【文献】
HERRLER, T. et al.,J Vasc Res,2009年,Vol.46, No.4,p.333-46
【文献】
CUTLER, C.S. et al.,Biol Blood Marrow Transplant,2011年 2月,ol.17, No.2, Suppl.,p.S226
【文献】
HOGGATT, J. et al.,Blood,2009年,Vol.113, No.22,p.5444-55
【文献】
BRENNER, S. et al.,Stem Cells,2004年,Vol.22, No.7,p.1128-33
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プロスタグランジン経路アゴニストが、プロスタグランジン、プロスタグランジンEP2受容体アゴニスト、プロスタグランジンEP4受容体アゴニストおよび16,16−ジメチルPGE2(dmPGE2)活性を有する作用剤からなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
前記グルココルチコイドが、アルクロメタゾン、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、クロベタゾール、酪酸クロベタゾール、プロピオン酸クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチゾール、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコート、デソニド、デスオキシメタゾン(desoximetasone)、デスオキシコルトン、デキサメタゾン、ジフロラゾン、二酢酸ジフロラゾン、ジフルコルトロン、吉草酸ジフルコルトロン、ジフルオロコルトロン、ジフルプレドナート、フルクロロロン、フルクロロロンアセトニド、フルドロキシコルチド、フルメタゾン(flumetasone)、ピバル酸フルメタゾン、フルニソリド、フルニソリド半水和物、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチン、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオロコルチゾン、フルオロメトロン、フルペロロン、フルプレドニデン、酢酸フルプレドニデン、フルプレドニゾロン、フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ホルモコータル、ハルシノニド、ハロメタゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、アセポン酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンブテプレート、酪酸ヒドロコルチゾン、ロテプレドノール、メドリゾン、メプレドニゾン、6a−メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、モメタゾン、フロ酸モメタゾン、フロ酸モメタゾン一水和物、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニドおよびウロベタゾールからなる群から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
前記グルココルチコイドが、メドリゾン、ヒドロコルチゾン、アルクロメタゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロンまたはコルチゾールからなる群から選択される、請求項8に記載の使用または組成物。
(a)前記虚血が、急性冠状動脈症候群、急性肺傷害(ALI)、急性心筋梗塞(AMI)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、動脈閉塞性疾患、動脈硬化症、関節軟骨欠損、無菌性全身性炎症、アテローム硬化性心血管疾患、自己免疫疾患、骨折、骨折、脳浮腫、脳低灌流、バージャー病、熱傷、がん、心血管疾患、軟骨損傷、脳梗塞、脳虚血、脳卒中、脳血管疾患、化学療法誘発性ニューロパチー、慢性感染、慢性腸間膜虚血、跛行、うっ血性心不全、結合組織損傷、挫傷、冠動脈疾患(CAD)、重症肢虚血(CLI)、クローン病、深部静脈血栓症、深部創傷、潰瘍治癒の遅延、創傷治癒の遅延、糖尿病(I型およびII型)、糖尿病性ニューロパチー、糖尿病誘発性虚血、播種性血管内凝固(DIC)、塞栓性脳虚血、凍傷、移植片対宿主病、遺伝性出血性毛細血管拡張症、虚血性血管疾患、高酸素傷害、低酸素症、炎症、炎症性腸疾患、炎症性疾患、傷害を受けた腱、間欠性跛行、腸管虚血、虚血、虚血性脳疾患、虚血性心疾患、虚血性末梢血管疾患、虚血胎盤、虚血性腎疾患、虚血性血管疾患、虚血再灌流傷害、裂傷、左主冠状動脈疾患、肢虚血、下肢虚血、心筋梗塞、心筋虚血、臓器虚血、変形性関節症、骨粗鬆症、骨肉腫、パーキンソン病、末梢動脈性疾患(PAD)、末梢動脈疾患、末梢性虚血、末梢性ニューロパチー、末梢血管疾患、前がん、肺水腫、肺塞栓症、リモデリング障害、腎臓虚血、網膜虚血、網膜症、敗血症、皮膚潰瘍、実質臓器移植、脊髄傷害、卒中、軟骨下骨嚢胞、血栓症、血栓性脳虚血、組織虚血、一過性脳虚血発作(TIA)、外傷性脳傷害、潰瘍性大腸炎、腎臓の血管疾患、血管の炎症性の状態、フォンヒッペル・リンダウ症候群、あるいは組織または臓器の創傷に関連し;
(b)前記被験体が、脳血管虚血、心筋虚血、肢虚血(CLI)、心筋虚血(特に、慢性心筋虚血)、虚血性心筋症、脳血管虚血、腎臓虚血、肺虚血、もしくは腸管虚血を有し;
(c)該被験体が、外科手術、化学療法、放射線療法、または細胞、組織、もしくは臓器の移植を受けた被験体であり;
(d)該虚血組織または虚血による損傷を受けた組織が、皮膚組織、骨格筋組織、心筋組織、平滑筋組織、軟骨組織、腱組織、脳組織、脊髄組織、網膜組織、角膜組織、肺組織、肝組織、腎組織、膵組織、卵巣組織、精巣組織、腸組織、胃組織、および膀胱組織からなる群から選択され、そして/または
(e)該虚血組織または虚血による損傷を受けた組織が、非虚血組織と比較して血流の低下、低酸素、無酸素、低血糖、代謝の低下、壊死の増加、またはアポトーシスの増加を有する、請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物。
前記虚血組織または虚血による損傷を受けた組織に関連する前記少なくとも一つの症状が、痙攣、跛行、しびれ、刺痛、衰弱、疼痛、創傷治癒の低下、炎症、皮膚変色、および壊疽からなる群から選択される、請求項1〜16のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、虚血によって生じる組織損傷を処置し、それに関連する症状を改善するための、より低リスクであり、より効率的であり、より長く続く療法が当技術分野において実質的に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
発明の要旨
本発明は、一般に、被験体における虚血組織、虚血による損傷を受けた組織、および/または虚血の1つまたは複数の症状の処置において使用するための幹細胞および前駆細胞の組成物を提供する。組成物は、現存する療法よりも効率的であり、これを使用して、種々の種類の虚血を処置することができる。本発明の特定の実施形態では、以下の概要に開示されている任意の2つ以上の実施形態を組み合わせて使用することができることが意図されていることが理解されるべきである。
【0018】
一実施形態では、本発明は、一部において、虚血組織または虚血による損傷を受けた組織への、幹細胞または前駆細胞のホーミングを増加させる方法であって、幹細胞または前駆細胞を、ex vivoにおいてプロスタグランジン経路アゴニスト、および必要に応じてグルココルチコイドを用いて処理する工程であって、処理した幹細胞または前駆細胞におけるCXCR4遺伝子発現を無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも2倍増加させるために十分な条件下で処理する工程、ならびに処理した幹細胞または前駆細胞を含む組成物を、虚血組織または虚血による損傷を受けた組織を有する被験体に投与する工程を含む方法を意図している。
【0019】
特定の実施形態では、本発明は、一部において、虚血組織または虚血による損傷を受けた組織を有する被験体を処置する方法であって、ex vivoにおいて、プロスタグランジン経路アゴニスト、および必要に応じてグルココルチコイドを用いて、処理した幹細胞または前駆細胞におけるCXCR4遺伝子発現を無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも2倍増加させるために十分な条件下で処理した幹細胞または前駆細胞を含む治療有効量の組成物を投与する工程を含む方法を意図している。
【0020】
ある特定の実施形態では、本発明は、一部において、被験体における虚血組織または虚血による損傷を受けた組織に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法であって、ex vivoにおいて、プロスタグランジン経路アゴニスト、および必要に応じてグルココルチコイドを用いて、処理した幹細胞または前駆細胞におけるCXCR4遺伝子発現を無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも2倍増加させるために十分な条件下で処理した幹細胞または前駆細胞を含む治療有効量の組成物を投与する工程を含む方法を意図している。
【0021】
一実施形態では、本発明は、一部において、虚血組織または虚血による損傷を受けた組織への、幹細胞または前駆細胞のホーミングを増加させる方法であって、幹細胞または前駆細胞を、ex vivoにおいて、プロスタグランジン経路アゴニスト、および必要に応じてグルココルチコイドを用いて処理する工程であって、処理した幹細胞または前駆細胞のSDF−1トランスウェル遊走アッセイにおけるパーセント(%)遊走を無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも2倍増加させるために十分な条件下で処理する工程;ならびに処理した幹細胞または前駆細胞を含む組成物を、虚血組織または虚血による損傷を受けた組織を有する被験体に投与する工程を含む方法を意図している。
【0022】
別の特定の実施形態では、本発明は、一部において、虚血組織または虚血による損傷を受けた組織を有する被験体を処置する方法であって、ex vivoにおいて、プロスタグランジン経路アゴニスト、および必要に応じてグルココルチコイドを用いて、処理した幹細胞または前駆細胞のSDF−1トランスウェル遊走アッセイにおけるパーセント(%)遊走を無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも2倍増加させるために十分な条件下で処理した幹細胞または前駆細胞を含む治療有効量の組成物を投与する工程を含む方法を意図している。
【0023】
一実施形態では、本発明は、一部において、被験体における虚血組織または虚血による損傷を受けた組織に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法であって、ex vivoにおいて、プロスタグランジン経路アゴニスト、および必要に応じてグルココルチコイドを用いて、処理した幹細胞または前駆細胞のSDF−1トランスウェル遊走アッセイにおけるパーセント(%)遊走を無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも2倍増加させるために十分な条件下で処理した幹細胞または前駆細胞を含む治療有効量の組成物を投与する工程を含む方法を意図している。
【0024】
特定の実施形態では、幹細胞または前駆細胞を約22℃〜約37℃の温度で約24時間未満の期間にわたって処理している。
【0025】
ある特定の実施形態では、幹細胞または前駆細胞を約22℃〜約37℃の温度で約1時間〜約4時間にわたって処理している。
【0026】
さらなる実施形態では、幹細胞または前駆細胞を約37℃の温度で約4時間にわたって処理している。
【0027】
追加的な実施形態では、幹細胞または前駆細胞は胚性幹細胞である。
【0028】
他の実施形態では、幹細胞または前駆細胞は成体の幹細胞である。
【0029】
いくつかの実施形態では、幹細胞または前駆細胞は、内皮幹細胞または内皮前駆細胞、中胚葉系幹細胞または中胚葉系前駆細胞、および外胚葉系幹細胞または外胚葉系前駆細胞からなる群から選択される。
【0030】
特定の実施形態では、幹細胞または前駆細胞は、間葉系幹細胞または間葉系前駆細胞、造血幹細胞または造血前駆細胞、胎盤幹細胞または胎盤前駆細胞、臍帯幹細胞または臍帯前駆細胞、骨髄幹細胞、およびホウォートンゼリー幹細胞またはホウォートンゼリー前駆細胞からなる群から選択される。
【0031】
ある特定の実施形態では、幹細胞または前駆細胞は造血幹細胞または造血前駆細胞である。
【0032】
さらなる特定の実施形態では、細胞は末梢血、骨髄、臍帯血、ホウォートンゼリー、胎盤、または胎児血から単離される。
【0033】
他の特定の実施形態では、幹細胞または前駆細胞はCD34
+細胞である。
【0034】
追加的な特定の実施形態では、幹細胞または前駆細胞を、細胞を処理する前にex vivoにおいて増大させる、または増大させている。
【0035】
いくつかの特定の実施形態では、幹細胞または前駆細胞は同種異系または自己由来のものである。
【0036】
ある特定の実施形態では、幹細胞または前駆細胞は同種異系であり、患者と完全なまたは部分的なHLAマッチを有する。
【0037】
ある特定の実施形態では、幹細胞または前駆細胞は患者とマッチしない。
【0038】
ある特定のさらなる実施形態では、幹細胞または前駆細胞は異種である。
【0039】
ある特定の追加的な実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストは、プロスタグランジン、プロスタグランジンEP
2受容体アゴニスト、プロスタグランジンEP
4受容体アゴニストおよび16,16−ジメチルPGE
2(dmPGE
2)活性を有する作用剤からなる群から選択される。
【0040】
いくつかのある特定の実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストは、プロスタグランジンE
2(PGE
2)、およびdmPGE
2からなる群から選択される。
【0041】
他の特定の実施形態では、グルココルチコイドは、アルクロメタゾン、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、クロベタゾール、酪酸クロベタゾール(clobetasol butyrate)、プロピオン酸クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチゾール、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコート、デソニド、デスオキシメタゾン(desoximetasone)、デスオキシコルトン、デスオキシメタゾン(desoxymethasone)、デキサメタゾン、ジフロラゾン、二酢酸ジフロラゾン、ジフルコルトロン、吉草酸ジフルコルトロン、ジフルオロコルトロン(difluorocortolone)、ジフルプレドナート、フルクロロロン、フルクロロロンアセトニド、フルドロキシコルチド、フルメタゾン(flumetasone)、フルメタゾン(flumethasone)、ピバル酸フルメタゾン、フルニソリド、フルニソリド半水和物、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチン、フルオコルチンブチル(fluocoritin butyl)、フルオコルトロン、フルオロコルチゾン、フルオロメトロン、フルペロロン、フルプレドニデン、酢酸フルプレドニデン、フルプレドニゾロン、フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ホルモコータル、ハルシノニド、ハロメタゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、アセポン酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンブテプレート、酪酸ヒドロコルチゾン、ロテプレドノール、メドリゾン、メプレドニゾン、6a−メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、モメタゾン、フロ酸モメタゾン、フロ酸モメタゾン一水和物、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニドおよびウロベタゾールからなる群から選択される。
【0042】
追加的な実施形態では、グルココルチコイドは、メドリゾン、ヒドロコルチゾン、アルクロメタゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロンまたはコルチゾールからなる群から選択される。
【0043】
特定の追加的な実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストはPGE
2もしくはdmPGE
2またはその類似体であり、グルココルチコイドはメドリゾンである。
【0044】
さらなる追加的な実施形態では、処理した幹細胞または前駆細胞における虚血組織または虚血による損傷を受けた組織への幹細胞または前駆細胞のホーミングの増加に関連する1種または複数種の遺伝子の発現は、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも2倍増加し、1種または複数種の遺伝子は、ヒアルロナンシンターゼ1(HAS1)、GTP結合タンパク質GEM(GEM)、二重特異性プロテインホスファターゼ4(DUSP4)、アンフィレギュリン(AREG)、核受容体関連タンパク質1(NR4A2)、レニン(REN)、cAMP応答エレメントモジュレーター(CREM)、I型アルファ1コラーゲン(COL1A1)、およびFos関連抗原2(FOSL2)からなる群から選択される。
【0045】
ある特定の追加的な実施形態では、処理した幹細胞または前駆細胞における虚血組織または虚血による損傷を受けた組織への幹細胞または前駆細胞のホーミングの増加に関連する1種または複数種の遺伝子の発現は、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも2倍増加し、1種または複数種の遺伝子は、ヒアルロナンシンターゼ1(HAS1)、GTP結合タンパク質GEM(GEM)、二重特異性プロテインホスファターゼ4(DUSP4)、アンフィレギュリン(AREG)、核受容体関連タンパク質1(NR4A2)、レニン(REN)、cAMP応答エレメントモジュレーター(CREM)、I型アルファ1コラーゲン(COL1A1)、Fos関連抗原2(FOSL2)、およびCXCケモカイン受容体4(CXCR4)からなる群から選択される。
【0046】
さらなる追加的な実施形態では、1種または複数種の遺伝子は、cAMP応答エレメントモジュレーター(CREM)およびCXCケモカイン受容体4(CXCR4)からなる群から選択される。
【0047】
他の追加的な実施形態では、1種または複数種の遺伝子はCXCR4を含む。
【0048】
いくつかの追加的な実施形態では、処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2、およびCXCR4のうちの少なくとも1つの遺伝子発現は、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも約5倍増加する。
【0049】
さらなる実施形態では、処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2、およびCXCR4のうちの少なくとも1つの遺伝子発現は、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも約10倍増加する。
【0050】
ある特定のさらなる実施形態では、処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2、およびCXCR4のうちの少なくとも1つの遺伝子発現は、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも約20倍増加する。
【0051】
特定のさらなる実施形態では、処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2、およびCXCR4のうちの少なくとも1つの遺伝子発現は、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも約50倍増加する。
【0052】
いくつかのさらなる実施形態では、処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2、およびCXCR4のうちの少なくとも1つの遺伝子発現は、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも約60倍増加する。
【0053】
他のさらなる実施形態では、処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2、およびCXCR4のうちの少なくとも1つの遺伝子発現は、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも約70倍増加する。
【0054】
さらに他のさらなる実施形態では、処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2、およびCXCR4のうちの少なくとも1つの遺伝子発現は、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも約80倍増加する。
【0055】
特定の実施形態では、処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2、およびCXCR4のうちの少なくとも2つの遺伝子発現は、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも約2倍増加する。
【0056】
追加的な実施形態では、処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2、およびCXCR4のうちの少なくとも2つの遺伝子発現は、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも約5倍増加する。
【0057】
他の実施形態では、処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2、およびCXCR4のうちの少なくとも2つの遺伝子発現は、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも約10倍増加する。
【0058】
いくつかの実施形態では、処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2、およびCXCR4のうちの少なくとも2つの遺伝子発現は、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも約20倍増加する。
