特許第6106640号(P6106640)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6106640
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】二重特異性抗体の融合体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/18 20060101AFI20170327BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20170327BHJP
   C12N 1/19 20060101ALN20170327BHJP
   C12N 1/15 20060101ALN20170327BHJP
   C12N 1/21 20060101ALN20170327BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20170327BHJP
   A61K 39/395 20060101ALN20170327BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20170327BHJP
【FI】
   C07K16/18ZNA
   !C12N15/00 A
   !C12N1/19
   !C12N1/15
   !C12N1/21
   !C12N5/10
   !A61K39/395 H
   !C12P21/08
【請求項の数】6
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2014-157867(P2014-157867)
(22)【出願日】2014年8月1日
(62)【分割の表示】特願2010-526367(P2010-526367)の分割
【原出願日】2008年9月26日
(65)【公開番号】特開2015-2744(P2015-2744A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2014年8月29日
(31)【優先権主張番号】0718832.9
(32)【優先日】2007年9月26日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】0718834.5
(32)【優先日】2007年9月26日
(33)【優先権主張国】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507073918
【氏名又は名称】ユセベ ファルマ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンフリーズ、デイビッド ポール
(72)【発明者】
【氏名】デイブ、エマ
【審査官】 長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−517789(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/118642(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 16/00−19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CDR−H1として配列番号56の配列、CDR−H2として配列番号57の配列、並びにCDR−H3として配列番号58の配列、CDR−L1として配列番号59の配列、CDR−L2として配列番号60の配列、並びにCDR−L3として配列番号61の配列を含む、アルブミン結合抗体。
【請求項2】
配列番号52の配列を有するVHドメインを含む、請求項に記載のアルブミン結合抗体。
【請求項3】
配列番号53の配列を有するVLドメインを含む、請求項1又は2に記載のアルブミン結合抗体。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか一項に記載の抗体であって;該抗体が、Fab、改変Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、単一ドメイン抗体、scFv、二価抗体、三価抗体、又は四価抗体、ビスscFv、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、或いは上記いずれかのエピトープ結合フラグメントである;抗体。
【請求項5】
多重特異性を有する、請求項に記載の抗体。
【請求項6】
他の任意の抗体若しくはタンパク質又は他の分子にコンジュゲートしている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新たな二重特異性抗体の融合タンパク質に関する。このような抗体は、対象抗原に対する第1の特異性と、第2の対象抗原、例えば、それらのin vivoにおける血清半減期の延長に用いる血清担体タンパク質に対する第2の特異性とを含む。このような分子及びこれらを含む医薬組成物の作製法もまた提供される。
【背景技術】
【0002】
抗体は、その高い特異性及び親和性により、特に、タンパク質間相互作用を調節するのに理想的な診断剤及び治療剤となる。組換え抗体技術の分野における進歩の結果、Fvフラグメント、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、及びF(ab’)フラグメント、並びに他の抗体フラグメントなどの抗体フラグメントが作製されている。これらのより小型の分子は、抗体全体の抗原結合活性を保持し、また、免疫グロブリン分子全体と比較して改善された組織透過特性及び薬物動態特性も示しうる。実際、抗体フラグメントは、ReoPro(登録商標)及びLucentis(登録商標)などの製品の近年の成功によりみられる通り、汎用治療剤であることが判明しつつある。このようなフラグメントは、免疫グロブリン全体を上回る多数の利点を示すと考えられる一方、また、in vivoにおける長い半減期を与えるFcドメインを欠くために、血清からのクリアランス速度の上昇も被っている(Medasanら、1997年、J.Immunol.、第158巻、2211〜2217頁)。
【0003】
二重特異性を有する抗体、すなわち、異なる2種の抗原に結合する抗体は、既に説明されている(総説については、Segalら、1999年、Curr.Opin.Immunol.、第11巻、558〜562頁;Plueckthun及びPack、1997年、Immunotechnology、第3巻、83〜105頁;Fischer及びLeger、2007年、Pathobiology、第74巻、3〜14頁を参照されたい)。二重特異性もまた、WO02/02773、US2007065440、US2006257406、US2006106203、及びUS2006280734において説明されている。ヘテロ二重特異性抗体ベースの分子を作製するかつての手法では、一般に、化学架橋形成法又はタンパク質操作法が用いられてきた。化学架橋形成は、ヘテロ二量体形成及びホモ二量体形成の低収率及びその後におけるそれらのクロマトグラフィーによる分離の必要も被っている。タンパク質操作法は、高度に精巧である(例えば、ノブイントゥホール操作;Ridgwayら、1996年、Protein Eng.、第9巻、第7号、617〜621頁)か、又は、不適切な安定性特性を有する分子(例えば、ダイアボディ、scFc)を用いている。場合によって、二重特異性抗には、立体障害の問題もありえ、その結果、両方の抗原が各抗体アームに同時には結合できなくなる。
【0004】
単一ドメイン抗体又はdAbとしても知られる単一可変ドメイン抗体は、抗体の重(VH)鎖又は軽(VL)鎖の可変領域に対応する。マウス単一ドメイン抗体は、Wardら、1989年、Nature、第341巻、544〜546頁により説明された。ヒト及び「ラクダ化」ヒト単一ドメイン抗体もまた説明されている(Holtら、2003年、Trends in Biotechnology、第21巻、484〜490頁)。単一ドメイン抗体はまた、ラクダ科動物(ラクダ及びラマ)及び軟骨魚(テンジクザメ(wobbegong及びnurse sharks))からも得られている。これらの生物は、それらの免疫系の不可欠で重要な成分としての、Fcに相当する定常ドメインフレームワークに埋め込まれた、高親和性単一V様ドメイン(ラクダ科動物ではVhHと呼ばれ、サメではV−NARと呼ばれる)を進化させている(総説については、Holliger及びHudson、2005年、Nature Biotechnology、第23巻、第9号、1126〜1136頁)。
【0005】
単一ドメイン抗体−酵素融合体は、EP0368684において説明されている。単一可変ドメインを含む単一ドメイン−エフェクター群融合体はまた、WO2004/058820においても説明されている。二重可変ドメイン免疫グロブリンは、WO2007/024715において説明されている。異なる特異性を有する2つの単一ドメイン抗体を含む二重特異性リガンドは、EP1517921において説明されている。
【0006】
Fv、Fab、Fab’、F(ab’)、及び他の抗体フラグメントなどの抗体フラグメントの半減期を改善する手段が知られている。一手法は、該フラグメントをポリマー分子にコンジュゲートすることであった。したがって、動物におけるFab’フラグメント、F(ab’)フラグメントの短い循環半減期は、ポリエチレングリコール(PEG)へのコンジュゲーションにより改善されている(例えば、WO98/25791、WO99/64460、及びWO98/37200を参照されたい)。別の手法は、FcRn受容体と相互作用する作用物質へのコンジュゲーションにより、抗体フラグメントを修飾することであった(例えば、WO97/34631を参照されたい)。半減期を延長させるためのまた別の手法は、血清アルブミンを結合するポリペプチドを用いることであった(例えば、Smithら、2001年、Bioconjugate Chem.、第12巻、750〜756頁;EP0486525;US6267964;WO04/001064;WO02/076489;及びWO01/45746を参照されたい)。しかし、FcRn受容体と相互作用するために半減期が長いこれらの抗体に対する代替法として、PEGへのコンジュゲーションによる化学修飾もなく、ヒト血清アルブミンにコンジュゲートされることもない、in vivoにおける半減期が長い抗原結合免疫グロブリンタンパク質を作製する必要がなお依然として存在する。
【0007】
血漿中には各種のタンパク質が存在し、チロキシン結合タンパク質、トランスサイレチン、α1−酸糖タンパク質、トランスフェリン、フィブリノーゲン、及びアルブミン、又はこれらのいずれかのフラグメントを含む。血清担体タンパク質は、日数で測定される半減期、例えば、チロキシン結合タンパク質の5日間若しくはトランスサイレチンの2日間(Bartalena及びRobbins、1993年、Clinics in Lab.Med.、第13巻、583〜598頁)、又はヨウ素化されたα1−酸糖タンパク質(Breeら、1986年、Clin.Pharmacokin.、第11巻、336〜342頁)の代謝回転の第2相における65時間で体内を循環する。Gitlinら(1964年、J.Clin.Invest.、第10巻、1938〜1951頁)に由来するデータは、妊婦において、α1−酸糖タンパク質の半減期が3.8日間であり、トランスフェリンの場合が12日間であり、フィブリノーゲンの場合が2.5日間であることを示唆している。血清アルブミンは、ヒトにおいて約19日間の半減期を有する、血管内コンパートメント及び血管外コンパートメントの両方において豊富なタンパク質である(Peters、1985年、Adv Protein Chem.、第37巻、161〜245頁)。これは、約21日間であるIgG1の半減期に近似している(Waldeman及びStrober、1969年、Progr.Allergy、第13巻、1〜110頁)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、組換えにより作製することができ、同時に2つの抗原に結合することが可能な、改善された二重特異性抗体融合タンパク質を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明は、対象抗原に対する第1の特異性を有する免疫グロブリン部分を含み、第2の対象抗原に対する特異性を有する単一ドメイン抗体(dAb)をさらに含む、二重特異性抗体融合タンパク質を提供する。
【0010】
本発明はまた、対象抗原に対する第1の特異性を有する免疫グロブリン部分を含み、第2の対象抗原に対する特異性を有する少なくとも1つの単一ドメイン抗体をさらに含む、二重特異性抗体融合タンパク質も提供する。
【0011】
本発明の二重特異性抗体融合体は、対象の2つの抗原に選択的に結合することが可能である。
【0012】
