特許第6106810号(P6106810)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6106810-炭素繊維強化樹脂複合材料 図000004
  • 特許6106810-炭素繊維強化樹脂複合材料 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6106810
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】炭素繊維強化樹脂複合材料
(51)【国際特許分類】
   B29B 11/16 20060101AFI20170327BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20170327BHJP
   B29C 70/06 20060101ALI20170327BHJP
   C08K 7/06 20060101ALI20170327BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20170327BHJP
   B29K 101/12 20060101ALN20170327BHJP
【FI】
   B29B11/16
   C08J5/04CER
   C08J5/04CEZ
   B29C67/14 Z
   C08K7/06
   C08L101/00
   B29K101:12
【請求項の数】11
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2016-555842(P2016-555842)
(86)(22)【出願日】2016年3月10日
(86)【国際出願番号】JP2016057624
(87)【国際公開番号】WO2016152563
(87)【国際公開日】20160929
【審査請求日】2016年9月6日
(31)【優先権主張番号】特願2015-60975(P2015-60975)
(32)【優先日】2015年3月24日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100115107
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 猛
(74)【代理人】
【識別番号】100151194
【弁理士】
【氏名又は名称】尾澤 俊之
(72)【発明者】
【氏名】尾上 周平
(72)【発明者】
【氏名】大坪 誠
(72)【発明者】
【氏名】長倉 裕規
(72)【発明者】
【氏名】薗田 直彬
【審査官】 大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−040088(JP,A)
【文献】 特開2014−210991(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/140793(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/086682(WO,A1)
【文献】 特開平08−232187(JP,A)
【文献】 特開平05−195396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16;15/08−15/14
C08J 5/04−5/10;5/24
B29C 70/04−70/24
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
D04H 1/00−18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維束を含んだ炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む炭素繊維強化樹脂複合材料であって、
(1)炭素繊維強化樹脂複合材料の総目付の変動係数(CV1)が%以下、
(2)炭素繊維強化樹脂複合材料の式(a)で定義される炭素繊維体積割合(Vf)の変動係数(CV2)が10%以下で、
(3)炭素繊維の重量平均繊維長が1mm以上40mm未満であ
炭素繊維強化樹脂複合材料に含まれる炭素繊維のうち、式(b)で定義される臨界単糸数以上で構成される炭素繊維束(A)について、炭素繊維全量に対する割合が20〜99Vol%であって、炭素繊維束(A)の体積割合の変動係数(CV3)が5.4%以下である、
炭素繊維強化樹脂複合材料。
炭素繊維体積割合(Vf)=100×炭素繊維体積/(炭素繊維体積+熱可塑性樹脂体積) 式(a)
臨界単糸数=600/D 式(b)
(ここでDは炭素繊維の平均繊維径(μm)である)
【請求項2】
炭素繊維強化樹脂複合材料が単層であって、厚みが0.3mm以上である、請求項1に記載の炭素繊維強化樹脂複合材料。
【請求項3】
炭素繊維束(A)の体積割合の変動係数(CV3)が5%以下である、請求項1又は2に記載の炭素繊維強化樹脂複合材料。
【請求項4】
総目付が50〜20000g/mである、請求項1〜いずれか1項に記載の炭素繊維強化樹脂複合材料。
【請求項5】
総目付が3560〜20000g/mである、請求項1〜4いずれか1項に記載の炭素繊維強化樹脂複合材料。
【請求項6】
炭素繊維体積割合(Vf)が10〜60%である、請求項1〜5いずれか1項に記載の炭素繊維強化樹脂複合材料。
【請求項7】
炭素繊維の重量平均繊維長が1〜20mmである、請求項1〜6いずれか1項に記載の炭素繊維強化樹脂複合材料。
【請求項8】
炭素繊維束(A)の炭素繊維全量に対する割合が20〜77Vol%である、請求項1〜7いずれか1項に記載の炭素繊維強化樹脂複合材料。
【請求項9】
炭素繊維強化樹脂複合材料はプレス成形用途である、請求項1〜いずれか1項に記載の炭素繊維強化樹脂複合材料。
【請求項10】
炭素繊維強化樹脂複合材料はエアレイド法により製造される、請求項1〜いずれか1項に記載の炭素繊維強化樹脂複合材料の製造方法
【請求項11】
請求項1〜いずれか1項に記載の炭素繊維強化樹脂複合材料を、ランダムマットを経由して製造する炭素繊維強化樹脂複合材料の製造方法であって、
(i)複数の管体から構成される管体ユニットにて、炭素繊維と熱可塑性樹脂を、一方向に連続的に搬送される通気性支持体上に散布し、
(ii)前記管体を通気性支持体の搬送方向及び/または通気性支持体の搬送方向に垂直な方向に位相差を設けて配置するか、前記管体ユニットを揺動させるか、管体から散布された炭素繊維と熱可塑性樹脂を機械的な処理により均し処理を施して、ランダムマットを製造し、
(iii)前記ランダムマットを加圧・加熱下で含浸処理させて、
炭素繊維強化樹脂複合材料を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形時の賦形ムラ及び機械物性ムラを小ピッチで抑制することで、小型成形体や複雑形状の成形体においても、優れた成形性や機械特性を発揮できる、炭素繊維強化樹脂複合材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維で強化された複合材料は、その高い比強度・比弾性率を利用して、航空機や自動車などの構造材料や、テニスラケット、ゴルフシャフト、釣竿などの一般産業やスポーツ用途等に広く利用されてきた。これらに用いられる炭素繊維の形態としては、連続繊維を用いて作られる織物や、一方向に繊維が引き揃えられたUDシート、カットした繊維(不連続繊維)を用いて作られるランダムシート、不織布等がある。
【0003】
近年、従来の熱硬化性樹脂に代わり、熱可塑性樹脂をマトリクスに用いた複合材料が注目されている。例えば、炭素繊維と熱可塑性樹脂を含浸させた炭素繊維強化樹脂材料を熱可塑性樹脂の軟化点以上に加熱し、融点以下もしくはガラス転移温度以下に調整された成形型に投入後、型締めにて賦形する成形方法が開発されており、目付ムラの少ない炭素繊維強化樹脂複合材料も開発されている(特許文献1〜2)。
【0004】
特許文献1には、連続した炭素繊維を一方向に引き揃えて熱可塑性樹脂に含浸させた熱可塑性樹脂プリプレグを短くカットしたものをプレス成形することで成形体を得る方法が記載されている。特許文献1によれば、特定の平均単繊維繊度と真円度をもった炭素繊維を使用することで、目付ムラを抑制することができる。
【0005】
特許文献2には、低コストで抄紙基材を得る方法であって、強化繊維の分散状態に優れ、かつ目付ムラの小さい抄紙基材の製造方法が記載されている。特許文献2によれば、抄紙工程中の炭素繊維の投入を特定の方法で精密制御することで、強化繊維の分散状態に優れ、かつ目付ムラの小さい抄紙基材を作製することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】日本国特開2013−203942号公報
【特許文献2】日本国特開2011−157637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、2いずれの発明においても、炭素繊維強化樹脂複合材料の目付ムラの低減は十分ではなく、炭素繊維体積割合(Vf)のムラまで制御されたものではなかった。例えば特許文献1の熱可塑性樹脂プリプレグは200mm×200mm四方の広いピッチ毎の目付ムラは抑制できているが、狭いピッチ毎(25mm×25mm四方)での目付ムラまでは制御できていない。さらには、プリプレグとして作製したものを一旦カットしたものを用いて成形するため、カットしたものを金型内に分散する工程において目付ムラが大きくなることがある。特許文献2の抄紙基材についても、50mm×50mm四方の広いピッチ毎の目付ムラを幅方向または長手方向別個には抑制できているが、狭いピッチ毎に広範囲に渡っての目付ムラ低減には至っていない。特に小型部品や複雑な部品を成形する際には狭いピッチでも目付ムラ及び炭素繊維体積割合(Vf)ムラが小さい炭素繊維強化樹脂複合材料が求められる。
【0008】
本発明の目的は、成形時の賦形ムラ及び機械物性ムラを小ピッチで抑制することで、小型成形体や複雑形状の成形体においても、優れた成形性や機械特性を発揮できる、炭素繊維強化樹脂複合材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は以下の<1>〜<11>の手段を提供する。
<1>
炭素繊維束を含んだ炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む炭素繊維強化樹脂複合材料であって、
(1)炭素繊維強化樹脂複合材料の総目付の変動係数(CV1)が5%以下、
(2)炭素繊維強化樹脂複合材料の式(a)で定義される炭素繊維体積割合(Vf)の変動係数(CV2)が10%以下で、
(3)炭素繊維の重量平均繊維長が1mm以上40mm未満であり、
炭素繊維強化樹脂複合材料に含まれる炭素繊維のうち、式(b)で定義される臨界単糸数以上で構成される炭素繊維束(A)について、炭素繊維全量に対する割合が20〜99Vol%であって、炭素繊維束(A)の体積割合の変動係数(CV3)が5.4%以下である、
炭素繊維強化樹脂複合材料。
炭素繊維体積割合(Vf)=100×炭素繊維体積/(炭素繊維体積+熱可塑性樹脂体積) 式(a)
臨界単糸数=600/D 式(b)
(ここでDは炭素繊維の平均繊維径(μm)である)
<2>
炭素繊維強化樹脂複合材料が単層であって、厚みが0.3mm以上である、<1>に記載の炭素繊維強化樹脂複合材料。
<3>
