(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6106802
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】出力装置、出力方法、プログラム及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
G01M 15/05 20060101AFI20170327BHJP
F02B 77/08 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
G01M15/05
F02B77/08 E
F02B77/08 F
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-505349(P2016-505349)
(86)(22)【出願日】2015年3月25日
(86)【国際出願番号】JP2015059188
(87)【国際公開番号】WO2016151810
(87)【国際公開日】20160929
【審査請求日】2016年2月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232818
【氏名又は名称】日本郵船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三島 隆志
(72)【発明者】
【氏名】植松 将史
(72)【発明者】
【氏名】柴岡 成洋
(72)【発明者】
【氏名】中谷 博司
(72)【発明者】
【氏名】大石 智生
(72)【発明者】
【氏名】小塚 正幸
【審査官】
福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−269183(JP,A)
【文献】
特開2010−007672(JP,A)
【文献】
特開2001−208649(JP,A)
【文献】
特開2007−140582(JP,A)
【文献】
特開2011−220204(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/042196(WO,A1)
【文献】
佐々木 千一,”舶用機関の状態監視及び故障診断”,平成12年度ClassNK研究発表会講演集,2000年,1〜12頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 15/05
F02B 77/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の時点の各々に関し、過給機から主機に送り込まれる加圧気体の掃気圧力、前記過給機の排気温度、及び前記主機の負荷のデータを取得する取得手段と、
取得された前記データに基づいて、予め定められた範囲内の負荷に応じた前記掃気圧力及び前記排気温度の経時的な変化を、当該掃気圧力の経時的な変化を示すグラフと、当該グラフと共通する時間軸における当該排気温度の経時的な変化を示すグラフとして出力する出力手段と
を備える出力装置。
【請求項2】
複数の時点の各々に関し、過給機から主機に送り込まれる加圧気体の掃気圧力、前記過給機の排気温度、及び前記主機の負荷のデータを取得する取得手段と、
取得された前記データに基づいて、予め定められた範囲内の負荷に応じた前記掃気圧力及び前記排気温度の前記データのうち、前記掃気圧力が下降し、且つ前記排気温度が上昇した期間の前記データに基づいて、前記過給機の経年劣化を示すデータを出力する出力手段と
を備える出力装置。
【請求項3】
前記取得手段は、
前記過給機に作用する外乱要素のデータを更に取得し、
前記出力手段は、
前記外乱要素のデータを出力に反映させる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の出力装置。
【請求項4】
前記取得手段は、
前記主機の燃費のデータを更に取得し、
前記出力手段は、
前記燃費のデータを出力に反映させる
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の出力装置。
【請求項5】
前記取得手段は、
船舶に搭載された前記主機及び前記過給機に関するデータを取得し、
前記取得手段は、