【0059】
さらなる実施形態では、処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2、およびCXCR4のうちの少なくとも3つの遺伝子発現は、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも約2倍増加する。
【0060】
ある特定の実施形態では、処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2、およびCXCR4のうちの少なくとも3つの遺伝子発現は、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも約5倍増加する。
【0061】
特定の実施形態では、処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2、およびCXCR4のうちの少なくとも3つの遺伝子発現は、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも約10倍増加する。
【0062】
いくつかの特定の実施形態では、処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2、およびCXCR4のうちの少なくとも3つの遺伝子発現は、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも約20倍増加する。
【0063】
追加的な特定の実施形態では、処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2、およびCXCR4のうちの少なくとも5つの遺伝子発現は、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも約2倍増加する。
【0064】
ある特定の実施形態では、処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2、およびCXCR4のうちの少なくとも5つの遺伝子発現は、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも約5倍増加する。
【0065】
さらなる特定の実施形態では、処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2、およびCXCR4のうちの少なくとも5つの遺伝子発現は、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも約10倍増加する。
【0066】
他の特定の実施形態では、処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2、およびCXCR4のうちの少なくとも5つの遺伝子発現は、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも約20倍増加する。
【0067】
ある特定の実施形態では、SDF−1トランスウェル遊走アッセイにおいて処理した細胞の%遊走は、処理した幹細胞または前駆細胞において無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも3倍増加する。
【0068】
他のある特定の実施形態では、SDF−1トランスウェル遊走アッセイにおいて処理した細胞の%遊走は、処理した幹細胞または前駆細胞において無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも3倍増加する。
【0069】
他の特定の実施形態では、SDF−1トランスウェル遊走アッセイにおいて処理した細胞の%遊走は、処理した幹細胞または前駆細胞において無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも4倍増加する。
【0070】
さらなる特定の実施形態では、SDF−1トランスウェル遊走アッセイにおいて処理した細胞の%遊走は、処理した幹細胞または前駆細胞において無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも5倍増加する。
【0071】
追加的なさらなる実施形態では、SDF−1トランスウェル遊走アッセイにおいて処理した細胞の%遊走は、処理した幹細胞または前駆細胞において無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも10倍増加する。
【0072】
ある特定の追加的な実施形態では、SDF−1トランスウェル遊走アッセイにおいて処理した細胞の%遊走は、処理した幹細胞または前駆細胞において無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも20倍増加する。
【0073】
ある特定の実施形態では、虚血は、急性冠状動脈症候群、急性肺傷害(ALI)、急性心筋梗塞(AMI)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、動脈閉塞性疾患、動脈硬化症、関節軟骨欠損、無菌性全身性炎症(aseptic systemic inflammation)、アテローム硬化性心血管疾患、自己免疫疾患、骨折、骨折、脳浮腫、脳低灌流、バージャー病、熱傷、がん、心血管疾患、軟骨損傷、脳梗塞、脳虚血、脳卒中、脳血管疾患、化学療法誘発性ニューロパチー、慢性感染、慢性腸間膜虚血、跛行、うっ血性心不全、結合組織損傷、挫傷、冠動脈疾患(CAD)、重症肢虚血(CLI)、クローン病、深部静脈血栓症、深部創傷、潰瘍治癒の遅延、創傷治癒の遅延、糖尿病(I型およびII型)、糖尿病性ニューロパチー、糖尿病誘発性虚血、播種性血管内凝固(DIC)、塞栓性脳虚血、凍傷、移植片対宿主病、遺伝性出血性毛細血管拡張症、虚血性血管疾患、高酸素傷害、低酸素症、炎症、炎症性腸疾患、炎症性疾患、傷害を受けた腱、間欠性跛行、腸管虚血、虚血、虚血性脳疾患、虚血性心疾患、虚血性末梢血管疾患、虚血胎盤、虚血性腎疾患、虚血性血管疾患、虚血再灌流傷害、裂傷、左主冠状動脈疾患、肢虚血、下肢虚血、心筋梗塞、心筋虚血、臓器虚血、変形性関節症、骨粗鬆症、骨肉腫、パーキンソン病、末梢動脈性疾患(PAD)、末梢動脈疾患、末梢性虚血、末梢性ニューロパチー、末梢血管疾患、前がん、肺水腫、肺塞栓症、リモデリング障害、腎臓虚血、網膜虚血、網膜症、敗血症、皮膚潰瘍、実質臓器移植、脊髄傷害、卒中、軟骨下骨嚢胞、血栓症、血栓性脳虚血、組織虚血、一過性脳虚血発作(TIA)、外傷性脳傷害、潰瘍性大腸炎、腎臓の血管疾患、血管の炎症性の状態、フォンヒッペル・リンダウ症候群、あるいは組織または臓器の創傷に関連する。
【0074】
追加的な特定の実施形態では、被験体は、脳血管虚血、心筋虚血、肢虚血(CLI)、心筋虚血(特に、慢性心筋虚血)、虚血性心筋症、脳血管虚血、腎臓虚血、肺虚血、腸管虚血を有する。
【0075】
他の特定の実施形態では、被験体は、外科手術、化学療法、放射線療法、または細胞、組織、もしくは臓器の移植を受けている。
【0076】
ある特定の他の実施形態では、虚血組織または虚血による損傷を受けた組織は、皮膚組織、骨格筋組織、心筋組織、平滑筋組織、軟骨組織、腱組織、脳組織、脊髄組織、網膜組織、角膜組織、肺組織、肝組織、腎組織、膵組織、卵巣組織、精巣組織、腸組織、胃組織、および膀胱組織からなる群から選択される。
【0077】
さらなるある特定の実施形態では、虚血組織または虚血による損傷を受けた組織は、非虚血組織と比較して血流の低下、低酸素、無酸素、低血糖、代謝の低下、壊死の増加、またはアポトーシスの増加を有する。
【0078】
追加的なさらなる実施形態では、虚血組織または虚血による損傷を受けた組織に関連する1つまたは複数の症状は、痙攣、跛行、しびれ、刺痛、衰弱、疼痛、創傷治癒の低下、炎症、皮膚変色、および壊疽からなる群から選択される。
【0079】
特定の追加的な実施形態では、組成物を被験体に投与する前に、処理した幹細胞または前駆細胞を洗浄して、組成物中のプロスタグランジン経路アゴニストまたはグルココルチコイドを実質的に除去する。
【0080】
種々の特定の実施形態では、組成物は造血幹細胞または造血前駆細胞を含み、プロスタグランジン経路アゴニストは16,16−dmPGE
2またはPGE
2であり、処理した細胞におけるCXCR4の遺伝子発現は無処理の細胞と比較して少なくとも5倍増加し、造血幹細胞または造血前駆細胞は16,16−dmPGE
2と約37℃の温度で約2時間にわたって接触させたものである。
【0081】
他の種々の実施形態では、組成物は造血幹細胞または造血前駆細胞を含み、プロスタグランジン経路アゴニストは16,16−dmPGE
2またはPGE
2であり、グルココルチコイドは、メドリゾン、ヒドロコルチゾン、アルクロメタゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロンまたはコルチゾールからなる群から選択され、処理した細胞におけるCXCR4の遺伝子発現は無処理の細胞と比較して少なくとも5倍増加し、造血幹細胞または造血前駆細胞は16,16−dmPGE
2と約37℃の温度で約2時間にわたって接触させたものである。
【0082】
他の特定の実施形態では、組成物を被験体に非経口投与する。
【0083】
ある特定の実施形態では、非経口投与は、血管内投与、筋肉内投与、および皮下投与からなる群から選択される。
【0084】
追加的なある特定の実施形態では、組成物を、虚血組織または虚血による損傷を受けた組織の部位に、またはその付近に筋肉内投与する。
【0085】
さらなる追加的な実施形態では、被験体に組成物を少なくとも約24時間の時間間隔を開けて1用量超投与する。
【0086】
一実施形態では、本発明は、一部において、被験体における虚血に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法であって、それを必要とする被験体に、ex vivoにおいて16,16−dmPGE
2またはPGE
2と約37℃の温度で約2時間にわたって接触させた造血幹細胞および造血前駆細胞を含む治療有効量の組成物を投与する工程を含み、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるヒアルロナンシンターゼ1(HAS1)、GTP結合タンパク質GEM(GEM)、二重特異性プロテインホスファターゼ4(DUSP4)、アンフィレギュリン(AREG)、核受容体関連タンパク質1(NR4A2)、レニン(REN)、cAMP応答エレメントモジュレーター(CREM)、I型アルファ1コラーゲン(COL1A1)、Fos関連抗原2(FOSL2)、またはCXCケモカイン受容体4(CXCR4)からなる群から選択される1種または複数種の遺伝子の遺伝子発現が、接触させていない造血幹細胞または造血前駆細胞における遺伝子の発現と比較して少なくとも5倍増加する方法を意図している。
【0087】
一実施形態では、本発明は、一部において、被験体における虚血に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法であって、それを必要とする被験体に、ex vivoにおいて(i)16,16−dmPGE
2またはPGE
2および(ii)メドリゾン、ヒドロコルチゾン、アルクロメタゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロンまたはコルチゾールからなる群から選択されるグルココルチコイドと約37℃の温度で約2時間にわたって接触させた造血幹細胞および造血前駆細胞を含む治療有効量の組成物を投与する工程を含み、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるヒアルロナンシンターゼ1(HAS1)、GTP結合タンパク質GEM(GEM)、二重特異性プロテインホスファターゼ4(DUSP4)、アンフィレギュリン(AREG)、核受容体関連タンパク質1(NR4A2)、レニン(REN)、cAMP応答エレメントモジュレーター(CREM)、I型アルファ1コラーゲン(COL1A1)、Fos関連抗原2(FOSL2)、またはCXCケモカイン受容体4(CXCR4)からなる群から選択される1種または複数種の遺伝子の遺伝子発現が、接触させていない造血幹細胞または造血前駆細胞における遺伝子の発現と比較して少なくとも5倍増加する方法を意図している。
【0088】
特定の実施形態では、虚血組織または虚血による損傷を受けた組織に関連する1つまたは複数の症状は、痙攣、跛行、しびれ、刺痛、衰弱、疼痛、創傷治癒の低下、炎症、皮膚変色、および壊疽からなる群から選択される。
【0089】
一実施形態では、本発明は、一部において、被験体における虚血組織を処置する方法であって、それを必要とする被験体に、ex vivoにおいて16,16−dmPGE
2またはPGE
2と約37℃の温度で約2時間にわたって接触させた造血幹細胞および造血前駆細胞を含む治療有効量の組成物を投与する工程を含み、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるヒアルロナンシンターゼ1(HAS1)、GTP結合タンパク質GEM(GEM)、二重特異性プロテインホスファターゼ4(DUSP4)、アンフィレギュリン(AREG)、核受容体関連タンパク質1(NR4A2)、レニン(REN)、cAMP応答エレメントモジュレーター(CREM)、I型アルファ1コラーゲン(COL1A1)、Fos関連抗原2(FOSL2)、またはCXCケモカイン受容体4(CXCR4)からなる群から選択される1種または複数種の遺伝子の遺伝子発現が、接触させていない造血幹細胞または造血前駆細胞における遺伝子の発現と比較して少なくとも5倍増加する方法を意図している。
【0090】
一実施形態では、本発明は、一部において、被験体における虚血組織を処置する方法であって、それを必要とする被験体に、ex vivoにおいて(i)16,16−dmPGE
2またはPGE
2および(ii)メドリゾン、ヒドロコルチゾン、アルクロメタゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロンまたはコルチゾールからなる群から選択されるグルココルチコイドと約37℃の温度で約2時間にわたって接触させた造血幹細胞および造血前駆細胞を含む治療有効量の組成物を投与する工程を含み、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるヒアルロナンシンターゼ1(HAS1)、GTP結合タンパク質GEM(GEM)、二重特異性プロテインホスファターゼ4(DUSP4)、アンフィレギュリン(AREG)、核受容体関連タンパク質1(NR4A2)、レニン(REN)、cAMP応答エレメントモジュレーター(CREM)、I型アルファ1コラーゲン(COL1A1)、Fos関連抗原2(FOSL2)、またはCXCケモカイン受容体4(CXCR4)からなる群から選択される1種または複数種の遺伝子の遺伝子発現が、接触させていない造血幹細胞または造血前駆細胞における遺伝子の発現と比較して少なくとも50倍増加する方法を意図している。
【0091】
種々の実施形態では、グルココルチコイドはメドリゾンである。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
虚血組織または虚血による損傷を受けた組織への、幹細胞または前駆細胞のホーミングを増加させる方法であって、該方法は、
(a)幹細胞または前駆細胞を、ex vivoにおいて、プロスタグランジン経路アゴニスト、および必要に応じてグルココルチコイドを用いて処理する工程であって、処理した幹細胞または前駆細胞におけるCXCR4遺伝子発現を無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも2倍増加させるために十分な条件下で処理する工程;ならびに
(b)該処理した幹細胞または前駆細胞を含む組成物を、虚血組織または虚血による損傷を受けた組織を有する被験体に投与する工程
を含む方法。
(項目2)
虚血組織または虚血による損傷を受けた組織を有する被験体を処置する方法であって、該方法は、ex vivoにおいて、プロスタグランジン経路アゴニスト、および必要に応じてグルココルチコイドを用いて、処理した幹細胞または前駆細胞におけるCXCR4遺伝子発現を無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも2倍増加させるために十分な条件下で処理した幹細胞または前駆細胞を含む治療有効量の組成物を投与する工程を含む方法。
(項目3)
被験体における虚血組織または虚血による損傷を受けた組織に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法であって、該方法は、ex vivoにおいて、プロスタグランジン経路アゴニスト、および必要に応じてグルココルチコイドを用いて、処理した幹細胞または前駆細胞におけるCXCR4遺伝子発現を無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも2倍増加させるために十分な条件下で処理した幹細胞または前駆細胞を含む治療有効量の組成物を投与する工程を含む方法。
(項目4)
虚血組織または虚血による損傷を受けた組織への、幹細胞または前駆細胞のホーミングを増加させる方法であって、該方法は、
(a)幹細胞または前駆細胞を、ex vivoにおいて、プロスタグランジン経路アゴニスト、および必要に応じてグルココルチコイドを用いて、処理した幹細胞または前駆細胞のSDF−1トランスウェル遊走アッセイにおけるパーセント(%)遊走を、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも2倍増加させるために十分な条件下で処理する工程;ならびに
(b)該処理した幹細胞または前駆細胞を含む組成物を、虚血組織または虚血による損傷を受けた組織を有する被験体に投与する工程
を含む方法。
(項目5)
虚血組織または虚血による損傷を受けた組織を有する被験体を処置する方法であって、該方法は、ex vivoにおいて、プロスタグランジン経路アゴニスト、および必要に応じてグルココルチコイドを用いて、処理した幹細胞または前駆細胞のSDF−1トランスウェル遊走アッセイにおけるパーセント(%)遊走を無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも2倍増加させるために十分な条件下で処理した幹細胞または前駆細胞を含む治療有効量の組成物を投与する工程を含む方法。
(項目6)
被験体における虚血組織または虚血による損傷を受けた組織に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法であって、該方法は、ex vivoにおいて、プロスタグランジン経路アゴニスト、および必要に応じてグルココルチコイドを用いて、処理した幹細胞または前駆細胞のSDF−1トランスウェル遊走アッセイにおけるパーセント(%)遊走を、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも2倍増加させるために十分な条件下で処理した幹細胞または前駆細胞を含む治療有効量の組成物を投与する工程を含む方法。
(項目7)
前記幹細胞または前駆細胞を約22℃〜約37℃の温度で約24時間未満の期間にわたって処理している、項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
前記幹細胞または前駆細胞を約22℃〜約37℃の温度で約1時間〜約4時間にわたって処理している、項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記幹細胞または前駆細胞を約37℃の温度で約4時間にわたって処理している、項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記幹細胞または前駆細胞が胚性幹細胞である、項目1から9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記幹細胞または前駆細胞が成体の幹細胞である、項目1から9のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
前記幹細胞または前駆細胞が、内皮幹細胞または内皮前駆細胞、中胚葉系幹細胞または中胚葉系前駆細胞、および外胚葉系幹細胞または外胚葉系前駆細胞からなる群から選択される、項目1から9のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
前記幹細胞または前駆細胞が、間葉系幹細胞または間葉系前駆細胞、造血幹細胞または造血前駆細胞、胎盤幹細胞または胎盤前駆細胞、臍帯幹細胞または臍帯前駆細胞、骨髄幹細胞、およびホウォートンゼリー幹細胞またはホウォートンゼリー前駆細胞からなる群から選択される、項目1から9のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
前記幹細胞または前駆細胞が造血幹細胞または造血前駆細胞である、項目1から9のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記細胞が、末梢血、骨髄、臍帯血、ホウォートンゼリー、胎盤、または胎児血から単離される、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記幹細胞または前駆細胞がCD34+細胞である、項目1から15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記幹細胞または前駆細胞を、該細胞を処理する前にex vivoにおいて増大させる、または増大させている、項目1から16のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記幹細胞または前駆細胞が同種異系または自己由来のものである、項目1から17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記幹細胞または前駆細胞が同種異系であり、前記患者と完全なまたは部分的なHLAマッチを有する、項目1から18のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記幹細胞または前駆細胞が前記患者とマッチしない、項目1から18のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
