(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ナックル部の下側に内槽側板を取り付けて金属製の内槽を組み立てる工程では、前記ナックル部の下側に一の内槽側板を取り付ける処理と前記一の内槽側板の下に他の内槽側板を取り付ける処理との間に、前記外槽の側壁の前記吊り部より上方に前記ジャッキアップ装置を吊るための第2の吊り部を設け、該第2の吊り部と前記被吊り部材との間にそれぞれジャッキアップ装置を盛り替える処理を有することを特徴とする請求項1記載の円筒型タンクの構築方法。
前記ジャッキアップ装置はジャッキ本体と該ジャッキ本体に昇降可能に連結するジャッキアップロッドとを有して構成され、前記ジャッキアップロッドは複数のロッドが長さ方向に着脱可能に連結して形成されており、
前記金属製の内槽を組み立てる工程では、前記複数のジャッキアップ装置によって前記ナックル部を前記屋根上足場とともに吊り上げて上昇させた際、前記ジャッキアップロッドの上端のロッドを下端側のロッドから取り外す処理を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の円筒型タンクの構築方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明に係る円筒型タンクの構築方法の一実施形態を詳しく説明する。なお、以下の図面においては、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。以下の説明では、円筒型タンクとして、LNGを貯蔵する地上式のPC(プレストレスコンクリート)二重殻貯槽を例示する。
【0016】
まず、
図1に示すように、略円板状の基礎版(外槽の底部)1の工事を行い、その上面に底部ライナー(図示せず)を形成する。その際、本実施形態では、基礎版1の外周縁部より内側に、基礎版1の周方向に沿って内槽アンカーストラップ2を設置する。
次に、基礎版1の外周縁部の、内槽アンカーストラップ2より外側に、外槽の側壁(PC壁)3を下段側から完成時の高さ(完成高さ)の途中まで、本実施形態では全部で9段積み上げて形成する側壁3の5段目(#5)までを形成する。ただし、この途中までの高さとしては5段目に限定されることなく、任意の高さ(段)とすることができる。
【0017】
また、ここで形成する外槽の側壁(PC壁)3の一部には、その下段側、例えば2段目から3段目にかけて、工事口4を形成する。さらに、この側壁3の一部には、その上に残りの段の側壁を積み上げて最終的に9段からなる側壁3を形成するため、残りの段のための型枠を組み立てるなどの必要上、側壁3の一部の上部側、例えば4段目以上の部位に懸垂足場5を設置しておく。
【0018】
このようにして外槽の側壁3の一部を形成したら、この側壁3の内周面側にその周方向に沿って、内槽側板組立用の脚付架台6を複数設置する。脚付架台6は、後述する内槽側板を支持するための門型架台である。この脚付架台6を、内槽側板が複数組み合わされて形成される円筒状の内槽が最終的に下ろされる領域となるアニュラー領域Xを跨ぐようにして、基礎版1上に設置する。
【0019】
次に、
図2に示すように懸垂足場5を利用して側壁3の一部の上にコンクリートを打設し、6段目(#6)の側壁を形成する。なお、このような側壁3の施工にあたっては、その上部側を順次形成するに伴い、懸垂足場5についても順次上側に組み上げていくとともに、不要となった下側については順次撤去していく。
【0020】
また、これに並行して脚付架台6上に、内槽の側壁の一部となる内槽側板7を側壁3の周方向に沿って複数立設し、これら内槽側板7を隣り合うもの同士横方向に一体的に溶接する。これにより、各内槽側板7を円環状に組み立てる。なお、ここで組み立てる内槽側板7は、内槽の最上段(本実施形態では9段目[#9])に対応するものである。内槽側板7は、優れた靱性と強度を備えるNi鋼材等によって形成されている。
また、側壁3の内部では、基礎版1の中央部にて屋根架台8を組み立てる。
【0021】
次に、