前記船舶の航行中における気象又は海象のデータを更に取得し、
前記出力手段は、
前記気象又は海象のデータが所定の条件を満たすときに取得されたデータを出力に反映させない
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の出力装置。
【請求項6】
複数の時点の各々に関し、過給機から主機に送り込まれる加圧気体の掃気圧力、前記過給機の排気温度、及び前記主機の負荷のデータを取得するステップと、
取得した前記データに基づいて、予め定められた範囲内の負荷に応じた前記掃気圧力及び前記排気温度の経時的な変化を、当該掃気圧力の経時的な変化を示すグラフと、当該グラフと共通する時間軸における当該排気温度の経時的な変化を示すグラフとして出力するステップと
を備える出力方法。
【請求項7】
複数の時点の各々に関し、過給機から主機に送り込まれる加圧気体の掃気圧力、前記過給機の排気温度、及び前記主機の負荷のデータを取得するステップと、
取得した前記データに基づいて、予め定められた範囲内の負荷に応じた前記掃気圧力及び前記排気温度の前記データのうち、前記掃気圧力が下降し、且つ前記排気温度が上昇した期間の前記データに基づいて、前記過給機の経年劣化を示すデータを出力するステップと
を備える出力方法。
【請求項8】
コンピュータに、
複数の時点の各々に関し、過給機から主機に送り込まれる加圧気体の掃気圧力、前記過給機の排気温度、及び前記主機の負荷のデータを取得するステップと、
取得した前記データに基づいて、予め定められた範囲内の負荷に応じた前記掃気圧力及び前記排気温度の経時的な変化を、当該掃気圧力の経時的な変化を示すグラフと、当該グラフと共通する時間軸における当該排気温度の経時的な変化を示すグラフとして出力するステップと
を実行させるためのプログラム。
【請求項9】
コンピュータに、
複数の時点の各々に関し、過給機から主機に送り込まれる加圧気体の掃気圧力、前記過給機の排気温度、及び前記主機の負荷のデータを取得するステップと、
取得した前記データに基づいて、予め定められた範囲内の負荷に応じた前記掃気圧力及び前記排気温度の前記データのうち、前記掃気圧力が下降し、且つ前記排気温度が上昇した期間の前記データに基づいて、前記過給機の経年劣化を示すデータを出力するステップと
を実行させるためのプログラム。
【請求項10】
コンピュータに、
複数の時点の各々に関し、過給機から主機に送り込まれる加圧気体の掃気圧力、前記過給機の排気温度、及び前記主機の負荷のデータを取得するステップと、
取得した前記データに基づいて、予め定められた範囲内の負荷に応じた前記掃気圧力及び前記排気温度の経時的な変化を、当該掃気圧力の経時的な変化を示すグラフと、当該グラフと共通する時間軸における当該排気温度の経時的な変化を示すグラフとして出力するステップと
を実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項11】
コンピュータに、
複数の時点の各々に関し、過給機から主機に送り込まれる加圧気体の掃気圧力、前記過給機の排気温度、及び前記主機の負荷のデータを取得するステップと、
取得した前記データに基づいて、予め定められた範囲内の負荷に応じた前記掃気圧力及び前記排気温度の前記データのうち、前記掃気圧力が下降し、且つ前記排気温度が上昇した期間の前記データに基づいて、前記過給機の経年劣化を示すデータを出力するステップと
を実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶等に備えられる過給機の機能の変化を把握するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶等に備えられる、主機に加圧気体を吸気する過給機では、その機能が経時的に変化することが知られている。特許文献1は、ディーゼル機関と過給機の運転状態をセンサにより検出した検出値に基づいて、過給機の運転作動点を演算し、過給機の設計値に基づくコンプレッサ特性と運動作動点を表示することで、過給機の経年劣化に伴う汚損等の状態を監視することを開示している。特許文献1に記載の技術では、センサの検出値に基づいて、過給機吸入空気温度、機関掃気圧力、過給機タービン入口排ガス圧力、過給機タービン入口排ガス温度、及び過給機タービン出口排気ガス圧力を用いた演算を行うことにより、過給機総合効率を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−269183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のように、特許文献1に記載の技術では、コンプレッサ特性に基づく処理を行い、更に、前掲した複数のセンサの検出値に基づいて、過給機の運転作動点や過給機総合効率を演算する。このため、特許文献1に記載の技術では、過給機の状態を把握するために参照すべきデータの量が多く、それに伴い演算量も増大する。
