(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記支持金具が、前記樹脂成型品に固定された板状の前記基部と、その基部から前記樹脂成型品の外方に突出したアームを備え、前記アームに前記弾性部が設けられている請求項1に記載のリアクトル。
前記基部に対して複数の前記アームが設けられ、これら複数のアームの先端を連結部により接続し、その連結部に前記支持金具と前記収容部材との前記固定部材の挿入孔を設けた請求項2に記載のリアクトル。
前記支持金具の基部と前記連結部とをリアクトル本体の水平断面に対して平行な板状部材とし、前記樹脂成型品に固定した支持金具の基部に対して、前記連結部をリアクトル本体の上下方向を基準として下方に位置させた請求項3に記載のリアクトル。
前記弾性部が、前記樹脂成型品の外方に向かって突出した第1の湾曲部と、前記樹脂成型品の内方に向かって凹んだ第2の湾曲部とを連続して形成した略S字形である請求項1〜請求項4の何れかに記載のリアクトル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この種のリアクトルでは、通電時におけるコアの発熱により発生するリアクトル本体とケース間には線膨張差が存在することから、支持金具の一部に振動や熱膨張を吸収する弾性部を設ける必要がある。しかし、前記の従来技術では、ケースとリアクトルのデッドスペースを有効利用して、リアクトル本体の対角にそれぞれ支持金具を設けていたため、逆にそのことが制限になって、大型の支持金具を使用することができなかった。その結果、線膨張差を吸収するための弾性部の大きさに制限が生じ、効果的に線膨張差を吸収できなかった。
【0007】
また、リアクトル本体をケース内部に収容する場合、両者の上下方向の寸法誤差(平面度差)を吸収することが望ましいが、従来技術では、支持金具の大きさに制限があることから、リアクトル本体の長手方向に現れる線膨張差を吸収するのが精一杯で、平面度差を吸収できるような弾性部を設けることができなかった。
【0008】
更に、小型の支持金具は、その口元部と支持金具を埋設している樹脂端部との接触部分が小さいため、樹脂の端部に応力が集中し、樹脂のひび割れが発生するおそれもあった。
【0009】
本発明は、前記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものである。本発明の目的は、リアクトル本体とケースとの線膨張差及び平面度差を吸収することができるリアクトルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明のリアクトルは、次のような構成を有することを特徴とする。
(a) コアとその周囲に装着されたコイルとを有するリアクトル本体。
(b) 前記リアクトル本体を収容する収容部材。
(c) 前記リアクトル本体の少なくとも一部と一体化した樹脂成型品。
(d) 前記リアクトル本体設けられ、その基部が前記樹脂成型品に固定されており、その先端部が前記樹脂成型品から外方に突出した支持金具。
(e) 前記支持金具に設けられ、前記リアクトル本体の線膨張差方向及び平面度差方向に変形する弾性部。
(f) 前記支持金具と前記収容部材を固定する固定部材。
【0011】
(2)前記のような支持金具として、前記樹脂成型品に固定された板状の前記基部と、その基部から前記樹脂成型品の外方に突出したアームを有するものを使用して、前記アームに前記弾性部を設けると良い。
【0012】
(3)前記弾性部が、前記樹脂成型品の外方に向かって突出した第1の湾曲部と、前記樹脂成型品の内方に向かって凹んだ第2の湾曲部とを連続して形成した略S字形であると良い。
【0013】
(4)前記基部に対して複数のアームが設けられ、これら複数のアームの先端を連結部により接続し、その連結部に前記支持金具と前記収容部材との固定部材の挿入孔を設けると良い。
【0014】
