【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
1.剛性を有する剛構造と気体を密封する圧力構造からなる構造物であって、剛構造として、トラス構造、ラーメン構造、モノコック構造、シェル構造であることを特徴とし、圧力構造として、円あるいは長方形等の任意の形状をした上下面を持つ袋状の圧力構造を有し、剛構造がトラス構造、ラーメン構造にあっては、圧力構造が圧力膜構造からなり、剛構造がモノコック構造、シェル構造にあっては、圧力構造が圧力膜構造または/一部が圧力隔壁構造からなり、前記圧力構造が前記剛構造の内部空間に配置され、前記圧力構造の内部圧力を周囲の外気圧よりも高く維持できる特徴を有し、前記圧力構造の内部圧力を周囲の外気圧よりも高く維持するための圧力制御装置を有し、圧力構造の上下面の膨張を抑制する手段を持ち、前記圧力構造の上下面の膨張を抑制する手段により圧力構造の内部圧力と外気圧の差圧によって生じる力を剛構造に伝達することを特徴とする圧力膜複合構造物。
2.剛性を有する剛構造と気体を密封する圧力構造からなる構造物であって、剛構造として、モノコック構造、シェル構造であることを特徴とし、圧力構造として、円あるいは長方形等の任意の形状をした上下面を持つ袋状の圧力構造を有し、前記圧力構造が前記剛構造の内部空間に配置され、前記圧力構造の内部圧力を周囲の外気圧よりも高く維持できる特徴を有し、前記圧力構造の内部圧力を周囲の外気圧よりも高く維持するための圧力制御装置を有し、圧力構造の上下面の膨張を抑制する構造を持ち、前記圧力構造の上下面の膨張を抑制する構造により圧力構造の内部圧力と外気圧の差圧によって生じる力を剛構造に伝達することを特徴とする圧力膜複合構造物。
3.前記剛構造として、モノコック構造、シェル構造であることを特徴とし、前記剛構造の全体または一部が圧力膜構造の構造を兼ねている特徴を有する請求項1から2記載の圧力膜複合構造物。
4.前記剛構造として、モノコック構造、シェル構造であることを特徴とし、前記剛構造と圧力膜構造が一体構造からなる特徴を有する請求項1から2記載の圧力膜複合構造物。
5.前記圧力膜複合構造物が構造的に区分できる最小単位の圧力膜構造からなる圧力膜構造体を有し、前記圧力膜構造体を上下方向に複数段有し、前記圧力膜構造体の下段の内部圧力が上段よりも高く維持されることを特徴とする請求項1から4記載圧力膜複合構造物。
6.前記圧力膜複合構造物が構造的に区分できる最小単位の圧力膜構造からなる圧力膜構造体を有し、前記圧力膜構造体を上下方向に複数段有し、前記圧力膜構造体の内部圧力が下段ほど高く維持されることを特徴とする請求項1から4記載圧力膜複合構造物。
【0008】
本発明は剛構造と圧力膜構造との複合構造物である。本説明において、構造とは一般的な意味での構造を意味する。本説明において、設備を含めた、本発明の構造物全体を意味する時は圧力膜複合構造物と記述する。本発明の構造物の構造は圧力膜構造と剛構造からなる。どちらか一方の構造を意味する時は圧力膜構造部、または剛構造部と記述する。また、圧力膜構造部及び剛構造部の最小単位となる構造を意味する時はそれぞれ、圧力膜構造体、剛構造体と記述する。
図1はラーメン構造による最小単位の構造の例である。本発明の剛構造としてはトラス構造、ラーメン構造、モノコック構造、シェル構造のいずれかを意味する。
図2は剛構造がトラス構造の場合の例を示す。
図3は剛構造がラーメン構造の場合の例を示す。
図4は剛構造がモノコック構造である場合の例を示す。
図5は剛構造がシェル構造である場合の例を示す。これらの剛構造と圧力膜構造との複合構造について
図1に示すラーメン構造を例に取り説明する。図中の下線をつけた符号は構造のまとまりを表す。本発明は例えば
図1のように大きく圧力膜構造体1と剛構造体2からなる。
図1は圧力膜複合構造の最小単位となるユニットを示す。このユニットを結合することにより、任意の大きさの構造を簡易に構築できる。
図1のユニット形状は立方体の形状を示しているが、ユニットはどのような形状でも良い。
【0009】