図3に示すように最上段の内槽側板7の上端部にナックルプレート9(ナックル部)の各プレートを取り付け、これによってナックルプレート9を組み立てるとともにこれを内槽側板7の上端部に取り付ける。ナックルプレート9は、後述する内槽屋根の外周縁部にて下方に向けて湾曲するように形成されるものであり、前述したようにその下端縁部に最上段の内槽側板7の上端縁部が接続される。
【0022】
このナックルプレート9には、
図4〜
図6に示すようにその外周面に、ナックルサポート10とスペースキーパー11とをそれぞれ取り付ける。本実施形態では、
図6に示すようにナックルプレート9の周方向に沿ってナックルサポート10を等間隔で複数個(例えば30個)設け、これらの間にそれぞれスペースキーパー11を1個ずつ設けている。なお、
図6中において符号12は後述する外槽屋根の屋根骨、符号13はゴンドラレールである。
【0023】
ナックルサポート10は、後述するジャッキアップ装置に連結する被吊り部材となる鋼板製のもので、
図4、
図5に示すように側面視略三角形状に形成された一対のサポート板10a、10aと、これらサポート板10a、10a間に挟持された平面視略正方形状の被吊り板10bと、サポート板10a、10a間に挟持され、かつ被吊り板10bの上面側に連結してサポート板10a、10aと被吊り板10bとの間を補強する補強板10cとによって形成されている。
【0024】
サポート板10a、10aは、
図4に示すようにナックルプレート9の湾曲形状に対応して湾曲して形成された一辺部が、ナックルプレート9の湾曲面に接合され、溶接等によって取り付け固定されている。被吊り板10bと補強板10cとは、溶接等によって互いに連結した状態で、
図5に示すようにサポート板10a、10a間に溶接やボルト止め等によって取り付け固定されている。ここで、被吊り板10bは、その外側端(側壁3側の端部)がサポート板10a、10aの外側端に一致した状態で、サポート板10a、10a間に固定されている。この被吊り板10bには、ナックルプレート9と反対の側、すなわち外槽の側壁3側に向かって開口する切欠10dが形成されている。この切欠10dは、後述するジャッキアップ装置に連結する被吊り点となる。
【0025】
スペースキーパー11は、
図4、
図5に示すようにナックルプレート9の外周面に外側に突出して設けられたもので、
図6に示したようにナックルプレート9の周方向に沿って等間隔で設けられたナックルサポート10のそれぞれの間に配設されている。これらスペースキーパー11は、隣り合うナックルサポート10、10間のほぼ中央部に配設されており、これによってスペースキーパー11も、ナックルプレート9の周方向に沿って等間隔で設けられている。したがって、スペースキーパー11とナックルサポート10とは、ナックルプレート9の周方向に沿って互いに等間隔で交互に配置されたものとなっている。
【0026】
このようなスペースキーパー11は、
図4、
図5に示すように例えばナックルプレート9に前記サポート板10aと同様にして取り付けられた一対の鋼板(図示せず)と、これら鋼板間に挟持されたH鋼11aと、このH鋼11aの外端面に貼設された鋼板11bとによって形成されている。そして、このスペースキーパー11は、本実施形態ではその外側端が前記被吊り板10bの外側端より外側(外槽の側壁3側)に延び出させて形成配置する。
【0027】
すなわち、ナックルプレート9の中心から該スペースキーパー11の外側端までの距離が、ナックルプレート9の中心から被吊り板10bの外側端までの距離より長くなるようにスペースキーパー11を形成配置する。このように形成配置することで、スペースキーパー11によって外槽の側壁3とナックルプレート9との間の実質的なクリアランスを小さくすることができる。したがって、後述するジャッキアップ装置によってナックルプレート9を吊り上げた際、地震等の影響によってナックルプレート9が水平方向に変位しても、変位量を小さくしてスペースキーパー11が外槽の側壁3に衝突した際の衝撃を緩和することができる。
【0028】
