(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、主に照明装置や表示装置として使用される有機ELモジュールに係るものである。
図1は、本発明の第1実施形態に係る有機ELモジュール1を示している。以下、上下左右の位置関係は、特に断りのない限り、
図1の姿勢を基準に説明する。また、図面は、理解を容易にするために全体的に実際の大きさ(長さ、幅、厚さ)に比べて極端に描写している。
【0028】
本実施形態の有機ELモジュール1は、
図1,
図2のように、2枚の同一種類の有機ELパネル2,3を貼り合わせて一体化し、互いに離反する方向(逆方向)に光を取り出すものである。すなわち、本実施形態の有機ELモジュール1は、両面発光の有機ELモジュールである。
【0029】
有機ELモジュール1は、
図4,
図5,
図20のように2枚の有機ELパネル2,3の間に均熱シート19を介在させた状態で、2枚の有機ELパネル2,3を硬質接着樹脂20によって接着されている。また、この有機ELパネル2,3と均熱シート19は、軟質接着樹脂18によって接着されている。
有機ELパネル2,3は、
図4,
図5のように、導電性接着材7,8を介して電極金具5,6が接続されており、電極金具5,6の一部は、有機ELパネル2,3の間に介在している。
【0030】
有機ELモジュール1を構成する2枚の有機ELパネル2,3は、ともにボトムエミッション型の有機ELパネルであり、同一構造体を使用している。
そして、本実施形態の有機ELモジュール1は、各有機ELパネル2,3を独立して給電することが可能であり、各有機ELパネル2,3を独立して点灯・消灯の切換が可能となっている。すなわち、有機ELモジュール1は、独立して有機ELパネル2,3の発光面を選択することが可能である。
【0031】
以下、有機ELモジュール1の各部位の構成について説明する。
【0032】
有機ELパネル2,3は、
図4,
図5,
図6のように透明絶縁基板12の片面(主面)上に、第1電極層13と機能層15と第2電極層16がこの順に積層された有機EL素子10が積層している。また、有機ELパネル2,3は、有機EL素子10の上から無機封止層17が積層しており、有機EL素子10の大部分が封止されている。
【0033】
有機ELパネル2,3は、
図2のように透明絶縁基板12を平面視したときに、1辺(本実施形態では、縦方向に延びた縦辺)に複数の給電部35,36を有している。
具体的には、有機ELパネル2,3は、
図2のようにそれぞれ透明絶縁基板12の1辺に沿った部位であって、透明絶縁基板12の半分よりも片側に集中して給電部35,36が設けられている。
また給電部35,36には、
図4,
図5のように導電性接着材7,8を介して、電極金具5,6が取り付けられている。電極金具5,6は、
図8のように透明絶縁基板12と第1電極層13の側面を覆うように形成されている。
【0034】
有機ELパネル2,3は、
図7のように、透明絶縁基板12を平面視したときに、駆動時(点灯時)に発光する発光領域25と、発光しない非発光領域26を有している。
発光領域25は、
図4のように第1電極層13と機能層15と第2電極層16の重畳部位が位置する領域である。
非発光領域26は、
図7のように発光領域25の周りを囲むように形成された額縁状の領域であり、
図4のように発光領域25内の第1電極層13と電気的に接続された第1給電領域27と、発光領域25内の第2電極層16と電気的に接続された第2給電領域28を有している。第1給電領域27と第2給電領域28は、
図7のように発光領域25を中心として周方向に連続している。
【0035】
また、有機ELパネル2,3は、
図10のように部分的に第1電極層13を除去した孤立部形成溝40と、
図12のように部分的に機能層15を除去した電極接続溝41及び補助電極接続溝42,43と、
図14のように部分的に機能層15と第2電極層16を除去した領域分離溝44,45を有している。
【0036】
各溝について説明すると、孤立部形成溝40は、
図10のように透明絶縁基板12上に積層された第1電極層13を分離する溝である。孤立部形成溝40は、
図4,
図7,
図9のように内外方向において発光領域25と第2給電領域28を分離し、かつ、周方向において第1給電領域27及び第2給電領域28を分離している。
また孤立部形成溝40は、