本発明の剛構造部は一般に通常の構造材料として使われる金属材料、鉄筋コンクリート(SC構造)、複合材料を利用することができる。金属材料あるいは複合材料としては、例えば、建築構造用圧延鋼材(JIS G3136 SN材)、溶接構造用圧延鋼材(JIS G3136 SM材)、一般構造用圧延鋼材(JIS G3101 SS材)、建築構造用ステンレス鋼材(JIS G4321−2000)構造用軽量ステンレス鋼材(SSBS 151−2004)、アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条(JISH4000)、FRPなどが利用できる。部材として形状は円管、角管、波板などの一般に用いられる軽量で座屈しにくい形状の部材が利用できる。円管、角管などの場合は厚さは1〜200mmが好ましい。より好ましくは厚さは1.5〜150mm、最も好ましくは2〜100mmである。1mm未満の厚さでは、局所座屈が容易に生じる為、好ましくない。200mmを超える厚さでは、材料の入手が困難となるため為好ましくない。部材の長さは、長くなるほど局所座屈しやすくなるので、部材に掛かる荷重と板厚を考慮して長さを設定する必要がある。長さについては輸送手段や調達コストにより適宜選定すれば良い。具体的には、2〜200mとするのが好ましい。より好ましくは4〜100m、最も好ましくは8〜50mである。SC構造は鉄骨鉄筋コンクリート構造(SRC構造)でも良い。SC構造、SRC構造の場合には、移動型枠工法または、プレキャストコンクリート型枠を使用する既成型枠工法を用いることが好ましい。構造の形状は内部を圧力膜構造部とする中空円筒形状が好ましい。中空円筒の直径は、1〜500mとするのが好ましい、より好ましくは2〜100m、最も好ましくは4〜50mである。中空円筒構造には、円筒の内部にアクセスするためのマンホールを配置することが好ましい。中空円筒の中空部の面積と中実部の面積の比は1対0.04〜1対10程度とするのが好ましい。より好ましくは1対0.06〜1対1、最も好ましくは1対0.06〜1対0.6である。SC構造、SRC構造の場合は高さは10〜300m程度が良い。円筒構造の内壁は発泡ウレタンなどの断熱材を吹きつける工法を用いても良い。SC構造、またはSRC構造の円筒の内部構造をそのまま圧力構造として利用する場合は、構造の内部にシール性のある材料で被膜を形成しておくことが良い。断熱材を隙間なく吹き付けてシール性を確保しても良い。
【0010】
圧力膜部の材料としては、塑性変形する材料または金属形態材料が好ましい。材質は金属、複合材、例えば軟鋼やCFRPを使用することができる。2つの隣り合う圧力膜部間で圧力を介して荷重を伝達するため、より密着しやすい材料が好ましい。
【0011】
剛構造と剛構造の結合部はそれぞれの構造形式において一般に用いられる結合構造が利用できる。例えば、ボルト・ナットによる締結やリベットや溶接、接着剤による結合とすることができる。接着剤の場合は、シリコン系接着剤、アクリル系接着剤、ゴム系接着剤、エポキシ系接着剤などが利用できる。中でも、シリコン系接着剤、アクリル系接着剤、ゴム系接着剤など、接着後も弾性状体を維持するものが好ましい。接着層の厚さは、好ましくは5〜50μm、最も好ましくは15〜25μmである。接着剤の塗布は芯材の無い両面テープ形式のものを利用するのが好ましい。また、スプレータイプやコーター付きのチューブタイプの塗布装置を利用しても良い。
【0012】
トラス構造やラーメン構造の場合、外壁は耐候性、耐紫外線耐性を持つ破れにくい膜材料や金属の薄板を用いることが良い。この他、太陽電池パネル、薄膜太陽電池などの機能材料を外壁として一部又は全部に利用することも可能である。
【0013】
モノコック構造、あるいは、シェル構造の場合、剛構造そのものが外壁としての耐候性、耐紫外線性を持つ。全ての剛構造において、構造材に金属材料を利用する場合は、塗料により構造材表面の錆を抑制することや断熱効果を持たせることが好ましい。
【0014】
圧力膜構造体は
図1に示すように、袋状の構造を持つ。例として
図1では圧力膜構造体1の形状は立方体の形状を示しているが、この圧力膜構造体はどのような形状でもよい。圧力膜構造体は
図2〜