一実施形態において、Fabフラグメント又はFab’フラグメントが結合する対象抗原は、細胞結合タンパク質、例えば、細菌細胞、酵母細胞、T細胞、内皮細胞、又は腫瘍細胞など、細胞上における細胞表面タンパク質の場合もあり、可溶性タンパク質の場合もある。対象抗原はまた、疾患又は感染時において上方調節されるタンパク質、例えば、受容体及び/又はそれらの対応するリガンドなど、任意の医療関連タンパク質でもありうる。細胞表面タンパク質の具体例は、接着分子、例えば、β1インテグリンなどのインテグリン、例えば、VLA−4、E−セレクチン、P−セレクチン、又はL−セレクチン、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD11a、CD11b、CD18、CD19、CD20、CD23、CD25、CD33、CD38、CD40、CD45、CDW52、CD69、CD134(OX40)、ICOS、BCMP7、CD137、CD27L、CDCP1、DPCR1、DPCR1、ドゥドゥリン2、FLJ20584、FLJ40787、HEK2、KIAA0634、KIAA0659、KIAA1246、KIAA1455、LTBP2、LTK、MAL2、MRP2、ネクチン様2、NKCC1、PTK7、RAIG1、TCAM1、SC6、BCMP101、BCMP84、BCMP11、DTD、癌胎児性抗原(CEA)、ヒト乳脂肪グロブリン(HMFG1及び2)、MHCクラスI抗原及びMHCクラスII抗原、並びにVEGF、並びに適切な場合はこれらの受容体を含む。
【0013】
可溶性抗原は、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8、IL−12、IL−16、又はIL−17などのインターロイキン、ウイルス抗原、例えば、呼吸器合胞体ウイルス抗原又はサイトメガロウイルス抗原、IgEなどの免疫グロブリン、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγなどのインターフェロン、腫瘍壊死因子−α、腫瘍壊死因子−β、G−CSF又はGM−CSFなどのコロニー刺激因子、及びPDGF−α及びPDGF−βなどの血小板由来成長因子、並びに適切な場合はこれらの受容体を含む。他の抗原は、細菌細胞表面抗原、細菌毒素、インフルエンザ、EBV、HepA、HepB、及びHepCなどのウイルス、生物テロリズム作用物質、放射性核種及び重金属、並びにヘビ及びクモの毒及び毒素を含む。
【0014】
一実施形態では、本発明の抗体融合タンパク質を用いて、対象抗原の活性を機能的に変化させることができる。例えば、抗体融合タンパク質は、前記抗原の活性を直接的又は間接的に中和するか、アンタゴナイズするか、又はアゴナイズしうる。
【0015】
一実施形態において、本発明の二重特異性抗体融合タンパク質中の単一ドメイン抗体(単数又は複数)が結合する第2の対象抗原は、細胞結合タンパク質、例えば、細菌細胞、酵母細胞、T細胞、内皮細胞、又は腫瘍細胞など、細胞上における細胞表面タンパク質の場合もあり、可溶性タンパク質の場合もある。対象抗原はまた、疾患又は感染時において上方調節されるタンパク質、例えば、受容体及び/又はそれらの対応するリガンドなど、任意の医療関連タンパク質でもありうる。細胞表面タンパク質の具体例は、接着分子、例えば、β1インテグリンなどのインテグリン、例えば、VLA−4、E−セレクチン、P−セレクチン、又はL−セレクチン、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD11a、CD11b、CD18、CD19、CD20、CD23、CD25、CD33、CD38、CD40、CD45、CDW52、CD69、CD134(OX40)、ICOS、BCMP7、CD137、CD27L、CDCP1、DPCR1、DPCR1、dudlin2、FLJ20584、FLJ40787、HEK2、KIAA0634、KIAA0659、KIAA1246、KIAA1455、LTBP2、LTK、MAL2、MRP2、nectin−like2、NKCC1、PTK7、RAIG1、TCAM1、SC6、BCMP101、BCMP84、BCMP11、DTD、癌胎児性抗原(CEA)、ヒト乳脂肪グロブリン(HMFG1及び2)、MHCクラスI抗原及びMHCクラスII抗原、並びにVEGF、並びに適切な場合はこれらの受容体を含む。
【0016】
可溶性抗原は、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8、IL−12、IL−16、又はIL−17などのインターロイキン、ウイルス抗原、例えば、呼吸器合胞体ウイルス抗原又はサイトメガロウイルス抗原、IgEなどの免疫グロブリン、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγなどのインターフェロン、腫瘍壊死因子−α、腫瘍壊死因子−β、G−CSF又はGM−CSFなどのコロニー刺激因子、及びPDGF−α及びPDGF−βなどの血小板由来成長因子、並びに適切な場合はこれらの受容体を含む。他の抗原は、細菌細胞表面抗原、細菌毒素、インフルエンザ、EBV、HepA、HepB、及びHepCなどのウイルス、生物テロリズム作用物質、放射性核種及び重金属、並びにヘビ及びクモの毒及び毒素を含む。
【0017】
単一ドメイン抗体(単数又は複数)により結合されうる他の抗原は、細胞を介するエフェクター機能の動員を可能とする血清担体タンパク質、ポリペプチド、及び核種キレート剤タンパク質を含む。
【0018】
したがって、一例において、本発明は、対象抗原に対する第1の特異性を有する免疫グロブリン部分を含み、第2のタンパク質に対する特異性を有する単一ドメイン抗体をさらに含み、後者により、補体経路の活性化及び/又はエフェクター細胞の動員などのエフェクター機能を動員する能力が提供される、二重特異性抗体融合タンパク質を提供する。さらに、核種キレート剤タンパク質に結合する単一ドメイン抗体により、本発明の融合タンパク質を用いて放射性核種をキレート化することができる。このような融合タンパク質は、治療のための造影法又は放射性核種による標的化法において用いられる。
【0019】
したがって、一例では、対象抗原に対する特異性を有する抗体のFabフラグメント又はFab’フラグメントを含む単離二重特異性抗体融合タンパク質であって、前記フラグメントが、動員ポリペプチドに対する特異性を有する少なくとも1つのdAbに融合し、前記dAbが、前記動員ポリペプチドに対する結合により、直接的又は間接的に細胞を介するエフェクター機能(単数又は複数)を動員する能力を提供する融合タンパク質が提供される。
【0020】
エフェクター機能の動員は、エフェクター機能が細胞と関連し、前記細胞がその表面上において動員分子を保有するという意味で、直接的でありうる。間接的な動員は、動員分子へのdAbの結合が、例えば、これによりエフェクター機能が直接的又は間接的に動員される場合もあり、シグナル伝達経路の活性化を介する場合もある、因子の放出を引き起こす場合に生じうる。例は、TNFα、IL2、IL6、IL8、IL17、IFNγ、ヒスタミン、C1q、オプソニン、並びにC2、C4、C3コンベルターゼ、及びC5〜C9など、古典及び副補体活性化カスケードの他のメンバーを含む。
【0021】
本明細書で用いられる「動員ポリペプチド」は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIなどのFcγR、C1q及びC3などであるがこれらに限定されない補体経路タンパク質、CD68、CD115、CD16、CD80、CD83、CD86、CD56、CD64、CD3、CD4、CD8、CD28、CD45、CD19、CD20、及びCD22を含むがこれらに限定されないCDマーカータンパク質(分化抗原群マーカー)を含む。CDマーカータンパク質であるさらなる動員ポリペプチドは、CD1、CD1d、CD2、CD5、CD8、CD9、CD10、CD11、CD11a、CD11b、CD11c、CD13、CD14、CD15、CD16、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD25、CD26、CD27、CD28、CD29、CD30、CD31、CD32、CD33、CD34、CD35、CD36、CD37、CD38、CD40、CD43、CD44、CD45、CD46、CD49、CD49a、CD49b、CD49c、CD49d、CD52、CD53、CD54、CD55、CD56、CD58、CD59、CD61、CD62、D62E、CD62L、CD62P、CD63、CD64、CD66e、CD68、CD70、CD71、CD72、CD79、CD80、CD81、CD82、CD83、CD84、CD85、CD86、CD88、CD89、CD90、CD94、CD95、CD98、CD106、CD114、CD116、CD117、CD118、CD120、CD122、CD130、CD131、CD132、CD133、CD134、CD135、CD137、CD138、CD141、CD142、CD143、CD146、CD147、CD151、CD152、CD153、CD154、CD155、CD162、CD164、CD169、CD184、CD206、CD209、CD257、CD278、CD281、CD282、CD283及びCD304、又は細胞を介するエフェクター機能を直接的若しくは間接的に動員する能力を保持するこれらのいずれかのフラグメントを含む。動員ポリペプチドはまた、エフェクター機能を保有するIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgE、及びIgAなどの免疫グロブリン分子も含む。
【0022】
一実施形態において、dAbがそれに対する特異性を有する第2のタンパク質は補体経路タンパク質であり、C1qが特に好ましい。
【0023】
好ましい実施形態において、dAbがそれに対する特異性を有する第2のタンパク質はCDマーカータンパク質であり、CD68、CD80、CD86、CD64、CD3、CD4、CD8、CD45、CD16、及びCD35が特に好ましい。
【0024】
したがって、また、対象抗原に対する特異性を有する抗体フラグメントを含む単離二重特異性抗体融合タンパク質であって、前記フラグメントが、CD68、CD80、CD86、CD64、CD3、CD4、CD8、CD45、CD16、及びCD35からなる群から選択されるCD分子に対する特異性を有する少なくとも1つのdAbに融合している融合タンパク質も提供される。
【0025】
一実施形態において、単一ドメイン抗体(単数又は複数)は、第1の特異性を有する免疫グロブリン部分の半減期を延長させる。
【0026】
したがって、一実施形態では、対象抗原に対する特異性を有する抗体のFabフラグメント又はFab’フラグメントを含む二重特異性抗体融合タンパク質であって、前記フラグメントが、血清担体タンパク質、循環免疫グロブリン分子、又はCD35/CR1に対する特異性を有する少なくとも1つの単一ドメイン抗体に融合し、前記単一ドメイン抗体が、前記血清担体タンパク質、循環免疫グロブリン分子、又はCD35/CR1に対する結合により、前記対象抗原に対する特異性を有する抗体フラグメントの半減期を延長させる融合タンパク質が提供される。
【0027】
一実施形態では、対象抗原に対する特異性を有する抗体のFabフラグメント又はFab’フラグメントを含む単離二重特異性抗体融合タンパク質であって、前記フラグメントが、血清担体タンパク質、循環免疫グロブリン分子、又はCD35/CR1に対する特異性を有する少なくとも1つの単一ドメイン抗体に融合し、前記単一ドメイン抗体が、前記血清担体タンパク質、循環免疫グロブリン分子、又はCD35/CR1に対する結合により、前記対象抗原に対する特異性を有する抗体フラグメントの半減期を延長させる融合タンパク質が提供される。
【0028】
本明細書で用いられる「血清担体タンパク質」は、チロキシン結合タンパク質、トランスサイレチン、α1−酸糖タンパク質、トランスフェリン、フィブリノーゲン、及びアルブミン、又はこれらのいずれかのフラグメントを含む。
【0029】
本明細書で用いられる「循環免疫グロブリン分子」は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、sIgA、IgM、及びIgD、又はこれらのいずれかのフラグメントを含む。
【0030】
CD35/CR1は、36日間の半減期を有する、赤血球上に存在するタンパク質である(通常28〜47日間の範囲;Lanaroら、1971年、Cancer、第28巻、第3号、658〜661頁)。
【0031】
好ましい実施形態において、dAbがそれに対する特異性を有する第2のタンパク質は血清担体タンパク質であり、ヒト血清担体タンパク質が特に好ましい。最も好ましい実施形態において、血清担体タンパク質はヒト血清アルブミンである。
【0032】
したがって、対象抗原に対する特異性を有する抗体のFabフラグメント又はFab’フラグメントを含む二重特異性抗体融合タンパク質であって、前記フラグメントが、ヒト血清アルブミンに対する特異性を有する少なくとも1つの単一ドメイン抗体に融合している融合タンパク質が提供される。
【0033】