図9のように第1電極層13の一部を切り離して孤立部30を形成する溝でもある。具体的には、孤立部形成溝40は、
図3,
図9のように、平面視すると透明絶縁基板12上を「L」字状に延びた溝であり、透明絶縁基板12の角部に位置している。そして、孤立部形成溝40は、透明絶縁基板12の当該角部を形成する2辺に対して交差(直交)しており、孤立部30を形成している。
【0037】
孤立部形成溝40内には、
図4のように孤立部30と他の第1電極層13に跨がった機能層15の一部が進入しており、機能層15は孤立部形成溝40の底部で透明絶縁基板12と直接接触している。すなわち、孤立部30と他の第1電極層13は、機能層15によって面方向に縁切りされている。
【0038】
電極接続溝41は、
図4,
図12のように、第2給電領域28に位置する孤立部30と発光領域25から延びた第2電極層16を電気的に接続する溝である。
電極接続溝41内には、
図4のように発光領域25から延びた第2電極層16の一部が進入しており、当該第2電極層16の一部が電極接続溝41の底部で孤立部30と直接接触している。
電極接続溝41は、
図7,
図9のように第2給電領域28内で縦方向lに延びており、孤立部30上に位置している。言い換えると、透明絶縁基板12の横方向w(縦方向に直交する方向であって、厚み方向にも直交する方向)に延びる横辺から直交するように第2給電領域28内を延びている。
【0039】
補助電極接続溝42,43は、
図3,
図5,
図6のように、第1給電領域27において、第1電極層13に、第1電極層13よりも導電率が高い導電層を電気的に接続する溝である。
本実施形態では、補助電極接続溝42,43は、
図5,
図6のように第1給電領域27の第1電極層13上に形成された溝であって、
図7,
図9のように発光領域25の外側を囲むように設けられている。また、補助電極接続溝42,43は、第1給電領域27において、第1電極層13と第2電極層16を直接接続している。すなわち、補助電極接続溝42,43は、第1電極層13と第2電極層16が直接接触して形成される補助電極部31を形成する溝である。
【0040】
補助電極接続溝42,43についてさらに詳説すると、補助電極接続溝42(42a,42b)は、
図3,
図9のように縦方向l(長さ方向)に延びた直線状の溝であり、補助電極接続溝43(43a,43b)は、横方向w(幅方向)に延びた直線状の溝である。補助電極接続溝42a,42bは、ともに透明絶縁基板12の縦辺と平行となっており、補助電極接続溝43a,43bは、ともに透明絶縁基板12の横辺と平行となっている。
【0041】
縦方向に延びる補助電極接続溝42a,42bは、
図9のように発光領域25を基準として横方向wの両外側に位置しており、互いに平行となっている。
一方(
図9では左側)の補助電極接続溝42aは、透明絶縁基板12上を縦方向lに縦断している。他方(
図9では右側)の補助電極接続溝42bは、第1給電領域27内をほぼ縦断しているが、第2給電領域28(
図7参照)内には至っていない。すなわち、補助電極接続溝42bは、孤立部形成溝40まで至っていない。
【0042】
横方向に延びる補助電極接続溝43a,43bは、
図9のように発光領域25を基準として縦方向lの両外側に位置しており、互いに平行となっている。
一方(
図9では上側)の補助電極接続溝43aは、透明絶縁基板12上を横方向wに横断している。他方(
図9では下側)の補助電極接続溝43bは、第1給電領域27内をほぼ横断しているが、第2給電領域28内には至っていない。すなわち、補助電極接続溝43bは、孤立部形成溝40まで至っていない。
【0043】
領域分離溝44,45は、
図3,
図4,
図9のように第1電極層13上に積層された機能層15及び第2電極層16を分離する溝であり、内外方向に第1給電領域27と発光領域25を分離する溝である。また領域分離溝44,45は、第1電極層13と無機封止層17を直接接続する溝である。
【0044】
領域分離溝44は、
図9のように縦方向l(長さ方向)に延びた溝であり、領域分離溝45は、横方向w(幅方向)に延びた溝である。
領域分離溝44(44a,44b)は、
図9のように縦辺に対応して形成されており、透明絶縁基板12を縦断している。
領域分離溝45(45a,45b)は、横辺に対応して形成されており、透明絶縁基板12を横断している。
【0045】
縦方向lに延びる領域分離溝44a,44bは、
