(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6106676
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】レーザ切断システム及びレーザ切断方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/361 20140101AFI20170327BHJP
B23K 26/38 20140101ALI20170327BHJP
B23K 26/16 20060101ALI20170327BHJP
A61C 11/00 20060101ALI20170327BHJP
A61C 9/00 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
B23K26/361
B23K26/38 Z
B23K26/16
A61C11/00 Z
A61C9/00 Z
【請求項の数】37
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-531325(P2014-531325)
(86)(22)【出願日】2012年9月18日
(65)【公表番号】特表2014-531320(P2014-531320A)
(43)【公表日】2014年11月27日
(86)【国際出願番号】IB2012001812
(87)【国際公開番号】WO2013041936
(87)【国際公開日】20130328
【審査請求日】2015年9月11日
(31)【優先権主張番号】13/239,173
(32)【優先日】2011年9月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501214845
【氏名又は名称】アライン テクノロジー, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】カルプ,ジェイムズ
【審査官】
青木 正博
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−018205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00−26/70
A61C 9/00
A61C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ発生コンポーネントと、
光学コンポーネントと、
支持物を、前記支持物上に配置された部品とともに保持する固定具と、
制御機構と、を備え、
前記制御機構は、前記支持物のうち前記部品に隣接するいずれかの部分の完全性を維持しながら前記部品厚さを切断しきるように、前記部品に照射されるレーザエネルギと前記部品材料厚さとの比が切断経路に沿う各点において所定の許容範囲内に維持されるように、前記支持物の物性及び前記部品の物性に基づいて、前記レーザ発生コンポーネント、前記光学コンポーネント、及び前記固定具のうちの少なくとも1つを調節する、
レーザ切断システム。
【請求項2】
前記制御機構は、前記固定具の速度を調節する固定具制御機構を含み、前記制御機構は、レーザビームが前記部品を切断する際の切断経路に沿う複数の点における前記部品材料厚さに関するデータを受け取り、前記厚さデータに基づいて、前記レーザビームの通過後の前記部品の移動速度を、前記部品に照射される前記レーザエネルギと前記部品材料厚さとの前記比が前記所定の許容範囲内に維持されるように調節する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記制御機構は、レーザパワー調節制御機構を含み、前記レーザパワー調節制御機構は、前記レーザビームが前記部品を切断する際の前記切断経路に沿う複数の点における前記部品材料厚さに関するデータを受け取り、前記厚さデータに基づいて、前記レーザビームのパワーを、前記部品に照射される前記レーザエネルギと前記部品材料厚さとの前記比が前記所定の許容範囲内に維持されるように調節する、請求項1及び2のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項4】
前記制御機構は、1つ以上の前記光学コンポーネントの位置を調節する光学制御機構を含み、前記制御機構は、前記レーザビームが前記部品を切断する際の切断経路に沿う複数の点における前記部品材料厚さに関するデータを受け取り、前記厚さデータに基づいて、前記1つ以上の前記光学コンポーネントの位置を、前記部品に照射される前記レーザエネルギと前記部品材料厚さとの前記比が前記所定の許容範囲内に維持されるように調節する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記レーザエネルギが前記部品と接触する箇所に向けられているガスノズルを含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記ガスノズルは、ガス一定量供給ノズルである、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記レーザエネルギが前記部品と接触する箇所に近接して配置され、前記レーザエネルギが前記部品と接触したときに発生する残骸を除去する吸引機構を含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記固定具は、前記レーザビームの切断箇所に対して、少なくとも3つの運動軸で可動である、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記切断箇所における前記レーザビームに対する、前記切断箇所における前記部品の速度はほぼ一定に維持される一方、前記部品は、少なくとも3つの運動軸で可動であり、前記レーザビームのパワーは、前記部品材料又はモールド材料又はバッキング材料のうちの少なくとも1つの、1つ以上の特性に関する情報に基づいて、所与の範囲内に制御される、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
専用支持物及び前記支持物上に配置される専用部品の仮想バージョンを作成することと、
前記専用部品を切断する為のエネルギがレーザ発生コンポーネントから向けられる仮想切断経路を画定することと、
前記仮想切断経路に沿う複数の点における複数の部品材料厚さ推定値を決定することと、