一実施形態において、本発明は、対象抗原に対する特異性を有する抗体のFabフラグメント又はFab’フラグメントを含む単離二重特異性抗体融合タンパク質であって、前記フラグメントが、ヒト血清アルブミンに対する特異性を有する少なくとも1つの単一ドメイン抗体に融合している融合タンパク質を提供する。
【0034】
一実施形態において、対象抗原に対する特異性を有する抗体フラグメントはFabフラグメントである。別の実施形態において、対象抗原に対する特異性を有する抗体フラグメントはFab’フラグメントである。
【0035】
したがって、最も好ましい一実施形態において、本発明の抗体融合タンパク質は翻訳融合タンパク質、すなわち、その各々の配列が発現ベクターによりコードされる遺伝子融合体である。代替的に、該抗体融合タンパク質成分は、化学的手段を用いて、すなわち、化学コンジュゲーション又は化学架橋形成により融合している。このような化学的手段は当技術分野において知られている。
【0036】
一例において、抗体フラグメントは、天然又は改変のヒンジ領域を保有するFab’フラグメントである。本発明の二重特異性抗体融合タンパク質を調製するのに用いられる抗体フラグメントがFab’フラグメントである場合、前記フラグメントは、一般に、1つ又は複数のアミノ酸により、重鎖のC末端において延長される。したがって、本発明の抗体融合体は、直接に又はリンカーを介してdAbへと翻訳融合(又は化学融合)するFab’フラグメントを含みうる。さらに、適切な抗体Fab’フラグメントの例は、WO2005003170及びWO2005003171において説明されるフラグメントを含む。
【0037】
別の例において、抗体フラグメントはFabフラグメントである。したがって、本発明の抗体融合体は、リンカー配列に翻訳融合(又は化学融合)し、これがdAbへと翻訳融合(又は化学融合)する、Fabフラグメントを含みうる。WO2005/003169において説明される通り、Fabフラグメントは、鎖間システインで終結するFabフラグメントであることが好ましい。
【0038】
本発明で用いられる抗体のFabフラグメント又はFab’フラグメントは、任意の動物種に由来しうるが、モノクローナル抗体、ヒト抗体に由来するか、又はヒト化フラグメントであることが好ましい。本発明で用いられる抗体フラグメントは、免疫グロブリン分子の任意のクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、又はIgA)又はサブクラスに由来することが可能であり、例えば、マウス、ラット、サメ、ウサギ、ブタ、ハムスター、ラクダ、ラマ、ヤギ、又はヒトを含む任意の動物種から得ることができる。
【0039】
一実施形態において、抗体のFabフラグメント又はFab’フラグメントは、モノクローナル抗体フラグメント、完全ヒト抗体フラグメント、ヒト化抗体フラグメント、又はキメラ抗体フラグメントである。一実施形態において、抗体のFabフラグメント又はFab’フラグメントは、完全ヒト抗体フラグメント又はヒト化抗体フラグメントである。
【0040】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法(Kohler及びMilstein、Nature、1975年、第256巻、495〜497頁)、トリオーマ法、ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kozborら、Immunology Today、1983年、第4巻、72頁)、及びEBVハイブリドーマ法(Coleら、「モノクローナル抗体と癌治療(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy)」、77〜96頁、Alan R.Liss社、1985年)など、当技術分野で知られる任意の方法により調製することができる。
【0041】
本発明で用いられる抗体はまた、例えば、Babcook,J.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1996年、第93巻、第15号、7843〜7848頁、WO92/02551、WO2004/051268、及びWO2004/106377が説明する方法により、特異抗体の作製のために選択される単一種のリンパ球から生成される免疫グロブリン可変領域cDNAをクローニング及び発現することによる、単一種リンパ球抗体法を用いても作製することができる。
【0042】
ヒト化抗体は、非ヒト動物種に由来する1つ又は複数の相補性決定領域(CDR)と、ヒト免疫グロブリン分子に由来するフレームワーク領域とを有する、非ヒト動物種に由来する抗体分子である(例えば、US5,585,089を参照されたい)。
【0043】
本発明で用いられる抗体はまた、当技術分野で知られる各種のファージディスプレイ法を用いても作製することができ、Brinkmanら、J.Immunol.Methods、1995年、第182巻、41〜50頁;Amesら、J.Immunol.Methods、1995年、第184巻、177〜186頁;Kettleboroughら、Eur.J.Immunol.、1994年、第24巻、952〜958頁;Persicら、Gene、1997年、第187巻、9〜18頁;及びBurtonら、Advances in Immunology、1994年、第57巻、191〜280頁;WO90/02809;WO91/10737;WO92/01047;WO92/18619;WO93/11236;WO95/15982;及びWO95/20401;並びにUS5,698,426;同5,223,409;同5,403,484;同5,580,717;同5,427,908;同5,750,753;同5,821,047;同5,571,698;同5,427,908;同5,516,637;同5,780,225;同5,658,727;同5,733,743;及び同5,969,108により開示される方法を含む。また、トランスジェニックマウス、又は他の哺乳類を含む他の生物も、ヒト化抗体を作製するのに用いることができる。
【0044】
完全ヒト抗体は、重鎖及び軽鎖両方の可変領域及び定常領域(存在する場合)がすべて、必ずしも同じ抗体に由来するわけではないが、ヒト起源であるか、又はヒト起源の配列と実質的に同一の抗体である。完全ヒト抗体の例は、例えば、上記で説明したファージディスプレイ法により作製される抗体と、一般にEP0546073B1、US5,545,806、US5,569,825、US5,625,126、US5,633,425、US5,661,016,US5,770,429、EP0438474B1、及びEP0463151B1で説明される通り、マウス免疫グロブリンの可変領域及び定常領域の遺伝子がそれらのヒト対応物により置換された、マウスにより作製される抗体とを含みうる。
【0045】
本発明で用いられる抗体のFabフラグメント又はFab’フラグメントの出発材料は、任意の抗体全体、とりわけ、任意の適切な酵素的切断法及び/又は酵素的消化法を用いる、例えば、ペプシン処理によるモノクローナル抗体全体から得ることができる。その代わりに、又はそれに加えて、抗体出発材料は、抗体の可変領域及び/又は定常領域をコードするDNAの操作及び再発現を伴う組換えDNA法の使用により調製することもできる。標準的な分子生物学の技法を用いて、所望のアミノ酸又はドメインを修飾するか、付加するか、又は欠失させることができる。可変領域又は定常領域に対する任意の変更もなお、本明細書で用いられる「可変」領域及び「定常」領域という用語により包含される。
【0046】
抗体フラグメントの出発材料は、例えば、マウス、ラット、サメ、ウサギ、ブタ、ハムスター、ラクダ、ラマ、ヤギ、又はヒトを含む任意の動物種から得ることができる。抗体フラグメントの部分は複数の動物種から得ることができ、例えば、抗体フラグメントはキメラでありうる。一例では、定常領域が1つの動物種に由来し、可変領域が別の動物種に由来する。抗体フラグメントの出発材料はまた、改変することもできる。別の例において、抗体フラグメントの可変領域は、組換えDNA操作法を用いて作製されている。このような操作されたバージョンは、天然抗体のアミノ酸配列におけるか又はこれに対する挿入、欠失、又は変化により、例えば、天然抗体可変領域から作製されるものを含む。この種の具体例は、少なくとも1つのCDRと、場合によって、1つの抗体に由来する1つ又は複数のフレームワークアミノ酸と、第2の抗体に由来する残りの可変領域ドメインとを含有する、操作された可変領域ドメインを含む。これらの抗体フラグメントの作製法及び製造法は当技術分野でよく知られている(例えば、Bossら、US4,816,397;Cabillyら、US6,331,415;Shraderら、WO92/02551;Wardら、1989年、Nature、第341巻、544頁;Orlandiら、1989年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第86巻、3833頁;Riechmannら、1988年、Nature、第322巻、323頁;Birdら、1988年、Science、第242巻、423頁;Queenら、US5,585,089;Adair、WO91/09967;Mountain及びAdair、1992年、Biotechnol.Genet.Eng.Rev、第10巻、1〜142頁;Vermaら、1998年、Journal of Immunological Methods、第216巻、165〜181頁を参照されたい)。
【0047】
本発明において、Fabフラグメント又はFab’フラグメントに融合した各単一ドメイン抗体は、直接に又はリンカーを介して連結されうる。
【0048】
dAbをFab又はFab’に連結するのに適するリンカー領域の例は、可撓性リンカー配列及び剛性リンカー配列を含むがこれらに限定されない。可撓性リンカー配列は、Hustonら、1988年、PNAS、第85巻、5879〜5883頁;Wright及びDeonarain、Mol.Immunol.、2007年、第44巻、第11号、2860〜2869頁;Alfthanら、Prot.Eng.、1995年、第8巻、第7号、725〜731頁;Luoら、J.Biochem.、1995年、第118巻、第4号、825〜831頁;Tangら、1996年、J.Biol.Chem.、第271巻、第26号、15682〜15686頁;並びにTurnerら、1997年、JIMM、第205巻、42〜54頁において開示される配列を含む(代表例については、表1を参照されたい)。
【表1-1】

【表1-2】
【0049】
剛性リンカーの例は、ペプチド配列GAPAPAAPAPA(配列番号34)、PPPP(配列番号34)、及びPPPを含む。
【0050】
一実施形態において、抗体ヒンジ配列又はその一部は、リンカー、例えば、上部ヒンジ配列として用いられる。本発明で用いられる抗体Fab’フラグメントは、天然又は改変のヒンジ領域を保有することが典型的である。このようなヒンジ領域は、dAb部分に対する天然リンカーとして用いられる。天然ヒンジ領域は、抗体分子のC1ドメインと通常結合するヒンジ領域である。改変ヒンジ領域は、天然ヒンジ領域とは長さ及び/又は成分が異なる任意のヒンジである。このようなヒンジは、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、ラクダ、ラマ、又はヤギのヒンジ領域など、他の任意の動物種に由来するヒンジ領域を含みうる。他の改変ヒンジ領域は、C1ドメインのクラス又はサブクラスとは異なるクラス又はサブクラスの抗体に由来する完全ヒンジ領域を含みうる。したがって、例えば、クラスγ1のC1ドメインを、クラスγ4のヒンジ領域に結合させることができる。代替的に、改変ヒンジ領域は、天然ヒンジ又は反復内の各ユニットが天然ヒンジ領域に由来する反復ユニットの一部も含みうる。さらなる代替法において、天然ヒンジ領域は、1つ若しくは複数のシステイン又は他の残基をアラニンなどの中性残基に転換することによるか、又は適切に配置された残基をシステイン残基に転換することにより変更することもできる。このような手段により、ヒンジ領域内における多数のシステイン残基を増加又は減少させることができる。加えて、軽鎖の鎖間システインからのヒンジシステイン(単数又は複数)の距離、ヒンジシステイン間の距離、及び可撓性など、ヒンジの特性に影響を与えうるヒンジ内の他のアミノ酸の組成など、ヒンジの他の特性を制御することができ、例えば、ヒンジ内にグリシンを組込むことにより回転可撓性を上昇させることもでき、プロリンを組込むことにより可撓性を低下させることもできる。代替的に、ヒンジ内に荷電残基又は疎水性残基の組合せを組込むことにより、多量体化特性を賦与することもできる(リンカーとしての荷電テール又はイオンテール、例えば、酸性テールの使用については、例えば、Richterら、2001年、Prot.Eng.、第14巻、第10号、775〜783頁を参照し、ロイシンジッパー配列については、Kostelnyら、1992年、J.Immunol.、第5巻、第1号、1547〜1553頁を参照されたい)。他の改変ヒンジ領域は、完全に合成の場合もあり、長さ、組成、及び可撓性など所望の特性を有するように設計する場合もある。