図9のように発光領域25を基準として横方向wの両外側に位置しており、互いに平行となっている。領域分離溝44a,44bは、発光領域25を基準として横方向wにおいて、補助電極接続溝42a,42bの内側に位置している。
図9の右側に位置する領域分離溝44bは、孤立部形成溝40と交差(直交)して第1給電領域27と第2給電領域28を跨がって形成されている。
【0046】
横方向wに延びる領域分離溝45a,45bは、
図9のように発光領域25を基準として縦方向lの両外側に位置しており、互いに平行となっている。領域分離溝45a,45bは、発光領域25を基準として縦方向lにおいて、補助電極接続溝43a,43bの内側に位置している。
図9の下側に位置する領域分離溝45bは、孤立部形成溝40及び電極接続溝41と交差(直交)して第1給電領域27と第2給電領域28を跨がって形成されている。
【0047】
ここで、透明絶縁基板12を平面視したときの各溝の位置関係について説明すると、発光領域25を基準として孤立部形成溝40の外側(孤立部30側)には、
図9のように電極接続溝41が位置している。領域分離溝44,45の外側には、補助電極接続溝42,43が位置しており、領域分離溝44,45と補助電極接続溝42,43はそれぞれ平行となっている。
【0048】
第2給電部35及び第1給電部36は、
図2,
図4,
図5のように電極金具5,6を取り付け可能な部位であって、第1電極層13上の積層体が除去された部位である。
具体的には、第2給電部35は、
図5のように第1給電領域27に位置しており、第1給電部36は、
図4のように第2給電領域28に位置している。すなわち、第2給電部35は、
図5のように発光領域25の第1電極層13と連続した第1電極層13の一部が露出しており、第1給電部36は、
図4のように孤立部30の一部が露出している。
【0049】
第2給電部35と第1給電部36は、
図2,
図8のように孤立部形成溝40を間に挟んで並列している。すなわち、第2給電部35と第1給電部36は、所定の間隔を空けて配されている。また、第2給電部35と第1給電部36は、平面視すると、孤立部形成溝40を対称軸として線対称の関係となっている。
【0050】
具体的には、第2給電部35は、
図9のように縦方向lに延びた補助電極接続溝42bの延長上に位置しており、第1給電部36は、横方向wに延びた領域分離溝45bの延長上に位置している。
第2給電部35及び第1給電部36は、横方向wにおいては、縦方向lに延びた領域分離溝44bの外側に位置しており、縦方向lにおいては、透明絶縁基板12の半分よりも片側(
図9に示される有機ELパネル2では下側)に集中して位置している。
【0051】
軟質接着樹脂18に目を移すと、軟質接着樹脂18は、上記したように有機ELパネル2,3の無機封止層17に均熱シート19を接着する接着材である。
ここでいう「接着材」とは液状の接着剤だけではなく、固体状の粘着材も含む。
【0052】
また、軟質接着樹脂18は、柔軟性を有し、所定の条件によって塑性変形又は弾性変形する接着材であり、シート状の部材の表面に粘着性加工を施されたものである。本実施形態では、軟質接着樹脂18は、無機封止層17から圧縮応力などを受けた場合に、その応力にほとんど逆らわずに、塑性変形可能となっている。
【0053】
JIS K 6253に準じた軟質接着樹脂18のショア硬さは、ショア硬さがA30以上A70以下であり、A40以上A65以下であることが好ましく、A45以上A63以下であることがより好ましい。
軟質接着樹脂18のショア硬さがA70より大きい場合、軟質接着樹脂18の剛性が大きすぎて、膨らみや衝撃が十分吸収できない。
軟質接着樹脂18の曲げ弾性率は、3MPa以上、30MPa以下であることが好ましく、3MPa以上、25MPa以下であることがより好ましく、3.9MPa以上23MPa以下であることが特に好ましい。
【0054】
軟質接着樹脂18の具体的な材質としては、アクリルゴム(ACM)、エチレンプロピレンゴム(EPM,EPDM)、シリコーンゴム(Q)、ブチルゴム(IIR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、フッ素ゴム(FKM)、ニトリルゴム(NBR)、イソプレンゴム(IR)、ウレタンゴム(U)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)、クロロプレンゴム(CR)等のゴム材料が使用できるが、一定の水蒸気バリア性を有し、安価に入手可能である点から、アクリルゴム系樹脂、エチレンプロピレンゴム系樹脂、シリコーンゴム系樹脂、及びブチルゴム系樹脂から選ばれる1種以上であることが好ましく、その中でもフィルムとして入手が容易な、ブチルゴム系樹脂がより好ましい。