前記部品に照射されるレーザエネルギと前記部品材料厚さとの比が、実際の切断経路に沿う各点において所定の許容範囲内に維持されて、前記支持物の完全性を維持しながら前記部品を切断しきるように、前記支持物の物性及び前記部品の物性に基づいて、前記レーザ発生コンポーネント、光学コンポーネント、及び前記専用モールドを保持する固定具のうちの少なくとも1つを調節する調節命令のセットを定義することと、
を含むレーザ切断方法。
【請求項11】
前記調節命令のセットを定義することは、前記モールド上に配置された前記部品とともに前記固定具を移動させる、動き及び速度の調節命令のセットを定義することを含み、前記命令は、前記部品に照射される前記レーザエネルギと前記部品材料厚さとの前記比が前記所定の許容範囲内に維持されるように、前記レーザビームの通過後の前記部品の移動速度を、前記決定された部品材料厚さ推定値に基づいて調節する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記動き及び速度の調節命令のセットを定義することは、前記固定具の動き及び速度を、前記レーザ発生コンポーネントの方向に対して5つの軸で画定することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記支持物は、前記部品の成形に使用されたモールドである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記専用モールド上に配置される前記専用部品の作成の為に前記専用モールドを作成することは、仮想のプロジェクト開発計画又は治療計画を作成することを含み、前記モールドは、前記仮想の開発計画又は治療計画の間の前記モールドのフォームファクタを表す、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
幾つかの専用モールドを作成することを含み、各専用モールドは、前記仮想のプロジェクト開発計画又は治療計画のそれぞれの部分における固有部品を表す、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記仮想の治療計画又は開発計画に基づいて仮想モールドを作成することを含み、前記仮想切断経路に沿う複数の点における前記複数の部品材料厚さ推定値は、前記仮想モールドの分析に基づいて決定される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記仮想の治療計画に基づいて複数の仮想モールドを作成することを含み、前記仮想切断経路に沿う複数の点における前記複数の部品材料厚さ推定値は、各仮想モールドの分析に基づいて、各仮想モールドについて個別に決定される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記調節命令のセットを定義することは、各仮想モールドに対する、動き及び速度の調節命令のセットを定義することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
幾つかの専用モールドを作成することを含み、各専用モールドは、歯をインクリメンタルに動かす治療計画に沿う、歯の固有配置を表す、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
複数の切断経路を画定することを含み、前記複数の切断経路のうちの1つが、患者の歯肉線に沿う前記部品の一部分を表す、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
複数の切断経路を画定することを含み、前記複数の切断経路のうちの1つが、患者の歯肉線に沿わない、前記部品上の切断を表す、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記レーザ発生コンポーネントは、レーザビームを発生させ、
前記部品は、前記レーザビームにより切断され、
前記光学コンポーネントは、所望のエッジ条件又はエッジ特性のうちの少なくとも一方を確保しながら前記部品を切断しきる為に、所定レンジのエネルギを切断経路において発生させるべく前記レーザビームを集束させ、
前記制御機構は、照射されるレーザエネルギを部品材料厚さに合わせて調節する制御装置であって、前記切断経路に沿う複数の点における前記部品材料厚さに関するデータを受け取り、前記部品に照射される前記レーザエネルギと前記部品材料厚さとの比を、所定の許容範囲内に維持するように及び前記支持物を切断しないように調節する制御装置を備える、
請求項1に記載のシステム。
【請求項23】
前記レーザエネルギは、前記部品を切断しきり、前記部品の支持物の外面まで切り込むが、前記支持物を切断しきることはない、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記制御機構は、前記レーザエネルギが、前記所望のエッジ条件又はエッジ特性のうちの少なくとも一方を確保しながら前記部品上の前記切断経路に沿う各点において前記部品の全ての材料を気化させるように、前記固定具の速度を調節する、請求項22に記載のシステム。
【請求項25】
前記レーザエネルギを調節する前記制御装置は、レーザ発生コンポーネントの電力、レーザ発生コンポーネントの移動、光学コンポーネントのタイプ、光学コンポーネントの移動、固定具の移動、ガスのタイプ、ガスの圧力、ガスの温度、及び吸引力のうちの少なくともいずれかを、前記部品に照射されるレーザエネルギと部品材料厚さとの比が所定の許容範囲内に維持されるように調節する機構を提供する、請求項22に記載のシステム。
【請求項26】
前記部品が一定のフィード速度で移動する場合に、前記部品厚さに対して照射される前記レーザエネルギが維持される、請求項22に記載のシステム。
【請求項27】
前記レーザ発生コンポーネントの電力を増やすことによって、前記部品厚さに対して照射される前記レーザエネルギが維持される、請求項22に記載のシステム。
【請求項28】
前記光学コンポーネントを調節して、発生させるレーザエネルギを強くしたり弱くしたりして前記部品に照射することにより、前記部品厚さに対して照射される前記レーザエネルギが維持される、請求項22に記載のシステム。
【請求項29】
前記比は、1つ以上の部品材料特性、及び前記部品の支持物の1つ以上の特性のうちの少なくとも1つに基づいて決定される、請求項22に記載のシステム。
【請求項30】