(5)前記支持金具の基部と前記連結部とをリアクトル本体の水平断面に対して平行な板状部材とし、前記樹脂成型品内に固定した支持金具の基部に対して、前記連結部をリアクトル本体の上下方向を基準として下方に位置させると良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、一カ所の支持金具によりリアクトル本体とケースとの線膨張差及び平面度差を吸収することができると共に、支持金具の口元部の形状も、樹脂成型品に応力が集中しないものとすることが可能になり、樹脂成型品のひび割れ防止も可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[1.第1実施形態]
[1.1 構成]
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照して説明する。
図1及び
図2に示すように、本実施形態のリアクトルは、上面が開口したアルミニウムなどの金属製のケース2と、その内部に収容されたリアクトル本体1と、ケース2とリアクトル本体1との間に注入固化された充填材3とを有する。
【0018】
(1)リアクトル本体
リアクトル本体1は、
図3に示す通り、2つのU字形コア4a,4bと2つのT字形コア5a,5bを組み合わせて成るθ状の環状コアと、環状コアの脚部に巻回された2つの連結コイル6a,6bとを備える。リアクトル本体1は、2つの長辺と2つの短辺とを有する角丸長方形(角が丸くなっている長方形)をしており、ケース2もそれに合わせて上面が開口した直方体をしている。
【0019】
(2)コア
図4に示すとおり、環状コアは、U字形コア4a,4bの両端部とT字形コア5a,5bの左右の端部を突き合わせ、その間にスペーサ8を配置して接着すると共に、対向するT字形コア5a,5bの中央突起部7a,7b間に所定のギャップ10が形成されるように組み合わせる。これにより、環状コアには、対向する一対のヨーク部と、ヨーク部と平行に設けられた中央の中脚と、中脚の両側にそれぞれ設けられた一対のコイル6a,6b装着用の脚部(以下、外脚という)が形成されている。本実施形態のU字形コア4a,4b及びT字形コア5a,5bとしてはダストコアを使用するが、その他フェライトコアやケイ素鋼を積層した積層コアを単独あるいは組み合わせて用いることができる。また、スペーサ8を用いることなく、U字形コア4a,4bの両端部とT字形コア5a,5bの左右の端部を直接突き合わせても良い。ギャップ10も、エアギャップでも、スペーサを設けたギャップでも良い。
【0020】
(3)コイル
図1及び
図2に示すように、2つの連結コイル6a,6bは、U字形コア4a,4bの外脚を構成する部分に、中脚を挟んでその両側にそれぞれ装着されている。各連結コイル6a,6bは、
図13に示すように、1本の導体を使用して2つのコイル6a−1,6a−2または6b−1,6b−2を形成したもので、環状コアに装着した状態では、1本の導体が一方の外脚の外周に巻回されて第1のコイル6a−1,6b−1を形成し、同じ導体が反対側の外脚に巻回されて第2のコイル6a−2,6b−2を形成している。そのため、
図1及び
図2に示すように、1つのコイル6a,6bの巻き始めの端部11と巻き終わりの端部12が、中脚の両側に一つずつ設けられている。コイル6a,6bの巻き始めの端部11と巻き終わりの端部12には、それぞれバスバーが溶接され、そのバスバーの端部にリアクトルの外部配線が接続される。
図13に示すように、2つのコイル6a−1,6a−2または6b−1,6b−2のコイルの連結部63は、コイルの巻軸方向と垂直な面において、平角線が同一平面上で連結されている。
【0021】
コイル6a,6bとしては、各種の導体を巻回したものを使用することができるが、本実施形態では、平角線の導体をエッジワイズ巻きしたエッジワイズコイルを使用する。各コイル6a,6bの巻き始めと巻き終わりの端部11,12は、コイル6aのように中脚側に設けても良いし、コイル6bのようにヨーク部側に設けても良いものであって、2つのコイル6a,6bの両方を中脚側かヨーク部側のいずれかに設けても良い。