炭素繊維束(A)の体積割合の変動係数(CV3)が5%以下である、<1>又は<2>に記載の炭素繊維強化樹脂複合材料。
<4>
総目付が50〜20000g/mである、<1>〜<3>いずれか1項に記載の炭素繊維強化樹脂複合材料。
<5>
総目付が3560〜20000g/mである、<1>〜<4>いずれか1項に記載の炭素繊維強化樹脂複合材料。
<6>
炭素繊維体積割合(Vf)が10〜60%である、<1>〜<5>いずれか1項に記載の炭素繊維強化樹脂複合材料。
<7>
炭素繊維の重量平均繊維長が1〜20mmである、<1>〜<6>いずれか1項に記載の炭素繊維強化樹脂複合材料。
<8>
炭素繊維束(A)の炭素繊維全量に対する割合が20〜77Vol%である、<1>〜<7>いずれか1項に記載の炭素繊維強化樹脂複合材料。
<9>
炭素繊維強化樹脂複合材料はプレス成形用途である、<1>〜<8>いずれか1項に記載の炭素繊維強化樹脂複合材料。
<10>
炭素繊維強化樹脂複合材料はエアレイド法により製造される、<1>〜<9>いずれか1項に記載の炭素繊維強化樹脂複合材料の製造方法。
<11>
<1>〜<9>いずれか1項に記載の炭素繊維強化樹脂複合材料を、ランダムマットを経由して製造する炭素繊維強化樹脂複合材料の製造方法であって、
(i)複数の管体から構成される管体ユニットにて、炭素繊維と熱可塑性樹脂を、一方向に連続的に搬送される通気性支持体上に散布し、
(ii)前記管体を通気性支持体の搬送方向及び/または通気性支持体の搬送方向に垂直な方向に位相差を設けて配置するか、前記管体ユニットを揺動させるか、管体から散布された炭素繊維と熱可塑性樹脂を機械的な処理により均し処理を施して、ランダムマットを製造し、
(iii)前記ランダムマットを加圧・加熱下で含浸処理させて、
炭素繊維強化樹脂複合材料を製造する方法。
本発明は上記<1>〜<11>に関するものであるが、本明細書にはその他の事項(たとえば下記[1]〜[9])についても参考のため記載した。
[1]炭素繊維束を含んだ炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む炭素繊維強化樹脂複合材料であって、(1)炭素繊維強化樹脂複合材料の総目付の変動係数(CV1)が10%以下、(2)炭素繊維強化樹脂複合材料の式(a)で定義される炭素繊維体積割合(Vf)の変動係数(CV2)が15%以下で、(3)炭素繊維の重量平均繊維長が1〜100mmである、炭素繊維強化樹脂複合材料。
炭素繊維体積割合(Vf)=100×炭素繊維体積/(炭素繊維体積+熱可塑性樹脂体積) 式(a)
[2]
炭素繊維強化樹脂複合材料が単層であって、厚みが0.3mm以上である、上記[1]項に記載の炭素繊維強化樹脂複合材料。
[3]炭素繊維強化樹脂複合材料の総目付の変動係数(CV1)が5%以下であって、炭素繊維強化樹脂複合材料の炭素繊維体積割合(Vf)の変動係数(CV2)が10%以下である、上記[1]項又は[2]項に記載の炭素繊維強化樹脂複合材料。
[4]炭素繊維強化樹脂複合材料に含まれる炭素繊維のうち、式(b)で定義される臨界単糸数以上で構成される炭素繊維束(A)について、炭素繊維全量に対する割合が20〜99Vol%であって、炭素繊維束(A)の体積割合の変動係数(CV3)が10%以下である、上記[1]〜[3]項いずれか1項に記載の炭素繊維強化樹脂複合材料。
臨界単糸数=600/D 式(b)
(ここでDは炭素繊維の平均繊維径(μm)である)
[5]総目付が50〜20000g/mである、上記[1]〜[4]項いずれか1項に記載の炭素繊維強化樹脂複合材料。
[6]炭素繊維体積割合(Vf)が10〜60%である、上記[1]〜[5]項いずれか1項に記載の炭素繊維強化樹脂複合材料。
[7]炭素繊維強化樹脂複合材料はプレス成形用途である、上記[1]〜[6]項いずれか1項に記載の炭素繊維強化樹脂複合材料。
[8]炭素繊維強化樹脂複合材料はエアレイド法により製造される、上記[1]〜[7]項いずれか1項に記載の炭素繊維強化樹脂複合材料。
[9]上記[1]〜[8]項いずれか1項に記載の炭素繊維強化樹脂複合材料を、ランダムマットを経由して製造する炭素繊維強化樹脂複合材料の製造方法であって、
(i)複数の管体から構成される管体ユニットにて、炭素繊維と熱可塑性樹脂を、一方向に連続的に搬送される通気性支持体上に散布し、
(ii)前記管体を通気性支持体の搬送方向及び/または通気性支持体の搬送方向に垂直な方向に位相差を設けて配置するか、前記管体ユニットを揺動させるか、管体から散布された炭素繊維と熱可塑性樹脂を機械的な処理により均し処理を施して、ランダムマットを製造し、
(iii)前記ランダムマットを加圧・加熱下で含浸処理させて、
炭素繊維強化樹脂複合材料を製造する方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、総目付ムラ及び炭素繊維体積割合(Vf)ムラが小ピッチでも小さい炭素繊維強化樹脂複合材料である。本発明の炭素繊維強化樹脂複合材料を用いれば、小ピッチで成形時の賦形ムラ及び機械物性ムラを抑制することができるため、小型成形体や複雑形状の成形体においても、優れた成形性や機械特性を発揮できる。
また、本発明の炭素繊維強化樹脂複合材料を用いれば、成形後の成形体の外観を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(a)管体ユニットの概略図(上面図)、(b)管体ユニットの概略図(側面図)。
図2】成形時の流動長を示した模式図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明における炭素繊維強化樹脂複合材料は、炭素繊維束を含んだ炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む炭素繊維強化樹脂複合材料であって、(1)炭素繊維強化樹脂複合材料の総目付の変動係数(CV1)が10%以下、(2)炭素繊維強化樹脂複合材料中の式(a)で定義される炭素繊維体積割合(Vf)の変動係数(CV2)が15%以下で、(3)炭素繊維の重量平均繊維長が1〜100mmである。
炭素繊維体積割合(Vf)=100×炭素繊維体積/(炭素繊維体積+熱可塑性樹脂体積) 式(a)
【0013】
[炭素繊維]
炭素繊維としては、一般的にポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、石油・石炭ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、リグニン系炭素繊維、フェノール系炭素繊維、気相成長系炭素繊維などが知られているが、本発明においてはこれらのいずれの炭素繊維であっても好適に用いることができる。
なかでも、本発明においては引張強度に優れる点でポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維を用いることが好ましい。炭素繊維としてPAN系炭素繊維を用いる場合、その引張弾性率は100〜600GPaの範囲内であることが好ましく、200〜500GPaの範囲内であることがより好ましく、230〜450GPaの範囲内であることがさらに好ましい。また、引張強度は2000〜10000MPaの範囲内であることが好ましく、3000〜8000MPaの範囲内であることがより好ましい。
【0014】
本発明に用いられる炭素繊維は、表面にサイジング剤が付着しているものであってもよい。サイジング剤が付着している炭素繊維を用いる場合、当該サイジング剤の種類は、炭素繊維及びマトリックス樹脂の種類に応じて適宜選択することができるものであり、特に限定されるものではない。
【0015】
[炭素繊維の形態]
(繊維長)
本発明に用いられる炭素繊維は不連続炭素繊維であって、重量平均繊維長が1〜100mmであればよい。不連続炭素繊維の重量平均繊維長は、3〜80mmであることがより好ましく、5〜60mmであることがさらに好ましい。重量平均繊維長が100mmを超える場合、炭素繊維強化樹脂複合材料の流動性が低下してしまい、プレス成形等により所望の成形体形状を得られない場合がある。一方、重量平均繊維長が1mm未満の場合、炭素繊維強化樹脂複合材料の機械強度が低下してしまう。
本発明においては繊維長が互いに異なる炭素繊維を併用してもよい。換言すると、本発明に用いられる炭素繊維は、重量平均繊維長に単一のピークを有するものであってもよく、あるいは複数のピークを有するものであってもよい。
【0016】
炭素繊維の平均繊維長は、例えば、炭素繊維強化樹脂複合材料から無作為に抽出した100本の繊維の繊維長を、ノギス等を用いて1mm単位まで測定し、下記式(f)に基づいて求めることができる。平均繊維長の測定は、重量平均繊維長(Lw)で測定する。個々の炭素繊維の繊維長をLi、測定本数をjとすると、数平均繊維長(Ln)と重量平均繊維長(Lw)とは、以下の式(e)、(f)により求められる。
Ln=ΣLi/j ・・・式(e)
Lw=(ΣLi)/(ΣLi) ・・・式(f)
なお、繊維長が一定長の場合は数平均繊維長と重量平均繊維長は同じ値になる。
炭素繊維強化樹脂複合材料からの炭素繊維の抽出は、例えば、炭素繊維強化樹脂複合材料に対し、500℃×1時間程度の加熱処理を施し、炉内にて樹脂を除去することによって行うことができる。
【0017】
(繊維径)
本発明に用いられる炭素繊維の繊維径は、平均繊維径として、通常3〜50μmの範囲内であることが好ましく、4〜12μmの範囲内であることがより好ましく、5〜8μmの範囲内であることがさらに好ましい。
ここで、上記平均繊維径は、炭素繊維の単糸の直径を指すものとする。したがって、炭素繊維が繊維束状である場合は、繊維束の径ではなく、繊維束を構成する炭素繊維(単糸)の直径を指す。炭素繊維の平均繊維径は、例えば、JIS R−7607:2000に記載された方法によって測定することができる。
【0018】
(炭素繊維束)
本発明に用いられる炭素繊維は、炭素繊維束を含むものであり、炭素繊維束とは2本以上の単糸が集束剤や静電気力等により近接している事を示す。ただし、本発明に用いられる炭素繊維は、単糸からなる単糸状のものを含んでいても良く、繊維束状のものと混在していてもよい。
繊維束状の炭素繊維について、各繊維束を構成する単糸の数は、各繊維束においてほぼ均一であってもよく、あるいは異なっていてもよい。各繊維束を構成する単糸の数は特に限定されるものではないが、通常、2〜10万本の範囲内とされる。
【0019】
(好ましい炭素繊維束)
繊維束を開繊して用いる場合、開繊後の繊維束の開繊程度は特に限定されるものではないが、繊維束の開繊程度を制御し、特定本数以上の炭素繊維からなる炭素繊維束と、それ未満の炭素繊維(単糸)又は炭素繊維束を含むことが好ましい。この場合、具体的には、下記式(b)で定義される臨界単糸数以上で構成される炭素繊維束(A)と、それ以外の開繊された炭素繊維(B)、すなわち単糸の状態または臨界単糸数未満で構成される繊維束とからなることが好ましい。
臨界単糸数=600/D 式(b)
(ここでDは炭素繊維の平均繊維径(μm)である)
【0020】
さらに、本発明においては、炭素繊維強化樹脂複合材料中の炭素繊維全量に対する炭素繊維束(A)の割合が20〜99Vol%であることが好ましく、30〜95Vol%であることがより好ましく、50Vol%以上90Vol%未満であることがさらに好ましい。炭素繊維全量に対する炭素繊維束(A)の割合が20Vol%以上の場合、炭素繊維強化樹脂複合材料の炭素繊維体積割合(Vf)を高めることが容易となり、結果的に所望の機械特性を得られやすくなり、また、単糸状の炭素繊維の存在量が相対的に少なくなるため、成形時の賦形性が良好となる。一方で炭素繊維束(A)の割合が99Vol%を超えない場合、炭素繊維束の繊維束幅が大きくならず、繊維束の繊維束幅に対する繊維長比(アスペクト比)が確保でき、結果的に所望の機械特性を得られやすくなる。