前記部品材料特性、前記支持物材料特性、及び前記バッキング材料特性は、前記材料の組成、及び前記部品材料厚さのうちの少なくとも一方からなる、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記部品に照射される前記エネルギは、所定の範囲内になるように制御され、これは、前記レーザビームのパワーを変調すること、及び/又は、前記部品特性及び前記所望の切断経路に基づいて、前記固定具の速度及び/又は前記固定具に対する前記レーザ発生コンポーネントの速度を制御することによって行われる、請求項22に記載のシステム。
【請求項32】
切断される前の前記部品材料厚さを動的に与える走査装置を更に含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項33】
前記切断経路に沿っての前記部品材料厚さを測定又は検知するセンサを更に含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項34】
前記切断経路に沿っての前記部品材料厚さに関する情報を記憶する記憶手段を更に含む、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
前記切断経路に沿っての前記部品材料厚さは、切断動作の開始前にあらかじめ決定されている、請求項33に記載のシステム。
【請求項36】
前記センサは、ある場所において、前記レーザビームが前記部品のその場所を切断する直前に、前記切断経路に沿っての前記部品材料厚さを測定するように配置される、請求項21に記載のシステム。
【請求項37】
前記支持物は、前記部品の成形に使用されるモールドである、請求項1、21、又は22に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ切断のシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ切断システムは、様々な産業において工夫がなされてきて、且つ、利用されている。例えば、自動車産業では、モールド、スタンピングプレス、又は他の成形ツールによって成形されたバンパのエッジングを切断することにレーザ切断システムが使用される。
【0003】
成形されたバンパは、モールド、プレスなどから取り外されるが、エッジの周辺に、モールド成形工程由来の何らかの余分な材料を含んでいることが多い。この余分な材料をバンパから除去することに、レーザ切断システムが使用できる。この場合は、レーザでその材料を切り離し、手磨き又は他のそのような方法で部品のエッジを研磨して、鋭利な部分を全て除去し、エッジを概ね滑らかにする。
【0004】
他の実施態様によっては、モールド上にアイテムが成形され、このアイテムをモールドから切り離すことにレーザが使用される。或いは、スタンピング又は別の成形工程によってモールド上にアイテムが成形され、このアイテムが、何らかの支持物によって位置決めされる。このアイテムがモールドされている場合は、このモールドが支持物として使用されてよい。しかしながら、支持物材料まで切り込んでしまうことが、工程にとって有害となる可能性がある。例えば、支持物材料は、レーザで切られると、アイテムの成形に使用された材料と混合する可能性がある。これによって、材料の物理特性が予期せぬものになったり、変色が起こったりする可能性があり、これらは望ましくない場合がある。
【0005】
切断工程自体も、切断経路近辺の材料の特性を変化させる可能性がある。他の切断手法と異なり、レーザ切断では、材料を切断するほどの熱が発生する為、材料と熱との相互作用によって材料の特性が変化する可能性があり、例えば、材料が脆化する可能性があり、これが、用途によっては望ましくない場合がある。これは特に、切断を比較的高速で行うべく、高エネルギレーザビームを使用して材料を素早く切断しきる場合に当てはまる可能性がある。
【0006】
更に、実施態様によっては切断される材料の厚さが変化する可能性がある為、切断手法の有効性が減退する可能性がある。例えば、材料の切断される部分が、切断を最も効果的にする為のレーザの較正に使用される部分より厚くなると、レーザが材料を切断しきれなかったり、材料が有効に気化しなかったりする可能性がある。
【0007】
材料が薄い場合、切断された材料のエッジの特性が予期せぬ変化を起こす可能性がある。レーザは又、切断されるアイテムを切断しきって支持物材料まで切り込む可能性があり、これは、上述のように、用途によっては好ましくない場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の1つ以上の実施形態による、使用可能なシステムを示す図である。
【
図2】本開示の1つ以上の実施形態による、モールドの上に貼り付けられる部品材料の一片を示す図である。
【
図3】本開示の1つ以上の実施形態による、モールドの表面の少なくとも一部分の上で部品材料の一片を成形して作成された部品を示す図である。
【
図4】本開示の1つ以上の実施形態による、部品上の切断経路を示す図である。
【
図5】本開示の1つ以上の実施形態による、モールドから取り外されている切断された部品を示す図である。
【
図6】本開示の1つ以上の実施形態による、使用可能な5軸移動型の一例を示す図である。
【
図7】本開示の1つ以上の実施形態による方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書では、レーザ切断のシステム及び方法について説明する。例えば、1つ以上のシステムが、レーザ発生コンポーネントと、光学コンポーネントと、支持物を、支持物上に位置決めされた部品とともに保持する固定具と、制御機構と、を含み、制御機構は、部品に照射されるレーザエネルギと部品材料厚さとの比が、切断経路に沿う各点において所定の許容範囲内に維持されて、支持物の完全性を維持しながら部品を切断しきるように、レーザ発生コンポーネント、光学コンポーネント、及び固定具のうちの少なくとも1つを調節する。本明細書では、他のシステム及び方法についても開示する。
【0010】
本開示の実施形態は、部品を形成している材料に隣接する支持物材料まで切り込むことなく、部品材料を切断しきることが可能である。実施形態によっては、レーザビームは、部品材料を切断しきった後、支持物材料まで実質的に切り込むことがないようにすることが可能である。そのような場合、レーザビームは、切断されて、支持物の材料とは実質的に混合していない部品を提供することが可能であり、且つ/又は、必要に応じて支持物を再利用できるようにすることが可能である。
