【実施例1】
【0010】
図1から
図7は実施例1の誘導加熱調理器を示している。
図1に示されている調理器は、以下に詳細に説明するが、トッププレート3上の三個所に鍋載置部6a,6b,6cを設けたビルトイン型の誘導加熱調理器である。尚、本実施例は、キッチンに嵌め込むビルトイン型でなく、キッチンに載置する据置型の加熱調理器であっても差し支えない。
【0011】
加熱調理器の筐体2は、システムキッチン1の上面から落とし込んで設置することで組み込まれる。設置後は後述するロースター部4と操作部パネル5がシステムキッチン1の前面部から操作できるようになっている。
【0012】
調理を行う際の被加熱物である調理鍋(
図4における符号20)は、筐体2の上面に配置された耐熱ガラス等からなるトッププレート3上に載置される。調理鍋は、トッププレート3に描かれた載置部6に載置されることで調理可能となる。
【0013】
載置部6は、トッププレート3の前面側に載置部右6aと載置部左6bが配置され、これら両載置部6aおよび6bの間の後部側略中央部に載置部中央6cが配置され、また載置部6には、被加熱物である調理鍋20を載置する範囲を示した環状の載置枠19が表示され、載置枠19内に調理鍋20を載置することで効率よく調理鍋20を加熱することができる。そして、トッププレート3の鍋載置部6a,6b,6cに対応した筐体2の下部には、調理鍋を加熱するための誘導加熱コイル右13a,誘導加熱コイル左13b,誘導加熱コイル中央13cがそれぞれ設置されている。
【0014】
載置部中央6cは、位置的に使用者の手の届きにくい場所である。このため、載置部中央6cで行う調理の種類は、調理者があまり手を動かさなくても良い料理、主に煮込みや保温などの調理に適している。また、煮込みや保温は、出力も弱くて済み、最大消費電力も限りがあることから、載置部中央6cに設置する誘導加熱コイル中央13cの出力を、載置部右6a及び載置部左6bに対応して設置されている誘導加熱コイル右13a及び誘導加熱コイル左13bより弱くし、消費電力が小さくなるよう設定されている。具体的には、誘導加熱コイル右13aと誘導加熱コイル左13bは、略3kW、載置部中央6cに設置される誘導加熱コイル中央13cは、略1.6kWである。
【0015】
図1及び
図2において、トッププレート3の周囲には、端面を保護するためのフレーム14が設けられている。トッププレート3の手前の上端縁に取り付けられるフレーム前14aと、トッププレート3の後方上端縁に取り付けられるフレーム後14bと、右側上端縁に取り付けられるフレーム右14cと、左側上端縁に取り付けられるフレーム左14dから構成されている。本例は4ピースにフレームを分割しているが、一体型でも2ピースでも何ピースでも可能であり、また、トッププレート3の4辺に取り付ける必要もなく、トッププレート3の手前だけ,後方だけ,前後の2辺だけ、若しくは左右の二辺だけでも良い。
【0016】
筐体2の内部には、前記した発熱部材である誘導加熱コイル右13a,誘導加熱コイル左13b,誘導加熱コイル中央13cや電子部品(図示せず)が設けられており、これらを冷却するために筐体2の後部上面の右側に外部から空気を吸込むための吸気口7が設けられている。この吸気口7は、同じく筐体2の後部上面の左側に設けた排気口8の右側に位置する。
【0017】
吸気口7で吸入した空気は、筐体2の内部で発熱する誘導加熱コイル右13a,誘導加熱コイル左13b,誘導加熱コイル中央13cや電子部品を冷却した後に、排気口8から筐体2外に排出される。また、この排気口8からは、後述するロースター部4の廃熱も同時に排出される。
【0018】
ロースター部4は、魚やピザ等を焼くためのもので、筐体2前面部の左側若しくは右側に配置されており(本実施例では左側)、前面に中の焼け具合を覗き見できるロースタードア32、該ロースタードア32にハンドル11を備えている。なお、このロースター部4は、魚焼き専用ではないので、グリル若しくはオーブンと呼ぶこともある。
【0019】
