(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光熱費、一次エネルギー消費量および/またはCO2排出量に関して、深夜沸上げモードで動作した場合と学習沸上げモードで動作した場合の対比を使用者に提示する手段を備える、請求項2の熱供給システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
深夜時間帯の間に、一日に必要な熱量をすべてタンクに蓄えておく構成では、タンクに蓄熱してから実際に温水を供給するまでに時間差があるため、タンクからの放熱によるエネルギー損失が大きい。また、深夜時間帯の間に、一日に必要な熱量をすべてタンクに蓄えておく構成では、タンクに蓄熱すべき熱量が大きく、限られたタンク容量で蓄熱量を確保するために、ヒートポンプでの沸上げ温度を高くする必要がある。ヒートポンプの沸上げ温度を高くすると、ヒートポンプのCOPが低くなり、エネルギー効率を低下させてしまう。以上のように、深夜時間帯の間に、一日に必要な熱量をすべてタンクに蓄えておく構成では、光熱費の面では有利になるものの、省エネルギーの面では不利になる側面がある。
【0005】
一般的に、温水供給システムの使用者には、光熱費を抑えるように温水供給システムを動作させたいという要望が存在する。他方で、近年の省エネルギー意識の社会的な高まりを受けて、温水供給システムの使用者には、温水供給システムを省エネルギーで動作させたいという要望も存在する。これらの要望に対して適切に応えることが可能な技術が必要とされている。
【0006】
本明細書では、上記課題を解決する技術を開示する。本明細書では、光熱費を抑えるように温水供給システムを動作させたいという要望と、温水供給システムを省エネルギーで動作させたいという要望に、適切に応えることが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書が開示する温水供給システムは、水を加熱するヒートポンプと、水を蓄えるタンクを備えている。その温水供給システムは、ヒートポンプによってタンクの水を沸き上げる沸上げ運転について、深夜沸上げモードと学習沸上げモードで動作可能である。その温水供給システムは、深夜沸上げモードでは、深夜電力料金が適用される深夜時間帯の間に、必要な熱量をタンクに蓄えるように、沸上げ運転を実行する。その温水供給システムは、学習沸上げモードでは、過去の温水供給実績に基づいて、予想される温水供給の開始時刻までに、必要な熱量をタンクに蓄えるように、沸上げ運転を実行する。その温水供給システムは、学習沸上げモードにおいて、沸上げ温度が給湯設定温度に応じて設定されており、設定された沸上げ温度が
タンク内の水が殺菌される所定温度に満たない場合、過去の所定期間以内にタンクの容量以上の水量がタンクから送り出されておらず、かつ
前記所定温度以上で沸上げ運転が行われていない場合に、沸上げ温度を
前記所定温度に設定する。
【0008】
上記の温水供給システムが深夜沸上げモードで動作する場合は、安価な深夜電力料金が適用される深夜時間帯において、必要な蓄熱量を確保するようにタンクの水を沸き上げるため、光熱費を抑えることができる。これに対して、上記の温水供給システムが学習沸上げモードで動作する場合は、予想される温水供給の開始時刻までにタンクの水を沸き上げるため、タンクに蓄熱してから温水を供給するまでの時間を短縮することができ、タンクからの放熱によるエネルギー損失を抑制することができる。さらに、上記の温水供給システムが学習沸上げモードで動作する場合、一度にタンクに蓄えるべき熱量が少なくて済むため、蓄熱時のタンクの水温を低くすることができる。従って、ヒートポンプによる沸上げ温度を低くして、ヒートポンプのCOPを向上することができる。すなわち、上記の温水供給システムは、学習沸上げモードで動作することで、省エネルギーを実現することができる。上記の温水供給システムによれば、光熱費を抑えるように温水供給システムを動作させたいという要望と、温水供給システムを省エネルギーで動作させたいという要望に、適切に応えることができる。
また、上記の温水供給システムでは、学習沸上げモードにおいて、タンク内の水を殺菌する必要がある場合、すなわち、過去の所定期間以内にタンクの容量以上の水量がタンクから送り出されておらず、かつ所定温度以上で沸上げ運転が行われていない場合には、沸上げ温度を所定温度に設定して、タンク内の水を殺菌することができる。