【0051】
例えば、US5,677,425、US6642356、WO9915549、WO2005003170、WO2005003169、WO2005003170、WO9825971、及びWO2005003171において、多数の改変ヒンジ領域が既に説明されており、これらは、参照により本明細書に組込まれる。このようなヒンジは、一般に、CH1領域に後続するが、軽鎖のカッパフラグメント又はラムダフラグメントの定常領域末端に組込むこともできる(例えば、表2を参照されたい)。
【表2】
【0052】
本発明で用いられる、単一ドメイン抗体又はdAbとしても知られる単一可変ドメインは、当技術分野で知られる方法を用いて作製することができ、WO2005118642;Wardら、1989年、Nature、第341巻、544〜546頁及びHoltら、2003年、Trends in Biotechnology、第21巻、484〜490頁において開示される単一可変ドメインを含む。一実施形態において、本発明で用いられる単一ドメイン抗体は、重鎖可変ドメイン(VH)又は軽鎖ドメイン(VL)である。各軽鎖ドメインは、カッパサブグループでもラムダサブグループでもありうる。VHドメイン及びVLドメインを単離する方法は当技術分野で説明されており、例えば、EP036864及びWardら、前出を参照されたい。このようなドメインは、任意の適切な動物種又は抗体出発材料に由来しうる。一実施形態において、単一ドメイン抗体は、げっ歯類、ヒト、又は他の動物種に由来しうる。一実施形態において、単一ドメイン抗体はヒト化される。
【0053】
一実施形態において、単一ドメイン抗体は、例えば、WO2005/118642;Jespersら、2004年、Nature Biotechnology、第22巻、1161〜1165頁及びHoltら、2003年、Trends in Biotechnology、第21巻、484〜490頁において説明される方法を用いるファージディスプレイライブラリーに由来する。好ましくは、このような単一ドメイン抗体は完全ヒト抗体であるが、また、他の動物種にも由来しうる。Holtら、前出で説明される通り、単離された単一ドメイン抗体の配列を改変して、単一ドメイン抗体の特性、例えば、可溶性を改善することができることが理解される。
【0054】
一実施形態において、dAbは、scFvファージディスプレイから得られるヒト配列であるか、或いはトランスジェニックのHumouse(商標)若しくはVelocimouse(商標)又はヒト化げっ歯類に由来する。
【0055】
一実施形態において、dAbは、ヒト若しくはヒト化げっ歯類、ラクダ科動物、又はサメから得られる。このようなdAbは、ヒト化されることが好ましい。一例において、単一ドメイン抗体は、EP0656946で説明されるラクダ科動物免疫グロブリンに基づくVHHドメインである。一例では、対象抗原によりラクダ又はラマを免疫感作し、力価が適切であれば血液を採取する。dAbをコードする遺伝子を単一細胞PCRによりクローニングすることもでき、dAbをコードするB細胞(単数又は複数)をEBV形質転換によるか又は不死化細胞系への融合により不死化することもできる。
【0056】
本明細書の上記で説明した通り、本発明は、対象抗原に対する特異性を有する抗体のFabフラグメント又はFab’フラグメントを含む二重特異性抗体融合タンパク質であって、前記フラグメントが、第2の対象抗原に対する特異性を有する少なくとも1つの単一ドメイン抗体に直接に又はリンカーを介して融合している融合タンパク質を提供する。
【0057】
したがって、一実施形態において、抗体フラグメント、例えば、Fabフラグメント又はFab’フラグメントは、重鎖可変領域又は軽鎖可変領域のN末端において、直接に又はリンカーを介してdAbに融合する。代替的に、抗体のFabフラグメント又はFab’フラグメントは、重鎖可変領域又は軽鎖可変領域のC末端において、直接に又はリンカーを介してdAbに融合する。別の実施形態において、抗体のFabフラグメント又はFab’フラグメントの重鎖及び軽鎖は各々、該C末端において、直接に又はリンカーを介してdAbに融合する。連結は化学コンジュゲーションでありうるが、翻訳融合、すなわち、各々の配列が発現ベクターにより順次コードされる遺伝子融合であることが最も好ましい。
【0058】
単一ドメイン抗体のN末端がFabフラグメント又はFab’フラグメントの重鎖又は軽鎖のC末端に直接に又はリンカーを介して融合することが典型的であり、単一ドメイン抗体がFab又はFab’のN末端に融合する場合は、そのC末端により、場合によってリンカーを介して融合する。
【0059】
一実施形態において、本発明は、対象抗原に対する特異性を有する抗体のFabフラグメント又はFab’フラグメントを含むか又はこれよりなる二重特異性抗体融合タンパク質であって、前記フラグメントが、重鎖又は軽鎖のN末端において第2の対象抗原に対する特異性を有する単一ドメイン抗体に融合している融合タンパク質を提供する。
【0060】
一実施形態において、本発明は、対象抗原に対する特異性を有する抗体のFabフラグメント又はFab’フラグメントを含むか又はこれよりなる二重特異性抗体融合タンパク質であって、前記フラグメントが、重鎖又は軽鎖のC末端において第2の対象抗原に対する特異性を有する単一ドメイン抗体に融合している融合タンパク質を提供する。
【0061】
一実施形態において、本発明は、対象抗原に対する特異性を有する抗体のFabフラグメント又はFab’フラグメントを含むか又はこれよりなる二重特異性抗体融合タンパク質であって、前記フラグメントが、重鎖又は軽鎖のC末端において第2の対象抗原に対する特異性を有する少なくとも1つの単一ドメイン抗体に融合している融合タンパク質を提供する。
【0062】
一実施形態において、本発明は、対象抗原に対する特異性を有する抗体のFabフラグメント又はFab’フラグメントを含むか又はこれよりなる二重特異性抗体融合タンパク質であって、前記フラグメントが2つの単一ドメイン抗体に融合し、各単一ドメイン抗体が、場合によって、リンカーを介して、互いに直鎖配列中で融合し、結果として得られる単一ドメイン抗体融合体が、Fabフラグメント又はFab’フラグメントの軽鎖又は重鎖のC末端に融合する融合タンパク質を提供する。
【0063】
一実施形態において、本発明は、対象抗原に対する特異性を有する抗体のFabフラグメント又はFab’フラグメントを含むか又はこれよりなる二重特異性抗体融合タンパク質であって、前記フラグメントが2つの単一ドメイン抗体に融合し、一方の単一ドメイン抗体がFabフラグメント又はFab’フラグメントの軽鎖C末端に融合し、他方の単一ドメイン抗体がFabフラグメント又はFab’フラグメントの重鎖C末端に融合し、前記単一ドメイン抗体が、第2の対象抗原に対する特異性を有する融合タンパク質を提供する。
【0064】
Fabフラグメント又はFab’フラグメントの重鎖及び軽鎖が各々、C末端において単一ドメイン抗体を含む一実施形態において、該2つの単一ドメイン抗体は同一であり、すなわち、同じ抗原に対する同じ結合特異性を有する。一例において、それらは、同じ抗原上における同じエピトープに結合する。例えば、単一ドメイン抗体は共に、同じVH dAbの場合もあり、同じVHH dAbの場合もあり、同じVL dAbの場合もある。
【0065】
好ましくは、Fabフラグメント又はFab’フラグメントの重鎖及び軽鎖が各々、C末端において単一ドメイン抗体を含む場合、該2つの単一ドメイン抗体は、抗原に共同的に結合する相補的なVH/VL対であり、すなわち、それらは、同じ結合特異性を有する相補的なVH/VL対である。それらは、同じ抗体に由来するVH/VL対であることが典型的である。
【0066】
本発明の二重特異性抗体融合タンパク質が、相補的なVH/VL対である2つの単一ドメイン抗体を含む一実施形態において、VH単一ドメイン抗体は重鎖定常領域(CH1)のC末端に融合し、VL単一ドメイン抗体は軽鎖定常領域(Cカッパ又はCラムダ)のC末端に融合する。
【0067】
本発明の二重特異性抗体融合タンパク質が、相補的なVH/VL対である2つの単一ドメイン抗体を含む一実施形態において、VL単一ドメイン抗体は重鎖定常領域(CH1)のC末端に融合し、VH単一ドメイン抗体は軽鎖定常領域(Cカッパ又はCラムダ)のC末端に融合する。
【0068】
本発明の二重特異性融合タンパク質において、単一ドメイン抗体(単数又は複数)は、Fabフラグメント又はFab’フラグメントの成分が結合する抗原とは異なる第2の抗原に結合する。
【0069】
一例において、本発明において用いられるdAbは、補体経路タンパク質、CDマーカータンパク質、又はFcγRに対する特異性を示す。この場合、dAbは、CD分子に対して特異性であることが好ましい。dAbは、CD68、CD80、CD86、CD64、CD3、CD4、CD8、CD45、CD16、及びCD35からなる群から選択されるCD分子に対する特異性を示すことが最も好ましい。
【0070】
好ましい例において、本発明で用いられるdAbは、血清担体タンパク質、循環免疫グロブリン分子、又はCD35/CR1に対する特異性を示し、血清担体タンパク質は、チロキシン結合タンパク質、トランスサイレチン、α1−酸糖タンパク質、トランスフェリン、フィブリノーゲン、又は血清アルブミンなどのヒト血清担体タンパク質であることが好ましい。dAbは、ヒト血清アルブミンに対する特異性を示すことが最も好ましい。したがって、一例において、血清担体タンパク質、循環免疫グロブリン分子、又はCD35/CR1(例えば、ヒト血清アルブミン)によりウサギ、マウス、ラット、ラクダ、又はラマを免疫感作し、力価が適切であれば血液を採取する。dAbをコードする遺伝子を単一細胞PCRによりクローニングすることもでき、dAbをコードするB細胞(単数又は複数)をEBV形質転換によるか又は不死化細胞系への融合により不死化することもできる。代替的に、単一ドメイン抗体は、本明細書の上記において説明した通り、ファージディスプレイにより得ることもできる。
【0071】
一実施形態において、単一ドメイン抗体(単数又は複数)は、ヒト血清アルブミンに結合する。一実施形態において、単一ドメイン抗体(単数又は複数)は、ヒト血清アルブミン、マウス血清アルブミン、及びラット血清アルブミンに結合する。
【0072】
一実施形態において、血清アルブミンに結合する単一ドメイン抗体は、WO2005/118642(例えば、図1c及び1dを参照されたい)において提供されるdAb、若しくはWO2004/041862において提供されるVHH、又は例えば、WO2006/122787の表IIIに記載のヒト化ナノボディである。
【0073】
一実施形態において、本発明で用いられる、ヒト血清アルブミンに結合する単一ドメイン抗体は、CDR−H1として図5(e)の配列番号56又は図5(k)の配列番号62で示される配列を有するCDR、CDR−H2として図5(f)の配列番号57又は図5(l)の配列番号63で示される配列を有するCDR、及びCDR−H3として図5(g)の配列番号58又は図5(m)の配列番号64で示される配列を有するCDRの少なくとも1つを含む重鎖VH単一ドメイン抗体である。
【0074】
別の実施形態において、本発明で用いられる、ヒト血清アルブミンに結合する単一ドメイン抗体は、VHドメインのCDR−H1、CDR−H2、及びCDR−H3のうち少なくとも2つが、以下:CDR−H1として配列番号56又は配列番号62で示される配列、CDR−H2として配列番号57又は配列番号63で示される配列、及びCDR−H3として配列番号58又は配列番号64で示される配列から選択される、重鎖VH抗体である。例えば、単一ドメイン抗体は、CDR−H1が配列番号56で示される配列を有し、CDR−H2が配列番号57で示される配列を有する、VHドメインを含みうる。代替的に、単一ドメイン抗体は、CDR−H1が配列番号56で示される配列を有し、CDR−H3が配列番号58で示される配列を有する、VHドメインを含みうる。疑念を回避するため、すべての順列が含まれることが理解される。
【0075】
別の実施形態において、本発明で用いられる、ヒト血清アルブミンに結合する単一ドメイン抗体は、VHドメインが、CDR−H1として配列番号56で示される配列、CDR−H2として配列番号57で示される配列、及びCDR−H3として配列番号58で示される配列を含む、重鎖VH単一ドメイン抗体である。
【0076】
別の実施形態において、本発明で用いられる、ヒト血清アルブミンに結合する単一ドメイン抗体は、VHドメインが、CDR−H1として配列番号62で示される配列、CDR−H2として配列番号63で示される配列、及びCDR−H3として配列番号64で示される配列を含む、重鎖VH単一ドメイン抗体である。
【0077】
一実施形態において、本発明で用いられる、ヒト血清アルブミンに結合する単一ドメイン抗体は、図5(a)(配列番号52)で示される配列を有する、ヒト化重鎖VH単一ドメイン抗体dAbH1である。GSリンカーを含む適切なCH1−dAbH1融合体の例は、図6(配列番号68)で示される。
【0078】