【0011】
本明細書に記載の実施形態は、レーザビームによってできた、切断経路近辺の部品のエッジの特性を実質的に変化させることなく(例えば、部品を脆化させたり、変色させたりすることなく)、部品を素早く切断することを可能にする。実施形態は又、特に、支持物に隣接している、厚さの異なる複数の材料を切断しきることが可能であるという利点がある。これは、レーザビームの1つ以上の特性を変化させることによって達成可能であり、これについては後で詳述されるとおりである。
【0012】
以下の詳細説明では、説明の一部を成す添付図面を参照する。添付図面は、本開示の1つ以上の実施形態がどのように実施されうるかを、例示によって示す。
【0013】
図1は、本開示の1つ以上の実施形態による、使用可能なシステムを示す。
図1に示された実施形態では、モールド106上で成形された一片の部品材料から部品をレーザ切断するシステム100が与えられている。
【0014】
図1のシステム100は、レーザ発生コンポーネント102と、1つ以上の光学コンポーネント122と、固定具104と、固定具104上に位置決めされたモールド106と、を含む。
図1の実施形態では、固定具は又、モールド106を上に載せて位置決めするプラットフォーム108と、プラットフォームの上から見て時計回り且つ/又は反時計回りに部品を回転させることを可能にする回転機構126と、を含む。
【0015】
図1の実施形態では、システム100は又、制御コンポーネント110を含む。制御コンポーネント110は、処理装置112と、メモリ114と、1つ以上の制御機構124、126、及び/又は128と、を含む。命令116が、メモリ114に記憶されて、処理装置112によって実行されて制御が行われることが可能であり、制御の対象となるのは、例えば、部品を保持する固定具104の移動、レーザ発生コンポーネント102の移動、1つ以上の光学コンポーネント122の移動、レーザ発生コンポーネント102によって発生するレーザビームの1つ以上の特性の調節、ノズル120から吹きつけられるガスの特性及び/又は更に管130によってかかる吸引力の特性の調節である。
【0016】
これらのアイテムの制御は、例えば、制御コンポーネント124、126、及び/又は128を介して、且つ/又は、1つ以上の光学コンポーネント122の調節、レーザ発生コンポーネント102の特性の調節、ノズル120から吹きつけられるガスの特性の調節、及び/又は吸引管130によってかかる吸引圧力の調節を行う為に提供された機構を介して行うことが可能である。メモリ114は又、データ118を記憶することが可能であり、データ118は、後で詳述されるように、命令の実行に使用されることが可能である。
【0017】
メモリは、揮発性又は不揮発性メモリを提供する非過渡的機械可読媒体であってよい。メモリは又、リムーバブルメモリ(例えば、可搬メモリ)であってよく、非リムーバブルメモリ(例えば、内蔵メモリ)であってもよい。例えば、メモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)であってよく、読み出し専用メモリ(ROM)であってもよい。
【0018】
メモリは、例えば、様々なタイプのメモリのうちでも特に、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、電気的消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリ、相転移ランダムアクセスメモリ(PCRAM)、コンパクトディスク読み出し専用メモリ(CD−ROM)、レーザディスク、デジタル多用途ディスク(DVD)、又は他の光学式ディスク記憶装置、及び/又は、磁気媒体(磁気カセット、磁気テープ、又は磁気ディスクなど)であってよい。
【0019】
更に、図ではメモリが制御機構110内にあるように示されているが、本開示の実施形態はそのようには限定されない。例えば、メモリは、制御機構ではないが制御機構と接続されたメモリ装置内にあってよい。実施形態によっては、メモリは、コンピューティングリソースに内蔵又は外付けされてよく、ネットワーク(インターネットなど)、又は別の有線又は無線接続を介して機械可読命令がアップロード及び/又はダウンロードされることを可能にしてよい。
【0020】
レーザ発生コンポーネントの制御に関しては、レーザビームのエネルギは、様々な方法で制御されてよい。例えば、生成されるビームのエネルギを増やすように、レーザ発生コンポーネントへの電力が調節されてよい。
【0021】
例えば、部品に照射されるエネルギを、所定の範囲内になるように制御することが可能であり、これは、レーザビームのパワーを変調すること、光学コンポーネント(例えば、1つ以上の鏡及び/又はレンズ)を調節すること、及び/又は、部品特性及び所望の切断経路に基づいて、固定具の速度及び/又は固定具に対するレーザ発生コンポーネントの速度を制御することによって行われる。これらの要素の組み合わせは、システムの特性、及び/又は切断される材料の特性に応じて異なってよい。例えば、レーザのエネルギに関して調節可能なレーザ発生コンポーネントがシステムに含まれない場合は、固定具及び/又はレーザ発生コンポーネント及び/又は1つ以上の光学コンポーネントの移動の速度を調節してよい。
【0022】
上述のように、実施可能な調節は、使用される光学コンポーネントに関する調節である。コンポーネントを変更することにより(例えば、レンズを切り換えることにより)、或いは、これらを調節することにより(例えば、焦点距離を変更すること、及び/又は、光学コンポーネントを移動させることにより)、レーザが1つ以上の光学コンポーネントを通過する際に、又は、レーザが1つ以上の光学コンポーネントによって誘導される際に、レーザ発生コンポーネントによって発生したエネルギを変更することが可能である。
【0023】
これらの移動は、
図1に示された1つ以上の制御機構によって、且つ/又は、メモリに記憶されている実行可能命令によって制御可能である。例えば、5インチの焦点距離を用いてよいが、これは、より短く、又はより長くなるように調節されてよい。この焦点距離は、変化量を大きくとれること、且つ、焦点において部品材料を十分に気化できるほどの高いレーザエネルギを維持できることから、歯科装置を切断することのような用途に有利となり得る。
【0024】