【0009】
上記の温水供給システムは、深夜沸上げモードで動作した場合の光熱費、一次エネルギー消費量および/またはCO2排出量を算出する手段と、学習沸上げモードで動作した場合の光熱費、一次エネルギー消費量および/またはCO2排出量を算出する手段を備えているように構成することができる。
【0010】
上記の温水供給システムによれば、深夜沸上げモードと学習沸上げモードのそれぞれについて、光熱費および省エネルギー性の定量的な評価を行うことが可能となる。
【0011】
上記の温水供給システムは、光熱費、一次エネルギー消費量および/またはCO2排出量に関して、深夜沸上げモードで動作した場合と学習沸上げモードで動作した場合の対比を使用者に提示する手段を備えるように構成することができる。
【0012】
上記の温水供給システムによれば、深夜沸上げモードと学習沸上げモードの何れかを選択する際に有益な情報を使用者に提示することができる。
【0013】
上記の温水供給システムは、水を加熱するバーナ加熱装置をさらに備えるように構成することができる。
【0014】
上記の温水供給システムによれば、実際の温水供給状況が想定とは異なったものとなり、タンクの蓄熱を使いきってしまった場合であっても、再度の沸上げ運転を待つことなく、バーナ加熱装置を利用して温水を供給することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施例)
図1に示すように、本実施例に係る給湯システム2は、タンク10と、タンク水循環路20と、水道水導入路30と、供給路40と、ヒートポンプ50と、バーナ加熱装置60と、コントローラ100と、を備える。
【0017】
ヒートポンプ50は、外気から吸熱して、タンク水循環路20内の水を加熱する熱源である。ヒートポンプ50は、図示しないが、熱媒体(代替フロン、例えばR410A等やCO2)を循環させる熱媒体循環路と、外気と熱媒体との間で熱交換を行う蒸発器と、熱媒体を圧縮して高温高圧にする圧縮器と、タンク水循環路20内の水と高温高圧の熱媒体との間で熱交換を行う熱交換器(凝縮器)と、熱交換を終えた後の熱媒体を減圧させて低温低圧にする膨張弁と、を備えている。
【0018】
タンク10は、ヒートポンプ50によって加熱された温水を貯える。タンク10は、密閉型であり、断熱材によって外側が覆われている。タンク10内には満水まで水が貯留されている。本実施例では、タンク10の容量は200Lである。タンク10には、サーミスタ12、14、16、18がタンク10の高さ方向に所定間隔で取り付けられている。各サーミスタ12、14、16、18は、その取付位置の水の温度を測定する。
【0019】
タンク水循環路20は、上流端がタンク10の下部に接続されており、下流端がタンク10の上部に接続されている。タンク水循環路20には、循環ポンプ22が介装されている。循環ポンプ22は、タンク水循環路20内の水を上流側から下流側へ送り出す。また、タンク水循環路20は、ヒートポンプ50の熱交換器(図示省略)を通過している。循環ポンプ22とヒートポンプ50とを作動させると、タンク10の下部の水がヒートポンプ50で加熱され、加熱された水がタンク10の上部に戻される。即ち、タンク水循環路20は、タンク10の水を沸き上げて、タンク10に蓄熱するための循環水路である。また、タンク水循環路20のヒートポンプ50の上流側には、サーミスタ24が介装されている。サーミスタ24は、タンク10の下部からヒートポンプ50に送られる水の温度を測定する。
【0020】
水道水導入路30は、上流端が水道水供給源31に接続されている。水道水導入路30には、サーミスタ32と水量センサ33が介装されている。サーミスタ32は、水道水の温度を測定する。水量センサ33は、給湯システム2に供給される水道水の水量(すなわち、給湯システム2が供給する温水の水量)を測定する。水道水導入路30の下流側は、第1導入路30aと第2導入路30bに分岐している。第1導入路30aの下流端は、タンク10の下部に接続されている。第2導入路30bの下流端は、後述の供給路40の途中に接続されている。第2導入路30bの下流端と供給路40との接続部分には、混合弁42が設けられている。混合弁42は、供給路40内を流れる温水に、第2導入路30b内の水を混合させる量を調整する。
【0021】