9は上面操作部で、複数のタクトスイッチで構成され、フレーム前14aに設けられており、誘導加熱コイル右13a,誘導加熱コイル左13b,誘導加熱コイル中央13cの出力調節や調理タイマーの設定,調理メニューの呼び出し,保温や煮物,自動炊飯,揚げ物調理等の設定,加熱の開始や停止等を行うことができるものであり、筐体2の前面の操作パネル5で行わなくとも筐体2の上面で簡単に操作できるようになっている。
【0020】
10は上面表示部で、上面操作部9に沿ってトッププレート3の前面側に設けられており、上面操作部9で設定した出力設定や調理メニュー,タイマー値,調理温度等を使用者にわかりやすく表示する。
【0021】
次に、
図3を用いて誘導加熱コイル右13a,誘導加熱コイル左13b,誘導加熱コイル中央13cについて説明する。
【0022】
誘導加熱コイル右13aは、環状の内側誘導加熱コイル13a1と、その外側に環状の隙間15を設けて配置された環状の外側誘導加熱コイル13a2とで形成され、誘導加熱コイル左13bは、環状の内側誘導加熱コイル13b1と、その外側に環状の隙間15を設けて配置された環状の外側誘導加熱コイル13b2とで形成し、内側誘導加熱コイル13b1と外側誘導加熱コイル13b2の両コイルで発生する磁束を分散させて鍋底の温度を均一化している。
【0023】
また、誘導加熱コイル13の最外形部には、外側誘導加熱コイル13b2で発生した磁界が外側誘導加熱コイル13b2の外側へ広がるのを防止し、載置枠19内に載置した調理鍋20を効率よく加熱できるように、非磁性体のリング状の防磁リング21が設けられている。この防磁リング21の大きさと載置枠19の大きさが略等しく設けられている。なお、誘導加熱コイル中央13cについては詳細な説明は省略する。
【0024】
次に、調理鍋20の加熱は、載置枠19の中央部に載置して加熱することで調理鍋20を効率よく加熱し、調理鍋20の鍋底の加熱ムラが少なくなる。しかし、実際は、調理鍋20は使用者側に近く、調理鍋20が載置されやすい筐体2の手前側に配置されやすい。また、使用者が調理鍋20の前に立ち、使用者が調理鍋20の取っ手を抑えながら、または、調理鍋20を揺すりながら、調理鍋20に入っている調理物を箸などで混ぜたりする時は、使用者の手の動きは筐体2のフレーム右14cに対して平行に手前側から奥側(奥側から手前側)へ動くことは少ない。
図2の載置部右6aに調理鍋20を載置し、調理鍋20を動かした場合を例に説明する。使用者が右利きの場合は奥左側と手前右側方向へと少し斜め方向の動きが生じ、左利きの場合は奥右側から手前左側方向へと少し斜め方向の動きが生じる傾向がある。そのため調理鍋20は、載置域19の中央部に対して、奥側の左右のどちらか一方側、もしくは手前側の左右のどちらか一方側に寄る傾向がある。その調理鍋20が一方側に寄るのを検知するため、調理鍋20の載置位置が載置枠19の中央部か、もしくは載置枠19の一方方向に寄っているかを積極的に検知可能として、載置枠19に寄った場合に調理鍋20の鍋底の加熱ムラを最小限に抑えるように加熱制御する必要がある。
【0025】
次に前述した調理鍋20の温度を検出することで、調理鍋20の位置を検知する方法について詳細に説明する。
【0026】
誘導加熱コイル13は、内側誘導加熱コイル13a1と外側誘導加熱コイル13a2に分割され、調理鍋20の鍋底の温度の検知は、トッププレート3を介して内側誘導加熱コイル13a1の中央部に熱伝導によって検知する内側温度検知器16と、内側誘導加熱コイル13a1と外側誘導加熱コイル13a2との間の隙間15に熱伝導によって検知する2個の外側温度検知器17a,17bよりなる外側温度検知器17により行われる。
【0027】
前述した3個の温度検知器の配置は、調理鍋20の載置位置を効率よく検知できるように配置したものであり詳細は後述する。
【0028】