これに対し、本発明の目的は、従来よりも参照すべきデータを少なくした場合であっても、過給機の経年劣化を的確に把握できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、複数の時点の各々に関し、過給機から主機に送り込まれる加圧気体の掃気圧力、前記過給機の排気温度、及び前記主機の負荷のデータを取得する取得手段と取得された前記データに基づいて、予め定められた範囲内の負荷に応じた前記掃気圧力及び前記排気温度の経時的な変化を
、当該掃気圧力の経時的な変化を示すグラフと、当該グラフと共通する時間軸における当該排気温度の経時的な変化を示すグラフとして出力する出力手段とを備える出力装置を提供する。
【0006】
また、本発明は、複数の時点の各々に関し、過給機から主機に送り込まれる加圧気体の掃気圧力、前記過給機の排気温度、及び前記主機の負荷のデータを取得する取得手段と、取得された前記データに基づいて、予め定められた範囲内の負荷に応じた前記掃気圧力及び前記排気温度の前記データのうち、前記掃気圧力が下降し、且つ前記排気温度が上昇した期間の前記データに基づいて、前記過給機の経年劣化を示すデータを出力する
出力手段とを備える出力装置を提供する。
【0007】
また、上記の出力装置において、前記取得手段は、前記過給機に作用する外乱要素のデータを更に取得し、前記出力手段は、前記外乱要素のデータを出力に反映させる、という構成としてもよい。
【0008】
また、上記の出力装置において、前記取得手段は、前記主機の燃費のデータを更に取得し、前記出力手段は、前記燃費のデータを出力に反映させる、という構成としてもよい。
【0009】
また、上記の出力装置において、前記取得手段は、船舶に搭載された前記主機及び前記過給機に関するデータを取得し、前記取得手段は、前記船舶の航行中における気象又は海象のデータを更に取得し、前記出力手段は、前記気象又は海象のデータが所定の条件を満たすときに取得されたデータを出力に反映させない、という構成としてもよい。
【0010】
また、本発明は、複数の時点の各々に関し、過給機から主機に送り込まれる加圧気体の掃気圧力、前記過給機の排気温度、及び前記主機の負荷のデータを取得するステップと、取得した前記データに基づいて、予め定められた範囲内の負荷に応じた前記掃気圧力及び前記排気温度の経時的な変化を
、当該掃気圧力の経時的な変化を示すグラフと、当該グラフと共通する時間軸における当該排気温度の経時的な変化を示すグラフとして出力するステップとを備える出力方法を提供する。
また、本発明は、複数の時点の各々に関し、過給機から主機に送り込まれる加圧気体の掃気圧力、前記過給機の排気温度、及び前記主機の負荷のデータを取得するステップと、取得した前記データに基づいて、予め定められた範囲内の負荷に応じた前記掃気圧力及び前記排気温度の前記データのうち、前記掃気圧力が下降し、且つ前記排気温度が上昇した期間の前記データに基づいて、前記過給機の経年劣化を示すデータを出力するステップとを備える出力方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、コンピュータに、複数の時点の各々に関し、過給機から主機に送り込まれる加圧気体の掃気圧力、前記過給機の排気温度、及び前記主機の負荷のデータを取得するステップと、取得した前記データに基づいて、予め定められた範囲内の負荷に応じた前記掃気圧力及び前記排気温度の経時的な変化を
、当該掃気圧力の経時的な変化を示すグラフと、当該グラフと共通する時間軸における当該排気温度の経時的な変化を示すグラフとして出力するステップとを実行させるためのプログラムを提供する。