次に、
図7に示すように屋根架台8上に内槽屋根ブロックを搭載し、内槽屋根(タンク屋根部)14を組み立てる。
また、基礎版1上に高所作業車(図示せず)を乗り入れる。また、脚付架台6の下のアニュラー領域Xにおいてアニュラー部16を形成すべく、その一部を施工する。
また、外槽の側壁3についても懸垂足場5を利用して順次上側に積み上げていき、
図7に示すように外槽の側壁3を最終段となる9段目(#9)まで施工する。なお、この時点では、側壁3形成のための懸垂足場5が、例えば6段目から7段目以上に組まれた状態のまま残っている。
【0029】
次に、
図8に示すように前記ナックルプレート9上に、外槽の側壁3の内周面から離間してこれに干渉しない状態で、かつ、前記懸垂足場5に干渉しない高さで、ジャッキアップ装置用足場(屋根上足場)17を組み立てる。このジャッキアップ装置用足場17としては、環状に形成されているナックルプレート9の周方向に沿って環状に形成し、これによって半径方向への倒れを防止する。また、その組み立てにあたっては、
図8、及び
図8に示した工程での外槽の側壁3の要部内面側を示す
図9に示すように、ジャッキアップ装置用足場17のほぼ全体を前記複数のナックルサポート10に取り付けることでこれらに支持させる。そして、倒れ防止材(図示せず)をナックルプレート9や内槽屋根14との間に設けることにより、ナックルプレート9や内槽屋根14に固定した状態にジャッキアップ装置用足場17を形成する。本実施形態では、
図8に示すように外槽の側壁3のほぼ4段目(#4)から5段目(#5)に対応して、ジャッキアップ装置用足場17を組み立てる。
【0030】
そして、
図8、
図9に示すようにこのジャッキアップ装置用足場17を利用して側壁3の所定位置、本実施形態では5段目(#5)に、吊り架台18(吊り部)を側壁3の周方向に等間隔となるように複数設置する。すなわち、この吊り架台18を例えば側壁3に予め埋め込んだアンカープレート等に強固かつ着脱可能に締結固定し、側壁3からその内方に向けて略水平に凸設する。
【0031】
次に、ジャッキアップ装置用足場17を利用して吊り架台18とナックルサポート10の被吊り板10bとの間に、それぞれジャッキアップ装置19を取り付ける。ジャッキアップ装置19は、
図10に示すようにセンターホールジャッキとして構成されたもので、吊り架台18に係合され支持されるジャッキ本体20aと、ジャッキ本体20aに上端部が取り付けられ、下端部がナックルサポート10の被吊り板10bに取り付けられたジャッキアップロッド20と、ジャッキアップロッド20の下端部を被吊り板10bに取り付けられるためのナット19aと、を有して構成される。なお、
図10では、見やすくするためにジャッキアップ装置用足場17の記載を省略している。
【0032】
このようなジャッキアップ装置19の取り付けは、吊り架台18の上にジャッキ本体20aを係合させ固定した状態でジャッキアップロッド20を垂下させ、さらにこのジャッキアップロッド20の下端部をナックルサポート10の被吊り板10bの前記切欠10d内に差し入れる。そして、予め用意したナット19aによってジャッキアップロッド20の下端部を被吊り板10bに固定する。このような作業は、
図9に示したジャッキアップ装置用足場17を利用することで支障なく容易に行うことができる。
【0033】
このようにしてジャッキアップ装置19を、外槽の側壁3の周方向に所定間隔で複数設置し、さらにそれぞれナックルサポート10の被吊り板10bに取り付けたら、
図8に示すように屋根架台8を撤去する。屋根架台8を撤去すると、前記タンク構成部材の重量が複数のジャッキアップ装置19によって保持された状態となる。
【0034】
ここで、
図8に示すように吊り架台18が設けられた位置は側壁3の5段目(#5)であり、ナックルサポート10が設けられた位置は側壁3の3段目(#3)に対向する位置であるため、前記ジャッキアップロッド20はこれらの間に対応する充分な長さに形成されている。しかし、このような長さに形成されたジャッキアップロッド20は、後述するようにジャッキアップ装置19を稼働させてジャッキアップロッド20を上昇させた際、このジャッキアップロッド20がその直上に位置する懸垂足場5に干渉されてしまう。