制御コンポーネント110は、固定具の速度を調節する固定具制御機構(例えば、ソフトウェアと電気式且つ/又は機械式アクチュエータ)を含んでよく、この場合、制御コンポーネントは、レーザビームが部品を切断する際の切断経路に沿う複数の点における部品材料厚さに関するデータを受け取り、その厚さデータに基づいて、レーザビームの通過後の部品の移動速度を、部品に照射されるレーザエネルギと部品材料厚さとの比が所定の許容範囲内に維持されるように調節する。
【0025】
そのような実施形態では、上記比は、事前に決定されてよく、或いは、切断工程中に取得される厚さデータ及び/又はレーザパワーデータに基づいて動的に決定されてもよい。上記比の許容範囲は、支持物材料まで切り込むことなく部品材料を切断しきること、或いは、場合によっては、支持物を損傷したり、支持物材料と部品材料との混合を促進したりするほど支持物材料まで切り込むことなく部品材料を切断しきることに必要なレーザエネルギに基づく。
【0026】
本明細書における支持物材料は、その上にアイテムがモールドされる材料、その中にアイテムがモールドされる材料、その下にアイテムがモールドされる材料、又は、モールド後のその上にアイテムが位置決めされる材料、例えば、切断される部品の保持に使用されるバッキング材料を含んでよい。上記比は、例えば、1つ以上の部品材料特性、及びバッキング材料の1つ以上の特性のうちの少なくともいずれかに基づいて決定されてよい。そのような実施形態によっては、部品、支持物、及び/又はバッキング材料の特性は、例えば、材料の組成及び/又は材料の厚さのうちの少なくとも一方を含んでよい。
【0027】
実施形態によっては、部品材料は、複数の部分(例えば、層材料)を含んでよい。例えば、これらの複数の部分は、互いに接合されたり、接着されたりしてよい。例えば、部品は、材料(例えば、熱成形材料)の整形及び硬化、或いは硬化後の取り外しを可能にする為に、支持物(例えば、モールド)とアライナ材料との間に中間層(例えば、軽接着剤又はシリコン)を含んでよい。実施形態によっては、この中間層は、部品材料だけが切断されて支持物は切断されないことを確実にする為に、緩衝材厚さとして動作してよく、且つ/又は、レーザに対する反応が異なってよい。
【0028】
比が実際にはどのように適用されうるかの一例を以下に示す。非集束出力パワーの範囲であれば、部品の下の支持物材料に照射されるレーザエネルギが過大な為に材料が変色するという事態を引き起こすことなく部品材料を切断することが可能な為、レーザの波長が9.3ミクロンであって、繰返し率が15000から25000の範囲に設定されていて、出力ビームサイズが1〜4mmの範囲である場合、レーザの所望出力範囲は8ワットから15ワットの間になる。例えば、ラピッドプロトタイピング材料(例えば、SLA材料)をモールド材料として使用した場合は、モールド材料とレーザビームとの相互作用によって、モールド材料と部品材料との混合が発生する可能性がある。場合によっては、この結果として変色が起こる可能性がある。
【0029】
制御コンポーネント110は、レーザパワー調節制御機構を含んでよく、この制御機構は、レーザビームが部品を切断する際の切断経路に沿う複数の点における部品材料厚さに関するデータを受け取り、その厚さデータに基づいて、レーザ発生コンポーネントの電力を、上述のように、部品に照射されるレーザエネルギと部品材料厚さとの比が所定の許容範囲内に維持されるように調節する。
【0030】
制御コンポーネント110は、1つ以上の光学コンポーネントの位置を調節する光学制御機構を含んでよく、制御コンポーネントは、レーザビームが部品を切断する際の切断経路に沿う複数の点における部品材料厚さに関するデータを受け取り、その厚さデータに基づいて、1つ以上の光学コンポーネントの位置を、上述のように、部品に照射されるレーザエネルギと部品材料厚さとの比が所定の許容範囲内に維持されるように調節する。
【0031】
単一の制御コンポーネントを利用して上述の機能の全てを制御してもよく、或いは、これらの機能を複数のコンポーネント(例えば、処理装置)で制御してもよい。実施形態によっては、部品が、少なくとも3つの運動軸において可動である間、且つ、レーザビームのパワーが、部品材料、支持物、及びバッキング材料のうちの少なくとも1つの1つ以上の特性に関する情報に基づいて所与の範囲内にあるように制御されている間、切断位置にあるレーザビームに対する、切断位置にある部品の速度をほぼ一定に維持することが可能である。
【0032】
これらの特性は、メモリを介して制御コンポーネントの処理装置に与えられてよく、且つ/又は、制御コンポーネントと通信しているユーザインタフェースを介して、ユーザによって与えられてよい。各種実施形態では、制御コンポーネントは、レーザエネルギが、支持物の完全性を維持しながら、部品上の切断経路に沿う各点において部品の全ての材料を気化させるように、固定具の速度を調節することが可能である。
【0033】
実施形態によっては、レーザエネルギを調節する制御コンポーネントは、レーザ発生コンポーネントの電力、レーザ発生コンポーネントの移動、光学コンポーネントのタイプ、光学コンポーネントの移動、固定具の移動、ガスのタイプ、ガスの圧力、ガスの温度、及び吸引力のうちの少なくともいずれかを、部品に照射されるレーザエネルギと部品材料厚さとの比が所定の許容範囲内に維持されるように調節する機構を提供する。
【0034】
そのような実施形態によっては、部品が一定又はほぼ一定のフィード速度で移動する場合に、部品厚さに対して照射されるレーザエネルギが維持される。このことは、特に、レーザビームが切断経路に沿って進む際に、切断を行うレーザエネルギが概ね均一に分散する場合に利点となり得る。ほぼ一定のフィード速度の一例は、例えば、1000〜1500mm/秒である。別の例では、波長が10.6ミクロンであるレーザを使用する。これは5〜10Wで動作可能であり、1500〜2000mm/秒の一定フィード速度を有することが可能である。そのような構成であれば、用途によっては、切断経路のエッジにおける脆性を低減できる可能性がある。
【0035】
実施形態によっては、レーザ発生コンポーネントの電力を増やすことによって、部品厚さに対して照射されるレーザエネルギが維持される。このことは、特に、固定具及び/又はレーザビームの移動速度を調節することができない場合に利点となり得る。
【0036】
実施形態によっては、光学コンポーネントを調節して、発生させるレーザエネルギを強くしたり弱くしたりして部品に照射することにより、部品厚さに対して照射されるレーザエネルギが維持されうる。これは、特に、例えば、レーザエネルギを調節する為に、光学コンポーネントを移動させることが、他の構成(例えば、レーザ及び/又は固定具を移動させること)よりもコスト効率の高い方法になり得る為に、利点となり得る。