前記幹細胞または前駆細胞が異種である、項目1から17のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記プロスタグランジン経路アゴニストが、プロスタグランジン、プロスタグランジンEP2受容体アゴニスト、プロスタグランジンEP4受容体アゴニストおよび16,16−ジメチルPGE2(dmPGE2)活性を有する作用剤からなる群から選択される、項目1から21のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記プロスタグランジン経路アゴニストが、プロスタグランジンE2(PGE2)、およびdmPGE2からなる群から選択される、項目1から21のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記グルココルチコイドが、アルクロメタゾン、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、クロベタゾール、酪酸クロベタゾール、プロピオン酸クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチゾール、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコート、デソニド、デスオキシメタゾン(desoximetasone)、デスオキシコルトン、デスオキシメタゾン(desoxymethasone)、デキサメタゾン、ジフロラゾン、二酢酸ジフロラゾン、ジフルコルトロン、吉草酸ジフルコルトロン、ジフルオロコルトロン、ジフルプレドナート、フルクロロロン、フルクロロロンアセトニド、フルドロキシコルチド、フルメタゾン(flumetasone)、フルメタゾン(flumethasone)、ピバル酸フルメタゾン、フルニソリド、フルニソリド半水和物、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチン、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオロコルチゾン、フルオロメトロン、フルペロロン、フルプレドニデン、酢酸フルプレドニデン、フルプレドニゾロン、フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ホルモコータル、ハルシノニド、ハロメタゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、アセポン酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンブテプレート、酪酸ヒドロコルチゾン、ロテプレドノール、メドリゾン、メプレドニゾン、6a−メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、モメタゾン、フロ酸モメタゾン、フロ酸モメタゾン一水和物、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニドおよびウロベタゾールからなる群から選択される、項目1から23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記グルココルチコイドが、メドリゾン、ヒドロコルチゾン、アルクロメタゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロンまたはコルチゾールからなる群から選択される、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記プロスタグランジン経路アゴニストがPGE2もしくはdmPGE2またはその類似体であり、前記グルココルチコイドがメドリゾンである、項目24に記載の方法。
(項目27)
前記処理した幹細胞または前駆細胞における前記虚血組織または虚血による損傷を受けた組織への該幹細胞または前駆細胞のホーミングの増加に関連する1種または複数種の遺伝子の発現が、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも2倍増加し、該1種または複数種の遺伝子が、ヒアルロナンシンターゼ1(HAS1)、GTP結合タンパク質GEM(GEM)、二重特異性プロテインホスファターゼ4(DUSP4)、アンフィレギュリン(AREG)、核受容体関連タンパク質1(NR4A2)、レニン(REN)、cAMP応答エレメントモジュレーター(CREM)、I型アルファ1コラーゲン(COL1A1)、およびFos関連抗原2(FOSL2)からなる群から選択される、項目1から3のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記処理した幹細胞または前駆細胞における前記虚血組織または虚血による損傷を受けた組織への前記幹細胞または前駆細胞のホーミングの増加に関連する1種または複数種の遺伝子の発現が、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも2倍増加し、該1種または複数種の遺伝子が、ヒアルロナンシンターゼ1(HAS1)、GTP結合タンパク質GEM(GEM)、二重特異性プロテインホスファターゼ4(DUSP4)、アンフィレギュリン(AREG)、核受容体関連タンパク質1(NR4A2)、レニン(REN)、cAMP応答エレメントモジュレーター(CREM)、I型アルファ1コラーゲン(COL1A1)、Fos関連抗原2(FOSL2)、およびCXCケモカイン受容体4(CXCR4)からなる群から選択される、項目4から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目29)
前記1種または複数種の遺伝子が、cAMP応答エレメントモジュレーター(CREM)およびCXCケモカイン受容体4(CXCR4)からなる群から選択される、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記1種または複数種の遺伝子がCXCR4を含む、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2、およびCXCR4のうちの少なくとも1つの遺伝子発現が、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも約5倍増加する、項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
前記処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2、およびCXCR4のうちの少なくとも1つの遺伝子発現が、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも約10倍増加する、項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
前記処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2、およびCXCR4のうちの少なくとも1つの遺伝子発現が、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも約20倍増加する、項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
前記処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2、およびCXCR4のうちの少なくとも1つの遺伝子発現が、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも約50倍増加する、項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目35)
前記処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2、およびCXCR4のうちの少なくとも1つの遺伝子発現が、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも約60倍増加する、項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
前記処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2、およびCXCR4のうちの少なくとも1つの遺伝子発現が、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも約70倍増加する、項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
前記処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2、およびCXCR4のうちの少なくとも1つの遺伝子発現が、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも約80倍増加する、項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
前記処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2、およびCXCR4のうちの少なくとも2つの遺伝子発現が、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも約2倍増加する、項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目39)
前記処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2、およびCXCR4のうちの少なくとも2つの遺伝子発現が、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも約5倍増加する、項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目40)
前記処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2、およびCXCR4のうちの少なくとも2つの遺伝子発現が、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも約10倍増加する、項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目41)
前記処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2、およびCXCR4のうちの少なくとも2つの遺伝子発現が、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも約20倍増加する、項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目42)
前記処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2、およびCXCR4のうちの少なくとも3つの遺伝子発現が、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも約2倍増加する、項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
前記処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2、およびCXCR4のうちの少なくとも3つの遺伝子発現が、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも約5倍増加する、項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目44)
前記処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2、およびCXCR4のうちの少なくとも3つの遺伝子発現が、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも約10倍増加する、項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目45)
前記処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2、およびCXCR4のうちの少なくとも3つの遺伝子発現が、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも約20倍増加する、項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目46)
前記処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2、およびCXCR4のうちの少なくとも5つの遺伝子発現が、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも約2倍増加する、項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目47)
前記処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2、およびCXCR4のうちの少なくとも5つの遺伝子発現が、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも約5倍増加する、項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目48)
前記処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2、およびCXCR4のうちの少なくとも5つの遺伝子発現が、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも約10倍増加する、項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目49)
前記処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2、およびCXCR4のうちの少なくとも5つの遺伝子発現が、無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも約20倍増加する、項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目50)
SDF−1トランスウェル遊走アッセイにおいて前記処理した細胞の%遊走が、該処理した幹細胞または前駆細胞において無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも3倍増加する、項目4から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目51)
SDF−1トランスウェル遊走アッセイにおいて前記処理した細胞の%遊走が、該処理した幹細胞または前駆細胞において無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも3倍増加する、項目4から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目52)
SDF−1トランスウェル遊走アッセイにおいて前記処理した細胞の%遊走が、該処理した幹細胞または前駆細胞において無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも4倍増加する、項目4から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目53)
SDF−1トランスウェル遊走アッセイにおいて前記処理した細胞の%遊走が、該処理した幹細胞または前駆細胞において無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも5倍増加する、項目4から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目54)
SDF−1トランスウェル遊走アッセイにおいて前記処理した細胞の%遊走が、該処理した幹細胞または前駆細胞において無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも10倍増加する、項目4から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目55)
SDF−1トランスウェル遊走アッセイにおいて前記処理した細胞の%遊走が、該処理した幹細胞または前駆細胞において無処理の幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも20倍増加する、項目4から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目56)
前記虚血が、急性冠状動脈症候群、急性肺傷害(ALI)、急性心筋梗塞(AMI)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、動脈閉塞性疾患、動脈硬化症、関節軟骨欠損、無菌性全身性炎症、アテローム硬化性心血管疾患、自己免疫疾患、骨折、骨折、脳浮腫、脳低灌流、バージャー病、熱傷、がん、心血管疾患、軟骨損傷、脳梗塞、脳虚血、脳卒中、脳血管疾患、化学療法誘発性ニューロパチー、慢性感染、慢性腸間膜虚血、跛行、うっ血性心不全、結合組織損傷、挫傷、冠動脈疾患(CAD)、重症肢虚血(CLI)、クローン病、深部静脈血栓症、深部創傷、潰瘍治癒の遅延、創傷治癒の遅延、糖尿病(I型およびII型)、糖尿病性ニューロパチー、糖尿病誘発性虚血、播種性血管内凝固(DIC)、塞栓性脳虚血、凍傷、移植片対宿主病、遺伝性出血性毛細血管拡張症、虚血性血管疾患、高酸素傷害、低酸素症、炎症、炎症性腸疾患、炎症性疾患、傷害を受けた腱、間欠性跛行、腸管虚血、虚血、虚血性脳疾患、虚血性心疾患、虚血性末梢血管疾患、虚血胎盤、虚血性腎疾患、虚血性血管疾患、虚血再灌流傷害、裂傷、左主冠状動脈疾患、肢虚血、下肢虚血、心筋梗塞、心筋虚血、臓器虚血、変形性関節症、骨粗鬆症、骨肉腫、パーキンソン病、末梢動脈性疾患(PAD)、末梢動脈疾患、末梢性虚血、末梢性ニューロパチー、末梢血管疾患、前がん、肺水腫、肺塞栓症、リモデリング障害、腎臓虚血、網膜虚血、網膜症、敗血症、皮膚潰瘍、実質臓器移植、脊髄傷害、卒中、軟骨下骨嚢胞、血栓症、血栓性脳虚血、組織虚血、一過性脳虚血発作(TIA)、外傷性脳傷害、潰瘍性大腸炎、腎臓の血管疾患、血管の炎症性の状態、フォンヒッペル・リンダウ症候群、あるいは組織または臓器の創傷に関連する、項目1から55のいずれか一項に記載の方法。
(項目57)
前記被験体が、脳血管虚血、心筋虚血、肢虚血(CLI)、心筋虚血(特に、慢性心筋虚血)、虚血性心筋症、脳血管虚血、腎臓虚血、肺虚血、腸管虚血を有する、項目1から55のいずれか一項に記載の方法。
(項目58)
前記被験体が、外科手術、化学療法、放射線療法、または細胞、組織、もしくは臓器の移植を受けている、項目1から55のいずれか一項に記載の方法。
(項目59)
前記虚血組織または虚血による損傷を受けた組織が、皮膚組織、骨格筋組織、心筋組織、平滑筋組織、軟骨組織、腱組織、脳組織、脊髄組織、網膜組織、角膜組織、肺組織、肝組織、腎組織、膵組織、卵巣組織、精巣組織、腸組織、胃組織、および膀胱組織からなる群から選択される、項目1から55のいずれか一項に記載の方法。
(項目60)
前記虚血組織または虚血による損傷を受けた組織が、非虚血組織と比較して血流の低下、低酸素、無酸素、低血糖、代謝の低下、壊死の増加、またはアポトーシスの増加を有する、項目1から55のいずれか一項に記載の方法。
(項目61)
前記虚血組織または虚血による損傷を受けた組織に関連する前記1つまたは複数の症状が、痙攣、跛行、しびれ、刺痛、衰弱、疼痛、創傷治癒の低下、炎症、皮膚変色、および壊疽からなる群から選択される、項目3または6に記載の方法。
(項目62)
前記組成物を前記被験体に投与する前に、前記処理した幹細胞または前駆細胞を洗浄して、該組成物中の前記プロスタグランジン経路アゴニストまたはグルココルチコイドを実質的に除去する、項目1から61のいずれか一項に記載の方法。
(項目63)
前記組成物が造血幹細胞または造血前駆細胞を含み、
前記プロスタグランジン経路アゴニストが16,16−dmPGE2またはPGE2であり、
前記処理した細胞におけるCXCR4の遺伝子発現が、無処理の細胞と比較して少なくとも5倍増加し、
該造血幹細胞または造血前駆細胞が、16,16−dmPGE2と約37℃の温度で約2時間にわたって接触させたものである、項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目64)
前記組成物が造血幹細胞または造血前駆細胞を含み、
前記プロスタグランジン経路アゴニストが16,16−dmPGE2またはPGE2であり、
前記グルココルチコイドが、メドリゾン、ヒドロコルチゾン、アルクロメタゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロンまたはコルチゾールからなる群から選択され、
前記処理した細胞におけるCXCR4の遺伝子発現が、無処理の細胞と比較して少なくとも5倍増加し、
該造血幹細胞または造血前駆細胞が、16,16−dmPGE2と約37℃の温度で約2時間にわたって接触させたものである、項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目65)
前記組成物を前記被験体に非経口投与する、項目1から64のいずれか一項に記載の方法。
(項目66)
前記非経口投与が、血管内投与、筋肉内投与、および皮下投与からなる群から選択される、項目65に記載の方法。
(項目67)
前記組成物を、前記虚血組織または虚血による損傷を受けた組織の部位に、またはその付近に筋肉内投与する、項目65に記載の方法。
(項目68)
前記被験体に前記組成物を少なくとも約24時間の時間間隔を開けて1用量超投与する、項目1から67のいずれか一項に記載の方法。
(項目69)
被験体における虚血に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法であって、該方法は、
それを必要とする被験体に、ex vivoにおいて16,16−dmPGE2またはPGE2と約37℃の温度で約2時間にわたって接触させた造血幹細胞および造血前駆細胞を含む治療有効量の組成物を投与する工程を含み、
該接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるヒアルロナンシンターゼ1(HAS1)、GTP結合タンパク質GEM(GEM)、二重特異性プロテインホスファターゼ4(DUSP4)、アンフィレギュリン(AREG)、核受容体関連タンパク質1(NR4A2)、レニン(REN)、cAMP応答エレメントモジュレーター(CREM)、I型アルファ1コラーゲン(COL1A1)、Fos関連抗原2(FOSL2)、またはCXCケモカイン受容体4(CXCR4)からなる群から選択される1種または複数種の遺伝子の遺伝子発現が、接触させていない造血幹細胞または造血前駆細胞における遺伝子の発現と比較して少なくとも5倍増加する方法。
(項目70)
被験体における虚血に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法であって、該方法は、
それを必要とする被験体に、ex vivoにおいて(i)16,16−dmPGE2またはPGE2および(ii)メドリゾン、ヒドロコルチゾン、アルクロメタゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロンまたはコルチゾールからなる群から選択されるグルココルチコイドと約37℃の温度で約2時間にわたって接触させた造血幹細胞および造血前駆細胞を含む治療有効量の組成物を投与する工程を含み、