図5に示すように、上下方向に複数段にして圧力膜構造部を構成することが好ましい。この場合、上下方向の圧力膜構造体同士は境界面で接する面で圧力を媒介に上部構造の重量を下部構造に伝達する構造である。最上段の圧力膜構造体は、最上段を構成している構造材料と圧力を維持する装置などの載荷物の重量を支えられる圧力とするのが好ましい。2段目の圧力膜構造体は、同様に2段目を構成している構造材料と圧力を維持する装置などの載荷物の重量に加え、最上段の圧力による荷重を支えられる圧力とするのが好ましい。よって、下部構造の圧力膜構造体の内部圧力は上部構造よりも大きくなることが好ましい。
図2〜
図5の例では3段の構造を示しているが、任意の段数の構造とすることも可能である。また、
図6に示すように、同じ段に複数の圧力膜構造体を並列に配置することが冗長構造となることから好ましい。
【0015】
合成樹脂材料を用いた圧力膜構造体と金属あるいは複合材料による剛構造の結合の例を
図1にて説明する。例では、圧力膜構造体が剛構造の桁部3,5を圧力膜構造体と一体構造の輪形状の断面を持つ襟部4で結合している。襟部4は輪形状の中に桁が通る形状としている。圧力膜構造体の高さは桁部3と桁部5の間の高さよりも長いため、内部圧力により、桁部3、5は上下方向に広がるような力を受ける。この力は剛構造の柱部6に伝わり、柱部6は引張力を受ける。
図1では膜の襟部で桁構造を包む例を示したが、テントのように圧力膜構造体の隅に取り付けた紐により圧力膜構造体と桁部を結合しても良いし、
図7のようにハトメ部を設けて桁構造に繋がるフックを掛ける結合方式にしても良い。この他、接着剤を用いることも可能である。また、圧力膜が金属材料の場合は合成樹脂材料の場合の結合方式に加えて、溶接により接合することが可能である。剛構造がRC構造またはRSC構造の場合、
図8に示すように、中空の内部空間を金属膜あるいは合成樹脂材料を用いた圧力膜構造体8a〜8cを隙間なく配置すれば良く、RC構造またはRSC構造と結合しなくてもよい。圧力膜構造体を隙間なく配置するための目的でRC構造またはRSC構造に任意に結合してもよい。
【0016】
圧力膜構造の鉛直方向の金属または複合材の剛構造部材と圧力膜構造体の鉛直断面積の比は、1対10〜1対10
6とするのが好ましい。構造の床面積が小さく制限されるような場合、例えば、断面積の比が1対100の場合は、圧力膜構造の内部圧力を高くする、例えば0.1〜2MPaとすることで、構造を効率化できる。一方で内部圧力は外部との相対圧力を1MPa以下とすることが好ましい。1対10より小さい比率を採用する際には、構造の効率を優先する必要から内部圧力が1MPaより大きくする必要があるが、膜構造が破裂や穴があく可能性が高くなるので好ましくない。一方で、1対10
6以上の比率の場合、構造に必要となる床面積が過大に必要となる他、膜構造のメンテナンスに必要な経費が大きくなる。鉛直断面積の好ましい比は1対50〜1対10
5である。最も好ましくは1対10
2〜1対10
4である。内部圧力は外部対気圧に対して、0.03〜0.3MPa高いことが好ましい。より好ましくは0.05〜0.2MPa、最も好ましくは0.08〜0.1MPaである。剛構造がRC構造又は、RSC構造の場合は中空部を隙間なく圧力膜構造とするのが良い。
構造重量以外に大きな重量を支える用途の構造においては、上記以外の面積比を用いても良い。圧力膜が分担する、あるいは下部構造に伝達できる荷重は圧力膜の上部、下部が接する面積に比例する。圧力膜は内部圧力により膨張する。膨張により、膜構造の上部の投影面積より小さい面積しか膜構造同士は接触しない。膨張の度合は膜の形状と弾性係数と内部圧力により求められる。圧力膜の接触面積は圧力膜の断面が直方体あるいは立方体の場合は、投影面積の0.50〜0.99倍とするのが良い。より好ましくは0.70〜0.95倍、最も好ましくは0.80〜0.90倍とするのが良い。圧力膜の断面が円形である場合は、投影面積の0.70〜0.99倍とするのが良い。より好ましくは0.80〜0.99倍、最も好ましくは0.90〜0.99倍とするのが良い。
【0017】