一実施形態において、本発明で用いられる、ヒト血清アルブミンに結合する単一ドメイン抗体は、図5(c)(配列番号54)で示される配列を有する、ヒト化重鎖VH単一ドメイン抗体dAbH2である。GSリンカーを含む適切なCH1−dAbH2融合体の例は、図6(配列番号69)で示される。
【0079】
抗体可変ドメイン内の残基は、Kabatらにより考案されたシステムに従い番号付けするのが慣例となっている。このシステムは、Kabatら、1987年、「免疫学的対象タンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)」、米国保健福祉省、NIH(以後、「Kabatら(前出)」とする)に記載されている。別段に示す場合を除き、本明細書では、この番号付けシステムを用いる。
【0080】
Kabatによる残基表示は、アミノ酸残基の直鎖番号付けと常に直接に対応するわけではない。実際の直鎖アミノ酸配列は、基本的な可変ドメイン構造のフレームワーク領域又は相補性決定領域(CDR)のいずれであれ、構造成分の短縮又はこれへの挿入に対応する、Kabatによる厳密な番号付けにおけるよりも少ないか又はこれに加えたアミノ酸を含有しうる。所与の抗体に対する、Kabatによる正確な残基の番号付けは、該抗体配列内における、Kabatにより番号付けされた「標準的な」配列と相同な残基のアライメントにより決定される。
【0081】
重鎖可変ドメインのCDRは、Kabat番号付けシステムによれば、残基31〜35(CDR−H1)、残基50〜65(CDR−H2)、及び残基95〜102(CDR−H3)に位置する。しかし、Chothia(Chothia,C.及びLesk,A.M.、J.Mol.Biol.、第196巻、901〜917頁(1987年))によれば、CDR−H1に相当するループは、残基26〜残基32に広がる。したがって、本明細書で用いられる「CDR−H1」は、Kabat番号付けシステム及びChothia位相ループ定義の組合せにより説明される残基26〜35を含む。
【0082】
軽鎖可変ドメインのCDRは、Kabat番号付けシステムによれば、残基24〜34(CDR−L1)、残基50〜56(CDR−L2)、及び残基89〜97(CDR−L3)に位置する。
【0083】
一実施形態において、本発明で用いられる、ヒト血清アルブミンに結合する単一ドメイン抗体は、CDR−L1として図5(h)の配列番号59又は図5(n)の配列番号65で示される配列を有するCDR、CDR−L2として図5(i)の配列番号60又は図5(o)の配列番号66で示される配列を有するCDR、及びCDR−L3として図5(j)の配列番号61又は図5(p)の配列番号67で示される配列を有するCDRの少なくとも1つを含む軽鎖VL単一ドメイン抗体である。
【0084】
別の実施形態において、本発明で用いられる、ヒト血清アルブミンに結合する単一ドメイン抗体は、VLドメインのCDR−L1、CDR−L2、及びCDR−L3のうち少なくとも2つが、以下:CDR−L1として配列番号59又は配列番号65で示される配列、CDR−L2として配列番号60又は配列番号66で示される配列、及びCDR−L3として配列番号61又は配列番号67で示される配列から選択される、軽鎖VL抗体である。例えば、単一ドメイン抗体は、CDR−L1が配列番号59で示される配列を有し、CDR−L2が配列番号60で示される配列を有する、VLドメインを含みうる。代替的に、単一ドメイン抗体は、CDR−L1が配列番号59で示される配列を有し、CDR−L3が配列番号61で示される配列を有する、VLドメインを含みうる。疑念を回避するため、すべての順列が含まれることが理解される。
【0085】
別の実施形態において、本発明で用いられる、ヒト血清アルブミンに結合する単一ドメイン抗体は、VLドメインが、CDR−L1として配列番号59で示される配列、CDR−L2として配列番号60で示される配列、及びCDR−L3として配列番号61で示される配列を含む、軽鎖VL単一ドメイン抗体である。
【0086】
別の実施形態において、本発明で用いられる、ヒト血清アルブミンに結合する単一ドメイン抗体は、VLドメインが、CDR−L1として配列番号65で示される配列、CDR−L2として配列番号66で示される配列、及びCDR−L3として配列番号67で示される配列を含む、軽鎖VL単一ドメイン抗体である。
【0087】
一実施形態において、本発明で用いられる、ヒト血清アルブミンに結合する単一ドメイン抗体は、図5(b)(配列番号53)で示される配列を有する、ヒト化軽鎖VL単一ドメイン抗体dAbL1である。共にGSリンカーを含む適切なCH1−dAbL1融合体及びCk1−dAbL1融合体の例は、図6(配列番号70及び配列番号72)で示される。
【0088】
一実施形態において、本発明で用いられる、ヒト血清アルブミンに結合する単一ドメイン抗体は、図5(d)(配列番号55)で示される配列を有する、ヒト化軽鎖VL単一ドメイン抗体dAbL2である。共にGSリンカーを含む適切なCH1−dAbL2融合体及びCk1−dAbL2融合体の例は、図6(配列番号71及び配列番号73)で示される。
【0089】
Fabフラグメント又はFab’フラグメントの重鎖及び軽鎖が各々、C末端において単一ドメイン抗体を含み、該2つの単一ドメイン抗体が、本明細書の上記で説明した通り、抗原に共同的に結合する相補的なVH/VL対である一実施形態において、VH dAbはdAbH1(配列番号52)であり、VL dAbはdAbL1(配列番号53)である。
【0090】
Fabフラグメント又はFab’フラグメントの重鎖及び軽鎖が各々、C末端において単一ドメイン抗体を含み、該2つの単一ドメイン抗体が、本明細書の上記で説明した通り、抗原に共同的に結合する相補的なVH/VL対である一実施形態において、VH dAbはdAbH2(配列番号54)であり、VL dAbはdAbL2(配列番号55)である。
【0091】
別の態様において、本発明は、本明細書の上記及び図5(e〜p)に記載の1つ又は複数のCDRを含有するアルブミン結合抗体又はこれらのフラグメントを提供する。前記CDRは、任意の適切な抗体フレームワーク及び任意の適切な抗体フォーマットに組込むことができる。このような抗体は、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、又はキメラ抗体でありうるがこれらに限定されない、抗体全体及びこれらの機能的に活性なフラグメント又は誘導体を含む。したがって、このようなアルブミン結合抗体は、全長の重鎖及び軽鎖を有する完全抗体分子又はそのフラグメントを含む場合があり、Fab、改変Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、単一ドメイン抗体、scFv、二価抗体、三価抗体、又は四価抗体、ビスscFv、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、及び上記いずれかのエピトープ結合フラグメントでありうるがこれらに限定されない(例えば、Holliger及びHudson、2005年、Nature Biotech、第23巻、第9号、1126〜1136頁;Adair及びLawson、2005年、Drug Design Reviews−Online、第2巻、第3号、209〜217頁を参照されたい)。これらの抗体フラグメントの作製法及び製造法は当技術分野でよく知られている(例えば、Vermaら、1998年、Journal of Immunological Methods、第216巻、165〜181頁を参照されたい)。多価抗体は、多重特異性を含む場合もあり、単一特異性の場合もある(例えば、WO92/22853及びWO05/113605を参照されたい)。本発明のこの態様はまた、これらのアルブミン結合抗体の変異体にも拡張されることが理解される。
【0092】
このようなアルブミン結合抗体、特に、単一ドメイン抗体は、他の任意の適切な状況で所望されるか又は用いられる、他の任意の抗体若しくはタンパク質又は他の分子にコンジュゲートさせることができることが理解される。一例において、上記で説明し、図5(a〜d)で示した、単一ドメイン抗体dAbH1、dAbL1、dAbH2、dAbL2は、任意の適切な抗体フォーマットに組込むこともでき、融合体又はコンジュゲートなど、任意の適切な状況における単一ドメイン抗体として用いることもできる。
【0093】
一実施形態において、本発明のこの態様の抗体は、CDR−H1として図5(e)で示される配列、CDR−H2として図5(f)で示される配列、及びCDR−H3として図5(g)で示される配列を含む。
【0094】
一実施形態において、本発明のこの態様の抗体は、CDR−H1として図5(k)で示される配列、CDR−H2として図5(l)で示される配列、及びCDR−H3として図5(m)で示される配列を含む。
【0095】
一実施形態において、本発明のこの態様の抗体は、CDR−L1として図5(h)で示される配列、CDR−L2として図5(i)で示される配列、及びCDR−L3として図5(j)で示される配列を含む。
【0096】
一実施形態において、本発明のこの態様の抗体は、CDR−L1として図5(n)で示される配列、CDR−L2として図5(o)で示される配列、及びCDR−L3として図5(p)で示される配列を含む。
【0097】
本発明の二重特異性融合タンパク質の単一ドメイン抗体(単数又は複数)がアルブミンに結合する場合、アルブミンに対する単一ドメイン抗体の結合親和性は、in vivoにおけるFab又はFab’の半減期を延長させるのに十分である。アルブミンに対する2.5μM以下の親和性で、in vivoにおける半減期が延長されることが報告されている(Nguyen,A.ら(2006年)、Protein Engineering,Design & Selection、第19巻、第7号、291〜297頁)。本発明の単一ドメイン抗体分子は、それらの目的及びそれらが結合する抗原に適する結合親和性を有することが好ましい。一例において、単一ドメイン抗体は、高結合親和性、例えば、ピコモル単位の結合親和性を有する。一例において、単一ドメイン抗体は、ナノモル又はマイクロモル単位の、抗原に対する結合親和性を有する。親和性は、天然又は組換えの抗原を用いる、本明細書の実施例で説明されるBIAcoreを含む、当技術分野で知られる任意の適切な方法を用いて測定することができる。
【0098】
アルブミンに結合する本発明の単一ドメイン抗体分子は、約2μMもしくはそれより良い結合親和性を有することが好ましい。一実施形態において、本発明の単一ドメイン抗体分子は、約1μMもしくはそれより良い結合親和性を有する。一実施形態において、本発明の単一ドメイン抗体分子は、約500nMもしくはそれより良い結合親和性を有する。一実施形態において、本発明の単一ドメイン抗体分子は、約200nMもしくはそれより良い結合親和性を有する。一実施形態において、本発明の単一ドメイン抗体分子は、約1nMもしくはそれより良い結合親和性を有する。本発明により提供され、当技術分野で知られる単一ドメイン抗体の親和性は、当技術分野で知られる任意の適切な方法を用いて変化させうることが理解される。したがって、本発明はまた、アルブミンに対して改善された親和性を有する、本発明のドメイン抗体分子の変異体にも関する。このような変異体は、CDRの突然変異誘発(Yangら、J.Mol.Biol.、第254巻、392〜403頁、1995年)、鎖シャッフリング(Marksら、Bio/Technology、第10巻、779〜783頁、1992年)、大腸菌の変異株の使用(Lowら、J.Mol.Biol.、第250巻、359〜368頁、1996年)、DNAシャッフリング(Pattenら、Curr.Opin.Biotechnol.、第8巻、724〜733頁、1997年)、ファージディスプレイ(Thompsonら、J.Mol.Biol.、第256巻、77〜88頁、1996年)、及びセクシュアルPCR(Crameriら、Nature、第391巻、288〜291頁、1998年)を含む多数の親和性成熟プロトコールにより得ることができる。Vaughanら(前出)は、これらの親和性成熟法について論じている。
【0099】
本発明はまた、本発明の二重特異性抗体融合タンパク質をコードする単離DNA配列も提供する。本発明のDNA配列は、例えば、化学的処理、cDNA、ゲノムDNA、又はこれらの任意の組合せにより作製される合成DNAを含みうる。
【0100】
本発明の二重特異性抗体融合タンパク質をコードするDNA配列は、当業者によく知られる方法により得ることができる。例えば、抗体フラグメント、リンカー、及び/又はdAbの一部又は全部をコードするDNA配列は、決定されたDNA配列から、又は対応するアミノ酸配列に基づいて、所望の形で合成することができる。
【0101】
分子生物学の標準的な技法を用いて、本発明の二重特異性抗体融合タンパク質をコードするDNA配列を調製することができる。所望のDNA配列は、オリゴヌクレオチド合成法を用いて完全に又は部分的に合成することができる。適切な場合、部位志向的突然変異誘発法及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いることができる。