該接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるヒアルロナンシンターゼ1(HAS1)、GTP結合タンパク質GEM(GEM)、二重特異性プロテインホスファターゼ4(DUSP4)、アンフィレギュリン(AREG)、核受容体関連タンパク質1(NR4A2)、レニン(REN)、cAMP応答エレメントモジュレーター(CREM)、I型アルファ1コラーゲン(COL1A1)、Fos関連抗原2(FOSL2)、またはCXCケモカイン受容体4(CXCR4)からなる群から選択される1種または複数種の遺伝子の遺伝子発現が、接触させていない造血幹細胞または造血前駆細胞における遺伝子の発現と比較して少なくとも5倍増加する方法。
(項目71)
前記虚血組織または虚血による損傷を受けた組織に関連する前記1つまたは複数の症状が、痙攣、跛行、しびれ、刺痛、衰弱、疼痛、創傷治癒の低下、炎症、皮膚変色、および壊疽からなる群から選択される、項目69または70に記載の方法。
(項目72)
被験体における虚血組織を処置する方法であって、
それを必要とする被験体に、ex vivoにおいて16,16−dmPGE2またはPGE2と約37℃の温度で約2時間にわたって接触させた造血幹細胞および造血前駆細胞を含む治療有効量の組成物を投与する工程を含み、
該接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるヒアルロナンシンターゼ1(HAS1)、GTP結合タンパク質GEM(GEM)、二重特異性プロテインホスファターゼ4(DUSP4)、アンフィレギュリン(AREG)、核受容体関連タンパク質1(NR4A2)、レニン(REN)、cAMP応答エレメントモジュレーター(CREM)、I型アルファ1コラーゲン(COL1A1)、Fos関連抗原2(FOSL2)、またはCXCケモカイン受容体4(CXCR4)からなる群から選択される1種または複数種の遺伝子の遺伝子発現が、接触させていない造血幹細胞または造血前駆細胞における遺伝子の発現と比較して少なくとも5倍増加する方法。
(項目73)
被験体における虚血組織を処置する方法であって、該方法は、
それを必要とする被験体に、ex vivoにおいて(i)16,16−dmPGE2またはPGE2および(ii)メドリゾン、ヒドロコルチゾン、アルクロメタゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロンまたはコルチゾールからなる群から選択されるグルココルチコイドと約37℃の温度で約2時間にわたって接触させた造血幹細胞および造血前駆細胞を含む治療有効量の組成物を投与する工程を含み、
該接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるヒアルロナンシンターゼ1(HAS1)、GTP結合タンパク質GEM(GEM)、二重特異性プロテインホスファターゼ4(DUSP4)、アンフィレギュリン(AREG)、核受容体関連タンパク質1(NR4A2)、レニン(REN)、cAMP応答エレメントモジュレーター(CREM)、I型アルファ1コラーゲン(COL1A1)、Fos関連抗原2(FOSL2)、またはCXCケモカイン受容体4(CXCR4)からなる群から選択される1種または複数種の遺伝子の遺伝子発現が、接触させていない造血幹細胞または造血前駆細胞における遺伝子の発現と比較して少なくとも50倍増加する方法。
(項目74)
前記グルココルチコイドがメドリゾンである、項目70または項目73に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0097】
詳細な説明
A.概要
一般に、本発明は、被験体における虚血性組織損傷を減少させるための方法を提供する。虚血が持続することにより、細胞、組織、臓器、または体の一部において酸素の欠乏または「低酸素」もしくは「無酸素」の状態が生じ、低酸素状態/無酸素状態が十分長く持続すると、虚血により組織壊死および/またはプログラム細胞死が生じる恐れがある。
【0098】
種々の実施形態では、本発明は、一部において、有効量の治療用組成物を被験体に投与して、組織細胞損傷を減少させることを意図している。
【0099】
本発明者らは、当技術分野において現存する治療用細胞と比較して高レベルのCXCR4を発現する新規の幹細胞および前駆細胞を開発した。いかなる特定の理論にも縛られることを望むことなく、本発明は、一部において、幹細胞および/または前駆細胞を、プロスタグランジン経路アゴニスト、および必要に応じてグルココルチコイドを用いて処理することにより、CXCR4遺伝子発現が高レベルまで増加し、細胞の、虚血を処置するために有用な治療的性質、例えば、虚血による損傷を受けた組織へのホーミングが増加すること、細胞動員によって虚血組織へのさらなる損傷を減少させ、かつ/もしくは虚血組織への損傷を修復すること、虚血組織における血管新生を改善すること、虚血組織部位における組織再生を改善すること、虚血組織の壊死もしくはアポトーシスを減少させること、ならびに/または虚血部位における細胞生存を増加させることを意図している。種々の実施形態では、治療用細胞はCD34
+細胞である。
【0100】
本発明は、一部において、虚血を処置するために有用な改善された治療的性質を有する幹細胞および前駆細胞を含む新規の治療用組成物を、それを必要とする被験体に投与することを意図している。したがって、本発明は、虚血を有する患者を処置する臨床医が面する問題に対する多くの必要な解決法を提供する。
【0101】
本発明の実施では、特にそれに反する指示がなければ、当技術分野の技術の範囲に入る化学、生化学、有機化学、分子生物学、微生物学、組換えDNA技法、遺伝学、免疫学、および細胞生物学の従来の方法を用い、その多くが例示のために以下に記載されている。そのような技法は、文献において十分に説明されている。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual(第3版、2001年);Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual(第2版、1989年);Maniatisら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(1982年);Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons、2008年7月更新);Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology、Greene Pub. Associates and Wiley−Interscience;Glover、DNA Cloning: A Practical Approach、I巻およびII巻(IRL Press、Oxford、1985年);Anand、Techniques for the Analysis of Complex Genomes、(Academic Press、New York、1992年);Transcription and Translation(B. Hames & S. Higgins編、1984年);Perbal、A Practical Guide to Molecular Cloning(1984年);およびHarlowおよびLane、Antibodies、(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1998年)を参照されたい。
【0102】
本明細書において引用されている全ての刊行物、特許および特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
B.定義
【0103】
別段の定義のない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載の方法および材料と類似した、またはそれと等しい任意の方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、組成物、方法および材料の好ましい実施形態が本明細書に記載されている。本発明の目的に関して、以下の用語が下で定義されている。
【0104】
本明細書で使用される場合、「虚血」、「虚血状態」または「虚血事象」という用語は、脈管構造の任意の狭窄、損傷、または閉塞によって引き起こされる、任意の細胞、組織、臓器、または体の一部への血液供給の減少または停止のいずれも意味する。虚血は、時には、血管収縮または血栓症または塞栓症に起因する。虚血により、直接虚血傷害、すなわち、酸素(低酸素症、無酸素症)、グルコース、および栄養分の供給の減少によって引き起こされる細胞死に起因する組織損傷が生じる可能性がある。「低酸素症」または「低酸素状態」とは、細胞、臓器または組織が不十分な酸素の供給を受けている状態を意図している。「無酸素症」とは、臓器または組織に酸素が実質的に完全に存在しないことを指し、それが持続する場合には、細胞、臓器または組織が死に至る可能性がある。
【0105】
「虚血に関連する症状」、「虚血に起因する症状」または「虚血によって引き起こされる症状」とは、臓器機能の障害または喪失(これだけに限定することなく、脳、腎臓、または心臓の機能の障害または喪失を含む)、痙攣、跛行、しびれ、刺痛、衰弱、疼痛、創傷治癒の低下、炎症、皮膚変色、および壊疽を含む症状を指す。
【0106】
虚血は急性または慢性であり得る。「急性虚血」とは、突然症状が開始する虚血を意味する。急性虚血は、実質的な血管損傷および/または慢性虚血から発展することによるものであり得る。急性虚血により、短期間で生命または肢を失う非常に重大なリスクが生じる。「慢性虚血」とは、比較的長期間にわたって発生した虚血の状態および症状を意味する。慢性虚血は、多くの場合、遺伝病、不健康の状態、例えば、末梢血管疾患、閉塞性血栓性血管炎、脈管炎、冠動脈心疾患および心不全、アテローム性動脈硬化症、および糖尿病に伴う。
【0107】
また、虚血は限局性のものまたは全体的なものであり得る。「限局性虚血」は、組織または臓器の特定の血管領域への血流が失われることに起因する。「全体的な虚血」は、組織または臓器全体への血流が失われることに起因し、より広範にわたる血管破壊を伴う。
【0108】
本明細書で使用される場合、「虚血組織」または「虚血臓器」という用語およびその等価物は、組織または臓器に供給する脈管構造の任意の狭窄、損傷、または閉塞が原因で血液供給が減少した組織または臓器を指す。
【0109】
「虚血性組織傷害」、「虚血性組織損傷」、「虚血に起因する組織損傷」、「虚血に関連する組織損傷」、「虚血の結果としての組織損傷」、「虚血によって引き起こされる組織損傷」および「虚血により損傷を受けた組織」とは、虚血期間の結果としての臓器または組織または細胞への形態学的損傷、生理的損傷、および/または分子的損傷を指す。
【0110】
「低酸素傷害」とは、不十分な酸素供給の期間に起因する細胞、臓器または組織への損傷を指す。低酸素傷害は、多くの場合、虚血状態に起因する。
【0111】
「再灌流傷害」は、虚血期間後に組織または臓器への血液供給が戻った際に組織が損傷を受ける傷害である。
【0112】
虚血を引き起こし得る1つの疾患は「末梢血管疾患(PVD)」である。PVDとは、腕、脚、軟部組織および心臓および脳を含めた体の重要な臓器へ、およびそこから血液を運搬する動脈および/または静脈が狭くなっている、または閉塞している状態を指す。これにより正常な血液の流れが妨げられ、時には疼痛が引き起こされるが、多くの場合、容易には検出できない症状が引き起こされる。PVDが進行するにつれ、組織および臓器への血流が著しく失われることにより、虚血、低酸素症、無酸素症、組織死、壊死および臓器の死が導かれ得る。PVDの人は、心疾患および卒中のリスクも高い。一般には、大多数の症候性のPVDは、主に動脈における、上記の病態を示す「末梢動脈疾患」(PAD)に帰する。PVDという用語は、全てのクラスの血管におけるこの総体症状および病態を包含する。
【0113】
特定の実施形態では、本発明の組成物は虚血を処置するために有用な治療的性質が増大している。本明細書で使用される場合、「虚血を処置するために有用な治療的性質」という用語は、虚血による損傷を受けた組織へのホーミングが増加すること;細胞動員、例えば、内在性幹細胞および/もしくは前駆細胞、および/もしくは内皮前駆細胞の動員によって、虚血組織へのさらなる損傷を減少させ、かつ/もしくは虚血組織への損傷を修復すること;虚血組織における血管新生を増加させること;虚血組織部位における組織再生;虚血組織の壊死またはアポトーシスを減少させること;ならびに/または虚血部位における細胞生存を増加させることを指す。
【0114】
「血管新生」とは、組織において新生血管形成または新脈管形成によって新しい血管が生成するプロセスを指す。「新生血管形成」とは、組織への灌流を回復させるために組織において機能的な微小血管ネットワークが新規に形成されることを指す。新生血管形成は新脈管形成とは異なる。「新脈管形成」は、主に、既存の血管から毛細血管の芽(bud)および新芽(sprout)が突出および増生することを特徴とする。
【0115】
本明細書で使用される場合、「増強する(enhance)」、「改善する(improve)」、「促進する(promote)」、「増加させる(increase)」または「活性化する(activate)」という用語は、一般に、必要に応じてグルココルチコイドと組み合わせたプロスタグランジン経路アゴニストにより、細胞において、ビヒクルまたは対照分子/組成物のいずれかによって引き起こされる応答と比較して大きな生理応答を生じさせる、または引き起こし、その細胞の治療的性質を改善する、例えば、虚血による損傷を受けた組織へのホーミングが増加すること;細胞動員によって、虚血組織へのさらなる損傷を減少させ、かつ/または虚血組織への損傷を修復すること;虚血組織における血管新生を増加させること;虚血組織部位における組織再生;虚血組織の壊死またはアポトーシスを減少させること;および/または虚血部位における細胞生存の増加させることを指す。「増加した(increased)」、「改善された(improved)」または「増強された(enhanced)」量とは、一般には、「統計的に有意な」量であり、ビヒクル(作用剤が存在しない)または対照組成物によって生じる応答の1.1倍、1.2倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍またはそれ超(例えば、500倍、1000倍)(その間に入る1を超える全ての整数および小数点、例えば、1.5、1.6、1.7、1.8などを含む)に増加することを含んでよい。
【0116】
本明細書で使用される場合、「減少する(decrease)」、「低減する(lower)」、「減る(lessen)」、「低下する(reduce)」または「軽減する(abate)」という用語は、一般に、必要に応じてグルココルチコイドと組み合わせたプロスタグランジン経路アゴニストにより、細胞において、ビヒクルまたは対照分子/組成物のいずれかによって引き起こされる応答と比較して少ない生理応答を生じさせる、または引き起こすことができることを指す。一実施形態では、減少は、通常は細胞の生存能力の低下と関連する、遺伝子発現の減少または細胞シグナル伝達の減少であってよい。「減少した(decrease)」または「低下した(reduced)」量とは、一般には、「統計的に有意な」量であり、ビヒクル(作用剤が存在しない)または対照組成物によって生じる応答の1.1分の1、1.2分の1、1.5分の1、2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、6分の1、7分の1、8分の1、9分の1、10分の1、15分の1、20分の1、30分の1またはそれ未満(例えば、500分の1、1000分の1)(その間に入る1を超える全ての整数および小数点、例えば、1.5分の1、1.6分の1、1.7分の1、1.8分の1などを含む)に減少することを含んでよい。
【0117】
本明細書で使用される場合、「維持する(maintain)」、「保存する(preserve)」、「維持(maintenance)」、「変化なし(no change)」、「実質的な変化なし(no substantial change)」または「実質的な減少なし(no substantial decrease)」という用語は、一般に、必要に応じてグルココルチコイドと組み合わせたプロスタグランジン経路アゴニストにより、細胞において、ビヒクルまたは対照分子/組成物のいずれかによって引き起こされる応答(参照応答)と比較して、匹敵する生理応答(すなわち、下流の効果)を生じさせる、または引き起こすことができることを指す。匹敵する応答とは、参照応答と有意に異ならないまたは測定可能には異ならない応答である。
【0118】
特定の実施形態では、本発明の治療用細胞は、ex vivoまたはin vitroにおいて細胞を処理することによって調製される。
【0119】
「ex vivo」という用語は、一般に、生物体から取得し、実験室の器具(apparatus)において、通常は滅菌条件下で、一般には数時間、または約24時間まで、しかし状況に応じて48時間または72時間までを含めた時間にわたって培養した生細胞または生組織に関与する活性または手順を指す。生細胞または生組織を使用した数日よりも長く続く組織培養実験または手順は、一般には、「in vitro」とみなされるが、ある特定の実施形態では、この用語は、ex vivoと互換的に使用することができる。
【0120】
「処理」、「in vitroにおける処理」または「ex vivoにおける処理」という用語は、一般に、細胞を1種または複数種の作用剤と一緒にin vitroまたはex vivoにおいて培養すること、接触させること、またはインキュベートすること(すなわち、細胞を処理すること)を指す。したがって、特定の実施形態では、「処理」という用語は、in vitroまたはex vivoにおける細胞培養プロトコールを対象とする場合には、細胞を「培養すること」、「接触させること」または「インキュベートすること」と互換的に使用される。ex vivoにおいて処理した細胞を被験体に投与して、in vivoにおける療法を生じさせる。
【0121】
「in vivo」という用語は、一般に、細胞の生着、細胞のホーミング、細胞の自己再生、および細胞の増大などの生物の内部で起こる活性を指す。一実施形態では、「in vivoにおける増大」という用語は、細胞集団がin vivoにおいて数を増加させることができることを指す。特定の実施形態では、in vivoにおける増大とは、幹細胞の自己再生および/または増殖を含む。
【0122】
本明細書で使用される場合、「細胞の集団」という用語は、幹細胞および/または前駆細胞を含む不均一または均一な細胞の集団を指す。「細胞の集合」という用語も細胞の集団を指し、いくつかの実施形態では、「細胞の集団」と同義である。しかし、細胞の集合は、必ずしも任意の特定の細胞の集団を指さない。細胞の集団は単離することができる。
【0123】
「単離された」とは、その元の環境から取り出された材料を意味する。細胞は、そのネイティブな状態では通常それに付随する構成成分の一部または全部から分離されている場合、単離されている。
【0124】
例えば、「単離された細胞の集団」、「単離された細胞の供給源」または「単離された造血幹細胞および造血前駆細胞」などは、本明細書で使用される場合、1つまたは複数の細胞が、in vitroまたはex vivoにおいてそれらの天然の細胞の環境から、および組織または臓器の他の構成成分との会合から分離されていること、すなわち、in vivoにおける物質と有意に会合していないことを指す。
【0125】
本発明の治療用組成物中の細胞は、自己由来/自原性(「自己」)であっても非自己由来(「非自己」、例えば、同種異系、同系または異種)であってもよい。「自己由来」とは、本明細書で使用される場合、同じ被験体由来の細胞を指す。「同種異系」とは、本明細書で使用される場合、比較する細胞とは遺伝的に異なる同じ種の細胞を指す。「同系」とは、本明細書で使用される場合、比較する細胞と遺伝的に同一である、異なる被験体の細胞を指す。「異種」とは、本明細書で使用される場合、比較する細胞とは異なる種の細胞を指す。特定の実施形態では、本発明の細胞は同種異系のものである。ある特定の実施形態では、細胞は自己由来のものである。
【0126】
「幹細胞」とは、(1)長期にわたって自己再生できる、または元の細胞と同一のコピーを少なくとも1つ生成することができる、(2)単一細胞レベルで、複数の、またいくつかの例ではただ1つの特殊化した細胞型に分化することができる、および(3)in vivoで組織の機能的再生をすることができる、未分化細胞である細胞を指す。幹細胞は、それらの発生の潜在力に従って、全能性、多能性、多分化能および少能性(oligopotent)/単能性に細分類される。
【0127】
「前駆細胞」も自己再生する能力およびより成熟した細胞に分化する能力を有するが、系列に関係づけられる(例えば、造血前駆細胞は血液系列に関係づけられ、骨髄系前駆細胞は骨髄系列に関係づけられ、リンパ系前駆細胞はリンパ系列に関係づけられる)のに対し、幹細胞は必ずしもそのように限定されない。
【0128】
造血幹細胞(HSC)は、生物体の生存期間にわたって成熟血液細胞のレパートリー全体を生成することができる関係づけられた造血前駆細胞(HPC)を生じさせる。「造血幹細胞」または「HSC」という用語は、骨髄系列(例えば、単球およびマクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、赤血球、巨核球/血小板、樹状細胞)、およびリンパ系列(例えば、T細胞、B細胞、NK細胞)を含めた、生物体の血液細胞の種類の全てを生じさせる多分化能幹細胞を指す。致死的に放射線照射した動物またはヒトに移植すると、造血幹細胞は赤血球系、好中球−マクロファージ、巨核球およびリンパ系の造血細胞プールを再配置させることができる。
【0129】
本明細書で使用される場合、「造血幹細胞および造血前駆細胞」または「HSPC」という用語は、抗原マーカーであるCD34が存在することおよび系列(lin)マーカーが存在しないことによって同定される細胞を指す。したがって、HSPCは、CD34
+/Lin(−)細胞、およびそのような細胞の集団と特徴付けられる。CD34
+およびLin(−)細胞を含む細胞の集団は、造血前駆細胞も含み、したがって、本出願の目的に関して、「HSPC」という用語は造血前駆細胞を包含することが理解される。
【0130】
特定の実施形態では、驚くほど高レベルのCXCR4を発現している本発明の細胞は、虚血による損傷を受けた組織へのホーミングが増加すること;細胞動員によって、虚血組織へのさらなる損傷を減少させ、かつ/もしくは虚血組織への損傷を修復すること;虚血組織における血管新生を増加させること;虚血組織部位における組織再生;虚血組織の壊死またはアポトーシスを減少させること;ならびに/または虚血部位における細胞生存を増加させることを含めた治療的性質が増強されている。
【0131】
「ホーミング」とは、幹細胞または前駆細胞が特定の領域または組織に局在化する、すなわち、そこに移動することができることを指す。特定の実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニスト、および必要に応じてグルココルチコイドを使用して処理した幹細胞および前駆細胞のホーミング性は、対照、ビヒクル、または無処理の細胞と比較して増大している。一実施形態では、細胞は化学誘引機構を用いて特定の組織にホーミングし、CXCR4の発現が増加している細胞では、CXCR4の同族リガンドであるストロマ細胞由来因子1(SDF1)を分泌している虚血組織へのホーミングが改善されている。
【0132】