なお、炭素繊維の開繊程度は、例えば、開繊工程にて吹き付ける空気の圧力調整等、繊維束の開繊条件を調整することにより目的の範囲内とすることができる。
【0021】
本発明における、炭素繊維束(A)中の平均繊維数(N)は本発明の目的を損なわない範囲で適宜決定することができるものであり、特に限定されるものではないが、下記式(c)を満たすことが好ましい。
0.6×10/D<N<6×10/D 式(c)
(ここでDは炭素繊維の平均繊維径(μm)である)
【0022】
炭素繊維束(A)中の平均繊維数(N)を上記範囲とするには、後述する好ましい製法にて、繊維束の大きさ、例えば繊維束幅や幅当たりの繊維数を調整することで達成できる。具体的には炭素繊維強化樹脂複合材料中の炭素繊維の平均繊維径が5〜7μmの場合、臨界単糸数は86〜120本となり、炭素繊維の平均繊維径が5μmの場合、炭素繊維束中の平均繊維数(N)は240〜24000本となるが、300〜10000本であることがより好ましく、500〜5000本であることがさらに好ましい。炭素繊維の平均繊維径が7μmの場合、炭素繊維束中の平均繊維数(N)は122〜12200本となるが、200〜5000本であることがより好ましく、300〜3000本であることがさらに好ましい。炭素繊維束(A)中の平均繊維数(N)が0.6×10/D以上の場合、炭素繊維強化樹脂複合材料の炭素繊維体積割合(Vf)を高めることが容易となり、結果的に所望の機械特性を得られやすくなる。一方で、炭素繊維束(A)中の平均繊維数(N)が6×10/D以下の場合、局部的に厚い部分が生じにくく、炭素繊維強化樹脂複合材料中にボイドが生じにくくなる。
【0023】
[ランダムマットの形態]
本発明の炭素繊維強化樹脂複合材料は、上述した炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含んだランダムマットを含浸処理することにより、好ましくは製造される。ランダムマット(図1の2)とは、炭素繊維束を含む、所定の重量平均繊維長をもつ不連続な炭素繊維からなる炭素繊維マットと、熱可塑性樹脂とを含んで構成されるものであり、炭素繊維強化樹脂複合材料の前駆体である。炭素繊維マットは炭素繊維がランダムな方向に配向したものであり、実質的に面内の縦横方向の機械特性のムラが小さいことが好ましい。炭素繊維マットは、2次元にランダム配向していることが好ましい。
【0024】
ランダムマットにおける、熱可塑性樹脂の形態としては、炭素繊維マットに、粉末状、繊維状、または塊状などの熱可塑性樹脂が含まれるものであってもよく、炭素繊維マットにシート状またはフィルム状などの熱可塑性樹脂が搭載または積層されたものであってもよく、このシート状またはフィルム状などの熱可塑性樹脂は溶融状態であってもよい。なお、ランダムマットの製造方法として特に限定は無く、エアレイド法、カーディング法、抄紙法を用いる事で達成できるが、特にエアレイド法で製造することが好ましい。カーディング法の場合、炭素繊維が一方向に引き揃い易くなり、2次元にランダム配向させることが困難な場合がある。また、抄紙法の場合、単糸状の炭素繊維が相対的に多く存在するために成形時の賦形性が悪くなったり、目付の大きいランダムマットを製造する場合にはムラが大きくなったりすることがある。エアレイド法の具体的な製法については後述する。
なお、炭素繊維強化樹脂複合材料における炭素繊維の2次元ランダム配列の配向態様は、例えば、炭素繊維強化樹脂複合材料の任意の方向、及びこれと直交する方向を基準とする引張試験を行い、引張弾性率を測定した後、測定した引張弾性率の値のうち大きいものを小さいもので割った比(Eδ)を測定することで確認できる。弾性率の比が1に近いほど、炭素繊維が2次元ランダム配列していると評価できる。直交する2方向の弾性率の値のうち大きいものを小さいもので割った比が2を超えないときに等方性であるとされ、この比が1.3を超えないときは等方性に優れていると評価される。
また、本発明における炭素繊維樹脂複合材料を用いれば、より安定的に上記範囲を満たすことができる。すなわち、本発明における炭素繊維強化樹脂複合材料は、全幅方向のいずれの箇所においても、優れた等方性を実現できる。
【0025】
[熱可塑性樹脂]
本発明に用いられる熱可塑性樹脂は、所望の機械特性を有する炭素繊維強化樹脂複合材料を得ることができるものであれば特に限定されるものではなく、作製する成形体の用途等に応じて適宜選択して用いることができる。上記熱可塑性樹脂は特に限定されるものではなく、炭素繊維強化樹脂複合材料の用途等に応じて所望の軟化点又は融点を有するものを適宜選択して用いることができる。通常、軟化点が180℃〜350℃の範囲内のものが用いられるが、これに限定されるものではない。
【0026】
熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂(ポリオキシメチレン樹脂)、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂フッ素系樹脂、熱可塑性ポリベンゾイミダゾール樹脂等を挙げることができる。
【0027】
上記ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等を挙げることができる。上記ポリスチレン樹脂としては、例えば、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)等を挙げることができる。上記ポリアミド樹脂としては、例えば、ポリアミド6樹脂(ナイロン6)、ポリアミド11樹脂(ナイロン11)、ポリアミド12樹脂(ナイロン12)、ポリアミド46樹脂(ナイロン46)、ポリアミド66樹脂(ナイロン66)、ポリアミド610樹脂(ナイロン610)等を挙げることができる。上記ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ボリブチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、液晶ポリエステル等を挙げることができる。上記(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレートを挙げることができる。上記ポリフェニレンエーテル樹脂としては、例えば、変性ポリフェニレンエーテル等を挙げることができる。上記ポリイミド樹脂としては、例えば、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂等を挙げることができる。上記ポリスルホン樹脂としては、例えば、変性ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂等を挙げることができる。上記ポリエーテルケトン樹脂としては、例えば、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトンケトン樹脂を挙げることができる。上記フッ素系樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等を挙げることができる。
【0028】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂は1種類のみであってもよく、2種類以上であってもよい。2種類以上の熱可塑性樹脂を併用する態様としては、例えば、相互に軟化点又は融点が異なる熱可塑性樹脂を併用する態様や、相互に平均分子量が異なる熱可塑性樹脂を併用する態様等を挙げることができるが、この限りではない。
【0029】
[他の剤]
炭素繊維強化樹脂複合材料中には、本発明の目的を損なわない範囲で、ガラス繊維や有機繊維等の各種繊維状又は非繊維状フィラー、難燃剤、耐UV剤、顔料、離型剤、軟化剤、可塑剤、界面活性剤の添加剤を含んでいてもよい。
【0030】
[炭素繊維強化樹脂複合材料]
本発明の炭素繊維強化樹脂複合材料は、上述したランダムマットを加圧・加熱下で熱可塑性樹脂を炭素繊維マット中に含浸させることで、好ましくは得られる。含浸工程はバッチ式でも連続式でも良いが、生産性の観点から連続式の方が好ましい。
【0031】
(炭素繊維と熱可塑性樹脂の総目付)
本発明の炭素繊維強化樹脂複合材料における、炭素繊維目付と熱可塑性樹脂目付の和(以下単に「総目付」と記す)に特に限定は無いが、50〜20000g/mであることが好ましく、500〜15000g/mであることがより好ましく、1000〜10000g/mであればさらに好ましい。総目付が50g/m以上の場合、炭素繊維の散布状態を制御するのが容易であり、結果として総目付の変動係数(CV1)及び炭素繊維体積割合(Vf)の変動係数(CV2)を小さくすることができる。一方で、総目付が20000g/m以下である場合、プレス成形等により得られる成形体の厚みが大きくなり過ぎず、目的とする軽量な成形体が得られやすい。
【0032】
(炭素繊維体積割合)
本発明において、下記式(a)で定義される、炭素繊維強化樹脂複合材料に含まれる炭素繊維体積割合(以下、単に「Vf」ということがある)に特に限定は無いが、炭素繊維強化樹脂複合材料における炭素繊維体積割合(Vf)は、10〜60Vol%であることが好ましく、20〜50Vol%であることがより好ましく、25〜45Vol%であればさらに好ましい。
炭素繊維体積割合(Vf)=100×炭素繊維体積/(炭素繊維体積+熱可塑性樹脂体積) 式(a)
炭素繊維強化樹脂複合材料における炭素繊維体積割合(Vf)が10Vol%以上の場合、所望の機械特性が得られやすい。一方で、炭素繊維強化樹脂複合材料における炭素繊維体積割合(Vf)が60Vol%以下である場合、プレス成形等に使用する際の流動性に優れ、所望の成形体形状が得られやすい。
【0033】
(総目付の変動係数(CV1))
本発明における炭素繊維強化樹脂複合材料の総目付の変動係数(CV1)は10%以下である。
本発明における総目付の変動係数(CV1)とは、炭素繊維強化樹脂複合材料の面内の全範囲を25mm×25mmピッチで区分けしたときの各々の総目付の変動係数を式(g)で算出したものであり、例えば、炭素繊維強化樹脂複合材料の寸法が100mm×100mmの面状体の場合、4×4の16ヶ所に区分けして測定した変動係数で定義される。
総目付の変動係数(CV1)=100×総目付の標準偏差/総目付の平均値 式(g)
【0034】
総目付の変動係数(CV1)を10%以下にすることにより、成形時の賦形ムラや機械特性ムラを小ピッチで低減することができ、小型成形体や複雑形状の成形体においても、優れた成形性や機械特性を発揮させることができ、特に、本発明の炭素繊維強化樹脂複合材料をコールドプレスして成形体を得る場合には、均一に流動するために優れた成形性を発揮する。
総目付の変動係数(CV1)は好ましくは7%以下であり、より好ましくは5%以下である。変動係数(CV1)の制御方法については後述する。
【0035】
(炭素繊維体積割合(Vf)の変動係数(CV2))
本発明における炭素繊維強化樹脂複合材料の炭素繊維体積割合(Vf)の変動係数(CV2)は15%以下である。