供給路40は、上流端がタンク10の上部に接続されている。上述したように、供給路40の途中には、水道水導入路30の第2導入路30bが接続されており、接続部分には混合弁42が設けられている。第2導入路30bとの接続部より上流側の供給路40には、タンク10から送り出される温水の水量を測定する水量センサ41が介装されている。第2導入路30bとの接続部より下流側の供給路40には、バーナ加熱装置60が介装されている。供給路40の下流端は、温水利用箇所(例えば台所、浴槽等)に接続されている。バーナ加熱装置60より下流側の供給路40には、サーミスタ44が介装されている。サーミスタ44は、温水利用箇所に供給される温水の温度を測定する。バーナ加熱装置60は、サーミスタ44が測定する温水の温度が、給湯設定温度と一致するように、供給路40内の水を加熱する。
【0022】
コントローラ100は、各構成要素と電気的に接続されており、各構成要素の動作を制御する。
図1には示していないが、コントローラ100には、使用者が様々な指示を入力可能な操作部と、様々な情報を表示可能な表示部とを有するリモコンが接続されている。また、コントローラ100は、現在時刻を取得するタイマと、各種データを記憶するメモリを備えている。コントローラ100のメモリには、過去の所定期間(例えば7日間)における、温水利用箇所へ供給された温水の水量や温度、タンク10から温水利用箇所へ送り出された温水の水量、温水利用箇所へ供給した熱量などの経時的変化が、温水供給実績として記憶される。温水利用箇所へ供給する熱量は、温水利用箇所へ供給される温水の水量と、温水利用箇所へ供給される温水と水道水との温度差から算出することができる。また、コントローラ100のメモリには、後述する光熱費、一次エネルギー消費量およびCO2排出量の算出に必要な各種の係数が予め記憶されている。
【0023】
次いで、本実施例の給湯システム2の動作について説明する。給湯システム2は、主に、沸上げ運転及び給湯運転を実行することができる。
【0024】
(沸上げ運転)
沸上げ運転は、ヒートポンプ50によってタンク10内の水を循環加熱する運転である。沸上げ運転は、蓄熱運転または貯湯運転と呼ぶこともできる。沸上げ運転では、ヒートポンプ50を駆動するとともに、循環ポンプ22を作動させる。循環ポンプ22が作動すると、タンク水循環路20内をタンク10内の水が循環する。即ち、タンク10の下部に存在する水がタンク水循環路20内に導入され、導入された水がヒートポンプ50内の熱交換器で加熱されて、タンク10の上部に戻される。この際に、ヒートポンプ50からタンク10へ戻される水の温度が、予め設定された沸上げ温度となるように、ヒートポンプ50および循環ポンプ22の動作が制御される。沸上げ運転の間は、タンク10の上部には、高温の水の層が形成され、下部には、低温の水の層が形成される。沸上げ運転を継続して、タンク10の内部の水が全て沸上げ温度まで加熱されると、沸上げ運転を終了する。
【0025】
(給湯運転)
給湯運転は、タンク10内の水を温水利用箇所に供給する運転である。温水利用箇所の給湯栓が開かれると、水道水供給源31からの水圧によって、水道水導入路30(第1導入路30a)からタンク10の下部に水道水が流入する。同時に、タンク10上部の温水が、供給路40を介して温水利用箇所に供給される。
【0026】
コントローラ100は、タンク10から供給路40に供給される水の温度(即ち、サーミスタ12の測定温度)が、給湯設定温度より高い場合には、混合弁42を開いて第2導入路30bから供給路40に水道水を導入する。この場合、タンク10から供給された水と第2導入路30bから供給された水道水とが、供給路40内で混合される。コントローラ100は、温水利用箇所に供給される水の温度が、給湯設定温度と一致するように、混合弁42の開度を調整する。一方、コントローラ100は、タンク10から供給路40に供給される水の温度が、給湯設定温度より低い場合には、バーナ加熱装置60を作動させる。この場合、供給路40を通過する水がバーナ加熱装置60によって加熱される。コントローラ100は、温水利用箇所に供給される水の温度が、給湯設定温度と一致するように、バーナ加熱装置60の出力を制御する。
【0027】
上記の給湯運転では、バーナ加熱装置60による加熱を行う場合に比べて、バーナ加熱装置60による加熱を行うことなく、タンク10の蓄熱のみを利用する場合の方が、COPが高い。このため、給湯運転に先立って、沸上げ運転を行っておいて、タンク10に十分な蓄熱量を確保しておくことが好ましい。本実施例の給湯システム2は、沸上げ運転を実行するタイミングに関連して、深夜沸上げモードと学習沸上げモードを備えている。使用者はリモコンを介して、深夜沸上げモードまたは学習沸上げモードを選択しておくことができる。コントローラ100は、選択されたモードに従って、自動的に沸上げ運転を実行する。以下では、深夜沸上げモードと学習沸上げモードについてそれぞれ説明する。