初めに、調理鍋20の載置位置を検知する大まかな方法について概略を説明する。調理鍋20の検知は、鍋底の温度を検知する温度検知器の温度上昇を検知することで可能であり、調理鍋20の載置位置の検知には、異なる位置に配置した各温度検知器の温度上昇を検知することで可能となる。但し、調理鍋20の鍋底はある程度の大きさが有るので、複数の温度検知器によって鍋底の温度を検知することで、調理鍋20が載置枠19に対してどの位置に載置されているかを推測することが可能となる。
【0029】
そして、効率よく調理鍋20を加熱できる範囲を表す載置域19の中央部に使用可能な最小径の調理鍋20を載置した場合は、3個の温度検知器で鍋底の温度を検知することでその位置を推測可能となる。なお、最小径の調理鍋とは、誘導加熱調理器の取扱説明書などで定められた、安全な加熱が保障された最も径の小さい鍋のことであり、例えば、載置枠19の直径に対し60%程度の直径の鍋である。
【0030】
また、使用可能な最小径の調理鍋20の外形が載置枠19の一方方向に寄った場合は、2個の温度検知器で鍋底の温度を検知することでその位置を推測可能となる。さらに調理鍋20が載置枠19よりはみ出して載置された場合は、1個の温度検知器で鍋底の温度を検知し、もしくは全く温度を検知できないことで位置を推測可能となる位置に各温度検知器を載置枠19内に配置している。
【0031】
次に前述した3個の温度検知器の配置について詳細に説明する。
【0032】
トッププレート3には、調理鍋20を効率より加熱するために、使用者に調理鍋20を載置する位置を知らせる載置枠19が設けられ、取扱説明書では、調理鍋20は載置枠19の中央部に載置して使用するように記載されている。また、誘導加熱調理器では使用できる調理鍋20の最小径が決められている。本実施例では、この載置枠19の径を200mm、使用できる調理鍋20の最小径を120mmと設定した条件で
図7(a)(b)を用いて下記説明する。
【0033】
図7は、載置枠19を示し、そこに使用できる最小径の調理鍋20を異なる位置に載置した例を示したものである。
図7では、載置枠19を左右に分割する直線をY軸、前後に分割する直線をX軸とし、X正かつY正を第1象限、X負かつY正を第2象限、X負かつY負を第3象限、X正かつY負を第4象限と定めている。また、載置枠19の中央部に載置した最小径の調理鍋20を20a、載置枠19の奥側(Y)に内接載置したものを20b、載置枠19の左側(−X)に内接載置したものを20c、載置枠19の手前側(−Y)に内接載置したものを20d、載置枠19の右側(X)に内接載置したものを20eとして示す。
【0034】
そして、その3個の温度検知器の配置条件の最低限の条件1は、載置枠19の中央部に載置した調理鍋20aに対しては、3個の温度検知器で鍋底の温度を検知できる位置に配置とする。条件2は、使用可能な最小径の調理鍋20の外形が載置枠19の一方方向に寄った場合は2個の温度検知器で鍋底の温度を検知できる位置に配置する。この条件を満足する配置が
図3に示す配置である。
【0035】
図3に示す内側温度検知器16は載置枠19の中央部に設けられ外側温度検知器17の位置は、前述した載置枠19内の第2象限と第4象限の領域の2箇所に設けられ、その配置について
図7を用いて以下説明する。
【0036】
初めに
図7の(a)と(b)を用いて外側温度検知器17の配置位置について説明する。
【0037】
外側温度検知器17の配置位置は、配置条件の条件1を確認すると、載置域19の中央部に使用可能な最小径の調理鍋20aを載置した場合は3個の温度検知器で鍋底の温度を検知できる位置に配置する必要があるので、図に示す載置域19の中央部に載置した調理鍋20を示す調理鍋20aの鍋底に覆われる位置に前記3個の温度検知器を配置する。次に条件2である、使用可能な最小径の調理鍋20の外形が載置枠19の枠に寄った場合は2個の温度検知器で鍋底の温度を検知できる位置に配置する必要があり、その場合、図に示す調理鍋20を寄せて表示している調理鍋20bと調理鍋20cの位置に調理鍋20が寄った時は、条件1を満足して条件2を満足するのに必要な鍋底の温度を検知しない1個の温度検出器の位置は、調理鍋20bと調理鍋20cの鍋底に覆われない領域22d内に配置する必要がある。また、調理鍋20dと調理鍋20eの位置に調理鍋が寄った時は、条件1を満足して条件2を満足するのに必要な鍋底の温度を検知しない1個の温度検出器の位置は、調理鍋20dと調理鍋20eの鍋底に覆われない領域22b内に配置する必要がある。