本発明では、セルの圧力膜構造体の圧力維持と、圧力膜構造体の単一破断などに対処するために、各圧力膜構造体には圧力センサ、排気弁、注気弁を配置し、各圧力膜構造体の圧力を構造外部の大気に対して0.001〜15MPaにすることが必要であり、そのためには相対圧力範囲内に適切に維持する圧力コントローラを用いるのが好ましい。例えばSMC社製圧力スイッチコントローラPSE200及び電磁弁などが利用出来る。また、各圧力膜構造体は適切な個数で供用する空気タンクと空気タンクに空気を貯める圧力ポンプ、例えばエアコンプレッサーにて定圧保持機能を持つ装置を有することがさらに好ましい。さらに、この空気タンクと圧力ポンプは別の空気タンクと圧力ポンプと冗長系を構成することによって、故障に対する信頼性を高めることが可能となる。また、空気タンクの代わりに耐圧強度を増した圧力膜構造体を空気タンクとして利用しても良い。
【0018】
圧力膜構造体の内部圧力は、圧力膜構造体の耐圧力の範囲内で任意とすることができる。圧力膜構造体の鉛直荷重の分担面積が大きければ、内部圧力は小さくすることができる。逆に分担面積が大きく取れない場合は、内部圧力を大きくすれば良い。内部圧力は万が一圧力膜が破裂した場合であっても、周辺の膜や構造にダメージを与えないためにも、外部との相対圧力を15MPa以下とすることが必要である。相対圧力が0.001MPaより小さい場合、圧力膜構造の床面積を大きくする必要があり、圧力膜複合構造全体に用いる構造材料のコストが増加するため、発明の効果が得られない。
また、下部の構造は上部構造の重量を支えることから、下部になるほど圧力が徐々に大きくなることが好ましい。例えば、圧力膜の構造が100段であるテーパーの少ない構造ならば、隣接する上下の圧力比は1対1〜1対1.10にすることが好ましい。より好ましくは1対1〜1対1.05、最も好ましくは1対1.01である。
【0019】
各圧力膜構造体内部の圧力は圧力センサの情報を用いて、空気の流入弁あるいは排気弁を開閉することによって、設定されたの圧力範囲内となるように制御される。外部からの信号によって、任意の圧力範囲に再設定が可能であると良い。この機能によって、重量が大きな荷役物を搭載する場合も剛構造部材の応力状態を安全な領域内に留めておくことができる。
【0020】
圧力ポンプや圧力制御装置は外部から給電することができる。この他、構造の外周に設けた太陽光発電設備や風力発電設備と蓄電装置などに給電する方法としても良い。
【0021】
特定の実施例では、高さ30cmの構造モデル例を提供するが、本発明の構造物はどのような高さであっても良い。実際に本発明を実施する上での高さに対する制約は、構造全体を長柱とモデル化する場合の座屈モードである。よって、構造の高さが高くなる場合においては、座屈荷重に留意して、構造の断面の設計と建造を行う必要がある。具体的な高さの限界に関しては、圧力膜内部の温度制御による浮力を併用するなどすることが可能であり、浮力を併用をした場合、高さ40km程度までの高層構造を建築することができる。
【0022】
さらに本発明においては、塔単独の片持ち構造を提供しているが、
図9のように張線9による補強を実施した構造とする事も可能である。さらにこの張線に任意の錘を吊るすことによって構造の振動減衰の効果をもたらすことができる。
【0023】
本発明を効率よく実施するために、
図1に示すセル構造を用いることが好ましい。
図1では圧力膜構造体1つがトラス構造体1つに収納されている形態を示す。圧力膜セルと、トラス構造が同数の対になっている必要はない。1つの圧力膜構造体から複数のビームに圧力を伝達する方法もあるし、複数の圧力膜構造体を1つのトラス構造内に内包する方法もある。このような圧力膜複合構造の最小単位構造をセル構造として水平方向、垂直方向に必要に応じて結合することにより、同じ部材、材料、構造によって効率的に所望の高さの構造を得ることができる。
【0024】
また、こうした多数のセルからなる膜構造を採用することが耐故障性の観点から好ましい。例えばセルの一つの膜の圧力が低下したとしても、周辺のセルの圧力を調整することによって、剛構造部材の応力をほぼ元の状態に戻すことができる。具体的な例を
図8に示す。この例では、シェル構造の剛構造部内に8a〜8cの3つの圧力膜構造体が配置されている。8a〜8cの圧力膜構造体は単体でそれぞれが