また、本発明は、コンピュータに、複数の時点の各々に関し、過給機から主機に送り込まれる加圧気体の掃気圧力、前記過給機の排気温度、及び前記主機の負荷のデータを取得するステップと、取得した前記データに基づいて、予め定められた範囲内の負荷に応じた前記掃気圧力及び前記排気温度の前記データのうち、前記掃気圧力が下降し、且つ前記排気温度が上昇した期間の前記データに基づいて、前記過給機の経年劣化を示すデータを出力するステップとを実行させるためのプログラムを提供する。
【0012】
また、本発明は、コンピュータに、複数の時点の各々に関し、過給機から主機に送り込まれる加圧気体の掃気圧力、前記過給機の排気温度、及び前記主機の負荷のデータを取得するステップと、取得した前記データに基づいて、予め定められた範囲内の負荷に応じた前記掃気圧力及び前記排気温度の経時的な変化を
、当該掃気圧力の経時的な変化を示すグラフと、当該グラフと共通する時間軸における当該排気温度の経時的な変化を示すグラフとして出力するステップとを実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供する。
また、本発明は、コンピュータに、複数の時点の各々に関し、過給機から主機に送り込まれる加圧気体の掃気圧力、前記過給機の排気温度、及び前記主機の負荷のデータを取得するステップと、取得した前記データに基づいて、予め定められた範囲内の負荷に応じた前記掃気圧力及び前記排気温度の前記データのうち、前記掃気圧力が下降し、且つ前記排気温度が上昇した期間の前記データに基づいて、前記過給機の経年劣化を示すデータを出力するステップとを実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、予め定められた範囲内の負荷に応じた、過給機から主機に送り込まれる加圧気体の掃気圧力、及び過給機の排気温度の経時的な変化を出力する。従って、本発明によれば、従来よりも参照すべきデータを少なくした場合であっても、過給機の経年劣化を的確に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】同実施形態に係る過給機及びその周辺の構成を示す図。
【
図3】同実施形態に係るコンピュータ装置の構成を示すブロック図。
【
図4】同実施形態に係るテーブルの構成例を示す図。
【
図5】同実施形態に係るコンピュータ装置が実行する処理を示すフローチャート。
【
図6】過給機の掃気圧力及び排気温度の経時的な変化の一例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。以下の説明で参照する各図において、各部材、各領域等を認識可能な大きさとするために、実際とは縮尺を異ならせている場合がある。
図1は、本発明の一実施形態に係る船舶の模式図を示す。
船舶1は、例えばコンテナ船で、船舶1の本体である船体100と、動力発生部200と、コンピュータ装置300と、計測装置400とを備える。動力発生部200は、船体100に設けられ、船尾側に設けられたプロペラを回転させるための動力を発生させる。本実施形態の動力発生部200は、ディーゼル機関等の内燃機関である主機210と、主機210に加圧気体を吸入するとともに、主機210の排気ガスにより駆動される過給機220と、主機210の負荷のデータ(主機負荷)を取得する負荷取得部230とを備える。本願において主機の負荷とは、主機(内燃機関)の単位時間当たりの仕事量を意味する。動力発生部200は、データロガーとしての機能も有している。コンピュータ装置300は、船体100に設けられた、船員が活動するための居住区310に配置されたコンピュータ装置である。計測装置400は、例えば、風向風速計、気圧計、温度計、雨量計及び波高計を備え、船舶1の航行中における気象及び海象の条件(以下「気象海象条件」という。)を特定するためのデータを計測する。また、計測装置400は、平均船速、航行距離及び燃料消費量等の、船舶1の出発地から目的地までの航海に関する情報(航行情報)を特定するためのデータを計測する。
【0016】
図2は、過給機220及びその周辺の構成を示す図である。以下、
図2を参照して過給機220の構成を説明する。