【0035】
そこで、ジャッキアップロッド20は、
図10に示すように複数のロッド20bが長さ方向に連結して形成されており、これらは螺子止め等によって着脱可能に構成されている。これにより、ジャッキアップロッド20を上昇させた際、吊り架台18より上方に突出したロッド20bをその下側のロッド20bから取り外す(切り離す)ことにより、ジャッキアップロッド20が懸垂足場5に干渉されるのを防止することができる。
【0036】
なお、
図8中の符号15はジャッキアップ装置用足場17の形成時にこれの頂部に設置したダビットであり、このダビット15は、旋回可能に設けられて前記の下側のロッド20bから取り外した(切り離した)ロッド20bを移送するためのものである。
また、
図8中の符号21は、前記ジャッキアップ装置19の各構成部材の吊り上げや吊り下げを行ったり、ジャッキアップロッド20から取り外されダビット15によって移送されたロッド20bを吊り下げたりするための吊り天秤であり、天秤棒21aの一方の端部に錘21bを有して構成された公知のものである。この吊り天秤21は、図示しないクレーンによって吊られており、これによって昇降や水平移動の各動作が制御されるようになっている。
【0037】
また、このような工程中、基礎版1上では、前記アニュラー部16の保冷工事及び中央部の保冷工事を並行して行う。アニュラー部16の保冷工事は、
図10に示すように脚付架台6の下で、底部冷熱抵抗緩和材22の上にパーライトコンクリートブロック23a、23b、構造用軽量コンクリートブロック24を組み立て、その上にアニュラープレート16aを取り付けることによって行う。アニュラー部16は、組み立てられた内槽側板7を最終的に支持するものであり、アニュラープレート16aが厚く形成され、またその保冷構造もコンクリートブロック等の硬質なもので形成される。
【0038】
次に、
図11に示すようにジャッキアップ装置19でナックルプレート9を吊り上げることにより、このナックルプレート9とこれに支持される内槽屋根14、内槽側板7、ナックルサポート10、スペースキーパー11、ジャッキアップ装置用足場17を含むタンク構成部材Yを上昇させる。具体的には、ジャッキ本体20aを正転駆動させることによってジャッキアップロッド20上昇させ、ナックルサポート10とともに組み立て途中のタンク構成部材Yをジャッキアップする。
【0039】
ここで、ジャッキアップ装置19によって吊り上げられるナックルプレート9は、内槽屋根14と内槽側板7とを接続するためのもので、内槽側板7より板厚が充分に厚く、強度が高いため、内槽側板7や内槽屋根14、さらにジャッキアップ装置用足場17を含む重量が付加されても座屈等の懸念がない。
【0040】
ジャッキアップ装置19によってタンク構成部材Yを内槽側板7のほぼ一段分上昇させたら、内槽側板7の下方に形成された空間に次の内槽側板7を搬入する。内槽側板7の搬入は、側壁3に設けられた工事口4を介して行う。工事口4周辺には第1搬送装置(図示せず)が設けられており、この搬送装置によって側壁3の外から工事口4を通って脚付架台6上に内槽側板7が順次搬送される。また、脚付架台6上には、側壁3の周方向に沿って第2搬送装置(図示せず)が設けられている。この第2搬送装置は、側壁3の周方向に沿うレール(図示せず)等を有して構成されたもので、脚付架台6上に搬送されてきた内槽側板7を、さらに側壁3の周方向に順次搬送するものである。
【0041】
次に、第2搬送装置で搬送されてきた内槽側板7を脚付架台6上に立設し、ジャッキアップされた内槽側板7の下方に円環状に配置する。そして、
図12に示すようにこれら内槽側板7を隣り合うもの同士横方向に一体的に溶接するとともに、上下に並ぶ内槽側板7同士も一体的に溶接することで、これら内槽側板7を一体の円筒形状に形成する。すなわち、最上段となる9段目(#9)の内槽側板7の下に8段目(#8)の内槽側板7を取り付ける。