【0028】
(深夜沸上げモード)
深夜沸上げモードでは、安価な深夜電力料金が適用される深夜時間帯(例えば23:00〜7:00)の間にタンク10の水を沸き上げて、一日に必要となる熱量を予めタンク10に蓄熱しておく。深夜沸上げモードが選択されている場合、コントローラ100は、毎日、所定時刻(例えば2:00)になると、
図2に示す処理を実行する。
【0029】
ステップS102では、タンク10の必要蓄熱量を算出する。タンク10の必要蓄熱量は、例えば、過去の所定期間(例えば7日間)における温水供給実績に基づいて算出される。本実施例では、過去の7日間における、一日に使用された総熱量の平均値を、タンク10の必要蓄熱量として算出する。
【0030】
ステップS104では、ヒートポンプ50の沸上げ温度を設定する。沸上げ温度は、ステップS102で算出された必要蓄熱量と、タンク10の容量から特定される。ヒートポンプ50の沸上げ温度が低いほど、ヒートポンプ50のCOPは向上するため、本実施例では、タンク10の容量で必要蓄熱量を蓄熱するために必要とされる最も低い水温が、ヒートポンプ50の沸上げ温度として設定される。本実施例では、35℃から90℃の範囲で、沸上げ温度が設定される。
【0031】
ステップS106では、ステップS104で設定された沸上げ温度が60℃以上であるか否かを判断する。沸上げ温度が60℃以上の場合(ステップS106でYESの場合)、その後の沸上げ運転によってタンク10の内部の水は確実に殺菌されるため、処理はステップS114へ進む。沸上げ温度が60℃に満たない場合(ステップS106でNOの場合)、タンク10の内部の水を殺菌する必要があるか否かを判断するため、処理はステップS108へ進む。
【0032】
ステップS108では、過去の所定期間(例えば72時間)以内に、タンク10の容量以上の水量がタンク10から温水利用箇所へ送り出されたか否かを判断する。タンク10の容量以上の水量がタンク10から送り出されていた場合(ステップS108でYESの場合)、タンク10の内部には長期間にわたって滞留している水が存在しないため、殺菌のために沸上げ温度を変更する必要はない。この場合、処理はステップS114へ進む。タンク10の容量以上の水量がタンク10から送り出されていない場合(ステップS108でNOの場合)、処理はステップS110へ進む。
【0033】
ステップS110では、過去の所定期間(例えば72時間)以内に、60℃以上の沸上げ温度で沸上げ運転が行われたか否かを判断する。60℃以上の沸上げ温度で沸上げ運転が行われていた場合(ステップS110でYESの場合)、タンク10の内部の水は殺菌されたばかりであり、再度の殺菌のために沸上げ温度を変更する必要はない。この場合、処理はステップS114へ進む。60℃以上の沸上げ温度で沸上げ運転が行われていなかった場合(ステップS110でNOの場合)、処理はステップS112へ進む。
【0034】
ステップS112では、その後の沸上げ運転においてタンク10の内部の水を殺菌するために、沸上げ温度を60℃に設定する。
【0035】
ステップS114では、沸上げ完了時刻を設定する。沸上げ完了時刻は、例えば深夜電力料金が適用される深夜時間帯の終わる時刻(例えば7:00)としてもよい。あるいは、沸上げ完了時刻は、過去の所定期間(例えば7日間)において、温水需要が最初に発生する時刻の平均値(例えば6:00)と、深夜電力料金が適用される深夜時間帯の終わる時刻(例えば7:00)のうち、何れか早いほうとしてもよい。
【0036】
ステップS116では、沸上げ開始時刻を設定する。沸上げ開始時刻は、沸上げ完了時刻までに、タンク10の内部の水を、沸上げ温度まで沸き上げるために、沸上げ運転を開始すべき時刻である。沸上げ開始時刻は、ステップS114で設定された沸上げ完了時刻と、タンク10の容量と、ヒートポンプ50の沸上げ温度から算出することができる。沸上げ開始時刻を設定すると、
図2の処理を終了する。
【0037】
図2の処理を実行した後、現在時刻が設定された沸上げ開始時刻となると、給湯システム2は、設定された沸上げ温度での沸上げ運転を実行する。これによって、沸上げ完了時刻までに、タンク10の内部に、沸上げ温度まで加熱された温水が貯えられる。