図8に示す大きさの例えば2倍まで膨らむことができる。平常時には同じ圧力Psetを持たせることによって、
図8のようにほぼ均等の大きさの断面形状としている。例えば、事故により8aの圧力膜構造体に穴が空くと、8aの内部圧力の低下に伴って、8bと8cの圧力膜構造体が膨張して8aの隙間を埋めることになる。8bと8cの膨張時においては、圧力タンクに蓄えられている空気の流入によって、設定圧力Psetが維持される。この例では3つの圧力膜構造体による3重冗長系を示しているが、2重冗長や4重以上の冗長系も構成することができる。信頼性からは、好ましくは2重〜3重冗長、より好ましくは3重冗長が良い。
【0025】
このような構造を持つことにより、修理の際や経年劣化した膜構造体を交換することが容易となる。
【0026】
構造例の説明図や特定の実施例では、圧力膜構造は1枚の膜によって構成されているが、安全性を考慮して複数の膜により構成しても良い。
【0027】
構造例の説明図や特定の実施例では、それぞれのセルは個別の袋状の膜を用いて実現されているが、実際の実施においては、重なり合う膜構造部位は1枚に統合して実施しても良い。
【0028】
図17に示す特定の実施例では、2mの塔を、1段を2mとして1段としているが、何段としても良い。好ましくは1段の高さを10〜100m、最も好ましくは20〜50m程度とするのが良い。
【0029】
特定の実施例では、1つの長柱構造の塔としているが、複数の塔を連結した構造とすることも可能である。高さが1500m以上の構造の場合は、1つの直径の大きな塔よりも
図10のように直径の小さい複数の塔を結合した構造が好ましい。
図10では3つの塔が同心円状に結合された例を示しているが、塔の数は幾つでも良いし、結合形状はどのような形状でも良く、閉じた形状でなくともよい。
図11、
図12に連結した構造の例を示す。
【0030】
本発明の具体的な膜部の材料としては、例えば、熱可塑性材料が好ましい。またこれらの熱可塑性材料には、アラミド繊維、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェンなどの合成繊維からなる短繊維、フィラーなど針状体などを強化繊維として混合した複合材料として用いても良い。この他、炭素繊維に合成樹脂やゴムなどを含浸させた材料あるいは、合成樹脂を積層した複合材料、アルミ材や鋼材などの金属板なども利用できる。また、これらの膜の複層材料でも良い。膜の厚さは0.005〜5mmとするのが良い。合成樹脂の場合、より好ましくは0.01〜4mmであり、最も好ましくは0.05〜3mmである。鋼材あるいはアルミ材の場合は、より好ましくは0.005〜3mmであり、最も好ましくは0.01〜2mmである。CFRPの場合はより好ましくは0.005〜2mmであり、最も好ましくは0.005〜1mmである。基本的には薄い方が、材料コストは安くなり、構造重量も軽減できる。0.005mmより薄い場合は、製造・建設工程において容易に穴があくことが想定されるため、好ましくない。また、5mm以上の場合は、材料コストの増加を招き、本発明の目的となる課題の解決が困難となる為好ましくない。
【0031】
本発明の熱可塑性材料としては、熱可塑性ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、PTFE、ABS樹脂、AS樹脂、ナイロン、エステル、アクリル樹脂、ゴムなどが使用することが出来る。また、当然ながら複数の樹脂からなる複合構造も利用できる。熱可塑性材料には、紫外線吸収剤、熱安定剤等の添加材を加えてもよい。熱可塑性樹脂を用いることにより、圧力膜構造体を構成する膜構造のシールを容易かつ均質に行うことができ、大量生産することができる為、好ましい。さらに、膜材料の傷や穴などの補修に際しても、短時間かつ容易に恒久的な修理を実施することが可能となる。
【0032】
剛構造体としてトラス構造やラーメン構造を用いる場合は、圧力膜構造が外部に露出することとなる。このため、最外層となるセルの圧力膜構造体にアルミ蒸着、塗装、耐紫外線膜の積層、膜構造とは独立した遮光膜あるいは遮光壁構造などを持たせることにより、膜の材料の紫外線劣化の耐久性を向上することが好ましい。