ある特定の実施形態では、本発明の治療用細胞は、独特のまたは実質的に独特の遺伝子シグネチャーを含む。本明細書で使用される場合、「遺伝子発現プロファイル」、「遺伝子発現シグネチャー」または「遺伝子シグネチャー」という用語は、同じ試料、すなわち、細胞の集団について測定された複数の異なる遺伝子の発現のレベルを指す。遺伝子発現シグネチャーは、治療用細胞を当技術分野において現存する細胞および/または対照、ビヒクル、または無処理細胞と区別するために役立つ遺伝子の一群である「シグネチャー遺伝子」が同定されるように定義することができる。
【0133】
「シグネチャー遺伝子」とは、本明細書で使用される場合、シグネチャー遺伝子セットの任意の遺伝子を意味する。例えば、シグネチャー遺伝子としては、ヒアルロナンシンターゼ1(HAS1)、GTP結合性タンパク質GEM(GEM)、二重特異性プロテインホスファターゼ4(DUSP4)、アンフィレギュリン(AREG)、核受容体関連タンパク質1(NR4A2)、レニン(REN)、cAMP応答エレメントモジュレーター(CREM)、I型アルファ1コラーゲン(COL1A1)、Fos関連抗原2(FOSL2)、およびCXCケモカイン受容体4(CXCR4)が挙げられる。明確にするために、シグネチャー遺伝子はハウスキーピング遺伝子を包含しない。
【0134】
「遺伝子発現」とは、本明細書で使用される場合、幹細胞および前駆細胞、または幹細胞もしくは前駆細胞を含む細胞の集団などの生物学的試料中の遺伝子の相対的な発現レベルおよび/または発現パターンを指す。特定の実施形態では、幹細胞または前駆細胞は造血幹細胞および造血前駆細胞である。
【0135】
本発明の治療用組成物を含む、細胞を特徴付ける遺伝子の発現を検出するために当技術分野において利用可能な方法はいずれも本発明に包含される。本明細書で使用される場合、「発現を検出すること」という用語は、遺伝子のRNA転写物またはその発現産物の数量または存在を決定することを意味する。遺伝子の発現、すなわち遺伝子発現プロファイリングを検出するための方法としては、ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーション分析に基づく方法、ポリヌクレオチドの配列決定に基づく方法、免疫組織化学的方法、およびプロテオミクスに基づく方法が挙げられる。当該方法では、一般に、対象の遺伝子の発現産物(例えば、mRNA)を検出する。いくつかの実施形態では、逆転写PCR(RT−PCR)などのPCRに基づく方法(Weisら、TIG 8巻:263〜64頁、1992年)、およびマイクロアレイなどのアレイに基づく方法(Schenaら、Science 270巻:467〜70頁、1995年)が用いられる。
【0136】
種々の実施形態では、本発明は、一部において、有効量の治療用組成物を被験体に投与して、組織細胞損傷を減少させることを意図している。「被験体」または「必要とする被験体」とは、本明細書で使用される場合、本発明の細胞に基づく組成物を投与することによって処置または改善することができる、虚血組織または虚血による損傷を受けた組織の少なくとも1つの症状、例えば、組織への血流の低下または遮断、低酸素の組織、組織壊死またはアポトーシスを示す任意の哺乳動物を包含する。「被験体」とは、虚血組織または虚血による損傷を受けた組織を有する、またはそれを有するリスクがあるヒト、例えば、糖尿病、末梢血管疾患、心血管疾患、または脳血管疾患を有する被験体も包含する。被験体は、外科処置、例えば、臓器移植または組織移植を受けた個体または動物も含んでよい。特定の実施形態では、被験体は、細胞に基づく遺伝子療法として、遺伝子改変されたHSPCを受ける。ある特定の実施形態では、被験体は、骨髄破壊放射線照射療法または化学療法を受けていてもよく、骨髄破壊をもたらす急性の放射線または化学物質による傷害を経験していてもよい。ある特定の実施形態では、被験体は、種々のがんの処置中などの、放射線照射療法または化学療法を受けていてもよい。適切な被験体(例えば、患者)としては、実験動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、またはモルモット)、農場動物、および家畜動物または愛玩動物(例えば、ネコまたはイヌ)が挙げられる。非ヒト霊長類、好ましくはヒト患者が含まれる。
【0137】
本明細書で使用される場合、「処置する(treat)」、「処置(treatment)」、「処置すること(treating)」などの用語は、これだけに限定することなく、虚血の症状の改善(amelioration)、改善(improvement)、または排除の実現を含めた、所望の薬理的効果および/または生理的効果を得ることを指す。効果は、虚血性組織損傷を完全にまたは部分的に予防するという点で予防的であってよく、かつ/または、虚血組織または虚血による損傷を受けた組織の1つまたは複数の症状を改善する(ameliorating)、改善する(improving)、または排除するという点で処置的であってよい。「処置」とは、本明細書で使用される場合、哺乳動物、特にヒトにおける虚血状態の任意の処置を包含し、(a)虚血の素因があり得るが、今のところはまだそれを有すると診断されていない被験体において虚血が生じることを予防すること;(b)虚血を阻害することまたはさらなる虚血性組織損傷を予防すること、すなわち、その発生を阻止すること;(c)虚血を軽減すること、例えば、虚血の症状を完全にまたは部分的に排除するために、例えば、組織の血管再生を引き起こすこと;および(d)個体を疾患前の状態に回復させること、例えば、以前虚血していた組織の完全な血管再生を含む。「処置」とは、虚血、または付随するその症状の完全な根絶または治癒を示さなくても、それを必要としなくてもよい。本発明の特定の方法では、処置または処置することにより、虚血組織への血流の改善、虚血組織への酸素付加の改善、虚血組織の血管新生の改善、および虚血組織の生存の改善がもたらされる。
【0138】
冠詞「a(1つの)」、「an(1つの)」、および「the(その)」は、本明細書では、その冠詞の文法上の目的語の1つまたは2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「an(1つの)エレメント」とは、1つのエレメントまたは2つ以上のエレメントを意味する。
【0139】
「or(または)」という用語は、本明細書では、文脈によりそうでないことが明らかでない限り、「および/または」という用語を意味するために使用され、また、それと互換的に使用される。
【0140】
本明細書で使用される場合、「約」または「およそ」という用語は、参照の数量、レベル、値、数、発生頻度、百分率、寸法、サイズ、量、重量または長さに対して30%、25%、20%、25%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%まで変動する数量、レベル、値、数、発生頻度、百分率、寸法、サイズ、量、重量または長さを指す。特定の実施形態では、「約」または「およそ」という用語は、数値の前にある場合、その値プラスまたはマイナス15%、10%、5%、または1%の範囲を示す。
【0141】
「実質的に」とは、参照の数量、レベル、値、数、発生頻度、百分率、寸法、サイズ、量、重量または長さとほぼ等しい数量、レベル、値、数、発生頻度、百分率、寸法、サイズ、量、重量または長さを指す。特定の実施形態では、ほぼ等しいとは、参照値プラスまたはマイナス15%、10%、5%、または1%であり得る。
【0142】
本明細書全体を通して「一実施形態」、「ある実施形態」、「特定の実施形態」、「関連する実施形態」、「ある特定の実施形態」、「追加的な実施形態」または「さらなる実施形態」またはそれらの組合せへの言及は、実施形態に関連して記載されている特定の特徴、構造または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に包含されることを意味する。したがって、本明細書全体を通して種々の箇所における上記の句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態について言及しているのではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性を任意の適切な様式で1つまたは複数の実施形態に組み合わせることができる。
C.組成物
【0143】
多数の実施形態では、本発明の方法は、被験体における虚血性組織損傷を処置するために組成物を被験体に投与する工程を含む。種々の実施形態では、本発明の方法は、虚血組織に関連する少なくとも1つの症状を処置または改善するために組成物を被験体に投与する工程を含む。
【0144】
この目的のために、本発明者らは、高レベルのCXCR4を発現する新規の幹細胞および前駆細胞を開発し、それにより、虚血を処置するために有用な性質、例えば、虚血による損傷を受けた組織へのホーミングが増加すること、細胞動員によって、虚血組織へのさらなる損傷を減少させ、かつ/もしくは虚血組織への損傷を修復すること、虚血組織における血管新生を改善すること、虚血組織部位における組織再生を改善すること、虚血組織の壊死またはアポトーシスを減少させること、ならびに/または虚血部位における細胞生存を増加させることが改善された治療用細胞が生成される。
【0145】
したがって、本発明は、一部において、ex vivoにおいて、プロスタグランジン経路アゴニストを用いてまたはプロスタグランジン経路アゴニストとグルココルチコイドとを用いて処理している、例えば、それと一緒に培養している、それと接触させている、またはそれと一緒にインキュベートしている幹細胞または前駆細胞、例えば、造血幹細胞または造血前駆細胞を含む組成物、例えば、治療用組成物を意図している。細胞におけるCXCR4の発現を、接触していない細胞または対照もしくはビヒクル(例えば、DMSO)と接触させた細胞と比較して増加させるために有効な量で十分な時間にわたって作用剤を用いて、細胞を処理する。好ましい実施形態では、処理した細胞におけるCXCR4の発現が増加することにより、細胞が、虚血組織を処置するためまたは虚血組織に関連する少なくとも1つの症状を処置および/または改善するために有用な治療的性質が改善された細胞であると同定される。
【0146】
特定の実施形態では、組成物は、下の他の場所に記載されている1種または複数種の薬学的に許容されるキャリア、希釈剤、または構成成分をさらに含む。
1.幹細胞または前駆細胞
【0147】
特定の実施形態では、本発明の方法は、幹細胞または前駆細胞を含む治療用組成物を被験体に投与する工程を含み、幹細胞または前駆細胞は、1種もしくは複数種のプロスタグランジン経路アゴニストおよび/または1種もしくは複数種のグルココルチコイドを用いて処理したものである。処理した細胞は、虚血性組織損傷の部位へのホーミングが増加する性質、内在性幹細胞および内皮前駆細胞の動員を増加させる性質、虚血組織部位における血管新生の刺激を増加させる性質、ならびに虚血組織の壊死および/またはプログラム細胞死を減少させる性質を有する。処理した幹細胞または前駆細胞は成体細胞であっても胚性細胞であってもよい。
【0148】
種々の実施形態では、被験体に投与する幹細胞および/または前駆細胞は、被験体に対してHLAマッチしている。6種の主要なHLA抗原(HLA−A、HLA−B、HLA−C、HLA−DR、HLA−DP、およびHLA−DQ)が存在する。ヒト集団において各HLA抗原は複数のアイソフォームを有し、ゲノムの二倍体性に起因して、各個体は各HLAに対して2つの異なるアイソフォームを有し得る。したがって、完全なマッチとは、12のアイソフォームのうち12がマッチすることである。
【0149】
HLA型は、いわゆる低解像度法を使用して、例えば血清型判定によって、または抗体に基づく方法を使用して決定することができる。血清型判定は、抗体によるHLA型の認識に基づく。血清型判定により、28種の異なるHLA−A遺伝子、59種のHLA−B遺伝子および21種のHLA−C遺伝子を区別することができる。血清型判定法による完全なマッチは、いわゆる、各個体に存在する各HLA(A、BおよびC)についての2つの対立遺伝子に関して6つのうち6つがマッチすることである。ある場合では、6つのうち5つのマッチ以下を、当業者によって決定される場合良好なマッチとみなすことができる。いくつかの実施形態では、HLAハプロタイプ細胞の集団は、特定のヒト被験体に対して3/6、4/6、5/6、または6/6のHLAマッチを有する。HLAマッチングは、対立遺伝子または抗原、およびそれらの組合せに基づいてよい。
【0150】
本発明の治療用組成物は、FDA(すなわち、FDAの認可)および他の国および規制地区の他の保健当局からの製品の許認可、ならびに製品の適応症、製品の有効性、安全性および純度に関する情報を特徴付ける製品ラベルを得ることができる。
a.幹細胞および前駆細胞の種類
【0151】
これだけに限定されないが、胚性幹細胞、中胚葉系幹細胞または中胚葉系前駆細胞、内胚葉系幹細胞または内胚葉系前駆細胞、および外胚葉系幹細胞または外胚葉系前駆細胞を含めた種々の種類の幹細胞および前駆細胞が本発明の特定の方法において使用するために適している。本発明の方法において使用するために適した他の適切な幹細胞または前駆細胞としては、これだけに限定されないが、間葉系幹細胞または間葉系前駆細胞、造血幹細胞または造血前駆細胞、胎盤幹細胞または胎盤前駆細胞、臍帯幹細胞または臍帯前駆細胞、骨髄系幹細胞、およびホウォートンゼリー幹細胞またはホウォートンゼリー前駆細胞などの中胚葉系の細胞が挙げられる。
【0152】
好ましい実施形態では、造血幹細胞または造血前駆細胞が本発明の方法において使用される。他の好ましい実施形態では、CD34
+細胞が本発明の方法において使用される。
【0153】
種々の実施形態では、造血幹細胞もしくは造血前駆細胞またはCD34
+細胞を含む不均一な細胞の集団を、本明細書の他の箇所に記載のプロスタグランジン経路アゴニストおよび/または1種または複数種のグルココルチコイドを用いて処理し、その後、被験体に投与する。例示的な不均一な細胞の集団としては、これだけに限定されないが、全骨髄、臍帯血、動員された末梢血、造血幹細胞、胎盤、胎盤血、およびホウォートンゼリーが挙げられる。
【0154】
一実施形態では、治療用組成物は、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%が造血幹細胞および造血前駆細胞またはCD34
+細胞である細胞集団を含む。いくつかの実施形態では、治療用組成物中の細胞の集団の約0.1%未満、0.5%未満、1%未満、2%未満、5%未満、10%未満、15%未満、20%未満、25%未満、または30%未満が造血幹細胞および造血前駆細胞またはCD34
+細胞である。
【0155】
HSCは、特定の表現型マーカーまたは遺伝子型マーカーに従って同定することができる。大多数のヒトHSCは、CD34
+、CD59
+、Thy1/CD90
+、CD38l
o/−、C−kit/CD117
+、およびLin(−)と特徴付けることができる。しかし、特定のHSCはCD34
−/CD38
−であるので、全ての幹細胞がこれらの組合せに包含されるとは限らない。同様に、いくつかの試験により、最初期の幹細胞は細胞表面上にc−キットを欠く場合があることが示唆されている。ヒトHSCに関しては、CD34
+HSCおよびCD34
−HSCはどちらも、CD133
+であることが示されているので、CD133が初期マーカーになる可能性がある。CD34
+およびLin(−)の細胞には造血前駆細胞およびHSPCも含まれることは当技術分野で公知である。
【0156】
幹細胞および前駆細胞を種々の細胞供給源から精製するためのキットが市販されており、特定の実施形態では、これらのキットは、本発明の方法と共に使用するために適している。幹細胞および前駆細胞を精製するための例示的な市販のキットとしては、これだけに限定されないが、Lineage(Lin)Depletion Kit(Miltenyi Biotec);CD34
+ enrichment kit(Miltenyi Biotec);RosettaSep(Stem Cell Technologies)が挙げられる。
【0157】
特定の実施形態では、細胞の集団は、造血幹細胞もしくは造血前駆細胞またはCD34
+細胞を含み、間葉系幹細胞および/または内皮前駆細胞を実質的に含まない。ある特定の実施形態では、細胞の集団は、造血幹細胞もしくは造血前駆細胞またはCD34
+細胞、約30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満または5%未満の間葉系幹細胞および約30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満または5%未満の内皮前駆細胞を含む。
【0158】
あるいは、細胞の集団から、当技術分野で公知の方法を使用して、例えば、免疫磁気選択技法、蛍光活性化細胞選別、またはその組合せを使用して、間葉系幹細胞および/または内皮前駆細胞を枯渇させることができ、CD34
+細胞を、本明細書に開示されており、本発明において使用するために適した任意の数の細胞供給源から精製することができる。
b.幹細胞および前駆細胞の供給源
【0159】
本発明の方法において使用するための適切な幹細胞および前駆細胞の供給源としては、これだけに限定されないが、中胚葉系起源、内胚葉系起源、または外胚葉系起源の細胞を含有する体の臓器または組織から単離されたまたはそれから得た細胞が挙げられる。本発明において使用する幹細胞および前駆細胞は、当業者に公知の従来の手段によって得ることができる。いくつかの実施形態では、市販の幹細胞系および前駆細胞系を本発明の方法において使用することができる。
【0160】
一実施形態では、本発明の治療用組成物および方法において使用するための幹細胞および前駆細胞は、多能性幹細胞供給源、例えば、人工多能性幹細胞(iPSC)および胚性幹細胞(ESC)から得ることができる。本明細書で使用される場合、「人工多能性幹細胞」または「iPSC」という用語は、多能性の状態に再プログラミングされた非多能性細胞を指す。被験体の細胞が多能性の状態に再プログラミングされたら、次いで、細胞を、造血幹細胞または造血前駆細胞などの所望の細胞型にプログラミングすることができる。本明細書で使用される場合、「再プログラミング」という用語は、細胞の潜在能を分化の程度が低い状態まで増大させる方法を指す。本明細書で使用される場合、「プログラミング」という用語は、細胞の潜在能を減少させるまたは細胞を分化の程度が高い状態に分化させる方法を指す。
【0161】
造血幹細胞および造血前駆細胞は、これだけに限定されないが、末梢血、骨髄、臍帯血、ホウォートンゼリー、胎盤、胎児血、胎児肝臓、または胎児脾臓を含めた種々の供給源から単離することができる。特定の実施形態では、造血幹細胞または造血前駆細胞は、造血性供給源から回収または動員することができる。「回収すること」とは、例えば、酵素処理、遠心分離、電気、もしくはサイズに基づく方法を使用することによって、または好ましくは、培地(例えば、細胞をインキュベートする培地)を使用して細胞を洗うことによって造血幹細胞および造血前駆細胞をマトリックスから取り出すことまたは分離することを指す。「造血幹細胞動員」とは、幹細胞移植の前に、白血球除去のために幹細胞を骨髄から末梢血循環中に放出させることを指す。多くの場合、造血性増殖因子、例えば、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、Mozobil(商標)(Genzyme Corporation)または化学療法剤を使用して動員を刺激する。
c.幹細胞または前駆細胞の培養
【0162】
幹細胞および/または前駆細胞、例えば、造血幹細胞および/または造血前駆細胞は、所望の通り、任意の適切な、市販のまたは特別に定義された、血清ありまたは血清無しの培地で成長、処理または増大させることができる(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Hartshornら、Cell Technology for Cell Products、221〜224頁、R. Smith編;Springer Netherlands、2007年を参照されたい)。
【0163】
例えば、ある特定の実施形態では、無血清培地においてCD34
+細胞を成長および増大させるために有用であることが示されているアルブミンおよび/またはトランスフェリンを無血清培地に利用することができる。また、とりわけ、Flt−3リガンド、幹細胞因子(SCF)、およびトロンボポエチン(TPO)などのサイトカインを含めることもできる。造血幹細胞および造血前駆細胞は、バイオリアクターなどの容器中で成長させることもできる(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Liuら、Journal of Biotechnology 124巻:592〜601頁、2006年を参照されたい)。HSPCをex vivoにおいて増大させるために適した培地は、例えばリンパ系組織の解離から生じ得、HSPC、ならびにそれらの後代のin vitro、ex vivo、およびin vivoにおける維持、成長、および分化を支持することが示されている間質細胞(例えば、リンパ細網間質細胞)などの支持体細胞も含んでよい。
d.幹細胞または前駆細胞の処理
【0164】
本発明の幹細胞および前駆細胞を、プロスタグランジン経路アゴニストを用いてまたはプロスタグランジン経路アゴニストとグルココルチコイドとを用いて処理する、例えば、それと接触させる、それと一緒に培養する、またはそれと一緒にインキュベートする。いかなる特定の理論にも縛られることを望むことなく、このように処理した細胞の治療的性質は、対照、ビヒクル、または無処理の細胞と比較して改善される。
【0165】
細胞は、被験体から単離した後に、本明細書に開示されている作用剤を用いて処理することができる。別の実施形態では、細胞を被験体から単離し、増大させた後に、本明細書に開示されている作用剤を用いて処理する。一実施形態では、細胞を被験体から単離し、凍結保存した後に、本明細書に開示されている作用剤を用いて処理する。
【0166】
好ましい実施形態では、幹細胞および前駆細胞を、1種または複数種の作用剤、例えば、プロスタグランジン経路アゴニスト、またはプロスタグランジン経路アゴニストとグルココルチコイドとを、細胞の治療的性質、例えば、虚血性組織損傷の部位へのホーミングが増加すること、内在性幹細胞および内皮前駆細胞の動員を増加させること、虚血組織部位における血管新生の刺激を増加させること、ならびに虚血組織の壊死および/またはプログラム細胞死を減少させることを増強するために有効な量で、十分な時間にわたって(すなわち、十分な条件下で)用いて処理する。本明細書の他の箇所に記載の通り、治療的性質が増強された処理した細胞は、例えば、遺伝子発現、例えば、CXCR4および/もしくは特定のシグネチャー遺伝子の群の発現の増加;CXCR4タンパク質および/もしくは特定のシグネチャー遺伝子の群の発現の増加;細胞内cAMPシグナル伝達、例えば、CREBリン酸化によって、または生化学的アッセイによって決定される通り;または機能アッセイ、例えば、トランスウェル遊走アッセイによって同定することができる。
【0167】
本明細書で使用される場合、「十分な条件」または「十分な条件下で」という用語は、幹細胞および/または前駆細胞、例えば、造血幹細胞および造血前駆細胞を1種または複数種の作用剤、例えば、必要に応じてグルココルチコイドと組み合わせたプロスタグランジン経路アゴニストを用いて処理して、細胞におけるCXCR4遺伝子発現および/またはシグネチャー遺伝子の群の発現を対照、ビヒクル、または無処理の細胞と比較して驚くべき予想外のレベルまで増加させるための条件を指す。