【0038】
以上のことから、三個の温度検知器の配置位置は、ひとつは、載置枠19内のいかなる位置に調理鍋20を載置した場合でも鍋底に覆われる略中央部。ひとつは領域22d。ひとつは領域22bとなる。
【0039】
しかし、条件2は、使用可能な最小径の調理鍋20の外形が載置枠19の枠に寄った場合は2個の温度検知器で鍋底の温度を検知できる位置に配置する必要があるので、3個の温度検知器の最終配置位置は、ひとつは中央部に配置、ひとつは調理鍋の載置位置が調理鍋20bと20cに載置した時に鍋底に覆われ、かつ前述した領域22bに含まれる配置領域23bの範囲に配置する。ひとつは、調理鍋の載置位置が調理鍋20dと20eに載置した時に鍋底に覆われ、かつ前述した領域22dに含まれる配置領域23dの範囲に配置する必要がある。
【0040】
換言すると、第1の温度検出器は、使用可能な最小径の鍋を、前記載置枠内のどこに載置しても鍋底に覆われる位置に配置され、第2の温度検出器は、使用可能な最小径の鍋を、前記載置枠の中央部に設置した場合、または、前記載置枠の手前側もしくは右側に内接載置した場合の何れも鍋底に覆われ、かつ、前記載置枠の奥側もしくは左側に内接載置した場合の何れも鍋底に覆われない位置に配置され、第3の温度検出器は、使用可能な最小径の鍋を、前記載置枠の中央部に設置した場合、または、前記載置枠の奥側もしくは左側に内接載置した場合の何れも鍋底に覆われ、かつ、前記載置枠の手前側もしくは右側に内接載置した何れの場合も鍋底に覆われない位置に配置される。
【0041】
そして、以上説明した載置域19の中央部と、載置域19と使用できる最小径の調理鍋20の位置関係から求められる配置領域23bと配置領域23dに温度検知器を配置することで、使用可能な最小径の調理鍋20が載置域19の中央部からズレても確実にこのズレを検知して誘導加熱コイルを制御することが可能となる。
【0042】
また、各温度検知器は図示された配置領域23に完全に含まれる必要がある。そのため、載置域19の中央部に配置する温度検知器以外の残り温度検知器は図のX軸、Y軸には配置されることは無い。
【0043】
また、前述した配置領域23は図に示す第2象限と第4象限で求めたが、前述に基づく同様の配置領域23を第1象限と第3象限に求めても同じ効果が得られる。
【0044】
換言すると、第1の温度検出器は、使用可能な最小径の鍋を、前記載置枠内のどこに載置しても鍋底に覆われる位置に配置され、第2の温度検出器は、使用可能な最小径の鍋を、前記載置枠の中央部に設置した場合、または、前記載置枠の手前側もしくは左側に内接載置した場合の何れも鍋底に覆われ、かつ、前記載置枠の奥側もしくは右側に内接載置した場合の何れも鍋底に覆われない位置に配置され、第3の温度検出器は、使用可能な最小径の鍋を、前記載置枠の中央部に設置した場合、または、前記載置枠の奥側もしくは右側に内接載置した場合の何れも鍋底に覆われ、かつ、前記載置枠の手前側もしくは左側に内接載置した何れの場合も鍋底に覆われない位置に配置される。
【0045】
そして、温度検出器は前記中央部と第2象限と第4象限、もしくは前記中央部と第1象限と第3象限の配置になり、筐体2のフレーム右14cに対して傾いた配置となり、前述した使用者の使い勝手からの調理鍋20のズレを検知しやすい配置になっている。
【0046】
そこで、誘導加熱コイル13の分割については、配置領域23bと配置領域23d内に外側温度検出器17を配置できる隙間15が得られるように内側誘導加熱コイル13a1と外側誘導加熱コイル13a2を設ける。そして、この隙間15に配置領域23に対応した位置に2個の外側温度検知器17を設けるものである。