軟質接着樹脂18の平均厚みは、2μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であることがより好ましい。
軟質接着樹脂18の平均厚みが2μmより薄くなると、無機封止層17の膨らみや衝撃が十分吸収できない。
【0055】
硬質接着樹脂20は、軟質接着樹脂18よりも剛性が高く硬い接着材である。具体的には、JIS K 6253に準じた硬質接着樹脂20のショア硬さ(及び対応する曲げ弾性率の概算値)は、ショアA80以上、すなわち、ショアD30以上(25MPa以上)であることが好ましく、より高信頼性の有機EL装置とする観点からショアD55以上(250MPa以上)、ショアD95以下(6000MPa以下)とすることがより好ましく、ショアD80以上(1500MPa以上)、ショアD90以下(4000MPa以下)とすることがさらに好ましい。
また、硬質接着樹脂20は、溶液又はゲル状の流動体を固化して形成されるものであり、防水性及び接着性を有している。
硬質接着樹脂20の具体的な材質としては、熱硬化性樹脂や紫外線硬化樹脂が採用できる。なお、本実施形態では、熱硬化性樹脂であって、その中でも、エポキシ樹脂を採用している。
【0056】
均熱シート19は、
図20のように均熱機能を有したシート状の部材である。均熱シート19の材質は、高い熱伝導率を有していれば、特に限定されることはなく、例えば、アルミニウム、銅、ステンレス、鉄、チタン、42アロイ、グラファイトなどが採用できる。その中でも、均熱シート19の材料としてアルミニウムを使用する場合には、均熱シート19として圧延アルミを使用することが封止性能の観点から好ましい。
【0057】
導電性接着材7,8は、導電性を有した接着材である。導電性接着材7,8の材質は、導電性を有していれば、特に限定されることはなく、例えば、異方性導電膜や低温はんだなどが採用できる。
【0058】
電極金具5,6は、外部電源と接続可能な部材であり、導電性を有した箔状又は板状の部材である。
電極金具5,6の材質は、導電性を有していれば、特に限定されるものではないが、抵抗率が低いという観点から、金、銀、銅、ニッケル、クロム、アルミニウムなどの金属材料が好ましい。
【0059】
続いて、有機ELモジュール1の各部位の位置関係について説明する。なお、有機ELパネル2,3は、同一構造であるため、明確に区別するために、一方の有機ELパネル2を第1有機ELパネル2と称し、他方の有機ELパネル3を第2有機ELパネル3と称する。また、第1有機ELパネル2と第2有機ELパネル3の各部位においても、区別するため、第1有機ELパネル2の部位には、符号にaを添え、第2有機ELパネル3の部位には、符号にbを添えて記載する。
【0060】
上記したように有機ELモジュール1は、第1有機ELパネル2と第2有機ELパネル3が透明絶縁基板12a,12bの光非取出側の面(有機EL素子10が積層されている側の面)同士が対向するように重ね合わされている。
また、第1有機ELパネル2の有機EL素子10aと第2有機ELパネル3の有機EL素子10bの間には、
図2のように均熱シート19が介在している。すなわち、均熱シート19を基準とすると、均熱シート19の外側に有機EL素子10a,10bが位置し、さらに外側に透明絶縁基板12a,12bが位置している。
【0061】
まず、第1有機ELパネル2と第2有機ELパネル3の位置関係について注目すると、第2有機ELパネル3は、
図4,
図5,
図6のように第1有機ELパネル2に対して表裏が逆転した姿勢となっている。すなわち、第1有機ELパネル2の給電部35a,36aは、
図8のように第2有機ELパネル3の給電部35b,36bの厚み方向の投影面上に位置していない。第1有機ELパネル2の電極金具5a,6aと第2有機ELパネル3の電極金具5b,6bは互いに離反する方向に延びている。第1有機ELパネル2の発光領域25aは、第2有機ELパネル3の発光領域25bの重なり方向の投影面上に位置している。
【0062】
第1有機ELパネル2への硬質接着樹脂20aの接着部位に注目すると、硬質接着樹脂20aは、