【0022】
2つのコイル6a,6bは、そのコイル6a,6bから発生する直流磁束が互いに打ち消される方向で巻回されている。2つのコイル6a,6bから発生する直流磁束が互いに打ち消される方向で巻回するため、本実施形態では、コイルに通電する電流の方向を同一とし、コイルの巻回方向を逆にしたが、コイルの巻回方向は同一として、通電する電流の方向を反対にしても良い。各コイル6a,6bは、樹脂成型品に埋設されたU字形コア4a,4bとT字形コア5a,5bをθ状に接着する際に、予め筒状に巻回したコイル6a,6bを外脚に嵌め込むことにより、コアに巻回されている。
【0023】
2つのコイル6a,6bから発生する直流磁束が互いに打ち消される方向で巻回され、2つのコイル6a,6bは、リアクトル本体1の外周における磁束密度が、リアクトル本体1の長辺方向において、リアクトル本体1を挟んで位置する2つの空間において低くなるように、環状コアに装着されている。すなわち、環状コアには中脚が形成されていることから、リアクトルの通電時には、環状コアの短辺であるヨーク部の周辺において磁束密度が低くなっている。
【0024】
(4)樹脂成型品
U字形コア4a,4bとT字形コア5a,5bは、それぞれ専用の樹脂成型品内部に埋設されている。各コアは、それぞれの樹脂成型品の金型内にセットされた状態で、金型中に樹脂を注入・固化することにより、樹脂成型品と一体的に形成されている。樹脂成型品は、各コアとコイル6a,6bを絶縁する部材であると共に、リアクトル本体1をケース2に固定するための支持部材を固定した部材でもある。樹脂成型品の主材料としては、例えば、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、BMC(バルクモールディングコンパウンド)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PBT(ポリブチレンテレフタラート)等を用いることができる。
【0025】
図6に示すとおり、U字形コア用の樹脂成型品13a,13bは、U字形コア4a,4bの左右の脚部を覆うコイル装着部15と、U字形コア4a,4bのヨーク部を覆うヨーク被覆部16とを備える。コイル装着部15におけるU字形コア4a,4bとT字形コア5a,5bとの接合面に相当する部分にはU字形コア4a,4bの端面が露出する開口部が設けられ、この開口部の周囲にはT字形コア用の樹脂成型品14a,14bの端部を挿入するためのリブ17が設けられている。
【0026】
ヨーク被覆部16の上部におけるリアクトル本体1の幅方向中央部には、リアクトル本体1をケース2に固定するための板状の支持金具18の基部が固定されている。板状の支持金具18の基部は、U字形コア用の樹脂成型品13a,13bの成型加工時に、U字形コア4a,4bと共に金型内にセットされ、モールド成型される。
【0027】
図7に示すとおり、T字形コア用の樹脂成型品14a,14bは、T字形コア5a,5bの脚部を覆うコイル装着部19と、T字形コア5a,5bの中央突起部7a,7bを覆う中脚被覆部20とを備える。コイル装着部19におけるU字形コア4a,4b側の端面は、内部のT字形コア5a,5bの端面が露出する開口部になっている。この開口部の周囲には、U字形コア用の樹脂成型品13a,13bに設けたリブ17が嵌合する凹部21が形成されている。
【0028】
T字形コア5a,5bの中央突起部7a,7bの端面は、ギャップ10を介してT字形コア5a,5bの中央突起部7a,7bの端面と対向するため、中脚被覆部20のこの部分はT字形コア5a,5bの端面全体を被覆している。ギャップの代わりにスペーサを用いてギャップを形成したり、全くギャップを形成しない場合には、中脚被覆部20に開口部を設けて中央突起部7a,7bの端面を露出させても良い。
【0029】