ここでいう炭素繊維体積割合(Vf)の変動係数(CV2)とは、炭素繊維強化樹脂複合材料の面内の全範囲を25mm×25mmピッチで区分けしたときの各々の炭素繊維体積割合(Vf)の変動係数を式(h)で算出したものであり、例えば、炭素繊維強化樹脂複合材料の寸法が100mm×100mmの面状体の場合、4×4の16ヶ所に区分けして測定した変動係数で定義される。
炭素繊維体積割合(Vf)の変動係数(CV2)=100×炭素繊維体積割合の標準偏差/炭素繊維体積割合の平均値 式(h)
【0036】
炭素繊維体積割合(Vf)の変動係数(CV2)を15%以下にすることにより、成形時の賦形ムラや機械特性ムラを小ピッチで低減することができ、小型成形体や複雑形状の成形体においても、優れた成形性や機械特性を発揮させることができ、特に、本発明の炭素繊維強化樹脂複合材料をコールドプレスして成形体を得る場合には、均一に流動するために優れた成形性を発揮する。
炭素繊維体積割合(Vf)の変動係数(CV2)は好ましくは12%以下であり、より好ましくは10%以下である。変動係数(CV2)の制御方法については後述する。
【0037】
(炭素繊維束に含まれる炭素繊維束(A)の体積割合の変動係数(CV3))
本発明における炭素繊維強化樹脂複合材料に含まれる炭素繊維のうち、式(b)で定義される臨界単糸数以上で構成される炭素繊維束(A)の体積割合の変動係数(CV3)は10%以下であることが好ましい。
ここでいう炭素繊維束(A)の体積割合の変動係数(CV3)とは、炭素繊維強化樹脂複合材料の面内の任意の範囲を25mm×25mmピッチで区分けし、無作為に10点抽出した際の変動係数を下記式(i)で算出したものであり、例えば、炭素繊維強化樹脂複合材料の寸法が100mm×100mmの面状体の場合、4×4の16ヶ所に区分けし、このうち無作為に10点抽出した際の変動係数で定義される。
炭素繊維束(A)体積割合の変動係数(CV3)=100×炭素繊維束(A)の体積割合の標準偏差/炭素繊維束(A)の体積割合の平均値 式(i)
【0038】
炭素繊維束(A)体積割合の変動係数(CV3)を10%以下にすることにより、含浸工程における含浸ムラを抑制できるとともに、成形時の賦形ムラや機械特性ムラを小ピッチで低減することができ、小型成形体や複雑形状の成形体においても、優れた成形性や機械特性を発揮させることができ、特に、本発明の炭素繊維強化樹脂複合材料をコールドプレスして成形体を得る場合には、均一に流動するために優れた成形性を発揮する。
炭素繊維束(A)の変動係数(CV3)は好ましくは7%以下であり、より好ましくは5%以下である。炭素繊維束(A)の変動係数(CV3)の制御方法については後述する。
臨界単糸数=600/D 式(b)
(ここでDは炭素繊維の平均繊維径(μm)である)
【0039】
本発明の炭素繊維強化樹脂複合材料は、生産性の観点から単層であることが好ましく、その厚みは0.3mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることがより好ましく、1.0mm以上であることが更に好ましく、1.5mm以上であることが一層好ましく、2.0mm以上であることが特に好ましく、2.5mm以上であることが最も好ましい。本発明の炭素繊維強化樹脂複合材料は、厚み0.3mm以上の比較的厚い単層であっても、総目付の変動係数(CV1)、炭素繊維体積割合(Vf)の変動係数(CV2)を小さくできる。
なお、上記単層とは、強化繊維と樹脂を堆積して得られた炭素繊維強化樹脂複合材料の前駆体を、積層させることなく、含浸処理して製造した炭素繊維強化樹脂複合材料の層をいう。
ただし、単層の炭素繊維強化樹脂複合材料を製造した後、これを複数層積層して成形し、目的とする成形体の厚みや形状にしても良い。
【0040】
また、本発明の炭素繊維強化樹脂複合材料のサイズ(長さ×幅)は、100mm×100mm以上であることが好ましく、200mm×200mm以上であることがより好ましい。また、炭素繊維強化樹脂複合材料の表面の面積としては、10000mm以上であることが好ましく、40000m以上であることがより好ましい。
また、本発明の炭素繊維強化樹脂複合材料のサイズ(幅方向、TD方向)は、500mm以上であることが好ましく、1000mm以上であることがより好ましく、1400mm以上であることが更に好ましい。
【0041】
[炭素繊維強化樹脂複合材料の製造方法]
本発明に用いられる炭素繊維強化樹脂複合材料は、各種変動係数を制御する手段を除き、エアレイド法によって好ましく製造することができる。炭素繊維強化樹脂複合材料の製造工程は、例えば、特開2011−178891号公報、特開2013−49208号公報等の記載を参照して、以下の工程1〜4からなる。
【0042】
1.クリール部から炭素繊維を繰出し拡幅装置によって拡幅した後、縦スリット装置を通して分繊し炭素繊維束を形成する工程。
2.炭素繊維束をカットし、カットされた炭素繊維束(以下、「繊維束片」とする。)を管体内に導入し、空気を繊維束片に吹き付けることにより、繊維束片をある程度バラバラに開繊させる切断・開繊工程。
3.開繊工程を終えた繊維束片を拡散させながら、樹脂供給部から供給された繊維状またはパウダー状の熱可塑性樹脂とともに、吸引装置にて吸引しながら通気性支持体上に散布し、ランダムマットを得る散布・定着工程。
4.加圧・加熱下において、ランダムマット中の散布された炭素繊維束に熱可塑性樹脂を含浸させる含浸工程。
なお、上記「2.」において、本発明においては、カットされた炭素繊維の管体内への輸送は、その距離が短く、鉛直下向きに輸送することが好ましい。
カットされた炭素繊維を、距離を短く、鉛直下向きに輸送することで、例えば長い輸送配管を用いたり、フレキシブル配管等による曲線輸送したりする場合に比べて、より好適に、本発明の各種変動係数CV1、CV2、(更にはCV3)の値とすることができる。
【0043】
[エアレイド法]
なお、一般的にエアレイド法とは、所定量の開繊及び/または分繊された強化繊維と、必要に応じて熱可塑性樹脂を含んで空気流に分散させながら搬送し、吐出口から吹き出した強化繊維等を、下部に設置された通気性支持体(繊維捕集用ネット)上に落とし、通気性支持体の下部で空気をサクションしながら、強化繊維を通気性支持体にウエブとして堆積させ、必要に応じて、この操作を複数回繰り返して炭素繊維マットやランダムマットを製造する方法をいう。
【0044】
[各種の変動係数の制御方法]
上記の炭素繊維強化樹脂複合材料の各種変動係数CV1、CV2、CV3の制御方法に特に限定はないが、例えば以下の製造方法を、上述した「3.ランダムマットを得る散布・定着工程」に用いて、散布・定着工程で得られたランダムマット(炭素繊維強化樹脂複合材料の前駆体)の総目付の変動係数(CV1’)、炭素繊維体積割合(Vf)の変動係数(CV2’)、炭素繊維束(A)の体積割合の変動係数(CV3’)を制御し、得られたランダムマットを加圧・加熱下にて含浸すれば良い。含浸方法に特に制限はないが、生産性の観点から連続式が好ましい。また、含浸温度は熱可塑性樹脂の軟化点以上、とりわけ結晶性樹脂の場合は融点以上の温度で、含浸圧力は散布・定着工程で得られたランダムマットの総目付の変動係数(CV1’)、炭素繊維体積割合(Vf)の変動係数(CV2’)、炭素繊維束(A)の体積割合の変動係数(CV3’)が大きく変動しない範囲で制御することが好ましい。なお、通常ではランダムマットを含浸処理し、炭素繊維強化樹脂複合材料とする過程で、総目付の変動係数(CV1’)は小さくなり、炭素繊維体積割合(Vf)の変動係数(CV2’)は大きくなり、炭素繊維束(A)の体積割合の変動係数(CV3’)は変化が小さい傾向となる。これは含浸工程では炭素繊維は加圧されても流動し難いが、熱可塑性樹脂は加圧により大きく流動することによる。通常含浸圧力が高すぎると、各種変動係数が大きく変動してしまうが、含浸性向上等のために含浸圧力を高めたい場合には、ランダムマット中の炭素繊維及び熱可塑性樹脂の不要な流動を抑えるために、含浸装置内に流動防止用のせき止め機構を設置することが好ましい。
【0045】
(製造例1)
本発明の炭素繊維強化樹脂複合材料の製造方法としては、生産性向上のために、複数の上述した管体を有し、かつ、通気性支持体を一方向へ進行させながら連続的に管体より炭素繊維及び熱可塑性樹脂を通気性支持体上へ散布する製造装置を使用することが好ましい。しかしながら複数の管体から同時に炭素繊維及び熱可塑性樹脂を通気性支持体上に散布する場合においては、通常、気流のムラにより、複数の管体間で炭素繊維及び熱可塑性樹脂等の散布ムラが発生してしまい、結果的に炭素繊維強化樹脂複合材料の前駆体であるランダムマットの総目付の変動係数(CV1’)、炭素繊維体積割合(Vf)の変動係数(CV2’)、炭素繊維束(A)の体積割合の変動係数(CV3’)の値が大きくなってしまう。その変動係数を小さくする策として、管体を特定の管体間距離で幅方向に配置し、さらに、前後方向に位相差をもって配置した管体ユニット(図1参照)を好適に用いることができる。ここで、位相差とは、幅方向(TD方向、Transverse Direction)に直交する方向に周期的に配置された複数の管体からなる管体の列を、幅方向に複数有する管体ユニットにおいて、ある列に含まれる特定の1つの管体の中心と、その列の隣の列に含まれる前記特定の管体に最も近接した管体の中心との、列に平行な方向(幅方向に直交する方向)におけるズレ(例えば図1のP1)をいう。隣接する管体の中心間距離(X1)は隣接する管体より散布される炭素繊維及び熱可塑性樹脂同士が通気性支持体上に定着する前段階の空気中で混合されない距離が確保されていることが好ましい。また、位相差(例えば図1のP1)を設けるための管体の配置について特に限定はないが、好ましい位相差としては、幅方向(TD方向、Transverse Direction)に渡る管体の位相差(例えば図1のP1)は得られたランダムマットの平均散布幅(例えば図1のW1)の1/2値よりも狭い方がより好ましい。ランダムマットの平均散布幅(例えば図1のW1)とは、一つの管体から散布されたランダムマットの散布幅の平均値である。なお、隣接する管体の中心間距離(例えば図1のX1)、位相差(例えば図1のP1)、ランダムマットの平均散布幅(例えば図1のW1)は上述した好ましい範囲を満たしていれば、管体ユニット内において同一でも良いし、異なっていても良い。このような位相差を設けることで、複数の管体で各々作製された各ランダムマットが通気性支持体上で重なり合い、総目付の変動係数(CV1’)の値を10%以下に、また、炭素繊維体積割合(Vf)の変動係数(CV2’)の値を15%以下に(また、好ましくは炭素繊維束(A)の体積割合の変動係数(CV3’)の値を10%以下に)、制御することができる。
【0046】
(製造例2)
また、例えば、製造例1と同様に複数の管体をもつ管体ユニットにて、炭素繊維と熱可塑性樹脂を、通気性支持体に散布・定着させ、得られたランダムマットを一方向に連続的に搬送させる工程において、管体ユニットを任意の方向、例えば、進行方向(MD方向、Machine Direction)に対する垂直方向(TD方向、Transverse Direction)、円周状、楕円周状、波状等に揺動させる製造方法も好適に用いることができる。揺動条件に関して特に限定はないが、通気性支持体の搬送速度(V1)に対する、揺動速度(V2)の比、V2/V1が3〜60であることが好ましい。