図20のように軟質接着樹脂18aを囲むように環状に形成されており、その一部が軟質接着樹脂18aの一部を覆っている。硬質接着樹脂20aは、
図8のように給電部35a,36a上において、電極金具5,6の一部を覆っている。
また、電極金具5,6の孤立部30aの主面上に位置する部位は、
図20のように、硬質接着樹脂20aによって埋没しており、他の部位は、硬質接着樹脂20aから露出している。この硬質接着樹脂20aからの露出部位は、孤立部30aの主面に対して立設しており、透明絶縁基板12a側を向いている。
【0063】
第1有機ELパネル2への均熱シート19の設置部位に注目すると、均熱シート19は、
図4のように第1有機ELパネル2の少なくとも発光領域25の有機EL素子10aを覆っており、本実施形態では、さらに軟質接着樹脂18a全体を覆っている。
【0064】
第2有機ELパネル3への軟質接着樹脂18b、硬質接着樹脂20b、均熱シート19及び電極金具5b,6bの接着部位及び設置位置は、第1有機ELパネル2の場合と縦横の関係が入れ替わったこと以外は同様であるため、説明を省略する。
【0065】
次に、本実施形態に係る有機ELモジュール1の製造方法について説明する。
有機ELモジュール1は、図示しない真空蒸着装置及びCVD装置によって成膜し、図示しないパターニング装置(本実施形態では、レーザースクライブ装置)を使用してパターニングを行い、製造される。
【0066】
第1有機ELパネル2と第2有機ELパネル3は、別途工程によって形成される。本実施形態の有機ELモジュール1は、第1有機ELパネル2を形成する第1有機ELパネル形成工程と、第2有機ELパネル3を形成する第2有機ELパネル形成工程と、第1有機ELパネル2と第2有機ELパネル3を接続するパネル接続工程によって形成されている。
【0067】
まず、第1有機ELパネル形成工程について説明する。
スパッタ装置又はCVD装置によって、透明絶縁基板12上に第1電極層13を成膜する。その後、
図10のように、レーザースクライブ装置によって、孤立部形成溝40を形成する。
このとき、孤立部形成溝40は、透明絶縁基板12の縦辺に平行に形成されている。また、透明絶縁基板12上には、孤立部30が形成されている。また、透明絶縁基板12上に積層した第1電極層13は、孤立部形成溝40を除いて、透明絶縁基板12のほぼ全面を被覆している。
【0068】
次に、真空蒸着装置によって、この基板(以下、透明絶縁基板12上の積層体も含む)に正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などを順次積層し、
図11のように機能層15を成膜する。
このとき、機能層15は、
図4のように基板の片面全面を被覆しており、発光領域25及び非発光領域26に跨がって形成されている。すなわち、機能層15は、孤立部形成溝40内部に充填されており、孤立部形成溝40内を経由して第1電極層13に直接接触している。そのため、発光領域25内の第1電極層13と第2給電領域28内の第1電極層13(孤立部30)は、面方向において、機能層15によって縁切りされている。
【0069】
その後、機能層15が成膜された基板に対して、レーザースクライブ装置によって、
図12のように、機能層15の一部を除去して電極接続溝41及び補助電極接続溝42,43を形成する。
このとき、電極接続溝41は、透明絶縁基板12の横辺から延び、かつ縦辺に平行になるように形成されており、補助電極接続溝42,43は基板の各辺に平行になるように形成されている。また、補助電極接続溝42bと電極接続溝41は、孤立部形成溝40に重ならないように形成されている。すなわち、孤立部形成溝40と補助電極接続溝42bの間には所定の間隔が形成されており、当該間隔内に電極接続溝41が位置している。電極接続溝41の延長上は、補助電極接続溝43bに対して横方向において基板の内側にずれている。
【0070】
続いて、この基板に対して、スパッタ装置又は真空蒸着装置によって、
図13のように第2電極層16を成膜する。
このとき、第2電極層16は、
図4,
図5,
図6のように基板の片面全面を被覆されており、発光領域25及び非発光領域26に跨がって形成されている。すなわち、第2電極層16は、電極接続溝41及び補助電極接続溝42,43内部に充填されており、電極接続溝41及び補助電極接続溝42,43内を経由して第1電極層13に直接接触している。