タービン221は、主機210からの排気ガスのエネルギーを利用して、コンプレッサ(圧縮機)222を回転駆動させる。コンプレッサ222は、タービン221によって回転駆動されると、外気を吸い込んで加圧する。掃気レシーバ223は、主機210の直前に配置され、コンプレッサ222から加圧気体が供給されると、その加圧気体を一時的に貯留する。掃気レシーバ223は、貯留した加圧気体を主機210のシリンダ内に送り込む。主機210は、掃気レシーバ223から供給された加圧気体に基づいてシリンダ内で燃焼させ、熱エネルギーを運動エネルギーに変換して動力を発生させる。排気レシーバ224は、主機210の直後に配置され、主機210の燃焼によって生成された排気ガスを一時的に貯留する。排気レシーバ224は、排気ガスを排気管225に送り込む。この排気ガスは、排気管225からタービン221に供給され、タービン221を駆動させた後、過給機220外へ廃棄される。
【0017】
過給機220は、更に、コンプレッサ222の外気の吸い込み口(即ち、過給機220の入り口)の付近に配置された外気温センサ231Aと、掃気レシーバ223内に配置された掃気圧力センサ231Bと、排気管225内に配置された排気温度センサ231Cとを備える。外気温センサ231Aは、コンプレッサ222が吸い込む外気の温度(即ち外気温)を計測するセンサで、外気温の計測結果を示すデータを出力する。掃気圧力センサ231Bは、過給機220から主機210に送り込まれる加圧気体の掃気圧力を計測するセンサで、掃気圧力の計測結果を示すデータを出力する。排気温度センサ231Cは、過給機220の排気温度を計測するセンサで、排気温度の計測結果を示すデータを出力する。
なお、掃気圧力センサ231Bは、過給機220から主機210に送り込まれる加圧気体の掃気圧力を計測すればよく、例えば、掃気レシーバ223と主機210とを接続する導通管内に配置されてもよい。また、排気温度センサ231Cは、過給機220の排気温度を計測すればよく、例えば、排気レシーバ224内に配置されてもよい。負荷取得部230は、例えば、過給機220の掃気圧力のデータを主機210の負荷のデータとして取得する。船舶1が建造された際の試運転時において、主機210の各種データ(掃気圧力を含む。)を計測、記録してあるため、試運転時の掃気圧力と比較しておおよその主機210の負荷を推定することが可能である。掃気圧力は、主機210の負荷の大小の指標となる。そして、負荷取得部230は、取得(推定)した負荷のデータを出力する。
【0018】
図3は、コンピュータ装置300の構成を示すブロック図である。
コンピュータ装置300は、過給機220の経年劣化を示すデータを出力する出力装置として機能する。コンピュータ装置300は、制御部301と、記憶部302と、表示部303と、入出力部304と、通信部305と、操作部306とを備える。制御部301は、演算処理装置としてのCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を有するマイクロコンピュータである。CPUは、ROM又は記憶部302に記憶されたプログラムをRAMに読み出して実行することにより、コンピュータ装置300の各部を制御する。制御部301は、取得手段301Aと、出力手段301Bとに相当する機能を実現する。取得手段301Aは、動力発生部200及び計測装置400からデータを取得する手段である。例えば、取得手段301Aは、複数の時点の各々に関し、過給機220の掃気圧力、過給機220の排気温度、外気温、及び主機210の負荷のデータを取得する。また、取得手段301Aは、過給機220に作用する外乱要素や主機210の燃費を計測したデータを取得する。出力手段301Bは、取得手段301Aにより取得されたデ−タに基づいて、予め定められた範囲内の負荷に応じた掃気圧力及び排気温度の経時的な変化を出力する。出力手段301Bは、過給機220に作用する外乱要素や主機210の燃費のデータを出力に反映させる場合もある。
【0019】
記憶部302は、例えばハードディスク装置で、コンピュータ装置300を動作させるためのプログラム、及びテーブルTを記憶する。