【0038】
図3は給湯システム2が深夜沸上げモードで動作する場合の、一日の間での、温水利用箇所への供給熱量とタンク10の蓄熱量の関係を示している。深夜沸上げモードでは、安価な深夜電力料金が適用される深夜時間帯において、一日に必要な蓄熱量を確保するようにタンク10の水を沸き上げるため、光熱費を抑えることができる。
【0039】
(学習沸上げモード)
学習沸上げモードでは、過去の温水供給実績に基づいて温水供給の開始時刻を予想し、その開始時刻の直前にタンク10の水を沸き上げて、必要な熱量をその都度タンク10に蓄熱しておく。学習沸上げモードが選択されている場合、コントローラ100は、毎日、所定時刻(例えば2:00)になると、
図4に示す処理を実行する。
【0040】
ステップS202では、過去の所定期間(例えば7日間)における温水供給実績に基づいて、温水需要が発生する時間帯を抽出する。例えば、朝の洗面、炊事、洗濯等によって温水需要が発生する時間帯や、風呂の湯はりによって温水需要が発生する時間帯や、入浴時のシャワー等によって温水需要が発生する時間帯が抽出される。温水需要が発生する時間帯のそれぞれに対して、ステップS204以降の処理が実行される。
【0041】
ステップS204では、タンク10の必要蓄熱量を算出する。タンク10の必要蓄熱量は、ステップS202で抽出された温水需要に関して、過去に温水利用箇所へ供給された熱量の平均値として算出される。
【0042】
ステップS206では、ヒートポンプ50の沸上げ温度を設定する。沸上げ温度は、給湯設定温度に所定値(例えば5℃)を加算した温度に設定される。本実施例では、35℃から65℃の範囲で、沸上げ温度が設定される。
【0043】
ステップS208では、ステップS206で設定された沸上げ温度が60℃以上であるか否かを判断する。沸上げ温度が60℃以上の場合(ステップS208でYESの場合)、その後の沸上げ運転によってタンク10の内部の水は確実に殺菌されるため、処理はステップS216へ進む。沸上げ温度が60℃に満たない場合(ステップS208でNOの場合)、タンク10の内部の水を殺菌する必要があるか否かを判断するため、処理はステップS210へ進む。
【0044】
ステップS210では、過去の所定期間(例えば72時間)以内に、タンク10の容量以上の水量がタンク10から温水利用箇所へ送り出されたか否かを判断する。タンク10の容量以上の水量がタンク10から送り出されていた場合(ステップS210でYESの場合)、タンク10の内部には長期間にわたって滞留している水が存在しないため、殺菌のために沸上げ温度を変更する必要はない。この場合、処理はステップS216へ進む。タンク10の容量以上の水量がタンク10から送り出されていない場合(ステップS210でNOの場合)、処理はステップS212へ進む。
【0045】
ステップS212では、過去の所定期間(例えば72時間)以内に、60℃以上の沸上げ温度で沸上げ運転が行われたか否かを判断する。60℃以上の沸上げ温度で沸上げ運転が行われていた場合(ステップS212でYESの場合)、タンク10の内部の水は殺菌されたばかりであり、再度の殺菌のために沸上げ温度を変更する必要はない。この場合、処理はステップS216へ進む。60℃以上の沸上げ温度で沸上げ運転が行われていなかった場合(ステップS212でNOの場合)、処理はステップS214へ進む。
【0046】
ステップS214では、その後の沸上げ運転においてタンク10の内部の水を殺菌するために、沸上げ温度を60℃に設定する。
【0047】
ステップS216では、沸上げ完了時刻を設定する。沸上げ完了時刻は、ステップS202で抽出された温水需要が発生する時間帯の直前の時刻に設定される。
【0048】
ステップS218では、沸上げ開始時刻を設定する。沸上げ開始時刻は、沸上げ完了時刻までに、タンク10の内部の水を、沸上げ温度まで沸き上げるために、沸上げ運転を開始すべき時刻である。沸上げ開始時刻は、ステップS216で設定された沸上げ完了時刻と、タンク10の容量と、ヒートポンプ50の沸上げ温度から算出することができる。
【0049】
ステップS202で抽出された温水需要のそれぞれに対して、沸上げ温度と沸上げ開始時刻が設定されると、
図4の処理を終了する。
【0050】