T字形コア用の樹脂成型品14a,14bの中脚被覆部20の反対側には、リアクトル本体1をケース2に固定する際に、固定部材であるボルト23を挿入する筒状のカラー22が埋設されている。この筒状のカラー22は、U字形コア用の樹脂成型品13a,13bの成型加工時に、U字形コア4a,4bと共に金型内にセットされ、モールド成型される。
【0030】
図6及び
図7に示すとおり、U字形コア用の樹脂成型品13a,13bとT字形コア用の樹脂成型品14a,14bは、各コアの突き合わせ部分を除き各コアの周囲を被覆するものであるが、各コアや支持金具18を金型内に位置決めするための治具を使用する必要があることから、治具に相当する部分には樹脂が存在しない開口部が形成され、その部分に各コアの表面が露出している。
【0031】
図11に示すとおり、T字形コア用の樹脂成型品14a,14bの底部には、位置決め用の突起30a,30bが設けられている。この突起30a,30bは、樹脂成型品14a,14bにおけるコイル装着部19を避けた部分に設けられ、コイル6a,6bをコアに装着した状態でも、リアクトル本体1の底部に突出している。この突起30a,30bは、リアクトル本体1をケース2内に収容する場合、ケース2の底部に設けられた凹部(図示せず)に嵌め込まれ、リアクトル本体1とケース2との位置決めを行う。
【0032】
(5)支持金具
図1に示すとおり、リアクトル本体1は、各樹脂成型品に一体化された支持金具18と、ボルト23などの固定部材によってケース2に固定されている。第1の固定部Aは、リアクトル本体1の対向する2辺、本実施形態では、リアクトル本体1の短辺(ヨーク部)にそれぞれ設けられて、リアクトル本体1とケース2とに線膨張差による一定の力が加わった場合に、両者の相対位置が変化できるように可動的に固定している。第2の固定部Bは、2つの第1の固定部Aの間、本実施形態では、リアクトル本体1の対向する各長辺(外脚)の中央部近傍に設けられて、リアクトル本体1とケース2とをその相対位置が変化しないように定位置で固定している。
【0033】
第2の固定部Bの位置は、あまり片側によると一方の第1の固定部Aのみが線膨張差を吸収することになるので、中央でなくても良いが、ある程度は中央に近い部分に設けることが望ましい。具体的には、第2の固定部の位置は、複数の第1の固定部が分担する線膨張差の負担割合に応じて決定される所定の位置に設ける。例えば、2つの第1の固定部Aがそれぞれ吸収することのできる線膨張差のバランス、例えば7:3とか6:4などによって決まる位置とする。
【0034】
図8は、第1の固定部Aにおいて、可動側の支持金具18と固定部材であるボルト23により、リアクトル本体1をケース2に固定する状態を示す。
図12に示すように、可動側の支持金具18は、リアクトル本体1の短辺の中央に設けられ、リアクトル本体1の幅方向に延びる基部と、その基部からケース2側に突出した2つのアーム24a,24bを備えている。基部は樹脂成型品に固定されており、その先端部が樹脂成型品からケース2側に向かって外方に突出している。すなわち、本実施形態において、支持金具の基部は、リアクトル本体1からの支持金具18の突出方向(リアクトル本体の外方)に対して、直交方向に伸びている。
【0035】
図8及び
図9に示すように、2つのアーム24a,24bには、リアクトル本体1の外方に向かって突出した第1の湾曲部181と、リアクトル本体1の長手方向に内方に向かって凹んだ第2の湾曲部182とを連続して形成した略S字形の弾性部が設けられている。2つのアーム24a,24bの先端は板状の連結部25により接続され、その連結部25に可動側の支持金具18とケース2との固定部材の挿入孔27が設けられている。可動側の支持金具18の基部と連結部25は、リアクトル本体1の水平断面に対して平行な板状部材であり、U字形コア用の樹脂成型品13a,13bに固定した可動側の支持金具18の基部に対して、連結部25はリアクトル本体1の上下方向を基準として下方に位置している。これにより、可動側の支持金具18のS字状の弾性部は、ケース2の上縁に設けられたねじ穴26の位置に合わせて、縦型に配置される。ケース2とリアクトル本体1との位置関係によっては、連結部25をリアクトル本体1の上下方向を基準として上方に位置させることも可能である。