【0042】
なお、複数の内槽側板7同士を外槽の側壁3の外で予め横方向に連結し、これを側壁3内に取り込んで環状に形成した後、上下に並ぶ内槽側板7同士を溶接するようにしてもよい。このように複数の内槽側板7同士を作業空間の制限の少ない側壁3の外で行うことにより、溶接作業が容易になり、効率よく内槽を組み立てることができる。
【0043】
このようにしてジャッキアップを行うと、ジャッキアップ装置19は
図12に示したようにそのジャッキアップロッド20の上端が吊り架台18より上方に突出し、それ以上上昇するとその直上に位置する懸垂足場5に干渉されてしまう。そこで、前記した内槽側板7同士の溶接等を行っている間に、ジャッキアップロッド20を構成する複数のロッド20bの、吊り架台18より上方に突出した部分をその下側から取り外す。
【0044】
そして、予めジャッキアップ装置用足場17の頂部に設置したダビット15を用いて取り外したロッド20bを内槽屋根14上に降ろす。すなわち、取り外したロッド20bを旋回可能なダビット15によって内槽屋根14上に降ろす。内槽屋根14上には、予めロッド20b等の資材を一時的に保管しておく保管部(図示せず)を形成しておく。このようなロッド20bの取り外しや取り外したロッド20bの内槽屋根14上への吊り降ろし、及び保管部への保管等については、ジャッキアップ装置用足場17を利用して行う。また、ジャッキアップ装置用足場17についても、懸垂足場5に干渉されないよう、吊り天秤21によってその上部側を順次撤去する。
【0045】
次に、ジャッキアップ装置19によりタンク構成部材Yを内槽側板7のほぼ一段分上昇させ、内槽側板7の下方に形成された空間にさらに次の内槽側板7を搬入し、以下、前述した8段目(#8)の内槽側板7の場合と同様にして、
図13に示すように7段目(#7)の内槽側板7を取り付ける。その際にも、吊り架台18より上方に突出したロッド20bを取り外し、ダビット15を用いて内槽屋根14上に降ろす。
【0046】
このようにして9段目(#9)から7段目(#7)までの内槽側板7を取り付けたら、
図14に示すように側壁3の内周面側の懸垂足場5を撤去する。すなわち、ここまでの間に充分な時間が経過していることから、外槽の側壁3は最上段となる9段目(#9)まで完成しており、したがって型枠等を取り外すことが可能なため、側壁3の内周面側を撤去することができる。なお、側壁3の外周面側については、後工程で必要となるため撤去せずにそのまま残しておく。
【0047】
次に、ジャッキアップ装置19の盛り替えを行うべく、
図14に示すように外槽の側壁3の頂部に第2の吊り架台25を設置する。また、ジャッキダウンして一旦タンク構成部材Y(8段目や7段目の内槽側板7も含む)を脚付架台6上に降ろす。
続いて、
図10に示したジャッキアップ装置19のジャッキアップロッド20を、吊り天秤21やクレーン等を利用して一旦ナックルサポート10の被吊り板10bから取り外す。また、ジャッキアップ装置19のジャッキ本体20aを吊り架台18から取り外す。これにより、ジャッキアップ装置19を外槽の側壁3とナックルプレート9との間から取り外す。さらに、吊り架台18を側壁3から取り外す。これら一連の作業についても、ジャッキアップ装置用足場17を利用して行う。
【0048】
そして、ジャッキアップ装置19のジャッキ本体20aを
図14に示した第2の吊り架台25に取り付ける。また、その際にジャッキアップロッド20については、先に懸垂足場5に干渉されないようにその上部側を取り外し、内槽屋根14上の保管部に保管しておいたが、側壁3の内周面側の懸垂足場5を撤去してジャッキアップロッド20を自由に伸ばせるようにしたので、内槽屋根14上に保管しておいたロッド20bを再度ジャッキアップロッド20に取り付け、ジャッキアップロッド20を長くしておく。本実施形態では、
図14に示すように外槽の側壁3の最上段となる9段目(#9)から5段目(#5)まで垂下させるため、予め別に用意した予備のロッド20bを付け足し、ジャッキアップロッド20を所望の長さに調整する。この作業についても、