【0037】
更に、実施形態によっては、レーザの総パワーがその出力能力に比べて低い場合に、ビームスプリッタを、レーザ発生コンポーネントから発生するパワーの出力割合を上げるために利用することが可能である。これによって、レーザ発生コンポーネントが、場合によっては、そのデューティサイクルに関連して、より安定域で動作できるようにすることが可能になる。これにより、用途によっては、レーザを、その中間的なパワーレンジで(例えば、40〜60%で(一方、切断箇所への照射は、ビームのスプリッティングにより、10%もの低さにすることが可能))動作させることによって、システムの耐久性を向上させることが可能である。この構成の別の利点として、場合によっては、レーザが低電力では動作しないことから、レーザの脈動(即ち、レーザエネルギの変動)を減らすことが可能である。
【0038】
更に、切断箇所より低いエネルギを使用することにより、脆性の原因となる様々な現象の存在を減らすことが可能である。それらは、例えば、加熱された部品材料の再成形(即ち、切断箇所のエッジに隣接する領域が、溶融及び冷却によって滑らかで光沢のある領域になること)、マウンド状隆起又は唇状隆起(即ち、切断箇所のエッジに隣接する領域が、盛り上がった、滑らかで光沢のあるビーズ状エッジを形成すること)、及び改鋳(即ち、ガスノズル(使用された場合)からのガスによって、休止点が吹き飛ばされた為に溶融材料の残骸が残る粗いエッジ)である。
【0039】
システムの各種コンポーネントの調節に使用される制御機構は、任意の好適な機構であってよい。例えば、それらの制御機構は、システム100の1つのコンポーネントをシステム100の別のコンポーネントに対して移動させる電気式且つ/又は機械式のアクチュエータであってよい。例えば、
図1の実施形態では、制御機構128を使用して、レーザ発生コンポーネント102、光学コンポーネント122、及びガスノズル120を、プラットフォーム108に対し、近づけたり遠ざけたりして、モールド106に対して近づけたり遠ざけたりすることが可能である。
【0040】
そのような移動によって、発生したレーザビームの特性、光学系と発生したビームとの相互作用、及び吹きつけられるガスを変えることができる。実施形態によっては、ノズル120、光学コンポーネント122、及びレーザ発生コンポーネントが、それぞれ、互いに独立に移動することが可能である。
【0041】
制御機構124は、例えば、固定具を幾つかの方向に移動させる機械式アクチュエータであってよい。例えば、
図1の実施形態では、機構124は、部品を、レーザ発生コンポーネント102に対して水平方向に移動させることが可能であり、又、固定具104を、プラットフォーム104の側方から(例えば、
図1の吸引管130の視点から)見て時計回り及び/又は反時計回りに回転させることが可能である。
図1の実施形態では、機構124の移動と機構126の移動との組み合わせにより、固定具を、レーザ発生コンポーネント102に対して5つの運動軸で移動させることが可能になるが、この点については後で詳述する。
【0042】
1つ以上の実施形態では、部品を取り扱う固定具は、例えば、レーザ切断工程の間に支持物及び/又は部品を固定したり、且つ/又は、移動させたりするロボット式吸引機構及び/又はペンチ式機構を含んでよい。
【0043】
図1に示されるように、実施形態によっては、システムは、ガスを一定量供給したり、ガスを吸引したりする1つ以上のガスノズル(例えば、ノズル120)を含んでよい。各種実施形態においては、レーザエネルギが部品と接触する箇所に、1つ以上のノズルを向けてよい。ガスは、冷却されたガス、加熱されたガス、及び/又は室温のガスを含む任意の好適なタイプのガスであってよい(例えば、あるタイプのガスはあるノズルから、別のタイプのガスは別のノズルから、与えられてよい)。例として、特に空気、酸素、及び/又は窒素が挙げられる。
【0044】
このことは、幾つかの理由により、利点となり得る。例えば、ガスの使用により、部品を加熱又は冷却すること、レーザから発生する熱を放散すること、切断領域におけるガス(例えば、空気)の化学組成を変更すること、及び/又は、切断工程において気化されなかった残骸を切断経路から吸引したり、吹き飛ばしたりすることが可能になるという利点がある。
【0045】
各種実施形態においては、ガス及びレーザビームが向いている方向に応じて、熱の影響を受ける範囲を小さくすることが可能である。例えば、レーザビームがガスの向いている方向に揃って伝搬する場合は、熱の影響の範囲を減らすことが可能であり、レーザビームが、ノズルの先端から出るガスの経路を横断して伝搬する場合は、熱の影響の範囲を増やすことが可能である。
【0046】
実施形態によっては、ノズルは、レーザ発生コンポーネントから離れた場所に、レーザエネルギを部品に向かわせるレーザビームの方向に角度を付けられて配置される。そのような実施形態を
図1に示しており、この図では、ノズル120は、レーザ発生コンポーネント102によって発生するレーザビームに向かう角度で方向付けられている。このことは、実施形態によっては、例えば、ガスを使用して切断経路領域から残骸を吹き飛ばすことが可能であることにより、利点となり得る。
【0047】
他の利点として、ガスの吹きつけを中程度の速度で行うことにより、切断面が改善され、切断工程に起因する曇りが減る。これには、例えば、切断構成で発生した重い粒子を切断エッジから離すことが可能であるという利点がある。
【0048】
各ノズルは、使用される用途に応じて、形状及びサイズが様々であってよい。例えば、ノズルの内径、ノズルの先端角度、切断箇所に対するノズルの全体角度、及びノズルの先端形状は調節されてよい。
【0049】
各ノズルは又、切断箇所に対して、様々な体勢で方向付けられてよい。例えば、あるノズルは、残骸除去用として、内径1.7mmの管を用いて32度の角度に方向付けられてよい。実施形態によっては、この管は、真鍮製であってよく、先端が、開口部からほぼ1mmの高さのファン形状に圧縮されていてよい。これらの特性は、例として与えられており、他の材料、形状、及び方向が様々な実施形態において使用されてよい為本出願の特許請求の範囲に対する限定であってはならない。
【0050】
実施形態によっては、本システムは、レーザエネルギが部品と接触する際に発生する残骸を除去する為に、レーザエネルギが部品と接触する場所に近接して配置された吸引機構を含む。例えば、