【0036】
図7及び
図10に示すように、第2の固定部Bは、T字形コア用の樹脂成型品14a,14bに設けられた挿入孔と、この挿入孔内に埋設された筒状のカラー22と、この筒状のカラー22の内部に挿入されるボルト23を有する。このボルト23をケース2の上縁に設けられたねじ穴26に締結することにより、リアクトル本体1がケース2と相対的に移動することなく固定される。
【0037】
図12に示すとおり、第2の固定部Bは、リアクトル本体1の長辺の中央部に設けられ、第1の固定部Aはリアクトル本体1の短辺の中央に設けられている。そのため、リアクトル本体1をケース2に定位置で固定する第2の固定部Bから、その両側に設けられて、リアクトル本体1をケース2に可動的に固定する第1の固定部Aまでの距離が等しい。その結果、本実施形態では、第2の固定部Bを中心として、両側の第1の固定部Aに対してリアクトル本体1とケース2の線膨張差が等しく現れる。
【0038】
(6)収容部材
リアクトル本体1の収容部材であるケース2は、
図1及び
図2に示す通り、上面に開口を有する箱型に形成されており、リアクトル本体1の大きさに合わせた寸法の収容空間を有する。ケース2の上部には、リアクトル本体1をケース2に固定するためのボルト23を締結するためのねじ穴26が設けられている。ケース2は熱伝導性の高い金属で形成され、リアクトル本体1を収容するとともにリアクトル本体1から発生する熱の放熱部材としての機能を有する。熱伝導性の高い金属としては、アルミニウムやマグネシウムを用いることができる。また、必ずしも金属である必要はなく、熱伝導性に優れた樹脂や、樹脂の一部に金属製の放熱板を埋設したものを使用することも可能である。
【0039】
(7)充填材
リアクトル本体1とケース2との隙間には、充填材3が充填、固化されている。充填材3としては、固化しても多少の弾力性を有する樹脂を使用することが望ましい。例えば、酸化アルミニウムや窒化アルミニウム等の放熱用の材料を混入したエポキシ系、ポリアクリレート系、シリコーン系の樹脂製のポッティング剤をその硬化度を調整することで使用できる。
【0040】
[1.2 製造方法]
前記のような構成を有する本実施形態のリアクトルは次のようにして製造する。
まず、樹脂成型品の金型内にU字形コア4a,4bまたはT字形コア5a,5bと、その支持金具18やカラー22をセットし、その後、金型内に樹脂を注入し、固化することで、U字形コア用の樹脂成型品13a,13bとT字形コア用の樹脂成型品14a,14bを作製する。
【0041】
次いで、
図5に示すように、それぞれ樹脂成型品内部にコアと支持金具18やカラー22が一体化された2つのU字形コア4a,4bとT字形コア5a,5bを、その外脚をコイル6a,6bの内側に挿入しながら、全体をθ状に接合することより、リアクトル本体1を作製する。その場合、樹脂成型品から露出している各コアの端面の間にスペーサ8を配設してこれらを接着剤により固定すると共に、T字形コア用の樹脂成型品14a,14bの端部に設けた凹部21の外周に、U字形コア用の樹脂成型品13a,13bの端部に設けたリブ17を嵌め込む。これにより、各樹脂成型品及びコアの正確な位置決めが可能になる。
【0042】
このようにして作製されたリアクトル本体1を、T字形コア用の樹脂成型品14a,14bに設けたカラー22内にボルト23を挿入し、ケース2のねじ穴26に締結することで、リアクトル本体1の中央部分をケース2に対して移動することがないように固定する。また、U字形コア用の樹脂成型品13a,13bに設けた弾性部を有する可動側の支持金具18に設けた挿入孔27にボルト23を挿入し、そのボルト23をケース2のねじ穴26に締結することで、リアクトル本体1の両端部をケース2に対して可動的に固定する。この場合、可動的とは通常のリアクトルの使用時においては、リアクトル本体1とケース2は移動することなく固定されているが、通電時の発熱などによりリアクトル本体1とケース2との間に線膨張差が生じた場合には、ケース2に対してリアクトル本体1が移動して、線膨張差を吸収できる程度の強さで固定されていることを言う。