【0033】
シェル構造やモノコック構造では、構造内部を気密にすることによって、圧力膜複合構造としての機能を持たせることが可能である。構造全体が1つの圧力構造となる形態でも良いが、高層の構造物である場合には、複数の圧力構造を多段に繋ぐ構造とすることがよい。圧力膜複合構造とするために、圧力膜以外に圧力隔壁を設けても良い。この場合の圧力隔壁は熱可塑性のある膜材料でも良いが、金属の薄板でも良い。材料は例えば、建築構造用圧延鋼材(JIS G3136 SN材)、溶接構造用圧延鋼材(JIS G3106 SM材)、一般構造用圧延鋼材(JIS G3101 SS材)、建築構造用ステンレス鋼材(JIS G 4321−2000)構造用軽量ステンレス鋼材(SSBS151−2004)、アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条(JIS H4000)などの金属材の他、FRPなどが利用できる。シェル構造やモノコック構造が金属やFRP材料の場合、同じ金属やFRPの薄板を採用した方が製造場所を1つにすることができるため、また、移動コストや製造工程を短くすることができるため、コスト的に有利になる。この他、金属膜と熱可塑性樹脂の複合構造などを採用しても良い。
【0034】
本発明の圧力膜複合構造物は、圧力膜内部の温度を外気の温度より高くすることが好ましい。本発明の圧力膜構造物は例えば、圧力膜内部の気圧が外部の気圧よりも10%高い圧力である場合、圧力膜内部の絶対温度を外気の絶対温度よりも10%以上高くすることによって、圧力膜内部の密度が外部に比べて低下する。結果、圧力膜は浮力を有するようになる。このとき構造重量による荷重は、浮力分軽減出来ることになる。よって、膜の耐熱温度の許す範囲内で、出来るだけ外気温よりも高くすると良い。具体的には、圧力膜構造に使用している膜材料の耐熱温度の7割〜8割程度の温度とすることが好ましい。例えばポリイミド樹脂であれば耐熱温度が約260℃であるため、外気温との差が0〜180℃であることが好ましい。また、荷重が変動する構造の場合は、荷重の増減を浮力分でキャンセルできる温度設定とすることもできる。圧力膜の圧力変動を小さくし、変動サイクルを少なくすることによって、圧力膜の劣化を小さくすることができる。熱源としては、電力によるヒーターを用いても良いし、電力の他に太陽熱を併用するものでも良い。温度制御部は圧力膜内部の温度を計測するセンサ部と温度を上昇させるためのヒーター部とセンサ部の情報を基にヒーター部の動作を制御する温度コントローラーからなる。温度センサ及びヒーターは圧力膜構造のセル毎に配置する。温度コントローラはセル毎に配置してもよいし、複数のセルを1つのコントローラによって集中制御する方式を用いてもよい。温度コントローラーはセンサ部の計測温度をフィードバックして、目標温度範囲内となるようにヒータにより圧力膜内部温度を調節する。温度制御部への電力は圧力制御部と同様に圧力膜複合構造外部から供給される。あるいは、構造に設備された太陽発電設備や風力発電設備などにより発電された電力から供給してもよい。圧力膜複合構造外部からヒーターの動作状況が確認できるようにしてもよいし、外部からヒーターの設定を変更できるようにしてもよい。圧力膜内部の温度制御を行う場合、構造の最外層の圧力膜構造は周囲の大気温度に対する断熱材としての効果を利用することが出来る。
図13に例を示す。
図13は、剛構造としてシェル構造を用いる例の断面図である。シェル構造の内部に10a及び10bからなる2層の圧力膜構造を配置している。それぞれの層は3つの圧力膜構造で冗長系を構成している。この外側の10aの圧力膜構造体は温度制御を行なわない。すると、10aと10bの内部温度に温度差が生じるため、温度を高く制御している10bから10aに熱が伝わり、さらに10aの外部構造に面している膜からシェル構造を介して大気に熱が放出される。このとき10aの内部の気体が熱の輸送の大部分を担うこととなる。空気の熱の移送速度は非常に遅いため(0℃、1気圧の場合、1m