【0102】
本発明はさらに、本発明の1つ又は複数のDNA配列を含むクローニングベクター又は発現ベクターにも関する。したがって、本発明の二重特異性抗体融合タンパク質をコードする1つ又は複数のDNA配列を含むクローニングベクター又は発現ベクターが提供される。好ましい一実施形態において、クローニングベクター又は発現ベクターは、全二重特異性抗体融合タンパク質をコードする単一のDNA配列を含む。したがって、クローニングベクター又は発現ベクターは、翻訳融合タンパク質が生成されるように、DNAによりコードされる転写単位を順に含む。
【0103】
実際、本発明の融合タンパク質は、N末端又はC末端においてdAbを有することが可能であり、したがって、dAbのDNAによりコードされる転写単位は、翻訳融合体をコードするDNA配列内において、それぞれ、冒頭又は末尾となることが当業者に理解される。したがって、翻訳融合体は、N末端のdAb及びC末端のFab又はFab’を含みうる。さらに、翻訳融合体は、N末端のFab又はFab’及びC末端のdAbも含みうる。
【0104】
Fab又はFab’の重鎖及び軽鎖を同じであるか又は異なるベクターに組込みうることが理解される。一実施形態では、1つのベクターがFab又はFab’の重鎖及びC末端のdAbを含む翻訳融合体を含み、別のベクターがFab又はFab’の軽鎖及びC末端のdAbを含む翻訳融合体を含みうる。
【0105】
例えば、抗体フラグメントのN末端においてdAb部分を有する二重特異性抗体融合タンパク質を作製することが所望される場合、ベクターは、dAb部分をコードするDNA転写単位、場合によって、リンカー配列をコードするDNA転写単位、及び抗体フラグメントをコードするDNA転写単位の順に、DNA転写単位を含む。抗体フラグメントのC末端においてdAb部分を有する二重特異性抗体融合タンパク質を作製することが所望される場合、ベクターは、抗体フラグメントをコードするDNA転写単位、場合によって、リンカー配列をコードするDNA転写単位、及び血清担体タンパク質、循環免疫グロブリン分子、又はCD35/CR1、例えば、ヒト血清アルブミンに対する特異性を有するdAb部分をコードするDNA転写単位の順に、DNA転写単位を含む。したがって、本発明の翻訳融合体は、例えば、dAb−リンカー−Fab、Fab−リンカー−dAb、dAb−Fab、Fab−dAb、Fab’−dAb、dAb−Fab’、dAb−リンカー−Fab’、Fab’−リンカー−dAbを含むがこれらに限定されない、異なる構成でありうる。例えば、2つのベクターを用いる場合、第1のベクターはdAbに融合したFab又はFab’の重鎖を含むことが可能であり、第2のベクターはdAbに融合したFab又はFab’の軽鎖を含むことが可能である。
【0106】
本発明の翻訳融合体内に含まれる抗体フラグメントに対応するDNAコードは、当業者に知られる構成内における転写単位としてベクターに組込むことができ、例えば、転写単位は、軽鎖に対応するコードの後に重鎖コードを含む場合もあり、この逆の場合もある(特に、Humphreysら、2002年、Protein Expression and Purification、第26巻、309〜320頁を参照されたい)。
【0107】
本発明によるベクターは、抗体リーダー配列など、適切なリーダー配列を含むことが好ましい。このようなリーダー配列は、当技術分野でよく知られている。
【0108】
それによりベクターを構築しうる一般的な方法である、トランスフェクション法及び形質転換法並びに培養法は、当業者によく知られている。この点において、「分子生物学における最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」、1999年、F.M.Ausubel(編)、ニューヨーク、Wiley Interscience社、及びCold Spring Harbor Publishing社により刊行される、Maniatisによるマニュアルが参照される。
【0109】
また、本発明の二重特異性抗体融合タンパク質をコードする1つ又は複数のDNA配列を含む1つ又は複数のクローニングベクター又は発現ベクターを含む宿主細胞も提供される。二重特異性抗体融合タンパク質をコードするDNA配列の発現に適する任意の宿主/ベクター系を用いることができる。細菌、例えば、大腸菌、及び他の微生物系を用いることもでき、真核生物、例えば、哺乳類の宿主細胞発現系を用いることもできる。適切な哺乳類宿主細胞は、NS0細胞、CHO細胞、黒色腫細胞、又はハイブリドーマ細胞を含む。したがって、一実施形態において、本発明の融合タンパク質は、大腸菌内で発現する。別の実施形態において、本発明の融合タンパク質は、哺乳類細胞内で発現する。
【0110】
本発明はまた、二重特異性抗体融合タンパク質の作製のための工程であって、前記二重特異性抗体融合タンパク質をコードするDNA配列からのタンパク質の発現に適する条件下において、本発明のベクターを含む宿主細胞を培養するステップを含む工程も提供する。本発明は、二重特異性抗体融合タンパク質を単離する方法をさらに提供する。
【0111】
作製時において、必要な場合、当技術分野で知られる任意の適切な方法を用いて、本発明の二重特異性抗体融合タンパク質を精製することができる。例えば、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ除外クロマトグラフィー、プロテインGクロマトグラフィー、又は疎水性相互作用クロマトグラフィーなどであるがこれらに限定されないクロマトグラフィー法を用いることができる。
【0112】
二重特異性抗体融合タンパク質のサイズは、サイズ除外クロマトグラフィー及び非還元SDS−PAGEなど、当技術分野で知られる従来の方法により確認することができる。このような技法を用いて、該タンパク質が二量体化していないこと、及び/又は部分、例えば、dAb部分の逸失が生じていないことを確認することができる。二量体が検出される場合、上記で説明した従来のクロマトグラフィー法を用いて、二量体分子種から単量体の二重特異性抗体融合タンパク質を精製することができる。
【0113】
本発明の二重特異性抗体融合タンパク質は、炎症性疾患及び炎症性障害、免疫疾患及び免疫障害、線維化障害、並びに癌を含む疾患又は障害の治療において有用である。
【0114】
「炎症性疾患」又は「炎症性障害」及び「免疫疾患又は免疫障害」という用語は、関節リウマチ、乾癬性関節炎、スティル病、マックルウェルズ病、乾癬、クローン病、潰瘍性大腸炎、SLE(全身性エリテマトーデス)、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、多発性硬化症、血管炎、I型糖尿病、移植、及び移植片対宿主病を含む。
【0115】
「線維化障害」という用語は、特発性肺線維症(IPF)、全身性硬化症(又は強皮症)、腎線維症、糖尿病性腎症、IgA腎症、高血圧、末期腎疾患、腹膜線維症(持続的携帯型腹膜透析)、肝硬変、加齢黄斑変性(ARMD)、網膜症、反応性心筋線維症、瘢痕形成、ケロイド、火傷、皮膚潰瘍、血管形成術、冠動脈バイパス術、関節形成術、及び白内障術を含む。
【0116】
「癌」という用語は、上皮から生じるか、又は皮内若しくはより一般に、体内臓器、例えば、乳房、卵巣、前立腺、肺、腎臓、膵臓、胃、膀胱、又は腸の内壁で見出される、新規の悪性増殖を含む。癌は隣接組織内に浸潤し、遠隔の臓器、例えば、骨、肝臓、肺、又は脳に拡大(転移)する傾向がある。
【0117】
したがって、本発明のさらなる態様により、1種又は複数種の薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤を伴う本発明の抗体融合体を含む医薬組成物が提供される。また、疾患又は障害の治療用薬剤の製造のための本発明の抗体融合タンパク質の使用も提供される。疾患又は障害は炎症性疾患又は炎症性障害であることが最も好ましい。
【0118】
本発明による医薬組成物は、経口投与、口腔内投与、非経口投与、皮下投与、鼻腔内投与、局所投与、眼内投与、又は直腸内投与に適する形態をとる場合もあり、吸入又は吹送による投与に適する形態をとる場合もある。
【0119】
適切な場合、例えば、抗体融合タンパク質の単一ドメイン抗体(単数又は複数)がアルブミンに結合する場合、当技術分野で知られる任意の適切な方法を用いて、二重特異性抗体融合タンパク質をヒト又は組換えの血清アルブミンとあらかじめ調合することが望ましいことがある。
【0120】
経口投与の場合、医薬組成物は、結合剤(例えば、あらかじめゼラチン化されたトウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、又はヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、微晶質セルロース、又はリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、滑石、又はシリカ);崩壊剤(例えば、バレイショデンプン又はグリコール酸ナトリウム);又は保湿剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの薬学的に許容される賦形剤を伴う従来の手段により調製される錠剤、トローチ、又はカプセルの形態をとりうる。錠剤は、当技術分野でよく知られる方法により被覆することができる。経口投与用の液体調製物は、例えば、溶液、シロップ、又は懸濁液の形態をとる場合もあり、使用前の水又は他の適切な媒体による構成のための乾燥生成物として提示される場合もある。このような液体調製物は、懸濁剤、乳化剤、非水性媒体、又は防腐剤などの薬学的に許容される添加剤を伴う従来の手段により調製することができる。調製物はまた、適切な場合、緩衝塩、芳香剤、着色剤、又は甘味剤も含有しうる。
【0121】
経口投与用調製物は、活性化合物を制御放出するのに適する形で調合することができる。
【0122】
口腔内投与の場合、組成物は、従来の方式で調合される錠剤又はトローチの形態をとりうる。
【0123】
本発明の二重特異性抗体は、注射による、例えば、ボーラス注射又は注入による非経口投与用に調合することができる。注射用製剤は、単位用量形態、例えば、ガラス製アンプル、又は複数回投与用容器、例えば、ガラス製バイアル内において提示することができる。注射用組成物は、油性又は水性の媒体中における懸濁液、溶液、又は乳剤の形態をとる場合があり、懸濁剤、安定化剤、防腐剤、及び/又は分散剤などの調合剤を含有しうる。代替的に、有効成分は、使用前の適切な媒体、例えば、無菌発熱物質非含有水による構成のための粉末形態でもありうる。
【0124】
上記で説明した製剤に加え、本発明の二重特異性抗体はまた、デポ調製物としても調合することができる。このような長時間作用製剤は、移植(Implantation)によるか又は筋肉内注射により投与することができる。
【0125】
鼻腔内投与又は吸入投与の場合、本発明による化合物は、適切な高圧気体、例えば、ジクロロジフルオロメタン、フルオロトリクロロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の適切な気体若しくは気体の混合物の使用を伴う、高圧パック又は噴霧器のためのエアゾールスプレーの提示形態で簡便に送達することができる。
【0126】
組成物は、所望の場合、有効成分を含有する1つ又は複数の単位用量形態を含有しうるパック又は分注器において提示することができる。パック又は分注器には、投与指示書を添付することができる。
【0127】
外用投与の場合、本発明による化合物は、1種又は複数種の薬学的に許容される担体中に懸濁又は溶解させた活性成分を含有する適切な軟膏中に簡便に調合することができる。具体的な担体は、例えば、鉱物油、石油、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、乳化ワックス、及び水を含む。代替的に、本発明による化合物は、1種又は複数種の薬学的に許容される担体中に懸濁又は溶解させた活性成分を含有する適切なローション中にも調合することができる。具体的な担体は、例えば、鉱物油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリールアルコール、ベンジルアルコール、2−オクチルドデカノール、及び水を含む。
【0128】
眼内投与の場合、本発明による化合物は、殺菌剤又は殺真菌剤、例えば、硝酸フェニル水銀、塩化ベンザルコニウム、又は酢酸クロルヘキシジンなどの防腐剤を含むか又は含まない、等張性のpH調整された無菌生理食塩液中におけるマイクロイオン化懸濁液として簡便に調合することができる。代替的に、眼内投与の場合、化合物は、ワセリンなどの軟膏に調合することもできる。
【0129】
直腸内投与の場合、本発明による化合物は、坐剤として簡便に調合することができる。これらは、活性成分を、室温では固体であるが直腸内温度では液体であり、このため、直腸内では溶融して活性成分を放出する、適切な非刺激性賦形剤と混合することにより調合することができる。このような材料は、例えば、ココアバター、蜂蜜、及びポリエチレングリコールを含む。