【0043】
また、リアクトル本体1とケース2を固定する場合に、両者間に製造上の公差などにより、リアクトル本体1中央部と両端部とで平面度差があっても、第1の固定部Aの支持金具18に設けたS字状の弾性部が、リアクトル本体1の長手方向と上下方向の2つの方向に変形することで、平面度差を吸収することができる。
【0044】
このようにしてリアクトル本体1とケース2とを固定した後は、両者の隙間に充填材3を注入し、固化させる。これにより、リアクトル本体1をケース2に対してより強固に固定することが可能になると共に、両者の隙間に塵埃が入り込むことを防止することができると共に、リアクトル本体1の絶縁性も確保できる。更に、充填材3として熱伝導性の高いフィラーを混合したものを使用した場合には、リアクトル本体1の発熱をケース2に対して効率良く放熱することができる。
【0045】
[1.3 効果]
上記のような構成を有する本実施形態のリアクトルの効果は、以下のとおりである。
【0046】
(1)支持金具18を、リアクトル本体1の短辺の中央に設け、その基部を樹脂成型品に固定すると共に、その先端部を樹脂成型品から外方に突出させたので、支持金具18をケース2とリアクトル本体1のデッドスペースに配置していたような制限がなくなる。その結果、支持金具18の形状や寸法の自由度が向上し、一カ所の支持金具18により、リアクトル本体1とケース2との線膨張差及び平面度差を吸収することができる。また、支持金具18における樹脂成型品表面との境界部分(支持金具18の口元部)の形状も、樹脂成型品に応力が集中しない幅の広い板状のものとすることが可能になり、樹脂成型品のひび割れ防止も可能となる。
【0047】
(2)支持金具18として、リアクトル本体1の幅方向に延びる板状の基部と、その基部から突出した複数のアーム24a,24bを有するものを使用して、各アーム24a,24bに弾性部を設けている。このようにすると、樹脂成型品と接触する口元部を大きくして応力集中を防止できると共に、弾性部は容易に変形して線膨張差及び平面度差を効果的に吸収できる。
【0048】
(3)弾性部が、リアクトル本体1の外方に向かって突出した第1の湾曲部181と、リアクトル本体1の内方に向かって凹んだ第2の湾曲部182とを連続して形成した略S字形である。そのため、1部材でリアクトル本体1の長手方向と上下方向の変位を吸収することが可能になり、少ない部品点数で各方向の変位を吸収できる。
【0049】
(4)アーム24a,24bの先端を連結部25により接続し、その連結部25に支持金具18とケース2との固定部材の挿入孔27を設けている。その結果、アーム24a,24b部分の弾性部により大きな変形量を確保しつつ、固定部材の挿入孔27をリアクトル本体1の短辺の中心に配置することができ、一カ所の固定部材でリアクトル本体1とケース2とを固定することができ、作業性が向上する。
【0050】
(5)支持金具18の基部と連結部25とをリアクトル本体1の水平断面に対して平行な板状部材とし、樹脂成型品に固定した支持金具18の基部に対して、連結部25をリアクトル本体1の上下方向を基準として下方に位置させている。その結果、支持金具18の基部と連結部25の間に縦方向のS字形アーム24a,24bを配置することが可能となり、リアクトル本体1及びケース2の長手方向の寸法を増大させることなく、大きな変形量を確保できる。
【0051】
(6)リアクトル本体1とケース2とを固定するためのすべての支持金具18に本発明を適用する必要はなく、一部の支持金具18については、リアクトル本体1とケース2とをその相対位置が変化することがないように定位置で固定し、残余の支持金具18にのみ本発明を適用しても良い。本実施形態のように、リアクトル本体1の長手方向両端の支持金具18をいずれも線膨張差及び平面度差を吸収できるようにすれば、大きな線膨張差及び/または平面度差でも効果的に吸収できる。