【0047】
内側温度検知器16と外側温度検知器17aと外側温度検知器17bの3個の温度検知器は直線的に配置しても良く、外側温度検知器17は前述した配置領域23内に設けられていれば非直線的に配置されても良い。
【0048】
但し、本実施例は、内側温度検知器16と外側温度検知器17aと外側温度検知器17bの3個の温度検知器を直線的に配置することで、
図3で示す外側温度検知器17を配置していない領域、例えば、
図7で示す第1象限と第3象限側に使用可能な最小径の調理鍋20を載置した場合に、載置した調理鍋20の熱がトッププレート3を伝わって外側温度検知器17aと外側温度検知器17bに同条件で検知できるようにしている。
【0049】
誘導加熱コイル右13a,誘導加熱コイル左13b,誘導加熱コイル中央13cは、表皮効果を抑制するためリッツ線を採用している。そして、これらの誘導加熱コイル右13a,誘導加熱コイル左13b,誘導加熱コイル中央13cには調理鍋20を加熱するために後述するインバータ72から数十kHz,数百Vの電圧が印加される。
【0050】
次に制御について
図6を用いて簡単に説明する。なお、ロースター部4の制御については本実施例とは直接関係ないので、図では省略している。
【0051】
操作・表示部75は、これまで説明した上面操作部9,上面表示部10等から構成されている。操作・表示部75の操作で入力されたメニュー,出力情報,調理のスタート・切情報等を制御手段74に入力信号80として送り、制御手段74で認識した情報,調理の進行状況などの処理状況を表示信号79として操作・表示部75に送り、上面表示部10等に表示する。
【0052】
制御手段74は、操作・表示部75で設定された内容及び事前に組み込まれた自動調理などのプログラムに基づき各加熱部を制御する。設定された内容に基づいて調理の開始,停止,出力の設定情報を制御信号78を経て後述するインバータ制御手段73に送る。
【0053】
インバータ制御手段73は、制御手段74の指示に基づいて誘導加熱コイル右13a,誘導加熱コイル左13b,誘導加熱コイル中央13cへの電力の設定,通電の開始及び停止を行う。
【0054】
さらに、制御手段74が誘導加熱コイル右13aと誘導加熱コイル左13bに設けられた内側温度検知器16,外側温度検知器17a,17bからなる温度検知器17,誘導加熱コイル中央13cに設けられた温度検知器18からの温度情報を乗せた制御信号78を受信し、インバータ72に対してインバータ制御信号76を送出することでインバータ72を制御し、誘導加熱コイル右13a,誘導加熱コイル左13b,誘導加熱コイル中央13cの消費電力を監視し補正する。
【0055】
誘導加熱コイル右13a,誘導加熱コイル左13b,誘導加熱コイル中央13cの出力を監視し補正することについては、インバータ72から検出信号77によって送られてくる各加熱コイル13の入力電流及び入力電圧から消費電力を算出し、出力が設定値になるようにインバータ制御信号76によりインバータ72を制御する。
【0056】
インバータ72は、誘導加熱コイル右13a,誘導加熱コイル左13b,誘導加熱コイル中央13cに出力を供給するための手段であり、インバータ制御手段73からの指示に基づいて加熱コイル13の電源の供給を行う。また、このインバータ72は、インバータ制御手段73と同様に誘導加熱コイル右13a,誘導加熱コイル左13b,誘導加熱コイル中央13c毎に、インバータ右72a,インバータ左72b,インバータ中央72cが設けられている。そして、各誘導加熱コイル13(13a,13b,13c)の入力電圧及び入力電流を検出して各検出信号77に乗せてインバータ制御手段73に送る。
【0057】
次にその動作について説明する。一例として使用者が載置部右6aに被加熱物である調理鍋20を載置して加熱する場合について説明する。
【0058】