図13に示したジャッキアップ装置用足場17を利用して行うことができる。
【0049】
このようにしてジャッキアップロッド20を所望の長さに調整したら、その下端側を再度ナックルサポート10の被吊り板10bの前記切欠10d内に差し入れる。そして、ナット19aによってジャッキアップロッド20の下端部を被吊り板10bに固定する。これにより、ジャッキアップ装置19を盛り替えることができる。このようにしてジャッキアップ装置19の盛り替えを終了したら、
図14に示すようにジャッキアップ装置用足場17を撤去する。
【0050】
次に、
図15に示すようにジャッキアップ装置19でナックルプレート9を吊り上げ、タンク構成部材Yを内槽側板7のほぼ一段分上昇させる。
続いて、内槽側板7の下方に形成された空間にさらに次の内槽側板7を搬入し、以下、前述した8段目(#8)、7段目(#7)の内槽側板7の場合と同様にして、
図16に示すように6段目(#6)の内槽側板7を取り付ける。
【0051】
次に、内槽屋根14の上に外槽屋根26を取り付ける。このような外槽屋根26を取り付けは、内槽屋根14上に多数のチャンネル型鋼等からなる連結材(図示せず)を取り付け、これら連結材に外槽屋根26を取り付けることで行う。
また、外槽の側壁3の内周面に対して、側部ライナー(図示せず)を貼設する作業を開始する。
【0052】
以下、ジャッキアップ装置19によるタンク構成部材Yの上昇、内槽側板7(タンク構成部材Y)の下方への次の内槽側板7の搬入、搬入した内槽側板7のタンク構成部材Y(内槽側板7)への取り付けを順次繰り返し、
図17に示すように内槽側板7を最下段の1段目(#1)まで取り付ける。これにより、内槽の側壁が完成する。
なお、このような各段の内槽側板7の取り付けの際に、すなわちタンク構成部材Yを吊り上げてその下方を空間としている間に、内槽側板7の搬入とは別に各種の資材27を側壁3内の基礎版1上に搬入する。また、外槽屋根26の上には作業足場28を組んでおく。
【0053】
次に、
図18に示すように脚付架台6を撤去し、これによってタンク構成部材Yの下方を空間にする。そして、ジャッキアップ装置19によってタンク構成部材Yをジャッキダウンし、外槽屋根26の屋根骨12の外周端を外槽の側壁3の頂部内周面に埋設した取付端29に連結し固定する。
続いて、外槽屋根26と内槽屋根14との間を連結する連結材(図示せず)を除去し、これらの間の連結を解除する。
【0054】
次に、
図19に示すようにジャッキアップ装置19によってタンク構成部材Yを再度ジャッキダウンし、内槽側板7の最下段の下端部をアニュラー部16上に降ろす。そして、内槽側板7の最下段の下端部を基礎版1に設置された内槽アンカーストラップ2に取り付ける。
次に、ナックルプレート9からナックルサポート10を除去し、さらに必要に応じてスペースキーパー11を除去する。
【0055】
その後、外槽の側壁3の緊張工事を行う。また、外槽の側壁3の内周面に貼設した側部ライナー(図示せず)に対して、冷熱抵抗緩和材であるポリウレタンフォーム(PUF)を吹きつける。さらに、ジャッキアップ装置19、第2の吊り架台25等も撤去する。そして、工事口4の閉鎖、不図示のポンプバレルの設置を経た後、水張りをして耐圧・気密試験を実施する。
最後に、内槽と外槽との間にパーライト等の保冷材(図示せず)を充填して内外槽間保冷工事を行い、さらに、塗装工事、配管保冷工事を経て円筒型タンク100を構築する。
【0056】
このような構成の円筒型タンク100を構築するに際して、特にナックルプレート9に外槽の側壁3及び懸垂足場5に干渉しないジャッキアップ装置用足場17(屋根上足場)を組み立てるようにしたので、その後、外槽の側壁3にジャッキアップ装置19を吊るための吊り架台18を複数設ける工程や、吊り架台18とナックルサポート10との間にそれぞれジャッキアップ装置19を取り付ける工程などの際に、前記ジャッキアップ装置用足場17を利用することでこれらの施工を容易に行うことができる。
【0057】