【0130】
特定の状態の予防又は治療に必要とされる本発明の化合物の量は、選択される化合物及び治療される患者の状態に応じて変化する。しかし、一般に、毎日の用量は、経口投与又は口腔内投与の場合、体重当たり約10ng/kg〜1000mg/kg、典型的には100ng/kg〜100mg/kg、例えば、約0.01mg/kg〜40mg/kgの範囲であり、非経口投与の場合、体重当たり約10ng/kg〜50mg/kgの範囲であり、鼻腔内投与又は吸入若しくは吹送による投与の場合、約0.05mg〜約1000mg、例えば、0.5mg〜約1000mgの範囲である。
【0131】
本発明の各実施形態の好ましい特徴は、他の実施形態の各々の場合と同様、変更すべき点は変更される。本明細書で引用される特許及び特許出願を含むがこれらに限定されないすべての刊行物は、各個別の刊行物が、全体として提示されたと仮定して、参照により本明細書に組込まれることが具体的かつ個別に示されたと仮定した場合と同様に、参照により本明細書に組込まれる。
【0132】
ここで、以下の例を参照して本発明を説明するが、これらは単に例示的なものであり、いかなる形であれ、本発明の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0133】
図1】dAbがC末端にあるFab−dAbの略図である。
図2】Fab−didAbの略図である。
図3】FabA−dAbL3(CK−SGSE)(1)及びFabA−dAbL3(CK−G[APAPA])(2)のSDS−PAGE解析を示す図である。
図4】FabA−dAbL3(CK−SGSE)(1)及びFabA−dAbL3(CK−G[APAPA])(2)のウェスタンブロット解析を示す図である。
図4a】FabB−didAbのSDS−PAGEを示す図である。 レーンM=SeeBlueマーカー レーン1及び2=IgG対照 レーン3=FabB レーン4=FabB−dAbL1(CK−GS×2)及びFabB−dAbH1(CH1−GS×2)であるFabB−didAb レーン5=FabB−dAbL2(CK−GS×2)及びdAbH2(CH1−GS×2)であるFabB−didAb
図5】ドメイン抗体dAbH1、dAbH2、dAbL1、及びdAbL2並びにこれらの抗体の各々に由来するCDRの配列を示す図である。
図6-1】ドメイン抗体に融合したFabBの重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインを含むFabB−dAb構築物を示す図である。
図6-2】ドメイン抗体に融合したFabBの重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインを含むFabB−dAb構築物を示す図である。
図7】Fab’Aの重鎖配列及び軽鎖配列並びにFabAの重鎖配列を示す図である。
【0134】
実験:
(例1)
ヒト血清アルブミンに特異的なdAbの作製
組換えDNA法を用いて、ヒト血清アルブミンに対する特異性を有するdAbをコードする、インフレームのDNAによりコードされた転写単位を作製した。
【0135】
所望の場合は、組換えDNA法を用いて、動員タンパク質に対する特異性を有するdAbをコードする、インフレームのDNAによりコードされた転写単位を作製することができる。
【0136】
(例2)
抗体フラグメントの作製
軽鎖のC末端にdAbを融合する場合、ヒトカッパ軽鎖定常領域(カッパ定常領域のKm3アロタイプを有する)、ペプチドリンカー、及びdAbをコードするDNAを合成し、SacI−PvuII制限フラグメントとして、ヒトガンマ−1 CH1定常領域をコードするDNAを含有するUCB−Celltech社の自社製発現ベクターpTTOD(Fab)(Popplewellら、Methods Mol.Biol.、2005年、第308巻、17〜30頁において説明されるpTTO−1の誘導体)内にクローニングした。これにより、共にtacプロモーターの制御下にある、リンカーを介してdAbに融合したヒト化軽鎖に対する遺伝子と、これに後続するヒト化重鎖Fabフラグメントに対する遺伝子とからなる、ジシストロニックの遺伝子配置がもたらされる。また、Gly4Serリンカーの上流にある固有のBspE1部位、又はAla−Proに富むリンカーの上流にあるAscI部位もコードされる。
【0137】
重鎖のC末端にdAbを融合する場合、ヒトCH1フラグメント(γ1アイソタイプの)をコードするDNAと、これに後続するリンカー及びdAbをコードする配列とを合成した。これを、ApaI−EcoRI制限フラグメントとして、ヒトガンマ−1 CH1定常領域をコードするDNAを含有するUCB−Celltech社の自社製発現ベクターpTTOD(Fab)(Popplewellら、上記において説明されるpTTO−1の誘導体)内にサブクローニングした。これにより、共にtacプロモーターの制御下にある、非コード遺伝子間配列を伴うヒト化軽鎖に対する遺伝子と、これに後続する、リンカーを介してdAbに融合した重鎖とからなる、ジシストロニックの遺伝子配置がもたらされる。その中における発現がIPTGの添加により誘導される大腸菌W3110株内に、組換え発現プラスミドを形質転換した。発現実験は、当初約0.5のOD(600nm)における200uM IPTGの添加を伴い小規模で(5mlの培養容量)実施し、誘導の2時間後に細胞を回収し、トリス/EDTA中30℃で一晩にわたり抽出した。透明な抽出物を、Biacoreによる親和性解析に用いた。有望な発現収量及び活性をもたらす構築物を発酵のために選択した。
【0138】
方法
以下の例では、dAbが融合する抗体鎖を、cカッパ軽鎖の場合はCK又はLC、重鎖定常ドメインのCH1ドメインの場合はCH1又はHCと表記する。
【0139】
大腸菌における発現のためのFabA−dAb融合プラスミドの構築
Fab−dAb融合タンパク質は、dAbL3又はdAbH4を、FabAの軽鎖又は重鎖の定常領域C末端に融合することにより構築した。dAbをcカッパ領域(配列番号75)に連結するには可撓性リンカー(SGGGGSE(配列番号1))又は剛性リンカー(G(APAPA)(配列番号34))を用い、dAbをCH1領域(配列番号76)に連結するにはリンカーDKTHTS(配列番号2)を用いた。自社製のpTTODベクターのFabA配列へのサブクローニングを可能とするフラグメントとして、定常領域−dAb融合体をコードするDNA配列を合成により作製した。
【0140】
軽鎖−dAb融合体は、リンカー(SGGGGSE(配列番号1))又は剛性リンカー(G(APAPA)(配列番号34))を介してdAbL3又はdAbH4に融合したC末端cカッパをコードする合成遺伝子のSacI−ApaIフラグメントを、FabAを発現することが可能なプラスミドの対応する部位にサブクローニングすることにより構築した。重鎖−dAb融合体は、DKTHTSリンカーを介してdAbL3又はdAbH4に融合したC末端CH1をコードする合成遺伝子のApaI−EcoRIフラグメントを、FabAを発現することが可能なプラスミドの対応する部位にサブクローニングすることにより構築した。
【0141】
Fab’Aは、IL−1ベータ結合抗体に由来し、その重鎖配列及び軽鎖配列は、図7に示す通り、それぞれ、配列番号74及び75に記載されている。軽鎖にdAbが結合されるFab’Aでは、重鎖(配列番号76)にdAbが結合されない場合でも、重鎖のヒンジをDKTHTSに変更した。
【0142】
FabAは、同じ軽鎖配列(配列番号75)と、鎖間システインで終結する短縮重鎖配列(配列番号77)とを含む。dAbL3及びdAbH4は、それぞれ、ヒト血清アルブミンに結合する軽鎖ドメイン抗体及び重鎖ドメイン抗体である。
【0143】
大腸菌における発現のためのFabA−didAb融合プラスミドの構築
軽鎖及び重鎖の両方にdAbL3又はdAbH4を有するFabA−didAbは、CH1−dAb融合体をコードするApaI−EcoRIフラグメントを、dAbが可撓性リンカーを介して軽鎖に融合する既存のFab−dAbプラスミドにサブクローニングすることにより構築した。
【0144】
哺乳類細胞における発現のためのFabB−dAb融合プラスミドの構築
FabB−dAbH1(CH1−GS×2)、FabB−dAbH2(CH1−GS×2)、FabB−dAbL1(CH1−GS×2)、FabB−dAbL2(CH1−GS×2)であるFabB−dAbはすべて、PCRにより構築され、次いで、HCMV−MIEプロモーター及びSV40EポリA配列の制御下において、哺乳類発現ベクターにクローニングされた。これらは、哺乳類細胞における発現のためのFabB軽鎖を含有する類似のベクターと対合された(下記を参照されたい)。
【0145】
FabBは、細胞表面の共刺激分子に結合する抗体に由来する。例3で説明する通り、dAbH1、dAbL1、dAbH2、及びdAbL2が得られた。
【0146】
哺乳類細胞における発現のためのFabB−dAb融合プラスミドの構築
FabB−dAbH1(CH1−GS×2)、FabB−dAbH2(CH1−GS×2)、FabB−dAbL1(CH1−GS×2)、FabB−dAbL2(CH1−GS×2)であるFabB−dAbはすべて、PCRにより構築され、次いで、HCMV−MIEプロモーター及びSV40EポリA配列の制御下において、哺乳類発現ベクターにクローニングされた。
【0147】
哺乳類細胞におけるFabB−dAb及びdidAbの発現
製造元の指示に従い、Invitrogen社製の293フェクチントランスフェクション試薬を用いて、HEK293細胞に重鎖及び軽鎖のプラスミドをトランスフェクトした。略述すると、室温で20分間にわたり、2μgの重鎖プラスミド+2μgの軽鎖プラスミドを、10μlの293フェクチン+340μlのOptimem培地と共にインキュベートした。次いで、混合物を、懸濁液中における5×10個のHEK293細胞に添加し、37℃で振とうしながら、4日間にわたりインキュベートした。
【0148】
Biacore
Fab−dAb構築物の相互作用に関する結合親和性パラメータ及び反応速度パラメータは、CM5センサーチップ及びHBS−EP(10mM HEPES(pH7.4)、150mM NaCl、3mM EDTA、0.05%v/vの界面活性剤P20)ランニングバッファーを用いるBiacore T100上で実施された表面プラズモン共鳴(SPR)により決定された。Fab−dAb試料は、ヒトF(ab’)特異的ヤギFab(Jackson ImmunoResearch社製、109−006−097)又は自社製の抗ヒトCH1モノクローナル抗体を用いて、センサーチップ表面に捕捉させた。共有結合による捕捉抗体の固定化は、標準的なアミン結合化学反応により達成された。
【0149】
各アッセイサイクルは、1分間の注入を用いてまずFab−dAbを捕捉するステップと、これに続く3分間にわたる抗原の注入からなる結合とからなり、その後、5分間にわたり解離をモニタリングした。各サイクルの後、1分間ずつ2回にわたる40mM HClの注入により捕捉表面を再生した後、30秒間にわたり5mM NaOHを注入した。用いられた流速は、捕捉の場合が10μl/分であり、結合段階及び解離段階の場合が30μl/分であり、再生の場合が10μl/分であった。
【0150】
反応速度アッセイの場合、抗原の滴定(ヒト血清アルブミンの場合、62.5nM〜2μM、IL−1βの場合、1.25〜40nMが典型的)を実施し、基準減算にはブランクのフローセルを用い、緩衝液のブランク注入を組入れて、測定器のノイズ及びドリフトを減算した。
【0151】
反応速度パラメータは、Biacore T100評価ソフトウェアを用いて、標準的な1:1の結合モデルに対する、結果として得られるセンサーグラムの同時的なグローバル近似により決定した。
【0152】
同時的な結合について調べるため、捕捉されたFab−dAb上に、個別の5μM HSA若しくは100nM IL−1β、又は5μM HSA及び100nM IL−1βの混合溶液を3分間にわたり注入した。
【0153】
大腸菌からのFab−dAbの精製
ペリプラズム抽出
ペリプラズム内にFab−dAbを含有する大腸菌ペレットを、100mMトリス/HCl、10mM EDTA pH7.4を用いて元の培養容量で再懸濁させた。次いで、これらの懸濁液を、4℃、250rpmで16時間にわたりインキュベートした。再懸濁したペレットを、4℃、10000×gで1時間にわたり遠心分離した。上清を取り出し、0.45μmにわたり濾過した。
【0154】
プロテインGによる捕捉
プロテインGクロマトグラフィーにより、濾過された上清からFab−dAbを捕捉した。略述すると、上清を、20分間の滞留時間により、20mMリン酸、150mM NaCl pH7.1中で平衡化されたGammabind Plusセファロース(GE Healthcare社製)カラムに適用した。20mMリン酸、150mM NaCl pH7.1によりカラムを洗浄し、0.1Mグリシン/HCl pH2.8により結合した物質を溶出させた。溶出ピークを回収し、1M酢酸ナトリウムで約pH5にpH調整した。pH調整された溶出物を濃縮し、10kのMWCO膜を用いて、50mMの酢酸ナトリウムpH4.5へとダイアフィルター処理した。