【0168】
一実施形態では、条件は、in vivoにおける細胞の治療的性質、例えば、虚血性組織損傷の部位への幹細胞および前駆細胞のホーミングを増加させること、虚血性組織損傷の部位への内在性幹細胞および内皮前駆細胞の動員を増加させること、虚血組織部位における血管新生を増加させること、ならびに虚血組織の壊死および/もしくはプログラム細胞死を減少させ、かつ/または虚血組織部位における細胞生存を増加させることなど、を増大させるために十分なものである。
【0169】
条件としては、これだけに限定されないが、細胞の供給源、作用剤(複数可)の濃度、細胞を作用剤(複数可)に曝露する時間、および温度が挙げられる。特定の実施形態では、細胞を、1種または複数種の作用剤:プロスタグランジン経路アゴニスト、例えば、PGE
2、dmPGE
2、15(S)−15−メチルPGE
2、20−エチルPGE
2、8−イソ−16−シクロヘキシル−テトラノルPGE
2、およびPGE
2類似体;またはプロスタグランジン経路アゴニストおよびグルココルチコイドと接触させる。一実施形態では、1種または複数種の作用剤はPGE
2または16,16−ジメチルPGE
2である。別の実施形態では、1種または複数種の作用剤は、(i)PGE
2または16,16−ジメチルPGE
2および(ii)メドリゾン、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、またはアルクロメタゾンを含む。
【0170】
種々の実施形態では、十分な温度条件は、生理的に関連性のある温度、例えば、これだけに限定されないが、約22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、および39℃の温度を含めた、約39℃(約室温〜約体温)の温度範囲でインキュベートすることを含む。特定の実施形態では、十分な温度条件は、約35℃から39℃の間である。一実施形態では、十分な温度条件は約37℃である。
【0171】
種々の実施形態では、作用剤(複数可)の十分な濃度は、最終濃度が約10nM〜約100μM、約100nM、約500nM、約1μM、約10μM、約20μM、約30μM、約40μM、約50μM、約60μM、約70μM、約80μM、約90μM、約100μM、約110μM、または約120μM、またはその間の任意の他の16,16−ジメチルPGE
2の濃度(例えば、0.1μM、1μM、5μM、10μM、20μM、50μM、100μM)である。特定の実施形態では、作用剤(複数可)の十分な濃度は、最終濃度が約10μM〜約25μMである。一実施形態では、作用剤(複数可)の十分な濃度は、最終濃度が約10μMである。
【0172】
種々の実施形態では、細胞を処理するために十分な期間は、これだけに限定されないが、約60分、約70分、約80分、約90分、約100分、約110分、約2時間、約2.5時間、約3時間、約3.5時間または約4時間の持続時間またはその間の任意の他の持続時間にわたる処理を含めた、約60分〜約12時間、60分〜約6時間、約2時間〜約4時間の持続時間である。特定の実施形態では、細胞を処理するために十分な持続時間は約2時間〜約4時間である。一実施形態では、細胞を処理するために十分な持続時間は約4時間である。
【0173】
特定の実施形態では、in vivoにおける処理した細胞の1つまたは複数の治療的性質を増大させるために十分な条件は、約22℃〜約39℃の温度範囲でインキュベートすること、プロスタグランジン経路アゴニスト、および必要に応じてグルココルチコイドの最終濃度約10μM〜約25μM、および約1時間〜約4時間、約2時間〜約3時間、約2時間〜約4時間、または約3時間〜約4時間にわたってインキュベートすることを含む。
【0174】
別の実施形態では、in vivoにおける処理した細胞の1つまたは複数の治療的性質を増大させるために十分な条件は、約37℃(約体温)の温度でインキュベートすること、必要に応じてメドリゾンの最終濃度約10μMと組み合わせた、PGE
2または16,16−ジメチルPGE
2の最終濃度約10μM、および約4時間にわたってインキュベートすることを含む。
【0175】
特定の実施形態では、幹細胞および/または前駆細胞を、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回または10回またはそれより多く処理する(例えば、1種または複数種の作用剤と接触させる)。細胞を、同じ容器内の1種または複数種の作用剤と断続的に、不規則に、または逐次的に接触させること(例えば、細胞の集団を、1種の薬物とある期間にわたって接触させ、培養培地を交換し、かつ/または細胞の集団を洗浄し、次いで、このサイクルを、同じまたは異なる医薬品の組合せを用いて、同じ所定の期間または異なる所定の期間にわたって繰り返すこと)ができる。
2.幹細胞または前駆細胞のCXCR4発現/遺伝子発現プロファイル
【0176】
治療用組成物は、虚血組織の処置に関連する治療的性質が増大した、処理した幹細胞または前駆細胞の集団を含む。いかなる特定の理論にも縛られることを望むことなく、細胞をプロスタグランジン経路アゴニストおよび/またはグルココルチコイドで処理することにより、細胞の、虚血組織または虚血組織に関連する1つまたは複数の(more or more)症状を処置するために有用な治療的性質が増大する。治療的性質が増大した細胞は、CXCR4遺伝子発現の増加およびCXCR4ポリペプチドの細胞表面発現の増加を特徴とする。特定の実施形態では、治療用組成物は、遺伝子および細胞表面CXCR4発現のレベルの上昇を特徴とする造血幹細胞または造血前駆細胞を含む。
【0177】
プロスタグランジン経路アゴニストを用いて処理した幹細胞または前駆細胞、例えば、造血幹細胞または造血前駆細胞は、CXCR4遺伝子発現が、無処理の細胞におけるCXCR4の発現と比較して少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、または20倍増加することを特徴とし得る。
【0178】
プロスタグランジン経路アゴニストおよびグルココルチコイドを用いて処理した幹細胞または前駆細胞、例えば、造血幹細胞または造血前駆細胞は、CXCR4遺伝子発現が、無処理の細胞におけるCXCR4の発現と比較して少なくとも40倍、45倍、50倍、55倍、60倍、65倍、70倍、75倍、または80倍増加することを特徴とし得る。
【0179】
虚血組織の処置に関連する治療的性質が増大した細胞は、独特の遺伝子発現シグネチャーをさらに特徴とし得、CXCR4、ヒアルロナンシンターゼ1(HAS1)、GTP結合タンパク質GEM(GEM)、二重特異性プロテインホスファターゼ4(DUSP4)、アンフィレギュリン(AREG)、核受容体関連タンパク質1(NR4A2)、レニン(REN)、cAMP応答エレメントモジュレーター(CREM)、I型アルファ1コラーゲン(COL1A1)、およびFos関連抗原2(FOSL2)からなる群から選択されるシグネチャー遺伝子の1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、または10種全ての発現が無処理の細胞と比較して増加する。
【0180】
特定の実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストを用いて処理した造血幹細胞または造血前駆細胞は遺伝子発現シグネチャーを有し、1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種またはそれより多くのシグネチャー遺伝子が、無処理の細胞と比較して少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、10倍、15倍、または20倍増加する。いくつかの実施形態では、全てのシグネチャー遺伝子の平均倍数変化が少なくとも約2倍、3倍、4倍、5倍または6倍である。いくつかの実施形態では、全てのシグネチャー遺伝子の平均倍数変化が少なくとも約6である。
【0181】
他の特定の実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストおよびグルココルチコイドを用いて処理した造血幹細胞または造血前駆細胞は遺伝子発現シグネチャーを有し、1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種またはそれより多くのシグネチャー遺伝子が、無処理の細胞と比較して少なくとも40倍、45倍、50倍、55倍、60倍、65倍、70倍、75倍、または80倍増加する。いくつかの実施形態では、全てのシグネチャー遺伝子の平均倍数変化が少なくとも約15倍、20倍、25倍、30倍または35倍である。いくつかの実施形態では、全てのシグネチャー遺伝子の平均倍数変化が少なくとも約25である。
【0182】
処理した幹細胞または前駆細胞の遺伝子発現または遺伝子発現シグネチャーを、細胞を作用剤を用いて処理した後に決定することもでき、処理後に細胞をいくらかの期間にわたってインキュベートした後、細胞の遺伝子発現シグネチャーを決定することもできる。例えば、細胞を、ex vivoにおいて、作用剤を用いて処理し、洗浄して作用剤を除去し、細胞をさらにインキュベートせずに遺伝子発現を分析することができる。あるいは、いくつかの実施形態では、細胞を作用剤を用いて処理し、洗浄して作用剤を細胞集団から除去し、次いで、細胞をex vivoにおいていくらかの期間にわたってインキュベートした後に、細胞の遺伝子発現シグネチャーを分析する。
D.作用剤
【0183】
種々の実施形態では、本発明は、必要に応じて1種または複数種のグルココルチコイドと組み合わせた、プロスタグランジン経路、例えばPGE
2R
2/R
4細胞シグナル伝達経路を刺激する作用剤を含めた、細胞におけるCXCR4遺伝子発現を増加させることができる1種または複数種の作用剤と接触させた幹細胞または前駆細胞を含む治療用組成物を提供する。好ましい実施形態では、細胞は造血幹細胞および造血前駆細胞である。
【0184】
本明細書で使用される場合、「作用剤」とは、プロスタグランジン経路を刺激することができる化合物、例えば、プロスタグランジン経路アゴニストを指す。作用剤とは、下に記載されているグルココルチコイドも指す。特定の実施形態では、作用剤により、処理した細胞におけるCXCR4の発現が増加する。ある特定の実施形態では、幹細胞または前駆細胞を、1種、2種、3種、4種、5種またはそれより多くの作用剤の任意の組合せと、CXCR4の発現を増加させるため、および/またはin vivoにおける細胞の1つまたは複数の治療的性質、例えば、虚血性組織損傷の部位へのホーミングが増加すること、内在性幹細胞および内皮前駆細胞の動員を増加させること、虚血組織部位における血管新生の刺激を増加させること、虚血組織の壊死および/またはプログラム細胞死を減少させること、ならびに虚血性組織損傷の部位における細胞生存を増加させること、を増大させるために十分な条件下で同時にまたは逐次的に接触させる。
【0185】
cGMP実施を使用して調製した作用剤を、本発明の細胞を接触させることにおいて使用するための酢酸メチルなどの有機溶媒中に製剤化することができ、それを、内毒素を含まない容器に入れて供給することができる。
1.プロスタグランジン経路アゴニスト
【0186】
プロスタグランジンE
2(PGE
2)は、種々の細胞型のいくつもの異なるプロスタグランジン受容体に作用し、これだけに限定することなく、PI3−キナーゼ(PI3−KまたはPI3K)経路を含めた種々のシグナル伝達経路を活性化することによってその機能を発揮する。これらのプロスタグランジン受容体は、Gタンパク質共役受容体(GPCR)と称される細胞表面7回膜貫通型受容体のサブファミリーを代表する。プロスタグランジンE
2受容体には、PGE
2R
1、PGE
2R
2、PGE
2R
3およびPGE
2R
4の4種の亜型が存在する。適切なリガンド、またはアゴニスト、例えば、プロスタグランジンまたはその類似体、例えば、PGE
2R
2アゴニストまたはPGE
2R
4アゴニストによって活性化されると、これらのプロスタグランジン受容体により種々の下流の生物学的機能が開始される。例えば、幹細胞および前駆細胞におけるPGE
2R
2細胞シグナル伝達および/またはPGE
2R
4細胞シグナル伝達の刺激/活性化は、一部において、Gタンパク質アルファ−s(Gα−sまたはGα−s)活性化およびアデニル酸シクラーゼの刺激と、ならびにWnt経路と共役する(Northら、Nature 447巻(7147号):1007〜11頁(2007年))。
【0187】
種々の実施形態では、本発明は、1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストと接触させた幹細胞または前駆細胞を含む治療用組成物を意図している。
【0188】
本明細書で使用される場合、「プロスタグランジン経路アゴニスト」という用語は、PGE
2R
2細胞シグナル伝達経路および/またはPGE
2R
4細胞シグナル伝達経路を刺激する作用剤を含めた、プロスタグランジン細胞シグナル伝達経路を刺激し、細胞におけるCXCR4遺伝子発現を増加させ、in vivoにおける細胞の1つまたは複数の治療的性質、例えば、虚血性組織損傷の部位へのホーミングが増加すること、内在性幹細胞および内皮前駆細胞の動員を増加させること、虚血組織部位における血管新生を増加させること、虚血組織の壊死および/またはプログラム細胞死を減少させること、ならびに虚血組織部位における細胞生存を増加させること、を改善する作用剤を指す。本発明の細胞の処理において使用するために適したプロスタグランジン経路アゴニストの実例としては、これだけに限定されないが、PGE
2、dmPGE
2、15(S)−15−メチルPGE
2、20−エチルPGE
2、8−イソ−16−シクロヘキシル−テトラノルPGE
2、およびPGE
2類似体が挙げられる。ある特定の実施形態では、PGE
2R
2アゴニストおよびPGE
2R
4アゴニストおよびその類似体が特に興味深く、いくつかの実施形態では、作用剤は、PGE
2EP
2受容体またはPGE
2EP
4受容体に優先的に結合し、それを活性化する。
【0189】
本発明の細胞の処理において使用するために適したプロスタグランジン経路アゴニストの実例としては、これだけに限定されないが、PGE
2、dmPGE
2、およびPGE
2類似体も挙げられる。ある特定の実施形態では、PGE
2R
4 アゴニストおよびその類似体が特に興味深く、いくつかの実施形態では、作用剤はPGE
2EP
4受容体に優先的に結合し、それを活性化する。
【0190】
本明細書で使用される場合、「プロスタグランジンE
2」または「PGE
2」という用語は、限定することなく、任意の天然に存在するまたは化学的に合成されたPGE
2分子、ならびにその「類似体」を包含する。本明細書で使用される場合、「類似体」という用語は、別の化学的な物質、例えばPGE
2と構造および機能が類似しており、多くの場合、単一のエレメントまたは基によって構造的に異なるが、親の化学的性質と同じ機能が保持されるのであれば2つ以上の基(例えば、2つ、3つ、または4つの基)の修飾によって異なってもよい化学分子に関する。
【0191】
PGE
2「類似体」の実例としては、限定することなく、16,16−ジメチルPGE
2(dmPGE
2)、16,16−ジメチルPGE
2p−(p−アセトアミドベンズアミド)フェニルエステル、11−デオキシ−16,16−ジメチルPGE
2、9−デオキシ−9−メチレン−16,16−ジメチルPGE
2、9−デオキシ−9−メチレンPGE
2、9−ケトフルプロステノール、5−トランスPGE
2、17−フェニル−オメガ−トリノルPGE
2、PGE
2セリノールアミド、PGE
2メチルエステル、16−フェニルテトラノルPGE
2、15(S)−15−メチルPGE
2、15(R)−15−メチルPGE
2、8−イソ−15−ケトPGE
2、8−イソPGE
2イソプロピルエステル、20−ヒドロキシPGE
2、11−デオキシPGE
1、ノクロプロスト、スルプロストン、ブタプロスト、15−ケトPGE
2、および19(R)ヒドロキシPGE
2が挙げられる。
【0192】
PGE
2EP
4受容体に優先的に結合する、PGE
2EP
4受容体に選択的な作用剤のEP
4受容体に対する親和性は、他の3つのEP受容体、すなわちEP
1、EP
2およびEP
3のいずれに対する親和性よりも高い。PGE
2EP
4受容体に選択的に結合する例示的な作用剤としては、これだけに限定されないが、5−[(1E,3R)−4,4−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−フェニル−1−ブテン−1−イル]−1−[6−(2H−テトラゾール−5R−イル)ヘキシル]−2−ピロリジノン;2−[3−[(1R,2S,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(E,3S)−3−ヒドロキシ−5−[2−(メトキシメチル)フェニル]ペンタ−1−エニル]−5−オキソシクロペンチルジスルファニルプロピルスルファニル]酢酸;メチル4−[2−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(E,3S)−3−ヒドロキシ−4−[3−(メトキシメチル)フェニル]ブタ−1−エニル]−5−オキソシクロペンチル]エチルスルファニル]ブタノエート;16−(3−メトキシメチル)フェニル−ロ−テトラノル−5−チアPGE;5−{3−[(2S)−2−{(3R)−3−ヒドロキシ−4−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]ブチル}−5−オキソピロリジン−1−イル]プロピル]チオフェン−2−カルボキシレート;[4’−[3−ブチル−5−オキソ−1−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−1,5−ジヒドロ−[1,2,4]トリアゾール−4−イルメチル]−ビフェニル−2−スルホン酸(3−メチル−チオフェン−2−カルボニル)−アミド];および((Z)−7−{(1R,4S,5R)−5−[(E)−5−(3−クロロ−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−3−ヒドロキシ−ペンタ−1−エニル]−4−ヒドロキシ−3,3−ジメチル−2−オキソ−シクロペンチル}−ヘプタ−5−エン酸)からなる群から選択される作用剤が挙げられる。
【0193】
特定の実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストは、PGE
2、dmPGE
2、15(S)−15−メチルPGE
2、20−エチルPGE
2、または8−イソ−16−シクロヘキシル−テトラノルPGE
2である。
【0194】
好ましい実施形態では、幹細胞または前駆細胞、例えば、造血幹細胞または造血前駆細胞を、PGE
2またはdmPGE
2からなる群から選択されるプロスタグランジン経路アゴニストを、必要に応じてグルココルチコイドと組み合わせて用いて処理する(それと接触させる)。
2.グルココルチコイド
【0195】
グルココルチコイドは、生命に必須であり、両方の副腎を除去した後には、哺乳動物はグルココルチコイド補充なしでは長く生存しない。グルココルチコイドの受容体(GR)は、通常は細胞内にあり、核ではなく細胞質内に存在し、熱ショックタンパク質(HSP)と会合している。グルココルチコイドが細胞膜を渡って拡散するとHSPに取って代わり、GRに結合する。その後グルココルチコイド−GR複合体がリン酸化されることにより、複合体が核内に移行することが容易になり、核内で複合体は別のホルモン−受容体複合体とホモ二量体またはヘテロ二量体を形成する。二量体化受容体のDNA結合性ドメイン内のジンクフィンガーがグルココルチコイド応答エレメント(GRE)と相互作用して、通常GREの下流で開始される遺伝子の転写を刺激または抑制する。
【0196】
本発明者らは、予想外に、幹細胞および/または前駆細胞をプロスタグランジン経路アゴニストおよびグルココルチコイドで処理することにより、処理した細胞の治療的性質が、対照、ビヒクル、または無処理の細胞と比較して驚くほど大きく増大することを発見した。具体的には、幹細胞および/または前駆細胞をプロスタグランジンアゴニストおよびグルココルチコイドで処理することにより、CXCR4の発現が増加し、1種または複数種のシグネチャー遺伝子の発現が増加し、in vivoにおける細胞の1つまたは複数の治療的性質、例えば、虚血性組織損傷の部位へのホーミングが増加すること、内在性幹細胞および内皮前駆細胞の動員を増加させること、虚血組織部位における血管新生の刺激を増加させること、虚血組織の壊死および/もしくはプログラム細胞死を減少させること、または虚血組織部位における細胞生存を増加させること、が増大する。
【0197】
本発明の方法において使用するために適したグルココルチコイドおよびグルココルチコイド受容体アゴニストの実例としては、これだけに限定されないが、アルクロメタゾン、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、クロベタゾール、酪酸クロベタゾール、プロピオン酸クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチゾール、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコート、デソニド、デスオキシメタゾン(desoximetasone)、デスオキシコルトン、デスオキシメタゾン(desoxymethasone)、デキサメタゾン、ジフロラゾン、二酢酸ジフロラゾン、ジフルコルトロン、吉草酸ジフルコルトロン、ジフルオロコルトロン、ジフルプレドナート、フルクロロロン、フルクロロロンアセトニド、フルドロキシコルチド、フルメタゾン(flumetasone)、フルメタゾン(flumethasone)、ピバル酸フルメタゾン、フルニソリド、フルニソリド半水和物、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチン、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオロコルチゾン、フルオロメトロン、フルペロロン、フルプレドニデン、酢酸フルプレドニデン、フルプレドニゾロン、フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ホルモコータル、ハルシノニド、ハロメタゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、アセポン酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンブテプレート、酪酸ヒドロコルチゾン、ロテプレドノール、メドリゾン、メプレドニゾン、6a−メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、モメタゾン、フロ酸モメタゾン、フロ酸モメタゾン一水和物、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニドおよびウロベタゾールが挙げられる。
【0198】