【0052】
[2.他の実施形態]
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではない。以上の実施形態は例として提示したものであって、その他の様々な形態で実施されることが可能である。発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲、要旨、その均等の範囲に含まれる。以下、その一例を示す。
【0053】
(1)図示の実施形態は、リアクトル本体1の収容部材としてケース2を使用したが、必ずしもケースに固定する場合にのみ限定されるものではない。板状あるいはブロック状の収容部材にリアクトル本体を固定する場合にも適用することができる。この場合、第1及び第2の固定部Bに使用する支持金具18としては、断面クランク形や断面L字形の部材を使用することもできる。本実施形態における収容部材であるケース2はアルミニウムを使用したが、その材質は限定されない。線膨張率が高く、発熱時においてリアクトル本体1との間で大きな線膨張差が発生する材質の収容部材に対して使用すると特に高い効果を発揮する。ただし、アルミニウムよりも線膨張率の低い酸化マグネシウムやステンレス鋼の収容部材であっても効果がある。
【0054】
(2)図示の実施形態は、リアクトル本体を短辺と長辺を有する角丸長方形としたが、正方形、円形、楕円形など他の形状のリアクトル本体にも適用できる。
【0055】
(3)上記実施形態では、T字形の脚部コアを備えたθ字状の環状コアを使用したが、コアの形状はこれに限らない、たとえば、2つのU字形やJ字形の分割コアを組み合わせた角丸四角形の環状コアや、2つのE字形の分割コアを備えたθ字状の環状コアにも適用可能である。2つのT字形や2つのE字形コアの代わりに、一方をE字形状とし、もう一方をI字形状とし、この2つのコアを環状にする構成としても良い。T字形コアの代わりに、Y字形コアを使用することもでき、その場合、2つのY字形コアの中央突起部を対向させて、その先端の間に前記ギャップを設ける。T字形コアを1部材から構成する代わりに、2つのL字形コアを組み合わせてT字形コアを構成しても良い。U字形コアとT字形コアとの間にI字形コアを配置することで、外脚を構成することも可能である。環状コアの中脚は1本に限らず、2本以上の中脚を有する環状コアについても、適用できる。その場合、各外脚に複数のT字形コアを配置することで、複数の中脚を構成することができる。また、2つの櫛歯状の分割コアを対向させて配置することで、複数の中脚を有す環状コアを形成しても良い。環状コアを構成する複数の脚部コアとその両端部を接続するヨーク部コアは、脚部コアの両端がどのような形でもヨーク部コアで接続されていれば良いので、脚部の端面をヨーク部で接続する構成も、脚部の端部内面をヨーク部で接続する構成も採用可能である。
【0056】
(4)コアに巻回するコイル6a,6bの形状も適宜変更可能であり、θ状のコアの左右の脚部にそれぞれコイル6a,6bを巻回するものや、θ状のコアのヨーク部分にコイル6a,6bを巻回しても良い。円形あるいは角形のループ状のコアを使用した場合には、左右の脚部のそれぞれにコイル6a,6bを巻回しても良いし、2つの脚部の一方のみにコイルを巻回し、他方はコイルを装着しなくても良い。また、コイルをコアに装着する方法としては、樹脂成型品に線材を巻回してコイルとしても良いし、予め巻回したコイルを樹脂成型品にはめ込んでも良い。
【0057】
(5)樹脂成型品としては、内部にコアをインサート成型するものの他に、中空になった筒状あるいは箱状の樹脂成型品のみを予め作製し、その内部にコアを嵌合するものや接着剤で固定するものも使用できる。また、分割コアの接合後において、環状になったコアを樹脂成型品内部にインサート成型したり、組み込むこともできる。樹脂成型品の内部にコアを加えてコイルを埋設あるいは嵌め込みによって固定し、その樹脂成型品に支持金具を固定しても良い。コイルのみの樹脂成型品に支持金具を固定しても良い。
