツ加工
得られた濾材原反2は、プリーツ加工された後、図2に示すように、ビード部3aが形成される。具体的には、ビード部3aは、各貼合部2cの内側において、濾材原反2の長手方向に沿って複数形成されると共に、各ビード部3aが屈曲予定領域A2と交差するように形成される。また、一方面側ビード部3aと他方面側ビード部3aとは、平板部1bを介して重なり合うように形成される。具体的には、一方面側ビード部3aの端部と他方面側ビード部3aの端部とが平板部1bにおける貼合部2cを介して重なり合うように形成される。そして、濾材原反2における一方の面側と他方の面側において、平板部1b,1b間でビード部3a,3a同士が連結されることで、間隔保持部3が形成され、図1および3に示すようなフィルタ濾材1が作製される。ビード部3aを形成する接着剤(ホットメルト)としては、ヘンケル社製のマクロメルト6202(ポリアミド系)を使用した。
【0066】
5.圧力損失上昇率の算出
濾材原反2、該濾材原反2で使用される多孔質シートおよび通気性シートのそれぞれに対して、圧力損失の測定を行った。具体的には、測定有効面積を100cm2 とし、面速度を5.3cm/secとした時の圧力損失をマノスターゲージ(最小目盛り:1.0Pa)を用いて測定した。そして、濾材原反2の圧力損失に対する多孔質シートおよび通気性シートの圧力損失の合計の割合を算出し、圧力損失上昇率とした。圧力損失上昇率については、下記表1に示す。
【0067】
6.捕集効率の測定
枠体(内寸が1180mm×1180mm、外寸が1220mm×1220mm、厚みが75mmのアルミ製枠)の内側にフィルタ濾材1を収容し、2液エポキシコーキング材を使用して枠体とフィルタ濾材1との隙間をシールしてフィルタユニットを作製した。なお、2液エポキシコーキング材にはヘンケル製マクロプラスト8104MC−18とマクロプラストUK5400を3:1の比率で混合したものを使用した。そして、該フィルタユニットを用いて、捕集効率の測定を行った。測定結果については、下記表1に示す。
【0068】
捕集効率の測定は、捕集粒子としてPAO(poly−α−olefin)を107個/L以上含有する気体をフィルタユニット(具体的には、フィルタ濾材1の平板部1b間)に透過させた。そして、試験サンプルを透過した気体のPAO濃度をパーティクルカウンターで測定し、以下(1)式を用いて捕集効率(%)を算出した。なお、面速度は、0.4±0.1m/sec、下流側プローブ速度は、22mm/secとした。PAO粒子は、0.1〜0.2μmの範囲とした。

捕集効率(%)={1−(下流濃度/上流濃度)}×100・・・(1)
【0069】
また、長さL1方向の両端部が接触するまで湾曲させる動作(フィルタ濾材に対して引き伸ばし方向に力を加える動作)を10回繰り返したフィルタ濾材1を用いて、上記のようにフィルタユニットを作製し、捕集効率の測定を行った。測定結果については、下記表1に示す。
【0070】
<比較例1>
濾材原反を形成する際に、ラミネート比率が100%となるように(言い換えれば、非貼合部2dが形成されないように)熱ラミネートしたこと以外は、実施例1と同様にして、濾材原反を作製し、フィルタ濾材を形成した。そして、得られたフィルタ濾材を用いて、実施例1と同様にして、圧力損失上昇率の算出、および、捕集効率の測定を行った。
【0071】
<比較例2>
貼合部2cの外側(即ち、非貼合部2d)にビード部3aを形成したこと以外は、実施例1と同様にして、濾材原反を作製し、フィルタ濾材を形成した。そして、得られたフィルタ濾材を用いて、実施例1と同様にして、圧力損失上昇率の算出、および、捕集効率の測定を行った。
【0072】
【表1】
【0073】
<まとめ>
実施例1と比較例1とを比較すると、実施例1の方が圧力損失が低いことが認められる。これは、実施例1のように、ラミネート比率が100%未満であることで、フィルタ濾材1に貼合部2cと非貼合部2dが形成される。そして、非貼合部2dでは、熱ラミネートによって多孔質シートの孔が溶融した通気性シートの一部で閉塞されることがない。このため、非貼合部2dにおいては、多孔質シートの通気性を維持することができる。これにより、比較例1のように、貼合部2cが濾材原反2の全域に形成される場合よりも、圧力損失を低くすることができる。
【0074】
また、実施例1と比較例2とを比較すると、実施例1の方が湾曲動作後においても捕集効率が維持されることが認められる。これは、フィルタ濾材1に引き伸ばし方向の力が加わると(湾曲動作が加わると)、一方面側間隔保持部3と他方面側間隔保持部3とが平板部1bを介して重なり合う部位(間隔保持部重合部)B1には、濾材原反2を構成する多孔質層2aと基材層2bとを引き剥がすように力が加わることになる。しかしながら、実施例1のように、貼合部2cの内側にビード部3aが形成されると、一方面側間隔保持部3と他方面側間隔保持部3とが貼合部2cを介して重なり合うように形成される。つまり、間隔保持部重合部B1に貼合部2cが形成されるため、フィルタ濾材1に引き伸ばし方向の力が加わった際にも、多孔質層2aと基材層2bとを引き剥がされ難くなる。これにより、多孔質層2aと基材層2bとが引き剥がされて、フィルタ濾材の捕集効率が低下するのを抑制することができる。
【符号の説明】
【0075】
1…フィルタ濾材、1a…屈曲部、1b…平板部、2…濾材原反、2a…多孔質層、2b…基材層、2c…貼合部、2d…非貼合部、3…間隔保持部、3a…ビード部、A1…貼合領域、A2…屈曲予定領域、A3…平板部予定領域、B1…間隔保持部重合部
図1
図2
図3
図4
図5