図4に示すように、テーブルTは、主機210の負荷帯毎に、掃気圧力、排気温度、外気温、及びこれらの計測又は取得の日時を示す日時データが関連付けて格納されるテーブルである。テーブルTにおける負荷帯は、主機210の負荷の全体の範囲を予め定められた範囲毎(例えば、10%毎)に複数段階に区分した場合の各範囲を示す。例えば、負荷の最大値を100%として10%毎に区切った場合、10%毎に区切った各範囲を負荷帯とする。表示部303は、例えば液晶ディスプレイであり、各種の情報を表示する。入出力部304は、動力発生部200及び計測装置400との間でデータの入出力を行うためのインタフェースである。入出力部304は、負荷取得部230からの負荷のデータ、外気温センサ231A、掃気圧力センサ231B及び排気温度センサ231Cからのデータ、並びに、計測装置400からの計測結果を示す計測データが入力される。通信部305は、例えば、ネットワークに接続するための通信回路及びアンテナを備え、陸上に設置されたコンピュータ装置とネットワーク経由で通信する。操作部306は、例えばキーボード及びマウスを備え、操作者(ここでは船員)が行った操作を受け付ける。
【0020】
図5は、コンピュータ装置300が実行する処理を示すフローチャートである。コンピュータ装置300は、例えば、
図5に示す処理を定期的に、又は船員からの指示に応じて実行する。
コンピュータ装置300の制御部301は、まず、計測装置400から計測データを取得する(ステップS1)。次に、制御部301は、動力発生部200からデータを採取するか否かを判定する(ステップS2)。制御部301は、現在位置での気象海象条件を、計測装置400からの計測データに基づいて特定する。そして、制御部301は、荒天でないとき(例えば晴天時)には、動力発生部200からデータを採取すると判定し、荒天時には、動力発生部200からデータを採取しないと判定する。計測データを使用する方法以外に、制御部301は、通信部305を介して気象海象条件のデータを取得して、現在位置での気象海象条件を特定してもよい。
【0021】
データを採取すると判定した場合(ステップS2;YES)、制御部301は、外気温センサ231A、掃気圧力センサ231B及び排気温度センサ231Cからの各データを、入出力部304を介して、動力発生部200から取得する(ステップS3)。次に、制御部301は、主機210の負荷のデータを、入出力部304を介して、動力発生部200から取得する(ステップS4)。次に、制御部301は、ステップS3で取得した掃気圧力、排気温度及び外気温の各データ、並びに日時データを、ステップS4で取得した負荷のデータが示す負荷を含む負荷帯と対応付けて、テーブルTに格納する(ステップS5)。テーブルTには、例えば、数ヶ月又は年単位で収集されたデータが格納される。次に、制御部301は、テーブルTに基づいて、主機210の負荷帯毎に、掃気圧力及び排気温度の経時的な変化を出力する(ステップS6)。
【0022】
図6は、或る負荷帯のときの、過給機220から主機210に送り込まれる加圧気体の掃気圧力及び排気温度の経時的な変化の一例を示すグラフである。
図6のグラフにおいて、横軸が時刻を表し、縦軸が掃気圧力又は排気温度を表す。
図6には、掃気圧力及び排気温度の移動平均、即ち、単位期間毎の平均値が示されている。
図6に示す期間Iでは、掃気圧力及び排気温度の経時的な変化が小さい。即ち、主機210が或る負荷帯のときに、掃気圧力及び排気温度が概ね一定の状態に維持されている。この場合、過給機220の経年劣化の程度は小さく、過給機220は正常に動作していると推定される。他方、
図6に示す期間IIでは、掃気圧力が下降する一方で、排気温度が上昇している。この場合、過給機220の経年劣化の程度が、期間Iよりも大きいと推定される。その理由のひとつとして、或る負荷帯のときに、掃気圧力が低下し排気温度が上昇している場合には、主機210のエネルギーの変換効率が悪化しているからである。過給機220の機能の経年劣化の原因の一例として、タービン221におけるカバーリングの内周の摩耗や、ブレード先端の摩耗、ノズルリングのスケールの堆積がある。
【0023】
次に、ステップS6における出力例を説明する。
制御部301は、掃気圧力及び排気温度の経時的な変化を視覚的に表した画像、例えば、
図6に示すグラフを表示するための表示データを、表示部303に出力する。即ち、この表示データは、排気温度の経時的な変化を示すグラフと、当該グラフと時間軸を共有し、掃気圧力の経時的な変化を示すグラフとを表示するためのデータである。この場合、表示部303の表示内容を見た船員は、過給機220の経年劣化の程度を把握し、過給機220のメンテナンス(例えば、清掃や部品交換)の実施の要否や、実施の時期を判断することができる。例えば、期間IIのように、掃気圧力が下降し、且つ排気温度が上昇していることを確認した船員は、過給機220のメンテナンスを実施すべきと判断する。