【0058】
(6)支持金具としては、複数のアーム24a,24bを有するもの以外に、全体が幅の広い1枚の板状部材から構成されたものを使用できる。弾性部の形状は、図示のような縦型のS字状に限らず、長手方向に余裕がある場合には、S字状の弾性部を水平に配置することもできる。また、線膨張差と平面度差を吸収することが可能であれば、S字状に限定されるものでなく、線膨張差と平面度差のいずれかを平らな板状の部分が湾曲することで吸収し、他方をU字状やV字状などの湾曲部あるいは屈曲部の変形により吸収するものを使用しても良い。アーム24a,24bの幅を調整したり、アーム24a,24bの間の開口部の寸法を変化させることで、弾性力を適宜調整することができる。
【0059】
(7)支持金具18の材質は、アルミニウムやステンレス鋼などに限定されず、他の弾性材料を使用できる。支持金具18はすべてが金属から構成される必要はなく、その一部を樹脂によって構成することも可能である。支持金具18は、その基部を樹脂成型品に埋設して固定するものに限定されない。支持金具18の基部を樹脂成型品の表面にボルト締め、接着剤などの手段で固定することもできる。支持金具18の基部を平面方向に埋設する以外に、支持金具18の基部を垂直に屈曲させて樹脂成型品内部に埋設することもできる。また、支持金具18の基部を樹脂成型品内に埋設して固定する場合にも、支持金具18の基部が完全に埋設されている必要はなく、支持金具18の基部とアーム24a,24bの連結部分が樹脂成型品から飛び出ていても良い。これにより、応力が分散されて、支持金具18の基部に作用する応力のピークを抑えることができ、基部に発生する樹脂成型品のクラックを防止することができる。
【0060】
(8)支持金具18の形状は、線膨張差や平面度差のいずれかの吸収量が少ない場合には、吸収量の大きい部分を湾曲部あるいは屈曲部の変形により、吸収量の小さな部分はこれら湾曲部あるいは屈曲部と、支持金具18の基部あるいは先端部の接続部分の変形により吸収しても良い。すなわち、必ずしも、S字状のような複数の湾曲部の組み合わせでなくても良い。また、S字状でなく、クランク状やZ字状としても良い。
【0061】
(9)固定部材の挿入孔は、1箇所に限らず複数設けることもできる。固定部材としては、ボルトなどのねじ止めに限定されず、溶着、接着、リベット、ピンの圧入、固定部材に設けた突起をケースの孔に圧入するなど、種々の構成を採用できる。
【0062】
(10)第1の固定部Aは、リアクトル本体の一辺に1つだけとは限らず、一辺に複数設けることもできる。その場合、第2の固定部Bをリアクトル本体の片側の辺に寄せて1箇所設け、リアクトル本体の反対側の辺に複数の第1の固定部Aを設けることで、リアクトル本体の反対側の辺だけで線膨張差や平面度差を吸収することができる。
【0063】
(11)第2の固定部Bは、必ずしも2つの第1の固定部Aの中央部に設ける必要はなく、可動支持部材の弾性部が吸収する線膨張差に合わせて中央部からずれた位置に設けることができる。例えば、第1の固定部Aに使用する支持金具18の形状や肉厚が異なる場合には、各支持金具18の弾性部が吸収する線膨張差に応じて、第2の固定部Bの位置を変更すると良い。また、同一の支持金具18であっても、リアクトル本体やケースの形状に応じて、第2の固定部Bの位置を中央部からずらせても良い。その場合でも、リアクトル本体の一端に第1の固定部を設け、他端の第2の固定部Bを設ける場合に比較して、両側の第1の固定部Aが分担して線膨張差を吸収するので、第1の固定部Aの小型化が可能となる。
【0064】
(12)第2の固定部Bにより、リアクトル本体1をケース2に固定するには、樹脂成型品内部に埋設したカラー22以外に、弾性部を持たない板状の支持金具18の基部を樹脂成型品に固定し、樹脂成型品から突出した部分に固定部材の挿入孔や固定部材との係合部を設けたものを使用できる。また、カラー22を使用する代わりに、樹脂成型品に単なる挿入孔のみを設け、そこにボルトを挿入しても良い。