特定の実施形態では、幹細胞または前駆細胞、例えば、造血幹細胞または造血前駆細胞を、プロスタグランジン経路アゴニストを、コルチゾール、酢酸コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、酢酸フルドロコルチゾン、酢酸デオキシコルチコステロン、およびアルドステロンからなる群から選択されるグルココルチコイドと組み合わせて用いて処理する(それと接触させる)。
【0199】
一実施形態では、幹細胞または前駆細胞、例えば、造血幹細胞または造血前駆細胞を、PGE
2またはdmPGE
2からなる群から選択されるプロスタグランジン経路アゴニストを、メドリゾン、ヒドロコルチゾン、アルクロメタゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、またはトリアムシノロンからなる群から選択されるグルココルチコイドと組み合わせて用いて処理する(それと接触させる)。
【0200】
好ましい実施形態では、幹細胞または前駆細胞、例えば、造血幹細胞または造血前駆細胞を、PGE
2またはdmPGE
2を、必要に応じてメドリゾンと組み合わせて用いて処理する(それと接触させる)。
E.投与
【0201】
本発明の組成物は滅菌されており、ヒト被験体に適しており、投与できる状態にある(すなわち、いかなるさらなる加工も伴わずに投与することができる)。いくつかの実施形態では、組成物は被験体に注入できる状態にある。本明細書で使用される場合、「投与準備済みの(administration−ready)」、「投与できる状態にある」または「注入できる状態にある」という用語は、被験体に投与する前にいかなるさらなる処理または操作も必要としない本発明の細胞に基づく組成物を指す。
【0202】
本明細書に記載の方法において使用される細胞の集団を投与するために適した方法としては、これだけに限定されないが、静脈内投与および動脈内投与などの血管内投与の方法を含めた非経口投与が挙げられる。本発明の細胞を投与するための追加的な例示的な方法としては、筋肉内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内および胸骨内の注射および注入が挙げられる。
【0203】
特定の実施形態では、組成物を、例えば、創傷、例えば、非治癒性創傷、潰瘍、熱傷、または凍傷の表面などの虚血性組織損傷の部位に局所的に投与することができる。
【0204】
投与の部位は、意図された活性の部位の近くまたは最も近く、すなわち、組織虚血の部位近くであることが最も好ましい。被験体が全体的な虚血にさらされている場合には、静脈内投与などの全身投与が好ましい。機構に縛られることを意図することなく、治療用組成物を投与すると、幹細胞および前駆細胞が、傷害に起因して産生された走化性因子に応答して虚血組織に遊走またはホーミングして、虚血組織の処置または虚血組織に関連する少なくとも1つの症状の処置および改善をもたらす。
【0205】
幹細胞を虚血領域に直接注射することもでき、幹細胞を組織虚血の領域に供給する動脈に注入することもできる。被験体の通常は虚血組織の領域に供給する血管が完全に閉塞している場合には、注入のために選択する動脈は、完全に閉塞した血管の分布内の虚血組織に側副流をもたらす血管であることが好ましい。
【0206】
虚血または虚血の少なくとも1つの症状を処置または改善するための、本明細書に記載の方法の特定の例示的な実施形態では、HSPCを被験体に静脈内投与する工程または直接注射する工程を含む。
【0207】
細胞は、被験体への注射または埋め込みによる導入を容易にする送達デバイスに挿入することができる。そのような送達デバイスは、チューブ、例えば、細胞および流体をレシピエント被験体の体内に注射するためのカテーテルを含んでよい。一実施形態では、チューブは、さらに本発明の細胞を被験体の所望の場所へと導入することができる針、例えば、シリンジを有する。特定の実施形態では、細胞を、カテーテル(「カテーテル」という用語は、物質を血管に送達するための種々のチューブ様システムをいずれも含むものとする)を介して血管に投与するために製剤化する。
F.用量および製剤
【0208】
種々の実施形態では、本発明は、治療用組成物を、ヒト患者、または虚血組織に対する治療を必要とする被験体または組織虚血の少なくとも1つの症状を示している患者に投与することを意図している。治療用組成物に含有され、患者に投与される幹細胞または前駆細胞の量は、細胞の供給源、個体の病態、年齢、性別、および体重、ならびに幹細胞および前駆細胞の個体における所望の応答を引き出す能力によって変動する。
1.用量
【0209】
ある「量」の幹細胞および前駆細胞を被験体に投与することとは、これだけに限定することなく、被験体を処置することを含めた所望の治療的または予防的な結果を実現するために「有効な量」を投与することを指す。
【0210】
「治療有効量」とは、被験体(例えば、患者)を「処置する」ために有効な幹細胞および前駆細胞の量を指す。治療有効量は、造血幹細胞または造血前駆細胞のいかなる毒性の影響または有害な影響よりも治療的に有益な影響が上回る量でもある。
【0211】
「予防有効量」とは、所望の予防的な結果を実現するために有効な幹細胞または前駆細胞の量を指す。必ずではないが一般には、予防的な用量は疾患の前に、または疾患のより早い段階で被験体に使用されるので、予防有効量は治療有効量よりも少ない。
【0212】
一実施形態では、被験体に投与する組成物中の幹細胞または前駆細胞の量(例えば、CD34+細胞)は、少なくとも細胞0.1×10
5個、少なくとも細胞0.5×10
5個、少なくとも細胞1×10
5個、少なくとも細胞5×10
5個、少なくとも細胞10×10
5個、少なくとも細胞0.5×10
6個、少なくとも細胞0.75×10
6個、少なくとも細胞1×10
6個、少なくとも細胞1.25×10
6個、少なくとも細胞1.5×10
6個、少なくとも細胞1.75×10
6個、少なくとも細胞2×10
6個、少なくとも細胞2.5×10
6個、少なくとも細胞3×10
6個、少なくとも細胞4×10
6個、少なくとも細胞5×10
6個、少なくとも細胞10×10
6個、少なくとも細胞15×10
6個、少なくとも細胞20×10
6個、少なくとも細胞25×10
6個、または少なくとも細胞30×10
6個である。
【0213】
一実施形態では、被験体に投与する組成物中の幹細胞または前駆細胞の量は、体重1kg当たり少なくとも細胞0.1×10
5個、体重1kg当たり少なくとも細胞0.5×10
5個、体重1kg当たり少なくとも細胞1×10
5個、体重1kg当たり少なくとも細胞5×10
5個、体重1kg当たり少なくとも細胞10×10
5個、体重1kg当たり少なくとも細胞0.5×10
6個、体重1kg当たり少なくとも細胞0.75×10
6個、体重1kg当たり少なくとも細胞1×10
6個、体重1kg当たり少なくとも細胞1.25×10
6個、体重1kg当たり少なくとも細胞1.5×10
6個、体重1kg当たり少なくとも細胞1.75×10
6個、体重1kg当たり少なくとも細胞2×10
6個、体重1kg当たり少なくとも細胞2.5×10
6個、体重1kg当たり少なくとも細胞3×10
6個、体重1kg当たり少なくとも細胞4×10
6個、体重1kg当たり少なくとも細胞5×10
6個、体重1kg当たり少なくとも細胞10×10
6個、体重1kg当たり少なくとも細胞15×10
6個、体重1kg当たり少なくとも細胞20×10
6個、体重1kg当たり少なくとも細胞25×10
6個、または体重1kg当たり少なくとも細胞30×10
6個である。
【0214】
所望の治療をもたらすために本発明の組成物を複数回投与することが必要になる場合があることが当業者には理解されよう。例えば、組成物を、1週間、2週間、3週間、1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、1年、2年、5年、10年、またはそれより長きにわたって、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、または10回、またはそれより多く投与することができる。
【0215】
好ましい実施形態では、幹細胞または前駆細胞は造血幹細胞および造血前駆細胞である。
2.製剤
【0216】
本発明の組成物は、(1)例えば、滅菌した溶液もしくは懸濁液、または持続放出製剤もしくは細胞移植片、バイオマテリアル、足場などとして、例えば、皮下注射、筋肉内注射、静脈内注射または硬膜外注射による非経口投与に適合させたものを含めた、固体または液体の形態で投与するために特別に製剤化することができる。
【0217】
種々の実施形態では、損傷を受けた、傷害を受けた、または疾患にかかった組織または臓器、例えば、虚血組織の修復、置き換え、および/または再生を促進するための生体適合性足場または移植片が提供される。
【0218】
ある特定の例示的な実施形態では、本発明のHSPCを必要とする被験体を処置するための方法は、本発明のHSPCを含む生体適合性足場または細胞移植片を提供する工程を含む。本明細書で使用される場合、「生体適合性足場」または「細胞移植片」という用語は、細胞に基づく組成物を誘導または誘引してin vivoにおいて細胞、組織または臓器を修復、再生、または置き換えることのために適した患者または被験体の表面に注射する、適用する、またはその内部に生着させる1つまたは複数の細胞に基づく組成物、細胞、組織、ポリマー、ポリヌクレオチド、格子、および/またはマトリックスを含む生体適合性の天然構造および/または合成構造を指す。
【0219】
特定の例示的な実施形態では、埋め込み物は、任意の適切な形態に成形することができ、皮膚の創傷に適用するための特定の深さもしくは高さを有する3次元の形状または平らなシート様形状の組織を調製するために特に重要な役割を有する生体適合性マトリックスを含む。バイオマテリアル科学は、確立され、発展している分野である(Takayamaら、Principles of Tissue Engineering、第2版、Lanza RP、Langer R、Vacanti J.編、Academic Press、San Diego、2000年、209〜218頁;Saltmannら、Principles of Tissue Engineering、第2版、Lanza RP、Langer R、Vacanti J.編、Academic Press、San Diego、2000年、221〜236頁;Hubbellら、Principles of Tissue Engineering、第2版、Lanza RP、Langer R、Vacanti J.編、Academic Press、San Diego、2000年、237〜250頁;Thomsonら、Principles of Tissue Engineering、第2版、Lanza RP、Langer R、Vacanti J.編、Academic Press、San Diego、2000年、251〜262頁;Pachenceら、Principles of Tissue Engineering、第2版、Lanza RP、Langer R、Vacanti J.編、Academic Press、San Diego、2000年、263〜278頁)。
【0220】
化学者らにより、細胞の成長をin vitro、ex vivo、およびin vivoにおいて誘導し、調節するためのポリマーを含む生体適合性足場を合成するための方法が開発されてきた。ポリマーの物理特性を調節して、特定の強度および粘度の固体マトリックスおよび液体マトリックスを創製することができる。いくつかのポリマーはin vivoで安定であり、1年、2年、3年、4年、5年、10年、15年またはそれより長きにわたって患者の体内に留まる。他のポリマーは同様に生分解性であり、時間を経て固定速度で再吸収されて、新しく合成される細胞外マトリックスタンパク質によって置き換えられる。再吸収は、埋め込み後、数日〜数週間または数ヶ月以内に起こり得る(Pachenceら、Principles of Tissue Engineering、第2版、Lanza RP、Langer R、Vacanti J.編、Academic Press、San Diego、2000年、263〜278頁)。
【0221】
他の例示的な実施形態では、生体適合性足場は、生体吸収性材料を含む。多孔質キャリアは、コラーゲン、コラーゲン誘導体、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩、キトサン、キトサン誘導体、ポリロタキサン、ポリロタキサン誘導体、キチン、キチン誘導体、ゼラチン、フィブロネクチン、ヘパリン、ラミニン、およびアルギン酸カルシウムからなる群から選択される1つの構成成分または複数の構成成分の組合せで作製されていることが好ましく、支持体のメンバーは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸−ポリグリコール酸共重合体、ポリ乳酸−ポリカプロラクトン共重合体、およびポリグリコール酸−ポリカプロラクトン共重合体からなる群から選択される1つの構成成分または複数の構成成分の組合せで作製される(例えば、米国特許第5,077,049号および同第5,42,033号、および米国特許出願公開第2006/0121085号を参照されたい、各特許および特許出願のポリマー製剤およびそれを作製する方法の全体が本明細書に組み込まれる)。
【0222】
本発明の特定の例示的な実施形態では、生体適合性足場または細胞移植片は、粘性の生体適合性液体材料を含む。生体適合性液体は、体温でゲル化することができ、アルギン酸塩、コラーゲン、フィブリン、ヒアリン、または血漿からなる群から選択される。粘性の生体適合性液体材料は、不規則な組織欠損を埋めることができる可鍛性の3次元のマトリックスと組み合わせることもできる。マトリックスは、これだけに限定されないが、ポリグリコール酸−ポリ乳酸、ポリ−グリコール酸、ポリ−乳酸、または縫合糸様材料を含めた材料である。
【0223】
さらなる例示的な実施形態では、マトリックスを含む生体適合性足場または細胞移植片を細胞、組織、および/または臓器の発達を促すまたは容易にする所望の形状(例えば、2次元構造または3次元構造)に成形することができる。埋め込み物は、メッシュまたはスポンジなどの繊維を有するポリマー材料から形成されていてよい。そのような構造により、細胞を成長させ、増殖させることができる十分な面積がもたらされる。足場または細胞移植片のマトリックスは、時間を経て生分解され得、したがって、動物質(animal matter)が発達するにしたがってそれに吸収されることが望ましい。適切なポリマーは、ホモポリマーまたはヘテロポリマーであってよく、また、これだけに限定されないが、グリコール酸、乳酸、プロピルフマレート、カプロラクトンなどを含めた単量体から形成され得る。他の適切なポリマー材料としては、タンパク質、多糖、ポリヒドロキシ酸、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、ポリホスファゼン(polyphosphozene)、または合成ポリマー、特に、生分解性ポリマー、またはそれらの任意の組合せを挙げることができる。
【0224】
シート様の足場および移植片により、皮膚組織、歯根被覆手順用の膜、膜性組織(例えば、硬膜)、扁平骨(例えば、頭蓋骨、胸骨)などに対する修復治療、置換え治療、および/または再生治療がもたらされる。管状の埋め込み物および移植片により、動脈、静脈、尿管、尿道、神経、長骨(例えば、大腿骨、腓骨、脛骨、上腕骨、橈骨、尺骨、中手骨、中足骨など)などに対する修復治療、置換え治療、および/または再生治療がもたらされる。他の3次元の埋め込み物および移植片により、臓器移植物(例えば、肝臓、肺、皮膚、心臓、膵臓など)、骨リモデリングまたは全種類の骨の補修、歯科インプラントに対する、または筋肉移植片、腱移植片、靭帯移植片、および軟骨移植片に対する修復治療、置換え治療、および/または再生治療がもたらされる。
【0225】
一実施形態では、虚血組織もしくは虚血による損傷を受けた組織または虚血組織もしくは虚血による損傷を受けた組織に関連する少なくとも1つの症状を処置または改善するための方法は、本発明のHSPCを含む生体適合性足場または細胞移植片を虚血組織に直接投与する工程を含む。
【0226】
虚血組織もしくは虚血による損傷を受けた組織または虚血組織もしくは虚血による損傷を受けた組織に関連する少なくとも1つの症状を処置または改善するための、本明細書に記載の方法の特定の例示的な実施形態では、(i)PGE
2、dmPGE
2、15(S)−15−メチルPGE
2、20−エチルPGE
2、または8−イソ−16−シクロヘキシル−テトラノルPGE
2を含む1種または複数種の作用剤と(ii)グルココルチコイドの組合せを用いて処理したHSPCを含む生体適合性足場または細胞移植片を虚血組織に直接投与する工程を含む。より詳細な実施形態では、該方法は、虚血組織に、(i)PGE
2または16,16−ジメチルPGE
2および(ii)メドリゾン、ヒドロコルチゾン、アルクロメタゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、またはアルクロメタゾンを用いて処理したHSPCを含む生体適合性足場または細胞移植片を直接投与する工程を含む。より詳細な実施形態では、該方法は、虚血組織に、(i)PGE
2または16,16−ジメチルPGE
2および(ii)メドリゾンを用いて処理したHSPCを含む生体適合性足場または細胞移植片を直接投与する工程を含む。
【0227】
被験体に投与するために適した、滅菌された治療的に許容される組成物は、1種または複数種の薬学的に許容されるキャリア(添加物)および/または希釈剤(例えば、薬学的に許容される培地、例えば、細胞培養培地)、または他の薬学的に許容される構成成分を含んでよい。薬学的に許容されるキャリアおよび/または希釈剤は、一部において、投与する特定の組成物によって、ならびに治療用組成物を投与するために使用する特定の方法によって決定される。したがって、本発明の治療用組成物の多種多様の適切な製剤が存在する(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第21版 2005年を参照されたい)。
【0228】
特定の実施形態では、幹細胞および/または前駆細胞を含む組成物は、薬学的に許容される細胞培養培地を含む。本発明の幹細胞および/または前駆細胞を含む組成物を、経腸投与方法または非経口投与方法によって別々に、または他の適切な化合物と組み合わせて投与して、所望の処置目的を果たすことができる。
【0229】
薬学的に許容されるキャリアおよび/または希釈剤は、処置されているヒト被験体に投与するために適するように、純度が十分に高く、毒性が十分に低くなければならない。薬学的に許容されるキャリアおよび/または希釈剤は、さらに、治療用組成物の安定性を維持または増加すべきである。薬学的に許容されるキャリアは、液体であっても固体であってもよく、本発明の治療用組成物の他の構成成分と組み合わせたときに所望の容積、粘稠度などがもたらされるように計画的な投与様式を考慮して選択される。例えば、薬学的に許容されるキャリアは、これだけに限定することなく、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)、増量剤(例えば、ラクトースおよび他の糖、微結晶セルロース、ペクチン、ゼラチン、硫酸カルシウム、エチルセルロース、ポリアクリレート、リン酸水素カルシウムなど)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸、ステアリン酸金属塩、硬化植物油、トウモロコシデンプン、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなど)、崩壊剤(例えば、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウムなど)、または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなど)であってよい。本発明の組成物のための他の適切な薬学的に許容されるキャリアとしては、これだけに限定されないが、水、塩類溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0230】
そのようなキャリア溶液は、緩衝液、希釈剤および他の適切な添加物も含有してよい。「緩衝液」という用語は、本明細書で使用される場合、その化学的構成により、pHを有意に変化させずに酸または塩基を中和する溶液または液体を指す。本発明により構想される緩衝液の例としては、これだけに限定されないが、ダルベッコリン酸緩衝食塩水(PBS)、リンゲル液、水中5%ブドウ糖(D5W)、およびノーマルセーライン/生理食塩水(0.9%NaCl)が挙げられる。
【0231】
これらの薬学的に許容されるキャリアおよび/または希釈剤は、治療用組成物のpHを約3から約10の間に維持するために十分な量で存在してよい。そのように、緩衝剤は、重量対重量ベースで組成物全体の約5%までであってよい。例えば、これだけに限定されないが、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムなどの電解質も治療用組成物に含めることができる。
【0232】
本発明の投与準備済みの組成物を含む薬学的に許容されるキャリア、希釈剤、および他の構成成分は、臨床レジメンにおいて使用される組成物を可能にする米国医薬品グレード試薬から得られる。一般には、任意の媒体、溶液、または他の薬学的に許容されるキャリアおよび/または希釈剤を含めたこれらの完成した試薬は、使用する前に、濾過滅菌などの当技術分野における従来の様式で滅菌され、種々の望ましくない混入物、例えば、マイコプラズマ、内毒素、またはウイルスの混入について試験される。薬学的に許容されるキャリアは、一実施形態では、ヒトまたは動物起源の天然のタンパク質を実質的に含まず、造血幹細胞および造血前駆細胞を含めた組成物の細胞の集団を貯蔵するために適している。
【0233】
本発明は、一部において、薬学的に許容される細胞培養培地、具体的には、本発明の組成物および/または培養物の使用も意図している。そのような組成物は、ヒト被験体に投与するために適している。一般的に言うと、本発明の幹細胞および/または前駆細胞の維持、成長、および/または健康を支持する任意の媒体が、薬学的細胞培養培地として使用するために適している。特定の実施形態では、薬学的に許容される細胞培養培地は、無血清培地である。
【0234】
治療用組成物は、組成物を含む細胞の集団を貯蔵するために適した無血清培地を含んでよい。無血清培地には、血清含有培地と比較して、組成が簡単かつより良く定義されること、混入物の程度が低いこと、潜在的な感染因子の供給源が排除されること、および費用が低いことを含めた、いくつかの有利な点がある。種々の実施形態では、無血清培地は動物質を含まず、必要に応じて、タンパク質を含まなくてよい。必要に応じて、培地は、生物薬剤的に許容される組換えタンパク質を含有してよい。「動物質を含まない(animal−free)」培地とは、構成成分が、非動物供給源に由来する培地を指す。動物質を含まない培地ではネイティブな動物タンパク質を組換えタンパク質に置き換え、栄養分は、合成の植物供給源または微生物供給源から得る。対照的に、タンパク質を含まない培地は、タンパク質を実質的に含まないと定義される。
【0235】
本発明において利用する無血清培地の実例としては、これだけに限定されないが、QBSF−60(Quality Biological,Inc.)、StemPro−34(Life Technologies)、AIM V(Life Technologies)、およびX−VIVO10(BioWhittakerカタログ)が挙げられる。