図4の処理を実行した後、現在時刻が設定された沸上げ開始時刻となる度に、給湯システム2は、設定された沸上げ温度での沸上げ運転を実行する。これによって、沸上げ完了時刻までに、タンク10の内部に、沸上げ温度まで加熱された温水が貯えられる。
【0051】
図5は給湯システム2が学習沸上げモードで動作する場合の、一日の間での、温水利用箇所への供給熱量とタンク10の蓄熱量との関係を示している。学習沸上げモードでは、温水需要の発生が予想される時刻に合わせて、その都度タンク10の水を沸き上げるため、深夜沸上げモードに比べて、タンク10に蓄える熱量を少なくすることができる。このため、ヒートポンプ50を低い沸上げ温度で動作させることができ、高いCOPを実現することができる。また、タンク10からの放熱量を少なくして、省エネルギーを実現することができる。
【0052】
(各モードの対比表示)
本実施例の給湯システム2では、深夜沸上げモードで動作しているときに、実際の光熱費、一次エネルギー消費量およびCO2排出量を算出した上で、さらに、仮に学習沸上げモードで動作した場合の光熱費、一次エネルギー消費量およびCO2排出量を算出することができる。また、学習沸上げモードで動作しているときに、実際の光熱費、一次エネルギー消費量およびCO2排出量を算出した上で、さらに、仮に深夜沸上げモードで動作した場合の光熱費、一次エネルギー消費量およびCO2排出量を算出することができる。
【0053】
コントローラ100は、それぞれのモードにおける光熱費、一次エネルギー消費量およびCO2排出量を、以下のように算出する。
【0054】
コントローラ100は、まず、ガス消費量と電力消費量をそれぞれ算出する。ガス消費量と電力消費量は、バーナ加熱装置60における実際のガス消費量と、ヒートポンプ50における実際の電力消費量を、そのまま用いることができる。あるいは、温水利用箇所への実際の供給熱量に基づいて、想定されるバーナ加熱装置60とヒートポンプ50の使用割合から、バーナ加熱装置60の供給熱量とヒートポンプ50の供給熱量を算出して、それぞれの供給熱量からガス消費量と電力消費量を算出してもよい。後者の場合、ガス消費量の算出の際には、バーナ加熱装置60のCOPが考慮され、電力消費量の算出の際には、ヒートポンプ50のCOPやタンク10からの放熱ロスが考慮される。
【0055】
光熱費については、コントローラ100が、ガス消費量とガス従量料金からガス料金を算出し、電力消費量と電力従量料金から電力料金を算出して、それらを合計することによって、算出される。ガス従量料金と電力従量料金は、コントローラ100に予め記憶されている。なお、光熱費の算出の際に、発電装置(図示せず)の売電の影響を考慮することもできる。
【0056】
一次エネルギー消費量については、コントローラ100が、ガス消費量とガスの一次エネルギー換算係数からガスの一次エネルギー消費量を算出し、電力消費量と電力の一時エネルギー換算係数から電力の一次エネルギー消費量を算出し、それらを合計することによって、算出される。ガスの一次エネルギー換算係数と、電力の一次エネルギー換算係数は、コントローラ100に予め記憶されている。
【0057】
CO2排出量については、コントローラ100が、ガス消費量とガスのCO2排出係数からガスのCO2排出量を算出し、電力消費量と電力のCO2排出係数から電力のCO2排出量を算出し、それらを合計することによって、算出される。ガスのCO2排出係数と電力のCO2排出係数は、コントローラ100に予め記憶されている。
【0058】
コントローラ100が、それぞれのモードについて算出された光熱費、一次エネルギー消費量および/またはCO2排出量をリモコンの表示部に対比して表示することによって、使用者がモードを選択する際に有益な情報を提示することができる。
【0059】
以上、各実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0060】
例えば、上記の実施例では、タンク10の容量を200Lとして、深夜沸上げモードにおいて、深夜時間帯の間に一日分の熱量をタンク10に蓄える構成としているが、これとは異なり、タンク10の容量を50Lまたは100Lとして、深夜沸上げモードにおいて、深夜時間帯の間に半日分の熱量を蓄える構成とすることもできる。
【0061】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は、複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。