そのため、発光領域25の第2電極層16と第2給電領域28の第1電極層13(孤立部30)は、電極接続溝41を経由して電気的に接続されている。また、第1給電領域27の第1電極層13と第1給電領域27の第2電極層16も電気的に接続されており、補助電極部31を形成している。
【0071】
その後、第2電極層16が成膜された基板に対して、レーザースクライブ装置によって、
図14のように第1電極層13上の機能層15及び第2電極層16の一部を除去して、領域分離溝44,45を形成する。
このとき、領域分離溝44,45は、透明絶縁基板12の各辺に平行になるように形成されている。
【0072】
続いて、この基板に対して、CVD装置によって、
図15のように無機封止層17を形成する。
このとき、無機封止層17は、
図15のように基板の片面全面を被覆されており、発光領域25及び非発光領域26に跨がって形成されている。すなわち、無機封止層17は、領域分離溝44,45内部に充填されており、領域分離溝44,45内を経由して第1電極層13に直接接触している。そのため、第1給電領域27の補助電極部31と発光領域25の第2電極層16は、面方向において電気的に縁切りされている。
【0073】
その後、無機封止層17が成膜された基板に対して、レーザースクライブ装置によって、
図16のように第1電極層13上の機能層15、第2電極層16及び無機封止層17の一部を除去して、第2給電部35及び第1給電部36を形成する。
このとき、第2給電部35では、孤立部30の一部が露出しており、第1給電部36では、第1給電領域27の第1電極層13の一部が露出している。
【0074】
さらに、同時又は別工程によって、無機封止層17が成膜された基板に対して、レーザースクライブ装置によって、
図17のように透明絶縁基板12上の第1電極層13、機能層15、第2電極層16及び無機封止層17の一部を除去した除去領域38を形成する。
このとき、除去領域38は、補助電極接続溝42,43の外側であって、かつ、基板の各辺に沿って形成されている。すなわち、除去領域38は、第2給電部35と第1給電部36を挟んで、ほぼ連続した環状の領域である。換言すると、除去領域38は、発光領域25を含む領域の周りをほぼ囲むように形成されている。除去領域38には、透明絶縁基板12が露出した露出部39を形成している。
なお、第2給電部35と第1給電部36の近傍は各層が除去されておらず、第2給電部35と第1給電部36の間及び周囲は、他の除去領域38に比べて隆起している。
以上が第1有機ELパネル2を製造する第1有機ELパネル形成工程である。
【0075】
なお、第2有機ELパネル形成工程については、第1有機ELパネル形成工程と同様の工程であるため、説明を省略する。
【0076】
続いて、パネル接続工程について説明する。
まず、第1有機ELパネル2及び第2有機ELパネル3の第2給電部35a,35b及び第1給電部36a,36bに、
図18のように導電性接着材7,8を介して電極金具5,6を取り付ける。
このとき、電極金具5は、
図4のように第2給電部35の孤立部30の主面(有機EL素子10の積層側の面)の一部又は全部を覆っており、当該主面から孤立部30と透明絶縁基板12の界面を覆うように形成されている。すなわち、電極金具5は、
図18(b)のように折れ曲がっており、孤立部30の角部を覆うように形成されている。また、電極金具5は、角部から取り付けた有機ELパネル2,3に属する透明絶縁基板12の光取出面側(
図18(b)では下側)に延びている。
電極金具6は、
図8のように第1給電部36の第1電極層13の主面(有機EL素子10の積層側の面)の一部又は全部を覆っており、当該主面から第1給電部36の第1電極層13と透明絶縁基板12の界面を覆うように形成されている。すなわち、電極金具6は、
図18(b)のように折れ曲がっており、第1給電部36の第1電極層13の角部を覆うように形成されている。また、電極金具6は、角部から取り付けた有機ELパネル2,3に属する透明絶縁基板12の光取出面側に延びている。
第1有機ELパネル2においては、電極金具5a,6aは、
図8のように透明絶縁基板12の光取出面側(下面)に向かって延びており、第2有機ELパネル3においては、電極金具5b,6bは透明絶縁基板12の光取出面側(上面)に向かって延びている。要するに、第1有機ELパネル2に接続される電極金具5a,6aと第2有機ELパネル3に接続される電極金具5b,6bは、上下方向(重なり方向)において逆方向(離反する方向)に延びている。