図1にはそのような一実施形態を示した。このことは、実施形態によっては、例えば、吸引機構(例えば、吸引管130)を使用して切断経路領域から残骸を吸い上げることが可能なことから、利点となりうる。これは、1つ以上のノズルと組み合わせての使用が可能であり、これらのノズルは、場合によっては、例えば、残骸を吸引機構に向けて吹き飛ばすことにより残骸を切断経路領域からよりよく除去することが可能である。
【0051】
別のシステム実施形態は、レーザビームを発生させるレーザ発生コンポーネントと、支持物を、支持物上に配置されてレーザビームで切断される部品とともに保持する固定具と、支持物を実質的に切ることなく(支持物の完全性を維持しながら)部品を切断しきる為に、所定レンジのエネルギを切断経路において発生させるべくレーザビームを集束させる光学コンポーネントと、照射されるレーザエネルギを部品厚さに合わせて調節する制御装置であって、切断経路に沿う複数の点における部品材料厚さに関するデータを受け取り、部品に照射されるレーザエネルギと部品材料厚さとの比を、所定の許容範囲内に維持されるように調節する制御装置と、を含む。
【0052】
図2は、本開示の1つ以上の実施形態による、モールドの上に貼り付けられる部品材料の一片を示す。本開示の範囲に関しては、モールドは、任意の好適な形状であってよい。例えば、
図2に示された実施形態では、モールド206は、歯科用アライナ装置で治療される患者の顎の歯列の形状であってよい。
【0053】
部品は、材料シート208を使用して、モールド206の上に形成される。この場合、材料はポリウレタン材料であるが、モールド上での部品の成形には、他の好適な部品材料を利用してもよい。
【0054】
図3は、本開示の1つ以上の実施形態による、表面モールドの少なくとも一部分の上で部品材料の一片を成形して作成された部品を示す。例えば、
図3は、モールド206の上で成形された材料シート208から作成された部品を示している。本方法は、例えば、
図1に関して既に説明されたシステム100のようなシステムによって実施することが可能である。
【0055】
図3の実施形態では、材料シート308がモールドの上で成形されて、部品332(例えば、歯科装置)が作成されている。
図3は又、レーザビームが部品を材料シート308から切断した切断経路334と、歯科装置の一形体(例えば、正方形の窓)が部品332の中に切り込まれた切断経路336と、を示している。
【0056】
歯科装置分野では、回転切削工具を使用して部品を切断する場合があり、その為、部品のエッジに沿っての切断しか行うことができず、切断後は粗いエッジが残り、このエッジを手で研磨するか、研磨工程で研磨しないと患者に引き渡すことができない。本開示の実施形態は、特に、部品上の他の場所での切断(例えば、窓336のような形体の作成)を可能にし、切断後の研磨の必要性を減らすか無くすという利点がある。
【0057】
図4は、本開示の1つ以上の実施形態による、切断経路において切り取られた切欠き上面図であり、部品上の切断経路を示している。
図4に示された実施形態では、部品の作成に使用される材料シート432がモールド406の上に配置されて、歯科装置になる上部及び側部が成形される。この図では、モールドの側面に隣接して成形された側部が示されている。
図2に更に示されるように、モールド206及び406は、患者の歯の形状であり、余分な材料が切り捨てられた後の部品が歯科用アライナ装置532(
図5を参照)である。
図4の実施形態では、切断経路434が示されており、ここでは、切断経路に沿う道筋の一部でレーザビームが材料シート432を切断している。ハッシュマーキングがなされた領域は、材料シートのうちの、切断経路より下の部分を表している。この実施形態では、切断経路434は、材料シート432を通って切断されているが、モールド406の表面438には切り込まれていない。
【0058】
用途によっては、例えば、モールド上で材料シートを成形する場合には、シートの幾つかの部分の厚さを、モールド形状に適合するように変更してよい。そのような場合は、材料シートを切断しきるとともに、モールド材料を切断したり、モールド材料まで実質的に切り込んだりしないようにする為の適切な量のレーザビームエネルギを提供する為に(例えば、レーザエネルギを使用して、部品材料を切断しきり、モールド材料の外面まで切り込む一方、モールドを切断しきることがないようにして、モールドの完全性を維持することが可能である)、(例えば、成形工程の仮想モデリングを通して)切断経路に沿っての材料の厚さを測定又は推定することが可能である。
【0059】
例えば、実施形態によっては、走査装置を使用して、動的に(即ち、切断が行われる直前に、且つ/又は、切断が行われているときに)、切断される前の部品(例えば、シート材料)の厚さを与えることが可能である。各種実施形態では、センサを使用して、切断経路434に沿っての部品の厚さを測定及び/又は検知することが可能である。センサは、例えば、ある場所において、レーザビームが部品のその場所を切断する直前に、切断経路に沿っての部品の厚さを測定するように配置されてよい。センサは又、切断される前の部品の厚さを動的に与えるように利用されてよい。
【0060】
厚さを推定する場合は、例えば、仮想モデリング、及び/又は、メモリに記憶されている実験データに基づいてよい。実施形態によっては、切断経路に沿っての厚さは、切断経路に沿う各点ごとに測定されてよく、或いは、切断経路に沿う一定の長さ(例えば、1mmの線区間)にわたって推定されてよく、或いは、切断経路の全体長さにわたって推定されてよい。実施形態によっては、切断経路に沿っての部品の厚さは、仮想的に、又は、接触式又は非接触式の測定工具を使用して部品の実際の厚さを測定することによって、切断動作の開始前にあらかじめ決定されている。従って、本明細書に記載の各種実施形態の範囲内で、任意の好適な測定工具を利用してよい(幾つかの例を追加する必要があるかもしれない)。
【0061】
図5は、本開示の1つ以上の実施形態による、切断された部品が、モールドから取り外されている様子を示す。
図5に示された実施形態では、部品532は、切断経路534に沿って切断されており、形体536は、部品532の中まで切り込まれており、部品は、モールド506から取り外されている。モールドは、レーザビームによって切断されていない為、必要に応じて再利用できる。
【0062】
図6は、本開示の1つ以上の実施形態による、使用可能な5軸移動型の一例を示す。この図では、