【0155】
イオン交換
NaCl溶出勾配を伴うpH4.5における陽イオン交換クロマトグラフィーにより、Fab−dAbをさらに精製した。略述すると、ダイアフィルター処理されたプロテインG溶出物を、50mM酢酸ナトリウムpH4.5中で平衡化されたSource15S(GE Healthcare社製)カラムに適用した。50mM酢酸ナトリウムpH4.5によりカラムを洗浄し、20カラム容量にわたり50mM酢酸ナトリウムpH4.5中0〜1M NaClの直線勾配により、結合した物質を溶出させた。全勾配にわたり、カラム容量画分の1/3を回収した。該画分をA280及びSDS−PAGEにより解析し、関連画分をプールした。
【0156】
ゲル濾過
必要な場合、ゲル濾過により、Fab−dAbをさらに精製した。略述すると、FabA−dAbL3(CK−SGSE)のプールされたイオン交換溶出物画分を、50mM酢酸ナトリウム、125mM NaCl pH5.0中で平衡化されたSuperdex200(GE Healthcare社製)カラムに適用し、50mM酢酸ナトリウム、125mM NaCl pH5.0のイソクラチック勾配により溶出させた。全勾配にわたり、カラム容量画分の1/120を回収した。該画分をA280及びSDS−PAGEにより解析し、関連画分をプールした。ゲル濾過を受けなかったFab−dAbの場合、プールされたイオン交換溶出物画分を濃縮し、10kのMWCO膜を用いて、50mM酢酸ナトリウム、125mMのNaCl pH5.0へとダイアフィルター処理した。
【0157】
SDS−PAGE
必要な場合は試料を水で希釈し、次いで、10μlに、10μLの2倍濃度試料ランニングバッファーを添加した。非還元試料の場合はこの時点で2μLの100mM NEMを添加し、還元試料の場合は2μLの10倍濃度還元剤を添加した。試料をボルテックスし、85℃で5分間にわたりインキュベートし、冷却して、12500rpmで30秒間にわたり遠心分離した。調製された試料を、4〜20%のアクリルアミントリス/グリシンSDSゲルに添加し、125Vで100分間にわたり泳動した。ゲルは、ウェスタンブロット法用にPVDF膜上に転写するか、又はクーマシーブルータンパク質色素により染色した。
【0158】
ウェスタンブロット法
ゲルは、12mMトリス、96mMグリシンpH8.3中のPVDF膜に、150mAで16時間にわたり転写された。PBS+0.1%Tween20(ブロッキングバッファー)中に2%のMarvel(商標)により、1時間にわたりPVDF膜をブロッキングした。
抗軽鎖抗体
ブロッキングバッファー中1/5000の希釈率のHRP−ウサギ抗ヒトカッパ軽鎖抗体で1時間
抗重鎖抗体
ブロッキングバッファー中1/7000の希釈率のマウス抗ヒト重鎖抗体で1時間。続いて、ブロッキングバッファー中1/2000の希釈率のHRP−ヤギ抗マウス抗体で1時間。
抗Hisタグ抗体
ブロッキングバッファー中1/1000の希釈率のウサギ抗His6抗体で1時間。続いて、ブロッキングバッファー中1/1000の希釈率のHRP−ヤギ抗ウサギIgG抗体で1時間。
【0159】
洗浄1回につき10分間ずつ6回にわたり、100ml PBS+0.1%Tween20によりすべてのブロットを洗浄した。ブロットは、Amersham社製Hyperfilmへの曝露前にECL試薬により1分間にわたり現像するか、又は金属増強DAB試薬により20〜30分間にわたり現像した後で、水洗浄した。
【0160】
高温逆相HPLC
80℃、2ml/分の流速、及び勾配18〜38%(B)の2.1mm C8 Poroshellカラム上で、4分間にわたり試料(2μg)を解析した。
A=HO中に0.1%のTFA
B=80:20のIPA:MeOH中に0.065%のTFA
検出は、214nmにおける吸収による。
【0161】
ELISA
サンドイッチELISAを用いて、Fab−dAbの収率を測定した。略述すると、抗CH1抗体によりFab−dAbを捕捉し、次いで、抗カッパ抗体−HRPにより明示した。
【0162】
(例3)
抗アルブミン抗体の作製
組換えchromapureヒト血清アルブミン(Jackson社から購入)により、1/2垂れ耳ウサギを免疫感作した。ウサギは、1回目の免疫感作が完全フロイントアジュバント中に100ugのHSAタンパク質であり、後続の免疫感作が不完全フロイント中に同量の同タンパク質である、3回の皮下免疫感作を受けた。WO04/051268で説明される方法を用いて、ヒト、マウス、及びラットの血清アルブミンに結合する抗体1及び2を単離した。逆転写PCRによるクローニングの後、抗体1及び2の重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)に対する遺伝子を単離し、配列決定した。
【0163】
軽鎖を移植した配列を、ウサギCカッパ定常領域をコードするDNAを含有する、ウサギ軽鎖の発現ベクターpVRbcK内にサブクローニングした。重鎖を移植した配列を、ウサギFab’重鎖定常領域をコードするDNAを含有する、ウサギ重鎖の発現ベクターpVRbHFab内にサブクローニングした。プラスミドをCHO細胞内に同時トランスフェクトし、アルブミンに対する結合及び親和性について、生成された抗体をスクリーニングした(表1)。製造元の指示書に従うLipofectamine(商標)2000(InVitrogen社製、型番11668)による手順を用い、CHO細胞のトランスフェクションを実施した。
【0164】
ヒト化ドメイン抗体dAbL1、dAbH1、dAbL2、及びdAbH2の作製
ヒトV領域アクセプターフレームワークと、フレームワーク領域内のドナー残基とを用いて、ヒト化VL領域及びVH領域を設計した。抗体1及び2の各々について、1つの移植VL領域(L1(配列番号53)及びL2(配列番号55))と、1つの移植VH領域(H1(配列番号52)及びH2(配列番号54))とを設計し、オリゴヌクレオチド構築及びPCR突然変異誘発により遺伝子を構築した。移植ドメイン抗体及びそれらのCDRを図5に示す。
【0165】
【表3】
【0166】
(例4)
哺乳類細胞において発現したFabB−dAbの解析
FabB−dAb構築物は、本方法で説明された通りに作製され、FabB−dAbを含有する、トランスフェクトされたHEK293細胞に由来する上清を、BIAcoreで直接に調べた。
【0167】
反応速度解析を実施して、FabB−dAb構築物とのHSAの相互反応を評価した。これらは、FabBのCH1のC末端に融合したdAbL1、dAbH2、又はdAbL3からなった(図6を参照されたい)。FabB−dAbL1はK=170nMで、K=392nMのFabB−dAbL3よりも高度の親和性をHSAに対して有する。FabB−dAbH2は、K=1074nMで、HSAに対する親和性が最も低いことが示された(表2を参照されたい)。
【表4】
【0168】
FabB−dAbタンパク質に対するSDS−PAGE及びウェスタンブロット法により、作製されたFabB−dAbが予測されたサイズであることが確認された。
【0169】
(例5)
哺乳類細胞において発現したFabB−didAbの解析
FabB−didAb構築物は、本方法で説明された通りに作製され、didAbを含有する、トランスフェクトされたHEK293細胞に由来する上清を、BIAcoreで直接に調べた。
【0170】
単一のdAbがFabの重鎖C末端及び軽鎖C末端の両方に融合したdidAb構築物を用いて、さらなる解析を実施した。didAbが天然の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインの対合に由来する構築物は、単一のdAb単独と比較して、親和性の顕著な改善を示した(表2及び3)。2つの同一のdAbL1からなるdidAb融合体は、単一のdAbL1についてみられる場合を上回る親和性の改善を示さなかった(データは示さない)。
【表5】
【0171】
FabB−didAbタンパク質に対するSDS−PAGEにより、FabB−didAbは発現が良好であり、予測されたサイズであることが確認された(図4aを参照されたい)。このSDS PAGEゲルは、細胞により発現した全タンパク質であることに注意されたい。
【0172】
(例6)
精製FabA−dAbの解析
大腸菌におけるFab’A−dAbL3(CK−SGSE)及びFab’A−dAbL3(CK−G[APAPA])であるFab−dAbの発現用のプラスミドは、本方法で説明される通りに構築した。該Fab−dAbは、本方法で説明される通り、大腸菌のペリプラズム内に発現させ、均一となるまで精製した。Fab−dAbの純度は、高温逆相HPLC、SDS−PAGE、及びウェスタンブロット法により評価した。Fab−dAbはまた、Biacoreにより、抗原結合についても評価された。
【0173】
高温逆相HPLC
本方法で説明される通りに実施された高温逆相HPLCにより、FabA−dAbL3(CK−SGSE)及びFabA−dAbL3(CK−G[APAPA])中に含有されるすべての分子種の定量的解析がなされた。存在する各分子種の百分率を表4に示す。
【表6】
【0174】
SDS−PAGE
本方法で説明される通り、非還元条件及び還元条件下においてFab−dAb試料を調製し、ゲル上で泳動した。ゲルはクーマシー染色された。Fab’A−dAbL3(CK−SGSE)及びFab’A−dAbL3(CK−G[APAPA])両方のFab−dAb試料のバンド形成プロファイル共に、高温逆相HPLCにより観察されたプロファイルによく対応する(図3)。
【0175】
ウェスタンブロット
本方法で説明される通り、Fab−dAb試料を非還元SDS−PAGEにかけた後、抗軽鎖抗体及び抗重鎖抗体によりウェスタンブロット解析を行った。これにより、dAbがFabの軽鎖上にあること、及びいずれの試料においても重鎖が改変されていないことが確認された(図4)。またこれにより、クーマシー染色、非還元のSDS PAGEにより検出されたすべてのバンドが、Fab−dAbに関連する生成物であることも示された。
【0176】
Biacore
本方法で説明されるSPRによる反応速度解析を用いて、Fab’A−dAbL3(CK−SGSE)及びFab’A−dAbL3(CK−G[APAPA])に対するヒト血清アルブミンの結合を評価した。表5の結果は、いずれの構築物共に、約1μMの同様の親和性(K)によりヒト血清アルブミンに結合可能であることを示す。
【表7】
【0177】
さらなる反応速度解析により、すべての融合構築物が、IL−1βに対する元のFabAの相互反応特性を保持し(表6)、反応速度パラメータ及び親和性パラメータにはわずかな差が見られるにすぎないことが示された。
【表8】
【0178】
各構築物をセンサーチップ表面に捕捉した後、個別の5μMヒト血清アルブミン若しくは100nM IL−1β、又は5μMヒト血清アルブミン及び100nM IL−1βの混合溶液を3分間にわたり注入することにより、ヒト血清アルブミン及びIL−1β抗原の両方に同時に結合する各構築物の潜在能力を評価した。各Fab−dAb構築物について、HSA/IL−1βの混合溶液に対して見られる応答は、個別の注入に対する応答の総和とほぼ同一であった(表7を参照されたい)。これにより、Fab−dAbには、IL−1β及びヒト血清アルブミンの両方に対して同時に結合することが可能であり、IL−1β又はヒト血清アルブミンに対する結合は、他方の相互作用を阻害しないことが示される。元のFabAは、IL−1βだけに結合し、ヒト血清アルブミンにはほとんど結合しなかった。
【表9】
【0179】
(例7)
FabA didAb
大腸菌におけるFabA−didAbの発現
C末端のHISタグで終結するFabA−dAb融合体及びFabA−didAb融合体を、大腸菌内において発現させた。ペリプラズム抽出の後、C末端His6タグによりdAb融合タンパク質を精製した。抗CH1抗体及び抗cカッパ抗体を伴う非還元ゲルに対するウェスタンブロット法により、Fab発現を解析した。FabA−dAb及びFabA−didAbは全長タンパク質として発現し、いずれの抗体検出試薬にも反応することが示された。
【0180】
大腸菌において発現したFabA−didAbの解析
さらなる解析を実施して、1つ又は複数のdAbが融合したFabA構築物に対するHSAの結合を特徴づけた。dAbL3又はdAbH4がFabAの軽鎖又は重鎖に融合する各種の構築物に対して、結合アッセイを実施した(構築物の詳細及び結合データの概要については、表8を参照されたい)。軽鎖又は重鎖上にdAbH4だけを保有する構築物は、比較的低度の親和性(それぞれ、約9μM及び3μM)でHSAに結合することがわかったが、単一の融合体(軽鎖上又は重鎖上における)としてか、又は対向鎖上における第2のdAb(dAbL3又はdAbH4)とパートナーを形成してdAbL3を保有する構築物については、より高い親和性の結合が観察された。
【表10】
図5
図6-1】
図6-2】
図7
図1
図2
図3
図4
図4a
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]