ここで、揺動速度(V2)とは、単位時間当たりの揺動1周期分の距離である。V2/V1を3〜60とすることで、工程安定性を保持しつつ、搬送方向に渡って、総目付、炭素繊維体積割合(Vf)、好ましくは炭素繊維束(A)の体積割合のムラを低減することができる。また、揺動振幅(W2)は、隣接する管体の中心間距離(X1)の1/2値よりも大きいことが好ましい。ここで、揺動振幅(W2)とは、1つの管体の揺動時の管体貫通方向中心線と通気性支持体との交点をとったときの交点間の距離の最大値の1/2値である。これにより、複数の管体で各々作製された各ランダムマットが通気性支持体上で重なり合い、総目付の変動係数(CV1’)の値を10%以下に、また、炭素繊維体積割合(Vf)の変動係数(CV2’)の値を15%以下に(また、好ましくは炭素繊維束(A)の体積割合の変動係数(CV3’)の値を10%以下に)、制御することができる。
【0047】
(製造例3)
また、例えば、複数の管体をもつ管体ユニットにて、炭素繊維と熱可塑性樹脂を、通気性支持体に散布・定着させ、得られたランダムマットを一方向に連続的に搬送させる工程において、通気性支持体上に散布・定着させたランダムマットに対して機械的な均し処理を施す製造方法も好適に用いることができる。機械的な均し処理の方法に特に制限はないが、複数のニードル状、鍬状等の均し機構を備えた均し装置を、ランダムマットに対して、上下往復運動や回転運動させる方法が好ましい。これにより、ランダムマット内の総目付、炭素繊維体積割合(Vf)、(好ましくは炭素繊維束(A)の体積割合のムラ)を低減でき、総目付の変動係数(CV1’)の値を10%以下に、また、炭素繊維体積割合(Vf)の変動係数(CV2’)の値を15%以下に(また、好ましくは炭素繊維束(A)の体積割合の変動係数(CV3’)の値を10%以下に)、制御することができる。
【0048】
[炭素繊維強化樹脂複合材料の成形方法]
炭素繊維強化樹脂複合材料を成形する場合、種々の成形方法を利用できるが、加熱・加圧して行われるのが好ましい。成形方法としては、所謂、コールドプレス法やホットプレス法等の圧縮成形法が好ましく利用される。
【0049】
(コールドプレス法)
コールドプレス法は、例えば、第1の所定温度に加熱した炭素繊維強化樹脂複合材料を第2の所定温度に設定された金型内に投入した後、加圧・冷却を行う。
具体的には、炭素繊維強化樹脂複合材料を構成する熱可塑性樹脂が結晶性である場合、第1の所定温度は融点以上であり、第2の設定温度は融点未満である。熱可塑性樹脂が非晶性である場合、第1の所定温度はガラス転移温度以上であり、第2の設定温度はガラス転移温度未満である。
【0050】
すなわち、コールドプレス法は、少なくとも以下の工程A−1)〜A−2)を含んでいる。
A−1)炭素繊維強化樹脂複合材料を、熱可塑性樹脂が結晶性の場合は融点以上分解温度以下、非晶性の場合はガラス転移温度以上分解温度以下に加温する工程。
A−2)上記A−1)で加温された炭素繊維強化樹脂複合材料を、熱可塑性樹脂が結晶性の場合は融点未満、非晶性の場合はガラス転移温度未満に温度調節された金型に配置し、加圧する工程。
これらの工程を行うことで、炭素繊維強化樹脂複合材料の成形を完結させることができる。
【0051】
なお、金型に投入する際、炭素繊維強化樹脂複合材料は、対象の成形体の板厚に合わせて、単独(1枚で)又は複数枚用いられる。複数枚用いる場合、複数枚を予め積層して加熱してもよいし、加熱した炭素繊維強化樹脂複合材料を積層した後に金型内に投入してもよいし、加熱した炭素繊維強化樹脂複合材料を金型内に順次積層してもよい。なお、積層した場合の最下層の炭素繊維強化樹脂複合材料と最上層の複合材料との温度差は少ない方が良く、この観点からは、金型に投入する前に積層した方が好ましい。また、上記A−1)における加圧は、例えば、金型やニップローラ等を利用することができる。上記の各工程は、上記の順番で行う必要があるが、各工程間に他の工程を含んでもよい。他の工程とは、例えば、A−2)の前に、A−2)で利用される金型と別の賦形型を利用して、金型のキャビティの形状に予め賦形する賦形工程等がある。
【0052】
(ホットプレス法)
ホットプレス法は、例えば、金型内に炭素繊維強化樹脂複合材料を投入し、金型の温度を第1の所定温度まで上昇させながら加圧し、第2の所定温度まで金型の冷却を行う。具体的には、炭素繊維強化樹脂複合材料を構成する熱可塑性樹脂が結晶性である場合、第1の所定温度は融点以上であり、第2の所定温度は融点未満である。炭素繊維強化樹脂複合材料を構成する熱可塑性樹脂が非晶性である場合、第1の所定温度はガラス転移温度以上であり、第2の所定温度はガラス転移温度未満である。
【0053】
ホットプレス法は、少なくとも以下の工程B−1)〜B−4)を含んでいることが好ましい。
B−1)炭素繊維強化樹脂複合材料を金型に配置する工程。
B−2)熱可塑性樹脂が結晶性の場合は熱可塑性樹脂の融点以上熱分解温度以下の温度まで、非晶性の場合は熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上熱分解温度以下の温度まで、金型を昇温しつつ、加圧する工程(第1プレス工程)。
B−3)一段以上であり、最終段の圧力が第1プレス工程の圧力の1.2倍以上100倍以下となるように加圧する工程(第2プレス工程)。
B−4)熱可塑性樹脂が結晶性の場合は融点未満、非晶性の場合はガラス転移温度未満に金型温度を調節する工程。
これらの工程を行うことで、複合材料の成形を完結させることができる。
【0054】
(共通事項)
工程A−2)及びB−3)は、炭素繊維強化樹脂複合材料に圧力を加えて所望形状の成形体を得る工程であるが、このときの成形圧力については特に限定はしないが、所望の成形体形状を得られる範囲内において、極力低い方が好ましい。具体的には、金型キャビティ投影面積に対して30MPa未満が好ましく、20MPa以下であるとより好ましく、10MPa以下であると更に好ましい。
成形圧力が30MPa未満の場合は、プレス機の設備投資や維持費が必要とならないため、好ましい。上述した炭素繊維強化樹脂複合材料は成形時の流動性が高く、総目付、炭素繊維体積割合(Vf)の変動係数CV1、CV2が小さく(また好ましくは炭素繊維束(A)の体積割合の変動係数CV3も小さいため)、成形圧力を低くしても、安定して小型形状や複雑形状の成形を行うことができる。
また、当然のことであるが、圧縮成形時に種々の工程を上記の工程間に入れてもよく、例えば真空にしながら圧縮成形する真空圧縮成形を用いてもよい。
【0055】
(成形体の溶着安定性の向上)
炭素繊維と熱可塑性樹脂を含む複合材料同士を互いに接合する場合、接着剤に代えて、振動溶着、IR溶着、超音波溶着、熱溶着などが用いられることが多い。
その溶着強度は一般的に溶着部の炭素繊維と熱可塑性樹脂の存在状態によって決まることが多く、溶着部に極端に炭素繊維量が多い場合や、溶着面の厚みムラが大きい場合には溶着不良を発生することがあるため、溶着部の総目付ムラ、炭素繊維体積割合(Vf)ムラを抑制することが望まれている。
本発明における炭素繊維強化樹脂複合材料を用いて得られた成形体は、炭素繊維と熱可塑性樹脂の総目付の変動係数(CV1)と炭素繊維体積割合(Vf)の変動係数(CV2)の値が極めて低いため(また、好ましくは炭素繊維束(A)の体積割合の変動係数CV3も小さいため)、溶着強度が安定化しやすいという効果を有する。
【実施例】
【0056】
以下、本発明について実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、実施例3〜6はそれぞれ参考例3〜6に読み替えるものとする。
本実施例における各値は、以下の方法に従って求めた。
【0057】
1.炭素繊維強化樹脂複合材料の分析
(1)総目付の分析
炭素繊維強化樹脂複合材料の全範囲を概ね25mm×25mmピッチでサンプルを切出し、切出した全サンプルの気中重量を、電子天秤を用いて測定した。サンプル寸法はマイクロメータを用いて2辺間の距離(2辺間距離W2及びW3)を、1/1000mm単位で精密に測定し、式(j)により各サンプルの総目付を算出した。さらに、サンプル全数(本実施例では幅1000mm×長さ250mmの等方性基材を、幅方向40点×長さ方向10点の合計400点)による平均値及び標準偏差を算出し、式(g)により、総目付の変動係数(CV1)を求めた。
総目付=気中重量/(W2×W3) 式(j)
総目付の変動係数(CV1)=100×総目付の標準偏差/総目付の平均値 式(g)
【0058】
(2)炭素繊維体積割合(Vf)の分析
炭素繊維強化樹脂複合材料の全範囲を概ね25mm×25mmピッチでサンプルを切出し、切出した全サンプルの気中重量を、電子天秤を用いて測定した後、当該サンプルを500℃×1時間空気雰囲気下で熱可塑性樹脂を燃焼除去し、処理後サンプルの重量を秤量することによって炭素繊維と熱可塑性樹脂の重量を算出した。次に、各成分の比重を用いて、炭素繊維と熱可塑性樹脂の体積割合を算出し、式(a)により各サンプルの炭素繊維体積割合(Vf)を算出した。
Vf=100×炭素繊維体積/(炭素繊維体積+熱可塑性樹脂体積) 式(a)
さらに、サンプル全数(400点)による平均値及び標準偏差を算出し、式(h)により、炭素繊維体積割合(Vf)の変動係数(CV2)を求めた。
炭素繊維体積割合(Vf)の変動係数(CV2)=100×炭素体積割合の標準偏差/炭素繊維体積割合の平均値 式(h)
【0059】
(3)繊維束の分析
炭素繊維強化樹脂複合材料の中から無作為に概ね25mm×25mmピッチで10点抽出して、サンプルを切出し、500℃×1時間程度、炉内にて樹脂を除去し、残留した繊維束をピンセットで全て取り出し、炭素繊維束(A)の束の数(I)および重量(Wi)を測定した。ピンセットにて取り出す事ができない程度に繊維束が小さいものについては、まとめて最後に重量を測定した(Wk)。重量の測定には、1/100mgまで測定可能な天秤を用いた。炭素繊維強化樹脂複合材料に使用している炭素繊維の繊維径(D)より、臨界単糸数を計算し、臨界単糸数以上の炭素繊維束(A)と、それ以外に分けた。
炭素繊維束(A)の炭素繊維強化樹脂複合材料の繊維全量に対する体積割合(VR)は、炭素繊維の密度(ρ)を用いて式(k)により求められる。
VR=Σ(Wi/ρ)×100/((Wk+ΣWi)/ρ) 式(k)
さらに、サンプル10点による平均値及び標準偏差を算出し、式(i)により、炭素繊維束(A)の体積割合の変動係数(CV3)を求めた。
炭素繊維束(A)体積割合の変動係数(CV3)=100×炭素繊維束(A)の体積割合の標準偏差/炭素繊維束(A)の体積割合の平均値 式(i)
【0060】
(4)炭素繊維の平均繊維長の分析
炭素繊維強化樹脂複合材料に含まれる炭素繊維の平均繊維長は、500℃×1時間程度、炉内にて熱可塑性樹脂を除去した後、無作為に抽出した炭素繊維100本の長さをノギスおよびルーペで1mm単位まで測定して記録し、測定した全ての炭素繊維の長さ(Li、ここでi=1〜100の整数)から、次式により重量平均繊維長(Lw)を求めた。
Lw=(ΣLi)/(ΣLi) ・・・ 式(f)
【0061】
(5)引張強度
ウォータージェットを用いて炭素繊維強化樹脂複合材料から試験片を幅方向に渡って15点切出し、JIS K−7164:2005を参考として、インストロン社製の5982R4407万能試験機を用いて、引張試験を行った。各試験片の形状はA形試験片とした。チャック間距離は115mm、試験速度は2mm/minとした。
さらに、サンプル全数(15点)による平均値及び標準偏差を算出し、式(l)により、引張強度の変動係数(CV4)を求めた。
引張強度の変動係数(CV4)=100×引張強度の標準偏差/引張強度の平均値 式(l)
【0062】
(6)成形時の流動長