図1の実施形態において与えられる5つの運動軸が示されている。
【0063】
例えば、制御機構128が方向644の動きを与え、制御機構124が方向640及び646の動きを与え、制御機構126が方向648の動きを与える。実施形態によっては、方向642の動きを与える制御機構を実装することが可能である。この動きは、例えば、制御機構122、124、及び/又は128によって与えることが可能であり、或いは、図示されていない別の機構によって与えることが可能である。
【0064】
図7は、本開示の1つ以上の実施形態による方法を示す。本方法は、例えば、
図1に関して既に説明されたシステム100のようなシステムによって実施可能である。
【0065】
図7の実施形態では、本方法は、ブロック750において、専用モールド及びそのモールドの上に配置される専用部品の仮想バージョンを作成する。実施形態によっては、専用モールドの上に配置される専用部品の作成の為に専用モールドを作成することは、仮想のプロジェクト開発計画又は治療計画を作成することを含み、そのモールドは、仮想の開発計画又は治療計画の間のモールドのフォームファクタを表す。実施形態によっては、本方法は、仮想の治療計画又は開発計画に基づいて仮想モールドを作成することを含み、仮想切断経路に沿う複数の点における複数の部品材料厚さ推定値が、仮想モールドの分析に基づいて決定される。
【0066】
方法実施形態によっては、幾つかの専用モールドを作成することを含んでよく、各専用モールドは、仮想のプロジェクト開発計画又は治療計画のそれぞれの部分における固有部品を表す。例えば、方法によっては、幾つかの専用モールドを作成することを含み、各専用モールドは、歯をインクリメンタルに動かす治療計画に沿う、歯の固有配置を表す。幾つかの専用モールドを有する実施形態によっては、本方法は、仮想の治療計画に基づいて複数の仮想モールドを作成することを含み、仮想切断経路に沿う複数の点における複数の部品材料厚さ推定値は、各仮想モールドの分析に基づいて、各仮想モールドごとに個別に決定される。
【0067】
本方法は又、ブロック752において、専用部品を切断する為のエネルギがレーザ発生コンポーネントから向けられる仮想切断経路を画定することを含む。実施形態によっては、本方法は、複数の切断経路を画定することを含み、この複数の切断経路のうちの1つが、患者の歯肉線に沿う経路の一部分を表す。方法実施形態は又、複数の切断経路を画定することを含んでよく、この複数の切断経路のうちの1つが、患者の歯肉線に沿わない、部品上の切断を表す。
【0068】
本方法は、ブロック754において、仮想切断経路に沿う複数の点における複数の部品材料厚さ推定値を決定することを含む。本方法は又、ブロック756において、部品に照射されるレーザエネルギと部品材料厚さとの比が、実際の切断経路に沿う各点において所定の許容範囲内に維持されて、支持物の完全性を維持しながら部品を切断しきるように、レーザ発生コンポーネント、光学コンポーネント、及び専用モールドを保持する固定具のうちの少なくとも1つを調節する調節命令のセットを定義することを含む。
【0069】
幾つかの専用モールドを有する各種実施形態では、調節命令のセットを定義することは、各仮想モールドに対する、動き及び速度の調節命令のセットを定義することを含んでよい。実施形態によっては、調節命令のセットを定義することは、モールド上に配置された部品とともに固定具を移動させる、動き及び速度の調節命令のセットを定義することを含み、これらの命令は、部品に照射されるレーザエネルギと部品材料厚さとの比が所定の許容範囲内に維持されるように、レーザビームの通過後の部品の移動速度を、決定された部品材料厚さ推定値に基づいて調節する。そのような実施形態によっては、動き及び速度の調節命令のセットを定義することは、固定具の動き及び速度を、レーザ発生コンポーネントの方向に対して5つの軸で画定することを含んでよい。
【0070】
これらの実施形態は、当業者であれば本開示の1つ以上の実施形態を実施することが可能であるように、十分に詳細に説明されている。他の実施形態も利用されてよいこと、並びに、本開示の範囲から逸脱しない限り、工程変更、電気的変更、及び/又は構造的変更を行ってよいことを理解されたい。
【0071】
本明細書の各種実施形態において図示された各要素は、本開示の幾つかの追加実施形態を得られるように、追加、交換、結合、及び/又は除去されてよい。図面に与えられている各要素の比率及び相対尺度は、本開示の実施形態を例示することを意図したものであり、限定として解釈されてはならない。
【0072】
本明細書における「a」又は「a number of something(幾つかの何か)」は、そのような事物が1つ以上あることを意味するものであってよい。例えば、「a number of supports(幾つかの支持物)」は、支持物が1つ以上あることを意味するものであってよい。
【0073】
本明細書では特定の実施形態を図示及び説明してきたが、当業者であれば理解されるように、図示された特定実施形態は、同一手法を達成するように計算された任意の構成に置き換えられてよい。本開示は、本開示の各種実施形態の任意の、且つ、全ての適応形態又は変形形態を包含するものとする。
【0074】
上述の説明は、例示としてなされたものであって、制限としてなされたものではないことを理解されたい。上述の実施形態と、本明細書に具体的記載がない他の実施形態との組み合わせについては、当業者であれば、上述の説明を精査することにより自明となろう。
【0075】
本開示の各種実施形態の範囲は、上述の構造物及び方法が使用される他の任意の応用を含む。従って、本開示の各種実施形態の範囲は、添付の特許請求の範囲、並びに、そのような特許請求の範囲が権限を有する全範囲の等価物に準拠して決定されなければならない。
【0076】
前述の「発明を実施するための形態」では、本開示を合理化する目的で、各図に示された各例示的実施形態において、各種特徴がグループにまとめられている。本開示の方法は、本開示の実施形態が、各特許請求項で明示的に述べられている特徴よりも多くの特徴を必要とする、という意図を反映しているものと解釈されてはならない。
【0077】
寧ろ、以下の特許請求の範囲において反映されるように、発明の主題は、開示された1つの実施形態の全ての特徴より少ない特徴に存在する。従って、以下の特許請求の範囲は「発明を実施するための形態」に組み込まれており、各請求項は、それぞれが独立した実施形態として存在する。