まず、上面操作部9の出力キーを押すと、その押したキー信号が入力信号80となって制御手段74に送られ、制御手段74は、出力キーが入力されたことを認識し、この内容を表示信号79として操作・表示部75に伝達し、上面表示部10のランプを点灯させる。
【0059】
次に上面操作部9の切/入キーを押すと、同じ伝達経路(以後同じ信号経路の説明は省略する)を経てランプが点灯して加熱が開始される。
【0060】
制御手段74が調理開始を指示すると、制御信号右78aによってインバータ制御手段右73aに設定された出力を伝送し、これを受けたインバータ制御手段右73aは設定された出力になるようにインバータ右72aの制御を行い、誘導加熱コイル右13aの電力制御を行う。インバータ右72aは、入力電圧及び入力電流の検出値を検出信号右77aに乗せてインバータ制御手段右73aに伝達し、インバータ制御手段右73aでは検出値から消費電力を求め、設定された出力が消費電力になるように誘導加熱コイル右13aの電力制御を行う(以後同じ信号経路の説明は省略する)。
【0061】
以上の動作によって調理が行われるが、これらの動作については、載置部左6bおよび載置部中央6c上に調理鍋20を置いて誘導加熱コイル左13b,誘導加熱コイル中央13cで加熱する場合においても同じである。
【0062】
次に、
図4,
図5を用いて、誘導加熱コイル右13aと、内側温度検知器16,外側温度検知器17a,17bの関係について説明する。なお、誘導加熱コイル右13bも同様であるため、誘導加熱コイル右13bについての説明は省略する。
【0063】
先ず、トッププレート3の載置部右6aに直径が略200mm程度の調理鍋20を載せて加熱する場合について説明する。
【0064】
トッププレート3の載置部右6aと対応した誘導加熱コイル右13aは、コイル直径が略200mmで出力が3kW程度と大きいため、鍋底の直径が略200mm程度の調理鍋20を誘導加熱コイル右13a(載置部右6a)に合わせて載置した場合、内側誘導加熱コイル13a1と外側誘導加熱コイル13a2の間に隙間15を保持して両コイルで発生する磁束を分散させて鍋の温度を均一化するようにしているが、それでも
図5(a)に示すように、加熱開始初期段階では、内側温度検知器16によって検知される調理鍋20の中心部の温度よりも外側温度検知器17によって検知される周辺部の方が早く温度上昇して高温になってしまう。
【0065】
そこで、この鍋底中心部の温度と鍋周辺部の温度を内側温度検知器16と、隙間15に設けた外側温度検知器17a,17bによって検知し、検出信号右77aとしてインバータ右72aからインバータ制御手段右73aに送出し、さらに、制御信号右78aを制御手段74に送出する。
【0066】
ここで、検出信号右77aについて詳細に説明する。検出信号右77aは、内側温度検出器16と外側温度検出器17a、17bの3個の温度検出器の出力を用いて求められるものであり、3個の温度検出器を略直線状に配置した本実施例では、次の何れかの式を用いて演算して求める。なお、以下では、内側温度検出器16、外側温度検出器17a、17bが検出した温度を夫々、Th16(第1の温度情報)、Th17a(第2の温度情報)、Th17b(第3の温度情報)とする。そして、
(Th16 − Th17b) + (Th17a − Th17b)(数1)
(Th16 − Th17a) + (Th17b − Th17a)(数2)
または、(数1)(数2)を展開した、
Th16 + Th17a − 2 × Th17b (数3)
Th16 − 2 × Th17a + Th17b (数4)
を演算し、
これらの演算結果と所定の値Xとの大小関係を求める。このXの値は、調理モードに応じて切り替えられ、例えば、手動モードのときには120、揚げ物モードのときには100である。
【0067】
(数1)、(数2)の何れかの演算結果がXより大きいときは、「鍋底温度不均一」を示す検出信号右77aが生成され、また、演算結果がXより小さいときには、「鍋底温度均一」を示す検出信号右77aが生成され、インバータ右72aからインバータ制御手段右73aに出力される。