炭素繊維強化樹脂複合材料からサンプルを250mm×250mm切り出し、NGKキルンテック株式会社製の樹脂シート加熱装置(型式H7GS−73408)を用いて、ポリアミド6(熱可塑性樹脂)の可塑化温度以上である290℃に加熱(ポリカーボネート(熱可塑性樹脂)の場合は300℃に加熱)した。
150℃に設定した400mm×400mm×2.6mmのクリアランスを持った成形型の下型に配置し、成形型の上型を下降させ、20MPaで1分間コールドプレスして平板のプレス成形体を作成した。成形型の上型を上昇させて成形型を完全に開放した後、作成したプレス成形体を下型から脱型させ、プレス成形体を取り出した。
取り出したプレス成形体について、プレス成形する前の250mm×250mmに切り出した、炭素繊維強化樹脂複合材料と比べて、コールドプレス時に流動した距離を測定した。具体的には、図2で示す模式図の4辺を流動させ、各辺の流動長4点を測定した。
さらに、各辺(4辺×4点の合計16点)の流動長による平均値及び標準偏差を算出し、式(m)により、の成形時流動長の変動係数(CV5)を求めた。
流動長の変動係数(CV5)=100×流動長の標準偏差/流動長の平均値 式(m)
(7)成形体の外観評価
炭素繊維強化樹脂複合材料からサンプルを390mm×390mm切り出し、NGKキルンテック株式会社製の樹脂シート加熱装置(型式H7GS−73408)を用いて、ポリアミド6(熱可塑性樹脂)の可塑化温度以上である290℃に加熱(ポリカーボネート(熱可塑性樹脂)の場合は300℃に加熱)した。
加熱した炭素繊維強化樹脂複合材料のサンプルを、150℃に設定した400mm×400mm×2.6mmのクリアランスを持った成形型の下型に配置し、成形型の上型を下降させ、20MPaで1分間コールドプレスして平板のプレス成形体を作成した。成形型の上型を上昇させて成形型を完全に開放した後、作成したプレス成形体を下型から脱型させ、プレス成形体を取り出した。
取り出したプレス成形体について、その両面の空気噛み込み由来の表面凸部(最小長1mm以上のもの)の個数を測定した。
【0063】
2.ランダムマットの分析
(1)総目付の分析
ランダムマットの総目付及び総目付の変動係数(CV1’)の測定は、切り出す対象をランダムマットとすること以外は、上述の「1.(1)総目付の分析」で述べたのと同様の方法を用いた。
【0064】
(2)炭素繊維体積割合(Vf)の分析
ランダムマットの炭素繊維体積割合(Vf)及び炭素繊維体積割合の変動係数(CV2’)の測定は、切り出す対象をランダムマットとすること以外は、上述の「1.(2)炭素繊維体積割合(Vf)の分析」で述べたのと同様の方法を用いた。
【0065】
(3)繊維束(A)の分析
ランダムマットの炭素繊維束(A)の分析及び炭素繊維束(A)の体積割合の変動係数(CV3’)の測定は、切り出す対象をランダムマットとすること以外は、上述の「1.(3)繊維束の分析」で述べたのと同様の方法を用いた。
【0066】
(4)炭素繊維の平均繊維長の分析
ランダムマットの平均繊維長の分析は、切り出す対象をランダムマットとすること以外は、上述の「1.(4)炭素繊維の平均繊維長の分析」で述べたのと同様の方法を用いた。
【0067】
[実施例1]
炭素繊維として、東邦テナックス社製の炭素繊維“テナックス”(登録商標)STS40−24K(平均繊維径7μm、繊維幅10mm)を拡幅して、繊維幅20mmとしたものを使用し、さらに1/5に分繊した。カット装置にはロータリーカッターを用い炭素繊維を繊維長20mmに定長カットするようにした。次いで、カット装置の直下に設けた管体に115g/minの供給速度にて供給し、炭素繊維を管体内の小孔から圧縮空気を噴射させることで開繊するとともに、樹脂供給部よりマトリックス樹脂として、ユニチカ社製のナイロン6樹脂A1030(PA6)を135g/minの供給速度にて管体内に供給し、炭素繊維と混合させた後、管体直下に設置した、搬送速度(V1)=0.7m/minで一方向へ連続的に動く通気性支持体上へ散布・定着させ、ランダムマットを得た。この製造方法は輸送配管を用いていない。カット装置の直下に管体を設けているので、カッターでカットされた炭素繊維は、管体に入るまでの間、鉛直下向きに落下するのみである。
なお、管体は、中心間距離を通気性支持体の搬送方向(MD方向)に垂直な方向(TD方向)に100mm間隔で13本を配置し、管体ユニット化し、その管体ユニットは揺動速度(V2)=9m/min、揺動振幅(W2)=110mmでTD方向に往復揺動させた。このときの搬送速度(V1)に対する、揺動速度(V2)の比、V2/V1は12.9であり、揺動振幅(W2)は隣接間の管体ピッチ100mmの1/2値=50mmよりも大きく設定した。
【0068】
得られたランダムマットについて、幅1000mm×長さ250mmに切り出し、炭素繊維束(A)について調べたところ、式(b)で定義される臨界単糸数は86であり、炭素繊維束(A)のランダムマットの炭素繊維全量に対する体積割合の平均値は75%、変動係数(CV3’)は3.2%であり、ランダムマットの総目付について調べたところ、総目付の平均値は3650g/m、変動係数(CV1’)は5.2%であり、ランダムマットの炭素繊維体積割合(Vf)について調べたところ、炭素繊維体積割合(Vf)の平均値は35.6%、変動係数(CV2’)は3.7%であった。
得られたランダムマットは、搬送速度0.7m/minの連続含浸装置にて加圧・加熱して熱可塑性樹脂を炭素繊維マット中に含浸させ、炭素繊維強化樹脂複合材料を得た。炭素繊維複合材料は単層であり、その厚さは2.6mmであった。
【0069】
得られた炭素繊維強化樹脂複合材料について、幅1000mm×長さ250mmに切り出し、炭素繊維束(A)について調べたところ、式(b)で定義される臨界単糸数は86であり、炭素繊維束(A)の炭素繊維強化樹脂複合材料中の炭素繊維全量に対する体積割合の平均値は74%、変動係数(CV3)は3.4%であり、炭素繊維強化樹脂複合材料の総目付について調べたところ、総目付の平均値は3600g/m、変動係数(CV1)は3.6%であり、炭素繊維強化樹脂複合材料の炭素繊維体積割合(Vf)について調べたところ、炭素繊維体積割合(Vf)の平均値は35.6%、変動係数(CV2)は7.0%であった。また、炭素繊維強化樹脂複合材料の引張強度について調べたところ、引張強度の平均値は336MPa、変動係数(CV4)は7.6%であり、比較例1のCV4対比43%であった。さらに、炭素繊維強化樹脂複合材料の成形時の流動性について調べたところ、成形時の流動長の平均値は25mm、変動係数(CV5)は6.4%であり、比較例1のCV5対比35%であった。成形時のプレス成形体の両面の表面凸部の個数は0個であった。
ランダムマット及び炭素繊維強化樹脂複合材料の評価結果は表1にまとめて示した。以降の実施例で得られたランダムマット及び炭素繊維強化樹脂複合材料の評価結果についても同様に表1に示した。
【0070】
[実施例2]
炭素繊維として、東邦テナックス社製の炭素繊維“テナックス”(登録商標)STS40−24KS(平均繊維径7μm、繊維幅10mm)を拡幅して、繊維幅20mmとしたものを使用し、さらに1/5に分繊した。カット装置にはロータリーカッターを用い炭素繊維を繊維長20mmに定長カットするようにした。次いで、カット装置の直下に設けた管体に58g/minの供給速度にて供給し、炭素繊維を管体内の小孔から圧縮空気を噴射させることで開繊するとともに、樹脂供給部よりマトリックス樹脂として、ユニチカ社製のナイロン6樹脂A1030を73g/minの供給速度にて管体内に供給し、炭素繊維と混合させた後、管体直下に設置した、搬送速度(V1)=0.7m/minで一方向へ連続的に動く通気性支持体上へ散布・定着させ、ランダムマットを得た。なお、管体は通気性支持体の搬送方向(MD方向)に垂直な方向(TD方向)に10本を200mmピッチで配置したものを1列として、列間のピッチを200mm、列間の位相差を50mmとして4列を平行に配置し、合計40管体をユニット化した。隣接する管体の中心間距離(X1)の最小距離は200mmであり、隣接する管体より散布される炭素繊維及び熱可塑性樹脂同士が通気性支持体上に定着する前段階の空気中で混合されない距離を確保した。さらに幅方向(TD方向)に渡る管体の位相差(P1)は50mmであり、得られたランダムマットの平均散布幅(W1)=180mmの1/2値よりも狭いものとした。
【0071】
得られたランダムマットについて、幅1000mm×長さ250mmに切り出し、炭素繊維束(A)について調べたところ、式(b)で定義される臨界単糸数は86であり、炭素繊維束(A)のランダムマットの炭素繊維全量に対する体積割合の平均値は74%、変動係数(CV3’)は4.5%であり、ランダムマットの総目付について調べたところ、総目付の平均値は3600g/m、変動係数(CV1’)は6.9%であり、ランダムマットの炭素繊維体積割合(Vf)について調べたところ、炭素繊維体積割合(Vf)の平均値は35.1%、変動係数(CV2’)は4.6%であった。
得られたランダムマットは、搬送速度0.7m/minの連続含浸装置にて加圧・加熱して熱可塑性樹脂を炭素繊維マット中に含浸させ、炭素繊維強化樹脂複合材料を得た。
【0072】
得られた炭素繊維強化樹脂複合材料について、幅1000mm×長さ250mmに切り出し、炭素繊維束(A)について調べたところ、式(b)で定義される臨界単糸数は86であり、炭素繊維束(A)の炭素繊維強化樹脂複合材料中の炭素繊維全量に対する体積割合の平均値は77%、変動係数(CV3)は4.4%であり、炭素繊維強化樹脂複合材料の総目付について調べたところ、総目付の平均値は3580g/m、変動係数(CV1)は4.9%であり、炭素繊維強化樹脂複合材料の炭素繊維体積割合(Vf)について調べたところ、炭素繊維体積割合(Vf)の平均値は35.4%、変動係数(CV2)は8.8%であった。また、炭素繊維強化樹脂複合材料の引張強度について調べたところ、引張強度の平均値は328MPa、変動係数(CV4)は9.1%であり、比較例1のCV4対比52%であった。さらに、炭素繊維強化樹脂複合材料の成形時の流動性について調べたところ、成形時の流動長の平均値は22mm、変動係数(CV5)は8.6%であり、比較例1のCV5対比47%であった。成形時のプレス成形体の両面の表面凸部の個数は1個であった。
【0073】
[実施例3]
炭素繊維として、東邦テナックス社製の炭素繊維“テナックス”(登録商標)STS40−24K(平均繊維径7μm、繊維幅10mm)を拡幅して、繊維幅20mmとしたものを使用し、さらに1/5に分繊した。カット装置にはロータリーカッターを用い炭素繊維を繊維長20mmに定長カットするようにした。次いで、カット装置の直下に設けた管体に115g/minの供給速度にて供給し、炭素繊維を管体内の小孔から圧縮空気を噴射させることで開繊するとともに、樹脂供給部よりマトリックス樹脂として、ユニチカ社製のナイロン6樹脂A1030を135g/minの供給速度にて管体内に供給し、炭素繊維と混合させた後、管体直下に設置した、搬送速度(V1)=0.7m/minで一方向へ連続的に動く通気性支持体上へ散布・定着させ、ランダムマットを得た。なお、管体は通気性支持体の搬送方向(MD方向)に垂直な方向(TD方向)に13本を100mmピッチで配置して、管体ユニット化した。さらに、得られたランダムマットの上方から、幅1500mm×長さ300mmの板に20mmピッチで先端がL字状であるニードルを配置した均し装置を、20回/minの頻度で、ランダムマットに突き刺すように上下往復運動させ、ランダムマットを均した。
