【実施例1】
【0017】
本実施例のエレベーター装置は、建屋に設けられた昇降路に設置されるかご1と、ロープ2を介してかご1と連結されるつり合いおもり3とを備え、ロープ2を巻上機のシーブ4を介して駆動することによりかご1およびつり合いおもり3が昇降路内を昇降するようになっている。
【0018】
かご1内には、かご内操作盤5が設置され、このかご内操作盤5には、閉じ込め等の非常時に乗客によって操作される非常押釦6と、非常押釦6の押圧により後述する管制センターのセンター員と通話を行うためのインターホン装置7とが設けられると共に、インターホン装置7には音を集音するマイクロホン8が備えられている。
【0019】
かご内操作盤5と通信ケーブル9を介して接続されると共に、エレベーターの統括制御を行う制御装置10が設けられ、この制御装置10には、マイクロホン8から出力される音信号を記録する記録部11
と、インターホン装置7による外部との通話時に、マイクロホン8から出力される音信号の音声周波数帯域を抽出するフィルター13とが備えられている。なお、フィルター13は、いわゆるデジタルフィルターである共に、異常診断運転時には解除されるものである。
制御装置10は、インターホン装置7を操作する非常押釦6が作動したかを判定する第1判定部と、この第1判定部で非常押釦6が作動していないと判定されたときに、異常診断運転の実施が可能かを判定する第2判定部とを有しており、この第2判定部で異常診断運転の実施が可能と判定されたときに異常診断運転を実施させると共に、異常診断運転時に、マイクロホン8が出力する音信号に基づき異常を判定する第3判定部12を有している。
【0020】
制御装置10は、電話回線14を介して外部、すなわち管制センター15と接続可能となっている。
【0021】
本実施例にあっては、
手順S1
の第1判定部にてかご1内の非常押釦6が押圧されたかどうかを常時監視しており、例えば閉じ込め事故が発生し、かご1内の乗客が非常押釦6を押圧すると、通信ケーブル9を介して出力信号が制御装置10に送られる。制御装置10は、手順S2としてフィルター13を有効とし、マイクロホン8が出力する音信号のうち音声周波数帯域を抽出する。この音声周波数帯域は、人間が発する音声に特化した帯域であり、例えば
図3の実線に示すように、100〜4kHzの周波数帯域に設定される。そして、インターホン装置7は、手順S3として電話回線14を介して管制センター15のセンター装置と繋がれ、かご1内の乗客と管制センター15のセンター員が通話可能となる。
【0022】
一方、制御装置10は、所定間隔で異常診断運転を実施するように設定されており、この周期が来ると手順S1
の第1判定部で非常押釦6が非操作であること、かつ手順S4
の第2判定部で異常診断運転を実施可能かどうか判
定する。手順S4
の第2判定部で実施可能と判
定する条件は、例えば図示しないかご内負荷検出装置の出力がない場合や、かご内カメラの映像診断によりかご1内が無人であることを検出した場合である。そして、手順S4の
第2判定部で異常診断運転実施可能と判
定すると、手順S5として、図示しない巻上機のシーブ4を介してロープ2を駆動し、かご1およびつり合いおもり3を昇降させると共に、所定階床にかご1を停止させてドアの開閉動作を行う。また、これらの一連の動作の間、マイクロホン8によりエレベーターが発する音を集音し、記録部11に記録する。なお、この異常診断運転中、フィルター13は解除され、マイクロホン8が集音した音信号の周波数帯域全体、例えば
図4に示すように、20〜20kHzの周波数帯域が記録部11に記録される。次いで、手順S6
の第3判定部12は、記録された音信号に異常音があるかどうかを判定する。手順S6で異常がないことが判定されると、手順S1に戻り、通常運転を継続する。一方、手順S6で異常が検出されると、手順S7として制御装置10は電話回線14を介して管制センター15に発報し、専門技術員の出動を要請する。
【0023】
本実施例によれば、インターホン装置7のマイクロホン8は、異常診断運転時にエレベーターの発生音を集音するものであると共に、マイクロホン8が出力する音信号に基づき異常を判定する判定部12を設けたことにより、あらかじめ設けられるインターホン通話用のマイクロホン8を異常診断用としても用い、簡易な構成でエレベーターの発生音に基づき異常診断を行うことができ、これによって、コストを抑えた装置とすることができる。
【0024】
また、フィルター13を設け、インターホン装置7による管制センター15のセンター員との通話時に、マイクロホン8が集音した音信号の音声周波数帯域を抽出することにより、通話時にクリアーな音場を構築し、かご1内の乗客とセンター員との通話を円滑に行うことができる。
【0025】
さらに、異常診断運転時に、フィルター13を解除することにより、マイクロホン8が集音した音信号の周波数帯域全体を用いて異常の判定を行うことにより、異常診断を高精度なものとすることができる。
【0026】
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。また、前述した実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置き換えをすることが可能である。例えば前述した実施例では、フィルター13により音声周波数帯域として100〜4kHzの周波数帯域を抽出するようにしたが、この値はその限りではなく任意に設定できるものである。