【0068】
そして、制御手段74は「鍋底温度不均一」を示す信号を受け取ると、加熱を停止するか、火力を弱くするように誘導加熱コイルを制御し、一方、「鍋底温度均一」を示す信号を受け取ると、火力を維持するか、強くするように誘導加熱コイルを制御する。
【0069】
直径が略200mm程度の調理鍋20を正常な位置に載置したときには、Th17aとTh17bは略等しく、また、これらとTh16の差も小さいことから、(数1)または(数2)の演算結果は、Xよりも小さくなる。すなわち、「鍋底温度均一」を示す検出信号右77aが生成され、インバータ制御手段右73aを介して制御手段74に送信される。
【0070】
これによって、制御手段74は、前記と逆のルートを通してインバータ制御手段右73aに制御信号右78aを送出し、さらに、検出信号右77aをインバータ72に送出することでインバータ72を制御し、誘導加熱コイル右13aの外側誘導加熱コイル13a2の火力を維持するように電力を制御する。
【0071】
内側温度検出器16と外側温度検出器17a、17bが検出する温度差は、加熱物を加熱するときの出力と密接の関係が有り、出力が大きい時は、内側温度検出器16と外側温度検出器17a、17bが検出する温度差が生じやすくなり、出力が小さい時は、その差が生じ難くなる。そのため、前記所定の値Xは、最大3kWで加熱ができる手動モードでは大きく、出力が手動モードより低く事前にプログラムで設定されている揚げ物モードでは手動モードより小さな値に定めている。また揚げ物モードでは、このX値を低めに設定している理由は、後述するように鍋が中央よりずれた時でも、油温が高い異常温度になる前に、鍋ズレを検知できるようにしている。
【0072】
また、内側温度検知器16と前記外側温度検知器17a,17bは、上記以外にも加熱開始から所定時間が経っても温度上昇しないときや、前記X値が所定より大きくなる原因となる調理鍋の中心部や周辺部が反っているもの等にも対応して加熱を停止する等の制御を行う。
【0073】
次に、トッププレート3の載置部右6aに直径が略120mm程度の小径の調理鍋20が中心から大きくずれて載置された場合について説明する。この場合、上下や左右に位置がずれて載置された場合には、内側誘導加熱コイル13a1の中心部に設けられた内側温度検知器16と、少なくとも外側温度検知器17a,17bの内の一個以上で調理鍋20の鍋底温度を検知し、検出信号右77aとしてインバータ右72aからインバータ制御手段右73aに送出し、さらに、制御信号右78aを制御手段74に送出し、内側誘導加熱コイル13a1と外側誘導加熱コイル13a2の電力を制御しながら供給し、調理鍋20が空焼き状態になったり、煙等が発生するのを防止する。
【0074】
小径の鍋がずれて載置されたときであっても、内側温度検知器16と、外側温度検知器17a,17bの少なくとも一方の、合計2つの温度検知器で鍋底の温度を検知できれば、(数1)または(数2)を用いた評価を行うことで、鍋底の温度が均一であるか否かを判定し、それに応じた制御をおこなうことができる。
【0075】
そして、「鍋底温度均一」を示す検出信号右77aが生成されたときには、外側誘導加熱コイル13a2の電力を下げる方向に制御し、調理鍋20の局部的な温度上昇を抑制し、鍋底温度の均一化を図る。特に、調理鍋20が使用者側に近い側に載置されやすい筐体2の手前側に配置された場合には、内側温度検知器16と、手前側の外側温度検知器17aによって確実に内側誘導加熱コイル13a1と外側誘導加熱コイル13a2の電力が制御される。
【0076】
以上説明したように、本実施例によれば、小径の調理鍋を使用し、かつ、調理鍋が誘導加熱コイルの中心から外れて載置された場合でも、内側温度検知器と外側温度検知器によって早期に鍋底の温度を検知可能となり、内側誘導加熱コイルと外側誘導加熱コイルの電力の制御ができ、鍋底周辺部の温度が急激に上昇して空焼きや煙等を発生することがなくなり、安全であるとともに、安心して調理を行うことができる。