【0077】
続いて、第1有機ELパネル2において、
図19のように無機封止層17a上に軟質接着樹脂18aを貼り、その後、ディスペンサーによって軟質接着樹脂18aの縁に沿って硬質接着樹脂20aの原料を塗布する。
同様に、第2有機ELパネル3においても、無機封止層17b上に軟質接着樹脂18bを貼り、その後、ディスペンサーによって軟質接着樹脂18bの縁に沿って硬質接着樹脂20bの原料を塗布する。
このとき、軟質接着樹脂18は、
図6のように、少なくとも発光領域25の有機EL素子10の積層方向投影面上を覆っており、本実施形態では領域分離溝44,45の積層方向の投影面上まで覆っている。硬質接着樹脂20は、第1給電領域27において、除去領域38の露出部39と無機封止層17に跨がって形成されている。また、硬質接着樹脂20は、電極金具5,6と孤立部30と無機封止層17に跨がって被覆している。
【0078】
その後、
図20のように、第1有機ELパネル2及び第2有機ELパネル3の間に均熱シート19を介在させて、第1有機ELパネル2の無機封止層17と第2有機ELパネル3の無機封止層17を貼り合わせて所定の温度で加熱し、硬質接着樹脂20を固化させる。
このとき、第1有機ELパネル2と第2有機ELパネル3は、
図4,
図5,
図6のように硬質接着樹脂20によって貼り合わされており、軟質接着樹脂18a、均熱シート19、軟質接着樹脂18bのそれぞれの界面は、硬質接着樹脂20によって覆われている。すなわち、硬質接着樹脂20は、環状に形成されており、第1有機ELパネル2の発光領域25を含む領域と、有機ELパネル3の発光領域25を含む領域をともに囲むように形成されている。
以上の工程によって、有機ELモジュール1が製造できる。
【0079】
続いて、有機ELモジュール1に外部電源を接続した場合の電流の流れについて説明する。
図21に示される有機ELモジュール1は、外部電源の負極端子を電極金具5に接続し、外部電源の正極端子を電極金具6に接続している。
【0080】
まず、第1有機ELパネル2を点灯させる場合について、第1有機ELパネル2内の電流の流れについて説明すると、
図21(b)のように外部電源から電極金具6に供給された電流は、導電性接着材8から第1給電部36の第1電極層13に伝わる。第1給電部36の第1電極層13に伝わった電流は、第1電極層13を介して第1給電領域27から発光領域25に拡散し、発光領域25内の第1電極層13に伝わる。発光領域25内の第1電極層13に伝わった電流は、機能層15を通過して第2電極層16に伝わる。このとき、機能層15に電圧が印加され、ホールと電子が再結合して、機能層15内の発光層が発光する。
発光領域25内の第2電極層16に伝わった電流は、
図21(a)のように第2電極層16を介して第2給電領域28に伝わり、第2給電領域28で電極接続溝41を経由して孤立部30に至る。孤立部30に伝わった電流は、第2給電部35から導電性接着材7を介して電極金具5に伝わり、外部電源に戻る。
このようにして第1有機ELパネル2が点灯する。
【0081】
第2有機ELパネル3を点灯させる場合については、第1有機ELパネル2と同一構造体であり、第1有機ELパネル2の点灯時の電流の流れと同様であるため、説明を省略する。
【0082】
ここで、本実施形態の第1電極層13は、上記したように透明導電性酸化物を使用しているため、金属に比べて内部抵抗が高く、発光領域25内の有機EL素子10全体の第1電極層13に均等に電流を行き渡らせることができず、輝度むらが生じるおそれがある。
そこで、有機ELモジュール1では、各有機ELパネル2,3の第1給電領域27において、補助電極部31が形成されている。各有機ELパネル2,3は、
図22のように縦横に延びる補助電極部31によって縦横に広がりをもって第1電極層13に電流が流れるため、第1給電領域27ほぼ全体の第1電極層13が同電位となるため、均等に発光領域25の第1電極層13に電流を流すことが可能であり、駆動時の輝度むらを抑制することができる。
【0083】
本実施形態の有機ELモジュール1の有機ELパネル2,3は、同一構造の有機ELパネルを使用しているため、歩留まりがよく、コストを低減できる。
【0084】
本実施形態の有機ELモジュール1は、点灯時において各有機ELパネル2,3のそれぞれに対して独立した導電経路を有しているため、光らせる発光面を選択できる。