【0236】
種々の実施形態では、本発明の組成物は、5%HSAなどのヒト血清アルブミン(HSA)および低分子量(LMW)デキストランの滅菌溶液を含み、マイコプラズマ、内毒素、および微生物が実質的に混入していない。特定の実施形態では、治療用組成物は、約10μg/ml未満、5μg/ml未満、4μg/ml未満、3μg/ml未満、2μg/ml未満、1μg/ml未満、0.1μg/ml未満、0.05μg/ml未満のウシ血清アルブミンを含有する。
【0237】
上記の培地の例は例示的なものであり、本発明において使用するために適した培地の配合を限定するものでは決してないこと、ならびに当業者に公知であり、利用可能な多くのそのような培地が存在することは当業者には理解されよう。
G.処置方法
【0238】
本発明は、一部において、虚血組織を処置するため、または、これだけに限定されないが、痙攣、跛行、しびれ、刺痛、衰弱、疼痛、創傷治癒の低下、炎症、皮膚変色、および壊疽を含めた組織虚血に関連する1つまたは複数の症状を処置もしくは改善するための、細胞に基づく治療の方法を意図している。
【0239】
虚血組織は、虚血性組織損傷の部位への幹細胞および/または前駆細胞のホーミングを増加させること、虚血組織部位における内在性幹細胞および内皮前駆細胞の動員を増加させること、虚血組織部位における血管新生を増加させること、虚血組織の壊死もしくはプログラム細胞死を減少させること、または虚血組織部位における細胞生存を増加させることによって処置することができる。したがって、本発明は、一部において、虚血組織もしくは虚血による損傷を受けた組織を処置することまたは虚血組織に関連する少なくとも1つの症状を処置もしくは改善することにおいて有用となるこれらの治療的性質を有する細胞を意図している。
【0240】
本発明者らは、幹細胞および前駆細胞をプロスタグランジン経路アゴニスト、および必要に応じてグルココルチコイドと接触させることにより、驚くほど高レベルのCXCR4を発現する幹細胞および前駆細胞を開発した。これらの新規の細胞は、特定の遺伝子発現シグネチャーを使用して、または機能アッセイ、例えば、トランスウェル遊走アッセイによって同定することができる。本発明者らは、これらの新規の細胞が、虚血組織の処置において有用となる治療的性質を有することも決定した。
【0241】
いかなる特定の理論にも縛られることを望むことなく、本発明は、一部において、幹細胞または前駆細胞、例えば造血幹細胞または造血前駆細胞を、本明細書に開示されているレベルおよび当技術分野において現存する治療用細胞では報告されていないレベルまで、接触させた幹細胞または前駆細胞におけるCXCR4の発現を増加させるために十分な条件下で、プロスタグランジン経路アゴニストおよび必要に応じてグルココルチコイドと接触させることにより、接触させた幹細胞および前駆細胞の、虚血性組織傷害または虚血性組織傷害に関連する症状を処置または改善することにおいて有用である治療的性質が増大することを意図している。
【0242】
種々の実施形態では、本発明は、虚血組織または虚血による損傷を受けた組織またはそれに関連する少なくとも1つの症状を処置する方法であって、被験体に、プロスタグランジン経路アゴニストおよび必要に応じてグルココルチコイドと接触させた幹細胞または前駆細胞を含む治療有効量の組成物を投与する工程、ならびにCXCR4の発現が対照、ビヒクル、または無処理の細胞と比較して増加する工程を含む方法を提供する。一実施形態では、細胞により、虚血性組織損傷の部位への幹細胞および/または前駆細胞のホーミングが増加すること、虚血組織部位における内在性幹細胞および内皮前駆細胞の動員が増加すること、虚血組織部位における血管新生の刺激が増加すること、虚血組織の壊死もしくはプログラム細胞死が減少すること、または虚血組織部位における細胞生存が増加することによって被験体に対する治療がもたらされる。
【0243】
種々の他の実施形態では、本発明は、虚血性組織傷害を処置または改善する方法であって、被験体に、プロスタグランジン経路アゴニストおよび必要に応じてグルココルチコイドと接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞を含む治療有効量の組成物を投与する工程、ならびに治療的性質、例えば、CXCR4の発現が、対照、ビヒクル、または無処理の細胞と比較して増加する工程を含む方法を提供する。一実施形態では、造血幹細胞または造血前駆細胞により、虚血性組織損傷の部位への造血幹細胞および/または造血前駆細胞のホーミングが増加すること、虚血組織部位における内在性幹細胞および内皮前駆細胞の動員が増加すること、虚血組織部位における血管新生の刺激が増加すること、虚血組織の壊死もしくはプログラム細胞死が減少すること、または虚血組織部位における細胞生存が増加することによって、被験体に対する治療がもたらされる。
【0244】
種々の他の実施形態では、本発明は、虚血性組織傷害に関連する症状を処置または改善する方法であって、被験体に、PGE
2またはdmPGE
2、および必要に応じてグルココルチコイド、例えば、メドリゾンと接触させた幹細胞または前駆細胞を含む治療有効量の組成物を投与する工程、ならびに治療的性質、例えば、CXCR4の発現が、対照、ビヒクル、または無処理の細胞と比較して増加する工程を含む方法を提供する。一実施形態では、細胞により、虚血性組織損傷の部位への幹細胞および/または前駆細胞のホーミングが増加すること、虚血組織部位における内在性幹細胞および内皮前駆細胞の動員が増加すること、虚血組織部位における血管新生の刺激が増加すること、虚血組織の壊死もしくはプログラム細胞死が減少すること、または虚血組織部位における細胞生存が増加することによって、被験体に対する治療がもたらされる。
【0245】
さらに他の種々の実施形態では、本発明は、虚血性組織傷害に関連する症状を処置または改善する方法であって、被験体に、PGE
2またはdmPGE
2、および必要に応じてグルココルチコイド、例えば、メドリゾンと接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞を含む治療有効量の組成物を投与する工程、ならびに治療的性質、例えば、CXCR4の発現が、対照、ビヒクル、または無処理の細胞と比較して増加する工程を含む方法を提供する。一実施形態では、造血幹細胞または造血前駆細胞により、虚血性組織損傷の部位への造血幹細胞または造血前駆細胞のホーミングが増加すること、虚血組織部位における内在性幹細胞および内皮前駆細胞の動員が増加すること、虚血組織部位における血管新生の刺激が増加すること、虚血組織の壊死もしくはプログラム細胞死が減少すること、または虚血組織部位における細胞生存が増加することによって、被験体に対する治療がもたらされる。
【0246】
本発明の方法は、あらゆる種類の組織に対する虚血性損傷またはあらゆる種類の組織に関連する虚血の症状を処置するために適している。さらに、本発明の方法は、限局性虚血および全体的な虚血、ならびに急性もしくは慢性の虚血または任意の適切なそれらの組合せのいずれかを処置するためにも適している。
【0247】
本発明の組成物を用いて処置するために適した組織の実例としては、中胚葉系組織、内胚葉系組織、または外胚葉系組織が挙げられる。本発明の組成物を用いて処置するために適した他の組織としては、これだけに限定されないが、皮膚組織、骨格筋組織、心筋組織、平滑筋組織、軟骨組織、腱組織、骨組織、脳組織、脊髄組織、網膜組織、角膜組織、肺組織、肝組織、腎組織、膵組織、卵巣組織、精巣組織、腸組織、胃組織、および膀胱組織が挙げられる。
【0248】
特定の実施形態では、血液供給が損なわれ、虚血である、または虚血になるリスクがある任意の組織を、本発明の方法を使用して処置することができる。
【0249】
本発明の方法は、虚血臓器または虚血臓器に関連する症状を処置するためにも適している。本発明の組成物を用いて処置するために適した臓器の実例としては、これだけに限定されないが、皮膚、骨、心臓、脳、脊髄、眼、肺、肝臓、胆嚢、腎臓、膵臓、卵巣、精巣、腸、胃、および膀胱が挙げられる。
【0250】
種々の実施形態では、本発明の方法は、任意の遺伝的障害、症候性の状態、外傷性傷害、慢性の状態、医療介入、または当業者に公知の任意の他の虚血の原因から生じる、またはそれに関連する虚血を処置するために適している。
【0251】
被験体において虚血を引き起こすもしくは虚血に関連する、または虚血のリスクを増加させる、または被験体に1つまたは複数の虚血の症状を引き起こす、したがって、本発明の方法を使用して処置または改善するために適した遺伝的障害、症候性の状態、外傷性傷害、慢性の状態、医療介入、または他の状態の実例としては、これだけに限定されないが、急性冠状動脈症候群、急性肺傷害(ALI)、急性心筋梗塞(AMI)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、動脈閉塞性疾患、動脈硬化症、関節軟骨欠損、無菌性全身性炎症、アテローム硬化性心血管疾患、自己免疫疾患、骨折、骨折、脳浮腫、脳低灌流、バージャー病(閉塞性血栓性血管炎)、熱傷、がん、心血管疾患、軟骨損傷、脳梗塞、脳虚血、脳卒中、脳血管疾患、化学療法誘発性ニューロパチー、慢性感染、慢性腸間膜虚血、跛行、うっ血性心不全、結合組織損傷、挫傷、冠動脈疾患(CAD)、重症肢虚血(CLI)、クローン病、深部静脈血栓症、深部創傷、潰瘍治癒の遅延、創傷治癒の遅延、糖尿病(I型およびII型)、糖尿病性ニューロパチー、糖尿病誘発性虚血、播種性血管内凝固(DIC)、塞栓性脳虚血、移植片対宿主病、凍傷、遺伝性出血性毛細血管拡張症、虚血性血管疾患、高酸素傷害、低酸素症、炎症、炎症性腸疾患、炎症性疾患、傷害を受けた腱、間欠性跛行、腸管虚血、虚血、虚血性脳疾患、虚血性心疾患、虚血性末梢血管疾患、虚血胎盤、虚血性腎疾患、虚血性血管疾患、虚血再灌流傷害、裂傷、左主冠状動脈疾患、肢虚血、下肢虚血、心筋梗塞、心筋虚血、臓器虚血、変形性関節症、骨粗鬆症、骨肉腫、パーキンソン病、末梢動脈性疾患(PAD)、末梢動脈疾患、末梢性虚血、末梢性ニューロパチー、末梢血管疾患、前がん、肺水腫、肺塞栓症、リモデリング障害、腎臓虚血、網膜虚血、網膜症、敗血症、皮膚潰瘍、実質臓器移植、脊髄傷害、卒中、軟骨下骨嚢胞、血栓症、血栓性脳虚血、組織虚血、一過性脳虚血発作(TIA)、外傷性脳傷害、潰瘍性大腸炎、腎臓の血管疾患、血管の炎症性の状態、フォンヒッペル・リンダウ症候群、および組織または臓器の創傷が挙げられる。
【0252】
本発明の方法を使用して処置または改善するために適した、被験体において虚血を引き起こすもしくは虚血に関連する、または虚血のリスクを増加させる、または被験体に1つまたは複数の虚血の症状を引き起こす遺伝的障害、症候性の状態、外傷性傷害、慢性の状態、医療介入、または他の状態の他の実例としては、外科手術、化学療法、放射線療法、または細胞、組織、もしくは臓器の移植(transplant)もしくは移植(graft)に起因する虚血が挙げられる。
【0253】
種々の実施形態では、本発明の方法は、脳血管虚血、心筋虚血、肢虚血(CLI)、心筋虚血(特に、慢性心筋虚血)、虚血性心筋症、脳血管虚血、腎臓虚血、肺虚血、腸管虚血などを処置するために適している。
【0254】
種々の実施形態では、本発明は、本明細書に開示されている治療用細胞組成物を使用して、組織への血流、酸素供給、グルコース供給、または栄養分の供給を増加させることが望ましい虚血組織を処置することができることを意図している。
【0255】
本明細書において引用されている刊行物、特許出願、および発行された特許は全て、個々の刊行物、特許出願、または発行された特許のそれぞれが具体的にかつ個別に参照により組み込まれることが示されたのと同じく参照により本明細書に組み込まれる。
【0256】
上記の発明は、理解を明確にするために例示および実施例によって一部の詳細について記載されているが、本発明の教示を踏まえて、添付の特許請求の範囲の主旨または範囲から逸脱することなく特定の変化および改変を本発明に行うことができることが当業者には容易に明らかである。以下の実施例は、単に例示として提供され、限定として提供されているのではない。変化させることまたは改変することができる種々の重大でないパラメータにより、基本的に同様の結果がもたらされることが当業者には容易に理解されよう。
【実施例】
【0257】
(実施例1)
SDF−1 トランスウェル遊走アッセイ
方法
96ウェル走化性チャンバー、5μM孔径のポリカーボネート膜(Corning Inc.、Corning、NY)を製造者の指示に従って使用してトランスウェル遊走アッセイを実施した。簡単に述べると、次いで、CD34
+細胞を、37℃で4時間にわたって16,16−ジメチルPGE
2(dmPGE
2)、dmPGE
2およびグルココルチコイド、またはDMSO対照をStemSpan(登録商標)培地(Stem Cell Technology、Vancouver、Canada)中10μMの濃度で用いて処理した。次いで、細胞を遠心分離によって洗浄し(300g、10分)、トランスウェルアッセイ緩衝液(Phenol Red Free RPMI培地(Mediatech)、0.5%無脂質BSA(Sigma−Aldrich)に75μl当たり細胞40,000〜60,000個の濃度で再懸濁させた。
【0258】
処理効果の持続時間を試験するために、処理した細胞の一部分を遠心分離によって洗浄し(300g、10分)、dmPGE2も、グルココルチコイドも、DMSOも無しのStemSpan(登録商標)培地に37℃で4時間再懸濁させ、次いで、再度遠心分離によって洗浄し(300g、10分)、トランスウェルアッセイ緩衝液(Phenol Red Free RPMI培地(Mediatech)、0.5%無脂質BSA(Sigma−Aldrich)に75μl当たり細胞40,000〜60,000個の濃度で再懸濁させた。
【0259】
プレートの上部のチャンバーには細胞懸濁液75μlを加え、下のウェルには0ng/mlまたは50ng/mlのSDF1α(R&D system、Minneapolis、MN)を含有するトランスウェルアッセイ培地235μlを加えた。37℃、5%CO
2で2.5時間インキュベートした後に下のウェルの総細胞数をフローサイトメトリーによって得た。
結果
【0260】
CD34
+細胞を、DMSO対照、dmPGE
2、またはdmPGE
2およびメドリゾンを用いて上記の通り処理した。下部のチャンバーに0ng/mLのSDF1または50ng/mLのSDF1が入ったトランスウェル培養プレートの上部のチャンバーに処理した細胞を入れた。遊走を、加えた細胞に対する%、すなわち、上部のチャンバーに最初に加えた細胞の数に対して正規化した下部のチャンバー内の細胞の数として表した。dmPGE
2で処理することにより、DMSO対照と比較してSDF1に駆動される遊走が増加した(
図7参照)。dmPGE
2とメドリゾンを組み合わせて処理することにより、SDF1に駆動される細胞遊走がdmPGE
2単独またはDMSO対照を超えて増加した(
図1参照)。したがって、dmPGE
2、またはdmPGE
2およびメドリゾンを用いて処理したCD34
+細胞は、DMSO対照で処理した細胞と比較して、SDF1に向かってより効率的に遊走した。
【0261】
CD34
+細胞を、DMSO対照、dmPGE
2、またはdmPGE
2およびグルココルチコイド(メドリゾン、ヒドロコルチゾン、トリアムシノロン、アルクロメタゾン、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、またはデキサメタゾン)を用いて上記の通り処理した。下部のチャンバーに0ng/mLのSDF1または50ng/mLのSDF1が入ったトランスウェル培養プレートの上部のチャンバーに処理した細胞を入れた。遊走を、加えた細胞に対する%、すなわち、上部のチャンバーに最初に加えた細胞の数に対して正規化した下部のチャンバー内の細胞の数として表した。dmPGE
2で処理することにより、SDF1に駆動される細胞遊走がDMSO対照と比較して増加した(
図2参照)。さらに、dmPGE2をメドリゾン、ヒドロコルチゾン、トリアムシノロン、アルクロメタゾン、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、またはデキサメタゾンのいずれかと組み合わせて処理することにより、SDF1に駆動される細胞遊走がdmPGE2単独またはDMSO対照よりも有効に増加した(
図2参照)。したがって、dmPGE
2、またはdmPGE
2および種々のグルココルチコイドを用いて処理したCD34
+細胞は、DMSO対照で処理した細胞と比較して、SDF1に向かってより効率的に遊走し、プロスタグランジン経路アゴニスト/グルココルチコイドで処理した細胞の遊走性の増強は特定のグルココルチコイドに限定されないことが示された。
【0262】
dmPGE
2/グルココルチコイドで処理した細胞のSDF1への遊走効果の増強の持続時間を試験した。CD34
+細胞を、DMSOまたはdmPGE
2およびメドリゾンを用いて処理した。新鮮に処理した細胞または処理し、さらなる処理を伴わずに追加的な4時間にわたってインキュベートした細胞(上記の通り)を、下部のチャンバーに0ng/mLのSDF1または50ng/mLのSDF1が入ったトランスウェル培養プレートの上部のチャンバーに入れた。遊走を、加えた細胞に対する%、すなわち、上部のチャンバーに最初に加えた細胞の数に対して正規化した下部のチャンバー内の細胞の数として表した。dmPGE
2およびメドリゾンで処理することにより、SDF1に駆動される細胞遊走がDMSO対照と比較して増加した(
図3参照)。さらに、dmPGE
2およびメドリゾンで処理し、さらなる処理無しで追加的な4時間にわたってインキュベートした細胞は、新鮮に処理した細胞と同様に遊走した。したがって、プロスタグランジン経路アゴニスト/グルココルチコイドで処理した細胞のSDF1への遊走効果の増強は少なくとも4時間にわたって安定であり、この効果は処理した細胞を被験体に投与する場合にも存在することが示される。
【0263】
(実施例2)
PGE
2およびPGE
2/グルココルチコイドで処理したHSPCにより、ラット虚血モデルにおける神経機能および運動機能が改善される
方法
成体の雄のWistarラットを、右中大脳動脈を遮断することによる一過性の限局性虚血MCAOモデル(中大脳動脈閉塞)に供した。先端を丸くした外科用ナイロン縫合糸を、中大脳動脈の起点を塞ぐまで外頸動脈から内頸動脈の内腔に進めた。2時間後に、縫合糸を除いて再灌流させた。再灌流の1日後に、ラットに、尾静脈を介してハンクス平衡塩類溶液(Hanks Balanced Salt Solution)(HBSS)、DMSOで処理したHSPC、またはdmPGE
2およびメドリゾンを用いて処理したHSPCのいずれかを注射した。増強された細胞の効果の持続力を増大させるために、ホスホジエステラーゼ(phospodiesterase)4阻害剤(YM976)も含めた。本発明者らの研究により、PDE4型の阻害剤では増強された細胞の性質は有意に変化しないことが実証されている。細胞を、培養培地で化合物またはDMSOと一緒に37℃で4時間インキュベートした。注射する前に、前処理した細胞を遠心分離し、得られた上清を吸引し、細胞ペレットをHBSSに再懸濁させた。
【0264】
注射の1日後および1週間後、2週間後、3週間後、4週間後および5週間後に、ラットを、実験群についてマスクされている研究者によって実施した行動試験を用いて神経学的欠損について評価した。運動試験、感覚試験、平衡試験および反射試験の公開されたパネルに基づいて改変神経学的重症度スコア(Neurological Severity Score)(mNSS)を算出した(Chenら、Stroke 32巻:2682〜2688頁(2001年))。
【0265】
さらに、注射の1日後および1週間後、2週間後、3週間後、4週間後および5週間後に、処置したラットにおいて、動物に穴の開いた通路を横断させるフットフォールト試験を用いて運動機能を評価した。前肢のステップの総数および左前肢が穴に落ちた踏み誤りの数を測定した。
結果
【0266】
ラットに、処理したHSPCを投与し、処理効果によりMCAO卒中モデルにおける神経学的欠損を減少させる能力について試験した。片側性虚血性脳傷害の24時間後に、処理したHSPCを静脈内に注射した。一連の行動試験を用いて神経機能を評価し、mNSSとして報告した。dmPGE
2およびメドリゾンを用いて処理した細胞により、7日目、14日目および35日目におけるmNSSがビヒクル対照と比較して有意に改善されたが、DMSOで処理した細胞では、mNSSに有意な影響はなかった(
図4参照)、*p<0.05(1群当たりn=6)。
【0267】
ラットに、dmPGE
2およびメドリゾンを用いて処理したHSPCを投与し、処理効果により、MCAO卒中モデルにおける運動欠損を減少させる能力について試験した。片側性虚血性脳傷害の24時間後に、処理したHSPCを静脈内に注射した。運動機能を穴の開いた通路を横断したときの%フットフォールトとして評価した。dmPGE
2およびメドリゾンを用いて処理した細胞により、7日目および35日目における%フットフォールトがビヒクル対照と比較して有意に減少したが、DMSOで処理した細胞では、%フットフォールトに有意な影響はなかった(
図11参照)。*p<0.05(1群当たりn=6)。
【0268】
したがって、プロスタグランジン経路アンタゴニストおよびグルココルチコイドを用いて処理したHSPCにより、ラットMCAOモデルにおける虚血およびそれに関連する症状が有効に処置された。
【0269】
(実施例3)
方法
処理した全臍帯血からのLin(−)CD34
+細胞の単離
ヒト全臍帯血単核細胞をStem Cell Technologies(Vancouver、Canada)から入手した。解凍したら、細胞を、LMD/5%HSA培地中で16,16−ジメチルPGE
2または適切な対照、例えば、DMSOを用いて処理した。
【0270】
処理後、細胞をLMD/5%HSA培地で洗浄し、室温で650×gで10分間遠心分離し、冷選択緩衝液(Ca
+もMg
+も含まないリン酸緩衝食塩水(PBS);2mMのEDTA;および0.5%HSA)に再懸濁させた。Lineage(Lin)Depletion Kit(Miltenyi Biotec、CA)、その後にCD34
+富化キット(Miltenyi Biotec)を使用して磁気選択を実施した。系統枯渇およびCD34
+細胞の富化はQuadroMACS(商標)分離器を使用し、製造者の指示に従って実施した。このプロセスの間、細胞を4℃で保持した。処理した全臍帯血からLin−CD34
+細胞を単離したら、一定分量をフローサイトメトリーによって分析して、純度を評価した。細胞の純度は90%を超えた。Affymetrix解析のために、Pico Pure RNA Isolation Kit(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)を使用したRNA抽出のために大多数の細胞を使用した。
【0271】
一般に、以下の特許請求の範囲において使用される用語は、特許請求の範囲を本明細書および特許請求の範囲に開示されている特定の実施形態に限定するものと解釈されるべきではなく、可能性のある実施形態を、そのような特許請求の範囲に権利が与えられる等価物の全範囲と共に全て含むものと解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は本開示により限定されない。