したがって、本実施形態の円筒型タンクの構築方法によれば、特に外槽側壁3の一部の施工を先行させ、その後外槽側壁3の残部の施工と内槽の施工とを並行して行う場合においても、ナックルプレート9にジャッキアップ装置用足場17(屋根上足場)を組み立てるようにしたことにより、外槽の側壁3やその上部に形成された懸垂足場5に干渉されることなく、ジャッキアップ装置19の組み立てや吊り架台18の施工を容易にかつ効率的に行うことができる。これにより、工期の短縮化やコストの低減化を図ることができる。
【0058】
また、ナックルプレート9の下側に内槽側板7を取り付けて金属製の内槽を組み立てる工程では、吊り架台18より上方に第2の吊り架台25を設けてジャッキアップ装置19を盛り替える処理を有しているが、このような処理に際しても、前記ジャッキアップ装置用足場17を利用してジャッキアップ装置19の解体や側壁3からの吊り架台18の取り外しの作業を行うことができ、したがってこれらの処理を容易に行うことができる。
【0059】
また、ジャッキアップ装置19によってナックルプレート9をジャッキアップ装置用足場17とともに吊り上げて上昇させた際、ジャッキアップロッド20の上端のロッド20bを下端側のロッド20bから取り外す処理を有しているが、このようなロッド20bの取り外しや取り外したロッド20bの内槽屋根14上への吊り降ろし等についても、ジャッキアップ装置用足場17を利用して容易に行うことができる。
【0060】
また、ジャッキアップ装置用足場17に旋回可能なダビット15を設けているので、特にジャッキアップロッド20の上端のロッド20bを下端側のロッド20bから取り外した際、ダビット15によって取り外したロッド20bを内槽屋根14上に容易に吊り降ろすことができる。
【0061】
また、ジャッキアップ装置用足場17の少なくとも一部、本実施形態ではそのほぼ全体を複数のナックルサポート10に取り付けてこれらに支持させるようにしたので、ナックルプレート9へのジャッキアップ装置用足場17の取り付けを容易にできるとともに、ジャッキアップ装置用足場17の解体時に、ナックルプレート9を直接処理することなく主にジャッキアップ装置用足場17とナックルサポート10との間を処理するだけで、ジャッキアップ装置用足場17をナックルプレート9から取り外すことができる。したがって、完成した円筒型タンク100において構成部材として残るナックルプレート9に、ジャッキアップ装置用足場17の解体によってダメージが生じるのを防止することができる。
【0062】
また、ナックルプレート9を組み立てる工程では、予め組み立てた内槽側板7の上側に前記ナックルプレート9を取り付けて組み立てるので、高さ方向に湾曲しているナックルプレート9を最初に円環状に組み立てるより、高さ方向では湾曲していない内槽側板7を円環状に組み立てる方が円環形状をより容易に組み立て易く、したがってナックルプレート9の円環状の組み立てを容易にすることができる。
【0063】
また、特にジャッキアップ装置19によってタンク構成部材Yをジャッキアップさせている間、もしくは懸垂させている間に地震や強風等が起こると、内槽屋根14や外槽屋根26が外槽内で水平方向に大きく変位する可能性があるが、ナックルサポート10、10間にこれより外側(外槽の側壁3側)に延出するスペースキーパー11を設けているので、これらスペースキーパー11によって外槽の側壁3とナックルプレート9との間の実質的なクリアランスを小さくすることができる。したがって、地震等の影響によってナックルプレート9が水平方向に変位しても、その変位量を小さくすることができ、これによってスペースキーパー11が外槽の側壁3に衝突した際の衝撃を緩和し、外槽の側壁3の損傷を防止することができる。また、ジャッキアップ装置19と被吊り板10bとの間が損傷することも確実に防止することができる。
【0064】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。前述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。