【0024】
別の出力例として、制御部301は、掃気圧力が下降し、且つ排気温度が上昇した期間のデータに基づいて、過給機220の経年劣化の程度を示すデータを出力してもよい。このデータとして、経年劣化の程度を報知するためのデータ(以下「報知データ」という。)がある。報知データは、例えば人間が知覚可能な方法で、過給機220の経年劣化の程度を報知するためのデータである。報知の方法の一例として、表示部303への表示や、警報音の出力、ランプの点灯等がある。報知データは、例えば、過給機220のメンテナンスを実施すべき条件を満たした場合に出力される。
【0025】
報知データの出力条件について説明すると、制御部301は、例えば、所定期間において掃気圧力の下降した量が閾値以上で、且つ当該所定期間において排気温度の上昇した量が閾値以上となったことを条件として、報知データを出力する。報知データの出力条件は、船舶や過給機の種類に問わず同じでもよいし、船舶や過給機の種類毎に設定されていてもよい。また、制御部301は、いずれか1の負荷帯で出力条件を満たした場合に、報知データを出力してもよいし、2以上の負荷帯で出力条件を満たした場合に、報知データを出力してもよい。
なお、報知データの出力先は、船舶1に配置された装置に限られない。制御部301は、例えば、通信部305を介して、ドック等の陸上に設置されたコンピュータ装置に報知データを送信してもよい。
【0026】
更に別の出力例として、以下で説明する出力例もある。
過給機220が正常に動作する場合であっても、掃気圧力が下降した期間に外気温が上昇した場合は、排気温度が上昇する可能性がある。反対に、過給機220に経年劣化の影響が現れた場合であっても、掃気圧力が下降した期間に外気温が下降した場合に、排気温度が上昇しない可能性がある。このように、掃気圧力及び排気温度の経時的な変化は、外乱による影響を受けることがある。そこで、制御部301は、過給機220に作用する外乱要素のデータを出力に反映させてもよい。
【0027】
例えば、制御部301は、外乱要素として、外気温のデータを出力に反映させる。前述した報知データを出力する場合は、制御部301は、掃気圧力が下降した期間において、排気温度の上昇量が外気温の上昇量よりも大きいことを、報知データの出力条件としてもよい。
また、制御部301は、排気温度を外気温のデータに基づいて補正し、補正後の排気温度に基づいた出力をしてもよい。この補正のアルゴリズムは特に問わないが、例えば、排気温度から、外気温に所定の係数を乗じた値を減じる補正が行われる。これにより、外気温を原因とした排気温度の変動による出力への影響が軽減される。
外気温以外にも、制御部301は、外乱要素のデータを取得して、ステップS6の出力に反映させてもよい。また、外乱要素のデータの反映方法は、ここで説明した例に限られない。例えば、制御部301は、前述した表示データを出力する場合には、掃気圧力及び排気温度に加え、外気温の経時的な変化を表示するための表示データを出力してもよい。
【0028】
更に別の出力例として、制御部301は、主機210の燃費のデータを取得して、当該燃費を出力に反映させてもよい。例えば、制御部301は、掃気圧力が下降し、且つ排気温度が上昇した期間に、燃費が所定値以下になった場合は、過給機220を原因として燃費が低下したことを報知するデータを出力し、他の期間に燃費が所定値以下になった場合は、過給機220以外に原因があることを報知するデータを出力する。
ステップS6の出力への燃費のデータの反映方法は、ここで説明した例に限られない。例えば、制御部301は、前述した表示データを出力する場合に、掃気圧力及び排気温度に加え、燃費の経時的な変化を表示するための表示データを出力してもよい。
【0029】
以上説明した実施形態によれば、過給機220から主機210に送り込まれる加圧気体の掃気圧力及び排気温度のデータに基づいて、従来よりも参照すべきデータを少なくした場合であっても、過給機220の経年劣化を的確に把握できる。