【0074】
得られたランダムマットについて、幅1000mm×長さ250mmに切り出し、炭素繊維束(A)について調べたところ、式(b)で定義される臨界単糸数は86であり、炭素繊維束(A)のランダムマットの炭素繊維全量に対する体積割合の平均値は69%、変動係数(CV3’)は6.4%であり、ランダムマットの総目付について調べたところ、総目付の平均値は3650g/m、変動係数(CV1’)は7.7%であり、ランダムマットの炭素繊維体積割合(Vf)について調べたところ、炭素繊維体積割合(Vf)の平均値は33.8%、変動係数(CV2’)は6.6%であった。
得られたランダムマットは、搬送速度0.7m/minの連続含浸装置にて加圧・加熱して熱可塑性樹脂を炭素繊維マット中に含浸させ、炭素繊維強化樹脂複合材料を得た。
【0075】
得られた炭素繊維強化樹脂複合材料について、幅1000mm×長さ250mmに切り出し、炭素繊維束(A)について調べたところ、式(b)で定義される臨界単糸数は86であり、炭素繊維束(A)の炭素繊維強化樹脂複合材料中の炭素繊維全量に対する体積割合の平均値は67%、変動係数(CV3)は6.9%であり、炭素繊維強化樹脂複合材料の総目付について調べたところ、総目付の平均値は3610g/m、変動係数(CV1)は5.7%であり、炭素繊維強化樹脂複合材料の炭素繊維体積割合(Vf)について調べたところ、炭素繊維体積割合(Vf)の平均値は33.6%、変動係数(CV2)は10.1%であった。また、炭素繊維強化樹脂複合材料の引張強度について調べたところ、引張強度の平均値は344MPa、変動係数(CV4)は11.0%であり、比較例1のCV4対比63%であった。さらに、炭素繊維強化樹脂複合材料の成形時の流動性について調べたところ、成形時の流動長の平均値は18mm、変動係数(CV5)は7.9%であり、比較例1のCV5対比43%であった。成形時のプレス成形体の両面の表面凸部の個数は3個であった。
【0076】
[実施例4]
ロータリーカッターを用い炭素繊維を繊維長40mmに長カットしたこと以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作成した。
得られたランダムマットについて、幅1000mm×長さ250mmに切り出し、炭素繊維束(A)について調べたところ、式(b)で定義される臨界単糸数は86であり、炭素繊維束(A)のランダムマットの炭素繊維全量に対する体積割合の平均値は79%、変動係数(CV3’)は4.7%であり、ランダムマットの総目付について調べたところ、総目付の平均値は3490g/m、変動係数(CV1’)は7.1%であり、ランダムマットの炭素繊維体積割合(Vf)について調べたところ、炭素繊維体積割合(Vf)の平均値は35.0%、変動係数(CV2’)は4.8%であった。
得られたランダムマットは、搬送速度0.7m/minの連続含浸装置にて加圧・加熱して熱可塑性樹脂を炭素繊維マット中に含浸させ、炭素繊維強化樹脂複合材料を得た。
【0077】
得られた炭素繊維強化樹脂複合材料について、幅1000mm×長さ250mmに切り出し、炭素繊維束(A)について調べたところ、式(b)で定義される臨界単糸数は86であり、炭素繊維束(A)の炭素繊維強化樹脂複合材料中の炭素繊維全量に対する体積割合の平均値は80%、変動係数(CV3)は4.5%であり、炭素繊維強化樹脂複合材料の総目付について調べたところ、総目付の平均値は3500g/m、変動係数(CV1)は4.8%であり、炭素繊維強化樹脂複合材料の炭素繊維体積割合(Vf)について調べたところ、炭素繊維体積割合(Vf)の平均値は35.0%、変動係数(CV2)は9.3%であった。また、炭素繊維強化樹脂複合材料の引張強度について調べたところ、引張強度の平均値は310MPa、変動係数(CV4)は10.3%であり、比較例1のCV4対比59%であった。さらに、炭素繊維強化樹脂複合材料の成形時の流動性について調べたところ、成形時の流動長の平均値は11mm、変動係数(CV5)は9.1%であり、比較例1のCV5対比50%であった。成形時のプレス成形体の両面の表面凸部の個数は4個であった。
【0078】
[実施例5]
管体から噴射する圧縮空気量を、TD方向に配置された13個の管体のうち、6個(一方向に1〜13番と順に並べた際の偶数番号の6個)について、実施例1の2/3の量に、7個(一方向に1〜13番と順に並べた際の奇数番号の7個)について、実施例1の4/3の量にした以外こと以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作成した。
得られたランダムマットについて、幅1000mm×長さ250mmに切り出し、炭素繊維束(A)について調べたところ、式(b)で定義される臨界単糸数は86であり、炭素繊維束(A)のランダムマットの炭素繊維全量に対する体積割合の平均値は74%、変動係数(CV3’)は12.1%であり、ランダムマットの総目付について調べたところ、総目付の平均値は3590g/m、変動係数(CV1’)は5.5%であり、ランダムマットの炭素繊維体積割合(Vf)について調べたところ、炭素繊維体積割合(Vf)の平均値は36.2%、変動係数(CV2’)は3.6%であった。
【0079】
得られたランダムマットは、搬送速度0.7m/minの連続含浸装置にて加圧・加熱して熱可塑性樹脂を炭素繊維マット中に含浸させ、炭素繊維強化樹脂複合材料を得た。
得られた炭素繊維強化樹脂複合材料について、幅1000mm×長さ250mmに切り出し、炭素繊維束(A)について調べたところ、式(b)で定義される臨界単糸数は86であり、炭素繊維束(A)の炭素繊維強化樹脂複合材料中の炭素繊維全量に対する体積割合の平均値は76%、変動係数(CV3)は13.1%であり、炭素繊維強化樹脂複合材料の総目付について調べたところ、総目付の平均値は3550g/m、変動係数(CV1)は3.7%であり、炭素繊維強化樹脂複合材料の炭素繊維体積割合(Vf)について調べたところ、炭素繊維体積割合(Vf)の平均値は35.5%、変動係数(CV2)は7.5%であった。また、炭素繊維強化樹脂複合材料の引張強度について調べたところ、引張強度の平均値は333MPa、変動係数(CV4)は12.2%であり、比較例1のCV4対比70%であった。さらに、炭素繊維強化樹脂複合材料の成形時の流動性について調べたところ、成形時の流動長の平均値は22mm、変動係数(CV5)は10.3%であり、比較例1のCV5対比56%であった。成形時のプレス成形体の両面の表面凸部の個数は4個であった。
【0080】
[実施例6]
炭素繊維の供給量を29/min、熱可塑性樹脂の供給量を37/minにセットして装置を稼動し、炭素繊維と熱可塑性樹脂が混合されたランダムマットを得たこと以外は、実施例2と同様にしてサンプルを作成した。
得られたランダムマットについて、幅1000mm×長さ250mmに切り出し、炭素繊維束(A)について調べたところ、式(b)で定義される臨界単糸数は86であり、炭素繊維束(A)のランダムマットの炭素繊維全量に対する体積割合の平均値は72%、変動係数(CV3’)は5.1%であり、ランダムマットの総目付について調べたところ、総目付の平均値は1870g/m、変動係数(CV1’)は7.2%であり、ランダムマットの炭素繊維体積割合(Vf)について調べたところ、炭素繊維体積割合(Vf)の平均値は34.1%、変動係数(CV2’)は4.9%であった。
得られたランダムマットは、搬送速度0.7m/minの連続含浸装置にて加圧・加熱して熱可塑性樹脂を炭素繊維マット中に含浸させ、炭素繊維強化樹脂複合材料を得た。
【0081】
得られた炭素繊維強化樹脂複合材料について、幅1000mm×長さ250mmに切り出し、炭素繊維束(A)について調べたところ、式(b)で定義される臨界単糸数は86であり、炭素繊維束(A)の炭素繊維強化樹脂複合材料中の炭素繊維全量に対する体積割合の平均値は71%、変動係数(CV3)は5.5%であり、炭素繊維強化樹脂複合材料の総目付について調べたところ、総目付の平均値は1890g/m、変動係数(CV1)は4.8%であり、炭素繊維強化樹脂複合材料の炭素繊維体積割合(Vf)について調べたところ、炭素繊維体積割合(Vf)の平均値は33.9%、変動係数(CV2)は9.1%であった。また、炭素繊維強化樹脂複合材料の引張強度について調べたところ、引張強度の平均値は311MPa、変動係数(CV4)は10.2%であり、比較例1のCV4対比58%であった。さらに、炭素繊維強化樹脂複合材料の成形時の流動性について調べたところ、成形時の流動長の平均値は10mm、変動係数(CV5)は11.1%であり、比較例1のCV5対比61%であった。成形時のプレス成形体の両面の表面凸部の個数は3個であった。
【0082】
[実施例7]
炭素繊維の供給量を82/min、熱可塑性樹脂の供給量を158/minにセットして装置を稼動し、炭素繊維と熱可塑性樹脂が混合されたランダムマットを得たこと以外は、実施例2と同様にしてサンプルを作成した。
得られたランダムマットについて、幅1000mm×長さ250mmに切り出し、炭素繊維束(A)について調べたところ、式(b)で定義される臨界単糸数は86であり、炭素繊維束(A)のランダムマットの炭素繊維全量に対する体積割合の平均値は74%、変動係数(CV3’)は5.0%であり、ランダムマットの総目付について調べたところ、総目付の平均値は3610g/m、変動係数(CV1’)は6.7%であり、ランダムマットの炭素繊維体積割合(Vf)について調べたところ、炭素繊維体積割合(Vf)の平均値は25.4%、変動係数(CV2’)は6.1%であった。
得られたランダムマットは、搬送速度0.7m/minの連続含浸装置にて加圧・加熱して熱可塑性樹脂を炭素繊維マット中に含浸させ、炭素繊維強化樹脂複合材料を得た。
【0083】
得られた炭素繊維強化樹脂複合材料について、幅1000mm×長さ250mmに切り出し、炭素繊維束(A)について調べたところ、式(b)で定義される臨界単糸数は86であり、炭素繊維束(A)の炭素繊維強化樹脂複合材料中の炭素繊維全量に対する体積割合の平均値は73%、変動係数(CV3)は5.4%であり、炭素繊維強化樹脂複合材料の総目付について調べたところ、総目付の平均値は3560g/m、変動係数(CV1)は4.6%であり、炭素繊維強化樹脂複合材料の炭素繊維体積割合(Vf)について調べたところ、炭素繊維体積割合(Vf)の平均値は24.9%、変動係数(CV2)は9.9%であった。また、炭素繊維強化樹脂複合材料の引張強度について調べたところ、引張強度の平均値は270MPa、変動係数(CV4)は9.8%であり、比較例1のCV4対比56%であった。さらに、炭素繊維強化樹脂複合材料の成形時の流動性について調べたところ、成形時の流動長の平均値は29mm、変動係数(CV5)は7.8%であり、比較例1のCV5対比43%であった。成形時のプレス成形体の両面の表面凸部の個数は0個であった。
【0084】
[実施例8]
炭素繊維を、東邦テナックス社製の炭素繊維“テナックス”(登録商標)UTS50−24K(平均繊維径7μm、繊維幅10mm)としたこと以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作成した。