2あたり0.0241W/m/K)、10aは断熱効果を発揮する。断熱効果を利用する場合は、最外層の圧力膜構造により外気と内部構造を断熱するための幅は、好ましくは0.5〜3m、より好ましくは1〜2mが良い。また、外側の層の圧力膜内部を発泡樹脂などで埋めてもよい。
【0035】
本圧力膜複合構造物の最も効果的な利用方法としては風力発電タワーとしての利用がある。風力発電タワーは,150〜5000mの高さの圧力膜複合構造とすることが好ましい。設置場所にもよるが、一般にこの範囲では高さが高い方が風力は増加傾向にあるが、タワーの高さを大きくする分コストが掛かるので,発電電力の上昇とコストの上昇を考慮することにより高さを決定することができる。また,圧力膜複合構造の根元部分の直径は20〜200mとなるが、発電部の風の抵抗による曲げモーメントを考慮して決定することができる。風力発電設備は複数の風車を多段に階層化して設備しても良い。風力発電タワーを本発明の構造とすることにより、剛構造部の自重や搭載物の重量を圧力膜構造部が基礎まで伝達するので、この分の剛構造を不要とすることが出来る。或いは安全率1以上に相当する分の荷重を圧力膜構造部により支持することにより、この分の剛構造を不要とすることが出来る。このように剛構造の部材を従来の構造よりも低減できるため低コストで建造することが出来る。高さ3000mを超えるタワーでは、その場所での平均の雲の高さを超える部位に太陽発電設備を設置し、風力発電と太陽光発電を併用しても良い。地上は曇りや雨であっても、雲の上では常に太陽光を受けることが可能であるため、安定した電力を発電することができる。
【0036】
また、本圧力膜複合構造物の効果的な別の利用方法として、貯水槽としての利用、特に揚水発電用の貯水槽がある。これは単独の揚水発電用の貯水層設備の構造物として利用しても良いし、本発明による風力発電タワーの内部に貯水槽を併設してもよい。風力発電タワーで夜間に発電する電力を用いて、貯水槽に水をくみ上げることが効果的である。夜間にくみ上げた水を用いて、日中の電力需要が高い時間帯に風力発電に加え揚水発電に利用することにより、より効率的な電力供給ができる。通常のダム湖を用いた揚水貯水施設に比べて、高低差が大きくできるので、少ない水で効率的に蓄電できる。構造体内部に貯水するので、例えば上下2段に貯水槽を設ければ新たに、揚水発電のための貯水用の用地を別途取得する必要がない。またこの貯水槽を密閉式にすれば、外部から隔離された循環水となり、ゴミや泥などの混入がないため、貯水設備のメンテナンスも少なく済む。循環水の蒸発はほとんど生じないため、極端に水不足となるような気象条件となっても、水不足で発電できなくなることがない。このように、通常のダム湖を用いた貯水施設に比べて、非常に有利な貯水施設として利用できる。貯水層は揚水ポンプの出力と構造の高さに応じて、1段としてもよいし、2段、3段など複数段からなる構造としても良い。
【0037】
一般に高層建築では、地震や風による突発的に生じる外力に対して、耐震(構造部材を追加するなどによって、振動に対する耐性を高くする)、免震(地面と構造物の間に振動を受動的に絶縁する装置を設備する)、制振(構造の内部や頂部に振動を減衰させるための装置を設備する)などの構造を組み合わせて採用し、構造に対する負荷を軽減する方法を採用している。 高層建築物は、地面に対して片持ちのはりの柔構造とすることによって、地震や風の短時間で入力される大きなエネルギーは、柔軟構造の弾性エネルギーに受動的に変換される。励起された構造振動は、主に建築物の固有周期の運動の中の減衰により入力エネルギーを数秒から数十秒の時間を掛けて消散することができる。
【0038】
本発明でも、構造に柔軟性を持たせる構造を採用することが効率的である。但し、長大な柱状の構造物となることから、柔軟性による構造の変位は大きくなることを考慮して建設することが好ましい。
【0039】
外側と内側を円筒状の2重の独立とした構造(例えば、
図14)とすることにより、外側が風などの空気力により、大きな変位を起こす場合においても、内側は空力外力が遮断されているため、内側構造の変位は抑制される。内側と外側の間隔は、推定される最大外力による変位を考慮して建設することが出来る。