【0085】
本実施形態の有機ELモジュール1の有機ELパネル2,3は、各有機EL素子10が無機封止層17によって1次封止されており(膜封止)、さらに、各有機EL素子10は、ガラス基板製の透明絶縁基板12aと透明絶縁基板12bの間に位置し、硬質接着樹脂20によって透明絶縁基板12間の空間を封止することで2次封止されている(ガラス封止)。そのため、封止性が高い。
【0086】
本実施形態の有機ELモジュール1は、透明絶縁基板12の給電部35,36側の辺から側面視したときに、第1有機ELパネル2の第2給電部35a及び第1給電部36aに給電する電極金具5a,6aは、第1有機ELパネル2の透明絶縁基板12の側面に沿って重なり方向外側に延びており、第2有機ELパネル3の第2給電部35b及び第1給電部36bに給電する電極金具5b,6bは、第2有機ELパネル3の透明絶縁基板12の側面に沿って重なり方向外側に延びているため、外部電源から各有機ELパネル2,3に接続する箇所を離すことができる。そのため、外部電源を接続しやすい。
【0087】
本実施形態の有機ELモジュール1は、1辺に給電部35a,35b,36a,36bが並列しているため、
図23(a)に示されるような薄型吊り下げ掲示板光源や
図23(b)に示されるようなスタンド式の掲示板光源などの用途等で使用可能であり、有機ELモジュール1の設置箇所の自由度が高い。
【0088】
最後に、有機ELパネル2,3の各層の構成について説明する。
【0089】
透明絶縁基板12は、防湿性、透光性及び絶縁性を有したものであり、具体的には、ソーダ石灰ガラスや、無アルカリガラスなどのガラス基板が採用できる。
透明絶縁基板12は、円形又は多角形状をしており、その中でも四角形であることが好ましい。本実施形態では、長方形状のガラス基板を採用している。
【0090】
第1電極層13の材料は、光透過性及び導電性を有していれば、特に限定されるものではなく、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、酸化錫(SnO
2)、酸化亜鉛(ZnO)等の透明導電性酸化物などが採用される。機能層15内の発光層から発生した光を効果的に取り出せる点では、透明性が高いITOあるいはIZOが特に好ましい。本実施形態では、第1電極層13はITOを採用している。
【0091】
第2電極層16の材料は、導電性を有していれば、特に限定されるものではなく、例えば銀(Ag)やアルミニウム(Al)などの金属が挙げられる。
本実施形態の第2電極層16は、アルミニウムを採用している。
また、本実施形態の第2電極層16は、第1電極層13の導電率よりも高い導電率を有している。
【0092】
機能層15は、第1電極層13と第2電極層16との間に設けられ、少なくとも一つの発光層を有している層である。機能層15は、主に有機化合物からなる複数の層から構成されている。この機能層15は、一般的な有機EL装置に用いられている低分子系色素材料や、共役系高分子材料などの公知のもので形成することができる。また、この機能層15は、第1電極層13側から第2電極層16側に向かって、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などの複数の層からなる積層多層構造であってもよい。
【0093】
無機封止層17は、発光領域25内の有機EL素子10を封止する層である。無機封止層17としては、ガス非透過性を有していれば特に限定されるものではなく、公知の物質を使用できる。例えば、金属酸化物(M−O)、金属窒化物(M−N)、金属炭化物(M−C)などが採用できる。なお、Mは金属を表す。Si−N、Si−H、N−H等からなる窒化珪素や酸化珪素、および両者の中間固溶体である酸窒化珪素が好ましい。
【0094】
上記した実施形態では、有機ELパネル2,3を同一構造体としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、異なる構造体であってもよい。
【0095】
上記した実施形態では、第1有機ELパネル2に接続される電極金具5a,6aの延伸方向と第2有機ELパネル3に接続される電極金具5b,6bの延伸方向が互い反対方向を向いていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、同一方向を向いていてもよい。