船舶1の運転状態によって主機210の負荷は変化し、この負荷の変化によって掃気圧力及び排気温度は変化し得る。この場合であっても、コンピュータ装置300は、負荷帯毎に、掃気圧力及び排気温度の経時的な変化を出力するので、過給機220の経年劣化をより的確に把握することが可能となる。また、気象海象条件によっても、掃気圧力及び排気温度が変化し得るが、コンピュータ装置300は、荒天時等の所定の気象海象条件のときのデータを出力に反映させないので、過給機220の経年劣化をより的確に把握することが可能となる。
【0030】
本発明は、上述した実施形態と異なる形態で実施してもよい。また、以下に示す変形例は、各々を組み合わせてもよい。
(1)ステップS6における出力は、上述した実施形態で説明した例に限られない。出力の内容や出力先、出力条件については、種々の変形が可能である。例えば、船舶1が過給機220を複数備える場合、制御部301は、過給機220の経年劣化の程度が相対的に大きい過給機220を停止させ、それ以外の過給機220を動作させることを指示する指示データを、動力発生部200に出力してもよい。
【0031】
(2)本願の負荷のデータは、主機の負荷の大小を示す物理量のデータであればよく、上述した実施形態で説明した掃気圧力のデータに限られない。また、本願の負荷データは、過給機で計測されるデータに限られない。本願の負荷のデータとして、例えば、軸馬力計により計測される主機負荷や、単位時間当たりの燃料消費量、過給機のタービンの回転速度等のデータを使用することも可能である。
【0032】
(3)上述した実施形態では、コンピュータ装置300は、荒天時のデータを採取しないようにしていたが、これに代えて、所定の規則に従って分類した気象又は海象の条件毎に、採取したデータに基づく出力をしてもよい。例えは、コンピュータ装置300は、風力の階級を表すビューフォート毎に、採取したデータに基づく出力をしてもよい。この場合、コンピュータ装置300は、気象海象データが所定の条件を満たすときに取得されたデータを出力に反映させないことになる。
【0033】
(4)上述した実施形態で説明した構成及び動作の一部が省略されてもよい。例えば、コンピュータ装置300において、外乱要素又は燃費のデータを出力に反映させるための構成が省かれてもよい。また、コンピュータ装置300において、気象海象条件を判定するための構成が省かれてもよい。
また、
図5のフローチャートを参照して説明したコンピュータ装置300が行う処理の順番が変更されてもよい。
【0034】
(5)本願の出力装置は、船舶に備えたコンピュータ装置により実現される例に限られず、例えば、陸上に設置されたコンピュータ装置により実現されてもよい。
本願の出力装置は、船舶に限られず、主機及びこの主機に加圧気体を吸気する過給機を備えた移動体(例えば、自動車等の車両やその他の乗り物)に適用することができる。
上述した実施形態のコンピュータ装置300の制御部301が実現する各機能は、1又は複数のハードウェア回路により実現されてもよいし、1又は複数のプログラムを実行することにより実現されてもよいし、これらの組み合わせにより実現されてもよい。制御部301の機能がプログラムを用いて実現される場合、このプログラムは、磁気記録媒体(磁気テープ、磁気ディスク(HDD(Hard Disk Drive)、FD(Flexible Disk))等)、光記録媒体(光ディスク等)、光磁気記録媒体、半導体メモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶した状態で提供されてもよいし、ネットワークを介して配信されてもよい。また、本発明は、出力方法として把握することも可能である。
本願の発明は、上述した実施形態に限定されることなく、請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0035】
1…船舶、100…船体、200…動力発生部、210…主機、220…過給機、221…タービン、222…コンプレッサ、223…掃気レシーバ、224…排気レシーバ、225…排気管、230…負荷取得部、231A…外気温センサ、231B…掃気圧力センサ、231C…排気温度センサ、300…コンピュータ装置、301…制御部、301A…取得手段、301B…出力手段、302…記憶部、303…表示部、304…入出力部、305…通信部、306…操作部、400…計測装置。