得られたランダムマットについて、幅1000mm×長さ250mmに切り出し、炭素繊維束(A)について調べたところ、式(b)で定義される臨界単糸数は86であり、炭素繊維束(A)のランダムマットの炭素繊維全量に対する体積割合の平均値は76%、変動係数(CV3’)は3.4%であり、ランダムマットの総目付について調べたところ、総目付の平均値は3580g/m、変動係数(CV1’)は4.9%であり、ランダムマットの炭素繊維体積割合(Vf)について調べたところ、炭素繊維体積割合(Vf)の平均値は36.1%、変動係数(CV2’)は2.9%であった。
得られたランダムマットは、搬送速度0.7m/minの連続含浸装置にて加圧・加熱して熱可塑性樹脂を炭素繊維マット中に含浸させ、炭素繊維強化樹脂複合材料を得た。
【0085】
得られた炭素繊維強化樹脂複合材料について、幅1000mm×長さ250mmに切り出し、炭素繊維束(A)について調べたところ、式(b)で定義される臨界単糸数は86であり、炭素繊維束(A)の炭素繊維強化樹脂複合材料中の炭素繊維全量に対する体積割合の平均値は77%、変動係数(CV3)は3.3%であり、炭素繊維強化樹脂複合材料の総目付について調べたところ、総目付の平均値は3560g/m、変動係数(CV1)は2.9%であり、炭素繊維強化樹脂複合材料の炭素繊維体積割合(Vf)について調べたところ、炭素繊維体積割合(Vf)の平均値は35.5%、変動係数(CV2)は6.4%であった。また、炭素繊維強化樹脂複合材料の引張強度について調べたところ、引張強度の平均値は375MPa、変動係数(CV4)は6.6%であり、比較例1のCV4対比38%であった。さらに、炭素繊維強化樹脂複合材料の成形時の流動性について調べたところ、成形時の流動長の平均値は26mm、変動係数(CV5)は5.9%であり、比較例1のCV5対比32%であった。成形時のプレス成形体の両面の表面凸部の個数は0個であった。
【0086】
[実施例9]
熱可塑性樹脂を、帝人株式会社製のポリカーボネート樹脂“パンライト”(登録商標)L−1225WP(PC)としたこと以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作成した。
得られたランダムマットについて、幅1000mm×長さ250mmに切り出し、炭素繊維束(A)について調べたところ、式(b)で定義される臨界単糸数は86であり、炭素繊維束(A)のランダムマットの炭素繊維全量に対する体積割合の平均値は74%、変動係数(CV3’)は4.1%であり、ランダムマットの総目付について調べたところ、総目付の平均値は3590g/m、変動係数(CV1’)は5.3%であり、ランダムマットの炭素繊維体積割合(Vf)について調べたところ、炭素繊維体積割合(Vf)の平均値は36.1%、変動係数(CV2’)は3.9%であった。
得られたランダムマットは、搬送速度0.7m/minの連続含浸装置にて加圧・加熱して熱可塑性樹脂を炭素繊維マット中に含浸させ、炭素繊維強化樹脂複合材料を得た。
【0087】
得られた炭素繊維強化樹脂複合材料について、幅1000mm×長さ250mmに切り出し、炭素繊維束(A)について調べたところ、式(b)で定義される臨界単糸数は86であり、炭素繊維束(A)の炭素繊維強化樹脂複合材料中の炭素繊維全量に対する体積割合の平均値は73%、変動係数(CV3)は4.3%であり、炭素繊維強化樹脂複合材料の総目付について調べたところ、総目付の平均値は3590g/m、変動係数(CV1)は3.9%であり、炭素繊維強化樹脂複合材料の炭素繊維体積割合(Vf)について調べたところ、炭素繊維体積割合(Vf)の平均値は35.9%、変動係数(CV2)は7.6%であった。また、炭素繊維強化樹脂複合材料の引張強度について調べたところ、引張強度の平均値は339MPa、変動係数(CV4)は8.3%であり、比較例1のCV4対比47%であった。さらに、炭素繊維強化樹脂複合材料の成形時の流動性について調べたところ、成形時の流動長の平均値は9mm、変動係数(CV5)は12.4%であり、比較例1のCV5対比68%であった。成形時のプレス成形体の両面の表面凸部の個数は2個であった。
【0088】
[比較例1]
管体ユニットを往復揺動させずに固定して炭素繊維強化樹脂複合材料を作成したこと以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作成した。
得られたランダムマットについて、幅1000mm×長さ250mmに切り出し、炭素繊維束(A)について調べたところ、式(b)で定義される臨界単糸数は86であり、炭素繊維束(A)のランダムマットの炭素繊維全量に対する体積割合の平均値は76%、変動係数(CV3’)は12.0%であり、ランダムマットの総目付について調べたところ、総目付の平均値は3600g/m、変動係数(CV1’)は15.3%であり、ランダムマットの炭素繊維体積割合(Vf)について調べたところ、炭素繊維体積割合(Vf)の平均値は35.4%、変動係数(CV2’)は11.2%であった。
得られたランダムマットは、搬送速度0.7m/minの連続含浸装置にて加圧・加熱して熱可塑性樹脂を炭素繊維マット中に含浸させ、炭素繊維強化樹脂複合材料を得た。
【0089】
得られた炭素繊維強化樹脂複合材料について、幅1000mm×長さ250mmに切り出し、炭素繊維束(A)について調べたところ、式(b)で定義される臨界単糸数は86であり、炭素繊維束(A)の炭素繊維強化樹脂複合材料中の炭素繊維全量に対する体積割合の平均値は76%、変動係数(CV3)は11.1%であり、炭素繊維強化樹脂複合材料の総目付について調べたところ、総目付の平均値は3570g/m、変動係数(CV1)は10.8%であり、炭素繊維強化樹脂複合材料の炭素繊維体積割合(Vf)について調べたところ、炭素繊維体積割合(Vf)の平均値は34.9%、変動係数(CV2)は13.4%であった。また、炭素繊維強化樹脂複合材料の引張強度について調べたところ、引張強度の平均値は302MPa、変動係数(CV4)は17.5%であった。さらに、炭素繊維強化樹脂複合材料の成形時の流動性について調べたところ、成形時の流動長の平均値は17mm、変動係数(CV5)は18.3%であった。成形時のプレス成形体の両面の表面凸部の個数は15個であった。
ランダムマット及び炭素繊維強化樹脂複合材料の評価結果は表2にまとめて示した。以降の比較例で得られたランダムマット及び炭素繊維強化樹脂複合材料の評価結果についても同様に表2に示した。
【0090】
[比較例2]
ロータリーカッターのクリアランスを小さくして、炭素繊維の重量平均繊維長を0.5mmになるように調整したこと以外は、比較例1と同様にしてサンプルを作成した。
得られたランダムマットについて、幅1000mm×長さ250mmに切り出し、炭素繊維束(A)について調べたところ、式(b)で定義される臨界単糸数は86であり、炭素繊維束(A)のランダムマットの炭素繊維全量に対する体積割合の平均値は81%、変動係数(CV3’)は9.6%であり、ランダムマットの総目付について調べたところ、総目付の平均値は3570g/m、変動係数(CV1’)は14.5%であり、ランダムマットの炭素繊維体積割合(Vf)について調べたところ、炭素繊維体積割合(Vf)の平均値は35.8%、変動係数(CV2’)は13.8%であった。
得られたランダムマットは、搬送速度0.7m/minの連続含浸装置にて加圧・加熱して熱可塑性樹脂を炭素繊維マット中に含浸させ、炭素繊維強化樹脂複合材料を得た。
【0091】
得られた炭素繊維強化樹脂複合材料について、幅1000mm×長さ250mmに切り出し、炭素繊維束(A)について調べたところ、式(b)で定義される臨界単糸数は86であり、炭素繊維束(A)の炭素繊維強化樹脂複合材料中の炭素繊維全量に対する体積割合の平均値は80%、変動係数(CV3)は9.8%であり、炭素繊維強化樹脂複合材料の総目付について調べたところ、総目付の平均値は3580g/m、変動係数(CV1)は9.8%であり、炭素繊維強化樹脂複合材料の炭素繊維体積割合(Vf)について調べたところ、炭素繊維体積割合(Vf)の平均値は35.4%、変動係数(CV2)は15.4%であった。また、炭素繊維強化樹脂複合材料の引張強度について調べたところ、引張強度の平均値は240MPa、変動係数(CV4)は15.5%であり、比較例1のCV4対比89%であった。さらに、炭素繊維強化樹脂複合材料の成形時の流動性について調べたところ、成形時の流動長の平均値は35mm、変動係数(CV5)は17.0%であり、比較例1のCV5対比93%であった。成形時のプレス成形体の両面の表面凸部の個数は2個であった。
【0092】
[比較例3]
管体から噴射する圧縮空気量を比較例1の2倍とし、かつ管体長を2倍としたこと以外は、比較例1と同様にしてサンプルを作成した。
得られたランダムマットについて、幅1000mm×長さ250mmに切り出し、炭素繊維束(A)について調べたところ、式(b)で定義される臨界単糸数は86であり、炭素繊維束(A)のランダムマットの炭素繊維全量に対する体積割合の平均値は10%、変動係数(CV3’)は14.3%であり、ランダムマットの総目付について調べたところ、総目付の平均値は3630g/m、変動係数(CV1’)は14.9%であり、ランダムマットの炭素繊維体積割合(Vf)について調べたところ、炭素繊維体積割合(Vf)の平均値は35.3%、変動係数(CV2’)は10.8%であった。
【0093】
得られたランダムマットは、搬送速度0.7m/minの連続含浸装置にて加圧・加熱して熱可塑性樹脂を炭素繊維マット中に含浸させ、炭素繊維強化樹脂複合材料を得た。
得られた炭素繊維強化樹脂複合材料について、幅1000mm×長さ250mmに切り出し、炭素繊維束(A)について調べたところ、式(b)で定義される臨界単糸数は86であり、炭素繊維束(A)の炭素繊維強化樹脂複合材料中の炭素繊維全量に対する体積割合の平均値は11%、変動係数(CV3)は14.6%であり、炭素繊維強化樹脂複合材料の総目付について調べたところ、総目付の平均値は3600g/m、変動係数(CV1)は10.3%であり、炭素繊維強化樹脂複合材料の炭素繊維体積割合(Vf)について調べたところ、炭素繊維体積割合(Vf)の平均値は35.7%、変動係数(CV2)は11.1%であった。また、炭素繊維強化樹脂複合材料の引張強度について調べたところ、引張強度の平均値は354MPa、変動係数(CV4)は15.4%であり、比較例1のCV4対比88%であった。さらに、炭素繊維強化樹脂複合材料の成形時の流動性について調べたところ、成形時の流動長の平均値は4mm、変動係数(CV5)は24.9%であり、比較例1のCV5対比136%であった。成形時のプレス成形体の両面の表面凸部の個数は38個であった。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の繊維強化樹脂複合材料は、総目付ムラ及び炭素繊維体積割合(Vf)ムラを小ピッチで抑制したものであり、成形時の賦形ムラ及び機械物性ムラも小ピッチで抑制可能となり、小型成形体や複雑形状の成形体においても、優れた成形性や機械特性を発揮できるため、例えば各種自動車部品、電気製品等の精密部品に利用できる。
【0097】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2015年3月24日出願の日本特許出願(特願2015−060975)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0098】
1.管体
2.ランダムマット
3.管体ユニット
4.通気性支持体
5.搬送方向
6.成形体
7.成形時の流動部分
8.流動長
X1.管体の中心間距離
P1.位相差
W1.ランダムマットの平均散布幅
図1
図2